説明

共鳴トンネルダイオードを有するコンパレータ

【解決手段】 コンパレータは、コンパレータのラッチ素子の抵抗(R301、R302)に直列な2つの共鳴トンネルダイオード(RTD、RTD301、RTD302)を用いる。2つのRTDダイオード(RTD301、RTD302)を抵抗(R301、R302)と直列に挿入することによって、第1、第2RTDダイオードの負抵抗が、抵抗およびラッチの実効的なRD時定数を減じて、コンパレータのラッチモードの間、別の設計によって実現される場合よりも高速の再生につながる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパレータ回路に関する。より詳しくは、本発明は、RC時定数を最小とするとともに高速に再生を行なうための共鳴トンネルダイオードを有する高速アナログ電圧コンパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
クロックトラッチコンパレータを実現する一般的な先行技術においては、クロック信号によって、コンパレータをサンプルモードとラッチモードとの間で切り替えることである。サンプルモードでは、コンパレータは、比較的低い増幅率を有し、出力は信号入力に追従する。このコンパレータがラッチモードへと切り替えられるとき、正のフィードバックが有効とされて、任意の小さな信号が再生され、ラッチが最大の出力振幅へと駆動される。これにより、信号が後段の論理によって正確に決定される。
【0003】
図1および図2は、Albert E. Cosand (米国特許第6,597,303号明細書)によって提案された、再生のためにトランジスタと抵抗を用いるコンパレータ回路を示している。より高速に再生を行なうことが望ましいのだが、図1および図2のコンパレータ回路の再生時間は、抵抗(抵抗および寄生抵抗を含むR)とトランジスタの寄生容量(C)とによって決定されるRC時定数によって制限される。単位が秒のRC時定数の値は、単位がオームの回路抵抗と単位がファラドの回路容量によって、数学的にt=RCによって表現されるものと等しい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
アナログ電圧コンパレータは、クロス接続された再生ラッチ回路の抵抗と直列な共鳴トンネルダイオードを有する。共鳴トンネルダイオードは、負の抵抗を有し、この負の抵抗は、事実上、RC回路遅延の抵抗成分を、幾らか打ち消す。
【0005】
一実施形態では、クロス接続された再生ラッチ回路は、第1、第2トンネルダイオード/抵抗ペアを含んでいる。このクロス接続された再生ラッチ回路は、第1、第2バイポーラトランジスタを含んでいる。(a)この第1バイポーラトランジスタのコレクタおよび第2バイポーラトランジスタのベースは、第1トンネルダイオード/抵抗ペアと接続されている。(b)第2バイポーラトランジスタのコレクタおよび第1バイポーラトランジスタのベースは、第2トンネルダイオード/抵抗ペアのベースと接続されている。(c)第1バイポーラトランジスタのエミッタは、第2バイポーラトランジスタのエミッタと接続されている。
【0006】
別の実施形態では、バイポーラトランジスタは、nチャネル金属酸化物電界効果型(NMOS−FET)トランジスタによって置換されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1および図2は、米国特許第6,597,303号明細書の従来技術のコンパレータ回路を示している。
【0008】
図1の従来技術のコンパレータにおいて、基本再生ループ、すなわちラッチ回路は、クロス接続されたトランジスタQ101、Q102、および抵抗R101、R102を含んでいる。
【0009】
サンプルモードの間、入力信号IN、INXは、トランジスタQ103、Q104のベースにそれぞれ入力される。出力信号OUT、OUTXは、コレクタQ103、Q104からそれぞれ取り出される。Q103、Q104のベースでの入力電圧の差は、抵抗R101、R102へと繋がってサンプルモードからラッチモードへの移行の際のラッチ回路の初期入力電圧となる。サンプルモードの間、電流源Is101からの電流はスイッチトランジスタQ105および縮退(degenerate)抵抗R105、R106を通り、入力から出力への電圧増幅が得られる。サンプルモードからラッチ(再生)モードへの移行は、クロック入力CLK、CLKXが切り替えられたときに起こり、電流の流れをラッチイネーブルトランジスタQ106を通ってクロス接続されたトランジスタQ101、Q102へと変えて、これにより正のフィードバック(再生)が可能となる。
【0010】
従来技術の図2のコンパレータでは、基本再生ループ、すなわちラッチ回路は、クロス接続されたトランジスタQ201、Q202、抵抗R201、R202を含んでいる。
【0011】
サンプルモードの間、入力信号IN、INXは、トランジスタQ203、Q204のベースにそれぞれ入力される。出力信号OUT、OUTXは、コレクタQ203、Q204からそれぞれ取り出される。Q203、Q204のベースでの入力電圧の差は、抵抗R201、R202へと繋がってサンプルモードからラッチモードへの移行の際のラッチ回路の初期入力電圧となる。サンプルモードの間、電流源Is201からの電流はスイッチトランジスタQ205および縮退抵抗R205、R206を通り、入力から出力への電圧増幅が得られる。サンプルモードからラッチ(再生)モードへの移行は、クロック入力CLK、CLKXが切り替えられたときに起こり、電流の流れをラッチイネーブルトランジスタQ206を通ってクロス接続されたトランジスタQ201、Q202へと変えて、これにより正のフィードバック(再生)が可能となる。
【0012】
図1および図2のコンパレータ回路において、正のフィードバックが有効になっているときの再生レートは、クロス接続されたトランジスタ(Q101とQ102、またはQ201とQ202)のコレクタ端子間の電圧差の比率により決定される。この比率は、引き下げ用電流源(Is101またはIs201)およびクロス接続されたトランジスタ(Q101とQ102、またはQ201とQ202)を駆動するための引き上げ用抵抗(R101とR102、またはR201とR202)により制限されるバイアス電流と、Q103およびQ104またはQ203およびQ204のコレクタ端子での総容量と、を含む要素によって決定される。
【0013】
したがって、再生速度は、事実上、抵抗R101およびR102、またはR201およびR202と、クロス接続されたトランジスタ(Q101とQ102、またはQ201とQ202)の寄生容量と、による実効的なRC時定数によって制限される。
【0014】
図3は、本明細書の一実施形態に係る、共鳴トンネルダイオードを有するコンパレータを示している。
【0015】
再生ループ、すなわちクロス接続された再生ラッチは、バイポーラ接合トランジスタ(BJT)Q301、Q302と、抵抗R301、R302に直列に挿入された共鳴トンネルダイオードRTD301、RTD302と、を含んでいる。第1共鳴トンネルダイオードRTD301のアノードは、抵抗R301の一端と接続されている。第2共鳴トンネルダイオードRTD302のアノードは、抵抗R302の一端と接続されている。
【0016】
入力信号IN、INXは、トランジスタQ303、Q304のベースにそれぞれ入力されている。出力信号OUT、OUTXは、Q303、Q304のコレクタからそれぞれ取り出される。バイアス電圧源VS301は、Q301のベースおよび第2共鳴トンネルダイオードRTD302のカソードと接続されている。同様に、バイアス電圧源VS302は、Q302のベースおよび第1共鳴トンネルダイオードRTD301のカソードと接続されている。電圧源VS301、VS302は、クロス接続された再生ラッチトランジスタQ301、Q302にバイアスを与える。
【0017】
サンプルモードの間、Q303、Q304のベースの入力電圧の差は、抵抗R301、R302へと繋がってクロス接続されたラッチトランジスタQ301、Q302の初期電圧となる。電流源Is301からの電流はスイッチトランジスタQ305と、抵抗R305、R306とを、通って回路電圧を適切なレベルに維持する。サンプルモードからラッチ(再生)モードへの移行は、クロックCLK、CLKXが切り替わったときに起こり、電流の流れをラッチイネーブルトランジスタQ306へ、クロス接続されたトランジスタQ305、Q306へと変えて、これにより正のフィードバックが可能となる。
【0018】
上記したように、トンネルダイオードRTD301、RTD302は、抵抗R301、R302と直列になっている。トンネルダイオードは、共鳴トンネリングを利用して、フォワードバイアス特性を提供する。小さなフォワードバイアス電圧が、トンネルダイオードの両端に印加されると、トンネルダイオードは電流を流し始める。フォワードバイアス電圧が増加すると、電流は、増加して、ピーク電流(Ip)と呼ばれるピーク値に達する。フォワードバイアス電圧がもう少し増加すると、電流は、バレー(谷)電流(Iv)と呼ばれる低い点に達するまで減少する。フォワードバイアス電圧がさらに増加すると、電流は再び増加を始めて、このときは別の「バレー」へと減少しない。トンネルダイオードをIp、Ivへと駆動するのに必要なフォワード電圧は、ピーク電圧(Vp)、バレー電圧(Vv)として、それぞれ知られている。印加電圧が増加している間に電流が減少する領域(水平軸においてVpとVvとの間)は、負抵抗領域として知られている。RTD301、RTD302の負抵抗は、抵抗R301、R302のRを事実上減少させることによって再生時定数RCを減少させ、これによって図1および図2中のコンパレータよりも高速に再生を行なえる。
【0019】
図3のコンパレータは、デルタシグマアナログデジタルコンバータ(ADC)に適用することができる。デルタシグマADCは、フィードバックループ内に設けられて信号帯域外の量子化雑音を除去するためのアナログループフィルタを伴った低解像度ADC(通常はコンパレータ)を用いている。1ビットADC(コンパレータ)は超線形特性を有するので、このタイプのADCは、信号帯域において非常に高い線形性および解像度を達成できる。通常、デルタシグマADCのサンプリングレートは1ビットADC(コンパレータ)の速度によって制限される。インジウムリンへテロ接合バイポーラトランジスタ(InP HBT)技術を用いて実現された図3のRTDコンパレータを用いると、40GHzのサンプリングレートを実現できる。
【0020】
このコンパレータは、連続近似およびフラッシュコンバータを含む他のタイプの高速ADCにも適用できる。
【0021】
図4は、他の実施形態に係る、共鳴トンネルダイオードを有し、コンパレータの各側用の分離サンプルモードスイッチトランジスタQ405、Q407を有するコンパレータを示している。
【0022】
再生ループ、すなわちクロス接続された再生ラッチは、トランジスタQ401、Q402、および抵抗401、402に直列に挿入された共鳴トンネルダイオードRTD401、RTD402を含んでいる。第1共鳴トンネルダイオードRTD401のアノードは、抵抗R401の一端と接続されている。第2共鳴トンネルダイオードRTD402のアノードは、抵抗R402の一端と接続されている。
【0023】
入力信号IN、INXは、トランジスタQ403、Q404のベースに、それぞれ入力されている。出力信号OUT、OUTXは、Q403、Q404のコレクタから、それぞれ取り出される。バイアス電圧源VS401は、Q401のベースおよび第2共鳴トンネルダイオードRTD402のカソードと接続されている。同様に、バイアス電圧源VS402は、Q402のベースおよび第1共鳴トンネルダイオードRTD401のカソードと接続されている。電圧源VS401、VS402は、クロス接続された再生ラッチトランジスタQ401、Q402をバイアスする。
【0024】
サンプルモードの間、Q403、Q404のベースでの入力電圧の差は、抵抗R401、R402と繋がって、クロス接続された再生ラッチトランジスタQ401、402の初期電圧となる。電流源Is401からの電流は、スイッチトランジスタQ405、Q407を通ってQ403、Q404に至り、エミッタフォロワとして振舞う。サンプルモードからラッチ(再生)モードへの移行は、クロック入力CLK、CLKXが切り替わったときに起こり、電流の流れラッチイネーブルトランジスタQ406を通ってクロス接続されたトランジスタQ401、Q402へと変えて、これにより正のフィードバックが可能となる。
【0025】
図4の実施形態は、ラッチトランジスタでの初期電圧の差がより大きいという点で、図3の実施形態よりも有利である。図4の実施形態によって、このコンパレータは、より高速の再生レートを有し、より高速な反応を行なう。
【0026】
図5は、アナログコンパレータの別の実施形態を示している。第1共鳴トンネルダイオードRTD501のカソードは、抵抗R501の一端と接続されている。第2共鳴トンネルダイオードRTD502のカソードは、抵抗R502の第1端と接続されている。抵抗R505は、Q503のエミッタと接続されている。抵抗R506は、Q504のエミッタと接続されている。抵抗R505、R506は、Q503、Q504のエミッタをサンプルモードスイッチQ505と接続する。
【0027】
サンプルモードにおいて、電流源Is501からの電流は、トランジスタQ505を通るように誘導され、抵抗R505、R506によって、それぞれQ503、Q504のエミッタに向けて分流される。Q503、Q504のベースでの入力電圧の差は、ラッチトランジスタQ501、Q502のコレクタへと接続される。
【0028】
ラッチモードにおいて、電流源Is501からの電流は、トランジスタQ506を通って、クロス接続されたラッチトランジスタQ501、Q502へと誘導される。ラッチトランジスタQ501、Q502は、信号を決定する。そして、ラッチトランジスタQ501、Q502からの情報は、ここではカスコードアンプとして動作するQ503、Q504によって増幅され、出力負荷R503、R504、および出力端子OUT、OUTXへと流れる。
【0029】
図6は、(図3のRTD302のような)RTDダイオードのIV曲線を示している。曲線(I)は、理想の曲線である。曲線(II)は、測定された曲線である。RTDダイオードは、0.3V乃至0.7Vの間で負の抵抗を示す。図3乃至図5、図7、図9のコンパレータは、この領域における負の抵抗を用いて、関連する時定数を減少させる。
【0030】
図7は、コンパレータの別の実施形態を示している。図7において、入力信号IN、INXの間の差は、サンプルモードの間、差動ペアQ705、Q706によって増幅され、トランジスタQ703、Q704を介してラッチトランジスタQ701、Q702と接続されている。
【0031】
ラッチ回路は、クロス接続されたラッチトランジスタQ701、Q702を含み、Q701、Q702が飽和することを回避するためのエミッタフォロワバイアストランジスタQ711、Q712を有している。また、サンプルモード電流誘導トランジスタQ707、Q713およびラッチモード電流誘導トランジスタQ708も含まれている。
【0032】
CLK、CLKX間の電圧の差は、「クロック電圧」である。クロック電圧は、コンパレータが入力IN、INXでの電圧差をセンスするのか(サンプルモード)、正のフィードバックを有効にしてコンパレータが出力において最大の論理値の振幅を再生するのか(ラッチモード)、を制御する。
【0033】
クロック電圧がハイのとき、図7のコンパレータは、サンプルモードにある。電流源I2からの電流は、トランジスタQ709を通って入力差動ペアQ705、Q706へと誘導される。電流源I1からの電流は、サンプルモード電流誘導トランジスタQ707、Q713を通ってQ703、Q704へと誘導される。
【0034】
電流源I3は、エミッタフォロワQ711をバイアスするために用いられる。電流源I4は、エミッタフォロワQ712をバイアスするために用いられる。サンプルモードでは、IN、INX間の入力電圧は、差動増幅器Q705−Q706+R707−R708によって増幅され、増幅された信号は、Q703、Q740のベースに印加される。増幅された、Q703、Q704のベースでの信号電圧の差は、これらのトランジスタのエミッタで近い形で複製される。この増幅された信号は、そして、ラッチトランジスタQ701、Q702のコレクタに現れる。
【0035】
クロック電圧がローに切り替えられると、図7のコンパレータは、ラッチ状態(すなわち再生モード)にあり、電流源I2、I1からの電流は、トランジスタQ708、Q710を通ってQ701、Q702のエミッタに共通のノードへと誘導される。これによって、クロス接続された再生ラッチトランジスタQ701、Q702が動作してQ701、Q702のコレクタ間の電圧差が、ほぼ全ての電流がトランジスタQ701、Q702の一方を介してカスコードトランジスタQ703、Q704へ、そしてOUT、OUTXでの出力負荷へと流れる状態になるまで、再生を伴って増幅される。
【0036】
図7のコンパレータの再生レートは、トランジスタQ701、Q702、Q711、Q712の寄生容量からなる実効的なRC時定数と、抵抗R701、R702の抵抗によって制限される。しかしながら、RTDダイオードRTD701、RTD702が、抵抗R701、R702と直列になっているので、これらの負抵抗がR701、R702の実効的RC時定数を減少させ、より速い再生時間へとつながる。
【0037】
図7の実施形態においては、入力信号は、クロック信号がローのときQ703、Q704のベースから分離されるので、入力電圧の変化は、ラッチの状態を邪魔しない。各VEEは、クロス接続された再生ラッチに対して負の電源を供給する。
【0038】
図8は、本明細書のコンパレータの別の実施形態を示している。図8の回路は、図3乃至図5の回路と、バイポーラトランジスタに代えて電界効果型トランジスタを用いていることを除いて同じ機能を実行する。図8において、再生ループ、すなわちクロス接続された再生ラッチは、トランジスタM1、M2、および共鳴トンネルダイオードRTD801、RTD802を具備する。入力信号IN、INXは、トランジスタM3、M4のゲートにそれぞれ入力される。出力信号OUT、OUTXは、M3、M4のドレインから、それぞれ取り出される。電圧源VS801はM1のゲートおよびRTD802と接続される。電圧源VS802はM2のゲートおよびRTD801と接続される。電圧源VS801、VS802は、図8のクロス接続された再生ラッチをバイアスする。M3、M4のゲートでの入力電圧の差は、トンネルダイオードRTD801、RTD802に繋がって、ラッチモードへの移行の際のクロス接続された再生ラッチの初期入力電圧となる。ラッチモードへの移行の際、トンネルダイオードRTD801、RTD802は、トランジスタM3、M4の寄生抵抗を、事実上、減少させて、弱い差動信号を高速に決定することが可能となる。トランジスタM5、M7は、M3、M4に電流を供給するために動作する。M3、M4は、サンプルモードでソースフォロワとして動作する。トランジスタM5、M7がオフすると、M6は、ラッチモード中、M1、M2のクロス接続されたラッチを有効にする。
【0039】
各トランジスタM1、M2、M3、M4、M5、M6、M7は、nチャネル電界効果型トランジスタ(FET)である。VDDは、回路に対して正の電源を供給する。
【0040】
図9は、本明細書のコンパレータの別の実施形態を示している。図9の回路は、接合電界効果型トランジスタを用いて、図3乃至図5の回路と同様の機能を実行する。図9において、再生ループ、すなわちクロス接続された再生ラッチは、トランジスタM901、M902、および共鳴トンネルダイオードRTD901、902を具備する。入力信号IN、INXは、トランジスタM903、M904のゲートへと、それぞれ入力される。出力信号OUT、OUTXは、M903、M904のドレインから、それぞれ取り出される。電圧源VS901は、M901のゲートおよびRTD902と接続される。電圧源VS902は、M902のゲートおよびRTD901と接続される。電圧源VS901、VS902は、図9のクロス接続された再生ラッチをバイアスする。M903、M904のゲートでの入力電圧の差は、ダイオードRTD901、RTD902へと繋がって、ラッチモードへの移行の際のクロス接続された再生ラッチの初期入力電圧となる。ラッチモードへの移行の際、トンネルダイオードRTD901、RTD902は、トランジスタM903、M904の寄生抵抗を、事実上、減少させて、弱い差動信号を高速に決定することが可能となる。トランジスタM905、M907は、電流をM903、M904に供給する。M903、M904は、サンプルモードにおいてソースフォロワとして動作する。トランジスタM905、M907がオフすると、M906は、ラッチモードにおいてM901、M902のクロス接続された再生ラッチを有効にする。
【0041】
各トランジスタM901、M902、M903、M904、M905、M906、M907は、nチャネル接合電界効果型トランジスタ(JFET)である。VDDは、回路に正の電源を供給する。
【0042】
本書類の目的のために、トランジスタの「制御端子」は、バイポーラトランジスタのベース、または電界効果型トランジスタのゲートを含んでいる
図3乃至図5、図7乃至図9に係る実施形態は、バイポーラ接合トランジスタ、nチャネル金属酸化物半導体(NMOS)FET、nチャネルJFETの観点から説明された。当業者は、同等の回路が、PNPトランジスタで、インジウムリンを除くシリコン、シリコンゲルマニウム、ガリウム砒素などの半導体材料内に作製された共鳴トンネルダイオードおよびNPNまたはPNPバイポーラトランジスタまたはヘテロ接合バイポーラトランジスタで、何れかの極性のFETまたはJFETで、またはこれらの装置のタイプの組み合わせで、実現し得ることを理解するであろう。同様に、同等な回路がガリウム砒素金属半導体電界効果型トランジスタ(MESFET)技術で実現されてもよい。
【0043】
当業者は、間に何も接続することなく直列になっている抵抗およびトンネルダイオードを有する、図5に示すようなトポロジーにおいて、トンネルダイオードおよび抵抗は、回路機能を損なうことなく交換されてもよいことを理解するであろう。
【0044】
上記の記載において、これらの記載の範疇から逸脱することなく、変更が行なわれてもよい。よって、上記の記載に含まれているまたは添付の図面に示されている事項は、例示的なものであって限定的な観点から解釈されるべきでないことに留意されたい。特許請求の範囲は、本明細書に記載されている包括的および具体的な特徴を全て網羅することが意図されており、文言によっては方法およびシステムの範囲の中間に位置すると言える、方法およびシステムの範囲の言及も、全て含まれることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】コンパレータ回路の先行技術を示している。
【図2】コンパレータ回路の別の先行技術を示している。
【図3】一実施形態に係る、共鳴トンネルダイオードを有するコンパレータの省略された回路図を示している。
【図4】別の実施形態に係る、共鳴トンネルダイオードを有するコンパレータの省略された回路図を示している。
【図5】さらに別の実施形態に係る、共鳴トンネルダイオードを有するコンパレータの省略された回路図を示している。
【図6】共鳴トンネルダイオードの負抵抗を示す、電流対電圧のプロットである。
【図7】差動プリアンプを有する一実施形態に係る、共鳴トンネルダイオードを有するコンパレータの省略された回路図を示している。
【図8】絶縁ゲート電界効果型トランジスタを有する一実施形態に係る、共鳴トンネルダイオードを有するコンパレータの省略された回路図を示している。
【図9】接合電界効果型トランジスタを有する一実施形態に係る、共鳴トンネルダイオードを有するコンパレータの省略された回路図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1トランジスタ(Q301)および第2トランジスタ(Q302)と、
第1抵抗(R301)と直列で、第1抵抗ダイオードペアを形成する第1共鳴トンネルダイオード(RTD301)と、
第2抵抗(R302)と直列で、第2抵抗ダイオードペアを形成する第2共鳴トンネルダイオード(RTD302)と、
を具備し、
前記第1、第2トランジスタは、ラッチとしてクロス接続されており、
前記第1抵抗ダイオードペアは、前記第1トランジスタ(Q301)に対する負荷として接続されており、
前記第2抵抗ダイオードペアは、前記第2トランジスタ(Q302)に対する負荷として接続されている、
アナログ電圧コンパレータ。
【請求項2】
第3(Q303)、第4(Q304)トランジスタをさらに具備し、
前記第3トランジスタ(R303)は、フォロワとして接続されて、サンプリングモード中、信号を前記第1トランジスタ(Q301)へと通し、ラッチモード中、カスコード増幅器として信号を出力に接続し、
前記第4トランジスタ(Q304)は、フォロワとして接続されて、サンプリングモード中、第2信号を前記第3トランジスタ(Q303)へと通し、ラッチモード中、カスコード増幅器として信号を出力に接続する、
請求項1のコンパレータ。
【請求項3】
サンプルモードとラッチモードとを有し、第1コンパレータ入力と、第2コンパレータ入力と、第1コンパレータ出力と、第2コンパレータ出力とを有するコンパレータであって、
ラッチモードの間、前記第1コンパレータ入力と前記第2コンパレータ入力との間の差を示す差動信号を再生するためのクロス接続された再生ラッチを具備し、
前記クロス接続された再生ラッチは、
第1(R301.R401、R501)、第2(R302、R402、R502)抵抗と、
前記第1抵抗と直列に接続されて第1抵抗ダイオードペアを形成する第1共鳴トンネルダイオード(RTD301、RTD401、RTD501)、および前記第2抵抗と直列に接続されて第2抵抗ダイオードペアを形成する第2共鳴トンネルダイオード(RTD302、RTD402、RTD502)と、
第1(Q301、Q401、Q501)、第2(Q302、Q402、Q502)トランジスタであって、前記第1トランジスタのコレクタおよび前記第2トランジスタのベースは前記第1抵抗ダイオードペアの第1端子と接続され、前記第2トランジスタのコレクタおよび前記第1トランジスタのベースは前記第2抵抗ダイオードペアの第1端子と接続され、前記第1トランジスタのエミッタは前記第2トランジスタのエミッタと接続される、第1、第2トランジスタと、
前記第1抵抗ダイオードペアの第2端子と接続された第3トランジスタ(Q303、Q403、Q503)と、
前記第2抵抗ダイオードペアの第2端子と接続された第4トランジスタ(Q304、Q404、Q504)と、
前記コンパレータを前記サンプルモードと前記ラッチモードとの間で切り替えるための電流切り替え回路(Q305、Q306)と、
を具備し、前記第3、第4トランジスタは、前記サンプルモードの間、前記差動信号を前記ラッチへと接続し、前記ラッチモードの間、ラッチ状態を前記出力に接続するためのカスコード増幅器として動作可能である、
コンパレータ。
【請求項4】
前記第1抵抗ダイオードペアの端子は前記第3トランジスタ(Q303、Q403、Q503)と接続され、前記第2抵抗ダイオードペアの端子は前記第4トランジスタと接続されている、請求項3のコンパレータ。
【請求項5】
前記電流切り替え回路(Q305、Q306)と接続された第1電流生成器(Is301)をさらに具備し、前記電流切り替え回路は、前記ラッチモードの間、電流を前記第1電流生成器から前記再生ラッチへと誘導する、請求項3のコンパレータ。
【請求項6】
前記電流切り替え回路は、サンプルモードの間、電流を前記第1電流生成器から前記第3、第4バイポーラトランジスタへと誘導して前記第3、第4トランジスタをバイアスする、請求項5のコンパレータ。
【請求項7】
前記第3、第4トランジスタと接続され、前記ラッチモードの間に前記第1、第2入力信号を受け取るとともに前記第1、第2入力信号を前記再生ラッチから分離する入力バッファをさらに具備する、請求項5のコンパレータ。
【請求項8】
それぞれが第1端子、第2端子、制御端子を有する第1(Q401)、第2(Q402)、第3(Q403)、第4(Q404)、第5(Q405)、第6(Q406)、第7トランジスタ(Q407)と、
電流源(Is401)と、
直列なトンネルダイオードおよび抵抗を各々が具備する第1、第2抵抗ダイオードペアと、
を具備し、
前記第1トランジスタの前記第1端子は前記第2トランジスタの前記制御端子と接続され、前記第2トランジスタの前記第1端子は前記第1トランジスタの前記制御端子と接続され、前記第2トランジスタの前記第2端子は前記第1トランジスタの前記第2端子と接続され、
前記第1抵抗ダイオードペアの第1端子は前記第1トランジスタの前記第1端子と接続され、前記第2抵抗ダイオードペアの第1端子は前記第2トランジスタの前記第1端子と接続され、
前記第1抵抗ダイオードペアの第2端子は前記第5トランジスタの前記第2端子と接続され、前記第2抵抗ダイオードペアの第2端子は前記第6トランジスタの前記第2端子と接続され、
前記電流源は前記第3トランジスタの前記第2端子と接続され、前記第3トランジスタの前記第1端子は前記第1、第2トランジスタの前記第2端子と接続され、前記電流源は前記第4トランジスタの前記第2端子および前記第7トランジスタの前記第2端子と接続され、
前記第4トランジスタの前記第1端子は、サンプルモードの間、前記第5トランジスタの前記第2端子にバイアス電流を供給するために接続される、
コンパレータ。
【請求項9】
前記第7トランジスタの前記第1端子は、サンプルモードの間、前記第6トランジスタの前記第2端子にバイアス電流を供給するために接続されて、請求項8のコンパレータ。
【請求項10】
前記第7トランジスタの前記第1端子は前記第6トランジスタの前記第2端子にバイアス電流を供給するために接続され、前記第7トランジスタの前記第2端子は前記第4トランジスタの前記第2端子と接続され、前記第7トランジスタの前記制御端子は前記第4トランジスタの前記制御端子と接続される、請求項8のコンパレータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−537457(P2008−537457A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529001(P2008−529001)
【出願日】平成18年2月17日(2006.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/005764
【国際公開番号】WO2007/030134
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(390039147)レイセオン・カンパニー (149)
【氏名又は名称原語表記】Raytheon Company
【Fターム(参考)】