説明

内燃機関の制御装置

【課題】カム角センサから出力されるカム角信号のみに基づいて気筒判別を行う場合であっても、気筒判別を実行するECUにかかる負荷を従来のものより低減しつつ、内燃機関の始動中には、精度のよい気筒判別を行うことができ、内燃機関の始動にかかる時間を短縮することができる内燃機関の制御装置を提供する。
【解決手段】フェールセーフ状態において、ECUは、エンジンが始動中であるか否かを判断し(ステップS1)、エンジンが始動中であると判断した場合には、G2In信号およびG2Ex信号の全てのエッジに基づいて、F/S用クランクカウンタのカウント値を調節し(ステップS2)、エンジンが始動中でないと判断した場合には、G2In信号の有効エッジに基づいて、F/S用クランクカウンタのカウント値を調節し(ステップS3)、調節したF/S用クランクカウンタのカウント値に基づいて気筒判別を行う(ステップS4)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に搭載される内燃機関の制御装置は、内燃機関を構成するエンジンの出力軸としてのクランクシャフトの回転角を検出するクランク角センサによって生成されるクランク角信号に基づいて点火プラグの点火タイミングやインジェクタの燃料噴射タイミング等の制御タイミングを気筒ごとに計るための気筒判別を行うようになっている。
【0003】
このような気筒判別を行う内燃機関の制御装置として、クランク角センサの故障等によりクランク角信号が正常に得られていない場合に、エンジンに設けられた吸気カムシャフトおよび排気カムシャフトの回転角をそれぞれ検出する吸気カム角センサおよび排気カム角センサによって生成される吸気カム角信号および排気カム角信号に基づいて、ECU(Electronic Control Unit)が気筒判別を実行するフェールセーフ状態となるものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
このため、特許文献1に開示された内燃機関の制御装置においては、吸気カム角センサおよび排気カム角センサによってそれぞれ生成された吸気カム角信号および排気カム角信号をそれぞれ気筒判別信号とし、制御装置が、一方の気筒判別信号の出力間に、他方の気筒判別信号の出力数が所定数以上ある気筒を特定気筒として判別し、この判別結果と気筒判別信号とに基づいて特定気筒以外の気筒を判別するようになっている。
【0005】
これにより、特許文献1に開示された内燃機関の制御装置は、吸気カム角センサおよび排気カム角センサによってそれぞれ生成された吸気カム角信号および排気カム角信号のみで気筒判別を実行している。
【0006】
また、特許文献2に開示された内燃機関の制御装置は、吸気カム角センサおよび排気カム角センサによってそれぞれ生成された吸気カム角信号および排気カム角信号をそれぞれ気筒判別信号とし、制御装置が、この気筒判別信号を順次入力しつつ気筒判別信号入力間の周期を計測し、最新に計測された周期と前回に計測された周期との比と、最新に気筒判別信号を出力したセンサが吸気カム角センサであるか排気カム角センサであるかに基づいて特定気筒を判別し、この判別結果と気筒判別信号とに基づいて特定気筒以外の気筒を判別するようになっている。
【0007】
これにより、特許文献2に開示された内燃機関の制御装置は、吸気カム角センサおよび排気カム角センサによってそれぞれ生成された吸気カム角信号および排気カム角信号のみで気筒判別を実行している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−234794号公報
【特許文献2】特開2001−234795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような従来の内燃機関の制御装置にあっては、吸気カム角信号や排気カム角信号等のカム角信号に基づいて気筒判別を実行する場合には、クランク角信号よりも検出角度の間隔が長いカム角信号に基づいて、気筒判別を実行する必要があるため、エンジン回転速度が低いエンジン始動中に気筒判別の精度が悪くなる。
【0010】
したがって、従来の内燃機関の制御装置にあっては、エンジンが始動するまでに時間がかかってしまうことから、気筒判別を実行するために全ての気筒判別信号をECUに取得させるため、ECUに負荷がかかってしまうといった課題があった。
【0011】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、カム角センサから出力されるカム角信号のみに基づいて気筒判別を行う場合であっても、気筒判別を実行するECUにかかる負荷を従来のものより低減しつつ、内燃機関の始動中には、精度のよい気筒判別を行うことができ、内燃機関の始動にかかる時間を短縮することができる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の内燃機関の制御装置は、上記目的を達成するため、(1)クランクシャフトの回転角を検出してクランク角信号を生成するクランク角センサと、カムシャフトの回転角を検出してカム角信号を生成するカム角センサとが設けられ、前記クランク角センサから前記クランク角信号が正常に得られない場合に、前記カム角信号に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、前記カム角信号のエッジを取得するエッジ取得手段と、前記エッジ取得手段によって取得されたエッジに基づいて前記クランクシャフトの回転角を擬似的に計数する擬似計数手段と、前記擬似計数手段の計数値に基づいて気筒判別を行う気筒判別手段と、を備え、前記エッジ取得手段は、前記カム角信号のエッジのなかで、前記内燃機関の始動後には、前記内燃機関の始動中より少ないエッジを取得するように構成されている。
【0013】
この構成により、内燃機関の始動中には、内燃機関が始動した後より多いカム角信号のエッジを取得することにより気筒判別を行うため、精度のよい気筒判別を行うことができ、内燃機関の始動にかかる時間を短縮することができる。一方、内燃機関が始動した後には、内燃機関の始動中より少ないカム角信号のエッジを取得することにより気筒判別を行うため、気筒判別手段を構成するECUにかかる負荷を低減することができる。
【0014】
従って、本発明の内燃機関の制御装置は、カム角センサから出力されるカム角信号のみに基づいて気筒判別を行う場合であっても、気筒判別を実行するECUにかかる負荷を従来のものより低減しつつ、内燃機関の始動中には、精度のよい気筒判別を行うことができ、内燃機関の始動にかかる時間を短縮することができる。
【0015】
また、上記(1)に記載の内燃機関の制御装置において、(2)前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動中には、前記カム角信号の全てのエッジを取得するようにしてもよい。
【0016】
この構成により、内燃機関の始動中には、カム角信号の全てのエッジを取得することにより、気筒判別の精度を向上させることができる。
【0017】
また、上記(2)に記載の内燃機関の制御装置において、(3)前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動後には、前記カム角信号の全てのエッジのなかで、一定間隔のクランク角にそれぞれ対応する前記カム角信号の有効エッジを取得するようにしてもよい。
【0018】
この構成により、内燃機関の始動後には、クランクシャフトの回転角を擬似的に計数するために必要とする有効エッジのみを取得することにより、気筒判別を実行するECUにかかる負荷を従来のものより軽減することができる。
【0019】
また、上記(1)に記載の内燃機関の制御装置において、(4)前記カム角センサは、吸気カムシャフトの回転角を検出して吸気カム角信号を生成する吸気カム角センサと、排気カムシャフトの回転角を検出して排気カム角信号を生成する排気カム角センサとを含み、前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動中には、前記吸気カム角信号と前記排気カム角信号との全てのエッジを取得するようにしてもよい。
【0020】
この構成により、内燃機関の始動中には、吸気カム角信号と前記排気カム角信号との全てのエッジを取得することにより、気筒判別の精度を向上させることができる。
【0021】
また、上記(1)に記載の内燃機関の制御装置において、(5)前記カム角センサは、吸気カムシャフトの回転角を検出して吸気カム角信号を生成する吸気カム角センサを含み、前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動中には、前記吸気カム角信号の全てのエッジを取得するようにしてもよい。
【0022】
この構成により、内燃機関の始動中には、吸気カム角信号の全てのエッジを取得することにより、気筒判別の精度を向上させることができる。
【0023】
また、上記(1)に記載の内燃機関の制御装置において、(6)前記カム角センサは、排気カムシャフトの回転角を検出して排気カム角信号を生成する排気カム角センサを含み、前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動中には、前記排気カム角信号の全てのエッジを取得するようにしてもよい。
【0024】
この構成により、内燃機関の始動中には、排気カム角信号の全てのエッジを取得することにより、気筒判別の精度を向上させることができる。
【0025】
また、上記(4)または(5)に記載の内燃機関の制御装置において、(7)前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動後には、前記吸気カム角信号の全てのエッジのなかで、一定間隔のクランク角にそれぞれ対応する前記吸気カム角信号の有効エッジを取得するようにしてもよい。
【0026】
この構成により、内燃機関の始動後には、クランクシャフトの回転角を擬似的に計数するために必要とする吸気カム角信号の有効エッジのみを取得することにより、気筒判別を実行するECUにかかる負荷を従来のものより軽減することができる。
【0027】
また、上記(4)または(6)に記載の内燃機関の制御装置において、(8)前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動後には、前記排気カム角信号の全てのエッジのなかで、一定間隔のクランク角にそれぞれ対応する前記排気カム角信号の有効エッジを取得するようにしてもよい。
【0028】
この構成により、内燃機関の始動後には、クランクシャフトの回転角を擬似的に計数するために必要とする排気カム角信号の有効エッジのみを取得することにより、気筒判別を実行するECUにかかる負荷を従来のものより軽減することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、カム角センサから出力されるカム角信号のみに基づいて気筒判別を行う場合であっても、気筒判別を実行するECUにかかる負荷を従来のものより低減しつつ、内燃機関の始動中には、精度のよい気筒判別を行うことができ、内燃機関の始動にかかる時間を短縮することができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を搭載した車両の構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示すエンジンの概略断面図である。
【図3】図2に示すエンジンの概略斜視図である。
【図4】図3に示すエンジンのクランクシャフトに設けられたクランクロータの側面図である。
【図5】図3に示すエンジンに設けられたクランク角センサの検出信号を示すグラフである。
【図6】図3に示すエンジンの吸気カムシャフトに設けられた吸気カムロータの側面図である。
【図7】図3に示すエンジンに設けられた吸気カム角センサの検出信号を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置の制御部分を示す機能ブロック図である。
【図9】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECUにおけるクランク角信号、吸気カム角信号、排気カム角信号およびクランクカウンタの関係を示すタイミングチャートである。
【図10】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECUが、クランクカウンタの特定のカウント値するカム角信号の基準となる有効エッジを特定するときに参照する吸気カム角信号の一部を示すタイミングチャートである。
【図11】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECUが、クランクカウンタの特定のカウント値するカム角信号の基準となる有効エッジを特定するときに参照する吸気カム角信号の他の一部を示すタイミングチャートである。
【図12】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECUが、クランクカウンタの特定のカウント値するカム角信号の基準となる有効エッジを特定するときに参照する吸気カム角信号の他の一部を示すタイミングチャートである。
【図13】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECUが、クランクカウンタの特定のカウント値するカム角信号の基準となる有効エッジを特定するときに参照する吸気カム角信号と排気カム角信号との一部の関係を示すタイミングチャートである。
【図14】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECUが、クランクカウンタの特定のカウント値するカム角信号の基準となる有効エッジを特定するときに参照する吸気カム角信号と排気カム角信号との他の一部の関係を示すタイミングチャートである。
【図15】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECUが、クランクカウンタの特定のカウント値するカム角信号の基準となる有効エッジを特定するときに参照する吸気カム角信号と排気カム角信号との他の一部の関係を示すタイミングチャートである。
【図16】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECUのフェールセーフ状態における気筒判別動作を説明するためのフローチャートである。
【図17】本発明の一実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECUにおけるクランク角信号、吸気カム角信号、排気カム角信号およびクランクカウンタの他の関係を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0032】
図1に示すように、本実施の形態における車両10は、動力源としてエンジン20と、エンジン20において発生した動力を伝達するとともに車両10の走行状態等に応じて変速比を変化させるトランスミッション30と、トランスミッション30から伝達された動力をドライブシャフト51L、51Rに分配するディファレンシャル機構40と、ドライブシャフト51L、51Rから伝達された動力により回転させられ、車両10を駆動させる駆動輪52L、52Rと、車両10の各部を統括的に制御するECU(Electronic Control Unit)100と、を備えている。
【0033】
図2に示すように、エンジン20は、内燃機関によって構成されており、シリンダブロック210と、シリンダブロック210の上部に固定されたシリンダヘッド220と、オイルを収納するオイルパン230とを備え、シリンダブロック210と、シリンダヘッド220とによって各気筒が形成されている。
【0034】
なお、本実施の形態おいて、エンジン20は、直列4気筒のガソリンエンジンによって構成されているものとして説明するが、本発明においては、直列6気筒エンジン、V型6気筒エンジン、V型12気筒エンジンまたは水平対向6気筒エンジンなどの種々の型式のエンジンによって構成されていてもよい。ここで、図2に示すエンジン20は、直列に配置された4つの気筒のうちの1つの気筒21が図示されている。
【0035】
各気筒21には、ピストン211が往復動可能に収納され、シリンダブロック210、シリンダヘッド220およびピストン211によって、各気筒21の燃焼室201が形成されている。
【0036】
本実施の形態おいて、エンジン20は、ピストン211が2往復する間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程および排気行程からなる一連の4行程を行う、4サイクルのガソリンエンジンによって構成されているものとして説明する。
【0037】
また、エンジン20は、クランクシャフト213を備え、クランクシャフト213は、各気筒21に収納されたピストン211とコネクティングロッド212を介して連結されている。コネクティングロッド212は、ピストン211の往復動をクランクシャフト213の回転運動に変換するようになっている。
【0038】
従って、エンジン20は、燃焼室201で燃料と空気との混合気を燃焼させることによりピストン211を往復動させ、コネクティングロッド212を介してクランクシャフト213を回転させることにより、トランスミッション30に動力を伝達するようになっている。なお、エンジン20に用いられる燃料は、ガソリンもしくは軽油等の炭化水素系の燃料またはエタノール等のアルコールとガソリンとを混合したアルコール燃料であってもよい。
【0039】
エンジン20には、車外から流入した空気を清浄するエアクリーナ312と、清浄された空気を燃焼室201に導入するためにシリンダヘッド220に連結されている吸気管311と、燃焼室201に導入される空気の流量を調整するためのスロットルバルブ313と、スロットルバルブ313の開度を検出するスロットルセンサ135と、燃焼室201のなかで混合気の燃焼によって発生した排気ガスを車外に排出するためにシリンダヘッド220に連結されている排気管321と、排気ガス中の有害物質を酸化還元浄化するために排気管321に設けられた触媒コンバータ322と、が設けられている。
【0040】
エアクリーナ312は、例えば、内部に収容した紙または合成繊維の不織布のフィルターにより、吸入空気中の異物を除去するようになっている。
【0041】
スロットルバルブ313は、薄い円板状の弁体によって構成され、この弁体の中央にシャフトを備えている。スロットルバルブ313には、ECU100の制御に応じてシャフトを回動させることによって弁体を回動させ、吸気管311における空気の流量を変更するスロットルバルブアクチュエータ314が設けられている。
【0042】
触媒コンバータ322は、一般に、排気ガスに含まれる未燃炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)および窒素酸化物(NOx)といった有害物質を効率的に除去することができる三元触媒を備えている。この三元触媒は、好ましくはNOx含有率の高い排気ガスからでも、NOxを効率的に除去する機能を有するものが用いられる。
【0043】
シリンダヘッド220には、吸気管311と燃焼室201とを連通させる吸気ポート221と、燃焼室201と排気管321とを連通させる排気ポート222とが形成されている。
【0044】
また、シリンダヘッド220には、吸気管311から燃焼室201への燃焼用空気の導入を制御するための吸気バルブ223と、燃焼室201から排気管321への排気ガスの排出を制御するための排気バルブ224と、燃焼室201内に燃料を噴射するためのインジェクタ225と、燃焼室201内の混合気に点火するための点火プラグ226と、が取り付けられている。
【0045】
インジェクタ225は、ECU100によって制御されるソレノイドコイルおよびニードルバルブを有している。インジェクタ225には、所定の圧力で燃料が供給されている。インジェクタ225は、ECU100によってソレノイドコイルが通電されると、ニードルバルブを開いて、燃焼室201に燃料を噴射するようになっている。
【0046】
点火プラグ226は、プラチナやイリジウム合金製の電極を有する公知の点火プラグによって構成されている。点火プラグ226は、ECU100によって電極が通電されることにより放電し、燃焼室201内の混合気に点火するようになっている。
【0047】
図3に示すように、エンジン20には、シリンダヘッド220の上部に、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242が、回転可能に設けられている。
【0048】
吸気カムシャフト241には、吸気バルブ223の上端に当接する吸気カム243が設けられている。吸気カムシャフト241が回転すると、吸気カム243が吸気バルブ223を開閉駆動し、吸気ポート221と燃焼室201との間が開閉されるようになっている。
【0049】
排気カムシャフト242には、排気バルブ224の上端に当接する排気カム244が設けられている。排気カムシャフト242が回転すると、排気カム244が排気バルブ224を開閉駆動し、燃焼室201と排気ポート222との間が開閉されるようになっている。
【0050】
吸気カムシャフト241の一端部には、吸気カムスプロケット245と、吸気カムシャフト241を吸気カムスプロケット245に対して回転させる吸気側回転位相コントローラ247と、が設けられている。
【0051】
吸気側回転位相コントローラ247は、ECU100に制御されることにより、吸気カムシャフト241を吸気カムスプロケット245に対して回転させ、進角制御および遅角制御を行うことができるようになっている。
【0052】
排気カムシャフト242の一端部には、排気カムスプロケット246と、排気カムシャフト242を排気カムスプロケット246に対して回転させる排気側回転位相コントローラ248と、が設けられている。
【0053】
排気側回転位相コントローラ248は、ECU100に制御されることにより、排気カムシャフト242を排気カムスプロケット246に対して回転させ、進角制御および遅角制御を行うことができるようになっている。
【0054】
クランクシャフト213の一端部には、クランクスプロケット249が設けられている。吸気カムスプロケット245、排気カムスプロケット246およびクランクスプロケット249には、タイミングベルト250が巻き掛けられている。タイミングベルト250は、クランクスプロケット249の回転を吸気カムスプロケット245および排気カムスプロケット246に伝達するようになっている。
【0055】
従って、タイミングベルト250によって、クランクシャフト213の回転が、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に伝達されることにより、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242に駆動される吸気バルブ223および排気バルブ224が、クランクシャフト213に同期して吸気ポート221および排気ポート222を開閉する。
【0056】
また、エンジン20には、タイミングベルト250の経路を規制するテンショナ251が設けられている。テンショナ251は、吸気カムスプロケット245、排気カムスプロケット246およびクランクスプロケット249からタイミングベルト250が外れることを防止するために、タイミングベルト250に適度なテンションを与えるようになっている。
【0057】
クランクシャフト213には、クランクシャフト213とともに回転するクランクロータ254が設けられている。車両10は、クランクロータ254の回転角を検出するためのクランク角センサ131を備えている。
【0058】
図4に示すように、クランクロータ254は、外周に10°ごとに信号歯が設けられ、上死点検出用に2歯欠歯した部分が1箇所あり、全周で34歯の信号歯が設けられている。
【0059】
クランク角センサ131は、磁気抵抗素子(MRE:Magnetic Resistance Element)を有するMREセンサによって構成されている。クランクシャフト213が回転すると、クランクロータ254に設けられた歯の山と谷により、クランク角センサ131にかかる磁界の方向、すなわち、磁気ベクトルが変化し、内部抵抗値が変化する。
【0060】
クランク角センサ131は、図5に示すように、この抵抗値変化を電圧に変換した上で出力される波形と、閾値とを比較することによりHigh状態とLow状態とをとる矩形波に整形したクランク角信号を生成し、生成したクランク角信号をECU100に出力するようになっている。
【0061】
また、クランク角センサ131は、クランクロータ254により、クランクシャフト213の回転角を10°ごとに検出させることができるとともに、クランクロータ254の欠歯した箇所により、クランクシャフト213の回転位置を検出させることができるようになっている。
【0062】
図3において、クランクシャフト213の他端には、クランクシャフト213とともに回転するフライホイール258が設けられている。車両10は、エンジン20の始動時にフライホイール258を回転させるためのスタータ259を備えている。
【0063】
フライホイール258は、リングギアによって構成されている。スタータ259は、バッテリを電源として駆動するモータと、モータによって回転されるピニオンギアとを有している。
【0064】
スタータ259は、ECU100に制御されることにより、エンジン20の始動時にフライホイール258にピニオンギアを歯合させてモータを駆動させることにより、クランクシャフト213を回転させる一方で、エンジン20が始動した後には、フライホイール258からピニオンギアを離隔し、モータを停止するようになっている。
【0065】
吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242は、クランクシャフト213が2周する間に1周するようになっている。従って、クランクシャフト213の回転角を基準にし、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242の回転角をクランクシャフト213の回転角を示す「CA」を用いて以下に説明する。
【0066】
吸気カムシャフト241には、吸気カムシャフト241とともに回転する吸気カムロータ255が設けられている。また、排気カムシャフト242には、排気カムシャフト242とともに回転する排気カムロータ256が設けられている。車両10は、吸気カムロータ255および排気カムロータ256の回転角をそれぞれ検出するための吸気カム角センサ139および排気カム角センサ140を備えている。なお、本発明において、吸気カム角センサ139と排気カム角センサ140とを総称してカム角センサともいう。
【0067】
図6に示すように、吸気カムロータ255は、外周に山と谷が形成されている。本実施の形態における吸気カムロータ255は、順に60°CAの谷、180°CAの山、180°CAの谷、60°CAの山、120°CAの谷、120°CAの山が形成されている。
【0068】
吸気カム角センサ139は、クランク角センサ131と同様に構成され、図7に示すように、吸気カムシャフト241が回転すると、吸気カムロータ255に形成された山と谷に対応する矩形波を吸気カムシャフト241のカム角信号(以下、「G2In信号」という)として生成し、生成したG2In信号をECU100に出力するようになっている。
【0069】
排気カムロータ256は、吸気カム角センサ139と同様に構成され、吸気カムロータ255と比較して60°CAずれた状態で、排気カムシャフト242に設けられている。
【0070】
排気カム角センサ140は、吸気カム角センサ139と同様に構成され、排気カムシャフト242が回転すると、排気カムロータ256に形成された山と谷に対応する矩形波を排気カムシャフト242のカム角信号(以下、「G2Ex信号」という)として生成し、生成したG2Ex信号をECU100に出力するようになっている。
【0071】
図8に示すように、ECU100の入力側には、クランク角センサ131、吸気カム角センサ139、排気カム角センサ140およびスロットルセンサ135に加え、スタータ259を駆動するためのスタートスイッチ134と、その他各種センサとが接続されている。
【0072】
一方、ECU100の出力側には、インジェクタ225、点火プラグ226、スタータ259およびスロットルバルブアクチュエータ314等の制御対象とするデバイスが接続されている。
【0073】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)および入出力インターフェース回路を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。このCPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って動作することにより、ECU100は、車両10の各部を統括的に制御するようになっている。
【0074】
ここで、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECU100の構成について説明する。
【0075】
ECU100は、クランク角センサ131からクランク角信号が正常に得られない場合に、カム角信号、すなわち、G2In信号やG2Ex信号に基づいてエンジン20を制御するようになっている。
【0076】
本実施の形態において、ECU100は、その処理負荷を軽減するために、カム角信号の立ち上りエッジを一定のサンプリング周期Tsで検出し、立ち下りエッジを割り込みで検出するようになっている。ここで、サンプリング周期Tsは、ECU100の処理速度に応じて定められるが、本実施の形態においては、1msとする。具体的には、ECU100は、G2In信号の立ち上りエッジを1ms周期で検出し、G2In信号の立ち下りエッジを割り込みで検出するようになっている。
【0077】
ECU100は、正常状態と、フェールセーフ状態との何れか一方の状態をとるようになっている。ECU100は、クランク角センサ131から出力されるクランク角信号が正常に得られているか否かを判断するダイアグアプリケーションを常に実行するようになっている。
【0078】
例えば、ダイアグアプリケーションは、G2In信号やG2Ex信号の各エッジ間に検出されるクランク角信号のエッジが予め定められた数より少ないとき、クランク角信号の信号レベルが予め定められた範囲から外れたときなどに、クランク角信号が正常に得られていないと判断するようになっている。
【0079】
ECU100は、ダイアグアプリケーションによってクランク角信号が正常に得られていると判断された場合には、正常状態をとり、ダイアグアプリケーションによってクランク角信号が正常に得られていないと判断された場合には、フェールセーフ状態をとるようになっている。
【0080】
ここで、フェールセーフ状態において、ECU100が吸気側回転位相コントローラ247および排気側回転位相コントローラ248を制御すると、吸気カムシャフト241および排気カムシャフト242と、クランクシャフト213との関係が変化してしまうため、カム角信号に基づいて気筒判別を行うと、気筒判別の精度が悪化してしまう。
【0081】
このため、正常状態からフェールセーフ状態となるときに、ECU100は、吸気カムシャフト241が基準位置、すなわち、吸気側回転位相が最遅角となるように、吸気側回転位相コントローラ247を制御するとともに、排気カムシャフト242が基準位置、すなわち、排気側回転位相が最進角となるように、排気側回転位相コントローラ248を制御するようになっている。
【0082】
この場合には、ECU100は、吸気側回転位相コントローラ247および排気側回転位相コントローラ248の制御が完了するまでは、気筒判別を停止するようにすることが好ましい。なお、気筒判別が停止すると、インジェクタ225および点火プラグ226がECU100によって制御されなくなり、インジェクタ225による燃料噴射、および、点火プラグ226による点火が停止されるため、エンジン20内の燃焼が停止する。
【0083】
ここで、ECU100の構成について正常状態と、フェールセーフ状態とに分けて説明する。
【0084】
(正常状態)
正常状態において、ECU100は、図9に示すように、クランク角センサ131によって出力されたクランクシャフト213の10°ごとのクランク角信号の3歯分、すなわち、クランクシャフト213が30°回転したときに1カウントするクランクカウンタを生成するようになっている。
【0085】
このクランクカウンタは、特定の気筒、例えば、タイミングベルト250に最も近い側の気筒(#1)におけるピストン211の上死点から次の上死点までを、ccrnk0〜ccrnk23としてカウントするようになっている。ECU100は、クランクカウンタのカウント周期に基づいてエンジン回転速度Neを算出するようになっている。
【0086】
また、ECU100は、クランクカウンタのカウント値に基づいて、点火プラグ226の点火タイミングやインジェクタ225の燃料噴射タイミング等の制御タイミングを気筒ごとに計るための気筒判別を行うようになっている。このようにECU100は、正常状態において、気筒判別を行う気筒判別手段を構成する。
【0087】
また、ECU100は、カムシャフト241、242の回転角を検出するカム角センサ139、140から出力されるカム角信号の立ち上りエッジおよび立ち下りエッジのなかで、一定間隔のクランク角に対応するエッジを有効エッジとして取得するようになっている。
【0088】
以下の説明において、ECU100は、吸気カムシャフト241の回転角を検出する吸気カム角センサ139から出力されるG2In信号の立ち上りエッジおよび立ち下りエッジのなかで、一定間隔のクランク角に対応するエッジを有効エッジとして取得するものとする。
【0089】
ECU100は、吸気カム角センサ139から出力されたG2In信号の180°CA毎の有効エッジE1〜E4を取得するようになっている。なお、正常状態におけるG2In信号の有効エッジE1〜E4は、クランクカウンタのカウント値ccrnk2、8、14、20にそれぞれ同期するものとする。このようにECU100は、正常状態において、カム角信号のエッジを取得するエッジ取得手段を構成する。
【0090】
また、ECU100は、フェールセーフ状態となったときに備えて、取得した有効エッジをカウントするカムカウンタを生成するようになっている。本実施の形態において、ECU100は、G2In信号の有効エッジをカウントするカムカウンタ(以下、「G2Inカウンタ」という)を生成するようになっている。すなわち、正常状態において、G2Inカウンタは、クランクカウンタのカウント値ccrnk2、8、14、20にそれぞれ同期して、カウント値ccam0、1、2、3を繰り返し計数することになる。
【0091】
(フェールセーフ状態)
ECU100は、前述したように、正常状態においては、クランクカウンタのカウント値に基づいてエンジン回転速度Neを算出していたが、フェールセーフ状態においては、G2In信号の有効エッジに基づいてエンジン回転速度Neを算出するようになっている。
【0092】
ECU100は、カム角信号のエッジのなかで、エンジン20の始動後には、エンジン20の始動中より少ないエッジを取得するようになっている。このように、ECU100は、フェールセーフ状態においても、エッジ取得手段を構成する。
【0093】
本実施の形態において、ECU100は、エンジン20の始動中には、カム角信号の全てのエッジを取得し、エンジン20の始動後には、吸気カム角センサ139から出力されたG2In信号の180°CA毎の有効エッジE1〜E4を取得するようになっている。
【0094】
ここで、エンジン20の始動中とは、スタートスイッチ134がオン状態で、ECU100がスタータ259を制御し、スタータ259がフライホイール258を回転させてからエンジン20の回転数Neが予め定められた回転数Nth、例えば、250rpmになるまでの期間のことをいう。また、エンジン20の始動後とは、スタータ259のピニオンギアがフライホイール258から離隔し、エンジン20の回転数Neが予め定められた回転数Nth以上にあるときのことをいう。
【0095】
ECU100は、エンジン20の始動中には、G2In信号およびG2Ex信号の全てのエッジを取得し、G2In信号の立ち下りエッジのなかで、クランクカウンタのカウント値ccrnk2に対応する有効エッジE1を特定するようになっている。
【0096】
ここで、ECU100は、G2In信号のHighレベル期間とLowレベル期間との比率R1、および、G2In信号の立ち下りエッジとG2Ex信号の立ち上りエッジとのエッジ間隔dTに基づいて、G2In信号の立ち下りエッジのなかで、有効エッジE1を特定するようになっている。
【0097】
なお、ECU100は、比率R1のみ、または、エッジ間隔dTのみに基づいて、G2In信号の立ち下りエッジのなかで、有効エッジE1を特定することができるが、本実施の形態においては、有効エッジE1を確実に特定するため、比率R1とエッジ間隔dTとの双方に基づいて、有効エッジE1を特定するようになっている。
【0098】
まず、図10ないし図12に示すように、比率R1は、G2In信号の直前のHighレベル期間TI(n)に対するその前のLowレベル期間TI(n−1)の比率TI(n−1)/TI(n)を表す。ECU100は、この比率R1が最大となるG2In信号の立ち下りエッジを有効エッジE1の候補として特定するようになっている。
【0099】
すなわち、エンジン20の回転に変動がないと仮定すると、G2In信号の立ち下りエッジD1に対しては、図10に示すように、G2In信号の直前のHighレベル期間TI(n)が略60°CAに比例し、その前のLowレベル期間TI(n−1)が略120°CAに比例するため、比率R1は、略2となる。
【0100】
同様に、G2In信号の立ち下りエッジD3に対しては、図11に示すように、G2In信号の直前のHighレベル期間TI(n)が略180°CAに比例し、その前のLowレベル期間TI(n−1)が略180°CAに比例するため、比率R1は、略1となる。
【0101】
また、G2In信号の立ち下りエッジD4に対しては、図12に示すように、G2In信号の直前のHighレベル期間TI(n)が略120°CAに比例し、その前のLowレベル期間TI(n−1)が略60°CAに比例するため、比率R1は、略0.5となる。
【0102】
このように、G2In信号の立ち下りエッジD1に対する比率R1が最大となるため、ECU100は、G2In信号の立ち下りエッジD1を有効エッジE1の候補として特定することができる。
【0103】
なお、ECU100は、比率R1が最大となるG2In信号の立ち下りエッジを有効エッジE1の候補として特定するのに代えて、比率R1が予め定められた比率Rth1を超えるG2In信号の立ち下りエッジを有効エッジE1の候補として特定するようにしてもよい。この場合、比率Rth1は、例えば、1.7程度に定められる。
【0104】
一方、図13ないし図14に示すように、エッジ間隔dTは、G2In信号の直前のHighレベル期間TI(n)とG2Ex信号の直前のHighレベル期間TE(n)とが重なる重複期間を表す。
【0105】
ECU100は、エッジ間隔dTに対するG2In信号の直前のHighレベル期間TI(n)の比率R2=TI(n)/dTと、重複期間dTに対するG2Ex信号の直前のHighレベル期間TE(n)の比率R3=TE(n)/dTとを算出し、算出した比率R2および比率R3が共に最大になるG2In信号の立ち下りエッジを有効エッジE1の候補として特定するようになっている。
【0106】
すなわち、エンジン20の回転に変動がないと仮定すると、G2In信号の立ち下りエッジD1に対しては、図13に示すように、重複期間dTが略0°CAに比例し、G2In信号の直前のHighレベル期間TI(n)が略60°CAに比例し、G2Ex信号の直前のHighレベル期間TE(n)が略60°CAに比例するため、比率R2および比率R3は、ともに無限大となる。
【0107】
また、G2In信号の立ち下りエッジD3に対しては、図14に示すように、重複期間dTが略120°CAに比例し、G2In信号の直前のHighレベル期間TI(n)が略180°CAに比例し、G2Ex信号の直前のHighレベル期間TE(n)が略180°CAに比例するため、比率R2および比率R3は、ともに略1.5となる。
【0108】
また、G2In信号の立ち下りエッジD4に対しては、図15に示すように、重複期間dTが略60°CAに比例し、G2In信号の直前のHighレベル期間TI(n)が略120°CAに比例し、G2Ex信号の直前のHighレベル期間TE(n)が略120°CAに比例するため、比率R2および比率R3は、ともに略2となる。
【0109】
このように、G2In信号の立ち下りエッジD1に対する比率R2、R3がともに最大となるため、ECU100は、G2In信号の立ち下りエッジD1を有効エッジE1の候補として特定することができる。
【0110】
なお、ECU100は、比率R2、R3がともに最大となるG2In信号の立ち下りエッジを有効エッジE1の候補として特定するのに代えて、比率R2、R3がともに予め定められた比率Rth2を超えるG2In信号の立ち下りエッジを有効エッジE1の候補として特定するようにしてもよい。この場合、比率Rth2は、例えば、4.8程度に定められる。
【0111】
ECU100は、比率R1に基づいて有効エッジE1の候補として特定したG2In信号の立ち下りエッジと、エッジ間隔dTに基づいて有効エッジE1の候補として特定したG2In信号の立ち下りエッジと、が一致した場合に、このG2In信号の立ち下りエッジを有効エッジE1として特定するようになっている。
【0112】
図9において、ECU100は、有効エッジを取得したときに、次の有効エッジの取得タイミングを予測するようになっている。具体的には、ECU100は、有効エッジE2を取得したときに、有効エッジE2を取得したタイミングから有効エッジE1〜E2間の時間を加算したタイミングを次の有効エッジE3の取得タイミングとして予測するようになっている。
【0113】
同様に、ECU100は、有効エッジE3を取得したときに、有効エッジE3を取得したタイミングから有効エッジE2〜E3間の時間を加算したタイミングを次の有効エッジE4の取得タイミングとして予測するようになっている。
【0114】
また、ECU100は、有効エッジE4を取得したときに、有効エッジE4を取得したタイミングから有効エッジE3〜E4間の時間を加算したタイミングを次の有効エッジE1の取得タイミングとして予測するようになっている。
【0115】
また、ECU100は、有効エッジE1を取得したときに、有効エッジE1を取得したタイミングから有効エッジE4〜E1間の時間を加算したタイミングを次の有効エッジE2の取得タイミングとして予測するようになっている。
【0116】
ECU100は、取得した有効エッジの取得タイミングと次の有効エッジの予測した取得タイミングとの間を逓倍することにより、クランクシャフト213の回転角を擬似的に計数するようになっている。具体的には、ECU100は、フェールセーフ用のクランクカウンタ(以下、単に「F/S用クランクカウンタ」という)を生成するようになっている。このように、ECU100は、フェールセーフ状態において、擬似計数手段を構成する。
【0117】
ここで、エンジン20の始動中に生成されるF/S用クランクカウンタの初期値は、G2In信号の立ち下りエッジのなかで、クランクカウンタのカウント値ccrnk2に対応する有効エッジとして特定された有効エッジE1が取得されたときにccrnk2に設定される。
【0118】
なお、ECU100は、エンジン20の始動中には、有効エッジE1を特定した後、G2In信号およびG2Ex信号の全エッジがF/S用クランクカウンタの対応するカウント値にそれぞれ同期するようF/S用クランクカウンタのカウント値を調整するようにしてもよい。
【0119】
一方、エンジン始動後に生成されるF/S用クランクカウンタの初期値は、G2Inカウンタのカウント値に基づいて決定される。すなわち、ダイアグアプリケーションによってクランク角信号が正常に得られていないと判断され、吸気側回転位相コントローラ247および排気側回転位相コントローラ248に対するECU100による制御が完了した後に、G2Inカウンタのカウント値がccam0となったとき、F/S用クランクカウンタの初期値は、ccrnk2に設定され、G2Inカウンタのカウント値がccam1となったとき、F/S用クランクカウンタの初期値は、ccrnk8に設定され、G2Inカウンタのカウント値がccam2となったとき、F/S用クランクカウンタの初期値は、ccrnk14に設定され、G2Inカウンタのカウント値がccam3となったとき、F/S用クランクカウンタの初期値は、ccrnk20に設定される。
【0120】
本実施の形態において、ECU100は、G2In信号の有効エッジを取得したときに、取得した有効エッジの取得タイミングと次の有効エッジの予測した取得タイミングとの間を6逓倍することによって、F/S用クランクカウンタを30°CAごとに1カウントさせ、G2In信号の各有効エッジでF/S用クランクカウンタのカウント値ccrnk2、8、14、20がそれぞれ同期するようにカウント値(計数値)を調整するようになっている。
【0121】
また、ECU100は、正常状態においては、クランクカウンタのカウント値に基づいて気筒判別を行っていたが、フェールセーフ状態においては、F/S用クランクカウンタのカウント値に基づいて気筒判別を行うようになっている。このようにECU100は、フェールセーフ状態においても、気筒判別手段を構成する。
【0122】
次に、本発明の実施の形態に係る内燃機関の制御装置を構成するECU100の動作について説明する。
【0123】
図16は、ECU100によるフェールセーフ状態における気筒判別動作を説明するためのフローチャートである。
【0124】
まず、ECU100は、エンジン20が始動中であるか否かを判断する(ステップS1)。ここで、エンジン20が始動中であると判断した場合には、ECU100は、G2In信号およびG2Ex信号の全てのエッジに基づいて、F/S用クランクカウンタのカウント値を調節する(ステップS2)。
【0125】
一方、エンジン20が始動中でない、すなわち、エンジン20が始動後である判断した場合には、ECU100は、G2In信号の有効エッジに基づいて、F/S用クランクカウンタのカウント値を調節する(ステップS3)。
【0126】
そして、ECU100は、調節されたF/S用クランクカウンタのカウント値に基づいて、気筒判別を行う(ステップS4)。
【0127】
以上のように、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、エンジン20の始動中には、エンジン20が始動した後より多いカム角信号のエッジを取得することにより気筒判別を行うため、精度のよい気筒判別を行うことができ、エンジン20の始動にかかる時間を短縮することができる。
【0128】
一方、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、エンジン20が始動した後には、エンジン20の始動中より少ないカム角信号のエッジを取得することにより気筒判別を行うため、ECU100にかかる負荷を低減することができる。
【0129】
従って、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、カム角センサから出力されるカム角信号のみに基づいて気筒判別を行う場合であっても、気筒判別を実行するECU100にかかる負荷を従来のものより低減しつつ、エンジン20の始動中には、精度のよい気筒判別を行うことができ、エンジン20の始動にかかる時間を短縮することができる。
【0130】
また、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、エンジン20の始動中には、カム角信号の全てのエッジを取得することにより、気筒判別の精度を向上させ、エンジン20の始動後には、クランクシャフト213の回転角を擬似的に計数するために必要とする有効エッジのみを取得することにより、気筒判別を実行するECU100にかかる負荷を従来のものより軽減することができる。
【0131】
また、本実施の形態に係る内燃機関の制御装置は、エンジン20の始動中には、720°CAの間にカム角信号のG2In信号の3つの立ち上りエッジと、G2Ex信号の3つの立ち上りエッジとを取得するが、エンジン20の始動後には、720°CAの間にカム角信号のG2In信号の1つの立ち上りエッジを取得するため、特に、ECU100がカム角信号の立ち上りエッジを一定のサンプリング周期Tsで検出し、立ち下りエッジを割り込みで検出する場合には、ECU100にかかる負荷を大幅に軽減することができる。
【0132】
なお、本実施の形態において、クランク角センサ131がMREセンサによって構成されている例について説明したが、本発明において、クランク角センサ131は、公知の電磁ピックアップコイル(MPU:Magnet Pick Up coil)を有するMPUセンサと、交流電流を矩形波に整形する波形整形回路とによって構成されていてもよい。
【0133】
また、本実施の形態において、吸気カムロータ255は、図6に示したように、順に60°CAの谷、180°CAの山、180°CAの谷、60°CAの山、120°CAの谷、120°CAの山が形成されているものとして説明したが、本発明において、吸気カムロータ255は、長さがそれぞれ異なる複数の山と長さがそれぞれ異なる複数の谷とが外周に形成され、720°CAを等分する有効エッジが得られる形状であれば図6に示した形状でなくともよい。
【0134】
また、本実施の形態において、ECU100は、G2In信号のHighレベル期間とLowレベル期間との比率R1と、G2In信号の立ち下りエッジとG2Ex信号の立ち上りエッジとのエッジ間隔dTとに基づいて、G2In信号の立ち下りエッジのなかで、有効エッジE1を特定するものとして説明したが、本発明において、ECU100は、比率R1のみに基づいて有効エッジE1の候補として特定したG2In信号の立ち下りエッジを有効エッジE1として特定するようしてもよい。この場合、ECU100は、エンジン20の始動中には、G2In信号の全てのエッジを取得すればよい。
【0135】
また、本発明において、ECU100は、G2In信号の立ち下りエッジとG2Ex信号の立ち上りエッジとのエッジ間隔dTのみに基づいて有効エッジE1の候補として特定したG2In信号の立ち下りエッジを有効エッジE1として特定するようにしてもよい。
【0136】
また、本発明において、吸気カムシャフト241に対する吸気カムロータ255の設置角度と、排気カムシャフト242に対する排気カムロータ256の設置角度とを変更することにより、例えば、図17に示すように、ECU100は、G2In信号とG2Ex信号とを置き換えてエンジン20を制御することができる。
【0137】
すなわち、ECU100は、G2In信号の有効エッジに基づいてF/S用クランクカウンタのカウント値を調整するのに代えて、G2Ex信号の有効エッジに基づいてF/S用クランクカウンタのカウント値を調整するようにしてもよい。
【0138】
この場合、正常状態において、ECU100は、G2Ex信号の立ち上りエッジおよび立ち下りエッジのなかで、一定間隔のクランク角に対応するエッジを有効エッジとして取得するように構成される。また、フェールセーフ状態において、ECU100は、エンジン20の始動後には、排気カム角センサ140から出力されたG2Ex信号の180°CA毎の有効エッジE1〜E4を取得するように構成される。
【0139】
また、フェールセーフ状態において、ECU100は、エンジン20の始動中には、G2Ex信号およびG2In信号の全てのエッジを取得し、G2Ex信号の立ち下りエッジのなかで、クランクカウンタのカウント値ccrnk2に対応する有効エッジE1を特定するように構成される。
【0140】
ここで、ECU100は、G2Ex信号のHighレベル期間とLowレベル期間との比率、および、G2Ex信号の立ち下りエッジとG2In信号の立ち上りエッジとのエッジ間隔に基づいて、G2Ex信号の立ち下りエッジのなかで、有効エッジE1を特定するように構成される。
【0141】
なお、ECU100は、G2Ex信号のHighレベル期間とLowレベル期間との比率に基づいて有効エッジE1の候補として特定したG2Ex信号の立ち下りエッジを有効エッジE1として特定するようにしてもよい。この場合、ECU100は、エンジン20の始動中には、G2Ex信号の全てのエッジを取得すればよい。
【0142】
また、本発明において、ECU100は、G2Ex信号の立ち下りエッジとG2In信号の立ち上りエッジとのエッジ間隔に基づいて有効エッジE1の候補として特定したG2Ex信号の立ち下りエッジを有効エッジE1として特定するようにしてもよい。
【0143】
このように、吸気カムロータ255および排気カムロータ256の形状と、吸気カムシャフト241に対する吸気カムロータ255の設置角度と、排気カムシャフト242に対する排気カムロータ256の設置角度とを変更することにより、ECU100は、フェールセーフ状態におけるエンジン20の始動中には、クランクカウンタの特定のカウント値に対応するカム角信号のエッジを特定することができれば、G2In信号およびG2Ex信号の全ての立ち上りエッジを取得するようにしてもよく、G2In信号およびG2Ex信号の全ての立ち下りエッジを取得するようにしてもよい。
【0144】
以上説明したように、本発明に係る内燃機関の制御装置は、カム角センサから出力されるカム角信号のみに基づいて気筒判別を行う場合であっても、気筒判別を実行するECUにかかる負荷を従来のものより低減しつつ、内燃機関の始動中には、精度のよい気筒判別を行うことができ、内燃機関の始動にかかる時間を短縮することができるという効果を有するものであり、内燃機関の制御装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0145】
10 車両
20 エンジン
21 気筒
100 ECU(エッジ取得手段、擬似計数手段、気筒判別手段)
131 クランク角センサ
139 吸気カム角センサ
140 排気カム角センサ
201 燃焼室
211 ピストン
213 クランクシャフト
221 吸気ポート
222 排気ポート
223 吸気バルブ
224 排気バルブ
225 インジェクタ
226 点火プラグ
230 オイルパン
241 吸気カムシャフト
242 排気カムシャフト
243 吸気カム
244 排気カム
254 クランクロータ
255 吸気カムロータ
256 排気カムロータ
258 フライホイール
311 吸気管
321 排気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトの回転角を検出してクランク角信号を生成するクランク角センサと、カムシャフトの回転角を検出してカム角信号を生成するカム角センサとが設けられ、前記クランク角センサから前記クランク角信号が正常に得られない場合に、前記カム角信号に基づいて内燃機関を制御する内燃機関の制御装置において、
前記カム角信号のエッジを取得するエッジ取得手段と、
前記エッジ取得手段によって取得されたエッジに基づいて前記クランクシャフトの回転角を擬似的に計数する擬似計数手段と、
前記擬似計数手段の計数値に基づいて気筒判別を行う気筒判別手段と、を備え、
前記エッジ取得手段は、前記カム角信号のエッジのなかで、前記内燃機関の始動後には、前記内燃機関の始動中より少ないエッジを取得することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動中には、前記カム角信号の全てのエッジを取得することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動後には、前記カム角信号の全てのエッジのなかで、一定間隔のクランク角にそれぞれ対応する前記カム角信号の有効エッジを取得することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記カム角センサは、吸気カムシャフトの回転角を検出して吸気カム角信号を生成する吸気カム角センサと、排気カムシャフトの回転角を検出して排気カム角信号を生成する排気カム角センサとを含み、
前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動中には、前記吸気カム角信号と前記排気カム角信号との全てのエッジを取得することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記カム角センサは、吸気カムシャフトの回転角を検出して吸気カム角信号を生成する吸気カム角センサを含み、
前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動中には、前記吸気カム角信号の全てのエッジを取得することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記カム角センサは、排気カムシャフトの回転角を検出して排気カム角信号を生成する排気カム角センサを含み、
前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動中には、前記排気カム角信号の全てのエッジを取得することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動後には、前記吸気カム角信号の全てのエッジのなかで、一定間隔のクランク角にそれぞれ対応する前記吸気カム角信号の有効エッジを取得することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記エッジ取得手段は、前記内燃機関の始動後には、前記排気カム角信号の全てのエッジのなかで、一定間隔のクランク角にそれぞれ対応する前記排気カム角信号の有効エッジを取得することを特徴とする請求項4または請求項6に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−247154(P2011−247154A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120474(P2010−120474)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】