説明

内挿分割回路

【課題】本発明は、キャリア成分f(ωt)を含まない2相出力信号を用いて閉ループ方式にて内挿分割し、回路構成を簡略化することを目的とする。
【解決手段】本発明による内挿分割回路は、互いに位相が異なる第1、第2出力信号(SX,SY)は内挿回路(70)のcos,sin乗算回路(713,714)に入力され、各cos,sin乗算回路(713,714)からの各乗算出力が減算回路(715)に入力されて減算処理されて偏差(ε)が出力され、この偏差(ε)を用いて位置データ(φ)を得る構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内挿分割回路に関し、特に、キャリア成分f(ωt)を含まない2相出力信号を用いて、閉ループ方式にて内挿分割することにより、回構成を簡略化するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の光エンコーダの内挿分割方法としては、特許文献1に示されているように、キャリア成分を含む2相信号を開ループ方式の内挿分割回路で内挿処理して位置データを得ていた。
【0003】
すなわち、図5から図10で示されるように構成されていた。
正弦波信号源10は、正弦液状の信号SG(図6(c)を参照)をノードP,N間に印加する。発光回路20は、アノードかノードPに接続された発光ダイオード21と、カソードおよびアノードがそれぞれ発光ダイオード21のアノードおよびカソードに接続されたダイオード23と、カソードが発光ダイオード21のカソードに接続され、アノードがノードNに接続された発光ダイオード22と、アノードおよびカソードがそれぞれ発光ダイオード22のカソードおよびアノードに接続されたダイオード24とからなる。
【0004】
発光回路30は、アノードがノードPに接続された発光ダイオード31と、カソードおよびアノードがそれぞれ発光ダイオード31のアノードおよびカソードに接続されたダイオード33と、カソードが発光ダイオード31のカソードに接続され、アノードがノードNに接続された発光ダイオード32と、アノードおよびカソードがそれぞれ発光ダイオード32のカソードおよびアノードに接続さされたダイオード34とからなる。発光回路20、30の発光ダイオード21、22、31、32の光は、インデックススケール40およびメインスケール50の透光スリットを通過して、受光素子61、62に受光される。発光ダイオード21、31から受光素子61、62に受光される光は光エンコーダ1ピッチ内で位相が90°ずれるように配置されている。光ダイオード21、22から受光素子61に受光される光は光エンコーダ1ピッチ内で位相が180°ずれるように配置されている。光ダイオード31、32から受光素子62に受光される光は光エンコーダ1ピッチ内で位相が180°ずれるように配置されている。また、正弦波信号源10のノードPにおける極性がノードNに対し正極のときは、発光ダイオード21、31が発光し、負極のときは、発光ダイオード22、32が発光する。
【0005】
したがって、発光回路20から受光素子61に対し、スケール40、50を介して正弦波状に変化する光が出射されているとすると、発光回路30からは余弦波状に変化する光が出射されていることとなる。しかし、メインスケール50が基準位置から角度θだけ傾いているとすると、角度θの余弦または正弦が発光回路20または発光回路30からの受光に乗算されて受光素子61、62の出力信号SX,SY(図6(a),(b)を参照)となる。レゾルバ/デジタルコンバータ70(以降、R/Dコンバータ70と略記する)は、信号SGに基づきSX,SYをレゾルバ/デジタルコンバートし、1ピッチ内の位置を示すデジタル信号80を出力する。具体例としては図9に示されるようにレゾルバ/デジタルコンバートするための、R/Dコンバータ70は、ACブリッジ71、位相検知復調器72、アップダウンカウンタ73、アップダウンVCO74、積分器75から構成されている。また、ACブリッジ71は、図10に示されるように、バッファ711、COS乗算回路713、SIN乗算回路714、減算回路715とから構成されている。
【0006】
このような構成のR/Dコンバータ70に対し、正弦波信号源10がSINωtを出力し、メインスケール50は回転角θだけいる回転しているとすると、R/Dコンバータ70のACブリッジ71のバッファ回路711には、下式(2),(3)であらわされる入力V1,V2が与えられる(SINωtがSINθまたCOSθで振幅変調された形となっている)。
V1=V*SINωt*SINθ・・・・・(2)
V2=V*SINωt*COSθ・・・・・(3)
ただし、Vは定数
バッファ回路711は、これらの信号の4象限の内の出力のいずれかを選択して(これは回路を単純化するためのもので本発明と直接関係がないので、これ以上の説明は行わない)、現時点で角度θとして検出された角度φのデジタル値をアップダウンカウンタ73より入力し、COS乗算回路713、SIN乗算回路714がV1、V2にそれぞれCOSφ、SINφを乗算し、下式(4)、(5)を得る。
【0007】
V11=V*SINωt*SINθ*COSφ・・・・・(4)
V22=V*SINωt*COSθ*SINφ・・・・・(5)
減算回路715はV11からV22を減算し、AC位置誤差を表す下式(6)を得る。
V3=V*SINωt*SIN(θ−φ)・・・・・・・(6)
位相検知復調器72はACブリッジ71の出力V3をSINωtを用いて復調しDC位置誤差として出力する。DC位置誤差は、積分器75およびアップダウンVCO74を介して、アップダウンカウンタ73のカウント値を、式(6)の右辺第3項のSIN(θ−φ)が0すなわちθ=φとなるまで変更させる。θ=φとなったときは、正確な位置データ80がアップダウンカウンタ73より出力されていることとなる。この場合、位相検知復調器72は復調のため、正弦波信号源10の正弦波信号出力を利用しているので、2相発振器のような高精度なものは必要としない。
【0008】
また、図5の実施例とは異なり、図7の第2の実施例のように、正弦波信号源10の代わりに、方形波信号源90を用いた場合にも、同様な結果を得ることができる。この場合の各部の信号を示すのが図8である。
【0009】
【特許文献1】特許第3381736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の内挿分割回路は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、分割するsin/cosの2相出力信号には、一定周波数ωのキャリア成分f(ωt)を含ませる必要があり、f(ωt)生成回路および検波回路が必要となり、回路構成が複雑にならざるを得なかった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による内挿分割回路は、発光回路の発光源からの光をメインスケールを経て第1、第2受光素子で受光し、前記第1、第2受光素子から得られ互いに位相の異なる第1、第2出力信号は内挿回路の偏差検出部に設けられデジタル位置フィードバック値(sinφ,cosφ)が入力されるcos乗算回路及びsin乗算回路に入力され、前記cos,sin乗算回路からの第1、第2乗算出力は減算回路に入力され、減算処理されて偏差(ε)が出力され、前記偏差(ε)を用いて位置データ(φ)を得るようにした構成であり、また、前記偏差(ε)が、補償器に入力されて速度出力が得られると共に、前記速度出力が積分器に入力されて前記位置データ(φ)及びデジタル位置フィードバック値(sinφ,cosφ)が得られる構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による内挿分割回路は、以上のように構成されていたため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、発光源を駆動する発光回路に従来のような正弦波信号源を用いてキャリア成分f(ωt)を生成する回路が不要となって回路構成を簡略化できる。
また、内挿回路にも検波系の回路が不要となり、内挿回路自体の簡略化ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、キャリア成分f(ωt)を用いない閉ループ方式を採用することにより、回路構成を大幅に簡略化することを目的とする。
【実施例】
【0014】
以下、図面と共に本発明による内挿分割回路の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
図1において,符号21で示されるものは発光回路20によって発光駆動される発光源21であり、この発光源21からの光21aは、インデックススケール40及びメインスケール50を介して第1、第2受光素子61、62に入光するように構成されている。
【0015】
前記第1、第2受光素子61、62から得られる2相(sinθ,cosθ)の第1、第2出力信号SX,SYは、内挿回路70に入力され、この内挿回路70からは角度信号としての位置データφが出力されるように構成されている。
尚、前述の第1、第2出力信号SX,SYは、図2で示されるように、互いに90度位相が異なるように構成されている。
【0016】
前記内挿回路70は、図3で示されるように構成されている。
すなわち、前記第1、第2出力信号SX,SYは、偏差検出部71に入力され、この偏差検出部71で得られた偏差εは補償器75に入力され、この補償器75から速度出力79が得られると共に、この速度出力79は積分器75Aで積分されて位置データ(φ)80が得られると共に、この位置データ(φ)80はデジタル位置フィードバック値sinφ,cosφとして前記偏差検出部71に入力されて閉ループを形成するように構成されている。
【0017】
前記補償器75は、前記閉ループを成立するために設けられているもので、この閉ループ成立のための時定数、増幅度等の条件を設定した回路により構成され、その回路構成としては周知の構成を用いることができる。
【0018】
前記偏差検出部71は、具体的には図4で示されるように構成されている。すなわち、この偏差検出部71のcos乗算回路713及びcos乗算回路714には、前記第1、第2出力信号SX,SYが入力され、前記cos,sin乗算回路713,714から得られた第1、第2出力V11,V22は減算回路715に入力され、この減算回路715から前記偏差εがsin(θ−φ)として出力される。
尚、前記cos,sin乗算回路713,714には、前記位置データ(φ)80がデジタル位置フィードバック値sinφ,cosφとして入力されている。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、偏差検出部71に同期検波回路を追加することでエンコーダに限らず、レゾルバにも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明による内挿分割回路を示す全体の構成図である。
【図2】図1の各出力信号の波形図である。
【図3】図1の内挿回路の具体的構成を示すブロック図である。
【図4】図3の偏差検出部の具体的構成を示すブロック図である。
【図5】第1従来構成を示す回路図である。
【図6】図5の各信号の波形図である。
【図7】第2従来構成を示す回路図である。
【図8】図7の各信号を示す波形図である。
【図9】図7のR/Dコンバータの具体的構成を示すブロック図である。
【図10】図9のACブリッジの具体的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0021】
SX 第1出力信号(sinθ)
SY 第2出力信号(cosθ)
20 発光回路
21 発光源
50 メインスケール
61 第1受光素子
62 第2受光素子
ε 偏差〔sin(θ−φ)〕
70 内挿回路
71 偏差検出部
75 補償器
75A 積分器
79 速度出力
80 位置データφ
713 cos乗算回路
714 sin乗算回路
715 減算回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光回路(20)の発光源(21)からの光(21a)をメインスケール(50)を経て第1、第2受光素子(61,62)で受光し、前記第1、第2受光素子(61,62)から得られ互いに位相の異なる第1、第2出力信号(SY,SX)は内挿回路(70)の偏差検出部(71)に設けられデジタル位置フィードバック値(sinφ,cosφ)が入力されるcos乗算回路(713)及びsin乗算回路(714)に入力され、前記cos,sin乗算回路(713,714)からの第1、第2乗算出力(V11,V22)は減算回路(715)に入力され、減算処理されて偏差(ε)が出力され、前記偏差(ε)を用いて位置データφ(80)を得るように構成したことを特徴とする内挿分割回路。
【請求項2】
前記偏差(ε)が、補償器(75)に入力されて速度出力(79)が得られると共に、前記速度出力(79)が積分器(75A)に入力されて前記位置データφ(80)及びデジタル位置フィードバック値(sinφ,cosφ)が得られることを特徴とする請求項1記載の内挿分割回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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