説明

内在化ペプチド連結薬剤と抗炎症剤との共投与

本発明は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を送達させる方法であって、内在化ペプチド誘導性の炎症反応を抗炎症剤の同時投与、又は内在化ペプチドにビオチン又は類似分子を連結することによって阻害する、方法を提供する。このような方法は、実施例で記載される結果を部分的に前提とし、その実施例では、tatに連結された薬理学的薬剤の高用量での投与に続いて直ぐにマスト細胞脱顆粒、ヒスタミン放出、及びヒスタミン放出の典型的な後遺症(発赤、熱、腫脹、及び低血圧)を含む炎症反応が起きる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本願は、2009年6月10日に出願した米国仮特許出願第61/185,943号の優先権を主張する。本願は、2008年11月26日に出願した一部継続出願(米国特許出願番号第12/323,915号)であって、2007年12月5日に出願の米国仮出願番号第60/992,678号の優先権を主張するものであり、その内容全体は参照によって各々が組み込まれる。
【0002】
多くの薬剤は細胞により若しくは細胞を通過して取り込まれるか、及び/又は細胞のオルガネラにより取り込まれて、それらの意図する治療標的に到達する。多くのより大きな分子及びいくつかの小さな分子は、自身の力で細胞膜を通過する能力は限られている。上記細胞膜を通過する能力は、薬理学的薬剤を内在化ペプチド(タンパク質トランスダクションドメイン、又は膜透過ドメインとしても知られている)に連結することにより向上させることができる。これらのペプチドには、tat、アンテナペディアペプチド、及びアルギニンリッチペプチドが含まれる。これらのペプチドは、多くの細胞内及びウイルスタンパク質に存在する短い塩基性ペプチドであり、膜透過を媒介するのに役立つ。これらのペプチドの共通の特徴は非常にカチオン性であることである。このようなペプチドは、オリゴヌクレオチド、ペプチド核酸並びに低分子及びナノ粒子と同様に、多くの様々なペプチド及びタンパク質が細胞中へ取り込まれるのを促進することが報告されている。細胞及びオルガネラへの取り込み、並びに血液脳関門の通過が報告されている。
【0003】
内在化ペプチドの応用の一つとして、tatペプチドをシナプス後肥厚部−95タンパク質(PSD-95)とNMDARとの間の相互作用に対するペプチド阻害剤に連結したことである(Aarts et al., Science 298, 846-850 (2002))。結果として出来上がったキメラペプチドを細胞及び脳卒中の動物モデルにおいてテストした。上記キメラペプチドは、神経細胞に取り込まれて上記動物モデル中の虚血性脳損傷を低減させることがわかった。この結果により、PSD-95/NMDARのペプチド拮抗薬に内在化ペプチドを連結させたものを用いて、脳卒中及び他の疾患(興奮毒性によりもたらされるもの)の治療に使用する提案に至った。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、血管内手術に起因する脳虚血を阻害する方法であって、上記方法は血管内手術を受けている被験体に、脳虚血を阻害するのに効果的な投与計画において、NDMAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を投与することと、上記被験体にマスト細胞脱顆粒阻害剤を投与すること、を含み、上記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、内在化ペプチド誘導性の抗炎症反応を阻害することができる、及び/又は上記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、上記薬理学的薬剤の30分前から15分後までに投与する、方法である。
【0005】
本発明は、内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害するマスト細胞脱顆粒阻害剤と組合せて血管内手術に起因する脳虚血を阻害するために用いられる、NMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を更に提供する。
【0006】
本発明は、NMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤と組合せて、血管内手術に起因する脳虚血を阻害するのに用いられるマスト細胞脱顆粒阻害剤であって、内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害する、マスト細胞脱顆粒阻害剤を更に提供する。
【0007】
任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の15分前から同じ時間マスト細胞脱顆粒阻害剤はまでに投与される。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤と共調製される。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、末梢ルートにより投与される。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤及び薬理学的薬剤は、静脈に投与される。任意に、被験体は疾患のエピソードを患っており、薬理学的薬剤及びマスト細胞脱顆粒阻害剤は疾患のエピソード中に一回投与される。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤の投与は、薬理学的薬剤なしにマスト細胞脱顆粒阻害剤を患者に投与する反復投与計画には適合しない。任意に、内在化ペプチドは、tatペプチドである。任意に、tatペプチドは、RKKRRQRRR(配列番号:51)又はGRKKRRQRRR(配列番号:1)を含むアミノ酸配列を有する。任意に、tatペプチドは、YGRKKRRQRRR(配列番号:2)又はFGRKKRRQRRR(配列番号:3)又はGRKKRRQRRRP(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有する。任意に、薬理学的薬剤は、ペプチド(例:KLSSIESDV(配列番号:5))である。
【0008】
本発明は、興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は効果的な予防方法であって、疾患を患っているかそのリスクがある被験体に対して疾患を治療又は効果的に予防するRRRQRRKKRGYKLSSIESDV(配列番号:70)を含む又はからなるアミノ酸配列を有するペプチドの効果的な投与計画を施すこと、を含む方法を更に提供する。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤及び/又は抗ヒスタミンを投与することが更に含まれる。
【0009】
本発明は、疾患の治療又は予防に用いられるRRRQRRKKRGYKLSSIESDV(配列番号:70)を含む又はからなるアミノ酸配列を有するペプチドを更に提供する。
【0010】
本発明は、薬理学的薬剤を被験体に送達させる方法であって、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を上記被験体に投与することと、マスト細胞脱顆粒阻害剤を上記被験体に投与すること、を含み、ロドキサミドは、内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害することができ、上記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、トラニラスト、ロドキサミド、アゼラスチン、ベポタスチン、クロルゾキサゾン、エピナスチン、イソプロテレノール、オロパタジン、ペミロラスト、ピメクロリムス又はピルブテロールである、方法を更に提供する。
【0011】
任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の15分前から同じ時間までに投与される。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤と共調製される。任意に、上記方法は、被験体における興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は予防に関する。任意に、薬理学的薬剤は、NMDAR受容体のPLペプチドである。任意に、内在化ペプチドは、tatペプチド(例:RKKRRQRRR(配列番号:51)、GRKKRRQRRR(配列番号:1)、YGRKKRRQRRR(配列番号:2)、FGRKKRRQRRR(配列番号:3)又はGRKKRRQRRRPQ(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有するペプチド)である。
【0012】
任意に、疾患は脳卒中であるか、又は被験体は手術の結果として一過性脳虚血発作のリスクがある。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、末梢ルートにより投与される。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の投与の30分前から15分後までに投与される。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の投与の15分前から同じ時間までに投与される。任意に、被験体は疾患のエピソードを患っており、薬理学的薬剤及びマスト細胞脱顆粒阻害剤は疾患のエピソード中に一回投与される。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤の投与は、薬理学的薬剤なしにマスト細胞脱顆粒阻害剤を患者に投与する反復投与計画には適合しない。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤と、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤は共調製される。任意に、共製剤は静脈に投与される。
【0013】
本発明は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤とロドキサミドを含むキットを更に提供する。本発明は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤誘導性のマスト細胞脱顆粒反応を阻害するのに用いられるロドキサミドを更に提供する。本発明は、内在化ペプチド誘導性の炎症反応を抑制するロドキサミドとの組合せにて疾患の治療又は予防に使用するための内在化ペプチドに連結された薬理学的薬剤を更に提供する。本発明は、内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害するロドキサミドと組合せて、興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は効果的な予防に有効な投与計画にて、NMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を更に提供する。本発明は、NMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤と組合せて、興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は予防に用いられるロドキサミドであって、内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害するロドキサミドを更に提供する。本発明は、ロドキサミド及び配列番号:6(YGRKKRRQRRRKLSSIESDV)のアミノ酸配列を含むペプチド及び水を有する共製剤を更に提供する。任意に、5重量%未満のロドキサミド及び5重量%未満のペプチドは、粒子型である。任意に、共製剤には、濃度が50-200mMの塩化ナトリウムが更に含まれる。任意に、ロドキサミドの濃度は0.5-1mg/mlであり、ペプチドの濃度は5-20mg/mlである。
【0014】
本発明は、薬理学的薬剤によって治療可能な疾患を患っているかそのリスクがある被験体群に内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を送達させる方法であって、上記内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を被験体に投与することを含み、内在化ペプチド誘導性の炎症反応を低減させるためにマスト細胞脱顆粒阻害剤を投与される被験体もいれば、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤の用量に依らずに患者に対して高用量のマスト細胞脱顆粒阻害剤が施される被験体もいる、方法を更に提供する。
【0015】
本発明は、興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は効果的な予防方法であって、疾患を患っているかそのリスクがあるヒト被験体に、用量が2.0mg/kg以上の配列番号:6(YGRKKRRQRRRKLSSIESDV)のアミノ酸配列を有するペプチドを投与することと、上記被験体にマスト細胞脱顆粒阻害剤を投与すること、を含み、上記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、内在化ペプチド誘導性のマスト細胞脱顆粒を阻害することができる、及び/又は上記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の30分前から15分後までに投与される、方法が更に提供される。任意に、用量は2.6mg/kgである。
【0016】
本発明は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を上記薬理学的薬剤によって治療可能な疾患を患っているかそのリスクがある被験体に送達させる方法であって、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を上記被験体に投与すること、内在化ペプチド誘導性の炎症反応を低減させるためにマスト細胞脱顆粒阻害剤及び抗ヒスタミンを投与すること、を含む方法を更に提供する。
【0017】
本発明は、薬理学的薬剤を被験体に送達させる方法を提供する。上記方法は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を被験体に投与することと、マスト細胞脱顆粒阻害剤を被験体に投与すること、を伴い、上記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、上記内在化ペプチド誘導性のマスト細胞脱顆粒を阻害することができる、及び/又は上記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の30分前から15分後までに投与される。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は血圧低下又は皮膚発疹であって内在化ペプチドによって誘導されるものであっておいて、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、後ペプチドに連結されるを阻害する。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤はクロモリンである。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は末梢ルートにより投与される。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の投与の30分前から15分後までに投与される。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の投与の15分前から同じ時間までに投与される。いくつかの方法において、被験体は、疾患のエピソードを患っており、薬理学的薬剤及びマスト細胞脱顆粒阻害剤は、疾患のエピソード中に一回投与される。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤の投与は、薬理学的薬剤なしに上記マスト細胞脱顆粒阻害剤を患者に投与する反復投与計画には適合しない。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、経口的に、又は静注で投与された時に脳で検出可能な薬理効果を発揮する充分な量は血液脳関門を通過しない。いくつかの方法において、内在化ペプチドは、tatペプチドである。いくつかの方法において、tatペプチドは、RKKRRQRRR(配列番号:51)、GRKKRRQRRR(配列番号:1)、YGRKKRRQRRR(配列番号:2)、FGRKKRRQRRR(配列番号:3)又はGRKKRRQRRRP(配列番号:72)を含むアミノ酸配列を有する。いくつかの方法において、薬理学的薬剤は、任意に、ペプチドKLSSIESDV(配列番号:5)である。
【0018】
本発明は、薬理学的薬剤に連結された内在化ペプチド誘導性のマスト細胞脱顆粒を阻害するための、及び/又は内在化ペプチド誘導性の血圧低下を阻害するための、及び/又は内在化ペプチド誘導性の皮膚発疹を阻害するためのマスト細胞脱顆粒阻害剤を更に提供する。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の投与前の15分以内に投与され、又は薬理学的薬剤及びマスト細胞脱顆粒阻害剤は同時に静注によって投与される。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、経鼻的に投与される。任意に、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤の用量は、2.6mg/kgより大きく、任意に3mg/kg又は5mg/kgより大きい。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤及び薬理学的薬剤は、疾患のエピソードあたり1回投与される。いくつかの用途において、疾患は、脳虚血によって特徴づけられる。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤はクロモリンであり、薬理学的薬剤はアミノ酸配列YGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号:6)を有する。
【0019】
本発明は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤とマスト細胞脱顆粒阻害剤を含むキットを更に提供する。
【0020】
本発明は、興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は効果的な予防方法を更に提供する。上記方法は、疾患を患っているかそのリスクがある被験体へNMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を疾患の治療又は効果的な予防に有効な投与計画にて投与することと、被験体にマスト細胞脱顆粒阻害剤を投与すること、を含み、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、内在化ペプチド誘導性のマスト細胞脱顆粒を阻害することができる、及び/又はマスト細胞脱顆粒阻害剤は薬理学的薬剤の30分前から15分後までに投与される。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、内在化ペプチドによって誘導される血圧低下を阻害する。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒は、内在化ペプチドによって誘導される血圧低下を阻害する。任意に、薬理学的薬剤は、NMDAR受容体のPLペプチドである。任意に、内在化ペプチドは、tatペプチドである。任意に、内在化ペプチドは、RKKRRQRRR(配列番号:51)、GRKKRRQRRR(配列番号:1)、YGRKKRRQRRR(配列番号:2)、FGRKKRRQRRR(配列番号:3)又はGRKKRRQRRRPQ(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有する。いくつかの方法において、疾患は、脳卒中である。いくつかの方法において、被験体は、手術の結果として、一過性脳虚血発作のリスクがある。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、クロモリンである。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、末梢ルートにより投与される。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の投与の30分前から15分後までに投与される。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の投与の15分前から同じ時間までに投与される。いくつかの方法において、被験体は、疾患のエピソードを患っており、薬理学的薬剤及びマスト細胞脱顆粒阻害剤は、疾患のエピソード中に一回投与される。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤の投与は、薬理学的薬剤なしに上記マスト細胞脱顆粒阻害剤を患者に投与する反復投与計画には適合しない。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、経口的に又は静注で投与される際に脳で薬理効果を発揮する充分な量が血液脳関門を通過しない。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、経鼻的に、経口的に、又は静注で投与される。
【0021】
本発明は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を被験体に送達させる方法において、改善を提供するものであって、上記内在化ペプチドは、上記内在化ペプチド誘導性のマスト細胞脱顆粒を阻害することができるマスト細胞脱顆粒阻害剤と共に投与される、及び/又はマスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の30分前から15分後までに投与される、改善も提供する。任意に、内在化ペプチドはtatペプチドである。
【0022】
本発明は、マスト細胞脱顆粒を阻害する方法を更に提供する。上記方法は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を投与されたか又は投与される被験体にマスト細胞脱顆粒阻害剤を投与することを伴うものであって、抗炎症剤は内在化ペプチド誘導性のマスト細胞脱顆粒を阻害することができる、及び/又はマスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の30分前から15分後までに投与される。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、内在化ペプチドによって誘導される血圧低下を阻害する。任意に、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、内在化ペプチドによって誘導される皮膚発疹の発症を阻害する。
【0023】
本発明は、薬理学的薬剤を被験体に送達させる方法を更に提供する。上記胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤後剤は、は、薬理学的薬剤を方法は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を被験体に投与することを伴うものであって、上記被験体はマスト細胞脱顆粒阻害剤を投与されたか又は投与され、上記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、内在化ペプチドによって誘導されるマスト細胞脱顆粒を阻害する、及び/又はマスト細胞脱顆粒阻害剤は薬理学的薬剤の30分前から15分後までに投与される。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、内在化ペプチドによって誘導される血圧低下を阻害する。
【0024】
本発明は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤誘導性の炎症を阻害する方法であって、マスト細胞脱顆粒阻害剤を薬理学的薬剤の15分前から同じ時間までに投与することを含む方法が更に提供される。いくつかの方法において、薬理学的薬剤及びマスト細胞脱顆粒阻害剤は、静注によって同時に投与される。いくつかの方法において、マスト細胞脱顆粒阻害剤は、薬理学的薬剤の前に投与される。
【0025】
本発明は、薬理学的薬剤を被験体に送達させる方法を提供する。上記方法は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を上記被験体に投与することと、抗炎症剤を上記被験体に投与すること、と含み、上記抗炎症剤が上記内在化ペプチドにより誘導される炎症反応を阻害する、方法である。任意に、抗炎症剤は、抗ヒスタミン又はコルチコステロイドである。任意に、内在化ペプチドは、tatペプチドである。任意に、tatペプチドは、GRKKRRQRRR(配列番号:1)、YGRKKRRQRRR(配列番号:2)、FGRKKRRQRRR(配列番号:3)又はGRKKRRQRRRPQ(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有する。任意に、薬理学的薬剤は、ペプチドである。任意に、薬理学的薬剤は、KLSSIESDV(配列番号:5)である。
【0026】
本発明は、薬理学的薬剤に連結された内在化ペプチドにより誘導される炎症反応を阻害する、医薬の製造における抗炎症剤の使用も提供する。
【0027】
本発明は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤と上記内在化ペプチドにより誘導される炎症反応を阻害する抗炎症剤とを含むキットも提供する。
【0028】
本発明は、ビオチンを有しない内在化ペプチドに比べて炎症反応を誘導する能力が低下した、上記ビオチンに連結された上記内在化ペプチドも提供する。
【0029】
本発明は、薬理学的薬剤を被験体に送達させる方法であって、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を上記被験体に投与することを含み、上記内在化ペプチドはビオチン化され、上記ビオチン化が上記ビオチンを有しない上記内在化ペプチドに比べて炎症反応を誘導する上記内在化ペプチドの能力を低下させる、方法も提供する。
【0030】
本発明は、興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は効果的な予防方法であって、疾患を患っているかそのリスクがある被験体にNMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を上記疾患の治療又は効果的な予防に有効な投与計画にて投与することと、上記被験体に抗炎症剤を投与すること、を含み、上記抗炎症剤は上記内在化ペプチドにより誘導される炎症反応を阻害する、方法も提供される。任意に、薬理学的薬剤は、NMDAR受容体のPLペプチドである。任意に、内在化ペプチドは、tatペプチドである。任意に、内在化ペプチドは、GRKKRRQRRR(配列番号:1)、YGRKKRRQRRR(配列番号:2)、FGRKKRRQRRR(配列番号:3)又はGRKKRRQRRRPQ(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有する。任意に、被験体は雌である。任意に、疾患は脳卒中である。いくつかの方法において、被験体は心臓手術の結果として一過性脳虚血発作のリスクがある。
【0031】
本発明は、興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は効果的な予防方法であって、疾患を患っているかそのリスクがある被験体にNMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を、疾患の治療又は効果予防に有効な投与計画にて投与すること、を含み、内在化ペプチドはビオチン化され、ビオチン化は炎症反応を誘導する内在化ペプチドの能力を低下させる、方法を更に提供する。
【0032】
本発明は、更に、興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は効果的な予防方法であって、疾患を患っているかそのリスクがある雌被験体にNMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を、疾患の治療又は効果予防に有効な投与計画にて投与することを含む、方法を提供する。任意に、内在化ペプチドはtatペプチドである。
【0033】
本発明は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を被験体に送達させる方法における改善であって、内在化ペプチドは、ビオチン化されるか、内在化ペプチドによって誘導される炎症反応を阻害する免疫抑制薬と共に投与されるかのいずれかである、改善を更に提供する。任意に、内在化ペプチドはtatペプチドである。
【0034】
本発明は、更に、炎症反応を阻害する方法であって、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を投与されたか又は投与される被験体に抗炎症剤を投与すること、を含み、抗炎症剤は内在化ペプチドによって誘導される炎症反応を阻害する、方法が提供される。
【0035】
本発明は、更に、薬理学的薬剤を被験体に送達させる方法であって、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を被験体に投与すること、を含み、上記被験体は、抗炎症剤を投与されたか又は投与される被験体であって、上記抗炎症剤は、内在化ペプチドによって誘導される炎症反応を阻害する、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ラット脳卒中P3VOモデルにおける梗塞サイズの性差を示す図である。生理食塩水雄:生理食塩水で治療された雄脳卒中ラット(コントロール)。Tat-NR2B9c雄:Tat-NR2B9c(即ち、Tat配列とNR2Bサブユニットの9つのカルボキシ末端アミノ酸との両者を含むペプチドYGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号:6))で治療された雄脳卒中ラット。生理食塩水雌:生理食塩水で治療された雌脳卒中ラット(コントロール)。Tat-NR2B9c雌:Tat-NR2B9c(即ち、Tat配列とNR2Bサブユニットの9つのカルボキシ末端アミノ酸との両者を含むペプチドYGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号:6))で治療された雌脳卒中ラット。Y軸:梗塞サイズ。生理食塩水のみで治療された雄ラット中の梗塞サイズに相対化され(パーセント表示)測定された。
【図2】Tat配列を含むペプチドがマスト細胞脱顆粒を引き起こすことを示す図である。CI:カルシウムイオノフォア(ポジティブコントロール)。NA-1:Tat-NR2B9c(即ち、Tat配列とNR2Bサブユニットの9つのカルボキシ末端アミノ酸との両者を含むペプチドYGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号:6))。NR2B9c:ペプチドKLSSIESDV(配列番号:5); NMDA NR2BサブユニットのPSD-95結合配列(Tat配列を含まない)。AA:ペプチドYGRKKRRQRRRKLSSIEADA(配列番号:7);PSD-95結合ドメイン中に2カ所の点変異を有しPSD-95に結合できないことを除いてはTat-NR2B9cと同一である。脱顆粒は、相対的トリプターゼ活性(コントロールに対する%)により測定された。バーは3から6の独立した実験の平均±S.D.を示す。
【図3】Tat配列を含むペプチドによるマスト細胞脱顆粒が用量依存的であることを示す図である。CI:カルシウムイオノフォア(ポジティブコントロール)。NA-1:Tat-NR2B9c(即ち、Tat配列とNR2Bサブユニットの9つのカルボキシ末端アミノ酸との両者を含むペプチドYGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号:6))。AA:ペプチドYGRKKRRQRRRKLSSIEADA(配列番号:7);PSD-95結合ドメイン中に2カ所の点変異を有しPSD-95に結合できないことを除いてはTat-NR2B9cと同一である。
【図4】Tat配列変異体を含むペプチドによるマスト細胞脱顆粒を示す図である。CI:カルシウムイオノフォア(ポジティブコントロール)。Tat-NR2B9c:Tat配列とNR2Bサブユニットの9つのカルボキシ末端アミノ酸との両者を含むペプチドYGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号:6)。TAT:Tatペプチド配列YGRKKRRQRRR(配列番号:2)。2B9c:ペプチドKLSSIESDV(配列番号:5); NMDA NR2BサブユニットのPSD-95結合配列(Tat配列を含まない)。AA:ペプチドYGRKKRRQRRRKLSSIEADA(配列番号:7);PSD-95結合ドメイン中に2カ所の点変異を有しPSD-95に結合できないことを除いてはTat-NR2B9cと同一である。F-Tat-NR2B9c:ペプチドFGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号:8)。Tat-NR2B9c K>A:YGRKKRRQRRRALSSIESDV(配列番号:9)。F-Tat-NR2B9c K>A:FGRKKRRQRRRALSSIESDV(配列番号:10)。
【図5】Tat配列を含むペプチドの抱合体がマスト細胞脱顆粒を誘発できないことを示す図である。
【図6】50mg/kgのTat-NR2B9cをビーグル犬に投与した後に観察した血圧で観察されたその低下を示す図である。
【図7】図7は、Tat-NR2B9c又はRv-Tat-NR2B9cをラットに投与した後の血圧低下を示す。
【図8】図8A-D、クロモリン及びTat-NR2B9cを投与した後の平均動脈圧(MAP)の変化を示す。図8Aは、経時変化を示す。図8Bは、濃度曲線下面積(AUC)の変化率を示す。図8Cは、クロモリンの存在及び非存在下におけるペプチドトランスダクションドメインによる治療後のMAP値を示す。図8Dは、治療前のMAPと比較した、治療後のMAPトラフのパーセンテージを示す。図8E(経時変化)及び図8F(棒グラフ)は、クロモリンがRv-Tat-NR2B9cと類似の効果を有することを示す。
【図9】図9A-Dは、ジフェンヒドラミン(diphenhydramine)がクロモリンと置き換えられていること以外は図8A-Dと類似したデータが提供される。
【図10】図10A-Dは、クロモリンがピリラミンと置き換えられていること以外は図8A-Dと類似したデータが提供される。
【図11】図11A-Dは、クロモリンがジフェンヒドラミンとラニチジンとの組合せに置き換えられていること以外は図8A-Dと類似したデータが提供される。
【図12】図12は、カチオン性ペプチド(例:tat) を示している模式図であり、模式図には、血圧低下を含む多様な効果を引き起こす、マスト細胞脱顆粒並びにそれに伴うヒスタミン及び他の要素の放出が含まれる。マスト細胞顆粒阻害剤(別名マスト細胞安定化剤)は、マスト細胞の脱顆粒とそれに伴うマスト細胞のヒスタミン放出れるョンあって、マスト細胞脱顆粒阻害剤を薬理学的薬剤と及び他の分子の放出を阻害する。
【図13】図13A及び図13Bは、Tat-NR2B9cとのロドキサミド共製剤及びクロモリンとのロドキサミド共製剤をTat-NR2B9cに起因するMAPの低下が完全に元に戻る前に即座に投与したことを示す。
【図14】図14は、Rv-NR2B9cが脳虚血の動物モデルにおいて梗塞を減少させるのに効果的であることを示す。
【図15】図15は、ロドキサミドと組合せたTat-NR2B9cがTat-NR2B9c単独と比較して統計的に有意に減少させた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<詳細な説明>
<定義>
「キメラペプチド」は、互いに自然状態では会合しない2つのコンポーネントのペプチドが、融合タンパク質として又は化学的連結により互いに連結されたペプチドを意味する。
【0038】
「融合」タンパク質又はポリペプチドは複合ポリペプチドを指し、即ち、1つの連続したアミノ酸配列を指し、通常は1つのポリペプチド配列に融合されていない2つ(又はそれより多い)の異なる異種ポリペプチドの配列から構成される複合ポリペプチドを指す。
【0039】
「PDZドメイン」という用語は、約90アミノ酸のモジュラータンパク質ドメインを指し、脳のシナプスタンパク質PSD-95、ショウジョウバエの中隔結合タンパク質Discs-Large(DLG)、及び上皮のタイトジャンクションタンパク質ZO1(ZO1)と有意な配列同一性(例えば、少なくとも60%)を有することを特徴とする。PDZドメインはまた、Discs-Large相同性リピート(「DHRs」)及びGLGFリピートとしても知られている。PDZドメインは、一般にコアコンセンサス配列を維持するように見える(Doyle, D.A., 1996, Cell 85:1067-76)。例示的なPDZドメインを含むタンパク質とPDZドメイン配列は米国特許出願第10/714,537号明細書に開示され、それは参照によって本明細書中にその内容全体が引用される。
【0040】
「PLタンパク質」又は「PDZリガンドタンパク質」の用語は、PDZドメインと分子複合体を形成する天然のタンパク質、又は全長タンパク質から分離して発現された場合(例えば、3から25残基のペプチド断片、例えば、3、4、5、8、9、10、12、14、又は16残基のペプチド断片として)カルボキシ末端がそのような分子複合体を形成するタンパク質を指す。上記分子複合体は、例えば米国特許出願第10/714,537号明細書に記載された「Aアッセイ」若しくは「Gアッセイ」を使ってインビトロで、又はインビボで観察され得る。
【0041】
「NMDA受容体」又は「NMDAR」という用語は、NMDAと相互作用することが知られる膜結合タンパク質を指す。上記用語は従って本明細書中に記載される様々なサブユニット形態を含む。このような受容体は、ヒト又は非ヒト(例えば、マウス、ラット、ウサギ、サル)由来であってもよい。
【0042】
「PLモチーフ」は、PLタンパク質のC末端のアミノ酸配列(例えば、C末端3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、20又は25の連続した残基)(「C末端PL配列」)、又はPDZドメインに結合することが知られた内部配列(「内部PL配列」)を指す。
【0043】
「PLペプチド」は、PDZドメインに特異的に結合するPLモチーフを含むか若しくはそのモチーフからなる、又はそれ以外の場合にはPLモチーフに基づくペプチドである。
【0044】
「単離された」又は「精製された」の用語は、目的の種(例えば、ペプチド)が、サンプル(例:その目的の種を含む自然発生源から得られたサンプル)に存在する混入物から精製されてきたことを意味する。目的の種が単離され又は精製されれば、その目的の種がサンプル中に存在する主要な高分子(例えば、ポリペプチド)種となる。つまり、その種は、モルベースで他の個々の種よりも多く組成物中に含まれる。好ましくは、その目的の種は、存在する全ての高分子種の少なくとも約50%(モルベース)を占める。一般的には、単離された、精製された又は実質的に純粋な組成物は、組成物中にある全ての高分子種の80から90パーセントより多く含む。最も好ましくは、上記目的の種は実質的に均一に精製され(即ち、混入された種は、従来の検出方法ではその組成物中に検出できない)、その組成物は、実質的に単一の高分子種からなる。単離された又は精製されたという用語は、単離された種と組合わされて作用することを意図した他のコンポーネントの存在を必ずしも除外しない。例えば、内在化ペプチドを、活性ペプチドに連結されているにもかかわらず、単離されたものとして記載することができる。
【0045】
「ペプチドミメティック」とは、天然のアミノ酸からなるペプチドと実質的に構造及び/又は機能的特性が同一の合成化学化合物を指す。上記ペプチドミメティックは、完全に合成された非天然のアミノ酸類似体を含み得、又は部分的に天然のペプチドアミノ酸及び部分的に非天然のアミノ酸類似体を有するキメラ分子であってもよい。上記ペプチドミメティックは、保守的置換がミメティックの構造及び/又は阻害若しくは結合活性を実質的に変更しない限り、任意の量の天然のアミノ酸によるそのような保守的置換をも取り込んでもよい。ポリペプチドミメティックの組成物は非天然構造コンポーネントの任意の組合せを含むことができ、典型的には3つの構造のグループからなる:a)天然アミド結合(「ペプチド結合」)連鎖以外の残基連鎖グループ;b)天然のアミノ酸残基の代わりの非天然残基;又はc)二次構造の模倣を誘導する残基、即ち、二次構造(例えば、ベータターン、ガンマターン、ベータシート、アルファへリックス構造など)を誘導又は安定化するもの。活性ペプチド及び内在化ペプチドを含むキメラペプチドのペプチドミメティックにおいては、その活性部分若しくはその内在化に関する部分又はその両者がペプチドミメティックであってもよい。
【0046】
個々のペプチドミメティックの残基には、ペプチド結合、他の化学結合又はカップリング手段(例:グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、二官能性マレイミド、N,N-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)又はN,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC))によって結合できる。従来のアミド結合(「ペプチド結合」)連結に対する代替物になり得る連結群は、例えばケトメチレン(例:-C(=O)-NH-のための-C(=O)-CH2-)、アミノメチレン(CH2-NH)、エチレン、オレフィン(CH=CH)、エーテル(CH2-O)、チオエーテル(CH2-S)、テトラゾール(CN4--)、チアゾール、レトロアミド、チオアミド又はエステルが含まれる(例えば、 Spatola (1983) in Chemistry and Biochemistry of Amino Acids, Peptides and Proteins, Vol. 7, pp 267-357, A Peptide Backbone Modifications, Marcell Dekker, NYを参照)。
【0047】
芳香族アミノ酸のミメティックは、例えば以下のものと取り替えることによって生成することができる。D-又はL-ナフチルアラニン(naphylalanine);D-又はL-フェニルグリシン;D-又はL-2チエニルアラニン(thieneylalanine);D-又はL-1、-2、3-、若しくは4-ピレニルアラニン(pyreneylalanine);D-又はL-3チエニルアラニン(thieneylalanine);D-又はL-(2-ピリジニル)-アラニン;D-又はL-(3-ピリジニル)-アラニン;D-又はL-(2-ピラジニル)-アラニン;D-又はL-(4-イソプロピル)-フェニルグリシン;D-(トリフロロメチル)-フェニルグリシン;D-(トリフロロメチル)-フェニルアラニン;D-p-フルオロフェニルアラニン;D-又はL-p-ビフェニルフェニルアラニン(biphenylphenylalanine);K-又はL-p-メトキシビフェニルフェニルアラニン;D-又はL-2-インドール(アルキル)アラニン;そして、D-又はL-アルキルアラニン(alkylainine)であって、アルキルは、置換又は非置換メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソブチル、セクイソチル(sec-isotyl)、イソペンチル又は非酸性アミノ酸であってもよいもの。自然にはないアミノ酸の芳香族環には、例えばチアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ナフチル、フラニル、ピロリル及びピリジル芳香族環が含まれる。
【0048】
酸性アミノ酸のミメティックは、例えば、負電荷非を維持している非カルボキシラートアミノ酸、(ホスホノ)アラニン、硫酸化スレオニンによる置換によって生成することができる。カルボキシル側鎖基(例えば、アスパルチル又はグルタミル)は、カルボジイミド(R-N-C-N-R=)(例:1-シクロヘキシル-3 (2-モルホリニル-(4-エチル))カルボジイミド又は1-エチル-3(4-アゾニア-4,4-ジメチルペンチル(dimetholpentyl))カルボジイミド)との反応によって、選択的に修飾することもできる。アスパルチル又はグルタミルは、アンモニウムイオンとの反応によってアスパラギニル及びグルタミニル残基に変換することもできる。
【0049】
塩基性アミノ酸のミメティックは、例えば(リシン及びアルギニンに加えて)アミノ酸オルニチン、シトルリン、又は(グアニジノ)-酢酸、又は(グアニジノ)アルキル-酢酸であって、アルキルは、上で明記したものによる置換によって生成することができる。ニトリル誘導体(例えばCOOHの代わりにCN-部分を含むもの)にアスパラギン又はグルタミンを置換できる。アスパラギニル及びグルタミニル残基は、対応するアスパルチル又はグルタミル残基に脱アミノ化することができる。
【0050】
アルギニン残基ミメティックは、アルギニルと、例えば1又は複数の従来型の試薬(例えば、以下のものが含まれる:フェニルグリオキサール、2,3-ブタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン又はニンヒドリン)とが好ましくはアルカリ条件下で反応することによって生成することができる。
【0051】
チロシン残基ミメティックは、チロシルと、例えば芳香族ジアゾニウム化合物又はテトラニトロメタンとを反応させることによって生成することができる。N-アセチルイミダゾール(acetylimidizol)とテトラニトロメタンは、それぞれ、O-アセチルチロシル種と3-ニトロ誘導体を形成するために用いることができる。
【0052】
システイン残基ミメティックは、システイニル残基と、例えばアルファ-ハロ酢酸(例:2クロロ酢酸又はクロロアセトアミド及び対応するアミン)とを反応させ、カルボキシメチル又はカルボキシアミドメチル誘導体を与えることによって生成することができる。システイン残基ミメティックは、システイニル残基と、例えばブロモトリフルオロアセトン、アルファ-ブロモ-ベータ-(5-イミドゾール(imidozoyl))プロピオン酸;クロロアセチルホスフェート、N-アルキルマレイミド、3-ニトロ-2-ピリジルジスルフィド;メチル2-ピリジルジスルフィド;p-クロロ第二水銀安息香酸塩;2-クロロメルクリ-4ニトロフェノール;又は、クロロ-7-ニトロベンゾ-オキサ-1,3-ジアゾールとを反応させることによって生成することもできる。
【0053】
リシンミメティックは、リシニル(lysinyl)と、例えばコハク酸無水物又は他のカルボン酸無水物とを反応させることによって生成することができる(そして、アミノ末端残基を変更できる)。リシン及び他のアルファ-アミノ含有残基ミメティックは、イミドエステル(例えばメチルピコリンイミデート(methyl picolinimidate)、ピリドキサルリン酸、ピリドキサール、クロロボロヒドリド、トリニトロベンゼンスルホン酸、O-メチルイソ尿素、2,4,ペンタンジオン及びトランスアミダーゼ-触媒反応であってグリオキシル酸と反応するもの)との反応によって生成こともできる。
【0054】
メチオニンのミメティックは、例えばメチオニンスルホキシドとの反応によって生成することができる。プロリンのミメティックは、例えばピペコリン酸、チアゾリジンカルボキシル酸、3-又は4-ヒドロキシプロリン、デヒドロプロリン、3-又は4-メチルプロリン又は3,3,-ジメチルプロリンを含む。ヒスチジン残基ミメティックは、ヒスチジルと、例えばジエチルピロカーボネート(diethylprocarbonate)又はp-臭化ブロモフェナシルとを反応させることによって生成することができる。
【0055】
他のミメティックには、例えばプロリン及びリシンのヒドロキシル化;セリル又はトレオニン残基の水酸基のリン酸化;リシン、アルギニン及びヒスチジンのアルファ-アミノ基のメチル化;N末端アミンのアセチル化;主鎖アミド残基のメチル化又はN-メチルアミノ酸との置換;又は、C末端カルボキシル基のアミド化によって生成するそれらが含まれる。
【0056】
本発明のミメティックは、構造ミメティック残基、特に二次構造(例えばベータターン、ベータシート、アルファヘリックス構造、ガンマターン等)を誘導するか模倣する残基を有する組成物を含むこともできる。例えば、ペプチド中での天然アミノ酸残基からD-アミノ酸、N-アルファ-メチルアミノ酸、C-アルファ-メチルアミノ酸、又はデヒドロアミノ酸への置換は、ベータターン、ガンマターン、ベータシート又はアルファヘリックスコンフォメーションを誘導できるか安定させることができる。ベータターンミメティック構造は、例えばNagai (1985) Tet. Lett. 26:647-650; Feigl (1986) J. Amer. Chem. Soc. 108:181-182; Kahn (1988) J. Amer. Chem. Soc. 110:1638-1639; Kemp (1988) Tet. Lett. 29:5057-5060; Kahn (1988) J. Molec. Recognition 1:75-79に記述されている。ベータシートミメティック構造は、例えばSmith (1992) J. Amer. Chem. Soc. 114:10672-10674に記述されている。例えば、シスアミド代用物、1,5-二基置換のテトラゾール(tetrazol))によって誘導されるタイプVIベータターンは、Beusen (1995) Biopolymers 36:181-200に記述されている。アミド結合の代わりにポリメチレンユニットを生成するためのアキラル性オメガ-アミノ酸残基の組込みは、Banerjee (1996) Biopolymers 39:769-777に記述されている。ポリペチドの二次構造は、例えば高磁場1H NMR又は2D NMR分光法によって解析することができる(例:Higgins (1997) J. Pept. Res. 50:421-435を参照)。Hruby (1997) Biopolymers 43:219-266、Balaji,et al.、米国特許第5,612,895号も参照。
【0057】
「特異的結合」の用語は、二つの分子間の結合を指し、例えば、リガンドと受容体のことで、多くの他の様々な分子の存在下においても別の特異的分子(受容体)と結合する分子(リガンド)の能力(即ち不均一な分子の混合物の中で一分子が他の分子に特異的に結合することを示すこと)を特徴とする。リガンドと受容体の特異的結合は、過剰量の非標識リガンドの存在下で検出可能に標識されたリガンドのその受容体への結合が減少することでも(即ち、結合競合アッセイでも)証拠づけられる。
【0058】
興奮毒性とは、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体(例:NMDA受容体(例:NMDAR2B))の過剰活性化によってニューロンが傷害及び死滅させられる病理学的プロセスである。
【0059】
「被験体」という用語には、ヒトと獣医学的動物(例:哺乳類)が含まれる。
【0060】
「薬剤」という用語は、例えば医薬的なもの、治療的なもの、薬理学的なもの、薬用化粧品、薬物、毒素、天然物、合成化合物、又は化学化合物を含む、任意の要素、化合物又は構成要素を含む。薬剤は、とりわけ生物製剤(例えば、ペプチド、ペプチドミメティック(petidomimetics)又は抗体)又は有機低分子(通常500のDa未満の)であってもよい。
【0061】
「薬理学的薬剤」という用語は、薬理学的活性を有する薬剤を意味する。薬剤は、公知(即ちFDA又は他の国の類似の団体に承認されている)の薬物、化合物であって、薬理活性が確認されているが更に治療法の評価を受けているもの。キメラ薬剤には、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤が含まれる。薬剤は、活性剤が疾患の予防若しくは治療に有用であるか又は有用であるかもしれないことを示すスクリーニングシステムにおいて、それが活性を呈する場合に薬理活性を有するとして記述することができる。上記スクリーニングシステムは、インビトロ、細胞、動物、又はヒトにおけるものとしてもよい。薬剤は、疾患の治療における実際の予防的又は治療的有用性を確立するのに更なる試験が必要であるかもしれないにもかかわらず、薬理活性を有するものとして記載してもよい。
【0062】
tatペプチドは、GRKKRRQRRR(配列番号:1)を含む又はその配列からなるペプチドを意味し、配列中に5残基を超えない残基が削除、置換、又は挿入されても、それが連結されたペプチド又は他の薬剤が細胞中へ取り込まれるのを促進する能力を保持するペプチドを意味する。好ましくは任意のアミノ酸変化は保守的置換である。好ましくは、その集合体中の任意の置換、削除、又は内部挿入は、そのペプチドが正味カチオン荷電を有するままにされ、好ましくは前述の配列のものと同様なものである。tatペプチドのアミノ酸は、以下で更に記載するように、炎症反応を減少させるためにビオチン又は類似する分子を用いて誘導体化してもよい。
【0063】
内在化ペプチド連結薬理学的薬剤と抗炎症剤との共投与とは、その2つの薬剤が十分近接した時間内に投与され、上記抗炎症剤が上記内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害することができることを意味する。
【0064】
統計学的に有意とは、<0.05、好ましくは<0.01、及び最も好ましくは<0.001であるp値を指す。
【0065】
<I. 一般>
本発明は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を送達させる方法であって、内在化ペプチド誘導性の炎症反応を抗炎症剤の共投与、又は内在化ペプチドにビオチン又は類似分子を連結することによって阻害する、方法を提供する。このような方法は、実施例で記載される結果の一部を前提とし、その実施例では、tatに連結された薬理学的薬剤の高用量での投与に続いて直ぐにマスト細胞脱顆粒、ヒスタミン放出、及びヒスタミン放出の典型的な後遺症(発赤、熱、腫脹、及び低血圧)を含む炎症反応が起きる。本発明の方法の実施はメカニズムの理解に依存していないが、マスト細胞脱顆粒は、IgE抗体反応により誘起されているというよりはむしろ、カチオン性のtatペプチドとマスト細胞との直接の相互作用により誘起されると信じられる。炎症反応は、抗炎症剤、特にマスト細胞脱顆粒阻害剤(例えばクロモリン)と、tat又は他の内在化ペプチド連結薬理学的薬剤とを共投与することによって阻害することができる。抗ヒスタミンとコルチコステロイドを含む、広く用いられている種々の抗炎症剤が適している。また、発明者らは、炎症反応を誘導する内在化ペプチドの能力はそれらをビオチン又は類似分子に連結させることにより低下させることができる点を見出した。
【0066】
本発明は、興奮毒性を特徴とする疾患(例:脳卒中)の治療又は効果的な予防方法を更に提供する。そのような疾患を、NMDARとシナプス後肥厚部95タンパク質との相互作用を阻害する薬理学的薬剤が内在化ペプチドに連結されたものを用いて治療することができる。好ましくは、そのような方法において、薬理学的薬剤は抗炎症剤、好ましくはマスト細胞脱顆粒阻害剤(例えばクロモリン)と共投与して、内在化ペプチドにより誘導される免疫反応を阻害するか、又は、前述した理由により、上記内在化ペプチドがビオチン若しくは類似分子に連結される。抗炎症剤又はビオチン化された内在化ペプチドがそのような方法において用いられるか否かにかかわらず、その治療又は予防は雄及び雌の被験体の両者に施すことができる。雌被験体への投与は、脳卒中のラットモデルにおいてその治療が少なくとも雄と同程度に雌被験体に効果があると分かった実施例に記載された結果の一部を前提としている。雌被験体にPSD95とNMDARとの間の相互作用を阻害する薬理学的薬剤を投与することの実行可能性は、nNOSの阻害剤には雌被験体の興奮毒性疾患を治療する効果がないと分かった従前の結果と対照をなす。nNOS阻害剤の投与は、MCAOモデルにおいて、雄ラットの脳卒中の損傷効果を保護するが、雌ラットにおいては細胞傷害を増加させることが報告された。McCullough et al., Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism, 25: 502-512 (2005)。
【0067】
<II. 薬理学的薬剤>
内在化ペプチドは、任意の薬理学的薬剤に連結されて、上記薬剤を細胞膜、細胞内膜(例:核膜)、及び/又は血液脳関門を透過して取り込むことを促進することができる。内在化ペプチドを薬理学的薬剤に結合させることにより、上記薬理学的薬剤単独での使用に比べて、意図する部位での生物学的利用能が向上する。その結合した内在化ペプチドにより増加した送達は、薬理学的薬剤の用量の減少、特異的な細胞コンパートメント(例:核)への効果的なターゲッティング、及び/又は低用量の使用による毒性の減少を可能にする。
【0068】
内在化ペプチドは、細胞及び/又は核へ入る必要がある薬理学的薬剤に特に有効である。生物学的利用能が乏しく、高用量若しくは短い半減期を有する薬理学的薬剤、又は活性を発揮するために血液脳関門を越える必要がある神経活性薬物は、内在化ペプチドの結合に特に適している。ペプチドは、例えば、薬理学的薬剤に由来するアミノ酸配列及び内在化ペプチドのアミノ酸配列を含むキメラペプチドを生じるペプチド結合の使用を通じて、内在化を付与されやすい薬理学的薬剤の一つの型である。核酸、及び有機低分子(500Da未満)は、内在化ペプチドに連結され得る化合物の他の例である。
【0069】
薬理学的薬剤選択のいくつかのガイダンス、結合方法及びその使用は、内在化ペプチド(例:tat)に関連する科学及び特許文献によって提供される(米国特許第6,316,003号明細書及び米国特許第5,804,604号明細書を参照されたい)。次表は、薬理学的薬剤(そのいくつかは承認された薬物)の名前、上記薬剤が治療に有用な疾患、疾患が急性若しくは慢性かどうか、(確立された範囲内での)薬物の投与経路及び内在化ペプチドの付与により改善された膜透過によって部分的に克服できる既存の薬物が有する問題に関するコメントを一覧表にする。
【0070】
【表1】




【0071】
特に関心のある薬剤の1つのクラスは、PSD-95と1つ又は複数のNMDARとの間の相互作用を阻害する。このような薬剤は、脳卒中及び他の神経学的状態(NMDAR興奮毒性によって少なくても部分的にもたらされるもの)の有する損傷効果を低減させるのに有用である。このような薬剤には、NMDA受容体のPLモチーフ若しくはPSD95のPDZドメインを含む又はそれに基づくアミノ酸配列を有するペプチドが含まれる。このようなペプチドは、PSD-95とnNOS及び他のグルタミン酸受容体(例えば、カイナイト受容体やAMPA受容体)との相互作用を阻害することもできるか又は代わりに阻害することができる。好ましいペプチドは、シナプス後肥厚部95タンパク質(PSD-95)(ヒトのアミノ酸配列はStathakism、Genomics 44(1):71-82(1997)によって提供される)のPDZドメイン1及び2と、1つ又は複数のNMDA受容体2サブユニット(神経性N−メチル−D−アスパラギン酸受容体(Mandich et al., Genomics 22, 216-8 (1994))のNR2Bサブユニットを含む)のC末端PL配列との相互作用を阻害する。NMDAR2BはGenBank番号:4099612、C末端20アミノ酸FNGSSNGHVYEKLSSIESDV(配列番号:11)及びPLモチーフESDV(配列番号:12)を有する。好ましいペプチドは、ヒト型のPSD-95及びヒトのNMDAR受容体を阻害する。しかし、阻害はそのタンパク質の種変異体からでも示され得る。使用可能なNMDA及びグルタミン酸受容体のリストが下に表示される。
【0072】
【表2】


【0073】
いくつかのペプチドは、PSD-95と複数のNMDARサブユニットとの相互作用を阻害する。このような例では、そのペプチドの使用には、興奮性神経伝達に関係する種々のNMDARに対するそれぞれの貢献を理解することは必ずしも必要とない。他のペプチドは単一のNMDARに特異的である。同様に、本質的に1つの相互作用(例えば、PSD-95及びNMDAR)を阻害することが特徴の薬剤が他の相互作用(例えば、PSD-95及びnNOS)を阻害する場合、上記薬剤を使用する用途又は方法は、一方又は両方の阻害に関係するメカニズムによって成し遂げられる。
【0074】
ペプチドは、任意の上記サブユニットのC末端由来のPLモチーフを含む又はそれに基づき且つ[S/T]-X-[V/L]を含むアミノ酸配列を有することができる。この配列は好ましくは、本発明のペプチドのC末端にある。好ましいペプチドは、[E/D/N/Q]-[S/T]-[D/E/Q/N]-[V/L](配列番号:38)をC末端に含むアミノ酸配列を有する。例示的なペプチドは、ESDV(配列番号:12)、ESEV(配列番号:29)、ETDV(配列番号:39)、ETEV(配列番号:40)、DTDV(配列番号:41)、及びDTEV(配列番号:42)をC末端アミノ酸として含む。特に好ましい二つのペプチドはKLSSIESDV(配列番号:5)及びKLSSIETDV(配列番号:43)である。このようなペプチドは通常、3〜25アミノ酸(内在化ペプチド無し)を有し、5〜10アミノ酸のペプチド長、特に9アミノ酸(内在化ペプチド無し)が好まれる。そのようなペプチドのいくつかにおいて、すべてのアミノ酸は、NMDA受容体のC末端からなる(内在化ペプチドからのアミノ酸を含まない)。
【0075】
PDS95とNDMARとの相互作用を阻害する他のペプチドには、PSD-95のPDZドメイン1及び/若しくは2由来のペプチド、又はPSD-95とNMDA受容体(例:NMDA2B)との相互作用を阻害する任意のペプチドのサブフラグメント由来のペプチドが含まれる。このような活性ペプチドには、PSD-95のPDZドメイン1及び/又はPDZドメイン2由来の少なくとも50、60、70、80、又は90アミノ酸が含まれる。それは、Stathakism, Genomics 44(l):71-82(1997)(ヒト配列)、若しくはNP_031890.1、GI:6681195(マウス配列)により提供されるPSD-95の約65〜248番目のアミノ酸、又は他の種変異体におけるそのPSD-95のアミノ酸に対応する領域にある。
【0076】
本発明のペプチド及びペプチドミメティックは、修飾アミノ酸残基(例えば、Nアルキル化された残基)を含むことができる。N末端アルキル修飾には、例えばN-メチル、N-エチル、N-プロピル、N-ブチル、N-シクロヘキシルメチル、N-シクロヘキシルエチル(Cyclyhexylethyl)、N-ベンジル、N-フェニルエチル、N-フェニルプロピル、N-(3、4-ジクロロフェニル)プロピル、N-(3,4-ジフルオロフェニル)プロピル及びN-(ナフタレン-2-イル)エチル)が含まれる。
【0077】
Bach, J. Med. Chem. 51, 6450-6459 (2008)及びWO 2010/004003にNR2B9cに関する一連の類似体が記載されている。PDZ-結合活性は、3つのC末端アミノ酸(SDV)だけを有するペプチドによって示される。Bachは、YtSXV(配列番号:68)を含む又はからなるアミノ酸配列を有する類似体であって、t及びSは、代替アミノ酸であり、Yは、E、Q及びA又はその類似体の中から選択され、Xは、A、Q、D、N、N-Me-A、N-Me-Q、N-Me-D、及びN-Me-N、又はその類似体の中から選択される、類縁体も報告している。任意に、ペプチドは、P3位置(C末端から3番目のアミノ酸(即ち、tS位置))の場所において、Nアルキル化される。ペプチドは、シクロヘキサン又は芳香族置換基を用いてNアルキル化することができ、上記置換基と、ペプチド又はペプチド類似体の末端アミノ基との間にスペーサー基を更に含み、上記スペーサーは、アルキル基、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基及びブチレン基の中から選択されるものである。芳香族置換基は、1又は2つのハロゲン及び/又はアルキル基によって置換されたナフタレン-2-イル部分又は芳香族環であってもよい。
【0078】
他の修飾は、活性に悪影響を与えずに組み込むことができ、それらには、1又は複数の天然L-異性体のアミノ酸をD-異性体のアミノ酸に置換したものが含まれる。このように、L-立体配置(化学成分の構造によって、R又はSと称することもできる)として天然に存在する任意のアミノ酸は、同じ化学構造タイプのアミノ酸又はペプチドミメティックであるが逆のキラリティー(一般に、D-アミノ酸と呼ばれ、加えて、R型又はS型と称することもできる)のアミノ酸と置き換えることができる。このように、ペプチドミメティックには、1、2、3、4若しくは5つがD-アミノ酸、少なくとも50%がD-アミノ酸、又は全てがD-アミノ酸であるものが含まれる。いくつかのD残基を含むペプチドミメティック又は全てがD残基のペプチドミメティックは、時には「インベルソ」ペプチドと称される。
【0079】
ペプチドミメティックには、レトロペプチドも含まれる。レトロペプチドは、逆アミノ酸配列を有する。ペプチドミメティックには、レトロインベルソペプチドが含まれる。上記レトロインベルソペプチドは、アミノ酸の順序が逆であるため、本来のC末端アミノ酸はN末端に現れ、且つD-アミノ酸がLアミノ酸の代わりに用いられているものである。WO 2008/014917には、アミノ酸配列vdseisslkrrrqrrkkrgyin(配列番号: 69) (小文字はDアミノ酸を示す)を有するTat-NR2B9cのレトロインベルソ類似体が記載されており、それが脳虚血を阻害するのに効果的であることが報告されている。本願明細書に記載されている他の効果的なペプチドは、Rv-Tat-NR2B9c(RRRQRRKKRGYKLSSIESDV配列番号:70)である。
【0080】
リンカー(例えば、ポリエチレングリコールリンカー) は、ペプチド又はペプチドミメティックの活性部位を二量体化し、タンデム型PDZドメインを含むタンパク質に対するその親和性及び選択性を強化するために使用することができる。例えば、Bach et al., (2009) Angew. Chem. Int. Ed. 48:9685-9689及びWO 2010/004003を参照。PLモチーフを有するペプチドは、好ましくは、かかる2つの分子におけるN末端の結合を介して二量体化し、C末端をフリーにする。Bachは、五量体ペプチドIESDV(配列番号:71)(NMDAR 2BのC末端由来)がNMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害するのに効果的であったことを更に報告している。任意に、約2-10部のPEGは、リンカーとしてタンデムに結合することができる。
【0081】
ペプチド、ペプチド模倣剤又は他の薬剤の適切な薬理活性は、所望に応じて、実施例中に記載された動物モデルを使用して確認することができる。任意ではあるが、ペプチド又はペプチド模倣剤は、例えば、US 20050059597 (参照により組み込まれる)に記載されるアッセイを使ってPSD-95とNMDAR2Bとの相互作用を阻害する能力に関してスクリーニングすることができる。有用なペプチドは、このようなアッセイにおいて、通常50μM、25μM、10μM、0.1μM又は0.01μM未満のIC50値を有する。好ましいペプチドは通常0.001〜1μM、より好ましくは0.05〜0.5又は0.05から0.1μMの間のIC50値を有する。
【0082】
直前に記載したもののようなペプチドは、任意ではあるが、誘導体化(例えば、アセチル化、リン酸化、及び/又はグリコシル化)して阻害剤の結合親和性を向上させるか、阻害剤が細胞膜を透過して輸送される能力を改善させるか安定性を向上させる。具体的な例としては、C末端から3番目の残基がS又はTの阻害剤の場合、この残基はそのペプチドを使用する前にリン酸化されてもよい。
【0083】
薬理学的薬剤には、PSD95とNMDAR2Bとの間の相互作用、及び/又は上記した他の相互作用を阻害する低分子も含まれる。適した低分子阻害剤は、WO 07/079406及び2007年7月3日に出願された米国特許出願第60/947,892号明細書に記載され、それぞれは、その内容全体を参照により組み込まれる。これらの分子は、PSD95に結合する化合物ライブラリーのインシリコスクリーニングによって同定され、例示的な化合物の結合は実験的に確認された。
【0084】
多くの適切な化合物が米国特許仮出願第60/947,883号明細書に記載され、その内容全体が参照により本願明細書に組み込まれる。適切な化合物の例示的なクラスは、次式である:
【0085】
【化1】

( 式中、R1は、0-4 R7で置換されたシクロヘキシル、0-4 R7で置換されたフェニル、-(CH2)u-(CHR8R9)、分岐したC1-6アルキル(イソプロピル、イソブチル、1−イソプロピル−2−メチル−ブチル、1−エチループロピル)、及び-NH-C(O)-(CR10R11)vHからなる群より選択されたメンバーであり;
各R7は、独立して、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、-C(O)R12、OH、COOH、-NO、N置換インドリン、及び細胞膜透過ペプチドからなる群より選択されたメンバーであり;
各R8及びR9は、独立して、H、OH、シクロヘキサン、シクロペンタン、フェニル、置換されたフェニル、及びシクロペンタジエンからなる群より選択され;
各R10及びR11は、独立して、H、シクロヘキサン、フェニル、及び細胞膜透過ペプチドからなる群より選択され;
R12は、C1-6アルキル及びアリールからなる群より選択され;
及び、u及びvのそれぞれは、独立して0から20であり;
式中、R2、R3、R4、R5及びR6の一つは-COOHで、式中R2、R3、R4、R5及びR6の残りは、それぞれ独立して、F、H、OCH3、及びCH3からなる群より選択される。)
【0086】
そのような化合物の一つは、0620-0057であり、その構造は次式である:
【0087】
【化2】

【0088】
<III. 内在化ペプチド>
内在化ペプチド(別名、細胞膜トランスダクションペプチド又は細胞透過ペプチド) は、多くの細胞又はウイルスタンパク質が膜を横断できるようにする比較的短い(例えば、5-30のアミノ酸)ペプチドの公知のクラスである。かかるペプチドは、通常以上にアルギニン及び/又はリジン残基が(一般のタンパク質と比較して)現れていることから、典型的にはカチオンの電荷を有し、膜を横切ってのそれらの通過を容易にすると考えられている。かかるペプチドのいくつかは、少なくとも5、6、7又は8つのアルギニン及び/又はリジン残基を有する。例としては、アンテナペディアタンパク質(Bonfanti, Cancer Res.57、1442-6(1997))(及びその変異体)、ヒト免疫不全ウイルスのtatタンパク質、タンパク質VP22、単純ヘルペスウイルス1型のUL49遺伝子産物、ペネトラチン(Penetratin)、SynB1及び3、トランスポータン、アンフィパシック(Amphipathic)、gp41NLS、ポリアルギニン、並びにいくつかの植物及び細菌性のタンパク質毒素(例:リシン、アブリン、モデシン(modeccin)、ジフテリア毒素、コレラ毒素、炭疽菌毒素、熱不安定性の毒素及び緑膿菌外毒素A(ETA))が含まれる。その他の例は、次の文献に記載される(Temsamani, Drug Discovery Today, 9(23):1012-1019, 2004;De Coupade, Biochem J., 390:407-418, 2005;Saalik Bioconjugate Chem.15:1246-1253, 2004;Zhao, Medicinal Research Reviews 24(1):1-12, 2004; Deshayes, Cellular and Molecular Life Sciences 62:1839-49, 2005)(すべての文献は参照により組み込まれる)。
【0089】
好ましい内在化ペプチドは、HIVウイルスのtatである。以前の研究で報告されたtatペプチドは、HIV Tatタンパク質に見いだされる標準的なアミノ酸配列YGRKKRRQRRR(配列番号:2)を含むか、又はそれからなる。このようなtatモチーフに隣接して付加する追加的な残基が(薬理学的薬剤のそばに)存在するならば、上記残基は例えば、tatタンパク質のこのセグメントに隣接して付加する天然のアミノ酸、スペーサー、若しくは二つのペプチドドメインを結合することに通常使用される種のリンカーアミノ酸(例えば、gly(ser)4(配列番号:44)、TGEKP(配列番号:45)、GGRRGGGS(配列番号:46)、又はLRQRDGERP(配列番号:47)(例えば、Tang et al. (1996), J. Biol. Chem. 271, 15682-15686; Hennecke et al. (1998), Protein Eng. 11, 405-410)を参照)であるか、又は上記残基はその隣接して付加する残基なしにその変異体を取り込む能力を有意に低下させない任意の他のアミノ酸であってもよい。好ましくは、活性ペプチド以外の、隣接して付加するアミノ酸の数は、YGRKKRRQRRR(配列番号:2)のいずれかの側に10を超えない。YGRKKRRQRRR(配列番号:2)のC末端に隣接して付加する追加のアミノ酸残基を含む1つの適切なtatペプチドはYGRKKRRQRRRPQ(配列番号:48)である。しかしながら、好ましくは隣接して付加するアミノ酸は存在しない。
【0090】
N−型カルシウムチャンネルに結合する能力が低下した上述のtatペプチドの変異体がWO/2008/109010に記載されている。このような変異体は、アミノ酸配列XGRKKRRQRRR(配列番号:49)を含むか又はこのアミノ酸配列からなり、そのXは、Y以外のアミノ酸であってもよく、無くてもよい(Xがない場合、Gは、フリーのN末端残基である)。好ましいtatペプチドは、N末端のY残基がFで置換される。従って、FGRKKRRQRRR(配列番号:3)を含むか又はこのアミノ酸配列からなるtatペプチドが好まれる。別の好ましい変異体tatペプチドは、GRKKRRQRRR(配列番号:1)からなる。使用することができる他のtatペプチドには、GRKKRRQRRRPQ(配列番号:4)及びGRKKRRQRRRP(配列番号:72)が含まれる。他のtatペプチドには、配列GRKKRRQRRRに少なくとも8つの連続したアミノ酸が含まれる。N型カルシウムチャンネルを阻害することなしに薬理学的薬剤の取り込みを促進する他のtatペプチドには、表3に示されたものが含まれる。他の好ましいtatペプチドは、rv-tat又はRRRQRRKKRGY(配列番号:70の1-11番目のアミノ酸)と称される。
【0091】
【表3】

【0092】
Xはフリーのアミノ末端、1つ又は複数のアミノ酸、又は抱合された部分を表すことができる。内在化ペプチドは、インベルソ又はレトロ又はインベルソレトロ型であって、かかる型で存在する連結ペプチド又はペプチドミメティックが有ったり無かったりの状態で用いることができる。
【0093】
内在化ペプチドは従来法により薬理学的薬剤に結合することができる。例えば、上記薬剤は内在化ペプチドに、化学的連結(例:結合剤又は抱合剤を介するもの)を介して連結することができる。そのような薬剤の多くは市販されており、Wong, Chemistry of Protein Conjugation and Cross-Linking, CRC Press (1991)によって概説される。クロスリンク試薬のいくつかの例には、J−サクシニミジル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸(SPDP)又はN、N'−(1,3−フェニレン)ビスマレイミド;N,N'−エチレン−ビス(イオドアセタミド)若しくは6から11の炭素メチレンブリッジを有する他の試薬(スルフヒドリル基に相対的特異的なもの);及び1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン(これはアミノ基及びチロシン基と不可逆的なリンクを形成する)が含まれる。他のクロスリンク試薬には、p,p'−ジフルオロ−m,m'−ジニトロジフェニルスルフォン(これは、アミノ基及びフェノール系基と不可逆的なクロスリンクを形成する);ジメチルアジピミデート(これはアミノ基に特異的である);フェノール−1,4−ジスルフォニルクロライド(これは主にアミノ基と反応する);ヘキサメチレンジイソシアネート若しくはジイソチオシアネート、又はアゾフェニル−p−ジイソシアネート(これは主にアミノ基と反応する);グルタルアルデヒド(これはいくつかの異なる側鎖と反応する)及びジスジアゾベンジジン(これは主にチロシンとヒスチジンと反応する)が含まれる。
【0094】
ペプチドである薬理学的薬剤の場合、内在化ペプチドへの結合は、好ましくはN末端に内在化ペプチドが融合されたペプチド配列を含む融合タンパクを作製することにより達成され得る。
【0095】
任意ではあるが、tatペプチドに融合された薬理学的ペプチドは、固相合成又は遺伝子組換えの方法で合成することができる。ペプチド模倣剤は、科学文献及び特許文献に記載される様々な過程及び方法論を使って合成することができる。例えば、Organic Syntheses Collective Volumes、Gilman et al. (Eds) John Wiley & Sons, Inc., NY, al-Obeidi (1998) Mol. Biotechnol. 9:205-223; Hruby (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1:114-119; Ostergaard (1997) Mol. Divers. 3:17-27; Ostresh (1996) Methods Enzymol. 267:220-234がある。
【0096】
<IV. 内在化ペプチドに対する炎症反応>
本発明者らは、内在化ペプチド(例:tat)が、被験体への投与で炎症反応を誘導する能力があることを見出した。上記炎症反応は、通常、ペプチド投与の1、5、10、20、30、又は60分以内に検出されるが、ペプチド投与の24時間以内には典型的に消失する(上記ペプチドは再投与されないと仮定する)。上記炎症反応は用量依存的である。炎症反応は上記ペプチドの再投与の際に同様の強度で典型的に再発する。炎症反応の一態様は、しばしば、内在化ペプチドを投与した後の約0-30分の期間内で発生する一過性の血圧低下である。
【0097】
上記炎症反応は、マスト細胞が脱顆粒されたり、その結果としてヒスタミン及び他の炎症媒介物(例:ケモカイン、サイトカイン、ロイコトリエン、リパーゼ、プロテアーゼ、キニン、サイトカイン、アラキドン酸誘導体(例:プロスタグランジン)、インターロイキン、及び/又は一酸化窒素)が放出されたりすることを特徴とする(図12を参照)。ヒスタミン及び/又は他の放出される炎症媒介物は、多くの炎症症状(皮膚の発赤、熱、腫脹、低血圧、及び/又は脈拍の減少を含む)を生じる。ヒスタミン放出は、血管拡張、低血圧、気管支収縮、平滑筋の活性化、内皮細胞の分離(じん麻疹の原因)、疼痛、かゆみ、毛細血管の透過性の増加、腺の過分泌、平滑筋のけいれん、及び/又は炎症性細胞の組織浸潤(胃酸の分泌及び、神経伝達物質(例:ヒスタミン、アセチルコリン、ノルエピネフリン、セロトニン)の放出の減少とともに)を生じさせることもできる。これらの後遺症、特に容易に測定可能なもの、例えば低血圧又は皮膚発疹(例:じんま疹) のいずれかが検出されたことをマスト細胞脱顆粒の指標として使用することができる。
【0098】
<V. 抗炎症剤>
多種多様な抗炎症剤が上述の炎症反応のタイプに関する1又は複数の態様を阻害するのにすぐに利用できる(参照:例えば米国特許番号6,204,245であって、引用により組み込まれる)。
【0099】
抗炎症剤の好ましい種類は、マスト細胞脱顆粒阻害剤である。この種の化合物には、クロモリン(5,5'-(2-ヒドロキシプロパン-1,3-ジイル)ビス(オキシ)ビス(4-オキソ-4H-クロメン-2-カルボン酸)(別名クロモグリク酸)、及び2-カルボキシラトクロモン(carboxylatochromon)-5'-イル-2-ヒドロキシプロパン誘導体(例えばビス(アセトキシメチル)、クロモリン二ナトリウム、ネドクロミル(9-エチル-4,6-ジオキ-10-プロピル-6,9-ジヒドロ-4H-ピラノ[3,2-g]キノリン-2,8-ジカルボン酸)及びトラニラスト(2-{[(2E)-3-(3,4-ジメトキシフェニル)プロプ-2-エノイル]アミノ}))、及びロドキサミド(2-[2-クロロ-5-シアノ-3-(オキサロアミノ(oxaloamino))アニリノ]-2-グリオキシル酸)が含まれる。特異的化合物に対する対照標準には、医薬的に許容可能な化合物の塩類が含まれる。クロモリンは、経鼻、経口、吸入、又は静脈内投与のための製剤としてすぐに利用できる。本発明の実施は、メカニズムの理解には依存していないが、これらの薬剤は内在化ペプチドによって誘導される初期の炎症反応に作用するので一過性の血圧低下を含むその後遺症の発症を抑制させるのに最も効果的であると考えられる。後述する他の種類の抗炎症剤は、マスト細胞の脱顆粒の結果から生じる1又は複数の下流のイベントを阻害する(例:ヒスタミンがH1又H2受容体に結合することを阻害する)のに役立つが、マスト細胞脱顆粒の全ての後遺症を阻害しないかもしれないし、高用量を必要とするかもしれないし、そうなるように組合せて使用してもよい。以下の表8には、本発明で使用可能なマスト細胞脱顆粒阻害剤の名前と化学式及びFDAの状況を要約している。
【0100】
【表8】


【0101】
抗炎症剤の他の種類は、抗ヒスタミン化合物である。このような薬剤は、ヒスタミンとその受容体との結合を阻害し、それによる結果として炎症の後遺症(上述したもの)を阻害する。多くの抗ヒスタミンは市販されていて、いくつかは薬局のカウンター越しに処方箋なしで買える。抗ヒスタミンの例は、アザタジン、アゼラスチン、バルフォロリン(burfroline)、セチリジン、シプロヘプタジン、ドクサントロゾール(doxantrozole)、エトドロキシジン(etodroxizine)、フォルスコリン、ヒドロキシジン、ケトチフェン、オキサトミド、ピゾチフェン、プロキシクロミル(proxicromil)、N,N'-置換ピペラジン類、又はテルフェナジンである。抗ヒスタミンは、末梢の受容体に選択性を有する第2及び第3世代の抗ヒスタミンを用いることで、末梢の受容体と同様にCNSでの抗ヒスタミンをブロックする能力にばらつきがある。アクリバスチン、アステミゾール、セチリジン、ロラタジン、ミゾラスチン、レボセチリジン、デスロラタジン、及びフェキソフェナジンは、第2及び第3世代の抗ヒスタミンの例である。抗ヒスタミンは経口製剤及び局所製剤に広く使用される。いくつかの使用可能な他の抗ヒスタミンは、下記の表9にまとめられている。
【0102】
【表9】


【0103】
炎症反応を阻害するのに有用な抗炎症剤の別のクラスは、コルチコステロイドである。これらの化合物は転写制御因子であり、ヒスタミン及び他の化合物(マスト細胞脱顆粒から生じたもの)の放出の結果生じた炎症症状の強力な阻害剤である。コルチコステロイドの例は、コルチゾン、ヒドロコルチゾン(コーテフ)、プレドニゾン(デルタゾン(Deltasone)、メチコーテン(Meticorten)、オラゾン(Orasone))、プレドニゾロン(デルタコーテフ、ペジアプレド(Pediapred)、プレロン(Prelone))、トリアムシノロン(アリストコート(Aristocort)、ケナコート)、メチルプレドニゾロン(メドロール)、デキサメタゾン(デカドロン、デクソン(Dexone)、ヘキサドロール(Hexadrol))、及びベタメタゾン(セレストン)である。コルチコステロイドは、経口製剤、静脈製剤、及び局所製剤に広く使用される。
【0104】
非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)も使用可能である。このような薬には、アスピリン化合物(アセチルサリチル酸類)、非アスピリンサリチル酸類、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、フェニルブタゾン、スリンダク、及びトメチン(tometin)を含む。しかし、そのような薬物の抗炎症作用は、抗ヒスタミンやコルチコステロイドのものよりも効果が弱い。
【0105】
より強力な抗炎症薬(例:アザチオプリン、シクロホスファミド、リューケラン(leukeran)、及びシクロスポリン)も使用することができるが、それらはゆっくりと作用し、及び/又は副作用に関係するので好ましくない。生物学的抗炎症剤(例:タイサブリ(登録商標)又ヒュミラ(登録商標))も使用することができるが、同様の理由で好ましくない。
【0106】
異なる種類の薬を、炎症反応を阻害する際に組合せて使用することができる。好ましい組合せは、マスト細胞脱顆粒阻害剤及び抗ヒスタミンである。
【0107】
<VI. 抱合>
内在化ペプチドにより誘導される炎症反応を抑制する代替的な又は付加的な方法は、内在化ペプチドをビオチン又は類似分子に連結して抱合体を形成することである。上記抱合体は、連結された薬理学的薬剤が細胞へ取り込まれることを促進する能力を保持するが、ビオチンを有しない同一の内在化ペプチドに比較して炎症反応の低減を誘導する。抱合された内在化ペプチドは、所望の取り込み及び結果として生じる免疫反応の欠如(低減)を確認するためにスクリーニングされ得る。
【0108】
内在化ペプチドの抱合体を形成するのに用いることができるビオチンの代替物には、アセチル、ベンゾイル、アルキル基(脂肪族)、ピログルタミン酸、シクロアルキル基を末端に有するアルキル基、アルキルスペーサーを有するビオチン、(5,6)-FAMが含まれる。ビオチン又は他の分子は、アミド化学、スルファミド化学、スルホン化学、及び/又はアルキル化化学を介して内在化ペプチドに連結されてもよい。
【0109】
<VII. 治療/予防を受け入れられる患者>
表1にリストされた薬理学的薬剤及び関連する状態により例示されるように、広い範囲の患者が本発明の方法により治療可能である。本方法は、内在化ペプチドにより生じる任意の炎症を悪化させるだろう状態の患者(例:高血圧、脈拍の増加、又は炎症の他の兆候若しくは症状に罹患する患者)に特に有用である。本方法は、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を高用量必要とする治療方法に特に有用でもある。厳密には、もし炎症反応があるならば炎症反応の存在と程度を決定づけるのは、連結された薬理学的薬剤というよりもむしろ内在化ペプチドの用量である。しかし、内在化ペプチドの用量は、もちろん連結された薬理学的薬剤の用量により決定される。例えば、炎症反応は、1.5mg/kgより多い内在化ペプチドの用量で、はっきりと分かるようになるかもしれない。いくつかの疾患の治療では、薬理学的薬剤及び結果として連結された内在化ペプチドの有効量が低すぎて、ほとんどの患者に炎症反応を誘導することができない。それにもかかわらず、炎症反応に対する個々の患者の感度はばらつきがあり、軽度の抗炎症剤(例:ヒスタミン)を用いた治療は今でも価値ある予防措置とすることができる。
【0110】
特に関心のある患者の1つのクラスは、興奮毒性を特徴とする疾患若しくは状態を有する又はリスクのある患者である。このような疾患及び状態には、脳卒中、てんかん、低酸素、脳卒中に関連しないCNSへの外傷(例:外傷性脳障害及び脊髄損傷)、アルツハイマー病、及びパーキンソン病が含まれる。かかる状態には、脳に対して血液を行き来させる管(例えば、頸静脈又は頸動脈)に影響を及ぼすか又はその可能性がある手術を受けている患者、特に脳外科(例えば動脈瘤を修復する血管内手術又は肢、脊髄、網膜若しくは腎臓に供給している血管に対する血管内手術)を受けている患者も含まれる(本願と共に出願された、2009年6月10日出願の第61/185,989号及び代理人docket 026373-00920PCを参照)。かかる修復は、例えば、動脈瘤にかかっている血管内へステント又はコイルを挿入することによって、成し遂げられることができる。本発明の方法は、これらの疾患及び状態を有するか、そのリスクのある男性並びに女性患者の両者の治療に適している。
【0111】
脳卒中は、原因に関わらずCNSの血流障害から生じる状態である。可能性のある原因としては、塞栓症、出血、血栓症が含まれる。いくつかの神経細胞は血流障害の結果すぐに死滅する。これらの細胞は、グルタミン酸を含むそのコンポーネントの分子を放出し、順次NMDA受容体を活性化し、細胞内カルシウムレベルを上げ、そして、さらなる神経細胞死を導くように細胞内酵素レベルを上げる(興奮毒性カスケード)。CNS組織の死滅は梗塞と呼ばれる。梗塞容積(即ち、脳卒中に起因する死滅した神経細胞の容積)は、脳卒中に起因する病理学的損傷の程度の指標として使用することができる。症候性の効果は、梗塞容積とそれが脳のどこに位置するかとの両者に依存する。障害指数は、症候性障害の基準(例:ランキンストローク予後スケール(Rankin, Scott Med J;2:200-15(1957))とバーセルインデックス)として使用され得る。以下のように、ランキンスケールは患者の全体的な状態を直接評価することに基づいている。
【0112】
【表4】

【0113】
バーセルインデックスは、日常生活の10個の基本的活動を行うための患者の能力に関する一連の質問に基づいている。その結果、0と100との間のスコアになり、より低いスコアはより重い障害を示す(Mahoney et al., Maryland State Medical Journal 14:56-61 (1965))。
【0114】
代わりに、脳卒中重篤度/予後はNIH脳卒中スケールを用いて測定してもよい(world wide web ninds.nih.gov/doctors/NIH_Stroke_Scale_Booklet.pdfで利用できる)。
【0115】
そのスケールは、患者の意識、運動機能、知覚機能、及び言語機能のレベル評価を含む11グループの機能を行う患者の能力に基づいている。
【0116】
虚血性脳卒中は、より具体的には、脳への血流の遮断が原因の脳卒中のタイプを指す。このタイプの遮断の基礎となる状態は、最も一般的には血管壁の内層にある脂肪沈着の発生である。この状態はアテローム性動脈硬化症と呼ばれる。これらの脂肪沈着は、2種類の閉塞を生じることができる。脳血栓症は、血管の詰まった部分に発生する血栓(thrombusとblood clot)を指す。「脳塞栓症」は、一般的に循環器系(通常、心臓及び胸郭上部及び頚部の大動脈)の別の位置で形成する血栓を指す。血栓の一部は、それから緩んで分解し、血流に入り、そして小さすぎて通過できない血管に到着するまで脳の血管を移動する。塞栓症の2つ目の重要な原因は、動脈細動として知られる不規則な心拍である。それが血栓を心臓で形成し、取りはずれ、脳へ移動できる状態を作り出す。虚血性脳卒中の更なる潜在的な原因は、出血、血栓症、動脈又は静脈の解離、心臓停止、出血を含む任意の原因のショック、及び医原性の原因(例:脳血管若しくは脳に通じる血管への直接的な外科的損傷又は心臓若しくは肺手術)である。虚血性脳卒中は、脳卒中のすべての症例の約83%を占める。
【0117】
一過性脳虚血発作(TIA)は、軽微な又は警告的脳卒中である。TIAでは、虚血性脳卒中を示す状態が存在し、典型的な脳卒中の警告兆候が発生する。しかしながら、閉塞(血栓)は短時間起こり、通常のメカニズムを介してそれ自身を消散させる傾向がある。心臓、肺又は神経手術を受けている患者は、一過性脳虚血発作の特別なリスクがある。
【0118】
出血性脳卒中は、脳卒中症例の約17%を占める。それは、弱くなった血管が破裂して周辺の脳へ出血することに起因する。血液は蓄積されて周囲の脳組織を圧迫する。出血性脳卒中の2つの一般的なタイプは、脳内出血及びくも膜下出血である。出血性脳卒中は、弱くなった血管の破裂に起因する。弱くなった血管の破裂に関する潜在的な原因には、高血圧性出血(そこでは、高い血圧が血管の破裂を引き起こす)、又は弱くなった血管の別の基礎的原因(例:破裂脳血管奇形(例:脳動脈瘤、動静脈奇形(AVM)、又は海綿状奇形))が含まれる。出血性脳卒中は、梗塞部位で血管を弱体化する虚血性脳卒中が出血性のものへ変化すること、又は異常に弱い血管を含むCNSにある原発性腫瘍若しくは転移性腫瘍からの出血によっても生じることができる。出血性脳卒中は、医原性の原因(例:脳血管への直接的な外科的損傷)からも生じる可能性がある。動脈瘤は、血管の弱体化領域が肥大化したものである。放置した場合、その動脈瘤は、それが破裂して脳に出血するまで弱くなり続ける。動静脈奇形(AVM)は、異常に形成された血管のクラスターである。海綿状奇形は、弱くなった静脈構造からの出血を引き起こす可能性がある静脈異常である。これらの血管のいずれか一つが破裂し、脳に出血を引き起こす可能性もある。出血性脳卒中は、物理的外傷に起因する可能性もある。脳の一部に起こる出血性脳卒中は、出血性脳卒中において失われた血液の不足を介して別の部分に虚血性脳卒中を引き起こすことができる。
【0119】
<VIII. 抗炎症剤と共の薬理学的薬剤の送達>
内在化ペプチド連結薬理学的薬剤が抗炎症剤と共に投与される方法において、その2つの構成要素が十分近接した時間内に投与され、上記抗炎症剤が上記内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害することができる。上記抗炎症剤は、薬理学的薬剤の前、同時、又は後に投与されてもよいが、好ましくは前に投与される。好ましい時間は、抗炎症剤の薬物動態及び薬動力学に一部依存する。薬理学的薬剤が投与される時に、上記抗炎症剤がほぼ最高血清濃度になるように、抗炎症剤は薬理学的薬剤前の期間において投与される。典型的には、抗炎症剤は、薬理学的薬剤投与の6時間前と1時間後との間に投与される。例えば、抗炎症剤は、薬理学的薬剤の1時間前から30分後までに投与することができる。好ましくは、抗炎症剤は、薬理学的薬剤の30分前から15分後まで、より好ましくは薬理学的薬剤の15分前から同じ時間までに投与される。いくつかの方法において、抗炎症剤は、薬理学的薬剤が投与される前であって、薬理学的薬剤が投与される15分前、10分前又は5分前に投与される。いくつかの方法において、薬剤は、薬理学的薬剤の1-15分前、1-10分前又は1-5分前に投与される。
【0120】
薬剤の投与が瞬間的ではない(例:静注)時であって、それらの投与期間が同一時間にわたるか又は重複する場合は、抗炎症剤及び薬理学的薬剤は同時投与であると考えられる。投与前ならば、投与が開始されてから投与期間がスタートする。投与前の投与期間は、その投与の開始からスタートする。投与後の期間は、その投与の終了からスタートする。抗炎症剤の投与に関する期間は、その投与の開始を起点mnトする。抗炎症剤の投与に関する期間は、その投与の開始を起因とする。
【0121】
上記抗炎症剤が、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤による炎症反応を阻害できると言える時は、上記2つの薬剤は、抗炎症剤が内在化ペプチド連結薬理学的薬剤誘導性の炎症反応を阻害するには充分に近い時間で投与されることを意味し、かかる反応が特定の患者に起こる場合はかかる反応がその患者に起こることを必ずしも意味しない。何人かの患者は、統計的に有意な患者数の比較臨床試験又は比較非臨床試験において炎症反応を伴う内在化ペプチド連結薬理学的薬剤の投与によって治療される。必ずしも全てというわけではないが、かなりの割合のかかる患者が内在化ペプチド連結薬理学的薬剤による抗炎症反応を発病すると合理的にみなすことができる。いくつかの患者において、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤に対する炎症反応の徴候又は症状は、検出されるか又は、検出可能である。
【0122】
個々の患者の臨床治療において、抗炎症剤の存在及び非存在の状態で内在化ペプチド連結薬理学的薬剤由来の炎症反応を比較することは通常はできない。しかしながら、著しい阻害が比較臨床試験又は比較非臨床試験における同一又は類似の条件下で見られる場合、抗炎症剤はペプチド誘導性の抗炎症反応を阻害すると合理的に結論付けることができる。患者の結果(例えば、血圧、心拍数、じんま疹)は、臨床試験のコントロール群における典型的な結果と比較することで、個々の患者において阻害が起こったかどうかの指標とすることもできる。通常、抗炎症剤は、薬理学的薬剤の投与後の1時間以内のいくつかのポイントにおいて検出可能な血清中濃度で存在する。多くの抗炎症剤の薬物動態学は広く知られており、抗炎症剤投与の相対的タイミングはそれに応じて調節することができる。抗炎症剤は、通常、末梢的に投与される。即ち、抗炎症剤は血液脳関門によって脳から分離される。例えば、抗炎症剤は、当該薬剤に応じて、経口的に、経鼻的に、静注で、又は局所的に投与できる。抗炎症剤が薬理学的薬剤と同時に投与される場合、2つは複合製剤としてか、又は別々に投与できる。
【0123】
いくつかの方法において、脳において検出可能な薬理活性を発揮する少なくとも充分な量を経口的又は静注で投与されたときには、抗炎症剤は血液脳関門を通らないものである。かかる薬剤は、それ自体が脳において検出可能な任意の治療効果を発揮しなくても、末梢へ薬理学的薬剤を投与することから生じるマスト細胞脱顆粒及びその後遺症を阻害することができる。いくつかの方法において、抗炎症剤は、血液脳関門の透過性を上昇させるか又は抗炎症剤を誘導体化若しくは調製することで血液脳関門を横切るその能力を向上させる任意の共治療なしに投与される。しかしながら、他の方法において、抗炎症剤は、その性質、誘導体化、製剤又は投与経路により、脳に入るか、さもなければ脳の炎症に影響を及ぼすことによって、末梢での内在化ペプチドに起因するマスト細胞脱顆粒及び/又はその後遺症を抑制し且つ脳の炎症を阻害する二重効果を発揮する可能性がある。Strbian et al., WO 04/071531は、静注ではなく、i.c.v.に投与したマスト細胞脱顆粒阻害剤(クロモグリク酸)は、動物モデルの梗塞形成を阻害する直接的な活性を有することを報告している。
【0124】
いくつかの方法において、患者は、薬理学的薬剤と共投与した前後の日、週又は月において薬理学的薬剤と共投与したのと同じ抗炎症剤では治療されない。いくつかの方法において、患者が別の方法による反復投与計画(例えば、同じ量、輸送ルート、投薬頻度、投薬日のタイミング)において、薬理学的薬剤と共投与されるのと同じ抗炎症剤を用いて治療されている場合、薬理学的薬剤と抗炎症剤との共投与は反復投与計画(一部又は全部の量、輸送ルート、投薬頻度又は投薬日のタイミング)に適合しない。いくつかの方法において、患者は、本方法において薬理学的薬剤と共投与される抗炎症剤の投与を必要とする炎症性疾患又は状態を患っていることを知らない。いくつかの方法において、患者は、マスト細胞脱顆粒阻害剤によって治療可能な喘息又はアレルギー疾患を患っていない。いくつかの方法において、抗炎症剤及び薬理学的薬剤は、疾患のエピソード毎に上記の期間内で各々一度だけ投与される。エピソードは、疾患の症状がある比較的短い期間であって、症状がないか又は和らいでいる、より長い期間と隣接する期間である。
【0125】
内在化ペプチドに対する炎症反応を阻害するのに効果がある量、回数、及び経路からなる投与計画において、かかる炎症反応が抗炎症剤の非存在下で起こることが知られた状態の下で上記抗炎症剤は投与される。抗炎症剤投与の結果、炎症の兆候又は症状に関する任意の低減があった場合は、炎症反応は阻害されている。炎症反応の症状には、発赤、発疹(例えばじんま疹)、熱、腫脹、疼痛、チクチクする感じ、かゆみ、吐き気、発疹、口渇、しびれ感、及び気道うっ血を含む。兆候(例:血圧又は心拍数)を測定することにより炎症反応をモニターすることができる。代わりに、炎症反応は、マスト細胞脱顆粒により放出されるヒスタミン又は他の化合物の血漿中濃度を測定することによって評価してもよい。マスト細胞脱顆粒による高レベルのヒスタミン若しくは他の化合物の放出、血圧低下、皮膚発疹(例えばじんま疹)又は心拍数低下が見られることは、大量の細胞脱顆粒の指標である。実際問題として、上述した上記抗炎症剤のほとんどのものの投与量、投与計画、及び投与経路は、「Physicians' Desk Reference」及び/又は製造元から利用できるため、このような抗炎症剤は、そのような一般的なガイダンスと調和する本発明の方法の中で使用することができる。
【0126】
<IX. 治療/予防の方法>
<a) 治療方法>
内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を含むキメラ薬剤は、効果的な投与量、投与回数、及び投与経路にて投与され、治療中の疾患を患っている患者において少なくとも一つの疾患の兆候若しくは症状のさらなる悪化を治癒、低減、又は阻害する。治療的に有効な量とは、本発明のキメラ薬剤で治療していない疾患若しくは状態を罹患している患者(又は動物モデル)のコントロール群における損傷に比べて、本発明のキメラ薬剤で治療された疾患に罹患している患者(又は動物モデル)の群において、治療される疾患若しくは状態の少なくとも一つの兆候若しくは症状のさらなる悪化を治癒、低減、又は阻害するのに十分有意なキメラ薬剤の量を意味する。本発明の方法で治療しない比較対象患者のコントロール群における平均予後よりも、個々の治療を受けた患者の方がより好ましい予後を達成する場合、その量は治療的に有効であるとも考えられる。治療的に有効な投与計画は、意図した目的を達成するのに必要な投与回数及び経路にて治療的に有効な用量を投与することに関する。
【0127】
脳卒中又はその他の虚血状態を罹患している患者の場合、脳卒中又は他の虚血状態の損傷効果を低減させるのに効果的な投与量、投与回数及び投与経路を含む投与計画にて上記キメラ薬剤は投与される。治療を必要とする状態が脳卒中である場合、梗塞容積若しくは障害指数によって、その予後が測定され得る。個々の治療を受けた患者のランキンスケールが2以下の障害若しくはバーセルスケールが75以上の障害であると示す場合、又は治療された群が未治療の比較群よりも障害スケールのスコア分布が有意な改善を示す(即ち、より低い障害の)場合、投与量は治療的に有効であると考えられる(Lees et at l., N Engl J Med 2006;354:588-600を参照されたい)。単一用量のキメラ薬剤が、脳卒中の治療に通常十分である。
【0128】
<b)予防方法>
本発明はまた、疾患のリスクがある被験体において、上記疾患の予防のための方法及び組成物も提供する。通常このような被験体は、コントロール群に比べて、障害(例:状態、病気、障害、又は疾患)を発症する可能性が増大することを示す。例えば、上記コントロール群は、障害と診断されたことがない、又は家族歴を有しない一般群(例えば、年齢、性別、人種、及び/又は民族が適合した群)から無作為に選択される1又は複数の個人を含むことができる。上記障害と関連する「リスク因子」が被験体と関連することが分かった場合、上記被験体は上記疾患のリスクがあると考えてもよい。リスク因子には、例えば被験体群に関する統計学的若しくは疫学的調査を通して所定の障害と関連のある、任意の活性、体質、発症、又は性質が含まれる。従って、その基礎的リスク因子を同定する調査が具体的に被験体を含まなかった場合でさえも、被験体は上記障害のリスクを有するとして分類してもよい。心臓手術を受けていない被験体群に比べて、それを受けた被験体群において一過性脳虚血発作の頻度が増加するため、例えば、心臓手術を受けている被験体は一過性脳虚血発作のリスクがある。
【0129】
その他の脳卒中の共通するリスク因子には、年齢、家族歴、性別、脳卒中、一過性脳虚血発作若しくは心臓発作の先の発生、高血圧、喫煙、糖尿病、頸動脈若しくは他の動脈疾患、心房細動、他の心臓疾患(例:心臓疾患、心不全、拡張型心筋症、心臓弁膜症、及び/又は先天性心欠陥)、高血中コレステロール、及び食事(例:飽和脂肪、トランス脂肪、若しくはコレステロールの高い食事)が含まれる。
【0130】
疾患の少なくとも一つの兆候若しくは症状の発生を阻止、遅延、又は阻害するのに十分な量、回数、及び経路において、上記疾患を患っていないが上記疾患のリスクがある患者に、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤が投与される。予防的に有効な量とは、本発明のキメラ薬剤で治療していない疾患のリスクがある患者(又は動物モデル)のコントロール群に比べ、上記薬剤で相対的に治療された疾患のリスクがある患者(又は動物モデル)の群において、上記疾患の少なくとも一つの兆候若しくは症状を阻止、阻害、又は遅延する十分有意なキメラ薬剤の量を意味する。本発明の方法で治療しない比較対象患者のコントロール群の平均予後よりも、個々の治療を受けた患者の方がより好ましい予後を達成する場合、その量は予防的に有効であるとも考えられる。予防的に有効な投与計画は、意図した目的を達成するのに必要な投与回数及び経路で予防的に有効な用量を投与することに関する。切迫した脳卒中リスクを有する患者(例えば、心臓手術を受けている患者)における脳卒中の予防の場合、単一用量のキメラ薬剤が通常十分である。
【0131】
<X. 医薬組成物、投与量、及び投与経路>
本発明のキメラ薬剤は、医薬組成物の形で投与することができる。医薬組成物は、典型的にはGMP条件下で製造される。医薬組成物は、単位用量形態(即ち、単一の投与のための投与量)で提供することができる。医薬組成物は、混合、溶解、造粒、糖衣錠形成、粉末化(levigating)、乳化、カプセル化、封入(entrappi ng)、又は凍結乾燥工程の通常の手段で製造することができる。例えば、凍結乾燥された本発明のキメラ薬剤は、以下で説明する処方及び組成物中で使用してもよい。
【0132】
医薬組成物は、キメラ薬剤を医療用に使用できる製剤へと加工することを促進する、一つ又は複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤又は助剤を使って、従来の方法で処方することができる。適切な処方は、選択する投与経路に依存する。
【0133】
いくつかの医薬組成物は、活性薬剤と抗炎症剤の同時投与用の、上述の活性薬剤及び抗炎症剤の共製剤である。かかる共製剤は、典型的に、溶液に溶解された活性薬剤であるが、活性薬剤は共凍結乾燥するか個々に凍結乾燥して混合するかして、使用前に再調製する。溶液から混合されるか、凍結乾燥物(lyophilysate)を再構成することによって混合されるかどうかに関係なく、製剤は、好ましくは形成物に可視粒子を実質的に含まない(即ち、粒子性型は各活性薬剤の10%、5%又は1%未満である)。製剤は、好ましくは少なくとも1週、1ヵ月又は1年間の保存で可視粒子を実質的に含まないままである。製剤は、冷液体の形において(約4度の冷蔵庫において)保存できるか又は冷凍の形において保存できる。
【0134】
かかる組成物の一例は、ロドキサミドとTat-NR2B9cとの共製剤である。2つの活性薬剤は、活性薬剤の濃度範囲で水溶液中に調製できる。例えば、Tat-NR2B9cの濃度は、約1-30mg/mlの範囲とすることができ、ロドキサミドの濃度は0.1から5mg/mlの範囲とすることができる。共製剤は、等張化剤(例えば、NaCl)、pHを調整する塩酸又は水酸化ナトリウム、緩衝液、防腐剤及び他の様々な賦形剤であって、ロドキサミドの市販製剤において使用されるもの(例えばマンニトール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、クエン酸ナトリウム、クエン酸、エデト酸二ナトリウム、チロキサポール)を含むこともできる。製剤は、実施例において更に規定しているようにTat-NR2B9c含有生理食塩水とアロマイド(ロドキサミド)を単に混ぜ合わせて、ボルテックスすることによって調製できる。Tat-NR2B9cは、好ましくは10-30mg/ml又はより好ましくは、20mg/mlの濃度である。NA-1及びロドキサミドは、約2:3又はより好ましくは、1.89:3.11の比率で組合せる。
【0135】
投与は、非経口、静脈内、経口、皮下、動脈内、頭蓋内、髄腔内、腹腔内、局所、鼻腔内、又は筋中であってもよい。静脈内投与が好ましい。
【0136】
非経口投与のための医薬組成物は、好ましくは滅菌及び実質的に等張である。注射については、キメラ薬剤は水溶液中に処方されてもよく、好ましくはハンクス溶液、リンガー溶液、又は生理食塩水若しくは酢酸緩衝液(注射部位での不快感を軽減するため)などの生理的に相溶性のある緩衝液中である。その溶液は、調剤(例:懸濁剤、安定化剤、及び/又は分散剤)を含むことができる。
【0137】
キメラ薬剤は、別の形態では、使用前に、適切な媒体(例えば無菌で発熱物質フリーの水)と構成するために粉末状としてもよい。
【0138】
経粘膜的な投与については、透過させる障壁に適切な浸透剤が、その処方中に使用される。化合物を鼻腔に運ぶためか舌下投与のために、この投与経路を使用してもよい。
【0139】
経口投与に関して、上記キメラ薬剤は、治療を受ける患者の経口摂取用に製薬上許容できる担体(例:錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ジェル、シロップ、スラリー、及び懸濁液など)と共に処方してもよい。経口固形製剤(例:粉末、カプセル及び錠剤)については、適切な賦形剤には、充填剤(例:糖質(例:ラクトース、ショ糖、マンニトール及びソルビトール));セルロース製剤(例:トウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉、ゼラチン、ガムトラガント、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP));顆粒剤;及び結合剤が含まれる。所望に応じて、崩壊剤(例:架橋したポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩(例:アルギン酸ナトリウム))が加えられてもよい。所望に応じて、固形投与形態は標準的な手法を使用して糖衣又は腸溶コーティングすることができる。例えば、経口液体製剤(例:懸濁液、エリキシル剤、及び溶液)については、適した担体、賦形剤又は希釈剤には水、グリコール、オイル、アルコールが含まれる。更に、香料、防腐剤、着色剤などを加えてもよい。
【0140】
前に記載した製剤に加えて、キメラ薬剤は、徐放性製剤として処方することもできる。このような長期持続製剤は、移植(例えば、皮下又は筋中)又は筋肉注射によって投与してもよい。従って、例えば、その化合物は適した高分子あるいは疎水性材料(例えば、許容されるオイル中のエマルジョンとして)若しくはイオン交換樹脂と共に、又は、中程度の水溶性誘導体(例:中程度の水溶性塩)として処方することができる。
【0141】
あるいは、他の医薬品送達システムを用いてもよい。キメラ薬剤を送達するのにリポソーム及びエマルジョンを使用してもよい。ある種の有機溶剤(例:ジメチルスルホキシド)を用いてもよい(但し、通常、より大きな毒性の犠牲を払う)。更に、上記化合物は徐放システム(例:治療剤を含む固体高分子の半透性マトリックス)を使用して送達可能である。
【0142】
徐放性カプセルは、その化学的性質に応じて、数週間から100日を越えてキメラ薬剤を放出することができる。治療剤の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、タンパク質の安定化のためのさらなる戦略を採用することができる。
【0143】
本発明のキメラ薬剤は荷電側鎖又は末端を含むことができるので、それらを遊離酸若しくは塩基、又は製薬上許容できる塩として上記製剤のいずれかに含めてもよい。製薬上許容できる塩は、実質的に遊離塩基の生物学的活性を保持する及び無機酸と反応して調製されるそれらの塩である。医薬用の塩は、対応する遊離塩基形態よりも水溶液及びその他のプロトン性溶媒中により溶解する傾向がある。
【0144】
薬理学的薬剤に連結された内在化ペプチドを含むキメラ薬剤は、上記薬理学的薬剤単独のものとモルベースで同一かそれより低い投与量で使用してもよく、上記薬理学的薬剤単独の場合と同一の経路及び上記薬理学的薬剤単独の場合と同一の疾患の治療のために投与してもよい。
【0145】
脳卒中の治療の場合、好ましい用量範囲は、患者の体重1kg当たり0.001から20μmolのキメラペプチド又はペプチド模倣剤を含み、任意ではあるが、患者の体重1kg当たり0.03から3μmolのキメラペプチドを含む。いくつかの方法では、患者の体重1kg当たり0.1から20μmolのキメラペプチド又はペプチド模倣剤が投与される。いくつかの方法では、患者の体重1kg当たり0.1〜10μmolキメラペプチド又はペプチド模倣剤、より好ましくは患者の体重1kg当たり約0.3μmolキメラペプチドである。他の実施例では、その用量範囲は、患者の体重1kg当たり0.005から0.5μmolのキメラペプチド又はペプチド模倣剤である。体重1kg当たりの投与量は、質量に対する異なる表面面積比率を補正するために6.2で割ることによってラットからヒトへ変換することができる。投与量は、キメラペプチド又はペプチド模倣剤の分子量を乗じることにより、モル単位からグラムへ変換することができる。ヒトに使用するキメラペプチド又はペプチド模倣剤の適切な投与量には、0.001から5mg/kg患者の体重、又は0.005から1mg/kg患者の体重、若しくは0.05から1mg/kg、あるいは0.09から0.9mg/kgが含まれる。75kgの患者の場合の絶対重量については、これらの投与量は0.075から375mg、0.375から75mg、又は3.75mgから75mg、若しくは6.7から67mgと計算される。例えば、患者の体重の変化を含むよう四捨五入すると、投与量は通常0.05から500mg以内に、好ましくは0.1から100mg、0.5から50mg、又は1から20mg以内である。指示用量は、典型的な病院の設定において量り取ることができる用量の精度の点で固有の誤差限界を含んでいることを理解すべきである。
【0146】
マスト細胞脱顆粒が最も起こりそうな時に薬理学的薬剤を高用量で投与する際には、抗炎症剤と薬理学的薬剤の共投与は特に有効である。ヒトに対するキメラ薬剤Tat-NR2B9cの投与に関して、マスト細胞脱顆粒が発生しそうなおおよその用量レベルは、2.6mg/mg以上の用量である。したがって、抗炎症剤の共投与は、特に2.6mg/kg、3mg/kg、5mg/kg又は10mg/kg以上のTat-NR2B9cの用量の時に有効である。通常、用量は50mg/kg以下である。
【0147】
より低い用量は、多くの患者にとって同程度に効果的であるかもしれないが、高用量の使用は極めて急性な疾患(例えば脳卒中) において有利であり、最初の薬理学的薬剤投与が不十分である場合、次の機会はほとんどないかもしれない。当然、マスト細胞の脱顆粒が発生する正確な用量については、個々の患者においていくらかの幅が予想される。従って、通常よりも高い感受性を持つ少数の患者におけるマスト細胞の脱顆粒の発生に備えて、より低い用量のTat-NR2B9cにおいて抗炎症剤を予防措置として投与することは有効であるとすることもできる。例えば、抗炎症剤は、0.5mg/kg、1mg/mg又は2mg/kg以上のTat-NR2B9cの用量で投与できる。
【0148】
いくつかの方法において、治療される患者群の中で、抗炎症剤を投与される患者もいれば、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤の用量に依らずに患者に対して高用量の抗炎症剤を施されるものもいる。Tat-NR2B9cのための抗炎症剤を投与するか否かの遷移点は、約1-3mg/kgの用量である。例えば、1mg/kg以下を投与している患者には抗炎症剤を投与せず、3mg/kg以上を投与している患者には抗炎症剤を投与し、そして、1mg/kg超え且つ3mg/kg未満の用量を投与している患者には抗炎症剤を投与してもしなくてもよい。当然、上記投与計画はただの実施例であり、種々の遷移点を設定することができる。また、遷移点以上の用量を投与している全ての患者には抗炎症剤を投与することができ、遷移点未満の用量を投与している全ての患者は、抗炎症剤なしで治療することができる。また、上記のように、全ての患者には、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤の用量に関係なく抗炎症剤を投与することができる。キメラ薬剤Tat-NR2B9c(YGRKKRRQRRRKLSSIESDV; 配列番号:6)に関して上で示した用量は、その薬剤の1又は数個のアミノ酸が置換、挿入、欠失された近類の変異体であって、分子量は同じかその約+/-25%以内のままのものについても使用することができる。しかしながら、一般的に、炎症性薬剤を投与するタイミングを決定づけるための他の薬剤の等価用量は、Tat-NR2B9cの投与量に対して等モル量の内在化ペプチドを送達するその薬剤の用量を算出することによって決定することができる。
【0149】
キメラ薬剤の投与量は、治療される被験体に依存し、被験体の体重、苦痛の重症度、投与方法、及び処方する医師の判断に依存する。症状が検出可能な間、又はそれらが検出できない時であっても治療法は断続的に繰り返してもよい。治療は単独で、又は他の薬物と組合せて提供してもよい。脳卒中の治療の場合、内在化ペプチド連結薬理学的薬剤の投薬は、通常脳卒中の発症から24時間以内、好ましくは脳卒中の発症から6時間以内に投与される。
【0150】
<XI. キット>
キットが、本発明の方法を実行するために提供される。上記キットは、内在化ペプチドに結合した、1つ又は複数の目的の薬理学的薬剤を含む。上記内在化ペプチドはビオチン化されてもよく、及び/又は上記キットは抗炎症剤を含んでもよい。インスタントキットには、任意ではあるが、薬理学的薬剤、及び/又は抗炎症剤を投与する手段が含まれる。上記キットは、1つ又は複数の緩衝液、添加剤、充填剤、又は希釈剤を含むこともできる。上記キットは、従うべき投与及び用量計画に関する、1つ又は複数の印刷された説明書を提供してもよい。
【0151】
<XII. スクリーニング方法>
<A. 内在化活性の測定>
変異体(tat又は他の内在化ペプチドの変異体)は、動物中で透過活性をテストすることができる。内在化ペプチドは、単独で、又は活性薬剤(例えばKLSSIESDV(配列番号:5)のような活性ペプチド)に連結された場合にテストしてもよい。内在化ペプチド(任意ではあるが、活性薬剤(例:ペプチド)に連結したもの)は、好ましくは、蛍光ラベル(例:塩化ダンシル)でラベルされる。内在化ペプチドは、それから動物(例:マウス)の末梢に注射される。例えば、腹腔内、又は静脈注射が適している。注射後約1時間に、マウスは屠殺され、固定液(生理食塩水中で、3%パラホルムアルデヒド、0.25%グルタルアルデヒド、10%ショ糖、10U/mLのヘパリン)で灌流される。その後、脳は取り出され、冷凍され、そして切片にされる。切片は、共焦点顕微鏡を用いて蛍光解析される。任意ではあるが、ポジティブ及びネガティブコントロールと比較して内在化活性を蛍光から測定する。適切なポジティブコントロールは、テストされる内在化ペプチドとして、(もし存在すれば)同一の活性ペプチドに連結された標準tatペプチドである。適切なネガティブコントロールは、内在化ペプチドに連結されていない蛍光ラベルされた活性ペプチドである。ラベルされていない媒体もネガティブコントロールとして使用することができる。
【0152】
類似の実験を、細胞培養で変異体(tat又は他の内在化ペプチドの変異体)をテストするために実施することができる(米国特許出願公開第20030050243号明細書を参照されたい)。蛍光ラベル変異tatペプチド(任意ではあるが、活性ペプチドに連結される)が皮質神経細胞培養に添加される。添加後数分に渡って蛍光顕微鏡を用いて、取り込みを測定する。動物における取り込みに関する実験に記載されているように、ポジティブ及びネガティブコントロールと比較して取り込みの増加を測定することができる。
【0153】
<2. 治療している脳卒中における活性の測定>
薬剤に連結された内在化ペプチドを含むキメラ薬剤の活性が、脳卒中の様々な動物モデルにおいてテストすることができる。そのようなモデルの一つにおいて、成体雄スプラーグドーリーラットを、90分間、腔内縫合法(36、37)により一過性の中大脳動脈閉塞(MCAO)にさらす。動物を一晩絶食し、硫酸アトロピン(0.5mg/kg IP)を注射する。10分後、麻酔を行う。ラットに口から挿管し、機械的に換気し、臭化パンクロニウム(0.6mg/kg IV)を用いて麻酔する。体温を、加熱灯を用いて36.5〜37.5℃で維持する。大腿動脈及び静脈においてポリエチレンカテーテルを用いて、継続的に血圧を測定し、ガスとpH計測のために血液を採取する。一過性MCAOは、90分間、内頚動脈を介してウィリス動脈輪にポリ−L−リジンコートされた3-0モノフィラメントナイロン糸(Harvard Apparatus)を導入することで、効果的に中大脳動脈を閉塞することにより実現される。これは、大脳皮質及び大脳基底核を取り囲む広範な梗塞を作りだす。動物を、テスト対象のキメラ薬剤又はネガティブ若しくはポジティブコントロールのいずれかを用いて治療する。治療は、虚血の誘導前かその1時間後までのいずれかであってもよい。ネガティブコントロールは媒体であってもよい。ポジティブコントロールは、先に効果があることが示されたtat-NR2B9cペプチド(YGRKKRRQRRRKLSSIESDV(配列番号:6))とすることができる。MCAOの45分前に、単一の静脈内ボーラス投与によりキメラ薬剤を送達する(3nmoles/g)。動物に化合物を投与後、梗塞容積及び/又は障害指数を測定する。梗塞容積は、通常、治療の24時間後に測定する。しかし、より遅延した時期(例:3、7、14、又は60日)に測定してもよい。障害指数は、例えば、治療後2hr、治療後24hr、治療後1週間及び1ヶ月の時期にモニターしてもよい。化合物で治療していないコントロール動物に比べて、梗塞容積及び/又は障害指数が統計学的に有意に減少することを示すキメラ薬剤は、本発明の方法の実施に有用な活性を有するとして同定される。
【0154】
類似した実験を、恒久的虚血にさらされた動物において行うことができる。Forder et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol 288:H1989-H1996 (2005)に記述されているように、中大脳動脈軟膜血管の恒久的虚血を行うことができる。手短には、PE10ポリエチレンチューブを用いて右ECAにカテーテルを挿入する。頭蓋骨を正中切開を介して剥き出しにする、右体性感覚皮質(ブレグマから尾側2mm及び側方5mm)に6から8mmの頭蓋窓を作製する。通常の生理食塩水中に溶かした生体用色素パテントブルーバイオレット(10mMol/L;Sigma)の小さなボーラス(10〜20μL)をECAに注入することによって、軟膜動脈を可視化する。同一の3つの軟膜動脈MCA枝は電気焼灼され、焼灼動脈を通じての血流の中断を確実にするため、染料注射が繰り返される。その切開はその後閉じられ、動物はケージに戻され、そして餌と水に自由にアクセスできるようにする。この恒久的虚血モデルは、凝固した末端軟膜動脈を原因とする皮質に限定される再現性の高い小さな梗塞を生み出す。
【0155】
Longa(Stroke 20, 84-91 (1989))により記載された腔内縫合法によって、左中大脳動脈を閉塞することができる。手短には、正中頸部切開を介して左総頸動脈(CCA)を剥き出しにする。そして、周囲の神経及び帯膜を含まずに、その分岐部から頭蓋底にかけて解剖する。外頸動脈(ECA)の後頭動脈枝をそれから単離し、これらの分岐を解剖し及び凝固する。ECAを更に遠方に解剖し、その後分かれている端末舌及び上顎動脈枝と共に凝固する。内頸動脈(ICA)を単離し、隣接する迷走神経から分離し、そして、翼口蓋動脈をその起点の近くで結紮する。3-0モノフィラメントナイロン縫合糸(Harvard Apparatus)の4センチの長さの先端は、0.33から0.36mmの先端径及び0.5から0.6mmの先端の長さを達成するために燃焼して丸められ、そして、ポリ−L−リジンでコートされた。縫合糸をCCAを介して導入し、ICA、そしてそこからウィリス動脈輪(頸動脈分岐部から約18〜20mm)中に進め、効果的に中大脳動脈を閉塞する。腔内ナイロン縫合糸の周りで、それを締めるためにCCAの周囲で絹縫合糸を締め、中大脳動脈を恒久的に閉塞する。
【実施例】
【0156】
<実施例1>
<Tat-NR2B9cの神経保護効力に関する性差のインパクト>
Tat-NR2B9cの神経保護効力を、脳卒中のインビボ軟膜3血管閉塞(P3VO)モデル(Forder JP, Munzenmaier DH, Greene AS、ラットにおけるアンジオテンシンIIタイプ1受容体遮断を有する局所虚血からの血管形成保護、Am J Physiol Heart Circ Physiol 2005 April;288(4):H1989-H1996)を用いて雄と雌ラットとの両者において評価した。
【0157】
<方法>
<動物>
ウィスカーバレル皮質上の中大脳動脈の3終枝に恒常的軟膜血管閉塞(P3VO)を施す前に、成体スプラーグドーリーラット(10〜12週齢)(雄〜300g、雌〜250g)を、12〜18時間絶食させた。Tat-NR2B9cの試験を雄ラットと生理食塩水コントロール群(各グループ、n=8)とで行った。Tat-NR2b9c及び生理食塩水コントロールを雌ラット(各グループ、n=8)で試験した。研究者は、手術時から梗塞サイズの解析までの間、治療群に対して盲検で行った。
【0158】
<一般的手順>
ラットは、0.5ml/kgの筋中注射(ケタミン(100mg/kg)、アセプロマジン(2mg/kg)及びキシラジン(5mg/kg)をして麻酔し、必要に応じて初期用量の3分の1を補充した。肛門温度プローブを挿入して、動物は37℃に維持された加温パッドの上に動物を置いた。右外頸動脈(ECA)に、色素注射のためにPE10ポリエチレンチューブを用いてカテーテル挿入をした。正中切開を介して頭蓋骨を剥き出しにし、組織を含まないよう表面をこすり、側頭筋は右側頭蓋骨から離断した。解剖顕微鏡と空気圧歯科用ドリルを使用して、硬膜を無傷のままに保ちながら頭蓋骨を4角形にドリルして頭蓋骨のその断片を持ち上げることにより、右体性感覚皮質(ブレグマから尾側2mm及び側方5mm)に6x4mmの頭蓋窓を作製した。人工脳脊髄液で洗った後、皮質の表面にある血管を介しての通過を実証するために、通常の生理食塩水中に溶かした生体用色素パテントブルーバイオレット(10mmol/L;Sigma)の小さなボーラス(10〜20μL)を右外頸動脈に注射した。バレル皮質周囲にあるMCAの3つの重要な動脈枝が選択され、そして硬膜を通して電気焼灼した。焼灼後にボーラス注射及び色素通過を繰り返して、焼灼された動脈が遮断されたことを確実にした。上記4角形の頭蓋骨をその窓の上に置き、そして頭蓋骨を縫合した。カテーテルをECAから除去し、ECAを結紮し、そして前頸部を縫合した。局所閉塞の開始1時間後、0.3mlの薬物(3nMol/g体重)又は生理食塩水コントロールを、尾静脈から0.06ml/minの速度で注入した。ラットが十分に回復するまで、体温を維持するために加熱灯下の独立したケージに、各々のラットを戻した。餌と水を自由供給した。
【0159】
<脳組織の回収と梗塞サイズ解析>
手術24時間後、1mLのペントバルビタールで動物を再麻酔し、そして脳を速やかに回収した。梗塞領域から冠状切片を取り出し、2%塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)中で15分間37℃でインキュベートした。画像をスキャナーで取り込み、脳切片を-80℃で保管した。梗塞サイズを、この研究では、各ラットの半球に対するパーセントとして測定した。梗塞サイズの測定を行った後、その動物をそれぞれのグループに分けた。治療グループ間で平均±SEとして比較した。
【0160】
<結果及び結論>
ラットにおける脳卒中のP3VOモデルは、雄と雌の両SDラット中で強くそして再現性のある梗塞を生じた。P3VO手術を行った24時間後に有意に減少した梗塞サイズが観察されるので、tat-NR2B9cペプチドは雄と雌との両者において神経保護的である(図1)。脳卒中の1時間後にTat-NR2B9c(3nM/g)を用いての治療は、両性の動物中で梗塞を劇的に減少させた(図1)。同等濃度のTat-NR2B9cで治療した雌ラットにおいては梗塞の完全な欠如が見られるので、この神経保護反応は雄よりも雌中でより明白に見えた。しかしながら、生理食塩水で治療したコントロールによると、雄ラットよりも雌ラット中で平均梗塞サイズは小さい(71%)ことを示している。
【0161】
<実施例2>
<Tat配列を含むペプチドはインビトロでヒスタミン放出を伴うマスト細胞脱顆粒を誘導する>
<方法>
<細胞培養>
C57マウスを70%エタノールで滅菌し、そして皮膚と結合組織を除いて大腿骨を解離した。骨髄細胞を採取し、そして、OPTI-MEM(Gibco)(5%熱失活化FBS、6%WEHI条件培地(IL-3の供給源として)、及び55μM □-2メルカプトエタノールを含む)に再懸濁した。細胞は約1x106cells/mLで培養された。2日後、細胞を回収及び遠心分離し、そのペレットを新しい培地を用いて新しいプレートに蒔いた。新しいWEHI条件培地を毎週加えた。その細胞が>95%マスト細胞になった後、約4週間、その細胞を培養し、マスト細胞脱顆粒アッセイのために使用した。
【0162】
<マスト細胞脱顆粒アッセイ>
マスト細胞脱顆粒アッセイキット(CHEMICON、Temecula、CA)を用いてトリプターゼ活性を測定した。単離後、その細胞を洗浄し、そして1Xアッセイバッファー中に約1x106 cells/mLで再懸濁した。TAT-NR2B9C又は他のペプチドを用いた処理のため、以下の濃度の溶液(0.125mg/mL、1.25mg/mL、12.5mg/mL、又は125mg/mL)50μLをその細胞懸濁液に加えた。500nMのA23187(カルシマイシン)(マスト細胞におけるトリプターゼ放出の誘導因子)をポジティブコントロールとして使用した。細胞を37℃、5%CO2で60分間インキュベートした。細胞懸濁液を700xgで遠心分離し、そしてその上清を注意深く回収した。アッセイ混合物(キット中で提供されるもの)を96穴マイクロタイタープレート中に準備した。20μLのトリプターゼ基質を各実験及びコントロールウェルに加えることにより比色反応を開始した。サンプルを37℃で60分間インキュベートした。マイクロプレートリーダーにおいて吸光度を405nmで測定した。
【0163】
マスト細胞脱顆粒を誘導するために、以下の処理を使用した。
1) ネガティブコントロール(任意のペプチドを含まないアッセイバッファー)
2) ポジティブコントロール(カルシウムイオノフォアA23187)
3) Tat-NR2B9c
4) PSD-95結合配列を含まないTat-NR2B9cのTat由来配列
5) Tat配列を含まないが、Tat-NR2B9cのPSD-95結合配列を含むNR2B9c
6) AA(NMDA NR2Bサブユニットの9つのカルボキシ末端アミノ酸に融合したTat配列を含む20アミノ酸ペプチドであるが、PSD-95に結合できなくなる2アミノ酸変異を有する)。
【0164】
以下に記載されるいくつかの動物実験においては、10mg/kg用量のTat-NR2B9Cを施されたイヌで達成される最大血清濃度(総体重の8%を血液量と仮定することに基づく)に近似させるために、すべてのペプチドを125mg/mLの濃度で添加した。
【0165】
<結果及び結論>
図2に見られるように、Tatトランスダクションドメインを含むペプチドはすべて、マスト細胞脱顆粒を引き起こしたが、NR2B9cペプチド(Tat配列を含まない)は引き起こさなかった。インビトロのマスト細胞脱顆粒アッセイは、抗体の非存在下で行われた。従って、任意のマスト細胞脱顆粒は免疫現象によるものと言うことはできない。特に、RT-PCR及びウエスタンブロットを使用して、我々はTat-NR2B9cの治療標的であるPSD-95をマスト細胞が含むかどうかを検討した。我々はこれらの細胞中にPSD-95を検出することができなかった(結果は示されない)。この結果からマスト細胞脱顆粒がTat -NR2B9cとPSD-95との相互作用により引き起こされそうにないとする更なる証拠が提供された。
【0166】
更なる実験で、我々はTat-NR2B9cによるマスト細胞脱顆粒の程度とAAペプチドによるその程度が用量依存的であることを測定した。具体的には、Tat-NR2B9cの濃度がより増加すると、図3に示されるようにマスト細胞脱顆粒の増大を誘起する。
【0167】
さらなる実験で、我々はマスト細胞脱顆粒に対するTat-NR2B9c配列変異の効果を検討した。同一のアッセイを使って、以下の化合物(すべて50μM)を試験した。
【0168】
【表5】

【0169】
図4に見られ得るように、Tat配列を含むすべての化合物及びTatペプチド配列は、マスト細胞脱顆粒を誘発した。しかし、NR2B9c単独ではこの反応を誘発しなかった。
【0170】
<実施例3>
<Tat配列を含むペプチドの抱合体は、インビトロにおけるマスト細胞脱顆粒を誘導できない>
実施例2に記載された方法を使って、マスト細胞脱顆粒に対する、Tat含有ペプチドへのある種の修飾(例:抱合)の効果を調べた。修飾されたペプチドには、Tat-NR12B9c、Tat-NR2B9cのD−異性体(D-Tat-NR2B9cと名付けられる)、ビオチン抱合Tat-NR2B9c、ビオチン抱合AMP-KLSSIESDV(配列番号:5)が含まれる。図5に示されるように、ビオチン抱合Tat又はAMPペプチドは、マスト細胞脱顆粒を誘導できなかった。
【0171】
<実施例4>
<ビーグル犬を用いた動物試験において、Tat-NR2B9cはヒスタミンレベルとヒスタミン反応の増加を誘発する>
GLPでの14日間静脈内投与毒性試験を未処置のビーグル犬(3/性別/グループ)(CRM試験番号:501448)で実施した。その中で、動物に0、0.25、1.0、又は10mg/kgのTat-NR2B9cを毎日注射した。血液サンプル(約1mL)を投与の1、6、及び12日前、並びに注射の5及び15分後にすべての動物から採取した。血液サンプルを、静脈穿刺(頸静脈、伏在静脈、及び橈側皮静脈)によって、EDTAを含むチューブに回収した。サンプルを、それから冷却遠心分離器(約4℃)中で、2700rpm、10分間遠心分離(回収の30分以内に)した。適切なラベルを付した第2のチューブに血漿を分離して、CRMでの解析まで-80℃で保管した。血漿サンプルをヒスタミンレベルの検討に用いた。Tat-NR2B9cを静脈内に投与された動物からのサンプルを、正当と認められる方法を使用して解析した。
【0172】
10mg/kgのTat-NR2B9cを投与されたすべての動物は、治療に関連した臨床兆候(鼻口部、歯肉(蒼白であるも記述される)、耳介、眼窩周囲領域、及び肢の発赤からなるもの)を呈し、しばしば腫脹と関連する。これらの作用は、嗜眠及び触知不可能な脈拍と関連し、担当獣医は重度の低血圧反応として特徴付けた。投薬の最初の日から始まり14日間の投薬期間を通し持続する、これらの作用を毎日観察したが、それらの動物に明白な順応はなかった。これらの作用は、抗体を基礎とする免疫応答の発生にはよらなかった。なぜなら、これらの動物は投薬の最初の日までTat-NR2B9cに暴露されず、そして、14日間の治療においてその反応の重症度の上昇が観察されなかったからである。具体的には、これらの未処置ビーグル犬へのTat-NR2B9cの第一回投与直後にヒスタミンレベルの上昇が観察された(イヌ血漿ヒスタミンレベルのサマリーについては表6を参照されたい)。これらの動物はTat-NR2B9cに一度も暴露されたことがなく、従ってTat-NR2B9cに対するメモリーT細胞又は循環抗体を保有していたはずはない。また、任意の用量レベルでの14日間反復投与毒性試験期間中、一貫したヒスタミンレベルの上昇は観察されず、抗原特異的応答の拡大はないことが示された。したがって、Tat-NR2B9cによるヒスタミンレベルの上昇が観察されたことは、抗原特異的抗体応答というよりはむしろマスト細胞の直接の脱顆粒の結果である。
【0173】
【表6】


【0174】
<イヌにおけるヒスタミン放出を示すTat-NR2B9cの循環器系作用>
非拘束覚醒ビーグル犬におけるGLP循環器系遠隔計測試験(CRM試験番号:691106)において、投薬の段階と段階の間に3日間の休薬期間を設けて、Tat-NR2B9cの用量を増加させながら(0.25、1.0、又は5.0mg/kgペプチド総量)、6匹の動物(雄3匹、雌3匹)に投与した。0.25又は1.0mg/kgでは、血圧への作用は観察されなかった。5mg/kgでは、6匹のイヌ中4匹で一過的な血圧降下が観察され、約30分持続した。血圧の降下が用量に関連している可能性があるかもしれないとする所見は、その降下が、アレルギー(抗体媒介)免疫応答によるものではなかったことを示す。更に、低用量(0.25mg/kg)と高用量(5.0mg/kg)との間の期間は約6日間である。即ち、免疫応答を発生可能にするには不十分な期間である。従って、その作用は、ヒスタミン放出を引き起こすマスト細胞の直接の脱顆粒により引き起こされる。
【0175】
14日間イヌ反復投与毒性試験でテストされる最も高い用量レベル(即ち、10mg/kg)における詳細な循環器系の情報を得るために、非拘束覚醒ビーグル犬での追加的なGLP循環器系遠隔計測試験を行った(CRM試験番号:691429)。6匹の動物(雄3匹、雌3匹)は、午前中に媒体そして、同じ日の午後に10mg/kgのTat-NR2B9c(投薬と投薬との間に少なくとも4時間)を受けた。治療された動物に投薬後15分まで心拍数の増加が観察され、雄及び雌は10分で最大の作用が観察された。投薬後5から10分で、個々の動物において血圧値の減少(62%まで)が観察された。この追加的な循環器系試験で用いられた雌動物は、チャールスリバーのコロニーから取得されたものであって、以前にTat-NR2B9cの最初の循環器系試験(CRM試験番号:691106)で使用した処置済動物であった。CRM試験番号:691429中10mg/kgで観察された作用は、14日間イヌ毒性試験(CRM試験番号:501448)で観察された臨床兆候に相当するものであり、CRM試験番号:691106中でテストされた最も高い用量レベル(5mg/kg)で観察されたものよりも重度の血圧作用が、治療された動物に観察された。これらの結果からマスト細胞の直接的な脱顆粒が再び示される。
【0176】
我々は、50mg/kgのTat-NR2B9cを施された麻酔されたラットの血圧に関するTat-NR2B9cの作用について非GLP試験を実施した。この用量が一回換気量、呼吸数、及びそれに由来する分時換気量を減少させるので、この用量をラットに対して選択した。一つの実験では、5匹のスプラーグドーリーラットに、50mg/kgのTat-NR2B9cボーラス投薬を3分間与えた。大腿動脈カテーテルを介して血圧をモニターした。
【0177】
図6に示されるように平均動脈圧の一過的な減少がすべての動物に起こった。6匹の動物が同様にテストされた別の実験から同様な結果が示された。イヌの場合において上記で議論されたように、ラットにおけるこれらの反応は、Tat-NR2B9cに対する免疫応答を発生させる任意の先行機会がなかった未処置の動物においても観察された。これらのデータからTat配列を含むペプチドによるマスト細胞脱顆粒の第2の種としての証拠が提供される。
【0178】
<イヌ中のヒスタミン放出を示す炎症反応>
一回の低速静脈注射によりビーグル犬に投与されるTat-NR2B9cの用量範囲を調べるために、非GLP試験を実施した。2匹の動物(ビーグル犬雄一匹及び雌一匹)に、Tat-NR2B9cを7回静脈内投薬した。その投薬と投薬との間には、3〜4日間の休薬期間があった。第一回目の用量は2.5mg/kgで与えた。その動物は任意の毒性兆候を示さなかったので、2回目の用量は7.5mg/kgで投与された。雄動物は、頭部軟部組織の血管神経性浮腫、及び特に腹部の腹側面のじん麻疹型反応を呈した。雌イヌでは反応がなかった。バイタルサイン(心拍数、血圧、呼吸数、及び体温)は、両動物において正常な生理学的範囲内に留まった。3回目の用量は、12.5mg/kgで与えた。投薬後、血管神経性浮腫及びじん麻疹が、両動物で観察された。雄イヌの反応は中程度と評価され、雌動物では反応は軽度であった。その次の用量は20.0mg/kgにセットした。投薬後、雄動物はショックに落ち入り、血圧(BP)及び脈拍は検出されなかった。ベネドリルとデキサメタゾンのi.v.投与でその動物を治療した。投薬後5分のBPは、37/13mm Hg(イヌにおける正常なBPは〜160/90)として記録された。雌動物に投薬しないよう決定した。
【0179】
先行する投薬で見られた反応型をよりよく理解するために、次の用量を与えた。5回目と6回目の用量は2.5と5.0mg/kgにセットした。2.5mg/kgで、雄イヌの耳及び顔面の発赤を除いては、いずれの動物においても他の副作用は観察されなかった。5.0mg/kgでは、雄動物に中程度の反応が見られたが、雌イヌでは反応はなかった。
【0180】
高用量Tat-NR2B9cは、重度の一過性低血圧及びじん麻疹様皮膚反応を誘導できると結論付けた。これらの反応は用量依存的のように見え、雄動物は雌動物よりも被験物質に敏感であるように見えた。
【0181】
<実施例5>
<抗ヒスタミンを用いた治療は、イヌにおけるTat-NR2B9cにより誘導される症状を阻止する>
Tat-NR2B9cの30分前に投与される1mg/kgのベネドリルを用いた前投与の後、実施例4の両動物に、12.5mg/kgのTat-NR2B9cを投与した。雄動物中に、耳の真皮の軽微な発赤があった。Tat-NR2B9c投与の15〜20分後に、雄動物は嘔吐もした。雌イヌには反応が観察されなかった。従って、抗ヒスタミン薬ベネドリルの前投与は、以前観察された、両動物における同一用量レベルのTat-NR2B9cでの血管神経性浮腫及びじん麻疹反応を阻止した。この結果は、抗ヒスタミン(例:ベネドリル)、及びコルチコステロイド(例:デキサメタゾン)が、マスト細胞脱顆粒の有害事象を効果的に治療することを示している。
【0182】
合わせて考えると、これらの結果からTat-NR2B9cの投与が実験動物の血中ヒスタミンレベルの上昇を誘発し、ヒスタミンレベルの上昇はマスト細胞脱顆粒によるものであり、そして、この応答を抗ヒスタミン医薬で治療したりコルチコステロイドで治療したりすることはTat-NR2B9cとタンパク質トランスダクションドメイン(例:Tat)を含む他の化合物を投与するのに有効な手段を構成するかもしれない直接的な実験証拠が提供される。
【0183】
<実施例6>
<Tat-NR2B9cがヒトにおいて血中ヒスタミンの上昇を誘発するとする直接証拠>
<方法>
我々は、ヒトにおけるTat-NR2B9cの安全性、許容性、及び薬物動体試験を実施した。被験体は、18歳以上の正常、健康、非喫煙男性、又は閉経後若しくは外科的に生殖不能な女性被験体のいずれかであった。被験体は、点滴静脈内投与(10±1分)で、Tat-NR2B9c(ロット番号:124-134-001B)を投与されるか、又はプラセボ(リン酸緩衝生理食塩水)(ロット番号:124-134-001A)を与えられるかのいずれかであった。4人の被験体がコホート1から3の各々において投薬され、そして、10人の被験体がコホート4から8の各々において投薬された。62人の被験体のすべてが試験を完了した。各コホートの治療期間は以下である:コホート1:2006年9月14日、コホート2:2006年9月26日、コホート3:2006年10月6日、コホート4:2006年10月20日、コホート5:2006年11月6日、コホート6:2006年12月4日、コホート7:2006年12月17日、コホート8:2007年2月25日。
【0184】
<採血タイムポイント>
試験期間中、薬物動体解析のため、11の血液サンプルを各被験体から以下のタイムポイントで回収した:投薬後0.00(投薬前)、0.08(5分)、0.17から0.25(各々の独立した薬物注入の終了から正確に10から15分)、0.33(20分)、0.50、0.75、1.00、2.00、6.00、12.00、及び24.00時間。それに加え、ヒスタミン分析のために、各被験体から以下のタイムポイントで8つの血液サンプルを回収した:投薬後0.00(投薬前)、0.08(5分)、0.17(10分)、0.25、0.50、1.00、2.00、及び24.00時間。
【0185】
<安全性評価>
試験経過中少なくとも一回投薬を受けたすべての被験体において、安全性試験を行った。すべての有害事象(AE)の出来事を治療と被験体番号により集計した。バイタルサインの絶対値、心電図(ECG)パラメータ、実験パラメータ及び身体診察も文書化され、正常範囲外の値に印をつけた。ベースライン値からシフトしたものを集計した。AEは、研究者及び国際医薬用語集 (MedDRA)の用語を使って文書化した。
【0186】
<結果>
<パート1:血中ヒスタミンレベルへのTat-NR2B9cの作用>
投薬による異常ヒスタミン結果の要約が、表7で説明される。3.75mg/kg用量群での8被験体中7人は、NA1投与開始から10分後に10nmol/Lよりも高い(平均24.3nmol/L;最大39.8nmol/L)ヒスタミンレベルを有していた。上記被験体のうち3人は、NA1投与開始から15分後に10nmol/Lよりも高い(平均15.3nmol/L;最大20.3nmol/L)のヒスタミンレベルをまだ有していた。
【0187】
3.75mg/kg用量群の他は、どの治療群も有意に異常なレベルのヒスタミンを有していなかった。プラセボ群及び0.375mg/kg用量群は、1つのタイムポイントでヒスタミンレベルが上昇する被験体を1人ずつ有していたが、これらの結果はそれぞれ、スクリーニング時及び投薬後2.00時間においてであった。すべての異常ヒスタミン結果は、薬物投与の24.00時間以内に正常な範囲に戻った。
【0188】
【表7】

【0189】
<パート11:安全性データ>
試験に参加した40人の被験体は、上記試験中に総数168個の有害事象(AE)を経験した。AEの大半は重症度が軽度なものであった。プラセボ治療を受けた16人中6人の被験体(37.5%)は少なくとも1つのAEを経験した一方で、実薬治療を受けた46人中34人の被験体(73.9%)は少なくとも1つのAEを経験した。2.60及び3.75mg/kg用量群の被験体は、それより低い用量群の被験体よりも有意に多くのAEを経験した。重度の有害事象(SAE)は報告されなかった。Tat-NR2B9cを施された被験体が経験した最も共通する有害事象は、熱感(46分の13; 28.3%)、そう痒症(46分の12; 26.1%)、潮紅(46分の10; 21.7%)、及び口渇(46分の9; 19.6%)であった。すべてのAEは、血中グルコースが増加した2例を除いて消散したため、被験体を経過観察することはできなかった。
【0190】
2.60及び3.75mg/kg用量群でのAEの発生頻度は、プラセボ、0.02、0.08、0.20、0.375、0.75、及び1.50mg/kg用量群におけるAE発生率よりも高かった。Tat-NR2B9cの≧2.60mg/kgの用量においては、いくつかのAEが頻繁に報告された。これらには、(1)血圧の減少、(2)ピリピリ感(知覚異常)、(3)しびれ感(低感覚)、(4)発赤(紅斑)、(5)発疹、(6)かゆみ(そう痒症)、(7)口渇、(8)悪心、(9)熱感、及び(10)潮紅が含まれる。これらの有害事象の発症は、試験薬物の投与と同時に起こり、そして、おそらく試験薬物に関連していた。
【0191】
Tat-NR2B9cを用いた前臨床試験では、ヒスタミンレベルの上昇が高用量群で観察され、副作用(腫脹、発赤、及び低血圧を含む)の原因である可能性があった。現在の試験では、静脈内薬物投与の開始10分後において、最も高い用量群(3.75mg/kg)で8人中7人の被験体においてヒスタミンレベルが上昇し、そして、薬物投与の15分後においてもこれらの被験体中3人は上昇したままであり、その後レベルは正常範囲に回復した。3.75mg/kg用量群においては、ヒスタミンレベルが上昇した同一の期間中にほとんどのAEが観察された。このことは、ヒスタミンレベルの上昇が最も頻繁に報告されたAE(血圧の減少、ピリピリ感、しびれ感、発赤、発疹、かゆみ、口渇、悪心、熱感、及び潮紅)の原因であったことを示唆する。
【0192】
リストされた有害事象のほとんどが動物前臨床試験でも観察され、そこでは、最大許容用量(MTD)は、イヌ及びラットでそれぞれ12.5及び100mg/kgであることが立証された。2.60及び3.75mg/kg用量群におけるAEのほとんどは観察されないか、又は0.02と1.50mg/kgとの間の用量群でたった1人の被験体に観察された。このことは、より高い用量のTat-NR2B9cで観察されたAEは、これよりより低い用量範囲では最小限又は存在しなかったということを示唆する。
【0193】
<実施例7>
<材料>
AnaSpec Inc (San Jose, CA)によって化学的に合成されたTAT-NR2B9c。Sickkids Hospital Advanced Protein Technology Centre (Toronto, ON, Canada)によって化学的に合成されたRv-Tat-NR2B9c。全てのペプチドは、高性能液体クロマトグラフィーによって、>95%まで精製した。ペプチドストック(3mM)を無菌の生理食塩水にて調製し、一定量に分割して-80℃で保存した。クロモリン、ピリラミン、ラニチジン、オキサトミド及びデキサメタゾンは、Sigma-Aldrich (St. Louis, MO)から購入した。
【0194】
ラットを2%イソフルラン及び2Lの酸素ガスを含むチャンバー中で寝かせ、一旦寝たならば、低減ガス(1%イソフルラン及び2Lの酸素ガス)を含む顔当てに変えた。PE50チューブを用いたカテーテル処置のために大腿動脈及び静脈を切開した。これらの動脈及び静脈は、それぞれ平均動脈圧(MAP)の継続的なモニタリングと薬剤注入のための通路を提供する。クロモリン(1mg/kg/min)又は生理食塩水(1ml/kg/min)を5分間注入し、そしてTAT-NR2B9c、Rv-Tat-2B9c(生理食塩水中にて3μM/kg)、又は、生理食塩水(1ml/kg)は、生理食塩水又はクロモリン注入直後にボーラス注入によって与えた。これらの研究で使用する他の薬は、TAT-NR2B9c注射の10分前に注入された。手術は、動物の左側に実施された。動物の血圧(HEWLETT PACKARD Blood pressure system, model 78304A)、そして、体温(Digi Sense Thermometer, model 8528-10)は、1分毎に60分間モニターした。ベースライン時に生理食塩水(1ml/kg)を全てのグループに与え、コントロール群には各タイムポイントで更に2ml/kgの生理食塩水を投与した。提示される結果は、5匹のラットからの平均MAPである。実行した全ての実験の概要(各薬剤でn = 10)は、平均±SEM(スチューデントの検定、* P < 0.05及び*** p < 0.001)として、それぞれのグラフを示している。
【0195】
図7は、高用量である7.5 mg/kgのTat-NR2B9c及びRv-Tat-NR2B9(NR2B9cに結合したtatは、逆配向)が注射後約0-6分間にわたってMAPが迅速且つ一時的に低下することを示す。
【0196】
図8A-Dは、Tat-NR2B9c投与の約5分前に静脈内投与された5mg/kgのクロモリンの効果を示す。図8Aは、Tat-NR2B9c単独での治療、Tat-NR2B9cとクロモリンでの治療又はコントロールとしての生理食塩水とクロモリンでの治療に関するMAPの経時変化を示す。図8Bは、濃度曲線下面積を示す。図8Cは、最小のMAP値を示す。図8Dは、MAPの最大減少率を示す。アスタリスクは、統計的に有意な結果を示している。図8Bは、クロモリンでの治療がTat-NR2B9cに起因するMAPの低下を著しく低減させることを示す。クロモリンは、クロモリンと生理食塩水のコントロールで示すように、それ自身はTat-NR2B9cの非存在下でMAPに影響を及ぼさなかった。更に図8B-Dに示す比較から、血圧低下を阻害するクロモリンの著しい作用が例示される。
【0197】
同じ実験をTat-NR2B9cの代わりにRv-Tat-NR2B9cを使用することによって実行し、そして図8E及びFに示すように類似の結果が得られた。即ち、クロモリンは、Rv-Tat-NR2B9cに起因するMAP値の低下を著しく阻害した。
【0198】
図9A-Dは、ジフェンヒドラミン(12.5mg/kg)(ベネドリル)、ヒスタミンH1拮抗薬をクロモリンの代わりの抗炎症剤として使用したこと以外は類似しているデータを示す。ジフェンヒドラミンは、図9A、B及びDに示すように血圧低下も著しく阻害した。しかしながら、ジフェンヒドラミンの投与自体がTat-NR2B9cの投与前に血圧の急激な低下を引き起こした。ジフェンヒドラミン(diphendydramine)を1mg/kgで使用したことを除いて、実験は繰り返された。ジフェンヒドラミン(Diphendydramine)は、この用量においてTat-NR2b9cに起因する血圧低下を阻害する著しい効果が認められなかった。ジフェンヒドラミンは、この用量においてそれ自身が血圧の低下をもさせなかった。
【0199】
上記実験を他のH1拮抗薬であるピリラミンで繰り返した。Tat-NR2B9cに起因する血圧の最大低下はわずかに低減されたが、上記低減は統計的有意差を達成できなかった(図10 ADを参照)。
【0200】
図11Aは、ジフェンヒドラミン(12.5mg/kg)とH2拮抗薬であるラニチジン(10mg)との組合せに関する類似のデータを提示する。複合薬剤自体は、おそらくジフェンヒドラミンの効果に起因してMAPを低下させ、Tat-NR2B9cに起因する低下を阻害した。低下の阻害は、図11B-Dの分析で示すように、著しかった。上記実験は、ラニチジンだけを使用して繰り返した。ラニチジンは、MAP自体に影響を及ぼさず、Tat-NR2B9cに起因するMAPの低下を阻害する何らかの効果は殆ど無く、統計的に有意ではなかった。
【0201】
類似の実験は、抗炎症剤として6mg/kgのデキサメタゾンを用いて行った。デキサメタゾンは、TAT-NR9B9cの約10分前に投与された。デキサメタゾンは、この実験においてTat-NR2B9cに起因する血圧低下を阻害する著しい効果が認められなかった。
【0202】
類似の実験は、3mg/kgのTat-NR2B9cと共調製された6mg/kgのロドキサミドを3mg/kgのTat-NR2B9cと比較することで実行された。溶液は、1.89mlの20mg/mlTat-NR2B9c(0.9%生理食塩水)と3.11mlの0.1%アロマイド(登録商標)(ロドキサミド)を混ぜてボルテックすることによって新たに作製した。アロマイド(登録商標)のmL毎には以下のものが含まれる: 1mgのロドキサミドと等価である1.78mgのロドキサミドトロメタミン、防腐作用のある塩化ベンザルコニウム0.007%、マンニトール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910、クエン酸ナトリウム、クエン酸、エデト酸二ナトリウム、チロキサポール、塩酸及び/又は水酸化ナトリウム(pH調整)及び精製水。
【0203】
共製剤は、安定であった。対照的に、Tat-NR2B9cとクロモリンとの共製剤は、沈殿する傾向があった。動物(雄、スプラーグドーリー)は、手術の前に飲食を可能にさせた。動物は、2%のイソフルラン及び1Lの酸素を含むチャンバー中で寝かせた。一旦寝たならば、1%イソフルラン及び2L酸素ガスの顔当てに変えた。大腿動脈及び静脈の接続のためにPE50チューブを用いた。これらの動脈及び静脈は、動脈圧の継続的なモニタリング及び薬剤注入(50mg/kg(容量:2ml/kg)を2分で投与)のための通路を提供する。手術は、左側に行った。動物の血圧及び体温を90分間モニターした。図13Aは、3mM/kgのTat-NR2B9と6mg/kgのロドキサミド(肥満細胞安定化薬)又はコントロールとして3mM/kgのTat-NR2B9c単独のいずれかを2ml容量での2分間注入を追跡しているMAPの経時変化を示す。ロドキサミドとの共治療は、Tat-NR2B9cの注射から生じるMAPの低下を完全に抑止することができる。TAT2B9c投与直前の3分間に注入されるクロモリンは、MAPの低下を完全に抑止した(図13B)。
【0204】
<実施例8>
Rv-Tat-NR2B9cを虚血モデルにおけるTat-NR2B9cと比較した。Rv-Tat-NR2B9cは、ペプチドのtat部分におけるN-C由来のアミノ酸順序がRv-Tat-NR2B9cにおいて逆転していることを除いては、Tat-NR2B9cと同様である。
【0205】
3つの軟膜血管閉塞(3PVO)による虚血モデルの方法:実験は、絶食させたラット(水は一晩自由に利用可能で、食品は利用不可)を用いて実行した。Forder et al., Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol. 2005 Apr;288(4):H1989-96に記載されているように、恒久的な3つの軟膜血管閉塞(3PVO)を実行した。手短に言えば、ラットにケタミン(100mg/kg)、アセプロマジン(2mg/kg)及びキシラジン(5mg/kg)を0.5ml/kg筋肉内投与することによって麻酔をかけ、必要に応じて初期量の1/3を補充した。直腸温度をモニターし、加温パッドを用いて動物の体温を37度に維持した。頭蓋骨を正中切開により露出させ、遊離組織を掻き落とした。解剖顕微鏡及び空気式歯科用ドリルを用いて、6〜8mmの矩形頭蓋窓を右側体性感覚皮質(ブレグマから尾部方向へ2mm、側面方向へ5mm)上に作製し、硬膜を完全に保ちつつ頭蓋骨のルーズピースを取り除いた。中大脳動脈分岐における3本の軟膜細動脈をバレル皮質域周辺で電気的に焼灼した。切開口を3.0絹縫合糸によって縫合した。動物を加熱灯下の個々のケージに戻し、ラットが完全に回復するまで体温を維持した。食品及び水を与えた。3PVO虚血の1時間後、ラットに3μM/kgのTat-NR2B9c又はRv-Tat-NR2B9cを尾静脈から静注で注射した。手術の24時間後に、脳を素早く取り出してスライスし(厚さ2mm)、2%塩化トリフェニルテトラゾリウム(TTC)(Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)含有生理食塩水において15分間37℃で暖めた。画像をスキャンした(CanoScan, 4200F, Canon)。梗塞割合は、ImageJソフトウェア(NIH)を用いてスライス当たりで算出した。
【0206】
Rv-Tat-NR2B9cは、3PVOモデルにおける梗塞の低減がTat-NR2B9c以上に効果的である。図14は、各グループの平均梗塞サイズを示す棒グラフを表す。
【0207】
<実施例9>
上述のロドキサミドとTat-NR2B9cとの共製剤はTat-NR2B9cとの比較において試験し、媒体コントロールは上述のラット3PVO脳卒中モデルにて試験した。結果として生じる梗塞の領域は、図15に示される。Tat-NR2B9cは、媒体コントロールと比較して梗塞サイズを著しく阻害した。しかしながら、ロドキサミドとTat-NR2B9cとの組合せは、Tat-NR2B9c単独と比較して統計的に有意に低減させるという驚くべき結果になった。したがって、ロドキサミドの末梢への共投与は、Tat-NR2B9cを起因とする炎症を低減させるだけでなく、梗塞を低減させるというその有効性も増加させる。
【0208】
本発明は、理解を明確にする目的のために詳細に記載されているものの、ある種の変更が添付した請求の範囲の範囲内で実践され得ることは明らかであろう。本出願で引用したすべての出版物及び特許文書は、それぞれが個々に示されると同程度に、参照によって全ての目的のためにその内容全体が本明細書中に組み込まれる。相違する配列が異なる時に同じ登録番号を伴っている可能性がある限りでは、有効な出願日における登録番号に関する配列を意味する。有効な出願日は、発行された登録番号が開示されている最先の優先日を意味する。文脈から明らかでない限り、本発明の任意の要素、実施形態、工程、機能、又は態様は任意の他との組合せで行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内手術に起因する脳虚血を阻害する方法であって、
血管内手術を受けている被験体に脳虚血を阻害するのに効果的な投与計画にてNMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を投与することと、
前記被験体にマスト細胞脱顆粒阻害剤を投与すること、を含み、
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は前記内在化ペプチド誘導性の抗炎症反応を阻害することができる、及び/又は、前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は前記薬理学的薬剤の30分前から15分後までに投与される、方法である。
【請求項2】
内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害するマスト細胞脱顆粒阻害剤と組合せて血管内手術に起因する脳虚血を阻害するために用いられる、NMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する前記内在化ペプチド連結薬理学的薬剤。
【請求項3】
NMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤と組合せて血管内手術に起因する脳虚血を阻害するのに用いられるマスト細胞脱顆粒阻害剤であって、前記内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害する、マスト細胞脱顆粒阻害剤。
【請求項3】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、前記薬理学的薬剤の15分前から同じ時間までに投与される、請求項1、2又は3に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項4】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、前記薬理学的薬剤と共調製される、請求項1、2又は3に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項5】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、末梢ルートにより投与される、請求項1、2又は3に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項6】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤及び薬理学的薬剤は、静脈に投与される、請求項1、2又は3に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項7】
前記被験体は疾患のエピソードを患っており、前記薬理学的薬剤及び前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は疾患のエピソード中に一回投与される、請求項1、2又は3に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項8】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤の投与は、前記薬理学的薬剤なしに前記マスト細胞脱顆粒阻害剤を前記患者に投与する反復投与計画には適合しない、請求項1、2又は3に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項9】
前記内在化ペプチドは、tatペプチドである、請求項1又は2に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項10】
前記tatペプチドは、RKKRRQRRR(配列番号:51)又はGRKKRRQRRR(配列番号:1)を含むアミノ酸配列を有する、請求項9に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項11】
前記tatペプチドは、YGRKKRRQRRR(配列番号:2)を含むアミノ酸配列を有する、請求項10に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項12】
前記tatペプチドは、FGRKKRRQRRR(配列番号:3)を含むアミノ酸配列を有する、請求項10に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項13】
前記tatペプチドは、GRKKRRQRRRP(配列番号:4)を含むアミノ酸配列を有する、請求項10に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項14】
前記薬理学的薬剤は、ペプチドである、請求項1又は2に記載の方法、薬剤又は阻害剤。
【請求項15】
前記薬理学的薬剤は、KLSSIESDV(配列番号:5)である、請求項1又は2に記載の方法又は使用。
【請求項16】
興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は効果的な予防方法であって、
前記疾患を患っているかそのリスクがある被験体に対して前記疾患を治療又は効果的に予防するRRRQRRKKRGYKLSSIESDV(配列番号:70)を含む又はからなるアミノ酸配列を有するペプチドの効果的な投与計画を施すこと、を含む方法。
【請求項17】
マスト細胞脱顆粒阻害剤及び/又は抗ヒスタミンを投与することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
疾患の治療又は予防に使用するための(RRRQRRKKRGYKLSSIESDV配列番号:70)を含む又はからなるアミノ酸配列を有するペプチド。
【請求項19】
薬理学的薬剤を被験体に送達させる方法であって、
内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を前記被験体に投与することと、
マスト細胞脱顆粒阻害剤を前記被験体に投与すること、を含み、
ロドキサミドは、前記内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害することができ、
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、トラニラスト、ロドキサミド、アゼラスチン、ベポタスチン、クロルゾキサゾン、エピナスチン、イソプロテレノール、オロパタジン、ペミロラスト、ピメクロリムス又はピルブテロールである、方法。
【請求項20】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、前記薬理学的薬剤の15分前から同じ時間までに投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、前記薬理学的薬剤と共調製される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記被験体における興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は予防に関する、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記薬理学的薬剤は、NMDAR受容体のPLペプチドである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記内在化ペプチドは、tatペプチドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記内在化ペプチドは、RKKRRQRRR(配列番号:51)、GRKKRRQRRR(配列番号:1)、YGRKKRRQRRR(配列番号:2)、FGRKKRRQRRR(配列番号:3)又はGRKKRRQRRRPQ(配列番号:4)又はRRRQRRKKRGY(配列番号:70の1-11番目のアミノ酸)を含むアミノ酸配列を有する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患は、脳卒中である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体は、手術の結果として一過性脳虚血発作のリスクがある、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、末梢ルートにより投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、前記薬理学的薬剤の投与の30分前から15分後までに投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、前記薬理学的薬剤の投与の15分前から同じ時間までに投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項31】
前記被験体は疾患のエピソードを患っており、前記薬理学的薬剤及び前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は前記疾患のエピソード中に一回投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤の投与は、前記薬理学的薬剤なしに前記マスト細胞脱顆粒阻害剤を患者に投与する反復投与計画には適合しない、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記マスト細胞脱顆粒阻害剤と、前記内在化ペプチド連結薬理学的薬剤は、共調製される、請求項19に記載の方法。
【請求項34】
前記共製剤は、静脈に投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
内在化ペプチド連結薬理学的薬剤とロドキサミドを含むキット。
【請求項36】
内在化ペプチド連結薬理学的薬剤誘導性のマスト細胞脱顆粒反応を阻害するのに用いられるロドキサミド。
【請求項37】
内在化ペプチド誘導性の炎症反応を抑制するロドキサミドとの組合せにて疾患の治療又は予防に使用するための前記内在化ペプチド連結薬理学的薬剤。
【請求項38】
内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害するロドキサミドと組合せて、興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は効果的な予防に有効な投与計画にて、NMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する前記内在化ペプチド連結薬理学的薬剤。
【請求項39】
NMDAR 2BにPSD95が結合することを阻害する内在化ペプチド連結薬理学的薬剤との組合せにて興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は予防に用いられるロドキサミドであって、前記内在化ペプチド誘導性の炎症反応を阻害する、ロドキサミド。
【請求項40】
ロドキサミド及び配列番号:6(YGRKKRRQRRRKLSSIESDV)のアミノ酸配列を含むペプチド及び水を有する共製剤。
【請求項41】
5重量%未満の前記ロドキサミド及び5重量%未満の前記ペプチドは、粒子型である、請求項40に記載の共製剤。
【請求項42】
濃度が50-200mMの塩化ナトリウムを更に含む、請求項40に記載の共製剤組成物。
【請求項43】
前記ロドキサミドの濃度は0.5-1mg/mlであり、前記ペプチドの濃度は5-20mg/mlである、請求項40に記載の共製剤。
【請求項44】
薬理学的薬剤によって治療可能な疾患を患っているかそのリスクがある被験体群に内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を送達させる方法であって、
前記内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を前記被験体に投与することを含み、
前記内在化ペプチド誘導性の炎症反応を低減させるためにマスト細胞脱顆粒阻害剤を投与される被験体もいれば、前記内在化ペプチド連結薬理学的薬剤の用量に依らずに患者に対して高用量の前記マスト細胞脱顆粒阻害剤が施される被験体もいる、方法。
【請求項45】
興奮毒性によってもたらされる疾患の治療又は効果的な予防方法であって、
前記疾患を患っているかそのリスクがあるヒト被験体に、用量が2.0mg/kg以上の配列番号:6(YGRKKRRQRRRKLSSIESDV)のアミノ酸配列を有するペプチドを投与することと、
前記被験体にマスト細胞脱顆粒阻害剤を投与すること、を含み、前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、前記内在化ペプチド誘導性のマスト細胞脱顆粒を阻害することができる、及び/又は前記マスト細胞脱顆粒阻害剤は、前記薬理学的薬剤の30分前から15分後までに投与される、方法。
【請求項46】
前記用量は、2.6mg/kgである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を前記薬理学的薬剤によって治療可能な疾患を患っているかそのリスクがある被験体に送達させる方法であって、
前記内在化ペプチド連結薬理学的薬剤を前記被験体に投与すること、
前記内在化ペプチド誘導性の炎症反応を低減させるためにマスト細胞脱顆粒阻害剤及び抗ヒスタミンを投与すること、を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7and12】
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【図8A−D】
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【図8E−F】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−530060(P2012−530060A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515161(P2012−515161)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/038226
【国際公開番号】WO2010/144742
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(509011178)ノノ インコーポレイテッド (8)
【住所又は居所原語表記】88 Strath Avenue Toronto,Ontario Canada
【Fターム(参考)】