説明

内因性のメラトニンバランスに影響を与えるための低圧ガス放電ランプ

本発明は、その赤色スペクトル領域の光が、メラトニン分泌を調節することにより生物学的概日リズムに影響を与える、低圧ガス放電ランプに関する。二重らせんの形状でもあり得る、チューブ状のガラス放電容器は、希ガスまたは希ガス混合物および水銀により満たされている。エネルギーを供給するための電極が、放電容器の両端に配置される。放電容器の内側は、蛍光体層が順々に適用されることにより多重被覆される。ガラス表面に位置する第一蛍光体層は、180〜400nmの紫外線水銀放射および水銀放電により発光される400〜490nmの青色放射、ならびに、第二またはそれ以上の蛍光体層により発光される400〜550nmの可視放射の両方により励起される蛍光体から成り、500〜650nmの領域において発光の最大を有する可視光が生成される。メラトニン抑制のための光源と組み合わせることで、温色光を具備する低圧ガス放電ランプは、太陽光のような外的な状況の不在における個体の疑似概日リズムのシミュレーションに特に適している。その良好な色再現性および高いエネルギー効率のため、照明課題の光源に必要なすべての要求に見合い、従って一般的な照明にも適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内因性のメラトニンバランスに影響を与えるための、好ましくは生物学的/医学的アプリケーションに適した、低圧ガス放電ランプ(low-pressure gas-discharge lamp)に関する。その目的は、生物学的概日リズムに、特に本発明の光源を利用してメラトニン分泌を調節することにより、影響を与えることにある。
【背景技術】
【0002】
事実上すべての人的プロセスは、生物学的活動機能に左右されることは、医学的に知られている。これらの内の1つは、メラトニン分泌に影響を与える概日活動機能である。メラトニンは、セロトニンから生成される睡眠ホルモンであって、間脳の一部である松果腺(松果体)内の松果体細胞により排出され、人体の昼/夜リズムを調節する。化学用語では、それはトリプタミン構造を有するアルカロイドである。
Morita, Tekeshi and Tokura: The influence of different wavelengths of light on human biological rhythms, in Appl Human Sci, 17 (3): 91-96, 1998,には、光の質と人体の生体リズムとの関係が説明されている。それには、中核体温の挙動およびメラトニン分泌の変化が、光波長に応じて変化することが実証されている。低い色温度を有する赤色光のような長波長を有する光は、人体の生体リズムに影響が無い一方、対照的に中〜短波長および高い色温度を有する緑色光および青色光は、大きな影響を示している。
【0003】
人体の目の光受容体の興奮状態と中核体温およびメラトニンの抑止との関係から、光受容体が、光信号を受けた後に、メラトニン分泌の活動を利用して生体リズムを決定するということが結論付けられている。メラトニン分泌の抑止を開始するためには、夜よりも朝の方が、より高い光強度が要求されることが観測された。1日を通した人体の生体リズムへの影響は、メラトニン分泌のための信号を受ける目の光受容体に起因する。
住居および職場環境は、夕方や夜間には低色温度を有する光により、そして早朝から夕方までは高色温度を有する光により照らされている。
【0004】
400〜500nmの波長および450nmの極大波長を有する光は、メラトニン抑制を増加することができ、ならびに個体の実行能力および福利を増加することができる。光が暗闇で消失した場合、メラトニンの抑制は下がり、排出されたメラトニンは睡眠段階(sleep phase)を開始する。
青色波長域の光の影響に起因するメラトニン抑制と福利との相関関係が知られるようになった後、青色の含有率が増加された一般的な照明のための低圧ガス放電ランプが開発された。一般的な照明において、色温度は様々な光を識別するために度々利用される。青色の含有率の増加は、従って必然的にランプがより高い色温度を有するという結果をもたらす。
【0005】
EP1735405A1には、低圧ガス放電ランプが開示され、その蛍光体は、赤色波長域の光を発光するユーロピウムがドープされたイットリウム蛍光体、緑色波長域の光を発光するセリウムおよびテルビウムがドープされたリン酸ランタン蛍光体、青色波長域の光を発光するユーロピウムがドープされたアルミン酸バリウムマグネシウム蛍光体、ならびに、青色波長域の光を発光するユーロピウムがドープされたアルミン酸マンガンストロンチウムバリウムマグネシウム蛍光体で構成される。
前記低圧ガス放電ランプは、一般的な照明のためのすべての要求を満たし、好ましくは、8000Kの色温度を実現する。最大で20000Kの色温度を有するランプが想定されることがさらに記載されている。この開発方向は、概日リズムに影響を与え、メラトニンの抑制を増加させ、それ故に人体の健康と実行能力を増加させるために、一般的な照明において低圧ガス放電ランプを利用して青色の含有率を増加させるという観点に従っている。
【0006】
概日リズムに影響を与える光の他の用途がDE10 2005 059 518 A1に示されおり、哺乳動物の乳中のメラトニン含有率を増加させることが開示されている。概日リズムにしたがって、哺乳動物のメラトニンの分泌もまた夜間に最大になる。暗闇において動物から搾乳することは難しいため、引用発明においてはナトリウム蒸気ランプまたは好ましくは赤色発光LEDランプが、青色が存在しないことを確実にする光源として利用される。この種類の狭帯域のランプを利用する不利益は、看視作業(visual tasks)に重要な、良好な色再現性の欠如にある。
US 20050179392 A1には、同様にメラトニン分泌に影響を与えることを目的とする低圧ガス放電ランプが開示されている。それは、不活性ガス混合物および水銀が備えられた放電容器を有する。この放電容器は、お互いに対称に配置され、お互いに接続された、2つの放電チャンバーを含む。第一および第二の放電チャンバーには、それぞれ電極および発光層が取り付けられる。第一放電チャンバーの蛍光体は、100〜1000nmの電磁スペクトルの第一領域の光を発光し、第二放電チャンバーの蛍光体は、100〜1000nmの電磁スペクトルの第二領域の光を発光し、ここで2つの蛍光体の発光スペクトルは異なる。低圧ガス放電ランプは、直流電流供給を受けるための2つの電流導体を放電チャンバー毎に含む。
【0007】
ランプは様々な色温度を有し、人体の生体リズムに影響を与える。生成される光電流レベルは、温度とは無関係である。ランプは、好ましくは交代制の仕事のため、病院の救急室において、などに用いられる。
EP 1886708 A1 には、メラトニン保護用の働きを有する照明アセンブリが開示されている。前記照明アセンブリは、3つの蛍光体ランプを利用して活性化され、異なる分光組成または色温度で光を生成することが可能であり、活性時には、生成される光の分光組成は、事前設定された時間計画に応じて自由に選択可能である。所定の期間、特に夜間において、メラトニン光は夜間における個体のホルモンメラトニンの排出を少なくとも実質的に抑止しないような分光組成および強度で生成される。
【0008】
メラトニン光の分光組成に関し、480〜600nm、好ましくは約500〜560nmである、波長しきい値を下回る青色スペクトルの一部、または、例えば1500Kよりも低い色温度を有するメラトニン光が提供される。このように、夜間での人工的な光の場合に、個体がこの光に暴露されることによる自然なメラトニン分泌が好ましくない方法で抑止されることを防ぐ。
Christoph Schierz: Der Mensch im farbigen Licht [People in Coloured Light], in Licht 2006: 17th Light Community Congress of the Swiss Light Society and the Light Societies of Germany, Austria and the Netherlands, 10 to 13 Sept. 2006, Bernによれば、輝度感度に対するメラトニン抑制の分光感度の関数V(λ)は、スペクトルの青色が現れる領域へシフトされるようである。同様の分光感度はまた、経時的な体内時計の安定化、ならびに覚醒の主観的および生理的な度合いの増加に適用されるに違いないことが示されている。この点において、光および色の生物学的効果に関する最新の科学的な知識によれば、青色は促進化および活性化を行い、赤色にはその効果は無いか、抑制効果すら有する。
従来技術においては、概日リズムの知識は比較的高い色温度、ならびに看視作業の安全防護対策およびエネルギー効率における現行の規則の順守を同時に満たす、比較的高い青色の含有率を有する、低圧ガス放電ランプの発展のみをもたらしたことを示している。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、特にメラトニン分泌により概日リズムが影響を受けるような光源を提供することにある。メラトニン抑制のための光源と共に、光源は、日光などの外部状況の不在における疑似概日リズムの刺激に特に適しているべきである。同時に、低圧ガス放電ランプは、良好な色再現性および高いエネルギー効率を通じた照明課題のための光源に必要なすべての要求に見合うべきであり、従って一般的な照明の利用にも適しているべきである。
本発明による低圧ガス放電ランプは、この種類の光源を使用した看視作業のための現在の要求を同時に満たすべきである。これらは、高い光束、良い色再現性およびエネルギー効率における現行の規則の順守を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明による低圧ガス放電ランプの概略図である。
【図2】図2は、本発明によるLT18W低圧ガス放電ランプの概日活動関数c(λ)およびスペクトル輝度感度曲線V(λ)である。
【図3】図3は、温白色の安らかな光の色を有する、既知の3波長LT18W低圧ガス放電ランプのスペクトルである。
【図4】図4は、赤い光の色を有する、既知のLT18W低圧ガス放電ランプのスペクトルである。
【図5】図5は、蛍光体(Ba,Sr,Ca)オルトケイ酸塩:Euを含む、本発明のLT18W低圧ガス放電ランプのスペクトルである。
【図6】図6は、基層として蛍光体YAGを含む、本発明のLT18W低圧ガス放電ランプのスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この目的は、400〜500nmの波長域でのスペクトルエネルギー分布における青色の含有率が非常に低く、メラトニン抑制のためのしきい値より低い、低圧ガス放電ランプを生産することにより実現される。
内因性のメラトニンバランスに影響を与えるための本発明による低圧ガス放電ランプは、既知のガラス管から成る。本発明のガラス放電容器はまた、二重らせんの形状を有していてもよい。放電容器はまた、一緒に接続されるU字型、または接続路を介して一緒に接合された短い管部分からなっていてよい。
【0012】
低圧ガス放電ランプの1つの形態において、放電管は、放電容器の外のり寸法が放電容器の延長された長さの一部分でしかないように、曲げ、変形、溶接、または接合されることにより成形される。既知の方法における低圧ガス放電ランプの放電容器は、希ガスまたは希ガス混合物および水銀により満たされていて、エネルギーの供給のための電極を両端に有する。放電容器の内側は、蛍光体で多重被覆されている。
本発明による低圧ガス放電ランプは、放電容器内側のガラス表面に順々に適用された蛍光体層を有する。ガラス表面に基層として適応される第一蛍光体層は、180〜400nmの紫外線水銀放射および水銀放電により発光される400〜490nmの青色放射、ならびに、第二またはそれ以上の蛍光体層により発光される400〜550nmの可視放射の両方により励起される蛍光体から成り、500〜650nmの領域において発光極大を有する可視光が生成され、最上層の役目を果たす第二またはそれ以上の蛍光体層は、可視光を生成する1つ以上の狭帯域発光蛍光体から成る。
【0013】
ガラス表面に直接適用された第一蛍光体層は、ケイ酸塩またはアルミン酸塩の群からの蛍光体または蛍光体混合物から成り、好ましくはユーロピウムまたはセリウムがドープされる。この蛍光体は、アルカリ土類金属オルトケイ酸塩および/またはアルカリ土類金属オキシオルトケイ酸塩の群に属し、二価ユーロピウムにより付活され、さらにイオンは希土類金属、マンガン、亜鉛およびマグネシウムを含み得る。
Eu付活アルカリ土類金属オルトケイ酸塩を含む蛍光体は、(Ba,Sr,Ca)SiO:Euの化学式で表され、名称はBOSEである。
Eu付活アルカリ土類金属オキシオルトケイ酸塩を含む蛍光体は、(Ba,Sr,Ca)SiO:Euの化学式で表され、名称はSOOSである。
ガーネットの群からのアルミン酸塩蛍光体は、YAl12:Ceの化学式で表され、名称はYAGである。
【0014】
低圧ガス放電ランプの放電容器内側の第一蛍光体層の蛍光体は、500〜650nmのスペクトル領域において発光極大を有する。
第二蛍光体層は、440〜500nmの発光極大で青色/青緑色、および/または、535〜555nmの発光極大で緑色、および/または、605〜650nmの発光極大で赤色を発光する、1つ以上の狭帯域発光蛍光体から成る。
赤色発光蛍光体は、好ましくは酸化イットリウム:Euおよび/またはバナジウム酸イットリウム:Euおよび/またはフルオロゲルマン酸マグネシウム:Mnである。緑色発光蛍光体は、リン酸ランタン:Ce,Tbおよび/またはアルミン酸マグネシウム:Ce,Tbである。青色/青緑色発光蛍光体は、アルミン酸バリウムマグネシウム:Euおよび/またはリン酸ストロンチウムカルシウムバリウム:Euおよび/またはアルミン酸ストロンチウム:Euおよび/またはクロロリン酸ストロンチウム:Euである。
【0015】
混合物内の青色/青緑色発光蛍光体の割合は0〜10%である。本発明を利用し、高い色温度およびそれに応じたメラトニンを抑制する高い青色の含有率を有する、低圧ガス放電ランプと組み合わせることで、睡眠段階に影響を与え、従ってヒトの概日リズム全体を促進することが可能である。
慣用的設計の低圧ガス放電ランプにおいては、可視スペクトル内の青色の含有率は、異なる種類の2つの発光源:蛍光体の発光スペクトルおよび405〜436nmの低圧ガス放電自身の水銀線(mercury lines)の発光に起因する。436nmの輝線は、47.5%で、可視スペクトル内の水銀線のエネルギー分配で最大であり、任意の低圧ガス放電ランプにおいて既知の方法で検出される。
低圧ガス放電ランプを利用したメラトニンの抑制のためには、436nmの水銀輝線は、400〜500nmの領域における発光を有する蛍光体を除外するのに十分ではないことを意味する。
メラトニン抑制のための本発明による低圧ガス放電ランプの目的は、405nmおよび特に436nmの水銀輝線の吸収によってのみ実現され、青色吸収蛍光体を用いて行われる。
【0016】
青色吸収蛍光体は、180〜550nmの励起スペクトルを有し、500〜650nmの領域で発光極大を有する可視光を生成する。
しかしながら、青色吸収蛍光体のスペクトル分布および安定性は、良好な視覚的価値機能(visual-value function)を有する低圧ガス放電ランプの要求を満たすのに十分でない。青色吸収蛍光体から成る第一蛍光体層は、従って、赤色および緑色狭帯域発光蛍光体の混合物を含む第二蛍光体層で被覆されている。可視スペクトルのスペクトル分布における青色の含有の欠如は、色温度が1000K〜3000K、好ましくは2000Kしかないことを意味する。
基層中の青色吸収蛍光体の発光極大の最適化、最上層の蛍光体混合物中の組成、および2つの層の層厚は、本発明の低圧ガス放電ランプに看視作業を達成するために要求される特性を与える。
【実施例】
【0017】
本発明の低圧ガス放電ランプを、実施例を参照してさらに詳しく説明する。
表1は、2つの一般的なLT18W低圧ガス放電ランプと比較した、本発明による2つのLT18W低圧ガス放電ランプの技術的光パラメータ(technical light parameters)を示す。
内因性のメラトニンバランスに影響を与えるための、本発明による低圧ガス放電ランプは、図1によれば、エネルギー供給のための電極を両端に備え、希ガスまたは希ガス混合物および水銀により満たされた直管の形を有しているガラス放電容器1を有する。蛍光体層2を基層とし、その上に最上層として蛍光体層3を、放電容器の内側ガラス表面に順々に適用する。
【0018】
図2は、本発明によるLT18W低圧ガス放電ランプの概日活動関数(circadian action function)c(λ)およびスペクトル輝度感度曲線(spectral brightness sensitivity curve)V(λ)を示す。
温白色の安らかな(warm-white comfort)光の色を有する、既知の3波長LT18W低圧ガス放電ランプのスペクトルが、図3に示される。
赤い光の色を有する、既知のLT18W低圧ガス放電ランプのスペクトルが、図4に示される。
比較のために、図5は、基層の役目を果たし、BSCOSE(F612)として知られる、蛍光体(Ba,Sr,Ca)オルトケイ酸塩:Euを含む、本発明のLT18W低圧ガス放電ランプのスペクトルを示し、図6は、基層として蛍光体YAGを含む、本発明のLT18W低圧ガス放電ランプのスペクトルを示す。
どちらの実施例においても、590mmの標準的な長さおよび18Wのランプ出力を伴う26mmのガラス管直径を有する、LT18W低圧ガス放電ランプが示されている。
【0019】
[例1]
Eu付活アルカリ土類金属オルトケイ酸塩が、LT18W低圧ガス放電ランプの放電容器内の青色吸収蛍光体として用いる。基層は、結合剤(binder)としてヒドロキシエチルセルロース、架橋剤としてジメチロール尿素とともに、青色吸収蛍光体を懸濁液として、ガラスのフラスコの内側にコーティングすることによって生成される。本発明の基層の層厚は、0.2〜2.0mg/cm、好ましくは1.25mg/cmである。
最上層として第二層に利用されるコーティングは、狭帯域赤色発光蛍光体酸化イットリウム:Eu(YOX)および狭帯域緑色発光蛍光体リン酸ランタン:Ce,Tb(LAP)を含む蛍光体混合物と、結合剤としてポリエチレンオキシドとの懸濁液である。蛍光体混合物は、60〜99%の蛍光体YOXおよび1〜40%の蛍光体LAP、好ましくは85%の蛍光体YOXおよび15%の蛍光体LAPから成る。
【0020】
本発明の最上層の層厚は、1.0〜6.0mg/cm、好ましくは3.25mg/cmである。
コーティングされたガラスのフラスコは焼成され、低圧ガス放電ランプのための一般的な製造技術が施される。
BSCOSE蛍光体F612を基層として生産された、LT18W低圧ガス放電ランプは、以下のような技術的光パラメータを有する。
光束: 1341 lm
ランプ出力: 18.0W
色温度: 1995K
色再現性: 81.3.
【0021】
[例2]
LT18W低圧ガス放電ランプのガラスフラスコのコーティングを、蛍光体YAGを基層として行う。最上層のコーティングは、例1と同様にして行われる。
以下のような技術的光パラメータが、この方法により生産されるLT18W低圧ガス放電ランプにより実現される。
光束: 1408 lm
ランプ出力: 18.0W
色温度: 1995K
色再現性: 81.3.
【0022】
光束は、図2に示されるように、スペクトル輝度感度曲線V(λ)にしたがって、最大値波長550nmで評価される。
本発明の低圧ガス放電ランプのメラトニン分泌を特徴づけるために、照射強度および概日活動関数c(λ)、ならびに照射強度およびスペクトル輝度感度曲線V(λ)の積分値の比から計算される概日影響係数(circadian effect factor)が利用される。
表1は、例1および例2からの本発明のLT18W低圧ガス放電ランプと、同じランプ出力の温白色の安らかなおよび赤い光の色の従来の低圧ガス放電ランプとの比較した、概日影響係数を示す。同時に、表1は、互いに比較される4つのLT18W低圧ガス放電ランプの技術的光パラメータを示す。
【表1】

【0023】
温白色の安らかな光の色のLT18W低圧ガス放電ランプは、4つの低圧ガス放電ランプのうち最大の概日影響係数を有する。水銀線を除けば、この低圧ガス放電ランプのスペクトルはまた、図3に示されるように蛍光体発光からの青色の含有を有し、したがって、他の3つの低圧ガス放電ランプと比較して最大の概日係数をもたらす。
図4に示される赤い光の色のLT18W低圧ガス放電ランプは、蛍光体側の蛍光体発光による青色の含有を有しない。この低圧ガス放電ランプの青色の含有は、水銀放電からの可視線の発光によりのみ生じる。低圧ガス放電ランプは、それ故に、温白色の安らかな光の色の低圧ガス放電ランプより低い概日係数を有するが、とても低い色再現指数のため看視作業には不適である。
【0024】
例1および例2からの本発明の低圧ガス放電ランプにおいて、スペクトルは図5および図6に示され、基層における蛍光体の励起が405nmおよび436nmの水銀線を通して起こり、黄色から赤橙色の可視領域での発光が起こる。
例1および例2からの本発明の低圧ガス放電ランプは、看視作業のためにとくに最適である。基層に蛍光体BSCOSE(F612)を有する例1の低圧ガス放電ランプは、黒体上の標準光源にとても近似しているため、低い概日効果を有し、したがってメラトニン分泌を増加させる、蛍光体YAGを含む例2の低圧ガス放電ランプよりも良い視覚機能(visual function)を有する。
メラトニン抑制のための光源と組み合わせることで、温色光を具備する本発明の低圧ガス放電ランプは、太陽光などの外部状況の不在における個体の疑似概日リズムのシミュレーションに特に適している。同時に、低圧ガス放電ランプは、良好な色再現性および高いエネルギー効率を通じた照明課題のための光源に必要なすべての要求に見合い、従って一般的な照明にも適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内因性のメラトニンバランスに影響を与えるための低圧ガス放電ランプであって、内側に蛍光体が多重被覆されたガラスでできた放電管から成り、エネルギー供給のための放電管電極を両端に有し、希ガスまたは希ガス混合物および水銀により満たされており、
180〜400nmの紫外線水銀放射および水銀放電により発光される400〜550nmの可視放射の両方により励起される蛍光体から成る、ガラス表面(1)上に位置する第一蛍光体層(2)、ならびに第二またはそれ以上の蛍光体層(3)が順々に適用されることを特徴とし、500〜650nmの領域において発光極大を有する可視光が生成される、前記低圧ガス放電ランプ。
【請求項2】
内因性のメラトニンバランスに影響を与えるための低圧ガス放電ランプであって、基層の役目を果たす第一蛍光体層の層厚が、0.2〜2.0mg/cm、好ましくは1.25mg/cmであり、最上層の役目を果たす第二蛍光体層の層厚が、1.0〜6.0mg/cm、好ましくは3.25mg/cmであることを特徴とする、前記低圧ガス放電ランプ。
【請求項3】
ガラス表面に直接適用される第一蛍光体層が、ケイ酸塩またはアルミン酸塩の群からの蛍光体または蛍光体混合物から成り、好ましくはユーロピウムまたはセリウムでドープされることを特徴とする、請求項1または2に記載の低圧ガス放電ランプ。
【請求項4】
蛍光体が、アルカリ土類金属オルトケイ酸塩および/またはアルカリ土類金属オキシオルトケイ酸塩の群に属し、二価ユーロピウムにより付活され、イオンが希土類金属、マンガン、亜鉛およびマグネシウムを含み得ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の低圧ガス放電ランプ。
【請求項5】
蛍光体が、(Ba,Sr,Ca)SiO:Eu(BOSE)の化学式を有するEu付活アルカリ土類金属オルトケイ酸塩または(Ba,Sr,Ca)SiO:Eu(SOOS)の化学式を有するEu付活アルカリ土類金属オキシオルトケイ酸塩から成るか、あるいはYAl12:Euの化学式(YAG)を有するガーネットの群からのアルミン酸塩であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の低圧ガス放電ランプ。
【請求項6】
第一蛍光体層内の蛍光体が、560〜620nmのスペクトル領域に発光極大を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の低圧ガス放電ランプ。
【請求項7】
第二蛍光体層が、440〜500nmの発光極大で青色/青緑色、および/または535〜555nmの発光極大で緑色、および/または605〜630nmの発光極大で赤色を発光する、1または2以上の狭帯域発光蛍光体から成ることを特徴とする、請求項1または2に記載の低圧ガス放電ランプ。
【請求項8】
赤色発光蛍光体が、酸化イットリウム:Euおよび/またはバナジウム酸イットリウム:Euおよび/またはフルオロゲルマン酸マグネシウム:Mnであり、緑色発光蛍光体が、リン酸ランタン:Ce,Tbおよび/またはアルミン酸マグネシウム:Ce,Tbであり、青色/青緑色発光蛍光体が、アルミン酸バリウムマグネシウム:Euおよび/またはリン酸ストロンチウムカルシウムバリウム:Euおよび/またはアルミン酸ストロンチウム:Euおよび/またはクロロリン酸ストロンチウム:Euであることを特徴とする、請求項1、2または7に記載の低圧ガス放電ランプ。
【請求項9】
混合物内の青色発光蛍光体の割合が0〜10%であることを特徴とする、請求項1、2、7または8に記載の低圧ガス放電ランプ。
【請求項10】
放電管が、曲げ、変形、溶接、または接合されることにより成形され、放電容器の外のり寸法が放電容器の伸ばされた長さの一部分でしかないことを特徴とする、請求項1に記載の低圧ガス放電ランプ。
【請求項11】
放電容器が、二重らせんの形状、あるいは一緒に接続されるU字型および接続路を介して一緒に接合された短い管部分で形成される、請求項1または10に記載の低圧ガス放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2011−519123(P2011−519123A)
【公表日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503352(P2011−503352)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/001821
【国際公開番号】WO2009/124634
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【出願人】(510267856)ナルヴァ リヒトクヴェレン ゲーエムベーハー+ツェーオー.カーゲー (1)
【Fターム(参考)】