説明

内燃機関のクランク角度検出装置

【課題】欠け歯部の誤検出を防止し、クランク角度の基準位置を正確に特定することを可能とする。
【解決手段】一部に欠け歯部を形成する等間隔に配設された被検出部を有するクランク角検出用信号板121、該信号板121の外周に所定角度離して配設され、被検出部が通過する毎に、それぞれ第1信号SGT1と第2信号SGT2を発生する第1信号発生手段122と第2信号発生手段123、第1信号と第2信号の状態から欠け歯部を検出して基準クランク位置を特定する基準クランク位置特定手段、クランク軸の回転方向を判定するクランク軸正回転判定手段を備え、被検出部の等間隔部の角度の1/2を基準被検出部間角度とし、前記所定角度を、基準被検出部間角度より大きく且つ整数倍以外に設定すると共に、クランク軸正回転判定手段が正回転と判定している時のみ基準クランク位置を特定するようにしたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用内燃機関の気筒及びクランク角度を検出することができる内燃機関のクランク角度検出装置に関し、特に、クランク角の基準位置を正確に特定することができる内燃機関のクランク角度検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車用エンジン等の内燃機関においては、運転条件に応じて燃料噴射や点火時期等を最適に制御する必要がある。従って、気筒毎のクランク角度を検出するため、内燃機関の回転軸にはセンサを含む信号発生手段が設けられている。
従来より、クランク角度の基準位置を特定する方法として、クランク軸に固定された信号板と2つの信号発生手段を備えたものが知られている。
例えば、特許文献1には、信号板の被検出部の一部を欠落させ、第1の信号発生手段の信号が検出されることなく第2の信号発生手段の信号が連続して検出された後、新たに第1の信号発生手段の信号が検出された時点を基準位置と特定するものが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特許第3400322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示されているシステムでは、第1の信号発生手段と第2の信号発生手段間の角度に規定がなく、第1の信号発生手段の信号と第2の信号発生手段の信号の位置関係が明確でないため、欠け歯検出の際にこれらの信号の前後関係を判定する必要があり、処理が複雑になる。また、停止直前時などクランク軸の回転が不安定な時にクランク軸が逆転した際には、欠落部(欠け歯)を誤検出し、基準位置を誤る恐れがある。
【0005】
更に、クランク軸の回転に同期した2つの信号がコントロールユニットに入力されており、高回転時には信号処理の負荷が高くなるため、コントロールユニットの性能を向上させる必要があり、装置の複雑化、コストの増加が懸念される。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたもので、欠け歯部の誤検出を防止し、クランク角度の基準位置を容易且つ正確に検出することができる内燃機関のクランク角度検出装置を得ることを目的とする。
【0007】
また、一方の信号処理を禁止することでコントロールユニットの処理負荷を低減するとともに、一方の信号処理禁止時においても他方の信号のみを使用してクランク軸の基準位置を特定することができる内燃機関のクランク角度検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係わる内燃機関のクランク角度検出装置は、内燃機関のクランク軸に固定され、一部に欠け歯部を形成する等間隔に配設された被検出部を有するクランク角検出用信号板と、前記クランク角検出用信号板の外周に所定角度離して配設され、前記被検出部が通過する毎に、第1クランク角信号を発生する第1信号発生手段と第2クランク角信号を発生する第2信号発生手段、前記第1クランク角信号及び前記第2クランク角信号の状態から前記欠け歯部を検出して基準クランク位置を特定する基準クランク位置特定手段と、前記クランク軸の回転方向が正方向であることを判定するクランク軸正回転判定手段を備え、前記被検出部の等間隔部の角度の1/2を基準被検出部間角度とし、前記第1信号発生手段と前記第2信号発生手段との配設間隔を、前記基準被検出部間角度より大きく且つ整数倍以外に設定すると共に、前記基準クランク位置特定手段は、前記クランク軸正回転判定手段が正回転と判定している時のみ前記基準クランク位置を特定するようにしたものである。
【0009】
また、前記基準クランク位置特定手段は、前記第1クランク角信号が検出される間の前記第2クランク角信号の検出数が予め設定した所定値を超えたときを前記欠け歯部として検出し、その時の前記第1クランク角信号の位置を前記基準クランク位置と特定するものであり、前記第1信号発生手段と前記第2信号発生手段の配設間隔を、nを1以上の整数として前記基準被検出部間角度の(n+1/2)倍とするものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明の内燃機関のクランク角度検出装置によれば、欠け歯部の誤検出を防止し、クランク角度の基準位置を容易且つ正確に検出することができる。
【0011】
また、一方の信号処理を禁止することでコントロールユニットの処理負荷を低減するとともに、一方の信号処理禁止時においても他方の信号のみを使用してクランク軸の基準位置を特定することができる内燃機関のクランク角度検出装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1について図面を参照しながら説明する。なお、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
図1はこの発明の実施の形態1における4気筒筒内噴射内燃機関の概略的な構成を示すシステム図である。
図1において、101は内燃機関、102は内燃機関101への吸入空気を浄化するエアクリーナ、103は内燃機関101への吸入空気量を計量するエアフローセンサ、104は吸入空気を内燃機関101へ送る吸気管である。105は吸入空気量を調節するスロットルバルブ、106はインジェクタドライバ151により駆動される燃料噴射弁であり、内燃機関101の運転状態に見合った燃料を供給する。
130は、点火コイル131により駆動される点火プラグであり、点火コイル131から供給される高電圧により火花を発生して、燃焼室内の混合気を燃焼させる。107は燃焼室内で燃焼した排気ガスを排出する排気管、108は排気ガス内の酸素濃度を検出するO2(酸素)センサ、109は排気ガスを浄化する三元触媒である。
【0013】
110はカム軸で、タイミングベルトなどの機械的伝達手段を介してクランク軸120と連結されている。そして、このカム軸110は、クランク軸120が2回転する間に1回転する。
111はカム軸110に取り付けられたカム信号板で、具体的形状の一例を図2に示す。
図2において、各気筒を符号#で表記するものとすれば、このカム信号板111は、第1気筒♯1の圧縮上死点から第4気筒#4の圧縮上死点まで、カム信号SGCがハイレベルとなる信号が発生するよう突起を備えている。112は信号板111の突起を検出することによりカム信号SGCを発生するカム角検出センサである。
【0014】
図3は、クランク軸120に取り付けられたクランク角検出用信号板(以下、単に信号板ともいう。)121の具体的形状の一例を示す図である。
図3において、122及び123は、信号板121の突起を検出することによりそれぞれ第1クランク角信号(以下、単に第1信号ともいう。)SGT1、及び第2クランク角信号(以下、単に第2信号ともいう。)SGT2を発生する、第1のクランク角検出センサ(第1信号発生手段ともいう。)および第2のクランク角検出センサ(第2信号発生手段ともいう。)である。
そして、この実施の形態1においては、第1クランク角信号SGT1をクランク角度に対応した信号とし、第2クランク角信号SGT2は欠け歯検出に用いる信号としており、どちらも立ち上がりエッジを使用する。
【0015】
いま、クランク軸の角度をCAと表記するものとすると、信号板121には20°CA毎に計17個の10°CA幅の突起が形成されている。
また、この実施の形態1では、第1のクランク角検出センサ122に対し、第2気筒#2及び第3気筒#3における圧縮上死点の手前75゜CA(以下、B75゜CAと表記する)からB105゜CAの部分を欠け歯部としている。
【0016】
一方、被検出部の等間隔部の角度が20°CAであるから、その1/2である基準被検出部間角度は10°CAとなるため、第2のクランク角検出センサ123は、第1のクランク角検出センサ122に対して、基準被検出部間角度の(3+1/2)倍である35°CA離して配設している。
よって、第1信号SGT1、第2信号SGT2はいずれも20゜CA間隔の信号であり、欠け歯部のみ40゜CA間隔となる。また、第2信号SGT2は第1信号SGT1に対し35゜CA遅れた信号となる。
【0017】
したがって、通常、第1信号SGT1と第2信号SGT2は交互に検出されるが、クランク軸が正転しているならば、第1信号SGT1が欠け歯部にあるときは、第1信号SGT1が検出される間に第2信号SGT2が続けて2個検出され、その後に検出される第1信号SGT1が第2気筒#2及び第3気筒#3におけるB75°CAとなるので基準位置として特定することができる。
【0018】
逆に、第2信号SGT2が欠け歯部にあるときには、クランク軸が正転しているならば第1信号SGT1が2個続けて検出されることになるが、それより多くの第1信号SGT1が連続して検出された場合には、第2信号SGT2が異常と判定することができる。
【0019】
また、後述するように、第2信号SGT2異常等により第2信号SGT2の処理を禁止した場合における第1信号SGT1のみでの基準位置の特定方法としては、前回および今回のSGT1立ち上がり間周期をそれぞれtsgt(i-1)、tsgt(i)とすれば、tsgt(i)に対応する角度は、tsgt(i-1)に対応する角度の2倍であるため、例えばtsgt(i)/tsgt(i−1)>1.5が成立したときを基準位置と特定すればよい。
【0020】
基準位置が特定されると、その時のカム信号SGCのレベルがハイレベルかローレベルかによって、各気筒の行程およびクランク角の位置を特定することができる。例えば、基準位置のカム信号SGCがハイレベルの場合には、第3気筒#3のB75゜CAと特定することができる。
【0021】
図4は、4気筒筒内噴射内燃機関における通常の運転状態における各パラメータの挙動例を示したタイミングチャートである。
図4において、カム信号SGCはカム軸の回転に応じてレベルが変化し、また、第1クランク角信号SGT1は、クランク軸120に取り付けられた信号板121の回転に伴って発生する。そして、この実施の形態1では、このクランク角位置信号SGT1によりクランク角度を検出する。
第2クランク角信号SGT2も、第1クランク角信号SGT1同様、クランク軸120に取り付けられた信号板121の回転に伴って発生する。この実施の形態1では、前述のように第2信号SGT2は第1信号SGT1に対し35゜CA遅れた信号となる。
【0022】
SGT2異常検出カウンタのカウント値c_sgt2chkは、第2クランク角信号SGT2の異常を検出する為のもので、第1信号SGT1検出毎にカウントアップし、第2信号SGT2検出毎に“0”にクリアされる。例えば正転時で且つカウント値c_sgt2chkが“3”以上となった場合、第2信号SGT2が正しく検出できていないと判定され、第2クランク角信号SGT2の異常を検出することができる。
【0023】
SGT2処理禁止フラグf_sgt2inhは、第2信号SGT2の処理を禁止している時に“1”にセットされ、それ以外は“0”にクリアされる。
この実施の形態1では、エンジン回転速度が2000r/min以上、またはc_ sgt2chkが“2”以上となり第2信号SGT2異常検出時にSGT2処理を禁止している。
【0024】
SGT1欠け歯検出カウンタのカウント値c_kakehaは、第1信号SGT1の欠け歯部分を検出する為のもので、第2信号SGT2検出毎にカウントアップし、第1信号SGT1検出毎に“0”にクリアされる。
正転時で且つカウント値c_kakehaが“2”の時に検出された第1信号SGT1が、欠け歯横にある第2気筒#2及び第3気筒#3におけるB75°CAとなり、基準位置が特定され基準クランク位置フラグf_posを“1”にセットする。
それ以外の第1信号SGT1検出時は“0”にクリアされる。
【0025】
クランク角度カウンタのカウント値c_sgtは、クランク角度を検出するためのもので、例えばコントロールユニット150内に構築されたカウンタに対して第1クランク角信号SGT1が入力される毎にカウントアップされ、基準位置である欠け歯横のB75゜CA毎に“0”がセットされる。したがって、このカウント値c_sgtはクランク軸120が1回転する間に“0”から“16”の間の値を取り、このカウント値によってクランク角度を特定することができる。また、バッテリ160が接続された場合等、コントロールユニット150初期化時にはクランク角度が不明となるため、初期値として“255”がセットされる。
【0026】
気筒フラグf_cylは、気筒を特定する為のもので、クランク角度カウンタc_sgtが“0”である基準位置のカム信号SGCがハイレベルのとき“1”をセットし、ローレベルのとき“0”にセットする。これにより、クランク角度カウンタc_sgtが“0”かつ気筒フラグf_cylが“1”の時、第3気筒#3のB75゜CAと特定することができる。
【0027】
つぎに、この実施の形態1に係る内燃機関のクランク角度検出装置の具体的な処理手順について説明する。
まず、コントロールユニット150において、第1クランク角信号SGT1の立ち上がりエッジに同期して行われるクランク角度検出処理の全体的な動作について、図5のフローチャートを参照して説明する。なお、以下において符号Sは各処理ステップを意味する。
【0028】
図5において、ステップS101では、基準クランク位置フラグf_posを0にリセットしておく。
ステップS102、ステップS103では、クランク軸が正転していることを判定するため、ステップS102ではスターターモーターが起動されているか、ステップS103ではエンジン回転速度neが500r/minを越えているかを判定する。
いずれかが成立していれば、正転していると判定され、ステップS104で基準クランク位置特定処理を実行し、どちらも不成立の場合は、逆転する可能性があるため、第2クランク角信号SGT2の異常を誤検出しないよう、ステップS105でSGT2異常検出カウンタc_sgt2chkを0にクリアする。
ステップS106では、欠け歯検出カウンタc_kakehaを0にクリアし、次回第1クランク角信号SGT1検出までの第2クランク角信号SGT2検出数が得られるようにしておく。
最後にステップS107で、クランク角度演算処理を行い、本フローが終了する。
【0029】
また、第2クランク角信号SGT2の立ち上がりエッジに同期して行われるクランク角度検出処理について、図6のフローチャートを用いて説明する。
図6において、ステップS201では、SGT2処理禁止フラグf_sgt2inhが0かを判定する。
成立時は、第2クランク角信号SGT2の処理を実行する為、図5のステップS102、ステップS103と同様、クランク軸が正転していることを判定するため、ステップS202ではスターターモーターが起動されているか、ステップS203ではエンジン回転速度neが500r/minを越えているかを判定する。
いずれかが成立していれば、正転していると判定され、ステップS204で欠け歯検出カウンタc_kakehaをカウントアップする。どちらも不成立の場合は、逆転する可能性があるため、欠け歯誤検出防止としてステップS205で欠け歯検出カウンタc_kakehaを0にクリアする。
【0030】
一方、ステップS201が不成立の場合は、第2クランク角信号SGT2処理が禁止されている為、ステップS205で欠け歯検出カウンタc_kakehaを0にクリアしておく。
最後にステップS206で、第2クランク角信号SGT2が検出されたとしてSGT2異常検出カウンタc_sgt2chkを0にクリアし、本フローが終了する。
【0031】
次に図5内の各処理手順の詳細について説明する。
図7は、図5のステップS104における基準クランク位置特定処理の具体的な内容を説明するためのフローチャートである。
図7において、ステップS301では、第1クランク角信号SGT1が検出されたとしてSGT2異常検出カウンタc_sgt2chkをカウントアップする。
ステップS302では、エンジン回転速度neが2000r/min未満かを判定する。不成立時は、高回転時の演算負荷を軽減するためにステップS305でSGT2処理禁止フラグf_sgt2inhに1をセットする。
【0032】
ステップS302成立時は、ステップS303で、SGT2異常検出カウンタc_sgt2chkが3未満かを判定する。成立時は、第2クランク角信号SGT2が正常としてSGT2処理を許可するため、ステップS304でSGT2処理禁止フラグf_sgt2inhを0にクリアする。
一方、SGT2異常検出カウンタc_sgt2chkが3以上ならば、第2クランク角信号SGT2異常としてSGT2処理を禁止する為、ステップS305でSGT2処理禁止フラグf_sgt2inhに1をセットする。
【0033】
ステップS306では、SGT2処理禁止フラグf_sgt2inhが1かを判定する。
成立時はSGT2処理禁止のため、第1クランク角信号SGT1信号のみで欠け歯を検出するので、ステップS307で、今回と前回のSGT1周期tsgt(i)、tsgt(i-1)の比をkに代入し、ステップS308で得られたkが1.5を超えているか判定する。
成立時は欠け歯が検出されたとして、ステップS309で基準クランク位置フラグf_posに1をセットし、不成立時は先のステップS101でf_posがクリアされている為、特に処理を行わず、本フローを終了する。
【0034】
一方、ステップS306で不成立時は、第1クランク角信号SGT1間の第2クランク角信号SGT2検出数により欠け歯を検出するため、ステップS310で欠け歯検出カウンタc_kakehaが2であるかを判定する。
成立時は欠け歯が検出されたとして、ステップS311で基準クランク位置フラグf_posに1をセットし、不成立時は先のステップS101でf_posがクリアされている為、特に処理を行わず、本フローを終了する。
【0035】
図8は、図5のステップS107におけるクランク角度演算処理の具体的な内容を説明するためのフローチャートである。
ステップS401では、バッテリ接続時などコントロールユニットが初期化されたかを判定し、成立時はステップS402でクランク角度カウンタc_sgtに初期値として255を代入し、ステップS403でエンジン回転速度neに0を代入しておく。
【0036】
ステップS404で、基準クランク位置フラグf_posが1にセットされているか判定する。
成立時は今回の第1クランク角信号SGT1が基準クランク位置であると判定でき、ステップS405でクランク角度カウンタc_sgtに0をセットする。
不成立で基準クランク位置以外の場合は、ステップS406で、クランク角度カウンタc_sgtが255でないか判定する。
成立時はクランク角度がセットされている為、ステップS407でカウントアップを行い、ステップS408でクランク角度カウンタc_sgtが16を超えている場合は、ステップS409でc_sgtに0をセットする。
ステップS406不成立時は、クランク角度カウンタc_sgtは初期化状態のため何も行わず、本フローを終了する。
【0037】
ステップS410でクランク角度カウンタc_sgtが0の時にエンジン回転演算を行い、それ以外のときはそのまま本フローを終了する。
【0038】
ステップS411でc_sgt=0時の第1クランク角信号SGT1の立ち上がり間周期[t_sgt0]の算出が可能であるか判定する。前回のc_sgt=0における時刻が無いなど算出不可の場合は、ステップS414で、エンジン回転速度neに0を代入して処理を終了する。
SGT1の立ち上がり間周期t_sgt0の算出が可能な場合は、ステップ412でSGT1間周期t_sgt0を算出し、ステップS413でエンジン回転速度neを演算して、本フローを終了する。
【0039】
なお、以上の実施の形態1においては、欠け歯部分を1箇所としたが、複数箇所でもよく、また異なった欠け歯数でもよい。その場合は、欠け歯検出カウンタc_kakeha、および第1クランク角信号SGT1のみでの検出時に使用するSGT1周期t_sgtの変化割合の判定値を、それぞれの欠け歯数に応じた値に設定して判定すればよい。
【0040】
また、第1クランク角信号SGT1、第2クランク角信号SGT2は立ち上がりエッジのみ使用したが、両エッジを使用してもよい。その場合も上記同様、c_kakeha、およびt_sgt変化割合の判定値を、欠け歯部で欠落する信号数に応じた値に設定すればよい。
【0041】
さらに、高回転時のSGT2禁止処理についても、実施の形態1では、第2クランク角信号SGT2の検出自体は禁止していないが、第2クランク角信号SGT2検出により処理を起動する負荷も低減できる為、検出から禁止するのもよい。この場合、SGT2禁止処理によりSGT2信号自体が入ってこなくなり、SGT2異常検出カウンタc_sgt2chkのリセットを行う機会がなくなるため、SGT1検出時のc_sgt2chkカウントアップも合わせて禁止すればよい。
【0042】
以上のようにこの発明の実施の形態1の内燃機関のクランク角度検出装置によれば、内燃機関のクランク軸に固定され、一部に欠け歯部を形成する等間隔に配設された被検出部を有するクランク角検出用信号板と、クランク角検出用信号板の外周に所定角度離して配設され、被検出部が通過する毎にそれぞれ第1クランク角信号と第2クランク角信号を発生する第1信号発生手段及び第2信号発生手段と、第1クランク角信号及び第2クランク角信号の状態から欠け歯部を検出して基準クランク位置を特定する基準クランク位置特定手段と、クランク軸の回転方向が正方向であることを判定するクランク軸正回転判定手段を備え、被検出部の等間隔部の角度の1/2を基準被検出部間角度とし、第1信号発生手段と第2信号発生手段との配設間隔を、基準被検出部間角度より大きくかつ整数倍以外に設定すると共に、基準クランク位置特定手段は、クランク軸正回転判定手段が正回転と判定している時のみ基準クランク位置を特定するようにしたので、第1クランク角信号及び第2クランク角信号の順序が定まり、制御を簡素化することが出来るとともに、欠け歯部の誤判定が防止でき、クランク角度の基準位置を正確に特定することができる。
【0043】
また、基準クランク位置特定手段は、第1クランク角信号が検出される間の第2クランク角信号の検出数が予め設定した所定値を超えたときを欠け歯部として検出し、その時の第1クランク角信号の位置を基準クランク位置と特定するものであり、第1信号発生手段及び第2信号発生手段の配設間隔を、nを1以上の整数として基準被検出部間角度の(n+1/2)倍とするので、各信号のばらつきに対する余裕代を大きくすることができる。
【0044】
また、クランク軸正回転判定手段は、クランク軸の回転速度がアイドル回転程度の所定回転速度以上の時、またはスターターモーターが駆動されクランク軸が回転している時にクランク軸が正回転であると判定するので、新たなセンサを追加することなくクランク軸の正回転判定を行うことができる。
【0045】
さらに、この発明の実施の形態1の内燃機関のクランク角度検出装置によれば、基準クランク位置特定手段は、クランク軸の回転速度がアイドル回転以上の高回転時は、第2クランク角信号を使用する処理を禁止するので、高回転時の演算負荷を軽減することができる。
【0046】
また、基準クランク位置特定手段は、第2信号発生手段が異常の時は、第2クランク角信号を使用する処理を禁止するので、第2クランク角信号異常時の欠け歯部の誤判定を防止することができる。
【0047】
さらにまた、基準クランク位置特定手段は、第2クランク角信号を使用する処理を禁止している時は、第1クランク角信号のみで欠け歯部を検出して基準クランク位置を特定するので、第2クランク角信号処理禁止時でも欠け歯部を検出して基準クランク位置を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】この発明の実施の形態1における4気筒筒内噴射内燃機関のの概略的な構成を示すシステム図である。
【図2】この発明の実施の形態1におけるカム信号発生手段の具体的形状の一例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1におけるクランク角検出用信号板の具体的形状の一例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1における4気筒内燃機関における通常運転時の各パラメータのタイミングチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1における第1クランク角信号の同期処理のフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態1における第2クランク角信号の同期処理のフローチャートである。
【図7】この発明の実施の形態1における基準クランク位置特定処理のフローチャートである。
【図8】この発明の実施の形態1におけるクランク角度演算処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
101:内燃機関 102:エアクリーナ 103:エアフローセンサ 104:吸気
管 105:スロットルバルブ 106:燃料噴射弁 107:排気管 108:O2
センサ 109:三元触媒 110:カム軸 111:カム信号版 112:カム角検
出センサ 120:クランク軸 121:クランク角検出用信号版 122:第1のク
ランク角検出センサ 123:第2のクランク角検出センサ 130:点火プラグ
131:点火コイル 150:コントロールユニット 151:インジェクタドライバ
160:バッテリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸に固定され、一部に欠け歯部を形成する等間隔に配設された被検出部を有するクランク角検出用信号板と、前記クランク角検出用信号板の外周に所定角度離して配設され、前記被検出部が通過する毎に、第1クランク角信号を発生する第1信号発生手段と第2クランク角信号を発生する第2信号発生手段、前記第1クランク角信号及び前記第2クランク角信号の状態から前記欠け歯部を検出して基準クランク位置を特定する基準クランク位置特定手段と、前記クランク軸の回転方向が正方向であることを判定するクランク軸正回転判定手段とを備え、前記被検出部の等間隔部の角度の1/2を基準被検出部間角度とし、前記第1信号発生手段と前記第2信号発生手段との配設間隔を、前記基準被検出部間角度より大きく且つ整数倍以外に設定すると共に、前記基準クランク位置特定手段は、前記クランク軸正回転判定手段が正回転と判定している時のみ前記基準クランク位置を特定することを特徴とする内燃機関のクランク角度検出装置。
【請求項2】
前記基準クランク位置特定手段は、前記第1クランク角信号が検出される間の前記第2クランク角信号の検出数が予め設定した所定値を超えたときを前記欠け歯部として検出し、その時の前記第1クランク角信号の位置を前記基準クランク位置と特定するものであり、前記第1信号発生手段と前記第2信号発生手段との配設間隔を、nを1以上の整数として前記基準被検出部間角度の(n+1/2)倍とすることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のクランク角度検出装置。
【請求項3】
前記クランク軸正回転判定手段は、クランク軸の回転速度がアイドル回転程度の所定回転速度以上の時、または、スターターモーターが駆動されクランク軸が回転している時にクランク軸が正回転であると判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関のクランク角度検出装置。
【請求項4】
前記基準クランク位置特定手段は、クランク軸の回転速度がアイドル回転以上の高回転時は、前記第2クランク角信号を使用する処理を禁止することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関のクランク角度検出装置。
【請求項5】
前記基準クランク位置特定手段は、前記第2信号発生手段が異常の時は、前記第2クランク角信号を使用する処理を禁止することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の内燃機関のクランク角度検出装置。
【請求項6】
前記基準クランク位置特定手段は、前記第2クランク角信号を使用する処理を禁止している時は、前記第1クランク角信号のみで前記欠け歯部を検出して基準クランク位置を特定することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の内燃機関のクランク角度検出装置。
【請求項7】
第1クランク角信号の、前回と今回の立ち上がり間周期の比によって前記欠け歯部を検出することを特徴とする請求項6に記載の内燃機関のクランク角度検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−327865(P2007−327865A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159664(P2006−159664)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】