内燃機関の動弁駆動装置
【課題】 製造コストの増大或いは組立性の低下を招くことがないと共に、機械的なストッパによることなく、バルブの最大ストロークを確実に制限する。
【解決手段】 流体圧によりピストン15を作動させ、そのピストン15により吸・排気弁等のバルブ12をリフトさせて、そのバルブ12を開弁すると共に、流体圧を解除してバルブ12を閉弁する内燃機関の動弁駆動装置において、ピストン15に流体圧を作用させて、そのピストン15が最大ストロークに達する直前に、ピストン15にかかる流体圧を下げるための流体圧開放手段13、28を備える。
【解決手段】 流体圧によりピストン15を作動させ、そのピストン15により吸・排気弁等のバルブ12をリフトさせて、そのバルブ12を開弁すると共に、流体圧を解除してバルブ12を閉弁する内燃機関の動弁駆動装置において、ピストン15に流体圧を作用させて、そのピストン15が最大ストロークに達する直前に、ピストン15にかかる流体圧を下げるための流体圧開放手段13、28を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気弁或いは排気弁をなすバルブを開閉駆動するための装置に係り、特に、カム機構を有さず、流体圧を利用してバルブを開閉駆動する内燃機関の動弁駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン制御の自由度を高めるため、カム機構によるバルブの開閉駆動を廃止し、これに代わって電磁駆動或いは流体圧駆動とする、所謂カムレス方式の動弁駆動装置が有望視されている。例えば、特許文献1等にはこのようなカムレス方式の動弁駆動装置が開示されている。当該装置では、バルブにピストンを連結すると共に、バルブのバルブスプリングに逆らって必要量だけリフトさせるだけの高圧の流体圧を作り、その流体圧をピストンに作用させ、そのピストンを介してバルブを開弁駆動している。従って、流体圧の供給時期や大きさを制御することにより、バルブの開閉タイミングやリフト量を自由に設定することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−328713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記装置では、バルブの最大ストロークを制限するために、ピストン或いはバルブに機械的なストッパが設けられていた。しかしながら、ピストン或いはバルブに機械的なストッパを設けると、ピストン或いはバルブの形状が複雑となり、製造コストが増大すると共に組立性が低下するという問題があった。また、機械的なストッパによると、バルブが最大ストロークに達したときに、音及び衝撃が発生するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、製造コストの増大或いは組立性の低下を招くことがないと共に、機械的なストッパによることなく、バルブの最大ストロークを確実に制限することができる内燃機関の動弁駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、流体圧によりピストンを作動させ、そのピストンにより吸・排気弁等のバルブをリフトさせて、そのバルブを開弁すると共に、流体圧を解除して上記バルブを閉弁する内燃機関の動弁駆動装置において、上記ピストンに流体圧を作用させて、そのピストンが最大ストロークに達する直前に、上記ピストンにかかる流体圧を下げるための流体圧開放手段を備えたものである。
【0007】
ここで、上記ピストンが、アクチュエータボデイ内に摺動自在に、かつ、ストロークが規制されて設けられた筒状の外側ピストンと、該外側ピストン内に摺動自在に、かつ、上記バルブに連結させて設けられた内側ピストンとからなり、上記バルブの開弁時には上記外側ピストン及び上記内側ピストンに流体圧を作用させて、それら外側ピストンと内側ピストンとを同時にリフトさせ、上記外側ピストンの停止後には上記内側ピストンのみに流体圧を作用させて、その内側ピストンが最大ストローク近傍に達したときに、上記流体圧開放手段が上記内側ピストンに作用する流体圧を逃がすものであっても良い。
【0008】
また、上記流体圧開放手段が、上記外側ピストンの内周面に設けられ、上記内側ピストンが最大ストローク近傍に達したときに、上記外側ピストン内における上記内側ピストンよりも上側の空間と連通するスリットを有しても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造コストの増大或いは組立性の低下を招くことがないと共に、機械的なストッパによることなく、バルブの最大ストロークを確実に制限することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る動弁駆動装置の全体図である。本実施形態の動弁駆動装置は、車両用等の多気筒コモンレールディーゼルエンジンに適用したものである。
【0012】
まず、コモンレール式燃料噴射装置について説明する。
【0013】
エンジン(内燃機関)の各気筒毎に燃料噴射を実行するインジェクタ1が設けられる。このインジェクタ1には、コモンレール2に貯留されたコモンレール圧Pc(例えば数10〜数100MPa程度)の高圧燃料が常時供給されている。燃料タンク3の燃料は燃料フィルタ4を通じてフィードポンプ5によって吸引された後、高圧ポンプ6に送られる。コモンレール2への燃料圧送は、この高圧ポンプ6によって行われる。フィードポンプ5のフィード圧Pfは、リリーフ弁からなる圧力調整弁7によって調整され、一定に保たれる。フィード圧Pfは常圧よりは大きい(つまり燃料は加圧された状態にある)が、コモンレール圧Pcよりは著しく小さい値で、例えば0.5MPa程度である。
【0014】
図示する装置全体を総括的に制御する制御装置としての電子制御ユニット(以下ECUという)8が設けられる。このECU8には、エンジンの運転状態(エンジンのクランク角、回転速度、エンジン負荷等)を検出するセンサ(図示せず)が接続される。ECU8は、これらセンサの検出信号に基づいてエンジンの運転状態を把握すると共に、その運転状態に基づいた駆動信号をインジェクタ1の電磁ソレノイドに送ってインジェクタ1を開閉制御する。電磁ソレノイドのON/OFFに応じて燃料噴射が実行・停止される。燃料噴射停止時にはインジェクタ1から常圧程度の燃料がリターン通路9を通じて燃料タンク3に戻される。ECU8は、エンジンの運転状態に基づいて実際のコモンレール圧を目標圧に向けてフィードバック制御する。このため実際のコモンレール圧を検出するためのコモンレール圧センサ10が設けられる。
【0015】
次に、本実施形態の動弁駆動装置について説明する。
【0016】
エンジンのシリンダヘッド11には、エンジンの吸気弁或いは排気弁をなすバルブ12が昇降自在に支持される。バルブ12は全体的に軸状に形成され、その下端部には弁体13が設けられる。バルブ12の閉弁時、バルブ12は弁体13にてシリンダヘッド11のシート部14に着座するようになっている。バルブ12の上端部には、ピストン15が設けられる。シリンダヘッド11の上部には本装置の主要部をなすバルブ駆動アクチュエータ16が設けられ、そのアクチュエータボデイ17がシリンダヘッド11の上端部に固設される。ピストン15はこのアクチュエータボデイ17に昇降自在に支持される。
【0017】
バルブ12の長手方向中間部には鍔部18が設けられ、鍔部18とシリンダヘッド11との間にはバルブ12を閉弁方向(図1中の上側)に付勢するためのバルブスプリング19が圧縮状態で配設される。本実施形態のバルブスプリング19はコイルスプリングからなる。また、アクチュエータボデイ17の下端部には鍔部18を吸引するための磁石20が埋設され、この磁石20によってもバルブ12が閉弁方向に付勢される。本実施形態の磁石20は、バルブ12を囲繞するリング状の永久磁石からなる。なお、図1においては一気筒の一個のバルブのみが示されているが、多気筒或いは複数のバルブについて開閉駆動したい場合は同じ構成を当該バルブに与えればよい。
【0018】
図2及び図3に示すように、本実施形態のピストン15は、アクチュエータボデイ17内に摺動自在に設けられた円筒状の外側ピストン21と、外側ピストン21内に摺動自在に、かつ、バルブ12の上端部に一体的に連結させて設けられた内側ピストン22とからなる二重ピストンである。外側ピストン21はアクチュエータボデイ17内に設けられた外側ピストン挿入孔23に軸シールをなしつつ挿入される。内側ピストン22は少なくともバルブ12の上端の部分であり、内側ピストン挿入孔24をなす外側ピストン21の内周に軸シールをなしつつ挿入される。なお、本実施形態においてはバルブ12と内側ピストン22とを一体的に形成したが、これらを別体として構成しても構わない。
【0019】
外側ピストン21の下端部の外周面は拡径されており、この拡径部25はアクチュエータボデイ17内に設けられた油室26内を外側ピストン21の移動に従い移動するようになっている。外側ピストン21の移動は、その外側ピストン21の下端面が油室26の底面に当接することで規制される。つまり、外側ピストン21の下方への移動は所定範囲内に制限される。この外側ピストン21の最大ストロークは、バルブ12の閉弁時における外側ピストン21の下端面と油室26の底面との間隔L1(図2参照)により決定される。この間隔L1はバルブ12の全ストロークに対してきわめて小さい値に設定されており、例えば1mm程度である。
【0020】
外側ピストン21の内側ピストン挿入孔24の上端部には外側段差部27が設けられると共に、内側ピストン22の上端部には外側段差部27と係合するための内側段差部28が設けられる。バルブ12の開弁初期及び閉弁終期には、外側段差部27と内側段差部28とが係合され、外側ピストン21と内側ピストン22とが同時に移動される。本実施形態においては、外側段差部27及び内側段差部28はテーパ状にそれぞれ形成される。また、外側段差部27と内側段差部28は、それらが係合した状態で、外側ピストン21の上端面29と内側ピストン22の上端面30とが略面一となるように設定される。例えば、外側ピストン21の上端面29の直径は9mm程度であり、内側ピストン22の上端面30の直径は2.7mm程度である。
【0021】
外側ピストン21の内側ピストン挿入孔24の下端部には、軸方向に沿って真直にスリット31が設けられる。スリット31は、周方向に沿って所定間隔を隔てて複数(図3参照、図示例では四本)設けられる。スリット31は、内側ピストン22が最大ストローク近傍に達したときに、外側ピストン21の内側ピストン挿入孔24における内側ピストン22よりも上側の空間(内側ピストン挿入孔24)と連通されるものである。スリット31は、外側段差部27に対して所定間隔L2だけ離間させて設けられている。この間隔L2は、上記の間隔L1に比べて比較的大きい値に設定されており、例えば11mm程度である。
【0022】
ここで、内側ピストン22が最大ストロークに達する直前に、内側ピストン22にかかる流体圧を下げるための流体圧開放手段が設けられる。本実施形態においては、内側ピストン22の内側段差部28及び外側ピストン21のスリット31が流体圧開放手段を主に構成する。
【0023】
アクチュエータボデイ17内には、外側ピストン21の上端面(受圧面)29及び内側ピストン22の上端面(受圧面)30に面した圧力室32が設けられる。圧力室32は、バルブ12を開弁方向にリフトするための作動流体が供給されるもので、主にアクチュエータボデイ17の外側ピストン挿入孔23と外側ピストン21の内側ピストン挿入孔24とから構成される。圧力室32の底面部分は受圧面29、30によって区画形成される。
【0024】
本実施形態の作動流体は、エンジンの燃料と共通の軽油が用いられる。圧力室32に燃料が供給されるとバルブ12が外側ピストン21及び内側ピストン22を介して開弁方向に押され、この押力がバルブスプリング19の付勢力及び永久磁石20の吸引力を上回るとバルブ12が開弁する。一方、圧力室32から燃料が排出されると、バルブ12がバルブスプリング19の付勢力及び永久磁石20の吸引力により閉弁する。つまり、油圧により外側ピストン21及び内側ピストン22を作動させ、その外側ピストン21及び内側ピストン22によりバルブ12を開弁すると共に、圧力室32内の油圧を解除してバルブ12を閉弁する。
【0025】
図1及び図4に示すように、圧力室32の側方(図1中の左側)には、圧力室32への高圧燃料の供給・供給停止を切り換えるための第一作動弁33が設けられる。本実施形態の第一作動弁33は、圧力バランス式制御弁からなる。
【0026】
第一作動弁33は、アクチュエータボデイ17の一側部(図1中の左側)に取り付けられたハウジング34と、このハウジング34内に摺動自在に設けられたニードル状のバランス弁35とを有する。バランス弁35の先端部36は半球状に形成されており、この先端部36が圧力室32側に向けて配置される。バランス弁35の先端部36側(図4中の右側)には供給通路37が、バランス弁35の後端部側(図4中の左側)には弁制御室38がそれぞれ区画形成される。供給通路37と弁制御室38とは、バランス弁35に設けられた連通孔39により連通される。
【0027】
供給通路37は外部の配管71を介して高圧燃料供給源としてのコモンレール2に接続され、供給通路37にはコモンレール圧Pcの高圧燃料が常時供給される。供給通路37はバランス弁35の先端部36側に面して圧力室32に連通されると共に、その途中にバランス弁35の先端部36が線接触或いは面接触される弁シート部40を有する。弁シート部40の上流側(図4中の上側)には供給通路37の入口41(コモンレール2からの高圧燃料の入口)が、弁シート部40の下流側(図4中の右側)には供給通路37の出口42(圧力室32への高圧燃料の入口)が設けられる。
【0028】
弁制御室38には、バランス弁35を閉弁方向(図4中の右側)に付勢するためのバネ43と、このバネ43を保持するための鍔部44を有する軸状のバネ保持部材45とが設けられる。バネ保持部材45の鍔部44には両端部を連通するための連通溝46が設けられている。本実施形態のバネ43はコイルスプリングからなり、バランス弁35とバネ保持部材45の鍔部44との間に圧縮状態で配設される。
【0029】
弁制御室38は、燃料の出口であるオリフィス47を介してリターン通路9に連通される。オリフィス47の側方にはこれを開閉する開閉弁としてのアーマチュア48が移動自在に設けられる。アーマチュア48の側方には、このアーマチュア48を開弁方向(図4中の左側)に移動するための電気アクチュエータとしての電磁ソレノイド49と、アーマチュア48を閉弁方向(図4中の右側)に付勢するためのアーマチュアスプリング50と、このアーマチュアスプリング50を保持するための鍔部51を有する軸状のアーマチュアスプリング保持部材52とが設けられる。アーマチュアスプリング保持部材52は弁制御室38とリターン通路9とを連通する連通孔(図示せず)を有する。本実施形態のアーマチュアスプリング50はコイルスプリングからなり、アーマチュア48とアーマチュアスプリング保持部材52の鍔部51との間に圧縮状態で配設される。電磁ソレノイド49はECU8に接続され、ECU8から与えられる駆動信号によりON/OFF制御される。
【0030】
通常、電磁ソレノイド49がOFFのときは、アーマチュアスプリング50によりアーマチュア48が閉弁方向に押しつけられ、オリフィス47が閉じられる。従って、バネ保持部材45の受圧面をなす背面53及び弁制御室38と、バランス弁35の受圧面をなす正面54とに高圧燃料が作用する。その際、バネ保持部材45の受圧面53の面積がバランス弁35の受圧面54の面積に比べて大きいため、バネ保持部材45がバネ43を介してバランス弁35を弁シート部40へと押しつける。従って、バランス弁35により供給通路37の出口42が閉じられる。
【0031】
一方、図5に示されるように、電磁ソレノイド49がONされると、アーマチュアスプリング50の付勢力に抗じてアーマチュア48が開弁方向に移動され、オリフィス47が開かれる。こうなると、弁制御室38内に供給された高圧燃料の一部がオリフィス47を通じてリターン通路9へと排出される。従って、バネ43の付勢力に抗じてバランス弁35が開弁方向に移動され、供給通路37の出口42が開かれる。これによって、コモンレール2が供給通路37を介して圧力室32に連通されて、高圧燃料がコモンレール2から圧力室32へと瞬時に勢いよく供給される。
【0032】
図1及び図6に示すように、圧力室32の上方(図1中の上側)には、圧力室32への低圧燃料の供給・供給停止及び圧力室32からの高圧燃料の排出を切り換えるための第二作動弁55が設けられる。本実施形態の第二作動弁55は、機械式逆止弁からなる。
【0033】
第二作動弁55は、アクチュエータボデイ17内に設けられた供給通路56を備えている。供給通路56は外部の配管72を介して低圧作動流体供給源としての低圧室57(図1参照)に接続される。低圧室57は、圧力調整弁7の上流側且つ高圧ポンプ6の上流側のフィード通路58(図1参照)に接続され、フィード通路58からフィード圧Pfの低圧燃料を常時導入、貯留している。
【0034】
供給通路56には、有底円筒状のバルブ保持部材59が設けられる。バルブ保持部材59はその底部を圧力室32に向けて配置される。バルブ保持部材59の底部には両端部を連通するオリフィス孔60(図6参照)が設けられる。バルブ保持部材59の底部には、弁体61が昇降自在に設けられる。
【0035】
弁体61は、全体として軸状に形成され、その下端部(図6中の下側)には傘弁部62が形成されると共に、上端部(図6中の上側)には鍔部63が設けられる。傘弁部62の上端部が圧力室32の上端部に形成されたシート部64に対し着座する。
【0036】
バルブ保持部材59内には第一リターンスプリング65が設けられる。本実施形態の第一リターンスプリング65はコイルスプリングからなる。第一リターンスプリング65はセットフォース及びバネ定数が比較的小さく、弁体61の鍔部63とバルブ保持部材59との間に圧縮状態で配設される。これにより、弁体61は閉弁方向(図6中の上側)に常時付勢される。
【0037】
第二作動弁55を強制的に開弁するための電気アクチュエータ(例えば電磁アクチュエータ)66が設けられる。電気アクチュエータ66にはロッド67が軸方向に移動自在に接続され、そのロッド67の先端部には有底円筒状のスプリングシート68がその底部にて取り付けられる。バルブ保持部材59内には第二リターンスプリング69が設けられる。本実施形態の第二リターンスプリング69はコイルスプリングからなる。第二リターンスプリング69はセットフォース及びバネ定数が比較的大きく、スプリングシート68とバルブ保持部材59との間に圧縮状態で配設される。これにより、スプリングシート68は弁体61の閉弁方向に常時付勢される。電気アクチュエータ66はECU8に接続され、ECU8から与えられる駆動信号によりON/OFF制御される。
【0038】
供給通路56には、電気アクチュエータ66内を介して第三作動弁70(図1参照)が接続される。本実施形態の第三作動弁70は機械式逆止弁からなる。第三作動弁70は、入口側が供給通路56に接続され、出口側がフィード通路58に接続される。第三作動弁70は入口側と出口側との圧力差に基づき開弁し、入口側の圧力が出口側の圧力より所定圧力高くなったときのみ開弁する。
【0039】
ここで、第三作動弁70の開弁設定圧は、フィード圧Pfより若干高く、コモンレール圧Pcよりは著しく低い値である。従って、第三作動弁70の入口側に低圧燃料が存在しても第三作動弁70は開弁しないが、第三作動弁70の入口側に高圧燃料が存在すると第三作動弁70は直ちに開弁する。
【0040】
まず、バルブ12を開弁するときには、電気アクチュエータ66をOFFに保持すると共に、バルブ12の開弁初期の所定期間だけ第一作動弁33を開にする。すると、高圧燃料がコモンレール2から第一作動弁33を介して圧力室32へと供給される。この高圧燃料により外側ピストン21の受圧面29及び内側ピストン22の受圧面30が押され、これによりバルブ12には初期エネルギが与えられる。バルブ12はバルブスプリング19の付勢力及び磁石20の吸引力が作用する条件下で慣性運動し下方にリフトされる。このバルブ12の慣性運動の過程で圧力室32の容積が次第に増加して、圧力室32の圧力が供給通路56の圧力(つまり低圧室57の圧力)よりも低くなる。
【0041】
こうなると、図7に示されるように、圧力室32と低圧室57との圧力差に起因して第二作動弁55の弁体61が、第一リターンスプリング65による付勢力に抗じて開弁側に移動され、第二作動弁55が開となる。これにより、低圧室57の低圧燃料が供給通路56を介して圧力室32に導入される。つまり、圧力室32には容積増加分を補うように燃料が補給される。
【0042】
一方、バルブ12を閉弁するときには、第一作動弁33を閉に保持すると共に、電気アクチュエータ66をONにする。すると、図8に示されるように、第二作動弁55の弁体61がスプリングシート68により開弁側に押され、第二作動弁55が強制的に開となる。こうなると、圧力室32の高圧燃料が供給通路56及び電気アクチュエータ66内を経て第三作動弁70の入口側に至り、第三作動弁70を押し開いてフィード通路58に排出される。第三作動弁70の開弁設定圧が高圧燃料の圧力すなわちコモンレール圧Pcより低い値に設定されていることから、第三作動弁70は自ずと開くことになる。これにより、圧力室32の圧力が下がり、バルブ12がバルブスプリング19の付勢力及び磁石20の吸引力により上昇すなわち閉弁方向に移動される。
【0043】
次に、本実施形態の特徴部分であるスリット31の作用を説明する。
【0044】
図9(a)に示されるように、バルブ12を開弁すべく圧力室32に高圧燃料が供給されると、その高圧燃料が外側ピストン21の受圧面29と内側ピストン22の受圧面30とに作用する。従って、開弁初期においては外側ピストン21と内側ピストン22とが同時にリフトされて、これら外側ピストン21及び内側ピストン22によりバルブ12が開弁方向にリフトされる。その際、油室26内に燃料が存在するが、その油圧はコモンレール圧Pcに比べて小さく、例えば1MPa以下程度である。従って、油室26内に燃料が存在しても外側ピストン21はリフトされる。なお、油室26に油室26内の燃料の一部を排出するためのリーク通路を接続して設けても良い。
【0045】
次に、図9(b)に示されるように、外側ピストン21の下端面が油室26の底部に当接するまで外側ピストン21及び内側ピストン22がリフトすると、外側ピストン21のリフトが停止される。その外側ピストン21の停止後、高圧燃料が内側ピストン22の受圧面30に作用し、内側ピストン22のみがリフトされて、その内側ピストン22によりバルブ12がさらに開弁方向にリフトされる。
【0046】
次に、図9(c)に示されるように、内側ピストン22の内側段差部28が外側ピストン21のスリット31上端よりも下方に位置するように内側ピストン22がリフトされると、最大ストローク近傍で圧力室32の一部を構成する内側ピストン挿入孔24がスリット31に対して連通される。こうなると、圧力室32内に供給された高圧燃料の一部がスリット31へと流れようとする。つまり、内側ピストン22に作用する油圧の一部が逃される。従って、内側ピストン22に作用する油圧が下がり、バルブ12を押す力が減少する。このとき、内側ピストン22は高圧燃料供給の初期エネルギによる慣性運動によりリフトされているため、この開弁終期においてはその慣性運動のエネルギは開弁初期に比べて小さいものである。従って、バルブスプリング19の付勢力及び磁石20の吸引力も相まって、内側ピストン22(バルブ12)のリフトが停止される。
【0047】
このように、本実施形態においては、内側ピストン22が挿入される内側ピストン挿入孔24の下端部にスリット31を設け、内側ピストン22が最大ストロークに達する直前に、内側ピストン挿入孔24(圧力室32)とスリット31とが連通するように構成している。これにより、バルブ12の最大ストロークを制御しているため、外側ピストン21、内側ピストン22及びバルブ12の構造をシンプルなままに維持し、それらの組立を容易にすることができる。また、本実施形態においては、バルブ12の最大ストロークを制御するために機械的なストッパを設けていないため、音及び衝撃が発生することはない。
【0048】
一方、図10(a)に示されるように、バルブ12を閉弁すべく圧力室32内の高圧燃料が排出されると、バルブ12がバルブスプリング19の付勢力及び磁石20の吸引力により上昇されて、そのバルブ12の上端部に連結された内側ピストン22が閉弁方向へと移動される。
【0049】
次に、図10(b)に示されるように、内側ピストン22の内側段差部28が外側ピストン21の外側段差部27に係合されるまで内側ピストン22が移動されると、内側ピストン22が外側ピストン21を押すようになる。これにより、外側ピストン21と内側ピストン22とが同時に移動される。
【0050】
次に、図1に示されるようにバルブ12の弁体13がシリンダヘッド11のシート部14に着座すると、図10(c)に示されるように外側ピストン21及び内側ピストン22の移動が停止される。その後、電気アクチュエータ66をOFFにして、第二作動弁55を閉とする。これにより、バルブ12が再び閉弁状態に保持される。
【0051】
ところで、本実施形態のピストン15は外側ピストン21と内側ピストン22とから構成される二重ピストンであり、閉弁初期から所定期間は内側ピストン22のみが移動し、閉弁終期には外側ピストン21と内側ピストン22とが同時に移動するように構成されている。従って、閉弁終期においてピストン15全体としての受圧面積が増加することにより、閉弁速度が減速され、バルブ12の弁体13がシリンダヘッド11のシート部14に着座する際の着座衝撃力を低減することができる。このようにすることで、着座音の低減及びシート部14の摩耗の低減を図ることが可能となる。
【0052】
加えて、本実施形態においては、開弁初期には外側ピストン21と内側ピストン22とが同時に移動し、外側ピストン21が停止した後には内側ピストン22のみが移動するように構成されている。従って、開弁初期においてもピストン15全体としての受圧面積が大きく、開弁速度が上昇し、応答遅れを短縮することができる。その場合開弁初期の受圧面積の増加に伴い高圧燃料供給の初期エネルギを大きくする必要があるが、本実施形態では外側ピストン21のストロークがきわめて小さくなるように制限されているため、初期エネルギの増加は最小限に抑制される。このようにすることで、吸・排気行程における緻密なバルブ12の制御が可能となる。
【0053】
本発明は以上説明した実施形態には限定はされない。
【0054】
例えば、上記の実施形態ではスリット31を軸方向に沿って真直に設けるとしたが、スリット31を軸方向に向けてスパイラル状に設けても良い。
【0055】
また、上記の実施形態ではスリット13を外側ピストン21の下端部に設けるとしたが、外側段差部27に対して離間されていれば良く、スリット31が外側ピストン21の下端部よりも上方に設けられていても良い。
【0056】
また、上記の実施形態ではピストン15を外側ピストン21及び内側ピストン22からなる二重ピストンであるとしたが、ピストン15をバルブ12の上端部に連結させて設けられる単一ピストンとしても良い。その場合、アクチュエータボデイ17内に上記単一ピストンを摺動可能に支持するためのピストン挿入孔を設け、そのピストン挿入孔の下端部にスリット31を設ければ良い。
【0057】
また、図11に示すように、流体圧開放を容易にするために、外側ピストン21の下端面に、外側ピストン21が最大ストロークに達した際にスリット31と油室26とを連通するための溝81を設けると共に、油室26の底面に、外側ピストン21が最大ストロークに達した際にスリット31と油室26とを連通するための溝82を設けても良い。この場合、内側ピストン22の内側段差部28が外側ピストン21のスリット31上端よりも下方に位置するように内側ピストン22がリフトされると、最大ストローク近傍で圧力室32の一部を構成する内側ピストン挿入孔24がスリット31及び溝81、82を介して油室26へと連通される。こうなると、圧力室32内に供給された高圧燃料の一部が油室26へと逃される。なお、外側ピストン21の溝81及び油室26の溝82のうちどちらか一方だけを設けても良い。
【0058】
また、スリット31に代えて、図12に示すように、外側ピストン21に油室26への連通孔83を設けても良い。例えば、連通孔83は外側ピストン21の拡径部25よりも上方に設けられる。連通孔83は、周方向に所定間隔を隔てて複数(例えば、三〜四つ程度)設けられる。この場合、内側ピストン22の内側段差部28が外側ピストン21の連通孔83よりも下方に位置するように内側ピストン22がリフトされると、最大ストローク近傍で圧力室32の一部を構成する内側ピストン挿入孔24が連通孔83を介して油室26へと連通される。こうなると、圧力室32内に供給された高圧燃料の一部が油室26へと逃される。なお、連通孔83を外側ピストン21の拡径部25に設けても良い。
【0059】
また、上記の実施形態では作動流体をエンジンの燃料(軽油)としたが、作動流体が通常のオイル等であっても良い。
【0060】
また、上記の実施形態では高圧燃料をコモンレール圧Pcの燃料とし、低圧燃料をフィード圧Pfの燃料としたが、別途油圧装置により高圧燃料と低圧燃料とを作っても良い。但し、コモンレールディーゼルエンジンの場合は元々高圧燃料と低圧燃料とが作られているので、上記の実施形態のようにそれらを利用する方が構成がシンプル、低コストとなるため望ましい。
【0061】
また、上記の実施形態ではバルブ12を閉弁方向に付勢するためにバルブスプリング19及び磁石20を併用したが、バルブスプリング19のみ、或いは、磁石20のみを単独で使用しても良い。
【0062】
さらに、本発明の動弁駆動装置が適用されるエンジンはコモンレールディーゼルエンジンに限らず、通常の噴射ポンプ式ディーゼルエンジン或いはガソリンエンジン等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る動弁駆動装置の全体図である。
【図2】ピストンの断面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】第一作動弁の要部断面図で、電磁ソレノイドがOFFの状態である。
【図5】第一作動弁の要部断面図で、高圧供給状態である。
【図6】第二作動弁の要部断面図で、電気アクチュエータがOFFの状態である。
【図7】第二作動弁の要部断面図で、低圧供給状態である。
【図8】第二作動弁の要部断面図で、高圧排出状態である。
【図9】(a)〜(c)は、バルブの開弁時におけるピストンの作動状態を示す概略図である。
【図10】(a)〜(c)は、バルブの閉弁時におけるピストンの作動状態を示す概略図である。
【図11】ピストンの変形例を示す概略図である。
【図12】ピストンの変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0064】
12 バルブ
15 ピストン
17 アクチュエータボデイ
21 外側ピストン
22 内側ピストン
28 内側段差部(流体圧開放手段)
31 スリット(流体圧開放手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気弁或いは排気弁をなすバルブを開閉駆動するための装置に係り、特に、カム機構を有さず、流体圧を利用してバルブを開閉駆動する内燃機関の動弁駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン制御の自由度を高めるため、カム機構によるバルブの開閉駆動を廃止し、これに代わって電磁駆動或いは流体圧駆動とする、所謂カムレス方式の動弁駆動装置が有望視されている。例えば、特許文献1等にはこのようなカムレス方式の動弁駆動装置が開示されている。当該装置では、バルブにピストンを連結すると共に、バルブのバルブスプリングに逆らって必要量だけリフトさせるだけの高圧の流体圧を作り、その流体圧をピストンに作用させ、そのピストンを介してバルブを開弁駆動している。従って、流体圧の供給時期や大きさを制御することにより、バルブの開閉タイミングやリフト量を自由に設定することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−328713号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上記装置では、バルブの最大ストロークを制限するために、ピストン或いはバルブに機械的なストッパが設けられていた。しかしながら、ピストン或いはバルブに機械的なストッパを設けると、ピストン或いはバルブの形状が複雑となり、製造コストが増大すると共に組立性が低下するという問題があった。また、機械的なストッパによると、バルブが最大ストロークに達したときに、音及び衝撃が発生するという問題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、製造コストの増大或いは組立性の低下を招くことがないと共に、機械的なストッパによることなく、バルブの最大ストロークを確実に制限することができる内燃機関の動弁駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、流体圧によりピストンを作動させ、そのピストンにより吸・排気弁等のバルブをリフトさせて、そのバルブを開弁すると共に、流体圧を解除して上記バルブを閉弁する内燃機関の動弁駆動装置において、上記ピストンに流体圧を作用させて、そのピストンが最大ストロークに達する直前に、上記ピストンにかかる流体圧を下げるための流体圧開放手段を備えたものである。
【0007】
ここで、上記ピストンが、アクチュエータボデイ内に摺動自在に、かつ、ストロークが規制されて設けられた筒状の外側ピストンと、該外側ピストン内に摺動自在に、かつ、上記バルブに連結させて設けられた内側ピストンとからなり、上記バルブの開弁時には上記外側ピストン及び上記内側ピストンに流体圧を作用させて、それら外側ピストンと内側ピストンとを同時にリフトさせ、上記外側ピストンの停止後には上記内側ピストンのみに流体圧を作用させて、その内側ピストンが最大ストローク近傍に達したときに、上記流体圧開放手段が上記内側ピストンに作用する流体圧を逃がすものであっても良い。
【0008】
また、上記流体圧開放手段が、上記外側ピストンの内周面に設けられ、上記内側ピストンが最大ストローク近傍に達したときに、上記外側ピストン内における上記内側ピストンよりも上側の空間と連通するスリットを有しても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造コストの増大或いは組立性の低下を招くことがないと共に、機械的なストッパによることなく、バルブの最大ストロークを確実に制限することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る動弁駆動装置の全体図である。本実施形態の動弁駆動装置は、車両用等の多気筒コモンレールディーゼルエンジンに適用したものである。
【0012】
まず、コモンレール式燃料噴射装置について説明する。
【0013】
エンジン(内燃機関)の各気筒毎に燃料噴射を実行するインジェクタ1が設けられる。このインジェクタ1には、コモンレール2に貯留されたコモンレール圧Pc(例えば数10〜数100MPa程度)の高圧燃料が常時供給されている。燃料タンク3の燃料は燃料フィルタ4を通じてフィードポンプ5によって吸引された後、高圧ポンプ6に送られる。コモンレール2への燃料圧送は、この高圧ポンプ6によって行われる。フィードポンプ5のフィード圧Pfは、リリーフ弁からなる圧力調整弁7によって調整され、一定に保たれる。フィード圧Pfは常圧よりは大きい(つまり燃料は加圧された状態にある)が、コモンレール圧Pcよりは著しく小さい値で、例えば0.5MPa程度である。
【0014】
図示する装置全体を総括的に制御する制御装置としての電子制御ユニット(以下ECUという)8が設けられる。このECU8には、エンジンの運転状態(エンジンのクランク角、回転速度、エンジン負荷等)を検出するセンサ(図示せず)が接続される。ECU8は、これらセンサの検出信号に基づいてエンジンの運転状態を把握すると共に、その運転状態に基づいた駆動信号をインジェクタ1の電磁ソレノイドに送ってインジェクタ1を開閉制御する。電磁ソレノイドのON/OFFに応じて燃料噴射が実行・停止される。燃料噴射停止時にはインジェクタ1から常圧程度の燃料がリターン通路9を通じて燃料タンク3に戻される。ECU8は、エンジンの運転状態に基づいて実際のコモンレール圧を目標圧に向けてフィードバック制御する。このため実際のコモンレール圧を検出するためのコモンレール圧センサ10が設けられる。
【0015】
次に、本実施形態の動弁駆動装置について説明する。
【0016】
エンジンのシリンダヘッド11には、エンジンの吸気弁或いは排気弁をなすバルブ12が昇降自在に支持される。バルブ12は全体的に軸状に形成され、その下端部には弁体13が設けられる。バルブ12の閉弁時、バルブ12は弁体13にてシリンダヘッド11のシート部14に着座するようになっている。バルブ12の上端部には、ピストン15が設けられる。シリンダヘッド11の上部には本装置の主要部をなすバルブ駆動アクチュエータ16が設けられ、そのアクチュエータボデイ17がシリンダヘッド11の上端部に固設される。ピストン15はこのアクチュエータボデイ17に昇降自在に支持される。
【0017】
バルブ12の長手方向中間部には鍔部18が設けられ、鍔部18とシリンダヘッド11との間にはバルブ12を閉弁方向(図1中の上側)に付勢するためのバルブスプリング19が圧縮状態で配設される。本実施形態のバルブスプリング19はコイルスプリングからなる。また、アクチュエータボデイ17の下端部には鍔部18を吸引するための磁石20が埋設され、この磁石20によってもバルブ12が閉弁方向に付勢される。本実施形態の磁石20は、バルブ12を囲繞するリング状の永久磁石からなる。なお、図1においては一気筒の一個のバルブのみが示されているが、多気筒或いは複数のバルブについて開閉駆動したい場合は同じ構成を当該バルブに与えればよい。
【0018】
図2及び図3に示すように、本実施形態のピストン15は、アクチュエータボデイ17内に摺動自在に設けられた円筒状の外側ピストン21と、外側ピストン21内に摺動自在に、かつ、バルブ12の上端部に一体的に連結させて設けられた内側ピストン22とからなる二重ピストンである。外側ピストン21はアクチュエータボデイ17内に設けられた外側ピストン挿入孔23に軸シールをなしつつ挿入される。内側ピストン22は少なくともバルブ12の上端の部分であり、内側ピストン挿入孔24をなす外側ピストン21の内周に軸シールをなしつつ挿入される。なお、本実施形態においてはバルブ12と内側ピストン22とを一体的に形成したが、これらを別体として構成しても構わない。
【0019】
外側ピストン21の下端部の外周面は拡径されており、この拡径部25はアクチュエータボデイ17内に設けられた油室26内を外側ピストン21の移動に従い移動するようになっている。外側ピストン21の移動は、その外側ピストン21の下端面が油室26の底面に当接することで規制される。つまり、外側ピストン21の下方への移動は所定範囲内に制限される。この外側ピストン21の最大ストロークは、バルブ12の閉弁時における外側ピストン21の下端面と油室26の底面との間隔L1(図2参照)により決定される。この間隔L1はバルブ12の全ストロークに対してきわめて小さい値に設定されており、例えば1mm程度である。
【0020】
外側ピストン21の内側ピストン挿入孔24の上端部には外側段差部27が設けられると共に、内側ピストン22の上端部には外側段差部27と係合するための内側段差部28が設けられる。バルブ12の開弁初期及び閉弁終期には、外側段差部27と内側段差部28とが係合され、外側ピストン21と内側ピストン22とが同時に移動される。本実施形態においては、外側段差部27及び内側段差部28はテーパ状にそれぞれ形成される。また、外側段差部27と内側段差部28は、それらが係合した状態で、外側ピストン21の上端面29と内側ピストン22の上端面30とが略面一となるように設定される。例えば、外側ピストン21の上端面29の直径は9mm程度であり、内側ピストン22の上端面30の直径は2.7mm程度である。
【0021】
外側ピストン21の内側ピストン挿入孔24の下端部には、軸方向に沿って真直にスリット31が設けられる。スリット31は、周方向に沿って所定間隔を隔てて複数(図3参照、図示例では四本)設けられる。スリット31は、内側ピストン22が最大ストローク近傍に達したときに、外側ピストン21の内側ピストン挿入孔24における内側ピストン22よりも上側の空間(内側ピストン挿入孔24)と連通されるものである。スリット31は、外側段差部27に対して所定間隔L2だけ離間させて設けられている。この間隔L2は、上記の間隔L1に比べて比較的大きい値に設定されており、例えば11mm程度である。
【0022】
ここで、内側ピストン22が最大ストロークに達する直前に、内側ピストン22にかかる流体圧を下げるための流体圧開放手段が設けられる。本実施形態においては、内側ピストン22の内側段差部28及び外側ピストン21のスリット31が流体圧開放手段を主に構成する。
【0023】
アクチュエータボデイ17内には、外側ピストン21の上端面(受圧面)29及び内側ピストン22の上端面(受圧面)30に面した圧力室32が設けられる。圧力室32は、バルブ12を開弁方向にリフトするための作動流体が供給されるもので、主にアクチュエータボデイ17の外側ピストン挿入孔23と外側ピストン21の内側ピストン挿入孔24とから構成される。圧力室32の底面部分は受圧面29、30によって区画形成される。
【0024】
本実施形態の作動流体は、エンジンの燃料と共通の軽油が用いられる。圧力室32に燃料が供給されるとバルブ12が外側ピストン21及び内側ピストン22を介して開弁方向に押され、この押力がバルブスプリング19の付勢力及び永久磁石20の吸引力を上回るとバルブ12が開弁する。一方、圧力室32から燃料が排出されると、バルブ12がバルブスプリング19の付勢力及び永久磁石20の吸引力により閉弁する。つまり、油圧により外側ピストン21及び内側ピストン22を作動させ、その外側ピストン21及び内側ピストン22によりバルブ12を開弁すると共に、圧力室32内の油圧を解除してバルブ12を閉弁する。
【0025】
図1及び図4に示すように、圧力室32の側方(図1中の左側)には、圧力室32への高圧燃料の供給・供給停止を切り換えるための第一作動弁33が設けられる。本実施形態の第一作動弁33は、圧力バランス式制御弁からなる。
【0026】
第一作動弁33は、アクチュエータボデイ17の一側部(図1中の左側)に取り付けられたハウジング34と、このハウジング34内に摺動自在に設けられたニードル状のバランス弁35とを有する。バランス弁35の先端部36は半球状に形成されており、この先端部36が圧力室32側に向けて配置される。バランス弁35の先端部36側(図4中の右側)には供給通路37が、バランス弁35の後端部側(図4中の左側)には弁制御室38がそれぞれ区画形成される。供給通路37と弁制御室38とは、バランス弁35に設けられた連通孔39により連通される。
【0027】
供給通路37は外部の配管71を介して高圧燃料供給源としてのコモンレール2に接続され、供給通路37にはコモンレール圧Pcの高圧燃料が常時供給される。供給通路37はバランス弁35の先端部36側に面して圧力室32に連通されると共に、その途中にバランス弁35の先端部36が線接触或いは面接触される弁シート部40を有する。弁シート部40の上流側(図4中の上側)には供給通路37の入口41(コモンレール2からの高圧燃料の入口)が、弁シート部40の下流側(図4中の右側)には供給通路37の出口42(圧力室32への高圧燃料の入口)が設けられる。
【0028】
弁制御室38には、バランス弁35を閉弁方向(図4中の右側)に付勢するためのバネ43と、このバネ43を保持するための鍔部44を有する軸状のバネ保持部材45とが設けられる。バネ保持部材45の鍔部44には両端部を連通するための連通溝46が設けられている。本実施形態のバネ43はコイルスプリングからなり、バランス弁35とバネ保持部材45の鍔部44との間に圧縮状態で配設される。
【0029】
弁制御室38は、燃料の出口であるオリフィス47を介してリターン通路9に連通される。オリフィス47の側方にはこれを開閉する開閉弁としてのアーマチュア48が移動自在に設けられる。アーマチュア48の側方には、このアーマチュア48を開弁方向(図4中の左側)に移動するための電気アクチュエータとしての電磁ソレノイド49と、アーマチュア48を閉弁方向(図4中の右側)に付勢するためのアーマチュアスプリング50と、このアーマチュアスプリング50を保持するための鍔部51を有する軸状のアーマチュアスプリング保持部材52とが設けられる。アーマチュアスプリング保持部材52は弁制御室38とリターン通路9とを連通する連通孔(図示せず)を有する。本実施形態のアーマチュアスプリング50はコイルスプリングからなり、アーマチュア48とアーマチュアスプリング保持部材52の鍔部51との間に圧縮状態で配設される。電磁ソレノイド49はECU8に接続され、ECU8から与えられる駆動信号によりON/OFF制御される。
【0030】
通常、電磁ソレノイド49がOFFのときは、アーマチュアスプリング50によりアーマチュア48が閉弁方向に押しつけられ、オリフィス47が閉じられる。従って、バネ保持部材45の受圧面をなす背面53及び弁制御室38と、バランス弁35の受圧面をなす正面54とに高圧燃料が作用する。その際、バネ保持部材45の受圧面53の面積がバランス弁35の受圧面54の面積に比べて大きいため、バネ保持部材45がバネ43を介してバランス弁35を弁シート部40へと押しつける。従って、バランス弁35により供給通路37の出口42が閉じられる。
【0031】
一方、図5に示されるように、電磁ソレノイド49がONされると、アーマチュアスプリング50の付勢力に抗じてアーマチュア48が開弁方向に移動され、オリフィス47が開かれる。こうなると、弁制御室38内に供給された高圧燃料の一部がオリフィス47を通じてリターン通路9へと排出される。従って、バネ43の付勢力に抗じてバランス弁35が開弁方向に移動され、供給通路37の出口42が開かれる。これによって、コモンレール2が供給通路37を介して圧力室32に連通されて、高圧燃料がコモンレール2から圧力室32へと瞬時に勢いよく供給される。
【0032】
図1及び図6に示すように、圧力室32の上方(図1中の上側)には、圧力室32への低圧燃料の供給・供給停止及び圧力室32からの高圧燃料の排出を切り換えるための第二作動弁55が設けられる。本実施形態の第二作動弁55は、機械式逆止弁からなる。
【0033】
第二作動弁55は、アクチュエータボデイ17内に設けられた供給通路56を備えている。供給通路56は外部の配管72を介して低圧作動流体供給源としての低圧室57(図1参照)に接続される。低圧室57は、圧力調整弁7の上流側且つ高圧ポンプ6の上流側のフィード通路58(図1参照)に接続され、フィード通路58からフィード圧Pfの低圧燃料を常時導入、貯留している。
【0034】
供給通路56には、有底円筒状のバルブ保持部材59が設けられる。バルブ保持部材59はその底部を圧力室32に向けて配置される。バルブ保持部材59の底部には両端部を連通するオリフィス孔60(図6参照)が設けられる。バルブ保持部材59の底部には、弁体61が昇降自在に設けられる。
【0035】
弁体61は、全体として軸状に形成され、その下端部(図6中の下側)には傘弁部62が形成されると共に、上端部(図6中の上側)には鍔部63が設けられる。傘弁部62の上端部が圧力室32の上端部に形成されたシート部64に対し着座する。
【0036】
バルブ保持部材59内には第一リターンスプリング65が設けられる。本実施形態の第一リターンスプリング65はコイルスプリングからなる。第一リターンスプリング65はセットフォース及びバネ定数が比較的小さく、弁体61の鍔部63とバルブ保持部材59との間に圧縮状態で配設される。これにより、弁体61は閉弁方向(図6中の上側)に常時付勢される。
【0037】
第二作動弁55を強制的に開弁するための電気アクチュエータ(例えば電磁アクチュエータ)66が設けられる。電気アクチュエータ66にはロッド67が軸方向に移動自在に接続され、そのロッド67の先端部には有底円筒状のスプリングシート68がその底部にて取り付けられる。バルブ保持部材59内には第二リターンスプリング69が設けられる。本実施形態の第二リターンスプリング69はコイルスプリングからなる。第二リターンスプリング69はセットフォース及びバネ定数が比較的大きく、スプリングシート68とバルブ保持部材59との間に圧縮状態で配設される。これにより、スプリングシート68は弁体61の閉弁方向に常時付勢される。電気アクチュエータ66はECU8に接続され、ECU8から与えられる駆動信号によりON/OFF制御される。
【0038】
供給通路56には、電気アクチュエータ66内を介して第三作動弁70(図1参照)が接続される。本実施形態の第三作動弁70は機械式逆止弁からなる。第三作動弁70は、入口側が供給通路56に接続され、出口側がフィード通路58に接続される。第三作動弁70は入口側と出口側との圧力差に基づき開弁し、入口側の圧力が出口側の圧力より所定圧力高くなったときのみ開弁する。
【0039】
ここで、第三作動弁70の開弁設定圧は、フィード圧Pfより若干高く、コモンレール圧Pcよりは著しく低い値である。従って、第三作動弁70の入口側に低圧燃料が存在しても第三作動弁70は開弁しないが、第三作動弁70の入口側に高圧燃料が存在すると第三作動弁70は直ちに開弁する。
【0040】
まず、バルブ12を開弁するときには、電気アクチュエータ66をOFFに保持すると共に、バルブ12の開弁初期の所定期間だけ第一作動弁33を開にする。すると、高圧燃料がコモンレール2から第一作動弁33を介して圧力室32へと供給される。この高圧燃料により外側ピストン21の受圧面29及び内側ピストン22の受圧面30が押され、これによりバルブ12には初期エネルギが与えられる。バルブ12はバルブスプリング19の付勢力及び磁石20の吸引力が作用する条件下で慣性運動し下方にリフトされる。このバルブ12の慣性運動の過程で圧力室32の容積が次第に増加して、圧力室32の圧力が供給通路56の圧力(つまり低圧室57の圧力)よりも低くなる。
【0041】
こうなると、図7に示されるように、圧力室32と低圧室57との圧力差に起因して第二作動弁55の弁体61が、第一リターンスプリング65による付勢力に抗じて開弁側に移動され、第二作動弁55が開となる。これにより、低圧室57の低圧燃料が供給通路56を介して圧力室32に導入される。つまり、圧力室32には容積増加分を補うように燃料が補給される。
【0042】
一方、バルブ12を閉弁するときには、第一作動弁33を閉に保持すると共に、電気アクチュエータ66をONにする。すると、図8に示されるように、第二作動弁55の弁体61がスプリングシート68により開弁側に押され、第二作動弁55が強制的に開となる。こうなると、圧力室32の高圧燃料が供給通路56及び電気アクチュエータ66内を経て第三作動弁70の入口側に至り、第三作動弁70を押し開いてフィード通路58に排出される。第三作動弁70の開弁設定圧が高圧燃料の圧力すなわちコモンレール圧Pcより低い値に設定されていることから、第三作動弁70は自ずと開くことになる。これにより、圧力室32の圧力が下がり、バルブ12がバルブスプリング19の付勢力及び磁石20の吸引力により上昇すなわち閉弁方向に移動される。
【0043】
次に、本実施形態の特徴部分であるスリット31の作用を説明する。
【0044】
図9(a)に示されるように、バルブ12を開弁すべく圧力室32に高圧燃料が供給されると、その高圧燃料が外側ピストン21の受圧面29と内側ピストン22の受圧面30とに作用する。従って、開弁初期においては外側ピストン21と内側ピストン22とが同時にリフトされて、これら外側ピストン21及び内側ピストン22によりバルブ12が開弁方向にリフトされる。その際、油室26内に燃料が存在するが、その油圧はコモンレール圧Pcに比べて小さく、例えば1MPa以下程度である。従って、油室26内に燃料が存在しても外側ピストン21はリフトされる。なお、油室26に油室26内の燃料の一部を排出するためのリーク通路を接続して設けても良い。
【0045】
次に、図9(b)に示されるように、外側ピストン21の下端面が油室26の底部に当接するまで外側ピストン21及び内側ピストン22がリフトすると、外側ピストン21のリフトが停止される。その外側ピストン21の停止後、高圧燃料が内側ピストン22の受圧面30に作用し、内側ピストン22のみがリフトされて、その内側ピストン22によりバルブ12がさらに開弁方向にリフトされる。
【0046】
次に、図9(c)に示されるように、内側ピストン22の内側段差部28が外側ピストン21のスリット31上端よりも下方に位置するように内側ピストン22がリフトされると、最大ストローク近傍で圧力室32の一部を構成する内側ピストン挿入孔24がスリット31に対して連通される。こうなると、圧力室32内に供給された高圧燃料の一部がスリット31へと流れようとする。つまり、内側ピストン22に作用する油圧の一部が逃される。従って、内側ピストン22に作用する油圧が下がり、バルブ12を押す力が減少する。このとき、内側ピストン22は高圧燃料供給の初期エネルギによる慣性運動によりリフトされているため、この開弁終期においてはその慣性運動のエネルギは開弁初期に比べて小さいものである。従って、バルブスプリング19の付勢力及び磁石20の吸引力も相まって、内側ピストン22(バルブ12)のリフトが停止される。
【0047】
このように、本実施形態においては、内側ピストン22が挿入される内側ピストン挿入孔24の下端部にスリット31を設け、内側ピストン22が最大ストロークに達する直前に、内側ピストン挿入孔24(圧力室32)とスリット31とが連通するように構成している。これにより、バルブ12の最大ストロークを制御しているため、外側ピストン21、内側ピストン22及びバルブ12の構造をシンプルなままに維持し、それらの組立を容易にすることができる。また、本実施形態においては、バルブ12の最大ストロークを制御するために機械的なストッパを設けていないため、音及び衝撃が発生することはない。
【0048】
一方、図10(a)に示されるように、バルブ12を閉弁すべく圧力室32内の高圧燃料が排出されると、バルブ12がバルブスプリング19の付勢力及び磁石20の吸引力により上昇されて、そのバルブ12の上端部に連結された内側ピストン22が閉弁方向へと移動される。
【0049】
次に、図10(b)に示されるように、内側ピストン22の内側段差部28が外側ピストン21の外側段差部27に係合されるまで内側ピストン22が移動されると、内側ピストン22が外側ピストン21を押すようになる。これにより、外側ピストン21と内側ピストン22とが同時に移動される。
【0050】
次に、図1に示されるようにバルブ12の弁体13がシリンダヘッド11のシート部14に着座すると、図10(c)に示されるように外側ピストン21及び内側ピストン22の移動が停止される。その後、電気アクチュエータ66をOFFにして、第二作動弁55を閉とする。これにより、バルブ12が再び閉弁状態に保持される。
【0051】
ところで、本実施形態のピストン15は外側ピストン21と内側ピストン22とから構成される二重ピストンであり、閉弁初期から所定期間は内側ピストン22のみが移動し、閉弁終期には外側ピストン21と内側ピストン22とが同時に移動するように構成されている。従って、閉弁終期においてピストン15全体としての受圧面積が増加することにより、閉弁速度が減速され、バルブ12の弁体13がシリンダヘッド11のシート部14に着座する際の着座衝撃力を低減することができる。このようにすることで、着座音の低減及びシート部14の摩耗の低減を図ることが可能となる。
【0052】
加えて、本実施形態においては、開弁初期には外側ピストン21と内側ピストン22とが同時に移動し、外側ピストン21が停止した後には内側ピストン22のみが移動するように構成されている。従って、開弁初期においてもピストン15全体としての受圧面積が大きく、開弁速度が上昇し、応答遅れを短縮することができる。その場合開弁初期の受圧面積の増加に伴い高圧燃料供給の初期エネルギを大きくする必要があるが、本実施形態では外側ピストン21のストロークがきわめて小さくなるように制限されているため、初期エネルギの増加は最小限に抑制される。このようにすることで、吸・排気行程における緻密なバルブ12の制御が可能となる。
【0053】
本発明は以上説明した実施形態には限定はされない。
【0054】
例えば、上記の実施形態ではスリット31を軸方向に沿って真直に設けるとしたが、スリット31を軸方向に向けてスパイラル状に設けても良い。
【0055】
また、上記の実施形態ではスリット13を外側ピストン21の下端部に設けるとしたが、外側段差部27に対して離間されていれば良く、スリット31が外側ピストン21の下端部よりも上方に設けられていても良い。
【0056】
また、上記の実施形態ではピストン15を外側ピストン21及び内側ピストン22からなる二重ピストンであるとしたが、ピストン15をバルブ12の上端部に連結させて設けられる単一ピストンとしても良い。その場合、アクチュエータボデイ17内に上記単一ピストンを摺動可能に支持するためのピストン挿入孔を設け、そのピストン挿入孔の下端部にスリット31を設ければ良い。
【0057】
また、図11に示すように、流体圧開放を容易にするために、外側ピストン21の下端面に、外側ピストン21が最大ストロークに達した際にスリット31と油室26とを連通するための溝81を設けると共に、油室26の底面に、外側ピストン21が最大ストロークに達した際にスリット31と油室26とを連通するための溝82を設けても良い。この場合、内側ピストン22の内側段差部28が外側ピストン21のスリット31上端よりも下方に位置するように内側ピストン22がリフトされると、最大ストローク近傍で圧力室32の一部を構成する内側ピストン挿入孔24がスリット31及び溝81、82を介して油室26へと連通される。こうなると、圧力室32内に供給された高圧燃料の一部が油室26へと逃される。なお、外側ピストン21の溝81及び油室26の溝82のうちどちらか一方だけを設けても良い。
【0058】
また、スリット31に代えて、図12に示すように、外側ピストン21に油室26への連通孔83を設けても良い。例えば、連通孔83は外側ピストン21の拡径部25よりも上方に設けられる。連通孔83は、周方向に所定間隔を隔てて複数(例えば、三〜四つ程度)設けられる。この場合、内側ピストン22の内側段差部28が外側ピストン21の連通孔83よりも下方に位置するように内側ピストン22がリフトされると、最大ストローク近傍で圧力室32の一部を構成する内側ピストン挿入孔24が連通孔83を介して油室26へと連通される。こうなると、圧力室32内に供給された高圧燃料の一部が油室26へと逃される。なお、連通孔83を外側ピストン21の拡径部25に設けても良い。
【0059】
また、上記の実施形態では作動流体をエンジンの燃料(軽油)としたが、作動流体が通常のオイル等であっても良い。
【0060】
また、上記の実施形態では高圧燃料をコモンレール圧Pcの燃料とし、低圧燃料をフィード圧Pfの燃料としたが、別途油圧装置により高圧燃料と低圧燃料とを作っても良い。但し、コモンレールディーゼルエンジンの場合は元々高圧燃料と低圧燃料とが作られているので、上記の実施形態のようにそれらを利用する方が構成がシンプル、低コストとなるため望ましい。
【0061】
また、上記の実施形態ではバルブ12を閉弁方向に付勢するためにバルブスプリング19及び磁石20を併用したが、バルブスプリング19のみ、或いは、磁石20のみを単独で使用しても良い。
【0062】
さらに、本発明の動弁駆動装置が適用されるエンジンはコモンレールディーゼルエンジンに限らず、通常の噴射ポンプ式ディーゼルエンジン或いはガソリンエンジン等であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の一実施形態に係る動弁駆動装置の全体図である。
【図2】ピストンの断面図である。
【図3】図2のIII−III線矢視断面図である。
【図4】第一作動弁の要部断面図で、電磁ソレノイドがOFFの状態である。
【図5】第一作動弁の要部断面図で、高圧供給状態である。
【図6】第二作動弁の要部断面図で、電気アクチュエータがOFFの状態である。
【図7】第二作動弁の要部断面図で、低圧供給状態である。
【図8】第二作動弁の要部断面図で、高圧排出状態である。
【図9】(a)〜(c)は、バルブの開弁時におけるピストンの作動状態を示す概略図である。
【図10】(a)〜(c)は、バルブの閉弁時におけるピストンの作動状態を示す概略図である。
【図11】ピストンの変形例を示す概略図である。
【図12】ピストンの変形例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0064】
12 バルブ
15 ピストン
17 アクチュエータボデイ
21 外側ピストン
22 内側ピストン
28 内側段差部(流体圧開放手段)
31 スリット(流体圧開放手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体圧によりピストンを作動させ、そのピストンにより吸・排気弁等のバルブをリフトさせて、そのバルブを開弁すると共に、流体圧を解除して上記バルブを閉弁する内燃機関の動弁駆動装置において、上記ピストンに流体圧を作用させて、そのピストンが最大ストロークに達する直前に、上記ピストンにかかる流体圧を下げるための流体圧開放手段を備えたことを特徴とする内燃機関の動弁駆動装置。
【請求項2】
上記ピストンが、アクチュエータボデイ内に摺動自在に、かつ、ストロークが規制されて設けられた筒状の外側ピストンと、該外側ピストン内に摺動自在に、かつ、上記バルブに連結させて設けられた内側ピストンとからなり、上記バルブの開弁時には上記外側ピストン及び上記内側ピストンに流体圧を作用させて、それら外側ピストンと内側ピストンとを同時にリフトさせ、上記外側ピストンの停止後には上記内側ピストンのみに流体圧を作用させて、その内側ピストンが最大ストローク近傍に達したときに、上記流体圧開放手段が上記内側ピストンに作用する流体圧を逃がすものである請求項1記載の内燃機関の動弁駆動装置。
【請求項3】
上記流体圧開放手段が、上記外側ピストンの内周面に設けられ、上記内側ピストンが最大ストローク近傍に達したときに、上記外側ピストン内における上記内側ピストンよりも上側の空間と連通するスリットを有する請求項2記載の内燃機関の動弁駆動装置。
【請求項1】
流体圧によりピストンを作動させ、そのピストンにより吸・排気弁等のバルブをリフトさせて、そのバルブを開弁すると共に、流体圧を解除して上記バルブを閉弁する内燃機関の動弁駆動装置において、上記ピストンに流体圧を作用させて、そのピストンが最大ストロークに達する直前に、上記ピストンにかかる流体圧を下げるための流体圧開放手段を備えたことを特徴とする内燃機関の動弁駆動装置。
【請求項2】
上記ピストンが、アクチュエータボデイ内に摺動自在に、かつ、ストロークが規制されて設けられた筒状の外側ピストンと、該外側ピストン内に摺動自在に、かつ、上記バルブに連結させて設けられた内側ピストンとからなり、上記バルブの開弁時には上記外側ピストン及び上記内側ピストンに流体圧を作用させて、それら外側ピストンと内側ピストンとを同時にリフトさせ、上記外側ピストンの停止後には上記内側ピストンのみに流体圧を作用させて、その内側ピストンが最大ストローク近傍に達したときに、上記流体圧開放手段が上記内側ピストンに作用する流体圧を逃がすものである請求項1記載の内燃機関の動弁駆動装置。
【請求項3】
上記流体圧開放手段が、上記外側ピストンの内周面に設けられ、上記内側ピストンが最大ストローク近傍に達したときに、上記外側ピストン内における上記内側ピストンよりも上側の空間と連通するスリットを有する請求項2記載の内燃機関の動弁駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−152872(P2006−152872A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342466(P2004−342466)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】
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