説明

内在性膜タンパク質結晶成長のためのフラクタル形成アルキルケテン二量体

本発明は、核形成化合物でドープしたアルキルケテン二量体の表面を使用して、内在性膜タンパク質の結晶化を促進するためのデバイスを提供する。界面活性剤の存在下で内在性膜タンパク質の結晶化を高めるコーティングが、提供される。本発明の別の局面において、核形成化合物でドープしたアルキルケテン二量体の表面を作製して、内在性膜タンパク質の結晶化を促進する方法が提供される。本発明の別の局面において、核形成化合物でドープしたアルキルケテン二量体によりコーティングした表面を使用して、内在性膜タンパク質を結晶化する方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、結晶学およびタンパク質結晶の成長に関する。より詳細には、本発明は、内在性膜タンパク質の結晶成長を促進するための、デバイスおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
タンパク質構造決定は、現代の薬物探索および分子生物学において必須の工程である。X線結晶学技術または電子結晶学技術を用ると、生物学的高分子(例えば、タンパク質、核酸、およびそれらの種々の複合体)の三次元構造が、実際に原子レベルの解像度で回折データから決定され得る。このような構造情報により、我々の重要な生物学的プロセスの理解が深まり、薬物設計の指針ともなり得る。
【0003】
標的高分子の結晶構造決定における最初の工程は、その高分子の十分に回折する、大きな結晶へと成長させることである。回折データの収集および分析の技術は、薬物開発に構造情報が重要であるために、より迅速にかつ自動化されてきた。しかし、タンパク質結晶を成長させることが、構造決定プロセスにおける律速工程になっていた。結晶を成長させる従来の方法は、多くの生物学的高分子に適用される場合、失敗に終わるかまたは不十分であると判明した。特に、内在性膜タンパク質は、自動化技術により処理することが困難である。なぜなら、内在性膜タンパク質は、結晶成長媒体中で、界面活性剤および脂質分子の存在を必要とするからである。
【0004】
蒸気拡散は、タンパク質の結晶化に最も広く使用されている技術である。蒸気拡散において、その高分子、安定化緩衝液、沈澱剤(percipient)および結晶化補助物質(crystallization aid)を含む液滴(drop)は、より大きなレザバに曝された閉鎖系において平衡化される。そのレザバは、通常、(その高分子を除いて)結晶化液滴と同じ成分を含むが、その液滴から水が優先的に蒸発するように、高濃度で含む。その液滴は、その液滴をカバーガラスから吊り下げる(ハンギングドロップ法(hanging drop method))またはレザバ中の溶媒の高さ(level)より上にある台に液滴を置く(シッティングドロップ法(sitting drop method))かのいずれかによって、結晶化溶媒のレザバとは別個に維持される。時間がたつにつれて、結晶化液滴およびレザバ溶液は、蒸気拡散によって平衡に達する。その高分子の過飽和濃度が達成され、その液滴においてその高分子サンプルの結晶化を生じる。
【0005】
膜タンパク質は、代表的には、非常に疎水性であり、従って、結晶化するのが困難である。膜タンパク質はまた、十分に規則正しい三次元結晶を形成する代わりに、非定形に凝集する傾向がある。脂質立方面(Lipidic Cubic Phase)(LCP)結晶化のような技術は、膜タンパク質サンプルを脂質と混合して、タンパク質と脂質とのゲル様エマルジョンを形成することによって、内在性膜タンパク質の結晶化に成功してきた(非特許文献1)。このエマルジョン中の脂質は、立方体の三次元格子を形成し、この格子中で、その疎水性膜タンパク質は、三次元結晶を形成し得る。
【0006】
従って、内在性膜タンパク質の結晶化は、結晶成長媒体中に界面活性剤と脂質分子が必要であることによって、複雑である。自動化技術は、生体分子のハイスループット結晶化の大きな成長を可能にしたが、界面活性剤および脂質の存在は、大部分のハイスループット技術を妨げる。迅速な結晶化スクリーニングは、代表的には、シッティングドロップ技術を使用して行われて、プラスチックまたはガラスのような表面に並んで結晶を形成する。内在性膜タンパク質についてハイスループット結晶化技術を使用とする試みは、溶液状態で膜タンパク質を維持するために必要な界面活性剤、および含まれる脂質が結晶化液滴の表面張力を大きく低下させるので、失望する結果をもたらした。この液滴は、しばしば、プラスチック表面を完全に覆い、結晶化を阻害する。
【0007】
さらに、結晶化液滴が、表面(この上に結晶化液滴が載っている)に最小限にしか接触しないことが望ましい。なぜなら、その表面および液体界面は、結晶成長における不揃いさ(randomness)の大きな原因として影響を及ぼしたからである。特に、その表面/液体界面は、粉塵蓄積および表面における他のバリエーションに起因して、かなりの程度の不均質性に寄与する。従って、良好な結晶は、その液滴とその表面との間であまり接触しないことで生じる。
【0008】
アルキルケテン二量体(AKD)は、可溶性高分子についての考えられる結晶化表面として示唆されてきた(非特許文献2)が、内在性膜タンパク質については示唆されていない。アルキルケテン二量体が耐水性を付与する能力は、製紙産業において周知である。製紙産業においては、アルキルケテン二量体は、防水剤(anti−wetting agent)として使用されている。この耐水特性に起因して、Fujii and Hirayamaは、アルキルケテン二量体コーティングした表面を使用して、可溶性タンパク質であるリゾチームを結晶化した(非特許文献3)。アルキルケテン二量体は、冷却されると、フラクタル構造を自発的に形成する。Fujii and Hirayamaは、これらのフラクタル表面が水性液滴の表面接触角を増し、よって、その液滴とその表面との間の接触を最小にすることを示した。
【0009】
しかし、アルキルケテン二量体表面は、界面活性剤および脂質の中で可溶化した内在性膜タンパク質を結晶化するためには、一貫して有効であるわけではないということが判明した。アルキルケテン二量体コーティングした表面と界面活性剤とを用いた実験により、界面活性剤が結晶化液滴中に存在する場合に、表面のぬれを防止し、かつ結晶化を促進する、大きな変動が示される。この変動性により、純粋なアルキルケテン二量体コーティングが、ハイスループットプロセスを含む、大部分の結晶化の目的に実用的でないものになる。さらに、一様な可溶性生体分子の結晶化のためのアルキルケテン二量体コーティングの使用は、慣用的なシリコン処理より高価である。
【0010】
従って、その結晶化液滴と表面(この上に液滴が載せられる)との間の相互作用を最小にする表面または表面コーティングを作製する必要性がある。より具体的には、表面活性界面活性剤および脂質の存在にも拘わらず、内在性膜タンパク質の高品質結晶を作り出すために使用され得る表面が必要である。
【0011】
従って、本発明は、内在性膜タンパク質の結晶化を高めるために、核形成因子(nucleating agent)でドープしたアルキルケテン二量体から構成されるかまたはこのような二量体でコーティングされる表面の作製および使用に関する。
【非特許文献1】Landau,EM and JP Rosenbusch,PNAS,1996,93:14532−14535
【非特許文献2】Shibuichiら,1996,J.Phys.Chem.50:19512−17
【非特許文献3】I.Fujii and N.Hirayama,Acta Crystallogr D.Biol.Crystallogr.1999,55:1247−49
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明の一局面は、核形成化合物(nucleating compound)でドープしたアルキルケテン二量体の表面およびコーティングを含む、内在性膜タンパク質の結晶化を促進するための有用なデバイスを提供する。本発明のいくつかの実施形態において、この核形成化合物は、ジアルキルケトンである。
【0013】
本発明の代替的実施形態は、そのアルキルケテン二量体としてステアロイルケテン二量体を使用することを企図する。ジステアロイルケトンは、核形成化合物としても企図される。
【0014】
本発明の別の局面は、核形成化合物でドープしたアルキルケテン二量体により表面をコーティングすることにより、内在性膜タンパク質の結晶化を促進するための表面を調製する方法を提供する。
【0015】
この方法の代替的実施形態は、そのアルキルケテン二量体としてステアロイルケテン二量体を使用することを企図する。ジステアロイルケトンの使用は、核形成化合物としても企図される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、そのコーティングは、蒸着によって適用される。
【0017】
本発明の別の局面は、内在性膜タンパク質を含む小滴の溶液を、核形成化合物でドープしたアルキルケテン二量体によりコーティングした表面に適用することによって、内在性膜タンパク質を結晶化する方法を提供する。
【0018】
本発明の代替的実施形態は、そのアルキルケテン二量体としてステアロイルケテン二量体を使用することを企図する。ジステアロイルケトンはまた、核形成化合物として企図される。いくつかの変形例において、その内在性膜タンパク質を含む小滴は、シッティングドロップとしてコーティングされた表面の上に適用される。他の変形例において、その内在性膜タンパク質を含む小滴は、ハンギングドロップとしてコーティングされた表面に適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(発明の詳細な説明)
以下の例は、本発明の特定の原理を伝達することが意図される。これらの例は、いかなる特定の例にも、本発明の範囲を限定することを意図しない。特許請求の範囲には、本明細書の詳細な説明、あらゆる先行技術、および当業者の技術常識に鑑みて、それらの最も広い妥当な解釈が与えられるべきであることが理解される。当業者は、多くの変形例が以下の説明を用いて得られ得ることを容易に認識する。
【0020】
図1は、アルキルケテン二量体の分子構造の模式図である。アルキルケテン二量体は、加熱され得、そして表面に形成され得る。さらに、アルキルケテン二量体表面は、冷却されるときに、フラクタル構造を自発的に形成する。これらのフラクタル表面は、高度な表面荒さを有し、超撥水特性を生じる。接触角は、撥水性または湿潤性の1つの指標である。この増大した表面荒さは、水性液滴とフラクタル表面(この上に液滴が載せられる)との間のより大きな接触角を生じる。この表面接触角が大きくなるほど、その表面にある液滴はより球状になり、その液滴と表面との間の接触はより少なくなる。この影響は、図2に示される。
【0021】
図2は、種々の表面に置かれた、5μlの水滴を示す。図2Aおよび2Dに示されるように、未処理ガラスに対して、その表面接触角は、90°未満である。図2Bおよび2Eに示されるように、シリコンコーティング(シリコン処理)されたガラスに対して、その水の表面接触角は140°より大きい。これは、アルキルケテン二量体であるジステアロイルケテンでコーティングされたガラスと匹敵する。図2Cおよび2Fは、ジステアロイルケテン二量体コーティング表面に対する大きな接触角を例示する。シリコン処理表面およびアルキルケテン二量体コーティング表面はともに、純水の液滴と大きな接触角を有する。
【0022】
上記のように、接触角は、高分子(例えば、タンパク質)の結晶化を促進する表面力(surfaces ability)の指標である。接触角が大きくなるほど、小滴はより球状になり、それによって、表面/液体界面からの干渉の影響が最小になる。このようにして、より高品質の結晶を成長させ得る。
【0023】
接触角と表面との間のこの関係は、ハイスループット結晶化の新興分野で特に重要である。従って、ハイスループット結晶化は、本発明の適用のよい例である。代表的には、ハイスループット技術は、シッティングドロップ蒸気拡散形式を利用し、この形式において、この結晶化される高分子を含む流体の液滴は、表面の上に載せられる。最も頻繁には、シリコン処理ガラスよりむしろ、プラスチックが、結晶か表面として好ましい。内在性膜タンパク質についてハイスループット結晶化技術を使用とする試みは、水性媒体中で界面活性剤の存在が必要とされるので、失望する結果をもたらした。界面活性剤および脂質は、内在性膜タンパク質の結晶化に必要である。なぜなら、界面活性剤ミセルは、可溶性状態でその高分子を維持するために必要とされ、脂質は、質量作用によって高分子の脱脂を防止するために必要とされるからである。
【0024】
脂質および界面活性剤の存在はまた、結晶化液滴の表面張力を低下させ、このことにより、その液滴と表面との間の接触角を劇的に減少させる。これは、図3に例示される。図3は、種々の表面に置かれた、0.05% ドデシルマルトシド(DDM)界面活性剤を含む5μlの水滴を示す。図3Aおよび3Dに示されるように、未処理ガラスに対して、その表面接触角は90°未満である。図3Bおよび3Eに示されるように、シリコンコーティング(シリコン処理)されたガラスに対して、その水の表面接触角はまた、90°未満である。しかし、ジアルキルケトンでドープしたアルキルケテン二量体(ジステアロイルケテンでドープしたステアロイルケテン二量体)によりコーティングしたガラスに対して、表面角は、150°より大きい。図3Cおよび3Fは、ジステアロイルケテン二量体コーティング表面に対する大きな接触角を例示する。
【0025】
従って、アルキルケテン二量体は、湿潤性を低下させ得、それにより、界面活性剤を使用する場合ですら、結晶化液滴の接触角を増大させ得る。特に、ステアロイルケテン二量体は、アルキルケテン二量体であり、この二量体は、臨界的なミセル濃度以上の界面活性剤の存在下で減少した表面湿潤性を促進する。しかし、純粋なアルキルケテン二量体コーティング単独では、不十分である。非常に高純度のアルキルケテン二量体コーティングは、フラクタル表面において過剰に大きな変動性を示す。この変動は、界面活性剤の存在下で一貫しない湿潤性をもたらす。
【0026】
界面活性剤を使用する場合、アルキルケテン二量体の一貫した超撥水特性は、ステアロイルケテン二量体混合物の組成の改変が行われる場合にのみ、達成される。従って、このアルキルケテン二量体コーティングは、界面活性剤含有液滴で一貫した結果を達成するために、いくつかの修飾化合物で「ドープ」されるべきである。ステアロイルケテン二量体コーティングでの実験において、界面活性剤を含む液滴の表面湿潤性(接触角)の変動性は、ステアロイルケテン二量体サンプル中の少量のジステアロイルケテン不純物の存在を変化させて追跡した。ジステアロイルケテンは、ステアロイルケテン二量体の加水分解生成物として形成し;液体ステアロイルケテン二量体を、大気に繰り返し曝すと、ジステアロイルケトンの相対割合が増す。図4は、ジアルキルケトンの分子モデルを示す。ジステアロイルケトンは、ジアルキルケトンの一形態である。ジステアロイルケトンとステアロイルケテン二量体の割合は、表面湿潤性、および結果として接触角を変化させる。
【0027】
ドープ効果の正確な原因は、未知である。本発明者らは、より規則的なフラクタル表面パターンは、ステアロイルケテン二量体と比較してジステアロイルケテン夾雑物のより高い融点から生じると仮説を立てている。従って、このジステアロイルケテンは、ステアロイルケテン二量体フラクタル構造の形成についての核形成点として作用する。ジステアロイルケトンの相対割合を増大させることによって、核形成点の総対数が増大され、続いて、このことによって、多くの核形成点から展開する、多くの異なるフラクタル形成成長パターンが最終的に混じり合うことに起因して、得られた表面の全体的な複雑性が増大する。この原因に拘わらず、このことは、最適なジステアロイルケトン/ステアロイルケテン二量体の比が、種々の適用について存在し得、おそらく、結晶化される内在性膜タンパク質の各型について存在し得ることを示唆する。なぜなら、表面の複雑性は、タンパク質結晶の核形成および規則正しい成長を促進し得るからである。
【0028】
このアルキルケテン二量体混合物は、得られる表面の複雑性を変化させる任意のさらなる化合物でドープされ得る。例えば、変化したアルキル鎖長を有する化合物(例えば、オレオイルケテン二量体)が混合物に導入されて、フラクタル成長パターンを選択的に変化させ得、それによって、その表面の複雑性を軽減する。
【0029】
本発明は、核形成化合物でドープしたアルキルケテン二量体の混合物を使用して、表面(この上で、内在性膜タンパク質の結晶を成長させ得る)を作製することを企図する。記載されるように、二量体と核形成化合物(または潜在的には化合物)の比は、任意の特定の適用について決定され得る。本発明はまた、アルキルケテン二量体と核形成化合物の比が、表面を横断して変化する表面を作製することを企図する。このような表面は、種々の高分子を結晶化する場合に、比を最適化することにおいて有用であり得る。アルキルケテン二量体の任意の形態が、アルキルケテン二量体表面のフラクタルパターンを変化させ得る任意の核形成化合物と合わせて、本発明とともに使用され得る。ジステアロイルケトンでドープしたステアロイルケテン二量体は、本発明によって企図されるアルキルケテン二量体および核形成化合物の具体例である。
【0030】
核形成化合物でドープしたアルキルケテン二量体のコーティングは、結晶化表面を作製するために、実質的に任意の表面に適用され得る。例えば、プラスチックまたはスライドガラスが、コーティングされ得る。できる限り薄い層でコーティングを適用することが望ましくあり得る。代表的なドープされたアルキルケテン二量体コーティングは不透明であるので、コーティングがより薄いと、結晶成長の直接的な可視化が簡単になり得る。あるいは、潜在的な核形成液滴でコーティングしたスライドは、x線回折によってスクリーニングされ得る。適切な成長期間の後、その結晶成長の並びは、液体窒素中で直ぐに凍結され得、各結晶成長液滴がx線を回折させる能力を評価することによって、結晶成長についてひとまとめにスクリーニングされ得る。このようにして、結晶成長の多くの状態が、平行してスクリーニングされ得る。
【0031】
アルキルケテン二量体表面になお存在する間に結晶をスクリーニングすると、どのような方法でも分析が複雑になる。この技術は、アルキルケテン二量体フラクタル表面のx線回折パターンが、タンパク質結晶によって生成されるx線回折パターンからデコンボルーションされることを必要とする。図5は、ステアロイルケテン二量体の回折パターンを示す。種々に配向されるタンパク質結晶が、このような分析を複雑にするが、非常に集束されたx線は、この潜在的な複雑さを排除する。
【0032】
核形成化合物でドープされたアルキルケテン二量体は、多くの種々の方法によって表面にコーティングされ得る。予備試験を、ジステアロイルケテンでドープしたステアロイルケテン二量体を用いて行った。このステアロイルケテン二量体/ジステアロイルケテン混合物を、最初にその融点を超えて加熱し、次いで、その液体を、固体表面に移し、冷却した。異なる厚みのドープしたアルキルケテン二量体が考えられる。本発明は、蒸気チャンバを使用して、層またはドープされたアルキルケテン二量体を表面に均一に適用することを企図する。
【0033】
本発明は、結晶成長のシッティングドロップ蒸気拡散法に限定されない。ドープされたアルキルケテン二量体表面は、シッティングドロップ結晶化形式を使用するハイスループット結晶化スクリーニングに有用であるが、これらの表面は、代わりの形態においても有用であり得る。他の形態としては、サンドイッチドロップ蒸気拡散およびハンギングドロップ蒸気拡散が挙げられる。
【0034】
本明細書で引用される全ての刊行物および特許出願は、各個々の刊行物または特許出願が、具体的にかつ個々に、参考として援用されるされることが示されるかのように、本明細書に参考として援用される。
【0035】
前述の発明は、理解を明瞭にする目的で、例示および例によっていくらか詳細に記載されてきたが、特定の変更および改変が、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲を逸脱することなく、本発明に対してなされ得ることは、本発明の教示に鑑みて、当業者に容易に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、化合物1(アルキルケテン二量体(AKD))を示す。
【図2】図2は、種々の表面の上の5μlの水滴を示す。上の列(A〜C)は、液滴を見下ろした図を示す。下の列(D〜F)は、液滴の横から見た図を示す。未処理ガラスは、左(A、D)に示され、シリコン処理ガラスは、中央(B、E)に示され、ジステアロイルケトンでドープしたステアロイルケテン二量体によりコーティングしたガラスは、右(C、F)に示される。
【図3】図3は、種々の表面上の0.05% DDM 界面活性剤を含む5μlの水滴を示す。上の列(A〜C)は、液滴を見下ろした図を示し、下の列(D〜F)は、液滴を横から見た図を示す。未処理ガラスは、左(A、D)に示され、シリコン処理ガラスは、中央(B、E)に示され、ジステアロイルケトンでドープしたステアロイルケテン二量体によりコーティングしたガラスは、右(C、F)に示される。
【図4】図4は、化合物2(ジアルキルケトン(DAK))を示す。
【図5】図5は、SKDフラクタル表面の回折パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内在性膜タンパク質の結晶化を促進するためのデバイスであって、該デバイスは、以下:
表面;および
該表面上に核形成化合物でドープしたアルキルケテン二量体のコーティング、
を備える、デバイス。
【請求項2】
前記アルキルケテン二量体は、ステアロイルケテン二量体を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記核形成化合物は、ジアルキルケトンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記核形成化合物は、ジステアロイルケテンである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
内在性膜タンパク質の結晶化を促進するための表面を調製する方法であって、該方法は、以下:
表面を、核形成化合物でドープしたアルキルケテン二量体でコーティングする工程、
を包含する、方法。
【請求項6】
前記アルキルケテン二量体は、ステアロイルケテン二量体を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記核形成化合物は、ジアルキルケトンである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記核形成化合物は、ジステアロイルケテンである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングは、蒸着を含むプロセスによって適用される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
内在性膜タンパク質を結晶化する方法であって、該方法は、以下の工程:
溶液状態の内在性膜タンパク質の小滴を、核形成化合物でドープしたアルキルケテン二量体によりコーティングした表面に適用する工程、
を包含する、方法。
【請求項11】
前記適用された小滴は、前記コーティングされた表面の上にシッティングドロップとして適用される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記適用された小滴は、前記コーティングされた表面にハンギングドロップまたはサンドイッチドロップとして適用される、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−507405(P2007−507405A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−528302(P2006−528302)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/031739
【国際公開番号】WO2005/031310
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506099937)サグレス ディスカバリー, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】