説明

内燃機関のカバー構造

【課題】突出部における潤滑油の滞留を抑制できる内燃機関のカバー構造を提供する。
【解決手段】エンジンEのカバー構造は、エンジン本体10との間でタイミングトレーン室Sを形成してタイミングトレーン機構20を覆うチェーンケース30を備える。チェーンケース30は、側縁部31,32に設けられ、エンジン本体10に締結されるボルト挿通孔31a,31bと、壁部33からエンジン本体10に向けて突出し、タイミングトレーン機構20を潤滑する潤滑油が滞留する凹部30Aを有する可変バルブ用ボス部36及び第2オイル通路用ボス部38と、壁部33からエンジン本体10に向けて突出し、少なくとも凹部30Aの上方に設けられた第1リブ41と、有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のカバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、エンジンのクランクシャフトの回転をカムシャフトに伝達するタイミングチェーンを覆うチェーンケースの内面(裏面)には、内燃機関本体に向けて突出する突出部が設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、チェーンケースの内面から突出形成され、エンジン本体に突き当てられてボルトで締結される複数の中央締結部と、チェーンケースの内面から突出形成され中央締結部の間を連結し、エンジン本体に突き当てられる連結部と、を備えた発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−130051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記中央締結部や連結部等の突出部を設けた場合、チェーンケースの内面に沿って流れてきた潤滑油が突出部の上面等に滞留する虞がある。そのため、潤滑油の滞留を抑制したいという要望があった。
【0006】
本発明は、このような観点から創案されたものであり、突出部における潤滑油の滞留を抑制できる内燃機関のカバー構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明は、内燃機関本体の一側壁に設けられたタイミングトレーン機構と、前記内燃機関本体との間でタイミングトレーン室を形成して前記タイミングトレーン機構を覆うカバー部材と、を備えた内燃機関のカバー構造であって、前記カバー部材は、互いに離間する一対の側縁部に設けられ、前記内燃機関本体に締結される側方締結部と、前記一対の側縁部を繋ぐ壁部の内面から前記内燃機関本体に向けて突出し、前記タイミングトレーン機構を潤滑する潤滑油が滞留する潤滑油滞留部を有する突出部と、前記壁部の内面から前記内燃機関本体に向けて突出し、少なくとも前記潤滑油滞留部のシリンダ軸線方向上方に設けられた第1リブと、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、突出部の潤滑油滞留部のシリンダ軸線方向上方に第1リブが設けられるため、カバー部材の壁部内面に沿って流れてきた潤滑油は、第1リブに導かれ、当該第1リブを伝って流れることとなる。これにより、突出部の潤滑油滞留部における潤滑油の滞留を抑制できる。
【0009】
また、前記突出部は、所定間隔離間して設けられた複数の本体部と、前記本体部の間を連結する連結部と、を有し、前記潤滑油滞留部は、前記本体部及び前記連結部の上部に形成され、前記第1リブは、前記本体部及び前記連結部の周囲を囲むように設けられているように構成するのが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、第1リブは、突出部の本体部及び連結部の周囲を囲むように設けられているため、突出部における潤滑油の滞留をより一層抑制できる。
【0011】
また、前記第1リブのうち、前記潤滑油滞留部のシリンダ軸線方向上方に設けられる部分は、前記一対の側縁部のいずれか一方に向かって下り傾斜し、かつ略直線状に形成されているように構成するのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、第1リブのうち、潤滑油滞留部のシリンダ軸線方向上方に設けられる部分は、一対の側縁部のいずれか一方に向かって下り傾斜し、かつ略直線状に形成されているため、カバー部材の壁部内面に沿って流れてきた潤滑油は、その自重により第1リブを伝って円滑且つ確実に流れることとなる。これにより、第1リブにおける潤滑油の滞留を抑制できる。
【0013】
また、前記突出部の突出端面は、前記内燃機関本体の一側壁に当接しており、前記カバー部材は、前記突出部と前記内燃機関本体との間に設けられるシール部材を更に有し、前記シール部材は、前記第1リブの近傍に設けられているように構成するのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、突出部と内燃機関本体との間に設けられるシール部材は、第1リブの近傍に設けられているため、シール部材近傍の剛性が向上し、内燃機関本体に対するシール部材の密着性が向上することから、良好なシール性を確保できる。
【0015】
また、前記カバー部材は、前記壁部に設けられ、前記内燃機関本体に締結される複数の中央締結部を更に有し、前記中央締結部は、前記突出部の周囲に互いに所定間隔離間して設けられ、前記中央締結部の間は、前記第1リブと前記シール部材の少なくとも一部とによって連結されているように構成するのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、互いに所定間隔離間して設けられた複数の中央締結部の間は、第1リブとシール部材の少なくとも一部とによって連結されていることにより、中央締結部の間において、第1リブとシール部材の少なくとも一部とが隣接して配置されるため、より一層良好なシール性を確保できる。
【0017】
また、前記カバー部材は、前記壁部の内面から前記内燃機関本体に向けて突出し、シリンダ軸線方向に沿って延在する第2リブを更に有し、前記第1リブは、略逆三角形状に形成され、下端部が前記第2リブに連結されているように構成するのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、第1リブは、略逆三角形状に形成されるため、カバー部材の壁部内面に沿って流れてきた潤滑油は、第1リブを伝って当該第1リブの下端部に集められることとなる。そして、第1リブの下端部は、シリンダ軸線方向に沿って延在する第2リブに連結されているため、第1リブの下端部に集められた潤滑油は、第2リブに導かれることとなる。これにより、潤滑油の回収を速やかに行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、突出部における潤滑油の滞留を抑制できる内燃機関のカバー構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】内燃機関のカバー構造を備えるエンジンの概略構成図であり、(a)は、側面図であり、(b)は、正面図である。
【図2】エンジンからチェーンケースを外した状態を示す側面図である。
【図3】チェーンケースの背面図である。
【図4】チェーンケースをシリンダ軸線方向斜め下方から見た状態を示す斜視図である。
【図5】チェーンケースの一部省略正面図である。
【図6】図3の第1オイル通路用ボス部の周辺を示す部分拡大斜視図である。
【図7】図3の可変バルブ用ボス部及び第2オイル通路用ボス部の周辺を示す部分拡大斜視図である。
【図8】図7の可変バルブ用ボス部及び第2オイル通路用ボス部にシール部材を装着した状態を示す部分拡大斜視図である。
【図9】図5のストレーナー取付部の周辺を示す部分拡大斜視図である。
【図10】図5のI−I線断面図である。
【図11】潤滑油の流れを模式的に示した側面図である。
【図12】図11の部分拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。説明において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態では、本発明を自動車のエンジンに適用した場合を例にとって説明する。また、方向を説明する場合は、図1に示す車両の前後上下左右に基づいて説明する。
【0022】
なお、本実施形態では、上下方向は、鉛直方向に一致し、シリンダ軸線方向は、上下方向(鉛直方向)に対し前側に所定角度傾斜しているものとする。また、軸方向は、クランクシャフト及びカムシャフトの回転中心に平行な方向であるものとする。更に、直交方向は、軸方向から見たとき、シリンダ軸線方向に直交する方向であるものとする。そして、シリンダ軸線方向に直交する平面であるシリンダ直交平面に対して、上側となる方を上方、下側となる方を下方という。
【0023】
図1は、内燃機関のカバー構造を備えるエンジンEの概略構成図であり、(a)は、側面図であり、(b)は、正面図である。図2は、エンジンEからチェーンケース30を外した状態を示す側面図である。
図1(a)及び(b)に示すように、エンジンEは、例えば、車体に横置きされたDOHC形式の直列型エンジンである。エンジンEは、エンジン本体10と、タイミングトレーン機構20と、チェーンケース30と、を主に備える。
【0024】
<エンジン本体>
エンジン本体10は、図2に示すように、シリンダブロック11と、ロアブロック12と、シリンダヘッド13と、ヘッドカバー14と、オイルパン15と、を有する。
【0025】
<シリンダブロック>
シリンダブロック11は、図示は省略するが、主にシリンダボアとクランクケースとを構成する部材である。シリンダブロック11の内部には、ピストン、コンロッド、クランクシャフト16等が収容される。
【0026】
<ロアブロック>
ロアブロック12は、シリンダブロック11と共にクランクケースを構成する部材であり、シリンダブロック11の下方に配置される。クランクシャフト16の端部は、シリンダブロック11の側壁11aとロアブロック12の側壁12aとの間に回転可能に挟持される。
【0027】
<シリンダヘッド>
シリンダヘッド13は、シリンダブロック11と共に燃焼室を構成する部材であり、シリンダブロック11の上方に配置される。シリンダヘッド13の内部には、図示は省略するが、燃焼室に連通する吸気ポート及び排気ポートが形成されると共に、吸気ポート及び排気ポートを開閉するための吸気バルブ及び排気バルブやロッカアーム等が配置される。また、シリンダヘッド13の上方には、2本のカムシャフト17が配置される。カムシャフト17は、吸気側カムシャフト18及び排気側カムシャフト19を構成する。吸気側カムシャフト18及び排気側カムシャフト19は、互いに軸方向が平行となるように並設される。
【0028】
なお、シリンダブロック11の側壁11a、ロアブロック12の側壁12a、及びシリンダヘッド13の側壁13aの幅方向両端部には、その延在方向に沿って、複数のボルト挿通孔10a,10aが間隔を空けて形成される。
【0029】
<ヘッドカバー>
ヘッドカバー14は、シリンダヘッド13の上部を閉塞して動弁室を構成する蓋状の部材であり、シリンダヘッド13の上方に配置される。吸気側カムシャフト18及び排気側カムシャフト19の端部は、ヘッドカバー14の側壁14aに回転可能に固定される。
【0030】
<オイルパン>
オイルパン15は、エンジンE内の各部を潤滑して落下してくるオイルを受け止めるための部材であり、ロアブロック12の下方に配置される。オイルパン15の内部には、エンジンE内の各部にオイルを圧送するためのオイルポンプ15aが配置される。オイルポンプ15aのポンプ駆動軸15bの一端側は、オイルパン15の側壁15cから突出している。
【0031】
なお、クランクシャフト16は、駆動軸として機能するものであり、吸気側カムシャフト18、排気側カムシャフト19、及びポンプ駆動軸15bは、それぞれ従動軸として機能するものである。
【0032】
<タイミングトレーン機構>
タイミングトレーン機構20は、クランクシャフト16の回転力をポンプ駆動軸15bとカムシャフト17とに伝達する機構である。
タイミングトレーン機構20は、クランクスプロケット21と、カムスプロケット22A,22Bと、オイルポンプ用スプロケット23と、カム用タイミングチェーン24と、オイルポンプ用タイミングチェーン25と、可動シュー26Aと、第1固定シュー26Bと、第2固定シュー26Cと、第1油圧式テンショナ装置27と、シュー28と、第2油圧式テンショナ装置29と、を主に備える。
【0033】
<クランクスプロケット>
駆動輪であるクランクスプロケット21は、エンジン本体10の側面から突出したクランクシャフト16の一端側に固定され、クランクシャフト16と一体的に回転可能に構成された歯車部材である。クランクスプロケット21は、径の大きい第1ギア部21aと、径の小さい第2ギア部21bと、を備える。第1ギア部21aは、第2ギア部21bよりもエンジン本体10側に配設される。なお、本実施形態では、クランクスプロケット21(クランクシャフト16)は、図2における時計回り方向に回転する。
【0034】
<カムスプロケット>
従動輪であるカムスプロケット22A,22Bは、エンジン本体10の側面から突出した2本のカムシャフト17の一端側に夫々固定され、カムシャフト17と一体的に回転可能に構成された歯車部材である。カムスプロケット22Aは、吸気側カムシャフト18に連結され、カムスプロケット22Bは、排気側カムシャフト19に連結される。カムスプロケット22A,22Bの回転に伴って、吸気側カムシャフト18及び排気側カムシャフト19が回転することにより、吸気バルブ及び排気バルブが所定のタイミングで開閉する。
【0035】
<カム用タイミングチェーン>
タイミングチェーンたるカム用タイミングチェーン24は、クランクシャフト16の回転力をカムシャフト17に伝達する無端状のチェーンであり、クランクスプロケット21の第2ギア部21bとカムスプロケット22A,22Bとの間に掛け渡される。
【0036】
<可動シュー>
摺接部材たる可動シュー26Aは、カム用タイミングチェーン24の緩み側(図2の左側)に摺接し、カム用タイミングチェーン24をガイドする弓状の長尺部材である。可動シュー26Aは、上端側がシリンダヘッド13の側壁13aに揺動自在に固定される。可動シュー26Aの下端側は、第1油圧式テンショナ装置27によってカム用タイミングチェーン24に向かって付勢される。
【0037】
<第1固定シュー>
第1固定シュー26Bは、カム用タイミングチェーン24の張り側の部位(図1の右側の部位)に摺接し、カム用タイミングチェーン24をガイドする直線状の長尺部材である。第1固定シュー26Bは、シリンダブロック11の側壁11a及びシリンダヘッド13の側壁13aに跨って複数のボルトB,Bで固定される。
【0038】
<第2固定シュー>
第2固定シュー26Cは、カムスプロケット22A,22Bの上方に配置され、カム用タイミングチェーン24に摺接し、カム用タイミングチェーン24をガイドする直線状の部材である。第2固定シュー26Cは、ヘッドカバー14に固定される。
【0039】
<第1油圧式テンショナ装置>
第1油圧式テンショナ装置27は、可動シュー26Aをカム用タイミングチェーン24に向かって付勢することにより、カム用タイミングチェーン24の張力を略一定に調節する装置である。第1油圧式テンショナ装置27は、可動シュー26Aに当接する当接部27aと、ロアブロック12の側壁12aに固定されたハウジング27bと、ハウジング27bから突出して当接部27aを押圧するプランジャ27cと、を有する。
【0040】
当接部27aは、可動シュー26Aの下端側に配置された略三角形状の部材である。当接部27aは、内側下端部がシリンダブロック11の側壁11aに揺動自在に固定される。当接部27aの外側下端部は、プランジャ27cによって可動シュー26Aに向かって付勢される。
【0041】
ハウジング27bには、エンジン本体10のオイル供給油路(図示省略)から高圧のオイルが供給される。この場合、ハウジング27bから押し出されたプランジャ27cによって当接部27aが可動シュー26Aに向かって押圧されると(図2の時計回り方向に揺動すると)、当接部27aを介して可動シュー26Aがカム用タイミングチェーン24に向かって押圧され、カム用タイミングチェーン24の張力が略一定に調節される。
【0042】
<オイルポンプ用スプロケット>
オイルポンプ用スプロケット23は、オイルパン15の側壁15cから突出したポンプ駆動軸15bに固定された歯車部材である。この場合、オイルポンプ用スプロケット23の回転に伴ってポンプ駆動軸15bが回転することにより、オイルポンプ15aが駆動し、高圧のオイルがオイル供給通路(図示省略)を通ってエンジン本体10内の各所に供給される。
【0043】
<オイルポンプ用タイミングチェーン>
オイルポンプ用タイミングチェーン25は、クランクシャフト16の回転力をポンプ駆動軸15bに伝達する無端状のチェーンであり、クランクスプロケット21の第1ギア部21aとオイルポンプ用スプロケット23との間に掛け渡される。
【0044】
<シュー>
シュー28は、オイルポンプ用タイミングチェーン25の緩み側(図2の右側)に当接する部材である。シュー28の下端部は、第2油圧式テンショナ装置29に揺動自在に固定される。
【0045】
<第2油圧式テンショナ装置>
第2油圧式テンショナ装置29は、シュー28をオイルポンプ用タイミングチェーン25に向かって付勢することにより、オイルポンプ用タイミングチェーン25の張力を略一定に調節する装置である。第2油圧式テンショナ装置29は、ロアブロック12の側壁12aに固定されたハウジング29aと、ハウジング29aから突出してシュー28を押圧するプランジャ29bと、ハウジング29aに形成される中空部(図示省略)に収容されるリリーフバルブ29cと、を備える。
【0046】
ハウジング29aは、第2油圧式テンショナ装置29のボディを構成する部材であり、その内部に油路や高油圧室等を備える。ハウジング29aの高油圧室には、エンジン本体10のオイル供給通路(図示省略)から高圧のオイルが供給される。この場合、ハウジング29aから押し出されたプランジャ29bによって、シュー28がオイルポンプ用タイミングチェーン25に向かって押圧され、オイルポンプ用タイミングチェーン25の張力が略一定に調節される。
【0047】
リリーフバルブ29cは、ハウジング29aの高油圧室の油圧が所定値以上になったときにリリーフ孔29c1からオイルを排出するとともに、排出したオイルを利用してタイミングトレーン機構20を潤滑する機能を有する。リリーフバルブ29cのリリーフ孔29c1は、ハウジング29aの上側後方に貫通して形成される。リリーフ孔29c1は、ハウジング29aの任意の位置に設けることができる。
【0048】
<チェーンケース>
図1に戻り、カバー部材たるチェーンケース30は、エンジン本体10の一側面に固定されており、カム用タイミングチェーン24を外側から覆う部材である。すなわち、チェーンケース30は、エンジン本体10との間でタイミングトレーン室S(図1(b)参照)を形成し、カム用タイミングチェーン24を覆っている。
【0049】
図3は、チェーンケース30の背面図である。図4は、チェーンケース30をシリンダ軸線方向斜め下方から見た状態を示す斜視図である。なお、図3では、説明の便宜上、クランクシャフト16、クランクスプロケット21の第2ギア部21b、及びカム用タイミングチェーン24を描いている。
チェーンケース30は、図3及び図4に示すように、断面視コ字状を呈する部材であって、幅方向(前後方向)に互いに離間する一対の側縁部31,32と、側縁部31,32を繋ぐ壁部33と、を主に備える。
【0050】
<側縁部>
側縁部31,32は、壁部33の幅方向両端部からエンジン本体10に向けて突出して形成され、エンジン本体10に当接固定される部分である。側縁部31,32には、その延在方向に沿って、複数のボルト挿通孔31a,32aが間隔を空けて貫通して形成される。側方締結部たるボルト挿通孔31a,32aは、エンジン本体10のボルト挿通孔10a(図2参照)に対応する位置に設けられる。
【0051】
<壁部>
図5は、チェーンケース30の一部省略正面図である。
壁部33は、図3及び図5に示すように、油圧制御弁取付部34と、第1オイル通路用ボス部35と、可変バルブ用ボス部36と、ストレーナー取付部37と、第2オイル通路用ボス部38と、第1締結用ボス部39a−第3締結用ボス部39cと、複数のリブ40,40と、を主に有する。
【0052】
<油圧制御弁取付部>
油圧制御弁取付部34は、図5に示すように、壁部33の外面33aの上部側であって、側縁部32の近傍に設けられ、油圧制御弁(図示省略)が取り付けられる部分である。油圧制御弁取付部34は、壁部33の外面33aから所定長だけ突出して形成される。油圧制御弁取付部34には、3つの円形状の孔部34a−34cが貫通して形成される。孔部34aは、油圧制御弁のオイル供給路に連通し、孔部34bは、油圧制御弁のオイル排出路に連通し、孔部34cは、油圧制御弁のドレン部に連通する。
【0053】
<第1オイル通路用ボス部>
図6は、図3の第1オイル通路用ボス部35の周辺を示す部分拡大斜視図である。
図6に示すように、第1オイル通路用ボス部35は、壁部33の内面(エンジン本体10に対向する面)33bからエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成される。第1オイル通路用ボス部35の突出端面は、エンジン本体10の一側面に当接する。
第1オイル通路用ボス部35は、オイル供給用ボス部35aと、オイル排出用ボス部35bと、から構成される。
【0054】
オイル供給用ボス部35aは、同心円状でかつ径の異なる円筒部を内外二重に配置して構成された部分である。内側の円筒部には、油圧制御弁取付部34の孔部34a(図5参照)及びエンジン本体10のオイル通路(図示省略)に連通する孔部35a1が形成される。
【0055】
オイル排出用ボス部35bは、同心円状でかつ径の異なる円筒部を内外二重に配置して構成された部分と、外側の円筒部の外周面に連続して略四角筒状に構成された部分と、を有する。内側の円筒部には、油圧制御弁取付部34の孔部34b(図5参照)及びエンジン本体10のオイル通路(図示省略)に連通する孔部35b1が形成される。略四角筒状の部分には、油圧制御弁取付部34の孔部34cに連通する孔部35b2が形成される。
【0056】
この場合、孔部34a及び孔部35a1は、エンジン本体10から油圧制御弁へオイルを供給するオイル供給油路として機能し、孔部34b及び孔部35b1は、油圧制御弁からエンジン本体10へオイルを排出するオイル排出油路として機能する。また、孔部34c及び孔部35b2は、油圧制御弁のドレン部からチェーンケース30内へオイルを供給するドレン油路Dとして機能する。
【0057】
<可変バルブ用ボス部>
図7は、図3の可変バルブ用ボス部36及び第2オイル通路用ボス部38の周辺を示す部分拡大斜視図である。
図7に示すように、本体部たる可変バルブ用ボス部36は、可変バルブタイミング機構を制御する制御弁(図示省略)が挿入される略卵状の孔部36dを有する部分である。可変バルブ用ボス部36は、壁部33の上部側であって、幅方向中央部に設けられる。可変バルブ用ボス部36は、壁部33の内面33bからエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成された外縁部36aと、孔部36dの開口縁からエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成された内縁部36bと、を有する。外縁部36a及び内縁部36bの突出端面は、エンジン本体10の一側面に当接する。外縁部36a及び内縁部36bの間には、溝部36cが壁部33の外面33aに向けて凹設して形成される。なお、制御弁は、可変バルブ用ボス部36の孔部36dを介して、シリンダヘッド13(図2参照)に取り付けられる。
【0058】
<第2オイル通路用ボス部>
第2オイル通路用ボス部38は、図7に示すように、可変バルブ用ボス部36に対し後斜め下側に所定間隔離間して設けられたオイル供給用ボス部38aと、オイル供給用ボス部38aと可変バルブ用ボス部36とを連結するオイル戻り用ボス部38bと、を有する。
【0059】
本体部たるオイル供給用ボス部38aは、エンジン本体10のオイル通路(図示省略)に連通する略四角筒状の凹部38a4を有する部分である。オイル供給用ボス部38aは、壁部33の内面33bからエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成された外縁部38a1と、凹部38a4の開口縁からエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成された内縁部38a2と、を有する。外縁部38a1及び内縁部38a2の突出端面は、エンジン本体10の一側面に当接する。外縁部38a1及び内縁部38a2の間には、溝部38a3が壁部33の外面33aに向けて凹設して形成される。
【0060】
連結部たるオイル戻り用ボス部38bは、エンジン本体10のオイル通路(図示省略)とストレーナー取付部37の孔部37bとを連通する円筒状の孔部38b4を有する部分である。オイル戻り用ボス部38bは、壁部33の内面33bからエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成された外縁部38b1と、孔部38b4の開口縁からエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成された内縁部38b2と、を有する。外縁部38b1及び内縁部38b2の突出端面は、エンジン本体10の一側面に当接する。外縁部38b1及び内縁部38b2の間には、溝部38b3が壁部33の外面33aに向けて凹設して形成される。
【0061】
図8は、図7の可変バルブ用ボス部36及び第2オイル通路用ボス部38にシール部材43を装着した状態を示す部分拡大斜視図である。
本実施形態では、図7及び図8に示すように、第2オイル通路用ボス部38の外縁部38a1,38b1及び可変バルブ用ボス部36の外縁部36aは、一体的に連続して(一筆書き状に)形成される。また、第2オイル通路用ボス部38の溝部38a3,38b3及び可変バルブ用ボス部36の溝部36cは、一体的に連続して形成され、これらの溝部38a3,38b3,36cには、単一のシール部材43が装着(嵌合)される。
【0062】
シール部材43は、エンジン本体10の一側面に密着(圧接)して、内縁部36b,38a2,38b2の内側空間部(孔部36d、凹部38a4、孔部38b4)と外縁部36a,38a1,38b1の外側空間部との間を気密乃至液密にシールする部材である。シール部材43は、溝部38a3,38b3,36cに対応する形状を呈しており、第1リブ41の近傍に設けられる。
【0063】
<ストレーナー取付部>
図9は、図5のストレーナー取付部37の周辺を示す部分拡大斜視図である。
図9に示すように、ストレーナー取付部37は、可変バルブ用ボス部36の下方に設けられ、ストレーナー(図示省略)が取り付けられる部分である。ストレーナー取付部37は、壁部33の外面33aから所定長だけ突出して形成される。ストレーナー取付部37には、所定の容積を有する略四角筒状の凹部37a及び円筒状の孔部37bが形成される。凹部37a及び孔部37bは、ストレーナーに連通する。
【0064】
図10は、図5のI−I線断面図である。
図5及び図10に示すように、第2オイル通路用ボス部38の凹部38a4は、ストレーナー取付部37の凹部37aに対し幅方向に位置をずらして設けられる。凹部38a4及び凹部37aの間には、図10に示すように、連通路33cが形成される。連通路33cの一端は、凹部38a4の側面に開口する一方、他端は、凹部37aの底面に開口する。
【0065】
この場合、凹部38a4、連通路33c、及び凹部37aは、エンジン本体10からストレーナーへオイルを供給するオイル供給油路として機能し、孔部37b及び孔部38b4は、ストレーナーからエンジン本体10へオイルを戻すオイル戻り油路として機能する。また、凹部38a4は、チャンバーとしても機能する。
【0066】
<締結用ボス部>
中央締結部たる第1締結用ボス部39a−第3締結用ボス部39cは、図7に示すように、エンジン本体10の一側面にボルト(図示省略)で固定される円筒状の部分である。各締結用ボス部39a−39cは、壁部33の内面33bからエンジン本体10へ所定長だけ突出して形成され、その突出端面がエンジン本体10の一側面に当接する。各締結用ボス部39a−39cは、可変バルブ用ボス部36及び第2オイル通路用ボス部38の周囲に互いに間隔を空けて設けられる。詳しくは、第1締結用ボス部39aは、可変バルブ用ボス部36の前方に配置される。第2締結用ボス部39bは、第1締結用ボス部39aに対し後斜め下方に所定間隔離間して設けられ、オイル供給用ボス部38aの後斜め上方に配置される。第3締結用ボス部39cは、第1締結用ボス部39a及び第2締結用ボス部39bの間で、かつこれらに対し前斜め下方又は後斜め下方に所定間隔離間して設けられ、第2オイル通路用ボス部38の下方に配置される。
【0067】
本実施形態では、チェーンケース30及びエンジン本体10の間には、凹部30Aが上方に開口して形成される。潤滑油滞留部たる凹部30Aは、可変バルブ用ボス部36の外縁部36a、第2オイル通路用ボス部38の外縁部38a1,38b1、及び第2締結用ボス部39bによって囲まれて形成される。凹部30Aは、後記する第1リブ41の上リブ部41aを備えない場合において、タイミングトレーン機構20を潤滑するオイルが滞留する部分である。
【0068】
<リブ>
リブ40は、図3及び図4に示すように、壁部33の内面33bからエンジン本体10へ突出しており、シリンダ軸線方向、直交方向、上下方向、及び前後方向等に沿って複数形成される。
リブ40は、第1リブ41と、第2リブ42と、を主に有する。
【0069】
第1リブ41は、可変バルブ用ボス部36及び第2オイル通路用ボス部38の周囲を囲むように配置され、第1締結用ボス部39a−第3締結用ボス部39cの間を夫々連結する略逆三角形状のリブである。
第1リブ41は、図7及び図8に示すように、上リブ部41aと、後側下リブ部41bと、前側下リブ部41cと、を有する。
【0070】
上リブ部41aは、第1締結用ボス部39aと第2締結用ボス部39bとの間に配置され、凹部30Aのシリンダ軸線方向上方に設けられた略直線状の部分である。上リブ部41aは、可変バルブ用ボス部36によって長さ方向の一箇所で分断されており、第1締結用ボス部39aと可変バルブ用ボス部36との間に位置する上端部41a1と、可変バルブ用ボス部36と第2締結用ボス部39bとの間に位置する下端部41a2と、を有する。下端部41a2は、可変バルブ用ボス部36から第2締結用ボス部39bに向かうにつれて、側縁部31に向かって下り傾斜している。上端部41a1及び下端部41a2の間には、シール部材43の一部が配置される(図8参照)。つまり、本実施形態では、第1締結用ボス部39aと第2締結用ボス部39bとの間は、上リブ部41a及びシール部材43の一部によって連結される。
【0071】
後側下リブ部41bは、第2締結用ボス部39bと第3締結用ボス部39cとの間に配置された略直線状の部分である。後側下リブ部41bは、オイル供給用ボス部38aによって長さ方向の一箇所で分断されており、第2締結用ボス部39bとオイル供給用ボス部38aとの間に位置する上端部41b1と、オイル供給用ボス部38aと第3締結用ボス部39cとの間に位置する下端部41b2と、を有する。上端部41b1は、第2締結用ボス部39bからオイル供給用ボス部38aに向かうにつれて、側縁部32(図3参照)に向かって下り傾斜している。また、下端部41b2は、オイル供給用ボス部38aから第3締結用ボス部39cに向かうにつれて、側縁部32に向かって下り傾斜している。下端部41b2は、第3締結用ボス部39cを介して、第2リブ42に連結される。上端部41b1及び下端部41b2の間には、シール部材43の一部が配置される(図8参照)。つまり、本実施形態では、第2締結用ボス部39bと第3締結用ボス部39cとの間は、後側下リブ部41b及びシール部材43の一部によって連結される。
【0072】
前側下リブ部41cは、第1締結用ボス部39aと第3締結用ボス部39cとの間に配置された略直線状の部分である。前側下リブ部41cは、可変バルブ用ボス部36によって長さ方向の一箇所で分断されており、第1締結用ボス部39aと可変バルブ用ボス部36との間に位置する上端部41c1と、可変バルブ用ボス部36と第3締結用ボス部39cとの間に位置する下端部41c2と、を有する。上端部41c1は、第1締結用ボス部39aから可変バルブ用ボス部36に向かうにつれて、側縁部31に向かって下り傾斜している。また、下端部41c2は、可変バルブ用ボス部36から第3締結用ボス部39cに向かうにつれて、側縁部31に向かって下り傾斜している。下端部41c2は、第3締結用ボス部39cを介して、第2リブ42に連結される。上端部41c1及び下端部41c2の間には、シール部材43の一部が配置される(図8参照)。つまり、本実施形態では、第1締結用ボス部39aと第3締結用ボス部39cとの間は、前側下リブ部41c及びシール部材43の一部によって連結される。
【0073】
図3及び図4に戻り、第2リブ42は、上端部(一端部)が第3締結用ボス部39cに連続し、下端部(他端部)がクランクスプロケット21の近傍(直上)に位置してシリンダ軸線方向に沿って延在するリブである。第2リブ42は、図3に示すように、カム用タイミングチェーン24の内側(つまりカム用タイミングチェーン24に囲まれた領域)に設けられる。
【0074】
なお、チェーンケース30の下端側には、その他に、クランクシャフト16が挿入されるクランクシャフト挿入孔30Bや第1油圧式テンショナ装置27(図1(a)参照)を視認可能な開口部30C等が貫通して形成される。
【0075】
本実施形態に係る内燃機関のカバー構造を備えたエンジンEは、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、図11及び図12を主に参照して、その動作及び作用効果について説明する。図11は、潤滑油の流れを模式的に示した側面図であり、図12は、図11の部分拡大側面図である。
【0076】
図2に示すように、エンジンEの起動によりクランクシャフト16が回転すると、クランクシャフト16に取り付けられたクランクスプロケット21が回転し、その回転がカム用タイミングチェーン24によってカムスプロケット22A,22Bに伝達され、カムスプロケット22A,22Bの回転に伴って2本のカムシャフト17が回転する。これにより、図示しない吸気バルブ及び排気バルブが所定のタイミングで開閉する。
【0077】
一方、クランクスプロケット21の回転は、オイルポンプ用タイミングチェーン25によって、オイルポンプ用スプロケット23に伝達され、オイルポンプ用スプロケット23の回転に伴ってポンプ駆動軸15bが回転する。これにより、オイルポンプ15aが駆動して、オイルパン15のオイルが汲み上げられ、エンジンEの各部にオイルが供給される。
【0078】
そして、オイルの一部は、カムスプロケット22A及びカム用タイミングチェーン24の噛み合い部等を介して、チェーンケース30内に供給される。
【0079】
図11に示すように、カムスプロケット22A及びカム用タイミングチェーン24の噛み合い部等からチェーンケース30内に供給されたオイルは、壁部33の内面33bに沿って下方に流れる。
図12に示すように、壁部33に沿って流れてきたオイルが上リブ部41aの下端部41a2に達すると、下端部41a2を伝って第2締結用ボス部39bに向かって流れる。
【0080】
このとき、上リブ部41aの下端部41a2は、側縁部31に向かって下り傾斜しているため、オイルがその自重によって第2締結用ボス部39bに向かって確実に流れる。
【0081】
続いて、オイルが第2締結用ボス部39bに達すると、第2締結用ボス部39bの外周面を伝って後側下リブ部41bの上端部41b1に向かって流れる。
【0082】
続いて、オイルが後側下リブ部41bの上端部41b1に達すると、上端部41b1、第2オイル通路用ボス部38の外縁部38a1、及び後側下リブ部41bの下端部41b2を伝って第3締結用ボス部39cに向かって流れる。
【0083】
このとき、後側下リブ部41bの上端部41b1及び下端部41b2は、側縁部32に向かって下り傾斜しているため、オイルがその自重によって第3締結用ボス部39cに向かって確実に流れる。
【0084】
続いて、オイルが第3締結用ボス部39cに達すると、第3締結用ボス部39cの外周面を伝って第2リブ42に向かって流れる。
そして、図11に示すように、オイルが第2リブ42に達すると、第2リブ42を伝ってクランクスプロケット21、カム用タイミングチェーン24、及びオイルポンプ用タイミングチェーン25(図2参照)の噛み合い部に向かって流れる。
【0085】
一方、図12に示すように、壁部33に沿って流れてきたオイルが上リブ部41aの上端部41a1及び第1締結用ボス部39aに達すると、第1締結用ボス部39aの外周面を伝って前側下リブ部41cの上端部41c1に向かって流れる。
【0086】
続いて、オイルが前側下リブ部41cの上端部41c1に達すると、上端部41c1、可変バルブ用ボス部36の外縁部36a、及び前側下リブ部41cの下端部41c2を伝って第3締結用ボス部39cに向かって流れる。
【0087】
このとき、前側下リブ部41cの上端部41c1及び下端部41c2は、側縁部31に向かって下り傾斜しているため、オイルがその自重によって第3締結用ボス部39cに向かって確実に流れる。
【0088】
続いて、オイルが第3締結用ボス部39cに達すると、第3締結用ボス部39cの外周面を伝って第2リブ42に向かって流れる。
そして、図11に示すように、オイルが第2リブ42に達すると、第2リブ42を伝ってクランクスプロケット21、カム用タイミングチェーン24、及びオイルポンプ用タイミングチェーン25の噛み合い部に向かって流れる。
【0089】
以上説明した本実施形態によれば、潤滑油滞留部たる凹部30Aのシリンダ軸線方向上方に上リブ部41aの下端部41a2が設けられるため、壁部33の内面33bに沿って流れてきた潤滑油は、上リブ部41aの下端部41a2に導かれ、当該上リブ部41aの下端部41a2を伝って流れることとなる。これにより、凹部30Aにおけるオイルの滞留を抑制できる。
特に、本実施形態では、第1リブ41は、可変バルブ用ボス部36及び第2オイル通路用ボス部38の周囲を囲むように配置されるため、凹部30Aを含む可変バルブ用ボス部36及び第2オイル通路用ボス部38におけるオイルの滞留をより一層抑制できる。
【0090】
本実施形態では、第1リブ41を構成する各リブ部41a−41cは、側縁部31又は側縁部32のいずれか一方に向かって下り傾斜し、かつ略直線状に形成されているため、オイルがその自重により各リブ部41a−41cを伝って円滑且つ確実に流れることとなる。これにより、第1リブ41におけるオイルの滞留を抑制できる。
【0091】
本実施形態では、シール部材43は、第1リブ41の近傍に設けられているため、シール部材43近傍の剛性が向上し、エンジン本体10に対するシール部材43の密着性が向上することから、良好なシール性を確保できる。
特に、本実施形態では、各締結用ボス部39a−39cの間は、第1リブ41及びシール部材43の一部によって連結されることにより、第1リブ41とシール部材43の一部とが隣接して配置されるため、より一層良好なシール性を確保できる。
【0092】
本実施形態では、第1リブ41は、略逆三角形状に形成されるため、壁部33の内面33bに沿って流れてきたオイルは、第1リブ41の各リブ部41a−41cを伝って下端部41b2,41b3に集められることとなる。そして、下端部41b2,41b3は、第3締結用ボス部39cを介して、第2リブ42の上端部に連結されているため、下端部41b2,41b3に集められたオイルは、第2リブ42に導かれることとなる。その後、オイルは第2リブ42を伝って、クランクスプロケット21、カム用タイミングチェーン24、及びオイルポンプ用タイミングチェーン25の噛み合い部に導かれる。これにより、オイルの回収を速やかに行うことができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0094】
本実施形態では、自動車用のエンジンEに本発明を適用したが、船舶や汎用機等の自動車以外のエンジンに適用してもよい。
【0095】
本実施形態では、直列形式のエンジンEに本発明を適用したが、他の形式のエンジン(例えばV型エンジン等)に本発明を適用してもよい。
【0096】
本実施形態では、シリンダ軸線方向は、上下方向(鉛直方向)に対し前側に所定角度傾斜している構成としたが、シリンダ軸線方向は、上下方向に対し後側に所定角度傾斜する構成としてもよいし、上下方向(鉛直方向)に一致する構成としてもよい。
【0097】
本実施形態では、可変バルブ用ボス部36及び第2オイル通路用ボス部38の複数(2つ)の突出部によって潤滑油滞留部(凹部30A)を形成したが、単一の突出部によって潤滑油滞留部を形成してもよい。
【0098】
本実施形態では、チェーンケース30の内外を連通する部分を有する可変バルブ用ボス部36及び第2オイル通路用ボス部38の突出部に本発明を適用したが、チェーンケース30の内外を連通する部分を有しない他の突出部に本発明を適用してもよい。
【0099】
本実施形態では、第1リブ41は、上リブ部41aと、後側下リブ部41bと、前側下リブ部41cと、を有する構成としたが、第1リブ41は、少なくとも凹部30Aのシリンダ軸線方向上方に配置された上リブ部41aを有する構成とし、後側下リブ部41b及び前側下リブ部41cの両方又は一方を省略してもよい。
【0100】
本実施形態では、上リブ部41aは、可変バルブ用ボス部36によって長さ方向の一箇所で分断され、かつ略直線状に形成されたが、上リブ部41aは、可変バルブ用ボス部36の上側に配置され、上端部41a1及び下端部41a2が一体的に連続し、かつ上向きに凸となるように下り傾斜して形成されてもよい。
【符号の説明】
【0101】
E エンジン(内燃機関)
S タイミングトレーン室
10 エンジン本体(内燃機関本体)
20 タイミングトレーン機構
30 チェーンケース(カバー部材)
30A 凹部(潤滑油滞留部)
31 側縁部
31a ボルト挿通孔(側方締結部)
32 側縁部
32a ボルト挿通孔(側方締結部)
33 壁部
33b 内面
36 可変バルブ用ボス部(突出部、本体部)
38 第2オイル通路用ボス部
38a オイル供給用ボス部(突出部、本体部)
38b オイル戻り用ボス部(連結部)
39a 第1締結用ボス部(中央締結部)
39b 第2締結用ボス部(中央締結部)
39c 第3締結用ボス部(中央締結部)
40 リブ
41 第1リブ
41a 上リブ部
41a1 上端部
41a2 下端部
41b 後側下リブ部
41b1 上端部
41b2 下端部
41c 前側下リブ部
41c1 上端部
41c2 下端部
42 第2リブ
43 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関本体の一側壁に設けられたタイミングトレーン機構と、前記内燃機関本体との間でタイミングトレーン室を形成して前記タイミングトレーン機構を覆うカバー部材と、を備えた内燃機関のカバー構造であって、
前記カバー部材は、
互いに離間する一対の側縁部に設けられ、前記内燃機関本体に締結される側方締結部と、
前記一対の側縁部を繋ぐ壁部の内面から前記内燃機関本体に向けて突出し、前記タイミングトレーン機構を潤滑する潤滑油が滞留する潤滑油滞留部を有する突出部と、
前記壁部の内面から前記内燃機関本体に向けて突出し、少なくとも前記潤滑油滞留部のシリンダ軸線方向上方に設けられた第1リブと、
を有することを特徴とする内燃機関のカバー構造。
【請求項2】
前記突出部は、所定間隔離間して設けられた複数の本体部と、前記本体部の間を連結する連結部と、を有し、
前記潤滑油滞留部は、前記本体部及び前記連結部の上部に形成され、
前記第1リブは、前記本体部及び前記連結部の周囲を囲むように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のカバー構造。
【請求項3】
前記第1リブのうち、前記潤滑油滞留部のシリンダ軸線方向上方に設けられる部分は、前記一対の側縁部のいずれか一方に向かって下り傾斜し、かつ略直線状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内燃機関のカバー構造。
【請求項4】
前記突出部の突出端面は、前記内燃機関本体の一側壁に当接しており、
前記カバー部材は、前記突出部と前記内燃機関本体との間に設けられるシール部材を更に有し、
前記シール部材は、前記第1リブの近傍に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の内燃機関のカバー構造。
【請求項5】
前記カバー部材は、前記壁部に設けられ、前記内燃機関本体に締結される複数の中央締結部を更に有し、
前記中央締結部は、前記突出部の周囲に互いに所定間隔離間して設けられ、
前記中央締結部の間は、前記第1リブと前記シール部材の少なくとも一部とによって連結されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の内燃機関のカバー構造。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記壁部の内面から前記内燃機関本体に向けて突出し、シリンダ軸線方向に沿って延在する第2リブを更に有し、
前記第1リブは、略逆三角形状に形成され、下端部が前記第2リブに連結されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の内燃機関のカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−113167(P2013−113167A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258262(P2011−258262)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】