説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】触媒等の排気浄化手段の硫黄被毒再生時に発生する硫化水素をオゾンで酸化分解する場合に、その酸化分解に用いられて余剰となったオゾンを分解処理する。
【解決手段】本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関10の排気通路15に設けられ、燃焼室13から排出された排気ガスを浄化する排気浄化手段20と、排気浄化手段20よりも下流側の位置における排気通路15にオゾンを供給可能なオゾン供給手段40,41と、そのオゾン供給位置よりも下流側の位置における排気通路15に設けられたオゾン分解触媒30とを備える。排気浄化手段20の硫黄被毒再生時に排気浄化手段20から排出された硫化水素をオゾンにより酸化分解する際、余剰のオゾンをオゾン分解触媒30により分解処理することができる。よってさらに下流側へのオゾンの排出を防止し、排気管及びマフラー等の腐食を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃機関の排気浄化装置に係り、特に、排気ガスを浄化する触媒等の排気浄化手段を備えた内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、希薄(リーン)燃焼型の内燃機関の排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を浄化するべくNOx触媒が実用化されている。NOx触媒は、例えば吸蔵還元型NOx触媒の場合、例えばアルミナを担体としてバリウム(Ba)などのアルカリ土類と白金(Pt)のような貴金属とが担持されたものであり、排気ガス中のNOxは硝酸塩(Ba(NO)の形でNOx触媒に吸蔵される。そして、NOx触媒は内燃機関がリーン空燃比にて運転中であるときにはその排気ガス中のNOxを吸蔵する一方、内燃機関の排気空燃比が理論空燃比以下のリッチ空燃比で運転されるときにはその吸蔵したNOxを放出し還元する機能を有している。
【0003】
ところが、燃料および機関の潤滑油内には硫黄(S)が含まれているので、排気ガス中にも硫黄が含まれる。このため、NOx触媒は排ガス中の硫黄成分をBaSOなどの硫酸塩として吸蔵してしまい、硫黄成分により被毒(S被毒)される性質を有する。NOx触媒に吸蔵された硫酸塩は硝酸塩に比べて安定性が高いため、排気空燃比を燃料リッチにしてもNOx触媒から放出されず、NOx触媒に次第に蓄積される。そして、NOx触媒内の硫酸塩の量が増大するとNOx触媒が吸収しうるNOxの量が次第に低下し、NOx触媒のNOx吸蔵能力が低下するという問題を生ずる。
【0004】
そこで、硫黄被毒されたNOx触媒の温度を高めるとともにNOx触媒を還元雰囲気下におくことにより、吸蔵された硫酸塩を硫黄酸化物(SOx)に分解してNOx触媒から離脱させ、NOxの吸蔵能力を回復或いは再生させることが知られている。しかし、S被毒したNOx触媒を再生する際には、例えば下記の化学反応式により脱離したSOxが排ガス中の水素(H)と反応し、硫化水素(HS)が一時的に多量に生成される。
BaSO+CO→BaCO+SO
SO+H→HS+O
【0005】
このような硫化水素は強い臭気を発生させる性質があり、大気中に放出されると、例えば内燃機関が搭載された車両の周囲で異臭を放つため、好ましいものではない。
【0006】
そこで、このような硫化水素による異臭を防止するための対策が種々提案されている。例えば、特許文献1には、硫化水素の発生を抑制するような特定成分を添加した触媒が開示されており、特許文献2には、吸蔵還元型NOx触媒のS被毒再生時に硫化水素の発生を抑制する制御を実行する装置が開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された触媒はそれ自体硫化水素の発生を抑制するものであり、通常のNOx触媒を用いた場合のS被毒再生時に、そのNOx触媒から排出される硫化水素に対して、何等対策を講じるものではない。また、特許文献2に開示された装置では、NOx触媒のS被毒再生時に比較的微量ではあるが硫化水素が排出され、この硫化水素に対しては何等対策を講じていない。
【0008】
一方、特許文献3には、パティキュレートフィルタに捕集された排気ガス中の微粒子を、パティキュレートフィルタに担持された活性酸素放出剤により酸化することが開示されている。これにおいて、パティキュレートフィルタのS被毒回復時にはパティキュレートフィルタの温度が昇温され、これにより発生した硫化水素は、活性酸素放出剤から発生した活性酸素によりSOxに酸化され、分解される。
【0009】
【特許文献1】特公平6−51117号公報
【特許文献2】特開2004−108176号公報
【特許文献3】特開2002−97926号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3に記載の装置によれば、パティキュレートフィルタのS被毒回復時に発生した硫化水素を、そのフィルタ自身の活性酸素放出剤から放出された活性酸素により、酸化分解することができ、一応は硫化水素の大気中への放出を防止ないし抑制できると考えられる。
【0011】
しかしながら、この装置は、パティキュレートフィルタから放出された硫化水素を、フィルタ自身の活性酸素放出剤によりSOxに酸化分解するものであるため、分解後のSOxがフィルタに再度付着する可能性は否めず、S被毒回復時における硫酸塩の除去効率に問題が残る。このように、触媒等の排気浄化手段自身から活性酸素を放出させ、硫化水素をSOxに分解したとしても、その排気浄化手段へのSOxの再付着が問題となり、根本的な解決策とならない。
【0012】
一方、本発明者らは、鋭意研究の結果、触媒等の排気浄化手段よりも下流側の位置に酸化力の強いオゾンを供給し、このオゾンにより、排気浄化手段から排出された硫化水素をSOxに酸化分解する手法を見いだした。これによれば、排気浄化手段よりも下流側の位置でオゾンを供給するため、排気浄化手段へのSOxの再付着を防止することができ、前記問題を解決可能となる。
【0013】
しかし、硫化水素の酸化分解に用いられて余剰となったオゾンの処理が問題となる。即ち、オゾンが強い酸化力を有する一方、オゾン供給位置より下流側の排気管やマフラーは耐オゾン性の低い鉄等の材料で作られるのが一般的である。従って、余剰オゾンが、オゾン供給位置より下流側の排気管やマフラーを腐食させる虞がある。このため余剰オゾンを速やかに分解処理するのが望ましい。
【0014】
本発明は以上の事情に鑑みて創案され、その目的は、触媒等の排気浄化手段の硫黄被毒再生時に発生する硫化水素をオゾンで酸化分解する場合に、その酸化分解に用いられて余剰となったオゾンを分解処理することができる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明に係る内燃機関の排気浄化装置の一形態は、内燃機関の排気通路に設けられ、燃焼室から排出された排気ガスを浄化する排気浄化手段と、該排気浄化手段よりも下流側の位置における前記排気通路にオゾンを供給可能なオゾン供給手段と、該オゾン供給位置よりも下流側の位置における前記排気通路に設けられ、排気ガス中のオゾンを分解するオゾン分解触媒とを備えることを特徴とする。
【0016】
この本発明の一形態によれば、排気浄化手段の硫黄被毒再生時に排気浄化手段から排出された硫化水素を、オゾン供給手段から供給されたオゾンにより酸化分解することができる。そして、この酸化分解に用いられて余剰となったオゾンをオゾン分解触媒により分解処理することができる。従ってさらに下流側へのオゾンの排出を防止し、排気管及びマフラー等の腐食を防止することができる。
【0017】
ここで、前記オゾン分解触媒が酸性担体又は硫酸塩担体を備えるのが好ましい。
排気ガスがオゾン分解触媒を通過するとき、排気ガスはオゾン分解触媒の担体に接触しながら触媒内を通過し、この過程で排気ガス中のオゾンが分解される。一方、SOxは酸性であり、アルカリ性の担体を採用すると担体にSOxが付着し易くなり、オゾン分解触媒がSOxにより硫黄被毒されてしまう。そこでこの好ましい形態のように、担体として酸性担体を用いれば、担体にSOxが付着し難くなり、オゾン分解触媒の硫黄被毒を防止できると共に、オゾン分解触媒のオゾン分解性能を長期に渡り維持できるようになる。或いは、担体として硫酸塩担体を用いれば、それ自身が既に硫酸塩であるから、SOxの担体へのさらなる付着が抑制され、オゾン分解触媒のオゾン分解性能を長期に渡り維持できるようになる。
【0018】
好ましくは、前記酸性担体がTiOからなる。
また好ましくは、前記硫酸塩担体がアルカリ土類金属又は希土類の硫酸塩からなる。
また好ましくは、前記硫酸塩担体がBaSOからなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、触媒等の排気浄化手段の硫黄被毒再生時に発生する硫化水素をオゾンで酸化分解する場合に、その酸化分解に用いられて余剰となったオゾンを分解処理することができるという、優れた効果が発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置を概略的に示すシステム図である。図中、10は内燃機関即ちエンジンであり、本実施形態のエンジンは火花点火式内燃機関、より具体的には直噴式ガソリンエンジンである。但し、エンジンは圧縮着火式内燃機関即ちディーゼルエンジンなどであってもよい。要は排気ガス中に硫黄成分が含まれるようなエンジンであればエンジンの形式や種別は問わない。11は吸気ポートに連通されている吸気マニフォルド、12は排気ポートに連通されている排気マニフォルド、13は燃焼室である。本実施形態では、不図示の燃料タンクから高圧ポンプ17に供給された燃料が、高圧ポンプ17によりデリバリパイプ18に圧送されて高圧状態で蓄圧され、このデリバリパイプ18内の高圧燃料が燃料噴射弁14から燃焼室13内に直接噴射供給される。エンジン10からの排気ガスは、排気マニフォルド12からターボチャージャ19を経た後にその下流の排気通路15に流され、後述のように浄化処理された後、大気に排出される。
【0021】
排気通路15には、燃焼室13から排出された排気ガスを浄化する排気浄化手段として、排気ガス中のNOxを浄化するNOx触媒20が設けられている。但し、排気浄化手段はNOx触媒20に限られず、排気ガス中に含まれる硫黄成分によって被毒され、本来有する排気浄化性能を喪失するようなものであればいかなるものであってもよい。このような排気浄化手段としては他に三元触媒、HC吸着剤、NOx吸着剤及び粒子状物質酸化触媒等が挙げられる。また排気浄化手段はこれらのうちの2以上の組み合わせからなってもよい。
【0022】
本実施形態のNOx触媒20は吸蔵還元型NOx触媒(NSR: NOx Strage Reduction)である。この場合、NOx触媒20は、アルミナAl等の酸化物からなる基材表面に、触媒成分としての白金Ptのような貴金属と、NOx吸収成分とが担持されて構成されている。NOx吸収成分は、例えばカリウムK、ナトリウムNa,リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つから成る。吸蔵還元型NOx触媒20は、これに流入される排気ガスの空燃比が所定値(典型的には理論空燃比)よりリーンのときにはNOx を吸収し、これに流入される排気ガス中の酸素濃度が低下すると吸収したNOx を放出するという、NOx の吸放出作用を行う。本実施形態では直噴式ガソリンエンジンが使用されており、リーンバーン運転を実行可能であるため、そのリーンバーン運転時は排気空燃比がリーンであり、NOx触媒20は排気中のNOxの吸収を行う。また、NOx触媒20の上流側にて還元剤が供給され、流入排気ガスの空燃比がリッチになると、NOx触媒20は吸収したNOxの放出を行う。そしてこの放出されたNOxは還元剤と反応して還元浄化される。
【0023】
還元剤としては、排気中で炭化水素HCや一酸化炭素CO等の還元成分を発生するものであれば良く、水素、一酸化炭素等の気体、プロパン、プロピレン、ブタン等の液体又は気体の炭化水素、ガソリン、軽油、灯油等の液体燃料等が使用できる。本実施形態では貯蔵、補給等の際の煩雑さを避けるため燃料であるガソリンを還元剤として使用している。還元剤の供給方法としては、例えば、NOx触媒20の上流側の排気通路15に別途設けられた噴射弁(図示せず)から燃料を噴射したり、通常時よりも多量の燃料を燃料噴射弁14から噴射したり、膨張行程後期又は排気行程で燃料噴射弁14から燃料を噴射するいわゆるポスト噴射を行う方法が可能である。このように、NOx触媒20におけるNOxの放出還元を目的とする還元剤の供給をリッチスパイクと称する。
【0024】
ところで、NOx触媒20は選択還元型NOx触媒(SCR: Selective Catalitic Reduction)であってもよい。この選択還元型NOx触媒は、ゼオライトまたはアルミナ等の基材表面にPtなどの貴金属を担持したものや、その基材表面にCu等の遷移金属をイオン交換して担持させたもの、その基材表面にチタニヤ/バナジウム触媒(V/WO/TiO)を担持させたもの等が例示できる。この選択還元型NOx触媒においては、流入排気ガスの空燃比がリーンという条件下で、排気ガス中のHC、NOが定常的に且つ同時に反応されてN,O,HOといったように浄化される。ただしNOxの浄化にはHCの存在が必須である。空燃比がリーンであっても、排気ガス中には未燃HCが必ず含まれているので、これを利用してNOxの還元浄化が可能である。また、前記吸蔵還元型NOx触媒のようにリッチスパイクを実施して還元剤を供給してもよい。この場合、還元剤としては前記に例示したもののほか、アンモニアや尿素を使用することもできる。
【0025】
他の排気浄化手段について説明すると、三元触媒は、アルミナ、セリアなどの多孔質酸化物にPt,Pd及びRhなどの貴金属を担持してなるものであり、理論空燃比(ストイキ)近傍雰囲気で排気ガス中のHC,CO及びNOxを同時に浄化し得るものである。HC吸着剤は、例えば、シリカを主成分とする多孔質吸着剤(例えばSiOの層状結晶間にSiOを担持させたもの)やゼオライト等の多孔質材料等を、多数の細い軸線方向流路(セル)を有する円筒状に形成したものであり、吸着剤温度が低いときに流入する排気中のHC成分を多孔質の細孔内に吸着し、吸着剤温度が高いときに吸着したHC成分を放出するHCの吸放出作用を行う。これは特にエンジンの冷間始動時におけるいわゆるコールドHCの低減に有効である。NOx吸着剤は、多孔質のゼオライト等からなり、排気ガス中のNOやNOを硝酸塩の形ではなくそのままの形で保持するものである。粒子状物質酸化触媒は、主にディーゼルエンジンから排出される粒子状物質(PM; Particulate Matter)を捕集するパティキュレートフィルタの表面に担持され、その捕集された粒子状物質を比較的低温で酸化(燃焼)除去するものであり、例えば、白金Pt、パラジウムPd、ロジウムRh等の貴金属、および、カリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCs等のアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCa、ストロンチウムSr等のアルカリ土類金属、ランタンLa、イットリウムY、セリウムCe等の希土類、鉄Fe等の遷移金属から選ばれた少なくとも一つからなる。
【0026】
図1に戻って、本実施形態においては、NOx触媒20よりも下流側の位置における排気通路15にオゾン(O)を供給可能なオゾン供給手段が設けられている。オゾン供給手段は、排気通路15内に挿入されたオゾン供給部材40と、オゾン供給部材40にオゾン供給通路42を介して接続されたオゾン発生器41とから構成される。オゾン発生器41で発生したオゾンはオゾン供給通路42を通じてオゾン供給部材40に到達され、オゾン供給部材40に設けられた供給口43からその下流側に向けて排気通路15内に噴射供給される。供給口43は本実施形態では複数(二つ)だが、一つであってもよい。オゾン供給部材40は排気通路15の直径方向に延在され、供給口43は、排気通路15内に均等にオゾンが行き渡るよう、オゾン供給部材40の長手方向に所定間隔で配置されている。
【0027】
オゾン発生器41としては、高電圧を印加可能な放電管内に原料となる空気または酸素を流しつつオゾンを発生させる形態や他の任意の形式のものを用いることができる。ここで原料となる空気または酸素は、排気通路15外から取り込まれる気体、例えば外気に含まれる気体であり、排気通路15内の排気ガスに含まれる気体ではない。オゾン発生器41においては、高温の原料気体を用いるよりも低温の原料気体を用いた方がオゾンの生成効率が高い。従ってこのように排気通路15外の気体を用いてオゾンを生成することにより、オゾン生成効率を向上することが可能である。
【0028】
オゾン発生器41は、制御手段としての電子制御ユニット(以下、ECU(Electrical Control Unit)という)100に接続され、ECU100によりオンされたときにオゾンを発生し、ECU100によりオフされたときにオゾンの発生を停止する。発生されたオゾンは前述のようにしてオゾン供給部材40の供給口43から排気通路15内に供給され、これによりオゾン供給が実行せしめられる。本実施形態では、オゾン供給時にオゾン発生器41をオンにして生成されたオゾンを直ちに供給するが、オゾンを予め生成、貯留しておいて、バルブを切り替えることでオゾンを供給するようにしてもよい。またポンプやコンプレッサ等でオゾンを加圧して供給することも可能である。
【0029】
排気通路15には排気空燃比検出手段としての空燃比センサ54が設けられ、この空燃比センサ54はECU100に接続されている。空燃比センサ54はNOx触媒20よりも上流側の位置における排気通路15に設けられ、当該位置における排気ガスの酸素濃度を検出する。エンジンの通常運転時、ECU100は、空燃比センサ54の出力信号に基づいて、エンジンの排気空燃比を算出する。空燃比センサ54は比較的広範囲の空燃比を検出可能な全域空燃比センサであり、検出した空燃比に応じて、出力信号としての電圧信号をリニアに出力する。ECU100は、空燃比センサ54によって検出される排気空燃比が所定の目標空燃比に近づくよう、エンジン10の燃料噴射量をフィードバック制御する。このとき、リーンバーン運転時には目標空燃比が理論空燃比よりもリーン側の値(例えばA/F=18)に設定され、ストイキ運転時には目標空燃比が理論空燃比(例えばA/F=14.7)に設定される。
【0030】
また、排気通路15には排気温度検出手段としての温度センサ53が設けられ、温度センサ53はECU100に接続されている。ECU100は温度センサ53の出力信号に基づいて排気温度を算出する。温度センサ53は例えば熱電対からなり、その測温部としての先端が排気通路15の中心部に位置される。温度センサ53も同様に、検出した排気温度に応じて、出力信号としての電圧信号をリニアに出力する。温度センサ53は、NOx触媒20よりも上流側の位置における排気通路15に設けられているが、NOx触媒20及びオゾン供給部材40の間の位置における排気通路15に設けられてもよい。
【0031】
ECU100は、予め記憶された所定のプログラムに従ってリッチスパイク制御を実行する。即ち、ECU100は、所定のリッチスパイク実行条件が成立すると、それと同時に、別途設けられたリッチスパイク用噴射弁から燃料を噴射させたり、通常時よりも多量の燃料を燃料噴射弁14から噴射させたり、燃料噴射弁14からポスト噴射を実行させたりして、リッチスパイクを実行する。これにより、NOx触媒20に流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比よりもリッチになり、NOx触媒20に吸蔵されていたNOxが放出され、排気ガス中の未燃成分(CO,HC)と反応して還元浄化される。このようにリッチスパイク制御手段がECU100によって構成される。
【0032】
さて、本実施形態に係る排気浄化装置においては、エンジン運転時に排気ガス中の硫黄成分が硫酸塩の形でNOx触媒20に吸収或いは吸着され、NOx触媒20が硫黄被毒(S被毒)される。具体的には、その排気ガス中の硫黄成分が、硫酸塩の形で、NOx触媒20のバリウム等のNOx吸収成分に吸収される。そして硫酸塩がNOx触媒20に次第に蓄積されていくと、NOx触媒20のNOx吸蔵能力が低下する。
【0033】
そこで、NOx触媒20のNOx吸蔵能力を回復させるために、NOx触媒20から硫酸塩を脱離或いは放出させる硫黄被毒再生が行われる。この硫黄被毒再生は、NOx触媒20の雰囲気を還元雰囲気とし、且つその雰囲気温度を比較的高温の所定温度(例えば400℃)以上とすることで行われる。より具体的には、NOx触媒20に流入される排気ガスの空燃比がストイキ又はそれよりもリッチ側であり、且つその流入排気ガス温度が前記所定温度以上のとき、硫黄被毒再生が行われる。そしてこのとき、NOx触媒20に吸収されていた硫酸塩が硫黄酸化物(SOx)に分解されてNOx触媒20から脱離される。
【0034】
なお、硫酸塩が脱離可能な例えば400℃以上という排気温度は、本実施形態のようなガソリンエンジンの場合だと比較的容易に到達できる温度であるが、元々排気温度の低いディーゼルエンジンの場合だと比較的到達し難い温度である。これに対し、NOx触媒において吸蔵NOxが放出還元可能となる温度は、硫酸塩が脱離可能な温度よりも低く、例えば200〜300℃程度でNOxは放出還元可能である。このように、硫酸塩は硝酸塩に比べ安定であり、硝酸塩の場合よりも雰囲気温度を高めなければ脱離不可能である。硫酸塩が脱離可能となる排気温度は排気浄化手段の材料、構造等に応じて異なり、例えば500℃以上の場合もある。
【0035】
かかる硫黄被毒再生は、第一に、NOx触媒における吸蔵NOxの放出浄化と同時に行う方法がある。即ち、吸蔵NOxの放出浄化は前述のリッチスパイク制御によって実現され、このとき排気空燃比はリッチである。従って、このとき排気温度が硫酸塩脱離可能な温度であれば、自ずとNOx触媒から硫酸塩が脱離してSOxやHSに分解される。本実施形態のようなガソリンエンジンの場合ではそのような高温の排気温度になることが比較的多いので、NOx放出還元のためのリッチスパイク制御が実行されれば、多くの場合同時に、硫黄被毒再生が実行される。
【0036】
また、第二には、エンジンが車両用の場合、走行距離、燃費、燃料の種別(レギュラー又はハイオク)、燃料中の硫黄濃度等を考慮して、所定タイミング毎に、空燃比をリッチにし且つ排気温度を所定温度以上に上昇させ、硫黄被毒再生を実行する方法である。これは硫黄被毒再生専用の制御であり、例えば所定の走行距離毎に、空燃比を一時的にリッチにすると共にエンジン回転速度の上昇等により排気温度を所定温度以上に上昇させ、硫黄被毒再生を実行することができる。なお、これら第一及び第二の方法のように、所定の制御を行うことによって意図的に実行される硫黄被毒再生を強制再生という。
【0037】
第三には、強制再生時でなくても、エンジンの運転状態が硫黄被毒再生条件を満たすような運転状態となれば、自ずと硫黄被毒再生が実行される。具体的には、例えば車両の登坂走行等においてエンジンが高負荷運転されているとき、空燃比フィードバック制御が中止されて排気空燃比がストイキよりリッチになり、且つ排気温度が硫酸塩脱離可能な温度になれば、自ずとNOx触媒から硫酸塩が脱離してSOxに分解される。このように特別な制御によることなく実行される硫黄被毒再生を自然再生という。
【0038】
ところで、前述したように、この硫黄被毒再生時には、生成されるSOxが排気ガス中の水素(H)と反応して硫化水素(HS)が生成される。そしてこの硫化水素が排気通路から大気中に放出されると、異臭の原因となり、好ましくない。
【0039】
そこで、本実施形態の排気浄化装置においては、硫黄被毒再生時にNOx触媒20から排出される硫化水素を、大気中に放出される前に、酸化性ガスとしてのオゾンによりSOxに酸化し、これによって硫化水素の大気中への放出及びこれに伴う異臭発生を防止している。具体的には、オゾン発生器41で発生したオゾンが、NOx触媒20よりも下流側の位置にて、オゾン供給部材40から排気通路15内に供給される。これにより、NOx触媒20から排出された硫化水素を、NOx触媒20の下流側でオゾンによりSOxに酸化することができ、硫化水素の大気中への排出を抑制できる。硫化水素HSとオゾンOとの反応は次式で表される。
S+O→HO+SO
これから分かるように硫化水素HSとオゾンOとの反応は等モル反応である。
【0040】
特に、排気通路15におけるオゾンの供給位置(即ち供給口43の位置)は、NOx触媒20よりも下流側の位置、より具体的にはNOx触媒20から所定距離下流側に隔てられた位置である。こうすることによって、特許文献3に記載の装置で問題となるような、硫化水素分解後に生成されたSOxがNOx触媒に再吸着するといったことがなくなり、硫黄被毒再生時の硫酸塩の除去効率を高めることが可能になる。
【0041】
ここで、硫黄被毒再生時にはNOx触媒20が高温となっており、仮にこのNOx触媒20の近傍直後でオゾンを供給したとするとオゾンが熱分解し、その分、硫化水素の酸化能が減少してしまう。一般に、オゾンは250℃程度の温度で熱分解する。よって、NOx触媒20(特にその下流端)からオゾン供給位置までの距離Lは、そのようなオゾンの熱分解が実質的に生じないような距離に設定するのが好ましく、理想的には極力長くするのが好ましい。
【0042】
なお、オゾンをNOx触媒20の上流側で供給すると、オゾンが排気ガス中のNOxやSOxと反応して消費されるので、こうすることは避けるべきである。
【0043】
ところで、オゾンは、NOx触媒20から硫化水素が排出される硫黄被毒再生時のみ供給するのが好ましい。なぜなら、オゾン発生器41でオゾンを生成するには電力を要するから、オゾンの無駄な消費は電力の無駄な消費につながり、ひいては燃費の悪化を招くからである。例えばオゾン発生器41を常にオンとし、常にオゾン供給を行っても硫化水素の排出は防止できるが、こうすることは避けるべきである。
【0044】
そこで、本実施形態においては、空燃比センサ54によって検出された排気空燃比と、温度センサ53によって検出された排気温度とに基づき、硫黄被毒再生実行中であるか否かを判定し、その実行中であるときのみ、オゾン発生器41をオンとし、オゾン供給を実行させるようにしている。具体的には、ECU100は、検出された排気空燃比がストイキ又はそれよりリッチ側の値であり、且つ検出された排気温度が前記所定温度(例えば400℃)以上であるとき、硫黄被毒再生実行中と判断し、オゾン発生器41をオンにする。これによれば、強制再生及び自然再生の別を問わず、硫化水素が排出されるような状況下でのみオゾンが供給され、オゾン及びオゾン発生電力の無駄な消費が防止できる。いうなれば前記排気空燃比及び排気温度はオゾン供給開始タイミングを決める条件である。
【0045】
なお、図1に示されるように、本実施形態では空燃比センサ54が温度センサ53の上流側に設けられているが、この配置は逆でもよい。
【0046】
ここで、前述したようなオゾンの効率的利用に鑑みれば、オゾンは、排出される硫化水素の量に見合った必要最小限の量を供給するのが好ましい。このため例えば、前回の硫黄被毒再生時から消費された燃料量を積算すると共にこの燃料消費量に基づいて今回の硫黄被毒再生時に発生する硫化水素量を推定し、この推定された硫化水素量に応じてオゾン発生器41を制御し、オゾン供給量を制御することが考えられる。
【0047】
ところで、たとえこのようにオゾン供給量を制御したとしても、オゾン供給量が硫化水素の酸化分解に必要な量を上回り、過剰となることが想定される。このとき、オゾンが強い酸化力を有する一方、オゾン供給位置より下流側の排気管やマフラーが耐オゾン性の低い鉄等の材料で作られるのが一般的であるため、余剰オゾンが、オゾン供給位置より下流側の排気管やマフラーを腐食させる虞がある。
【0048】
そこで、本実施形態においては、オゾン供給位置よりも下流側の位置における排気通路15に、排気ガス中のオゾンを分解するオゾン分解触媒30が設けられている。これによれば、余剰オゾンをオゾン分解触媒30により分解処理することができ、オゾン分解触媒30の下流側へのオゾンの排出を防止し、排気管及びマフラー等の腐食を防止することができる。なおオゾンの分解は次の反応式により表される。
+O→3O
【0049】
余剰オゾンを速やかに分解処理するためには、オゾン分解触媒30はできるだけオゾン供給ノズル40に近づけて設置するのがよい。他方、NOx触媒20から排出された硫化水素をオゾンで完全に酸化分解するためには、ある程度の排気通路15の経路長即ち反応時間が必要である。従って、オゾン供給位置からオゾン分解触媒30の上流端までの距離Mはこれら両者のバランスを考慮して決定される。
【0050】
ここで、オゾン供給位置からオゾン分解触媒30の下流端までの間の部位では、排気ガス中にオゾンが含まれるため、腐食が問題となるが、この対策として、その部位にある部材の材料を耐オゾン性の高い材料(例えばステンレス)とするのが好ましい。その部材としてはオゾン供給ノズル40、オゾン分解触媒30が収納されるケーシング(コンバータ)31、及びオゾン供給ノズル40が取り付けられる連結用排気管16が挙げられる。ここで連結用排気管16は図示されるように、NOx触媒20が収納されるケーシング(コンバータ)21と、オゾン分解触媒30が収納されるケーシング(コンバータ)31とを互いに連結するものである。
【0051】
ところで、オゾン分解触媒30にもNOx触媒20と同様な硫黄被毒の問題がある。即ち、オゾン分解触媒30として適切なものを選択しないと、硫化水素のオゾンによる酸化分解により生じたSOxが、硫酸塩の形で、オゾン分解触媒30に付着してしまい、オゾン分解触媒30の性能を損なってしまう。
【0052】
そこで、本実施形態のオゾン分解触媒30は、SOxの付着或いは吸収を防止するため以下のような構成が採用されている。
【0053】
図2に、オゾン分解触媒30のセルの拡大図を示す。オゾン分解触媒30は、例えば全体が円柱状のコージェライト等からなる基材32を有し、この基材32はメッシュ状或いは蜂の巣状に形成されて多数の排気ガス通路孔としてのセル33を画成する。セル33はオゾン分解触媒30の軸方向(図2の表裏方向)に延び、その両端が開放されて排気ガスの入口及び出口を形成する。セル33の内壁にはウォッシュコート層としての担体34が全面に亘って形成される。担体34の厚さは例えば20〜50μm程度である。
【0054】
図3には担体34の拡大図が示される。担体34は、ミクロ的に見れば無数の粒子35が凝集して構成され、粒子35間にはガスが拡散可能な空孔36が形成される。粒子35の粒径は例えば数10nm程度である。この粒子35の表面に、Pt,Pd等の貴金属からなる活性点37が多数設けられる。これら担体34と活性点37との両者が協働して触媒が性能を発揮させる。担体34は、担体34を構成する材料の粉末と、必要に応じて活性点37を構成する貴金属粒子とを、水等の溶液に混入して分散させ、この溶液中に基材32を浸漬し、基材32を乾燥後焼成することで焼結形成される。
【0055】
ここで、排気ガスがオゾン分解触媒30を通過するとき、排気ガスは担体34に接触しながら触媒内を通過する。より具体的には、排気ガスは粒子35間の空孔36に入りながら、粒子35の表面と活性点37とに接触する。そしてこのとき排気ガス中のオゾンが酸素に分解される。一方、SOxが担体34に付着すると活性点37がSOxで覆われてしまい、オゾン分解触媒30が所望の性能を発揮できなくなってしまう。
【0056】
そこで、このようなSOxの担体34への付着を防止するため、担体34を酸性担体とするのが好ましい。その理由は、SOxが酸性なので、アルカリ性の担体(例えばCeO)を採用すると担体にSOxが付着し易くなり、逆に酸性担体を採用すると担体にSOxが付着し難くなるからである。この酸性担体をなす材料としては例えば酸化チタン(TiO)が好適である。
【0057】
或いは、担体34を硫酸塩担体とするのが好ましい。その理由は、担体34自体が硫酸塩そのものであれば、担体34とSOxとの反応が起こらず、またSOxの担体34へのさらなる付着が抑制されるからである。この担体34をなす材料としては例えばアルカリ土類金属又は希土類の硫酸塩が好適である。アルカリ土類金属の硫酸塩としては、熱安定性に優れ極めて安定であるBaSOが好適であり、その他CaSO、SrSO等も適用可能である。希土類の硫酸塩としては例えばLaSO、CeSOが適用可能である。
【0058】
かかる担体34を採用することにより、オゾン分解触媒30はSOxに被毒され難くなり、オゾン分解触媒30のオゾン分解性能の低下を抑制することができる。そして、硫化水素の酸化に使用されて余剰となったオゾンを長期に渡り安定してオゾン分解触媒30で分解することが可能となる。
【0059】
次に、本実施形態に関連して行った模擬ガス(モデルガス)による実験の結果を以下に示す。
(1)実験装置
図4には実験装置の全体を示し、図5には図4のV部詳細を示す。61は複数のガスボンベで、各ガスボンベには、ガソリンエンジンの排気ガス組成を模した模擬ガスを作るための原料ガスがそれぞれ充填されている。ここでいう原料ガスとはN、O、CO等のガスである。62は模擬ガス発生器であり、マスフローコントローラを備え、各原料ガスを所定量ずつ混合して模擬ガスMGを生成する。模擬ガスMGは、図5に詳細に示すように、三方エルボ72を通過した後、石英管63内に配置されたオゾン分解触媒64を通過し、図示しない排気ダクトから外部に排出される。
【0060】
図4に示すように、酸素ボンベ67から供給された気体酸素Oは二分岐され、その一方において、流量制御ユニット68により流量が制御された後、オゾン発生器69に供給される。そしてオゾン発生器69では酸素が選択的に、且つ部分的にオゾンOとされ、これら酸素及びオゾン(又は酸素のみ)がオゾン分析計70に至る。また、分岐の他方において、酸素は別の流量制御ユニット71により流量が制御された後、オゾン発生器69から供給されたガスと混合して、オゾン分析計70に至る。オゾン分析計70では、これに流入してきたガス即ち供給ガスのオゾン濃度が計測され、この後、供給ガスは、流量制御ユニット71にて流量が制御される。余剰の供給ガスは図示しない排気ダクトから外部に排出され、流量が制御された供給ガスは、図5に示すように、オゾン分解触媒64の上流側に位置された三方エルボ72にて模擬ガスMGと混合される。この混合ガスは、SOx、SO,HS濃度計測用の排ガス分析計78と、オゾン濃度計測用のオゾン分析計79とによりそれぞれ処理された後、図示しない排気ダクトから外部に排出される。
【0061】
石英管63の外周部には電気ヒータ73が設けられ、オゾン分解触媒64の温度が制御されるようになっている。また、オゾン分解触媒64の触媒床温度を計測するための温度センサ75が設けられる。
【0062】
(2)実験条件
オゾン分解触媒64の効果を確認するため、まず、初期状態にあるオゾン分解触媒2gを図5の石英管63内に配置し、以下の条件で実験を行った。次いで、硫黄被毒状態にあるオゾン分解触媒2gを図5の石英管63内に配置し、以下の条件で実験を行った。
【0063】
実験において、温度センサ75によって検出される温度が一定(200℃)となるように電気ヒータ73を制御し、その温度が一定に安定したならば、以下の組成の模擬ガスを流通させ、これと同時にオゾン発生器69をオンにして、オゾンと酸素からなる供給ガスをオゾン分解触媒64の上流側で模擬ガスに混合した。模擬ガスの組成は、それぞれ体積濃度でHSが50ppm、HOが3%、残部がNである。模擬ガスの流量は10L(リットル)/minである。オゾンを含む供給ガスの組成はオゾンOが50000ppm、残部がOである。供給ガスの流量は2L(リットル)/minである。
【0064】
そして、オゾン分解触媒64を通過した後のガス中のオゾン濃度を計測し、オゾン分解触媒64におけるオゾン分解率を求めた。
【0065】
硫黄被毒されたオゾン分解触媒64の作り方としては、調整したオゾン分解触媒3gを実験室用流通反応器に設置し、以下に示す組成の模擬ガスを400℃で4時間流通させ、オゾン分解触媒を硫黄被毒させた。模擬ガスの流量は10L/minである。
模擬ガス組成:SO 200ppm、O 10%、HO 3%、残部 N
【0066】
(3)実施例及び比較例
・実施例1
TiO粉末に、硝酸Pt容積を用いてPtを含浸担持し、120℃で乾燥した後、450℃で2時間焼成し、オゾン分解触媒を作製した。Ptの担持濃度は2.0重量%である。この触媒を直径2〜3mmのペレットに形成し実験に使用した。
・実施例2
粉末材料をBaSOとする以外、実施例1と同様である。
・比較例1
粉末材料をAlとする以外、実施例1と同様である。
・比較例2
粉末材料を、CeO−ZrO複合酸化物とする以外、実施例1と同様である。
【0067】
(4)実験結果
まず、実施例1,2及び比較例1,2のオゾン分解触媒が初期状態にある場合(即ち硫黄被毒されてない場合)、いずれの触媒においても、供給されたオゾンは全て分解され、オゾン分解率は100%であった。
【0068】
一方、実施例1,2及び比較例1,2のオゾン分解触媒が硫黄被毒状態にある場合のオゾン分解率の比較を図6に示す。見られるように、本発明の実施例1,2は、比較例1,2に比べ、高いオゾン分解率を示すのが分かる。この結果により、酸性担体(実施例1)又は硫酸塩担体(実施例2)を用いるオゾン分解触媒が、SOxにより被毒され難く、従って長期に渡って高いオゾン分解性能を維持できることが理解される。なお、図6のグラフでは一見、実施例と比較例との間にオゾン分解率の顕著な差がないように見えるが、この実験では僅か4時間という短い時間でしかオゾン分解触媒が被毒されておらず、例えば車両に搭載された場合など、実用上遙かに長期に亘ってオゾン分解触媒が被毒されることに鑑みれば、実験結果に見られるような差は実用上は顕著な差となって現れる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、また、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本発明に含まれる。従って本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置を概略的に示すシステム図である。
【図2】オゾン分解触媒のセルの拡大図である。
【図3】担体の拡大図である。
【図4】本実施形態に関連して行われた実験の実験装置全体を示す図である。
【図5】図4のV部詳細である。
【図6】実施例及び比較例に対するオゾン分解率の比較を示すグラフである。
【符号の説明】
【0071】
10 エンジン
13 燃焼室
15 排気通路
20 NOx触媒
30,64 オゾン分解触媒
31 ケーシング
32 基材
33 セル
34 担体
35 粒子
36 空孔
37 活性点
40 オゾン供給部材
41 オゾン発生器
43 供給口
100 電子制御ユニット(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、燃焼室から排出された排気ガスを浄化する排気浄化手段と、
該排気浄化手段よりも下流側の位置における前記排気通路にオゾンを供給可能なオゾン供給手段と、
該オゾン供給位置よりも下流側の位置における前記排気通路に設けられ、排気ガス中のオゾンを分解するオゾン分解触媒と
を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記オゾン分解触媒が、酸性担体又は硫酸塩担体を備えることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記酸性担体がTiOからなることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記硫酸塩担体がアルカリ土類金属又は希土類の硫酸塩からなることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記硫酸塩担体がBaSOからなることを特徴とする請求項2記載の内燃機関の排気浄化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−144341(P2007−144341A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344424(P2005−344424)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】