説明

内外装用タイル貼り面のひび割れ修復工法

【課題】本発明はタイル貼り面のひび割れを修復した後、繰返してひび割れが発生する恐れをなくすと共にタイルが1枚毎色調や色の異なる内装或いは外装のひび割れを修復しても以前と殆ど見分けが付かぬほど自然な感じに仕上げられ、且つ、軽くて脱落しにくい内外装用タイル貼り面のひび割れ修復工法を提供することを目的とする。
【解決手段】ひび割れたタイル4を剥離して撤去した後、可撓性を有したタイル1が貼付けられてタイル貼り面のひび割れ修復工法と成す。この時のタイル1として、メッシュ状の補強材が埋設された合成樹脂製のものを用いるのが好ましく、タイル1の表面に、1枚毎色調や色の異なるものを用いて周囲に同化させるようにするのが良い。またタイル1間に軟質の目地材3を用いると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイル貼り面のひび割れを修復した後、繰返してひび割れが発生する恐れをなくした内外装用タイル貼り面のひび割れ修復工法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に外装仕上げ材としてタイル貼り仕上げの建物は、高級感あふれ、耐久性にも優れているので、近年多く見受けられる。しかし、長期間に渡る紫外線,雨水,酸性ガス,地震などのさまざまな影響によりタイル面の汚れ,ひび割れ,浮き,剥離,目地部のエフロレッセンスの流出,コンクリートの中性化の進行,そして漏水によるさまざまな劣化現象が見られ、タイル貼り面の適切な補修処置は重要になってきている。このため、現在ではタイル貼り面に撥水性処理や汚れ防止程度の薄膜塗料などが塗布されている場合も多く見受けられるが、高い防水性能は望めなかった。この理由としてはタイル貼り面に透明な塗膜で、且つ厚膜で、更にクラック追従性に優れた防水材がなかったためと考えられる。しかもタイル貼り仕上げされたマンション等に於いては、建設後10年経過すると、躯体へ地震による影響やコンクリートの収縮等により、躯体側にひび割れ(5)を生じ、且つ、タイル陶片までひび割れ(5)が発生し[図1(a)参照]、雨水がコンクリート内部まで浸入して白いエフロレッセンスを流出して汚れたものが多く見受けられる。
【0003】
この場合の外壁用タイル貼り面の割れ修復工法としては、一般にひび割れたタイル(4)及び修復作業に必要な最小限のタイル陶片を剥離して撤去し、躯体側のひび割れ(5)にエポキシ樹脂などの注入材を注入してコンクリートの奥深くまで浸透させ、ひび割れ(5)を埋める工程が行われ、或いは、ひび割れ(5)に沿って深くUカットし、Uカットした溝にシーリング材を充填させる工程が行われていた[図1(b)参照]。そして注入材或いはシーリング材が固化後、新たなタイル陶片を、剥離した位置に貼付けるタイル貼り工程が行われ、前記タイル陶片間に目地材が埋められてタイル貼り面の割れ修復工法を終了していた。
【0004】
しかしながら、前記ひび割れ(5)を埋める工程或いはUカットした溝にシーリング材を充填させる工程が行われて新たにタイル陶片を貼付けて修復しても、躯体側が一度動いてひび割れた箇所は補強しても地震等で動き易いため、修復箇所のタイル陶片は極めてひび割れ(5)が発生し易く、タイル陶片の貼り替えを繰返さなければならなかった。このため、弾性を有した接着剤を使用する方法が施される場合もあるが、有効なひび割れ対策が施されたものがないのが現状である。
【0005】
尚、タイル陶片を撤去せずに、ひび割れ(5)に沿って深くUカットし、Uカットした溝に柔軟なパテ材を充填させると共にタイル陶片を擬似的に周囲に同化させる工法が、本発明者によって特願2002−162524「内外装用タイル貼り面の割れ修復工法」として提案されている。
【特許文献1】特願2002−162524号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はタイル貼り面のひび割れを修復した後、繰返してひび割れが発生する恐れをなくした内外装用タイル貼り面のひび割れ修復工法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、タイルが1枚毎色調や色の異なる内装或いは外装のひび割れを修復しても以前と殆ど見分けが付かぬほど自然な感じに仕上げられると共に軽くて脱落しにくい内外装用タイル貼り面のひび割れ修復工法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記現状に鑑み成されたものであり、つまり、ひび割れたタイルを剥離して撤去した後、可撓性を有したタイルが貼付けられてタイル貼り面のひび割れ修復工法と成す。この時のタイルとして、メッシュ状の補強材が埋設された合成樹脂製のものを用いるのが好ましく、タイルの表面に、1枚毎色調や色の異なるものを用いて周囲に同化させるようにするのが良い。また躯体側のひび割れ修復後、剥離した位置にタイルを貼付け、そのタイル間に軟質の目地材を用いると良い。尚、本発明で言う「1枚毎色調や色の異なるもの」とは、ひび割れた各タイル陶片と色調や色を同一にさせ且つ残存する周囲のタイル陶片と同化させるために施された表面処理を指すものとする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1のように可撓性を有したタイル(1)が、ひび割れたタイル(4)を剥離して撤去された位置に貼付けられることにより、躯体側が地震等でひび割れ修復箇所が動いて隙間を生じても、可撓性のタイル(1)は多少動く程度で済むものとなるため、該タイル(1)の表面にひび割れ(5)を生じることはなくなる。従って、表面からは雨水が躯体側に浸透する恐れがないものとなり、従来の如きタイル陶片を繰返して貼り替えることがなくなり、維持管理が殆ど掛からないものとなるのである。
【0010】
請求項2のようにタイル(1)に、メッシュ状の補強材(2)が埋設されたものを用いることにより、タイル(1)の補強効果と共に外気温に対するタイル(1)の寸法安定性は、補強材(2)によって縦方向と横方向の伸縮が抑制されるため、夏場と冬場との寸法差が小さく、目地材(3)に掛かる負担が小さなものとなり、周辺のタイル陶片や目地材(3)が割れにくくなる。
【0011】
請求項3に示すようにタイル(1)の表面に、1枚毎色調や色の異なるものを用いることによって、周囲の既存のタイル陶片と違和感がないように着色して仕上げられたものを貼付ければ、壁や床などの外観が既存のタイル陶片と同様に見栄えの良いものとなるのである。
【0012】
請求項4に示すように躯体側のひび割れ修復後、剥離した位置にタイル(1)を貼付け、タイル(1)間に目地材(3)を埋込めば、作業が従来と同様に行えると共に周囲のタイル陶片と同化できるものとなる。
【0013】
請求項5のように目地材(3)に軟質なものを用いると、躯体側の振動がタイル(1)と目地材(3)によって吸収出来るものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の実施形態を示す図であり、この図番について説明する。(1)は修復用で且つ可撓性を有したウレタン樹脂,弾性エポキシ樹脂,軟質ポリエステル樹脂などの合成樹脂製のタイルであり、該タイル(1)は撤去したタイル陶片と同形で且つ同じ大きさのものである。また前記タイル(1)の表面には、図2に示すようにプライマー塗膜と、周囲のタイル陶片と同化するために調合された塗料で塗布した塗膜と、該塗膜の表面に塗布し形成する透明な防護膜とから成る多層膜が設けられている。この多層膜は本発明者が提案した特願2003−126861に於いて形成する多層膜と同じものを設ければ良い。尚、前記タイル(1)の可撓性としては、弾力性を有するものが特に好ましい。
【0015】
(2)はタイル(1)の中心位置に埋設したメッシュ状の補強材であり、該補強材(2)としては、グラスメッシュや樹脂製メッシュなどを用いると良い。特にグラスメッシュを埋設すると、タイル(1)の補強効果と共に外気温に対する寸法安定性の良好なものとなる。また樹脂製メッシュとしてクロスメッシュを用いれば、外気温に対するタイル(1)の縦横の寸法が安定したものとなる。尚、前記補強材(2)の埋設位置はタイル(1)の中心に限定されるものではない。(3)は剥離位置に貼付けたタイル(1)間に埋込まれる目地材であり、該目地材(3)として、軟質のものを用いるのが好ましい。(4)は外壁などのタイル陶片であり且つひび割れたタイルである。尚、本発明で言う「ひび割れたタイル」は、外装や内装の仕上げ材として貼り面に取付けたものを指し、陶磁器製タイル以外にレンガや石状のブロック或いは板なども含まれるものとする。(5)は躯体側に生じたひび割れであり、該ひび割れ(5)はタイル陶片にも生じる。
【0016】
次に本発明の修復工法を図1に基づいて説明する。先ず、外壁や内壁或いは床面などのタイル貼り仕上げされた場所に、図1(a)のようにひび割れ(5)が生じている場合には、外壁或いは内壁などに生じるひび割れたタイル(4)と、修復作業に必要な最小限のタイル陶片を図1(b)のように剥離して撤去させると共にひび割れ(5)に沿って深くUカットし、Uカットした溝にシーリング材を充填させる[図1(b)参照]。この時、躯体側のひび割れ(5)の修復時、Uカットせずに直接ひび割れ(5)から注入材を注入して、躯体側のコンクリートの奥深くまで注入材を浸透させても良い。
【0017】
前記シーリング材が固化された後、タイル貼り面を平らにして躯体側のひび割れ修復を終了させる。そして、可撓性を有するタイル(1)を、剥離した位置に貼付ける[図1(c)参照]。その後、タイル(1)間に目地材(3)を図1(d)に示す斜線部分のように埋込み、表面をきれいにすれば修復作業は完了するのである。尚、前記タイル(1)が既存のタイル陶片と同化させるために、本発明者によって提案された特願2003−126861「修復に使用する内外装用タイル」に於いて擬似的に周囲と同化させる方法と同様に表面を予め着色して仕上げられたものを用意し、このタイル(1)を使用するのが好ましい。
【0018】
このようにして外壁や内壁或いは床面などのタイル貼り面のひび割れ修復が行われると、タイル(1)によって、表面には新たなひび割れ(5)の発生は防止されると共に水の浸入を防ぐことができるため、修復した箇所の防水効果が長期間に渡って発揮されるものとなる。またタイル(1)は既存のタイル陶片と比べ、重量が半分前後に軽量化し、脱落しにくいものとなる。このタイル(1)が例え落下しても割れる恐れがないので、周囲の人に怪我をさせる恐れはなく、極めて安全性が高いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態を示す説明図である。
【図2】本実施形態で使用するタイルの断面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 タイル
2 補強材
3 目地材
4 ひび割れたタイル
5 ひび割れ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体側のひび割れ(5)によって、ひび割れたタイル(4)を剥離して撤去するタイル貼り面のひび割れ修復工法に於いて、少なくとも、可撓性を有したタイル(1)が貼付けられたことを特徴とする内外装用タイル貼り面のひび割れ修復工法。
【請求項2】
前記タイル(1)に、メッシュ状の補強材(2)を埋設したものが用いられた請求項1記載の内外装用タイル貼り面のひび割れ修復工法。
【請求項3】
前記タイル(1)の表面に、1枚毎色調や色の異なるものが用いられた請求項1又は2記載の内外装用タイル貼り面のひび割れ修復工法。
【請求項4】
前記躯体側のひび割れ修復後、前記タイル(1)が、剥離した位置に貼付けられ、前記タイル(1)間に目地材(3)が埋込まれた請求項1、2又は3記載の内外装用タイル貼り面のひび割れ修復工法。
【請求項5】
前記目地材(3)として、軟質のものが用いられた請求項4記載の内外装用タイル貼り面のひび割れ修復工法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−144455(P2009−144455A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324321(P2007−324321)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(302027664)株式会社ヤグチ技工 (14)
【Fターム(参考)】