説明

内型枠の組立方法

【課題】先頭のリング継手面が掘削進行方向と直交する平面でなくなった場合に、先頭のリング継手面を補正する方法を提供する。
【解決手段】地山20を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部21の内周面33に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠の型枠ピース40がトンネル空洞部の内周面に沿って内周面を1周するように複数設置されてリング状の内型枠30を形成し、このリング状の内型枠を掘削進行方向に向けて順次組み立てていく内型枠の組立方法において、切羽側に位置するリング状の内型枠30の先頭のリング継手面47bが掘削進行方向Aと直交する平面でなくなった場合に、当該先頭のリング継手面47bを掘削進行方向Aと直交する平面となるように又は当該平面に近づくように所定の厚みを有した補正部品(ストローク調整ライナー50)を用いて補正した補正リング継手面52を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、先頭のリング継手面が掘削進行方向と直交する平面でなくなった場合に、先頭のリング継手面を補正可能な内型枠の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シールド掘削機で地山を掘削して掘進するとともに、シールド掘削機の後部(坑口側)において掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面とトンネル空洞部の内周面に沿って設置される内型枠との間に生コンクリートと呼ばれる流動状のコンクリートを流し込んで覆工部としての覆工コンクリートを構築するECL工法と呼ばれるトンネル施工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
内型枠は複数個の型枠ピースにより形成される。図5;6に示すように、内型枠30を形成する複数の型枠ピース40は、地山20を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部21の内周面33に沿って内周面33と間隔を隔てて対向するように設置される型枠面34と、トンネル空洞部21の内周面33の周方向において隣接するように設置される型枠ピース40;40同士を繋ぐためのピース継手面47aが形成されたピース継手板45を備えるとともに、トンネル空洞部21の内周面33の掘削進行方向において隣接するように設置される型枠ピース40;40同士を繋ぐためのリング継手面47bが形成されたリング継手板46を備える。
ピース継手板45には、トンネル空洞部21の内周面33の周方向において互いに隣接するピース継手面47a同士が図外のボルト及びナットによる締結によって密接状態に結合されるように、ピース継手板45を貫通してボルトを通すためのボルト孔43aが形成される。同様に、リング継手板46には、トンネル空洞部21の内周面33の掘削進行方向において隣接するリング継手面47b同士がボルト及びナットによる締結によって密接状態に結合されるように、リング継手板46を貫通してボルトを通すためのボルト孔43bが形成される。
従って、トンネル空洞部21の内周面33の周方向において互いに隣接して設置される型枠ピース40のピース継手面47a同士を接触させた状態でボルト孔43aに図外のボルトを挿入し、ボルトの先端からナットを締結していくことで、ピース継手面47a同士が密接状態に結合される。また、トンネル空洞部21の内周面33のトンネル掘削進行方向において互いに隣接して設置される型枠ピース40のリング継手面47b同士を接触させた状態でボルト孔43bに図外のボルトを挿入し、ボルトの先端からナットを締結していくことで、リング継手面47b同士が密接状態に結合される。
図6に示すように、複数個の型枠ピース40がトンネル空洞部21の内周面33に沿って1周するように設置されて形成される内型枠30を1リングと呼ぶ。つまり、1リングを形成するには、複数個の型枠ピース40を、トンネル空洞部21の内周面33との間に覆工部の厚さ分の間隔dを隔ててトンネル空洞部21の内周面33に沿って内周面33を1周するように設置していく。この場合、ピース継手面47a同士が密接状態に結合されるように、図外の内型枠組立装置によって1リング分の内型枠30を組み立てていく。そして、掘削が進んだ後、掘削進行方向に向けてさらに1リング分の内型枠30を組み立てていく。この場合、型枠ピース40が、トンネル空洞部21の内周面33の周方向においてピース継手面47a同士が密接状態に結合されるように、かつ、トンネル空洞部21の内周面33の掘削進行方向において1つ前に組み立てた1リングのリング継手面47bと今回組み立てる1リングを形成する型枠ピース40のリング継手面47bとが密接状態に結合されるように、内型枠組立装置によって1リング分の内型枠30を組み立てていく。
型枠ピース40は、所定数のリング分の内型枠30を形成できる数分だけ用いられ、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、坑口側に組み立てられた内型枠30の掘削進行方向後部に位置する1リング分の型枠ピース40を図外の内型枠脱型装置を用いて解体して取り外した後に、シールド掘削機を進行させ、取り外した1リング分の型枠ピース40を内型枠30の掘削進行方向先頭位置に盛り替えて使う。即ち、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、掘削が進む毎に、型枠ピース40を後方(坑口側)から前方(切羽側)に盛り替えて繰り返して使用して内型枠30の掘削進行方向先頭位置に1リングを組み立てていく。つまり、掘削進行方向に向けて次々と1リングづつ組み立てていって内型枠30を形成する。
尚、図6に示すように、1リング分の内型枠30を形成する複数個の型枠ピース40のうちの少なくとも1つの型枠ピースは、脱型用の型枠ピース39に形成される。K型枠ピースと呼ばれる脱型用の型枠ピース39は、トンネル空洞部21の内周面33に近い方に位置して型枠面34となる当該型枠面34側のトンネル空洞部21の周方向の幅寸法bが、型枠面34の反対側の面39b(トンネル空洞部21の中心2Cに近い方に位置した面)のトンネル空洞部21の周方向の幅寸法aよりも小さい。また、脱型用の型枠ピース39の周方向の両隣に設置される型枠ピースも専用の型枠ピース38が用いられる。1リング分の内型枠30を形成する脱型用の型枠ピース39及び型枠ピース38以外のA型枠ピースと呼ばれる型枠ピース40は、トンネル空洞部21の内周面33に近い方に位置して型枠面34となる当該型枠面34側のトンネル空洞部21の周方向の幅寸法bが、型枠面34の反対側の面39bのトンネル空洞部21の周方向の幅寸法aよりも大きい。そして、1リングを組み立てるときは、脱型用の型枠ピース39を最後に取付け、1リングを解体する場合は、脱型用の型枠ピース39から取り外す。つまり、A型枠ピースと呼ばれる型枠ピース40だけを用いて1リングを組み立てようとしても、最後の型枠ピース40をトンネル空洞部21の中心2C側からトンネル空洞部21の内周面33の方向に向けて(つまり、トンネル空洞部21の断面円の径方向に向けて)組み付けることは不可能であるので、最後に組み付けて最初に取り外す型枠ピースとしてK型枠ピースと呼ばれる脱型用の型枠ピース39を用いる。
【特許文献1】特開2005−188099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、掘削が進む毎に、型枠ピース40を後方(坑口側)から前方(切羽側)に盛り替えて繰り返して使用して内型枠30の掘削進行方向先頭位置に1リングを組み立てていく。つまり、リングの組立と脱型とを繰り返すために、地山20からの圧力のかかり方、推進ジャッキの配置、内型枠30のひずみ等が原因となって、内型枠30の組立位置の誤差が蓄積されて内型枠30の組立姿勢にずれが生じて、切羽側に位置するリング状の内型枠30の先頭のリング継手面47bが掘削進行方向と直交する平面でなくなる場合がある。先頭のリング継手面47bが掘削進行方向と直交する平面でなくなった場合には、先頭のリング継手面47bとこの先頭のリング継手面47bに継がれる次の内型枠30のリング継手面47bとの間に生じる隙間が大きくなるので、ボルトとナットとによる締結摩擦力を得ることができず、ナットが緩みやすくなる。また、内型枠30の型枠面34とトンネル空洞部21の内周面33との間の間隔が、内型枠30の上下側と内型枠30の左右側とで異なってくる。つまり、内型枠30の上下側の型枠面34とトンネル空洞部21の内周面33との間の間隔と内型枠30の左右側の型枠面34とトンネル空洞部21の内周面33との間の間隔とに偏りが生じ、当該間隔(覆工形成空間)に形成される一次覆工コンクリートの周方向において厚さに偏りが生じてしまうという問題があった。
そこで、本発明は、先頭のリング継手面が掘削進行方向と直交する平面でなくなった場合に、先頭のリング継手面を補正する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る内型枠の組立方法は、地山を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠の型枠ピースがトンネル空洞部の内周面に沿って内周面を1周するように複数設置されてリング状の内型枠を形成し、このリング状の内型枠を掘削進行方向に向けて順次組み立てていく内型枠の組立方法において、切羽側に位置するリング状の内型枠の先頭のリング継手面が掘削進行方向と直交する平面でなくなった場合に、当該先頭のリング継手面を掘削進行方向と直交する平面となるように又は当該平面に近づくように所定の厚みを有した補正部品を用いて補正した補正リング継手面を形成したことを特徴とする。
切羽側に位置するリング状の内型枠の先頭のリング継手面で反力を取るシールド掘削機の上下の推進ジャッキのストロークの平均値と左右のシールドジャッキのストロークの平均値との差が所定値以上となった場合に、先頭のリング継手面の補正を行うことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明に係る内型枠の組立方法によれば、先頭のリング継手面が掘削進行方向と直交する平面でなくなった場合には、補正部品を用いて先頭のリング継手面を掘削進行方向と直交する平面となるように又は当該平面に近づくように補正した補正リング継手面を形成できるので、補正リング継手面とこの補正リング継手面に継がれる次の内型枠のリング継手面とを密接状態に接合でき、これらリング継手面同士を結合するボルト及びナットによる締結摩擦力を十分に得ることができ、これらリング継手面同士を強固に結合できる。また、覆工形成空間に形成される一次覆工コンクリートの周方向において厚さの偏りを少なくでき、一次覆工コンクリートの品質を向上できる。さらに、補正部品を用いるだけなので、補正作業が簡単である。
切羽側に位置するリング状の内型枠の先頭のリング継手面で反力を取るシールド掘削機の上下の推進ジャッキのストロークの平均値と左右のシールドジャッキのストロークの平均値との差が所定値以上となった場合に、先頭のリング継手面の補正を行うので、補正作業の必要性を的確に判断できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1乃至図4は最良の形態を示し、図1は内型枠の組立方法の概略を示し、図2の(a)は内型枠の組立方法における先頭の内型枠のリング継手面と補正部品との関係を分解して示し、(b)は補正部品を示し、図3は密閉型のシールド掘削機によるトンネル施工方法を示し、図4はコンクリート供給管と妻型枠に形成されたコンクリート打設孔との関係を示す。
【0007】
最良の形態においては、図1に示すように、例えば金属製の型枠ピース40がトンネル空洞部21の内周面33に沿って内周面33を1周するように複数設置されて形成されるリング状の内型枠30を掘削進行方向に向けて順次組み立てていく場合において、例えば、複数リング(例えば16リング)分の内型枠30の組立が終了する毎に、その先頭のリング継手面47bで推進反力を取って推進するシールド掘削機1の後端部1aの上下に設けられた推進ジャッキ4のストローク(推進ジャッキ4のピストン4aの伸び量)の平均値とシールド掘削機1の後端部1aの左右に設けられた推進ジャッキ4のストロークの平均値との差を測定する。そして、当該差が所定値以上であれば、その先頭のリング継手面47bが掘削進行方向Aと直交する平面でなくなったとして、図1(b)に示すように、補正部品としての例えば金属製のストローク調整ライナー50を先頭のリング継手面47bに取付けることによって、掘削進行方向Aと直交する平面又は当該平面に近づくように補正した補正リング継手面52を形成し、この補正リング継手面52に次のリング状の内型枠30を形成する型枠ピース40のリング継手面47bを継いでいく。
【0008】
推進ジャッキ4は、トンネル空洞部21の内周面33に沿った方向において所定間隔を隔てて例えば30個設置される。このうち、上下に設けられた2個の推進ジャッキ4のストロークの平均値と左右に設けられた2個の推進ジャッキ4のストロークの平均値との差を測定する。当該差を測定することにより、補正作業の必要性を的確に判断できるようになる。
【0009】
掘削進行方向Aが直進方向の場合、上記所定値を例えば30mm以上とすればよい。上記差が30mm以上となるということは、先頭のリング継手面47bと次のリング状の内型枠30のリング継手面47bとの隙間が大きくなり、また、覆工形成空間100に形成される一次覆工コンクリート90の周方向において厚さの偏りも大きくなるからである。上記所定値を30mm以上とすれば、ストローク調整ライナー50を用いた補正作業を行うことによって、先頭のリング継手面47bを掘削進行方向Aと直交する平面となるように又は当該平面に近づくように補正した補正リング継手面52を形成できる。
【0010】
図2に示すように、ストローク調整ライナー50は、坑口側面53と切羽側面54と、坑口側面53と切羽側面54とに貫通するボルト孔55とを備える。例えば、坑口側面53の面積、切羽側面54の面積は、先頭のリング継手面51を形成する型枠ピース40のリング継手面47bの面積と同じに形成される。坑口側面53は、掘削進行方向Aと直交する平面でなくなった先頭のリング継手面51と合致する面に形成される。切羽側面54は、先頭のリング継手面47bと坑口側面53とが密接に合致した状態に接合された場合に上記補正リング継手面52を形成する。つまり、ストローク調整ライナー50は、先頭のリング継手面47bと坑口側面53とが密接に合致した状態に接合された場合に切羽側面54が上記補正リング継手面51を形成できるように、坑口側面53と切羽側面54との間の距離(厚さ)eが調整された補正部品である。具体的には、図2(b)に示すように、ストローク調整ライナー50は、距離e(厚さ)が、径方向の一方60から他方61にかけて異なるように形成されるとともに、周方向の一方62から他方65にかけて異なるように形成された補正部品である。
【0011】
ストローク調整ライナー50の取付けは、例えば、先頭のリング継手面47bと次のリング状の内型枠30を形成する型枠ピース40のリング継手面47bとの間にストローク調整ライナー50を挟み付けるようにして、これら三者を図外のボルト及びナットで固定すればよい。このように、先頭のリング継手面47bに、補正部品としてのストローク調整ライナー50を取付けるだけで、補正作業を簡単に行える。
【0012】
次に、図3;図4を参照し、型枠ピース40を用いた密閉型のシールド掘削機によるトンネル施工方法、及び、シールド掘削機の構造を説明する。
まず、シールド掘削機1の構造を説明する。シールド掘削機1は、前端に回転切削部2を有し、回転切削部2の後部には後方に延長する円筒状のテールプレート3を備える。テールプレート3の内側には複数の推進ジャッキ4とプレスジャッキ5と妻型枠7とが設けられる。妻型枠7は、プレスジャッキ5の後端5aに取付けられてテールプレート3の内周面3aに沿って前後に移動可能なようにリング筒状に形成されたプレス型枠である。つまり、妻型枠7は、テールプレート3の内周面3aと内型枠30の型枠面34との間を塞いだ状態でプレスジャッキ5の伸縮で前後に移動可能な型枠であり、後述する覆工形成空間100を形成するとともに覆工形成空間100に流入した高流動性生コンクリート80を加圧するものである。8はシールド掘削機1の推進に伴って図外の牽引手段で牽引されるコンクリート供給装置である。このコンクリート供給装置8は例えば高流動性生コンクリート80を生成する1台のレミキサー81とこのレミキサー81に接続管82で繋がれた6台のコンクリートポンプ83とで構成される。
【0013】
妻型枠7は、内型枠30の切羽側に設置されてトンネル空洞部21の内周面33に沿ったリング形状に形成され、リングの坑口22側の一端面により形成された型枠面7aと、リングの切羽側の他端面により形成されてプレスジャッキ5により押圧される受圧面7bと、型枠面7aと受圧面7bとに貫通して妻型枠7のリングの周方向に間隔を隔てて設けられた複数個のコンクリート打設孔9とを備える。
【0014】
図4に示すように、妻型枠7には、型枠面7aと受圧面7bとに貫通するコンクリート打設孔9が周方向に等間隔で例えば12個形成される。各コンクリートポンプ83のコンクリート排出口10には第1コンクリート供給ホース11が接続され、このホース11の終端には二方切替弁12が接続され、この二方切替弁12の2つの排出口13;13とそれぞれ1つのコンクリート打設孔9とが第2コンクリート供給ホース14;14で接続される。第2コンクリート供給ホース14における終端側には油圧シリンダピストン等による塞止弁装置15が設けられる。塞止弁装置15の塞止弁15aが第2コンクリート供給ホース14と打設孔9とを繋ぐ接続配管14a内に進退移動して接続配管14aを開閉する。接続配管14aに近い第2コンクリート供給ホース14の終端側にはこの第2コンクリート供給ホース14内の管内圧力を計測する管内圧力計16が設けられる。また、妻型枠7の型枠面7aにおける12箇所のそれぞれ打設孔9の近傍、あるいは12箇所のうちの少なくとも1つの打設孔9の近傍には、覆工形成空間100に充填された生コンクリートの圧力を計測するためのコンクリート圧力計17が設けられる。
【0015】
次に、型枠ピース40を用いたトンネル施工方法を説明する。まず、図外の反力受けで推進ジャッキ4の反力を取って推進ジャッキ4のピストン4aを伸ばしながら回転切削部2を回転させてシールド掘削機1を一定距離だけ掘進させて地山(地盤/岩盤)20にトンネル空洞部21を掘る。一定距離は例えば内型枠30の1リング分の筒長31(例えば1m〜2m程度)の長さ+シールド掘削機1の前後長さ32である。シールド掘削機1を一定距離だけ掘進させた後にシールド掘削機1の推進ジャッキ4のピストン4aを縮めて、推進ジャッキ4の後端4bに、図外の内型枠組立装置によって1リング分の内型枠30を組み立てる。1リング分の内型枠30は、1リング分の内型枠30の円筒の円弧の一部分を形成する複数個の型枠ピース40を用いて円筒形状に組み立てられる。型枠ピース40の型枠面34がトンネル空洞部21の円形の内周面33との間に空間を隔てて内周面33に沿うように図外の内型枠組立装置により保持されて、トンネル空洞部21の内側にトンネル空洞部21の中心軸と同軸の円筒形状の内型枠30が形成されるように、円筒形の円周上で互いに隣り合う型枠ピース40同士が図外のボルト及びナットにより締結される。この隣り合う型枠ピース40同士を連結するボルト63をピース間継手ボルトと呼ぶ。具体的には、型枠ピース40のピース継手面47a同士が接触するように、型枠ピース40同士を互いに隣接させて設置し、互いに隣接する型枠ピース40のピース継手面47aのボルト孔43aにボルト63が通されてボルト63の先端部にナット72が締結されることによって、ピース継手面47a同士が密接状態となるように型枠ピース40同士が繋がれる。以上により、トンネル空洞部21の内側に円筒形状の1リング分の内型枠30が形成されるととともに、トンネル空洞部21の円形の内周面33と1リング分の内型枠30の円形の型枠面34との間の円筒形状の覆工形成空間100が形成される。この覆工形成空間100の坑口22側を図外の塞板などで閉塞して、妻型枠7の型枠面7aを覆工形成空間100の先端側に移動させ、妻型枠7の型枠面7aの周囲の例えば12箇所の打設孔9を介してコンクリートポンプ83で加圧された高流動性生コンクリート80を流し込みながらプレスジャッキ5で妻型枠7を押圧して高流動性生コンクリート80を加圧する。そして、人がコンクリート圧力計17から送信されてくる圧力値をモニタ等で監視しながら覆工形成空間100に流し込まれた高流動性生コンクリート80の圧力が予め決められた所定値になったら人が塞止弁15aの操作部を操作して塞止弁15aで接続配管14aを塞いで、覆工形成空間100内の高流動性生コンクリート80を固化させる。したがって、6個のコンクリートポンプ83を用い、妻型枠7の後面7aの周囲の12箇所の打設孔9から覆工形成空間100に高流動性生コンクリート80を充填するので、複数のコンクリートポンプ83での圧力付加と複数の打設孔9からの高流動性生コンクリート80の流し込みと高流動性生コンクリート80の高流動性とにより、覆工形成空間100内に短時間で均等に高密度に高流動性生コンクリート80を充填でき、トンネル空洞部21の内周面33(地山20)と密接して一体化した高密度構造の覆工部としての覆工コンクリート90を構築できる。また、打設孔9の数と同数のコンクリートポンプ83を設け、1つのコンクリートポンプ83で1つの打設孔9から高流動性生コンクリート80を打設してもよいが、実施形態のように打設孔9の数の1/2の数のコンクリートポンプ83を用いて1つのコンクリートポンプ83に2つの打設孔9を繋ぐことにより、コンクリートポンプ83の数を減らして多くの打設孔9から打設できるので経済的である。また、コンクリート圧力計17を備えたので、覆工形成空間100内に流し込まれた高流動性生コンクリート80の圧力監視制御を容易に行える。また、コンクリート圧力計17からの信号を判読して塞止弁15aを開閉する図外の制御装置を設ければ、塞止弁15aの開閉を自動化できる。
【0016】
次に、覆工コンクリート90の内側に残された内型枠30を反力受けとして利用して推進ジャッキ4の反力を取って推進ジャッキ4のピストン4aを伸ばしながら回転切削部2を回転させてシールド掘削機1を一定距離だけ掘進させる。そして、坑口22側に形成された内型枠30に連続するよう掘削進行方向A側に次の1リング分の内型枠30を形成し、このように掘削進行進方向Aに沿って前後に隣り合う内型枠30同士がボルト63及びナット72により締結される。そして、新しく形成した内型枠30の型枠面34とトンネル空洞部21の内周面33との間に覆工コンクリート90を形成する。
【0017】
以後、上記と同様にしてシールド掘削機1を一定距離だけ掘進させて、1リング分の内型枠30を形成し、形成した内型枠30の1つ前に形成した内型枠30とを連結し、新しく形成した内型枠30の型枠面34とトンネル空洞部21の内周面33との間に覆工コンクリート90を形成していく。
【0018】
一般に、トンネル長さは長距離であるため、型枠ピース40は、所定数のリング分の内型枠30を形成できる数分だけ用いられ、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、坑口22側に組み立てられた内型枠30の掘削進行方向A後部に位置する1リング分の型枠ピース40を図外の内型枠脱型装置を用いて解体して取り外した後に、シールド掘削機1を進行させ、取り外した1リング分の型枠ピース40を内型枠30の掘削進行方向Aの先頭位置に盛り替えて使う。即ち、所定数のリング分の内型枠30を設置した後は、掘削が進む毎に、型枠ピース40を後方(坑口側)から前方(切羽側)に盛り替えて繰り返して使用する。
【0019】
図1(a)に示すように、リングの組立と脱型とを繰り返すために、地山20からの圧力のかかり方、推進ジャッキ4の配置、内型枠30のひずみ等が原因となって、内型枠30の組立位置の誤差が蓄積されて内型枠30の組立姿勢にずれが生じて、切羽側に位置するリング状の内型枠30の先頭のリング継手面51が掘削進行方向Aと直交する平面でなくなる場合がある。
【0020】
そこで、最良の形態によれば、上述したように、例えば、16リング分の内型枠30の組立が終了する毎に、その先頭のリング継手面47bで推進反力を取って推進するシールド掘削機1の後端部1aの上下に設けられた複数の推進ジャッキ4のストロークの平均値とシールド掘削機1の後端部1aの左右に設けられた複数の推進ジャッキ4のストロークの平均値との差を測定し、当該差が所定値以上であれば、その先頭のリング継手面47bが掘削進行方向Aと直交する平面でなくなったとして、ストローク調整ライナー50をその先頭のリング継手面47bに取付けて補正リング継手面52を形成し、この補正リング継手面52に次のリング状の内型枠30のリング継手面47bを継いでいく。
【0021】
従って、最良の形態によれば、先頭のリング継手面47bが掘削進行方向Aと直交する平面でなくなった場合には、次のリングのリング継手面47bが接合されるリング継手面を掘削進行方向Aと直交する平面となるように又は当該平面に近づくように補正した補正リング継手面52とできるので、この補正リング継手面52とこの補正リング継手面52に継がれる次の内型枠30のリング継手面47bとを密接状態に接合できて、これら補正リング継手面52とリング継手面47bとを結合するボルト及びナットによる締結摩擦力を十分に得ることができ、これら補正リング継手面52とリング継手面47bとを強固に結合できる。また、覆工形成空間100に形成される一次覆工コンクリート90の周方向において厚さの偏りを少なくでき、一次覆工コンクリート90の品質を向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
ストローク調整ライナー50の大きさは特に限定されないが、複数のストローク調整ライナー50によって、トンネル空洞部21の内周面33に沿って1周するリングを形成するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】内型枠の組立方法を示す概略断面図(最良の形態)。
【図2】(a)は内型枠の組立方法における先頭の内型枠のリング継手面と補正部品との関係を示す分解断面図、(b)は補正部品を示す斜視図(最良の形態1)。
【図3】密閉型のシールド掘削機によるトンネル施工方法を示す断面図(最良の形態)。
【図4】コンクリート供給管と妻型枠に形成されたコンクリート打設孔との関係を示す図(最良の形態)。
【図5】型枠ピースを示す斜視図(従来)。
【図6】トンネル空洞部と内型枠との関係を示す図(従来)。
【符号の説明】
【0024】
21 トンネル空洞部、30 内型枠、33 内周面、40 型枠ピース、
47b リング継手面、52 補正リング継手面、53 坑口側面、
54 切羽側面、A 掘削進行方向。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地山を掘削した掘削孔により形成されたトンネル空洞部の内周面に沿って設置されてトンネル空洞部の内周面との間に覆工部を形成するための内型枠の型枠ピースがトンネル空洞部の内周面に沿って内周面を1周するように複数設置されてリング状の内型枠を形成し、このリング状の内型枠を掘削進行方向に向けて順次組み立てていく内型枠の組立方法において、切羽側に位置するリング状の内型枠の先頭のリング継手面が掘削進行方向と直交する平面でなくなった場合に、当該先頭のリング継手面を掘削進行方向と直交する平面となるように又は当該平面に近づくように所定の厚みを有した補正部品を用いて補正した補正リング継手面を形成したことを特徴とする内型枠の組立方法。
【請求項2】
切羽側に位置するリング状の内型枠の先頭のリング継手面で反力を取るシールド掘削機の上下の推進ジャッキのストロークの平均値と左右のシールドジャッキのストロークの平均値との差が所定値以上となった場合に、先頭のリング継手面の補正を行うことを特徴とする請求項1に記載の内型枠の組立方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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