内燃機関の排気浄化装置
【課題】比較的低い温度でも効率よくNOx吸着活性を示す、内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】内燃機関に接続された排気流路を備える、内燃機関の排気浄化装置であって、前記排気流路内に排気浄化触媒が配置され、前記排気浄化触媒として、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材を備えることを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置。
【解決手段】内燃機関に接続された排気流路を備える、内燃機関の排気浄化装置であって、前記排気流路内に排気浄化触媒が配置され、前記排気浄化触媒として、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材を備えることを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低い温度でも効率よくNOx吸着活性を示す、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられる内燃機関からの排出ガスには、一酸化炭素や、未燃焼炭化水素等の、人体にとって有害な成分が含まれている。このため、一般的な車両の排気部分には、有害な成分を分解除去する排気浄化装置が設けられており、当該装置には、アルミナ等の金属酸化物に担持された白金元素や銀元素を主成分とする排気浄化触媒が備えられている。
【0003】
白金や銀を含み、且つ、担体に担持された金属触媒に関する技術は、これまでにも開発されている。特許文献1には、NOとHCとCOとが排出される排気通路に設けられる排気ガス浄化用触媒であって、NOをNO2に酸化する第1触媒と、NO2をHCと反応させることによってN2に還元する第2触媒と、HC及びCOを酸化する第3触媒とを備え、上記第1〜第3の触媒は、第2触媒が第1触媒よりも後に排気ガスに接触し、第3触媒が第2触媒よりも後に排気ガスに接触するように、上記排気通路に配置されている排気ガス浄化用触媒の技術が開示されている。当該特許文献1には、上記第1触媒として、母材に担持された銀を、及び、上記第2触媒として母材に担持された白金を用いる例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−225348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の排気ガス浄化用触媒は、当該文献の段落22に記載されているように、コーディエライト製のハニカム担体を用いている。しかし、特許文献1においては、コーディエライト担体の様な、熱容量の大きい担体を用いることによるデメリットについては全く考察されていない。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、比較的低い温度でも効率よくNOx吸着活性を示す、内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関に接続された排気流路を備える、内燃機関の排気浄化装置であって、前記排気流路内に排気浄化触媒が配置され、前記排気浄化触媒として、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、前記水分吸着能を有する基材が排気ガス中の水分を予め吸着除去するため、当該水分によって前記Nox吸着材の吸着活性が損なわれることがなく、良好に排気ガス浄化効果を発揮することができる。また、このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、排気浄化装置内が比較的低い温度であったとしても、排気ガス中の水分を吸着した前記基材の発熱により、前記Nox吸着材が加熱された結果、前記Nox吸着材の活性が向上し、NOxをより大量に前記Nox吸着材に吸着できる。
【0008】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、前記排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持された前記NOx吸着材が配置され、前記NOx吸着材が配置された区間より排気ガス流れ方向上流に水分吸着材が配置されることが好ましい。
【0009】
このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、前記水分吸着材及び前記水分吸着能を有する基材が排気ガス中の水分を予め吸着除去するため、当該水分によって前記Nox吸着材の吸着活性が損なわれることがなく、良好に排気ガス浄化効果を発揮することができる。また、このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、排気浄化装置内が比較的低い温度であったとしても、排気ガス中の水分を吸着した前記水分吸着材及び前記基材の発熱により、前記Nox吸着材が加熱された結果、前記Nox吸着材の活性が向上し、NOxをより大量に前記Nox吸着材に吸着できる。
【0010】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、前記水分吸着能を有する基材及び前記水分吸着材が一体となっていることが好ましい。
【0011】
このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、排気ガス流れ方向上流における前記水分吸着材の吸着熱が、排気ガス流れ方向下流における前記基材に伝わりやすい。
【0012】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、前記NOx吸着材が銀アルミナ触媒であることが好ましい。
【0013】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、前記水分吸着能を有する基材及び/又は前記水分吸着材がゼオライト基材であることが好ましい。
【0014】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、前記NOx吸着材が銀アルミナ触媒であり、前記排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持された前記銀アルミナ触媒が配置され、前記銀アルミナ触媒が配置された区間より排気ガス流れ方向下流に、銀ゼオライト触媒が配置されることが好ましい。
【0015】
このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、比較的低い温度においては、前記銀ゼオライト触媒がNOxを吸着し、前記銀アルミナ触媒がNOx吸着の妨害成分であるCO2を吸着する一方、高温域においては、前記銀アルミナ触媒が主にNOxを吸着する役割を担うというように、前記銀アルミナ触媒と前記銀ゼオライト触媒とを組み合わせることによって、幅広い温度域においてNOxとCO2の吸着を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記水分吸着能を有する基材が排気ガス中の水分を予め吸着除去するため、当該水分によって前記Nox吸着材の吸着活性が損なわれることがなく、良好に排気ガス浄化効果を発揮することができる。また、本発明によれば、排気浄化装置内が比較的低い温度であったとしても、排気ガス中の水分を吸着した前記基材の発熱により、前記Nox吸着材が加熱された結果、前記Nox吸着材の活性が向上し、NOxをより大量に前記Nox吸着材に吸着できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る排気浄化装置の典型例の構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図である。
【図2】本発明に係る排気浄化装置が、内燃機関に接続されて使用される例を示した模式図である。
【図3】ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒を連続して配置する構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図である。
【図4】ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒の具体的な設置例を示した模式図である。
【図5】実施例1及び比較例1の排気浄化装置内のNO吸着材昇温特性を示したグラフ、及び実施例1及び比較例1の排気浄化装置内の触媒の断面模式図である。
【図6】実施例2及び比較例2の排気浄化装置を用いた際の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を示したグラフである。
【図7】銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒の、温度別のNOxの吸着量を比較したグラフである。
【図8】0℃〜400℃の温度範囲における銀アルミナ触媒のNO吸着率を示したグラフである。
【図9】水分存在下・非存在下における、銀アルミナ触媒のNOx吸着活性を比較したグラフである。
【図10】ゼオライト、シリカゲル及び活性アルミナについて、水蒸気圧と水分吸着量の関係を示したグラフである。
【図11】ゼオライト、シリカゲル及び活性アルミナについて、温度と水分吸着量の関係を示したグラフである。
【図12】銀アルミナ触媒における50℃で吸着したCO2の脱離特性を示したグラフである。
【図13】コーディエライト基材を採用した排気浄化装置の構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関に接続された排気流路を備える、内燃機関の排気浄化装置であって、前記排気流路内に排気浄化触媒が配置され、前記排気浄化触媒として、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材を備えることを特徴とする。
【0019】
本願において「NOx」とは、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)を始めとする窒素酸化物及びその混合物のことを指す。
【0020】
上記特許文献1(特開2000−225348号公報)に挙げたような従来の排気ガス浄化用触媒は、コーディエライトの様な熱容量の大きい担体を用いているため、排気浄化装置の始動時において、当該触媒が活性化する温度に上昇するまでに相当の時間を要すると考えられる。したがって、触媒が活性化するまでの時間に、排気ガス中の有害成分、特にNOが排気浄化装置を通過してしまい、その結果、当該装置は排気ガスの浄化の目的が十分に達成できないと考えられる。
発明者らは、このような従来の排気浄化装置のデメリットを、異なる温度条件下における触媒活性変化、及び、排気ガスに含まれる水分による触媒活性変化の2つの側面から検討した。
【0021】
まず、異なる温度条件下におけるNOx吸着触媒の活性変化について説明する。以下、NOx吸着材として、銀をアルミナ担体に担持させた銀アルミナ触媒、及び、ゼオライト基材に担持された銀ゼオライト触媒の例を挙げて説明する。
図7は、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒の、温度別のNOxの吸着量を比較したグラフである。図7から分かるように、50℃、100℃のいずれの温度条件においても、銀ゼオライト触媒(黒の棒グラフ)の方が、銀アルミナ触媒(白の棒グラフ)と比較してNOxの吸着量が多い。しかし、150℃の温度条件においては、銀アルミナ触媒の方が銀ゼオライト触媒よりもNOxの吸着量が格段に多い。これは、150℃という高温条件においては、銀によりNOがNO2に酸化され、且つ、NO2がアルミナ表面に吸着されるためである。
図8は、0℃〜400℃の温度範囲における銀アルミナ触媒のNO吸着率を示したグラフである。このグラフから分かるように、約130℃を境に、銀アルミナ触媒のNO吸着率は急激に上昇し、約200℃以上においてNO吸着率は100%となった。
以上のように、銀アルミナ触媒は130℃以上の温度において高いNOx吸着活性を示すため、排気浄化装置の初動時から銀アルミナ触媒による高いNOx吸着効果を得るためには、装置内に予め銀アルミナ触媒を暖機するシステムが必要となることが分かる。
【0022】
次に、排気ガスに含まれる水分による触媒活性の変化について説明する。
図9は、水分存在下・非存在下における、銀アルミナ触媒のNOx吸着活性を比較したグラフである。このグラフから、150℃の温度条件下では、排気ガス中に水分を3%含む場合(左側の棒グラフ)は、排気ガス中に水分を含まない場合(右側の棒グラフ)と比較して、NO吸着量が半分程度減少してしまうことが分かる。
以上のように、銀アルミナ触媒のようなNOx吸着材は、少なくとも150℃という高温条件下においては、排気ガス中に含まれる水分によってNOx吸着活性が著しく損なわれてしまうため、NOx吸着材による高いNOx吸着効果を得るためには、装置内に予め水分を除去するシステムが必要となることが分かる。
【0023】
このように、異なる温度条件下における触媒活性変化、及び、排気ガスに含まれる水分による触媒活性変化の2つについて検討した結果、発明者らは、排気浄化触媒として、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材を用いることにより、NOxをより効率よく吸着できる本発明の排気浄化装置を完成させた。このような排気浄化装置は、水分吸着能を有する基材が排気ガス中の水分を予め吸着除去するため、当該水分によってNox吸着材の吸着活性が損なわれることがなく、良好に排気ガス浄化効果を発揮することができる。また、本発明の排気浄化装置は、当該装置内が比較的低い温度であったとしても、排気ガス中の水分を吸着した前記基材の発熱により、Nox吸着材が加熱された結果、Nox吸着材の活性が向上し、NOxをより大量にNox吸着材に吸着できる。
【0024】
上述した水分除去、及び、NOx吸着材の加熱をより促進させるために、排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材が配置され、NOx吸着材が配置された区間より排気ガス流れ方向上流に水分吸着材が配置されることが好ましい。
【0025】
排気ガス流れ方向上流における水分吸着材の吸着熱が、排気ガス流れ方向下流における水分吸着能を有する基材に伝わりやすいという観点から、水分吸着能を有する基材及び水分吸着材が一体となっていることが好ましい。
【0026】
図1は、本発明に係る排気浄化装置の典型例の構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図であり、図13は、コーディエライト基材を採用した排気浄化装置の構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図である。なお、図1に描かれた典型例は、NOx吸着材として銀アルミナ触媒を、水分吸着能を有する基材及び水分吸着材としてゼオライト基材を、それぞれ用いた例である。また、図1及び図13に示した白ヌキ矢印は、いずれも排気ガス浄化触媒内を通過する排気ガス流れ方向を示す矢印である。また、図1及び図13の模式図は、単純化のために、排気ガス流路を直線流路として描いている。しかし、本発明に係る排気浄化装置が備える排気流路の形状は、必ずしも直線のみに限定されず、蛇行形状や、ジグザグ形状等を含む。
図13に示す排気浄化装置は、コーディエライト3を基材とし、排気ガス流れ方向上流端4aから所定の区間にはゼオライト1を、排気ガス流れ方向下流端4bから所定の区間には銀アルミナ触媒2を配置した構成となっている。これに対し、図1に示した本発明に係る排気浄化装置の典型例は、一体として構成されたゼオライト1を基材とし、排気ガス流れ方向上流端4aから所定の区間には銀アルミナ触媒を担持せず、排気ガス流れ方向下流端4bから所定の区間には銀アルミナ触媒2を担持した構成となっている。
図13に示したような、従来のコーディエライト基材を採用した構成は、コーディエライト基材が高い熱容量を有するため、基材による速やかな触媒の加熱効果は期待できない。一方、図1に示した本発明の典型例の構成は、ゼオライトを基材として用いているため速やかな昇温が期待でき、且つ、ゼオライト基材が排気流路全体に一体として構成されているため、排気ガス流れ方向下流の銀アルミナ触媒への熱伝導が速やかに行われる。その結果、銀アルミナ触媒がより早く活性化するため、排気浄化装置始動時のNOを吸着除去しやすくなる。
【0027】
NOx吸着材としては、銀アルミナ触媒、銀ゼオライト触媒、鉄ゼオライト触媒、銅ゼオライト触媒等を用いることができる。これらの内、NOx吸着材として銀アルミナ触媒を用いることが好ましい。
銀アルミナ触媒は、常法により製造することができる。水分吸着能を有する基材への銀アルミナ触媒の担持は、当該基材の所定領域に銀アルミナ触媒を塗布、含浸等することにより行う。
【0028】
水分吸着能を有する基材及び/又は水分吸着材が、ゼオライト基材であることが好ましい。
図10は、ゼオライト、シリカゲル及び活性アルミナについて、水蒸気圧と水分吸着量の関係を示し、縦軸に水分吸着量(質量%)を、横軸に水の蒸気圧(Torr)をとったグラフである。図10から分かるように、シリカゲルや活性アルミナは、水の蒸気圧が1Torr未満においてはほとんど水分を吸着しない。これに対しゼオライトは、水の蒸気圧が0.01〜100Torrの範囲内において一貫して高い水分吸着量を維持し、特に10Torr未満の水蒸気圧においては、シリカゲルや活性アルミナよりも優れた水分吸着活性を示すことが分かる。
図11は、ゼオライト、シリカゲル及び活性アルミナについて、温度と水分吸着量の関係を示し、縦軸に水分吸着量(質量%)を、横軸に温度(℃)をとったグラフである。図11から分かるように、シリカゲルや活性アルミナは、100℃以上の温度域においてはほとんど水分吸着活性を示さない。これに対し、ゼオライトは、100℃以上の温度域においても十分な水分吸着活性を示すことが分かる。
以上より、ゼオライトは、シリカゲルや活性アルミナと比較して、幅広い水蒸気圧の範囲及び広い温度域において、良好な水分吸着活性を示すことが分かる。
【0029】
さらに、ゼオライトは水分を吸着すると、吸着熱により発熱することが分かっている。このようなゼオライトを、NOx吸着材よりも排気ガス流れ方向上流に配置することによって、排気ガス中の水分を予めゼオライトによって吸着除去することができ、且つ、当該吸着によって生じる吸着熱によってNOx吸着材を暖機することができ、その結果、特に装置始動時の、比較的低い温度条件において、NOをNOx吸着材によって吸着除去することができる。従来技術においては、コーディエライト基材の様な熱容量の高い基材を用いていたため、NOx吸着材の暖機は不可能であった。
【0030】
なお、排気流路全体における、水分吸着材と、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材との配置については、水分吸着材が少なくとも排気流路の上流端に位置していれば特に限定されないが、排気流路全体における、上流端から30%の区間を水分吸着材が占めることが好ましい。仮に30%未満であるとすると、水分吸着材による水分吸着の効果が十分に発揮できないからである。
【0031】
図2は、本発明に係る排気浄化装置が、内燃機関に接続されて使用される例を示した模式図である。なお、本発明に係る排気浄化装置10は、説明の便宜のため、断面模式図によって示す。また、図2に示した白ヌキ矢印は、排気ガス流れ方向を示す。
図2の中央部に示された内燃機関には、排気浄化装置10の他にも、EGRクーラー11、EGRライン12、DPF(Diesel Pariculate Filter)13、NOx還元触媒14が付属している。
【0032】
NOx吸着材が銀アルミナ触媒であり、排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持された銀アルミナ触媒が配置され、銀アルミナ触媒が配置された区間より排気ガス流れ方向下流に、銀ゼオライト触媒が配置されることが好ましい。
銀アルミナ触媒が配置された区間が、水分吸着能を有する基材が配置されるガス流れ方向上流側の区間と、銀ゼオライト触媒が配置されるガス流れ方向下流側の区間の間に設けられることがより好ましい。
【0033】
銀ゼオライト触媒は、150℃以下の低温で高いNOx吸着能を示すが、後述する実施例において示すように、CO2共存下ではNOx吸着が阻害され、本来の吸着性能を発揮できない。これは、CO2分子がゼオライトの吸着サイトを直接塞いだり、或いは、CO2分子が当該吸着サイトへの進入路を塞ぐことにより間接的にNOx分子のゼオライトへの吸着を阻止したりすることによって、NOx吸着量が大幅に減少してしまうためである。また、H2O、HC(炭化水素)も同様に、銀ゼオライト触媒にとってはNOx吸着阻害の要因となる。
ディーゼルエンジン等の排気ガスには、CO2、HC、H2O等のNOx吸着阻害成分が含まれるため、銀ゼオライト触媒を使用する際には、これらの吸着阻害成分を予め除去することが必要である。
【0034】
図12は、銀アルミナ触媒における50℃で吸着したCO2の脱離特性を示したグラフであり、縦軸にCO2濃度(%)を、横軸に温度(℃)をとったグラフである。図12から分かるように、銀アルミナ触媒は、100℃以下の低温においてはCO2を吸着し、100〜150℃の範囲及びそれ以上の温度においては、CO2を脱離する特性を有する。
一方、上述したように、銀アルミナ触媒は、150℃以上の高温におけるNOx吸着能に優れるという性質がある。また、水分吸着能を有する基材の内、ゼオライト基材は、さらにHC吸着能も兼ね備えている。
したがって、ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒を組み合わせることにより、高いCO2、NOx、HC及びH2O吸着能を実現することができる。
【0035】
以下、説明の簡略化のために、ゼオライト基材が配置された区間を排気ガス流れ方向の前段と、銀アルミナ触媒が配置された区間を排気ガス流れ方向の中段と、銀ゼオライト触媒が配置された区間を排気ガス流れ方向の後段と、それぞれ称する。
【0036】
本発明の好ましい形態においては、CO2及びNOx除去は、中段及び後段で行う。
室温〜150℃程度の低温域においては、中段の銀アルミナ触媒がCO2を吸着する。このことにより、後段の銀ゼオライト触媒におけるCO2による悪影響が減少し、後段の銀ゼオライト触媒のNOx吸着能が向上する。
150℃以上の高温域においては、CO2は中段の銀アルミナ触媒に吸着されず、脱離を起こす。しかし、中段の銀アルミナ触媒はCO2の影響をそもそも受けないため、銀アルミナ触媒が主なNOx吸着材となる。一方、後段においてはCO2の影響により銀ゼオライト触媒のNOx吸着性能は低下するため、銀ゼオライト触媒は副次的なNOx吸着材となる。
【0037】
さらに、本発明の好ましい形態においては、HC及びH2O除去は、前段のゼオライトで行う。ゼオライトは鉄、銅、金、銀等の金属でイオン交換したものを用いるとより排気浄化効率が良く、好ましい。
【0038】
銀ゼオライト触媒は、常法により製造することができる。
【0039】
なお、排気流路全体における、ゼオライト基材、銀アルミナ触媒、銀ゼオライト触媒の配置については、ゼオライト基材が少なくとも排気流路の上流端に位置しており、且つ、銀ゼオライト触媒が少なくとも排気流路の下流端に位置していれば特に限定されないが、排気流路全体における、上流端から30%の区間をゼオライトが占めることが好ましく、且つ、排気流路全体における、下流端から30%の区間を銀ゼオライト触媒が占めることが好ましい。仮にゼオライト基材の配置された区間が上流端から30%未満であるとすると、ゼオライト基材によるH2O除去及びHC除去の効果が十分に発揮されない。仮に銀ゼオライト触媒の配置された区間が下流端から30%未満であるとすると、銀ゼオライト触媒によるNO除去の効果が十分に発揮されない。
【0040】
図3は、ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒を連続して配置する構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図である。なお、図3中の白ヌキ矢印は、排気ガス流れ方向を示す。
本発明の好ましい形態は、図3(a)に示すように、排気ガス流路全域にゼオライト基材1が一体として配置され、排気ガス流路の中段に銀アルミナ触媒2が、排気ガス流路の後段に銀触媒5が、それぞれ塗布されている。
本発明の好ましい形態は、基材となるゼオライトが必ずしも排気ガス流路全域において一体となっていなくてもよい。すなわち、図3(b)に示すように中段−後段間において、図3(c)に示すように前段−中段間において、図3(d)に示すように前段−中段間及び中段−後段間において、それぞれ基材が途切れていてもよい。また、後段においてはコーディエライト基材に銀ゼオライト触媒を塗布した触媒を配置してもよい。
【0041】
図4は、ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒の具体的な設置例を示した模式図である。なお、図4中の白ヌキ矢印は、排気ガス流れ方向を示す。
本発明の好ましい形態においては、図4(a)に示すように、ゼオライト基材20、銀アルミナ触媒21、銀ゼオライト触媒22の順に連続して配置されていてもよいし、図4(b)に示すように、ゼオライト基材20、銀アルミナ触媒21、銀ゼオライト触媒22の順にそれぞれ単独に配置されていてもよい。
特に中段の銀アルミナ触媒21の位置は、排気ガス中の吸着対象によって調整することができる。すなわち、CO2脱離後の銀アルミナ触媒によるNOx吸着を重視する場合には、図4(c)に示すように、ゼオライト基材20及び銀アルミナ触媒21を連続して配置することにより、中段を内燃機関寄りに設定し、中段の触媒使用温度域を予め高く設定することができる。一方、銀アルミナ触媒によるCO2吸着を重視する場合には、図4(d)に示すように、銀アルミナ触媒21及び銀ゼオライト触媒22を連続して配置し、中段をアンダーフロア寄りに設定し、中段の触媒使用温度域を予め低く設定することができる。
なお、後段の銀ゼオライト触媒は、低温域ほど性能が出るため、アンダーフロア寄りに単独で配置するという構成をとることもできる。
以上のように、具体的な使用の態様としては、前段、中段、後段の触媒は、必ずしも連続して設ける必要はなく、ゼオライト基材/銀アルミナ触媒/銀ゼオライト触媒の順であれば特に使用の態様は限定されない。
【実施例】
【0042】
1.排気浄化装置の製造
[実施例1]
排気ガス流れ方向の順に、ゼオライト基材及び銀アルミナ触媒を連続して配置した、実施例1の排気浄化装置を用意した。
ゼオライト基材及び銀アルミナ触媒が連続してなる触媒の製造方法は以下の通りである。
まず、アルミナ粉末にバインダーと水を混ぜてスラリー状にした。当該スラリーを、ゼオライトからなる基材の端から所定の位置までの一部分にコートし、ゼオライト基材にアルミナを被覆した。アルミナを一部被覆したゼオライト基材を、250℃の温度条件下、30分程乾燥させた後、500℃の温度条件下、1時間程大気中で焼成した。
次に、硝酸銀をイオン交換水で所定量溶解し、硝酸銀水溶液を調製した。硝酸銀水溶液中に、ゼオライト基材のアルミナを被覆した部分を浸漬吸水させ、当該部分に銀を吸水担持させた。その後、銀アルミナ触媒を一部担持したゼオライト基材を、乾燥させ、大気中550℃の温度条件下、3時間焼成した。最後に、焼成した触媒に対し、水素5%含有窒素により、500℃の温度条件下、3時間水素還元処理を行った。
完成した触媒を、ゼオライト基材が露出した部分が排気ガス流れ方向上流と、銀アルミナ触媒で被覆された部分が排気ガス流れ方向下流となるように、排気浄化装置内に配置した。
【0043】
[実施例2]
排気ガス流れ方向の順に、ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒を連続して配置した、実施例2の排気浄化装置を用意した。
銀ゼオライト触媒の製造方法は以下の通りである。
まず、硝酸銀をイオン交換水に所定量加え、溶けるまで十分攪拌した。次に、NH4型のゼオライトを加え、十分に攪拌した。続いて、銀ゼオライト溶液にアンモニア水を加え、pH10に調整し、ウォーターバスによって80℃の温度条件で8時間程加熱して、イオン交換を行った。その後、イオン交換水を加えて遠心分離し、固形分を120℃の温度条件下、8時間乾燥させた。乾燥させた触媒を、炉を用いて、600℃の温度条件下、2時間空気焼成し、銀ゼオライト触媒が完成した。銀ゼオライト触媒はスラリー状にし、コーディエライト基材に塗布した。
上述した実施例1の触媒を、ゼオライト基材が露出した部分が排気ガス流れ方向上流と、銀アルミナ触媒で被覆された部分が排気ガス流れ方向中流となるように排気浄化装置内に配置し、かつ、コーディエライト基材に担持された銀ゼオライト触媒が排気ガス流れ方向下流となるように排気浄化装置内に配置した。
【0044】
[比較例1]
排気ガス流れ方向の順に、コーディエライトを基材とし、排気ガス流れ方向上流にゼオライトを、排気ガス流れ方向下流に銀アルミナ触媒を、それぞれ担持した比較例1の排気浄化装置を用意した。
まず、ゼオライト粉末にバインダーと水を混合してスラリー状にし、コーディエライト基材に塗布した。ゼオライトで被覆されたコーディエライト基材を、250℃の温度条件下で30分間乾燥させ、続いて500℃の温度条件下で1時間、大気中で焼成した。
次に、アルミナ粉末にバインダーと水を混合してスラリー状にし、コーディエライト基材に塗布した。アルミナで被覆されたコーディエライト基材を、250℃の温度条件下で30分間乾燥させ、続いて500℃の温度条件下で1時間、大気中で焼成した。
続いて、硝酸銀をイオン交換水で所定量溶解し、硝酸銀水溶液を調製した。硝酸銀水溶液中に、アルミナで被覆されたコーディエライト基材を浸漬吸水させ、当該部分に銀を吸水担持させた。その後、銀アルミナ触媒を担持したコーディエライト基材を、乾燥させ、大気中550℃の温度条件下、3時間焼成した。最後に、焼成した触媒に対し、水素5%含有窒素により、500℃の温度条件下、3時間水素還元処理を行い、コーディエライト基材に担持された銀アルミナ触媒が完成した。
コーディエライト基材に担持されたゼオライト触媒が排気ガス流れ方向上流と、コーディエライト基材に担持された銀アルミナ触媒が排気ガス流れ方向下流となるように、排気浄化装置内に配置した。
【0045】
[比較例2]
常法に従い、銀ゼオライト触媒を用意し、当該触媒を排気流路内に有する比較例2の排気浄化装置を用意した。
【0046】
2.排気浄化装置内の銀アルミナ触媒のNO吸着活性の測定
実施例1及び比較例1の排気浄化装置について、銀アルミナ触媒のNO吸着能の差を調べた。具体的には、実施例1及び比較例1の装置内に、それぞれNOガスを流通させ、始動時から400秒までの銀アルミナ触媒の温度を測定した。なお、触媒温度の測定にはベンチを使用した。また、図5のグラフに示した温度は、実施例1の場合は排気ガス流れ方向下流のゼオライト基材の中心部分において測定し、比較例1の場合は排気ガス流れ方向下流のコーディエライト基材の中心部分において測定した。
図5は、実施例1及び比較例1の排気浄化装置内のNO吸着材昇温特性を示したグラフ、及び実施例1及び比較例1の排気浄化装置内の触媒の断面模式図である。図5中の破線のグラフ(b)は、比較例1の排気浄化装置を用いた際のグラフである。図5から分かるように、比較例1の排気浄化装置を用いた際の、銀アルミナ触媒の活性温度(130℃)に達するまでの時間は、200秒を優に超えてしまっている。一方、図5中の実線のグラフ(a)は、実施例1の排気浄化装置を用いた際のグラフである。実施例1の排気浄化装置を用いた際の、銀アルミナ触媒の活性温度(130℃)に達するまでの時間は約200秒である。この結果から、コーディエライト基材を用いた比較例1の装置よりも、ゼオライト基材を用いた実施例1の装置の方が、より短時間で銀アルミナ触媒の活性温度に到達することが分かる。
なお、図5中の実線のグラフ(c)は、実施例1の排気浄化装置を用い、且つ、当該装置内を水分飽和状態とした際のNO吸着材昇温特性のグラフである。実施例1の排気浄化装置は、水分飽和状態の環境下においては、水分の影響でNO吸着材昇温特性が低くなることが分かる。
【0047】
3.排気浄化装置内の銀ゼオライト触媒のNOx吸着活性の測定
3−1.CO2を含有したNOxに対する吸着活性の測定
実施例2及び比較例2の排気浄化装置における、銀ゼオライト触媒のNOx吸着能の差を調べた。具体的には、実施例2及び比較例2の装置内に、それぞれCO2を含有するNOxガスを流通させ、ガス温度を0〜600℃の範囲で変化させた際の銀ゼオライト触媒の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を測定した。なお、NOxの脱離特性の測定には、モデルガス評価装置(日本ケミコン株式会社製)を使用し、NOxの濃度測定にはケミルス(株式会社堀場製作所製)を用いた。
図6(a)は、実施例2(太線のグラフ)及び比較例2(細い線のグラフ)の装置を用いた際の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を示したグラフである。図6(a)から分かるように、比較例2の装置内における銀ゼオライト触媒は、CO2を含有するNOxガスに対しては、100℃以上の高温度域において5ppm以下の低いNOx吸着濃度しか示さなかった。これに対し、実施例2の排気浄化装置においては、当該銀ゼオライト触媒よりも排気ガス流れ上流に配置された銀アルミナ触媒によって、CO2が予め除去された結果、銀ゼオライト触媒のNOx吸着活性が向上したことが分かる。
【0048】
3−2.H2Oを含有したNOxに対する吸着活性の測定
実施例2及び比較例2の排気浄化装置における、銀ゼオライト触媒のNOx吸着能の差を調べた。具体的には、実施例2及び比較例2の装置内に、それぞれH2Oを含有するNOxガスを流通させ、ガス温度を0〜600℃の範囲で変化させた際の銀ゼオライト触媒の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を測定した。NOx吸着濃度の測定は、上記測定機器で行った。
図6(b)は、実施例2(太線のグラフ)及び比較例2(細い線のグラフ)の装置を用いた際の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を示したグラフである。図6(b)から分かるように、比較例2の装置内における銀ゼオライト触媒は、H2Oを含有するNOxガスに対しては、100〜300℃の温度域において10ppm以下の低いNOx吸着濃度しか示さなかった。これに対し、実施例2の排気浄化装置においては、銀ゼオライト触媒よりも排気ガス流れ上流に配置されたゼオライトによって、H2Oが除去された結果、銀ゼオライト触媒のNOx吸着活性が向上したことが分かる。
【0049】
3−3.HC(炭化水素)を含有したNOxに対する吸着活性の測定
実施例2及び比較例2の排気浄化装置における、銀ゼオライト触媒のNOx吸着能の差を調べた。具体的には、実施例2及び比較例2の装置内に、それぞれプロピレン(C3H6)を含有するNOxガスを流通させ、ガス温度を0〜500℃の範囲で変化させた際の銀ゼオライト触媒の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を測定した。NOx吸着濃度の測定は、上記測定機器で行った。
図6(c)は、実施例2(太線のグラフ)及び比較例2(細い線のグラフ)の装置を用いた際の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を示したグラフである。図6(c)から分かるように、比較例2の装置内における銀ゼオライト触媒は、プロピレンを含有するNOxガスに対しては、300〜400℃の温度域において5ppm以下の低いNOx吸着濃度しか示さなかった。これに対し、実施例2の排気浄化装置においては、銀ゼオライト触媒よりも排気ガス流れ上流に配置されたゼオライトによって、プロピレンが除去された結果、銀ゼオライト触媒のNOx吸着活性が向上したことが分かる。
【符号の説明】
【0050】
1 ゼオライト又はゼオライト基材
2 銀アルミナ触媒
3 コーディエライト
4a 排気流路上流端
4b 排気流路下流端
5 銀触媒
10 排気浄化装置
11 EGRクーラー
12 EGRライン
13 DPF
14 NOx還元触媒
20 ゼオライト基材
21 銀アルミナ触媒
22 銀ゼオライト触媒
【技術分野】
【0001】
本発明は、比較的低い温度でも効率よくNOx吸着活性を示す、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に用いられる内燃機関からの排出ガスには、一酸化炭素や、未燃焼炭化水素等の、人体にとって有害な成分が含まれている。このため、一般的な車両の排気部分には、有害な成分を分解除去する排気浄化装置が設けられており、当該装置には、アルミナ等の金属酸化物に担持された白金元素や銀元素を主成分とする排気浄化触媒が備えられている。
【0003】
白金や銀を含み、且つ、担体に担持された金属触媒に関する技術は、これまでにも開発されている。特許文献1には、NOとHCとCOとが排出される排気通路に設けられる排気ガス浄化用触媒であって、NOをNO2に酸化する第1触媒と、NO2をHCと反応させることによってN2に還元する第2触媒と、HC及びCOを酸化する第3触媒とを備え、上記第1〜第3の触媒は、第2触媒が第1触媒よりも後に排気ガスに接触し、第3触媒が第2触媒よりも後に排気ガスに接触するように、上記排気通路に配置されている排気ガス浄化用触媒の技術が開示されている。当該特許文献1には、上記第1触媒として、母材に担持された銀を、及び、上記第2触媒として母材に担持された白金を用いる例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−225348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の排気ガス浄化用触媒は、当該文献の段落22に記載されているように、コーディエライト製のハニカム担体を用いている。しかし、特許文献1においては、コーディエライト担体の様な、熱容量の大きい担体を用いることによるデメリットについては全く考察されていない。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、比較的低い温度でも効率よくNOx吸着活性を示す、内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関に接続された排気流路を備える、内燃機関の排気浄化装置であって、前記排気流路内に排気浄化触媒が配置され、前記排気浄化触媒として、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材を備えることを特徴とする。
【0007】
このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、前記水分吸着能を有する基材が排気ガス中の水分を予め吸着除去するため、当該水分によって前記Nox吸着材の吸着活性が損なわれることがなく、良好に排気ガス浄化効果を発揮することができる。また、このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、排気浄化装置内が比較的低い温度であったとしても、排気ガス中の水分を吸着した前記基材の発熱により、前記Nox吸着材が加熱された結果、前記Nox吸着材の活性が向上し、NOxをより大量に前記Nox吸着材に吸着できる。
【0008】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、前記排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持された前記NOx吸着材が配置され、前記NOx吸着材が配置された区間より排気ガス流れ方向上流に水分吸着材が配置されることが好ましい。
【0009】
このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、前記水分吸着材及び前記水分吸着能を有する基材が排気ガス中の水分を予め吸着除去するため、当該水分によって前記Nox吸着材の吸着活性が損なわれることがなく、良好に排気ガス浄化効果を発揮することができる。また、このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、排気浄化装置内が比較的低い温度であったとしても、排気ガス中の水分を吸着した前記水分吸着材及び前記基材の発熱により、前記Nox吸着材が加熱された結果、前記Nox吸着材の活性が向上し、NOxをより大量に前記Nox吸着材に吸着できる。
【0010】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、前記水分吸着能を有する基材及び前記水分吸着材が一体となっていることが好ましい。
【0011】
このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、排気ガス流れ方向上流における前記水分吸着材の吸着熱が、排気ガス流れ方向下流における前記基材に伝わりやすい。
【0012】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、前記NOx吸着材が銀アルミナ触媒であることが好ましい。
【0013】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、前記水分吸着能を有する基材及び/又は前記水分吸着材がゼオライト基材であることが好ましい。
【0014】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、前記NOx吸着材が銀アルミナ触媒であり、前記排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持された前記銀アルミナ触媒が配置され、前記銀アルミナ触媒が配置された区間より排気ガス流れ方向下流に、銀ゼオライト触媒が配置されることが好ましい。
【0015】
このような構成の内燃機関の排気浄化装置は、比較的低い温度においては、前記銀ゼオライト触媒がNOxを吸着し、前記銀アルミナ触媒がNOx吸着の妨害成分であるCO2を吸着する一方、高温域においては、前記銀アルミナ触媒が主にNOxを吸着する役割を担うというように、前記銀アルミナ触媒と前記銀ゼオライト触媒とを組み合わせることによって、幅広い温度域においてNOxとCO2の吸着を実現できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、前記水分吸着能を有する基材が排気ガス中の水分を予め吸着除去するため、当該水分によって前記Nox吸着材の吸着活性が損なわれることがなく、良好に排気ガス浄化効果を発揮することができる。また、本発明によれば、排気浄化装置内が比較的低い温度であったとしても、排気ガス中の水分を吸着した前記基材の発熱により、前記Nox吸着材が加熱された結果、前記Nox吸着材の活性が向上し、NOxをより大量に前記Nox吸着材に吸着できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る排気浄化装置の典型例の構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図である。
【図2】本発明に係る排気浄化装置が、内燃機関に接続されて使用される例を示した模式図である。
【図3】ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒を連続して配置する構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図である。
【図4】ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒の具体的な設置例を示した模式図である。
【図5】実施例1及び比較例1の排気浄化装置内のNO吸着材昇温特性を示したグラフ、及び実施例1及び比較例1の排気浄化装置内の触媒の断面模式図である。
【図6】実施例2及び比較例2の排気浄化装置を用いた際の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を示したグラフである。
【図7】銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒の、温度別のNOxの吸着量を比較したグラフである。
【図8】0℃〜400℃の温度範囲における銀アルミナ触媒のNO吸着率を示したグラフである。
【図9】水分存在下・非存在下における、銀アルミナ触媒のNOx吸着活性を比較したグラフである。
【図10】ゼオライト、シリカゲル及び活性アルミナについて、水蒸気圧と水分吸着量の関係を示したグラフである。
【図11】ゼオライト、シリカゲル及び活性アルミナについて、温度と水分吸着量の関係を示したグラフである。
【図12】銀アルミナ触媒における50℃で吸着したCO2の脱離特性を示したグラフである。
【図13】コーディエライト基材を採用した排気浄化装置の構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、内燃機関に接続された排気流路を備える、内燃機関の排気浄化装置であって、前記排気流路内に排気浄化触媒が配置され、前記排気浄化触媒として、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材を備えることを特徴とする。
【0019】
本願において「NOx」とは、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)を始めとする窒素酸化物及びその混合物のことを指す。
【0020】
上記特許文献1(特開2000−225348号公報)に挙げたような従来の排気ガス浄化用触媒は、コーディエライトの様な熱容量の大きい担体を用いているため、排気浄化装置の始動時において、当該触媒が活性化する温度に上昇するまでに相当の時間を要すると考えられる。したがって、触媒が活性化するまでの時間に、排気ガス中の有害成分、特にNOが排気浄化装置を通過してしまい、その結果、当該装置は排気ガスの浄化の目的が十分に達成できないと考えられる。
発明者らは、このような従来の排気浄化装置のデメリットを、異なる温度条件下における触媒活性変化、及び、排気ガスに含まれる水分による触媒活性変化の2つの側面から検討した。
【0021】
まず、異なる温度条件下におけるNOx吸着触媒の活性変化について説明する。以下、NOx吸着材として、銀をアルミナ担体に担持させた銀アルミナ触媒、及び、ゼオライト基材に担持された銀ゼオライト触媒の例を挙げて説明する。
図7は、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒の、温度別のNOxの吸着量を比較したグラフである。図7から分かるように、50℃、100℃のいずれの温度条件においても、銀ゼオライト触媒(黒の棒グラフ)の方が、銀アルミナ触媒(白の棒グラフ)と比較してNOxの吸着量が多い。しかし、150℃の温度条件においては、銀アルミナ触媒の方が銀ゼオライト触媒よりもNOxの吸着量が格段に多い。これは、150℃という高温条件においては、銀によりNOがNO2に酸化され、且つ、NO2がアルミナ表面に吸着されるためである。
図8は、0℃〜400℃の温度範囲における銀アルミナ触媒のNO吸着率を示したグラフである。このグラフから分かるように、約130℃を境に、銀アルミナ触媒のNO吸着率は急激に上昇し、約200℃以上においてNO吸着率は100%となった。
以上のように、銀アルミナ触媒は130℃以上の温度において高いNOx吸着活性を示すため、排気浄化装置の初動時から銀アルミナ触媒による高いNOx吸着効果を得るためには、装置内に予め銀アルミナ触媒を暖機するシステムが必要となることが分かる。
【0022】
次に、排気ガスに含まれる水分による触媒活性の変化について説明する。
図9は、水分存在下・非存在下における、銀アルミナ触媒のNOx吸着活性を比較したグラフである。このグラフから、150℃の温度条件下では、排気ガス中に水分を3%含む場合(左側の棒グラフ)は、排気ガス中に水分を含まない場合(右側の棒グラフ)と比較して、NO吸着量が半分程度減少してしまうことが分かる。
以上のように、銀アルミナ触媒のようなNOx吸着材は、少なくとも150℃という高温条件下においては、排気ガス中に含まれる水分によってNOx吸着活性が著しく損なわれてしまうため、NOx吸着材による高いNOx吸着効果を得るためには、装置内に予め水分を除去するシステムが必要となることが分かる。
【0023】
このように、異なる温度条件下における触媒活性変化、及び、排気ガスに含まれる水分による触媒活性変化の2つについて検討した結果、発明者らは、排気浄化触媒として、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材を用いることにより、NOxをより効率よく吸着できる本発明の排気浄化装置を完成させた。このような排気浄化装置は、水分吸着能を有する基材が排気ガス中の水分を予め吸着除去するため、当該水分によってNox吸着材の吸着活性が損なわれることがなく、良好に排気ガス浄化効果を発揮することができる。また、本発明の排気浄化装置は、当該装置内が比較的低い温度であったとしても、排気ガス中の水分を吸着した前記基材の発熱により、Nox吸着材が加熱された結果、Nox吸着材の活性が向上し、NOxをより大量にNox吸着材に吸着できる。
【0024】
上述した水分除去、及び、NOx吸着材の加熱をより促進させるために、排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材が配置され、NOx吸着材が配置された区間より排気ガス流れ方向上流に水分吸着材が配置されることが好ましい。
【0025】
排気ガス流れ方向上流における水分吸着材の吸着熱が、排気ガス流れ方向下流における水分吸着能を有する基材に伝わりやすいという観点から、水分吸着能を有する基材及び水分吸着材が一体となっていることが好ましい。
【0026】
図1は、本発明に係る排気浄化装置の典型例の構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図であり、図13は、コーディエライト基材を採用した排気浄化装置の構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図である。なお、図1に描かれた典型例は、NOx吸着材として銀アルミナ触媒を、水分吸着能を有する基材及び水分吸着材としてゼオライト基材を、それぞれ用いた例である。また、図1及び図13に示した白ヌキ矢印は、いずれも排気ガス浄化触媒内を通過する排気ガス流れ方向を示す矢印である。また、図1及び図13の模式図は、単純化のために、排気ガス流路を直線流路として描いている。しかし、本発明に係る排気浄化装置が備える排気流路の形状は、必ずしも直線のみに限定されず、蛇行形状や、ジグザグ形状等を含む。
図13に示す排気浄化装置は、コーディエライト3を基材とし、排気ガス流れ方向上流端4aから所定の区間にはゼオライト1を、排気ガス流れ方向下流端4bから所定の区間には銀アルミナ触媒2を配置した構成となっている。これに対し、図1に示した本発明に係る排気浄化装置の典型例は、一体として構成されたゼオライト1を基材とし、排気ガス流れ方向上流端4aから所定の区間には銀アルミナ触媒を担持せず、排気ガス流れ方向下流端4bから所定の区間には銀アルミナ触媒2を担持した構成となっている。
図13に示したような、従来のコーディエライト基材を採用した構成は、コーディエライト基材が高い熱容量を有するため、基材による速やかな触媒の加熱効果は期待できない。一方、図1に示した本発明の典型例の構成は、ゼオライトを基材として用いているため速やかな昇温が期待でき、且つ、ゼオライト基材が排気流路全体に一体として構成されているため、排気ガス流れ方向下流の銀アルミナ触媒への熱伝導が速やかに行われる。その結果、銀アルミナ触媒がより早く活性化するため、排気浄化装置始動時のNOを吸着除去しやすくなる。
【0027】
NOx吸着材としては、銀アルミナ触媒、銀ゼオライト触媒、鉄ゼオライト触媒、銅ゼオライト触媒等を用いることができる。これらの内、NOx吸着材として銀アルミナ触媒を用いることが好ましい。
銀アルミナ触媒は、常法により製造することができる。水分吸着能を有する基材への銀アルミナ触媒の担持は、当該基材の所定領域に銀アルミナ触媒を塗布、含浸等することにより行う。
【0028】
水分吸着能を有する基材及び/又は水分吸着材が、ゼオライト基材であることが好ましい。
図10は、ゼオライト、シリカゲル及び活性アルミナについて、水蒸気圧と水分吸着量の関係を示し、縦軸に水分吸着量(質量%)を、横軸に水の蒸気圧(Torr)をとったグラフである。図10から分かるように、シリカゲルや活性アルミナは、水の蒸気圧が1Torr未満においてはほとんど水分を吸着しない。これに対しゼオライトは、水の蒸気圧が0.01〜100Torrの範囲内において一貫して高い水分吸着量を維持し、特に10Torr未満の水蒸気圧においては、シリカゲルや活性アルミナよりも優れた水分吸着活性を示すことが分かる。
図11は、ゼオライト、シリカゲル及び活性アルミナについて、温度と水分吸着量の関係を示し、縦軸に水分吸着量(質量%)を、横軸に温度(℃)をとったグラフである。図11から分かるように、シリカゲルや活性アルミナは、100℃以上の温度域においてはほとんど水分吸着活性を示さない。これに対し、ゼオライトは、100℃以上の温度域においても十分な水分吸着活性を示すことが分かる。
以上より、ゼオライトは、シリカゲルや活性アルミナと比較して、幅広い水蒸気圧の範囲及び広い温度域において、良好な水分吸着活性を示すことが分かる。
【0029】
さらに、ゼオライトは水分を吸着すると、吸着熱により発熱することが分かっている。このようなゼオライトを、NOx吸着材よりも排気ガス流れ方向上流に配置することによって、排気ガス中の水分を予めゼオライトによって吸着除去することができ、且つ、当該吸着によって生じる吸着熱によってNOx吸着材を暖機することができ、その結果、特に装置始動時の、比較的低い温度条件において、NOをNOx吸着材によって吸着除去することができる。従来技術においては、コーディエライト基材の様な熱容量の高い基材を用いていたため、NOx吸着材の暖機は不可能であった。
【0030】
なお、排気流路全体における、水分吸着材と、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材との配置については、水分吸着材が少なくとも排気流路の上流端に位置していれば特に限定されないが、排気流路全体における、上流端から30%の区間を水分吸着材が占めることが好ましい。仮に30%未満であるとすると、水分吸着材による水分吸着の効果が十分に発揮できないからである。
【0031】
図2は、本発明に係る排気浄化装置が、内燃機関に接続されて使用される例を示した模式図である。なお、本発明に係る排気浄化装置10は、説明の便宜のため、断面模式図によって示す。また、図2に示した白ヌキ矢印は、排気ガス流れ方向を示す。
図2の中央部に示された内燃機関には、排気浄化装置10の他にも、EGRクーラー11、EGRライン12、DPF(Diesel Pariculate Filter)13、NOx還元触媒14が付属している。
【0032】
NOx吸着材が銀アルミナ触媒であり、排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持された銀アルミナ触媒が配置され、銀アルミナ触媒が配置された区間より排気ガス流れ方向下流に、銀ゼオライト触媒が配置されることが好ましい。
銀アルミナ触媒が配置された区間が、水分吸着能を有する基材が配置されるガス流れ方向上流側の区間と、銀ゼオライト触媒が配置されるガス流れ方向下流側の区間の間に設けられることがより好ましい。
【0033】
銀ゼオライト触媒は、150℃以下の低温で高いNOx吸着能を示すが、後述する実施例において示すように、CO2共存下ではNOx吸着が阻害され、本来の吸着性能を発揮できない。これは、CO2分子がゼオライトの吸着サイトを直接塞いだり、或いは、CO2分子が当該吸着サイトへの進入路を塞ぐことにより間接的にNOx分子のゼオライトへの吸着を阻止したりすることによって、NOx吸着量が大幅に減少してしまうためである。また、H2O、HC(炭化水素)も同様に、銀ゼオライト触媒にとってはNOx吸着阻害の要因となる。
ディーゼルエンジン等の排気ガスには、CO2、HC、H2O等のNOx吸着阻害成分が含まれるため、銀ゼオライト触媒を使用する際には、これらの吸着阻害成分を予め除去することが必要である。
【0034】
図12は、銀アルミナ触媒における50℃で吸着したCO2の脱離特性を示したグラフであり、縦軸にCO2濃度(%)を、横軸に温度(℃)をとったグラフである。図12から分かるように、銀アルミナ触媒は、100℃以下の低温においてはCO2を吸着し、100〜150℃の範囲及びそれ以上の温度においては、CO2を脱離する特性を有する。
一方、上述したように、銀アルミナ触媒は、150℃以上の高温におけるNOx吸着能に優れるという性質がある。また、水分吸着能を有する基材の内、ゼオライト基材は、さらにHC吸着能も兼ね備えている。
したがって、ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒を組み合わせることにより、高いCO2、NOx、HC及びH2O吸着能を実現することができる。
【0035】
以下、説明の簡略化のために、ゼオライト基材が配置された区間を排気ガス流れ方向の前段と、銀アルミナ触媒が配置された区間を排気ガス流れ方向の中段と、銀ゼオライト触媒が配置された区間を排気ガス流れ方向の後段と、それぞれ称する。
【0036】
本発明の好ましい形態においては、CO2及びNOx除去は、中段及び後段で行う。
室温〜150℃程度の低温域においては、中段の銀アルミナ触媒がCO2を吸着する。このことにより、後段の銀ゼオライト触媒におけるCO2による悪影響が減少し、後段の銀ゼオライト触媒のNOx吸着能が向上する。
150℃以上の高温域においては、CO2は中段の銀アルミナ触媒に吸着されず、脱離を起こす。しかし、中段の銀アルミナ触媒はCO2の影響をそもそも受けないため、銀アルミナ触媒が主なNOx吸着材となる。一方、後段においてはCO2の影響により銀ゼオライト触媒のNOx吸着性能は低下するため、銀ゼオライト触媒は副次的なNOx吸着材となる。
【0037】
さらに、本発明の好ましい形態においては、HC及びH2O除去は、前段のゼオライトで行う。ゼオライトは鉄、銅、金、銀等の金属でイオン交換したものを用いるとより排気浄化効率が良く、好ましい。
【0038】
銀ゼオライト触媒は、常法により製造することができる。
【0039】
なお、排気流路全体における、ゼオライト基材、銀アルミナ触媒、銀ゼオライト触媒の配置については、ゼオライト基材が少なくとも排気流路の上流端に位置しており、且つ、銀ゼオライト触媒が少なくとも排気流路の下流端に位置していれば特に限定されないが、排気流路全体における、上流端から30%の区間をゼオライトが占めることが好ましく、且つ、排気流路全体における、下流端から30%の区間を銀ゼオライト触媒が占めることが好ましい。仮にゼオライト基材の配置された区間が上流端から30%未満であるとすると、ゼオライト基材によるH2O除去及びHC除去の効果が十分に発揮されない。仮に銀ゼオライト触媒の配置された区間が下流端から30%未満であるとすると、銀ゼオライト触媒によるNO除去の効果が十分に発揮されない。
【0040】
図3は、ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒を連続して配置する構成の、排気ガス流れ方向に平行な方向に切断した断面模式図である。なお、図3中の白ヌキ矢印は、排気ガス流れ方向を示す。
本発明の好ましい形態は、図3(a)に示すように、排気ガス流路全域にゼオライト基材1が一体として配置され、排気ガス流路の中段に銀アルミナ触媒2が、排気ガス流路の後段に銀触媒5が、それぞれ塗布されている。
本発明の好ましい形態は、基材となるゼオライトが必ずしも排気ガス流路全域において一体となっていなくてもよい。すなわち、図3(b)に示すように中段−後段間において、図3(c)に示すように前段−中段間において、図3(d)に示すように前段−中段間及び中段−後段間において、それぞれ基材が途切れていてもよい。また、後段においてはコーディエライト基材に銀ゼオライト触媒を塗布した触媒を配置してもよい。
【0041】
図4は、ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒の具体的な設置例を示した模式図である。なお、図4中の白ヌキ矢印は、排気ガス流れ方向を示す。
本発明の好ましい形態においては、図4(a)に示すように、ゼオライト基材20、銀アルミナ触媒21、銀ゼオライト触媒22の順に連続して配置されていてもよいし、図4(b)に示すように、ゼオライト基材20、銀アルミナ触媒21、銀ゼオライト触媒22の順にそれぞれ単独に配置されていてもよい。
特に中段の銀アルミナ触媒21の位置は、排気ガス中の吸着対象によって調整することができる。すなわち、CO2脱離後の銀アルミナ触媒によるNOx吸着を重視する場合には、図4(c)に示すように、ゼオライト基材20及び銀アルミナ触媒21を連続して配置することにより、中段を内燃機関寄りに設定し、中段の触媒使用温度域を予め高く設定することができる。一方、銀アルミナ触媒によるCO2吸着を重視する場合には、図4(d)に示すように、銀アルミナ触媒21及び銀ゼオライト触媒22を連続して配置し、中段をアンダーフロア寄りに設定し、中段の触媒使用温度域を予め低く設定することができる。
なお、後段の銀ゼオライト触媒は、低温域ほど性能が出るため、アンダーフロア寄りに単独で配置するという構成をとることもできる。
以上のように、具体的な使用の態様としては、前段、中段、後段の触媒は、必ずしも連続して設ける必要はなく、ゼオライト基材/銀アルミナ触媒/銀ゼオライト触媒の順であれば特に使用の態様は限定されない。
【実施例】
【0042】
1.排気浄化装置の製造
[実施例1]
排気ガス流れ方向の順に、ゼオライト基材及び銀アルミナ触媒を連続して配置した、実施例1の排気浄化装置を用意した。
ゼオライト基材及び銀アルミナ触媒が連続してなる触媒の製造方法は以下の通りである。
まず、アルミナ粉末にバインダーと水を混ぜてスラリー状にした。当該スラリーを、ゼオライトからなる基材の端から所定の位置までの一部分にコートし、ゼオライト基材にアルミナを被覆した。アルミナを一部被覆したゼオライト基材を、250℃の温度条件下、30分程乾燥させた後、500℃の温度条件下、1時間程大気中で焼成した。
次に、硝酸銀をイオン交換水で所定量溶解し、硝酸銀水溶液を調製した。硝酸銀水溶液中に、ゼオライト基材のアルミナを被覆した部分を浸漬吸水させ、当該部分に銀を吸水担持させた。その後、銀アルミナ触媒を一部担持したゼオライト基材を、乾燥させ、大気中550℃の温度条件下、3時間焼成した。最後に、焼成した触媒に対し、水素5%含有窒素により、500℃の温度条件下、3時間水素還元処理を行った。
完成した触媒を、ゼオライト基材が露出した部分が排気ガス流れ方向上流と、銀アルミナ触媒で被覆された部分が排気ガス流れ方向下流となるように、排気浄化装置内に配置した。
【0043】
[実施例2]
排気ガス流れ方向の順に、ゼオライト基材、銀アルミナ触媒及び銀ゼオライト触媒を連続して配置した、実施例2の排気浄化装置を用意した。
銀ゼオライト触媒の製造方法は以下の通りである。
まず、硝酸銀をイオン交換水に所定量加え、溶けるまで十分攪拌した。次に、NH4型のゼオライトを加え、十分に攪拌した。続いて、銀ゼオライト溶液にアンモニア水を加え、pH10に調整し、ウォーターバスによって80℃の温度条件で8時間程加熱して、イオン交換を行った。その後、イオン交換水を加えて遠心分離し、固形分を120℃の温度条件下、8時間乾燥させた。乾燥させた触媒を、炉を用いて、600℃の温度条件下、2時間空気焼成し、銀ゼオライト触媒が完成した。銀ゼオライト触媒はスラリー状にし、コーディエライト基材に塗布した。
上述した実施例1の触媒を、ゼオライト基材が露出した部分が排気ガス流れ方向上流と、銀アルミナ触媒で被覆された部分が排気ガス流れ方向中流となるように排気浄化装置内に配置し、かつ、コーディエライト基材に担持された銀ゼオライト触媒が排気ガス流れ方向下流となるように排気浄化装置内に配置した。
【0044】
[比較例1]
排気ガス流れ方向の順に、コーディエライトを基材とし、排気ガス流れ方向上流にゼオライトを、排気ガス流れ方向下流に銀アルミナ触媒を、それぞれ担持した比較例1の排気浄化装置を用意した。
まず、ゼオライト粉末にバインダーと水を混合してスラリー状にし、コーディエライト基材に塗布した。ゼオライトで被覆されたコーディエライト基材を、250℃の温度条件下で30分間乾燥させ、続いて500℃の温度条件下で1時間、大気中で焼成した。
次に、アルミナ粉末にバインダーと水を混合してスラリー状にし、コーディエライト基材に塗布した。アルミナで被覆されたコーディエライト基材を、250℃の温度条件下で30分間乾燥させ、続いて500℃の温度条件下で1時間、大気中で焼成した。
続いて、硝酸銀をイオン交換水で所定量溶解し、硝酸銀水溶液を調製した。硝酸銀水溶液中に、アルミナで被覆されたコーディエライト基材を浸漬吸水させ、当該部分に銀を吸水担持させた。その後、銀アルミナ触媒を担持したコーディエライト基材を、乾燥させ、大気中550℃の温度条件下、3時間焼成した。最後に、焼成した触媒に対し、水素5%含有窒素により、500℃の温度条件下、3時間水素還元処理を行い、コーディエライト基材に担持された銀アルミナ触媒が完成した。
コーディエライト基材に担持されたゼオライト触媒が排気ガス流れ方向上流と、コーディエライト基材に担持された銀アルミナ触媒が排気ガス流れ方向下流となるように、排気浄化装置内に配置した。
【0045】
[比較例2]
常法に従い、銀ゼオライト触媒を用意し、当該触媒を排気流路内に有する比較例2の排気浄化装置を用意した。
【0046】
2.排気浄化装置内の銀アルミナ触媒のNO吸着活性の測定
実施例1及び比較例1の排気浄化装置について、銀アルミナ触媒のNO吸着能の差を調べた。具体的には、実施例1及び比較例1の装置内に、それぞれNOガスを流通させ、始動時から400秒までの銀アルミナ触媒の温度を測定した。なお、触媒温度の測定にはベンチを使用した。また、図5のグラフに示した温度は、実施例1の場合は排気ガス流れ方向下流のゼオライト基材の中心部分において測定し、比較例1の場合は排気ガス流れ方向下流のコーディエライト基材の中心部分において測定した。
図5は、実施例1及び比較例1の排気浄化装置内のNO吸着材昇温特性を示したグラフ、及び実施例1及び比較例1の排気浄化装置内の触媒の断面模式図である。図5中の破線のグラフ(b)は、比較例1の排気浄化装置を用いた際のグラフである。図5から分かるように、比較例1の排気浄化装置を用いた際の、銀アルミナ触媒の活性温度(130℃)に達するまでの時間は、200秒を優に超えてしまっている。一方、図5中の実線のグラフ(a)は、実施例1の排気浄化装置を用いた際のグラフである。実施例1の排気浄化装置を用いた際の、銀アルミナ触媒の活性温度(130℃)に達するまでの時間は約200秒である。この結果から、コーディエライト基材を用いた比較例1の装置よりも、ゼオライト基材を用いた実施例1の装置の方が、より短時間で銀アルミナ触媒の活性温度に到達することが分かる。
なお、図5中の実線のグラフ(c)は、実施例1の排気浄化装置を用い、且つ、当該装置内を水分飽和状態とした際のNO吸着材昇温特性のグラフである。実施例1の排気浄化装置は、水分飽和状態の環境下においては、水分の影響でNO吸着材昇温特性が低くなることが分かる。
【0047】
3.排気浄化装置内の銀ゼオライト触媒のNOx吸着活性の測定
3−1.CO2を含有したNOxに対する吸着活性の測定
実施例2及び比較例2の排気浄化装置における、銀ゼオライト触媒のNOx吸着能の差を調べた。具体的には、実施例2及び比較例2の装置内に、それぞれCO2を含有するNOxガスを流通させ、ガス温度を0〜600℃の範囲で変化させた際の銀ゼオライト触媒の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を測定した。なお、NOxの脱離特性の測定には、モデルガス評価装置(日本ケミコン株式会社製)を使用し、NOxの濃度測定にはケミルス(株式会社堀場製作所製)を用いた。
図6(a)は、実施例2(太線のグラフ)及び比較例2(細い線のグラフ)の装置を用いた際の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を示したグラフである。図6(a)から分かるように、比較例2の装置内における銀ゼオライト触媒は、CO2を含有するNOxガスに対しては、100℃以上の高温度域において5ppm以下の低いNOx吸着濃度しか示さなかった。これに対し、実施例2の排気浄化装置においては、当該銀ゼオライト触媒よりも排気ガス流れ上流に配置された銀アルミナ触媒によって、CO2が予め除去された結果、銀ゼオライト触媒のNOx吸着活性が向上したことが分かる。
【0048】
3−2.H2Oを含有したNOxに対する吸着活性の測定
実施例2及び比較例2の排気浄化装置における、銀ゼオライト触媒のNOx吸着能の差を調べた。具体的には、実施例2及び比較例2の装置内に、それぞれH2Oを含有するNOxガスを流通させ、ガス温度を0〜600℃の範囲で変化させた際の銀ゼオライト触媒の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を測定した。NOx吸着濃度の測定は、上記測定機器で行った。
図6(b)は、実施例2(太線のグラフ)及び比較例2(細い線のグラフ)の装置を用いた際の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を示したグラフである。図6(b)から分かるように、比較例2の装置内における銀ゼオライト触媒は、H2Oを含有するNOxガスに対しては、100〜300℃の温度域において10ppm以下の低いNOx吸着濃度しか示さなかった。これに対し、実施例2の排気浄化装置においては、銀ゼオライト触媒よりも排気ガス流れ上流に配置されたゼオライトによって、H2Oが除去された結果、銀ゼオライト触媒のNOx吸着活性が向上したことが分かる。
【0049】
3−3.HC(炭化水素)を含有したNOxに対する吸着活性の測定
実施例2及び比較例2の排気浄化装置における、銀ゼオライト触媒のNOx吸着能の差を調べた。具体的には、実施例2及び比較例2の装置内に、それぞれプロピレン(C3H6)を含有するNOxガスを流通させ、ガス温度を0〜500℃の範囲で変化させた際の銀ゼオライト触媒の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を測定した。NOx吸着濃度の測定は、上記測定機器で行った。
図6(c)は、実施例2(太線のグラフ)及び比較例2(細い線のグラフ)の装置を用いた際の、50℃で吸着したNOxの脱離特性(濃度)を示したグラフである。図6(c)から分かるように、比較例2の装置内における銀ゼオライト触媒は、プロピレンを含有するNOxガスに対しては、300〜400℃の温度域において5ppm以下の低いNOx吸着濃度しか示さなかった。これに対し、実施例2の排気浄化装置においては、銀ゼオライト触媒よりも排気ガス流れ上流に配置されたゼオライトによって、プロピレンが除去された結果、銀ゼオライト触媒のNOx吸着活性が向上したことが分かる。
【符号の説明】
【0050】
1 ゼオライト又はゼオライト基材
2 銀アルミナ触媒
3 コーディエライト
4a 排気流路上流端
4b 排気流路下流端
5 銀触媒
10 排気浄化装置
11 EGRクーラー
12 EGRライン
13 DPF
14 NOx還元触媒
20 ゼオライト基材
21 銀アルミナ触媒
22 銀ゼオライト触媒
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関に接続された排気流路を備える、内燃機関の排気浄化装置であって、
前記排気流路内に排気浄化触媒が配置され、
前記排気浄化触媒として、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材を備えることを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持された前記NOx吸着材が配置され、前記NOx吸着材が配置された区間より排気ガス流れ方向上流に水分吸着材が配置される、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記水分吸着能を有する基材及び前記水分吸着材が一体となっている、請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記NOx吸着材が銀アルミナ触媒である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記水分吸着能を有する基材及び/又は前記水分吸着材がゼオライト基材である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記NOx吸着材が銀アルミナ触媒であり、
前記排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持された前記銀アルミナ触媒が配置され、前記銀アルミナ触媒が配置された区間より排気ガス流れ方向下流に、銀ゼオライト触媒が配置される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項1】
内燃機関に接続された排気流路を備える、内燃機関の排気浄化装置であって、
前記排気流路内に排気浄化触媒が配置され、
前記排気浄化触媒として、水分吸着能を有する基材に担持されたNOx吸着材を備えることを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持された前記NOx吸着材が配置され、前記NOx吸着材が配置された区間より排気ガス流れ方向上流に水分吸着材が配置される、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記水分吸着能を有する基材及び前記水分吸着材が一体となっている、請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記NOx吸着材が銀アルミナ触媒である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記水分吸着能を有する基材及び/又は前記水分吸着材がゼオライト基材である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記NOx吸着材が銀アルミナ触媒であり、
前記排気流路中の所定の区間に、水分吸着能を有する基材に担持された前記銀アルミナ触媒が配置され、前記銀アルミナ触媒が配置された区間より排気ガス流れ方向下流に、銀ゼオライト触媒が配置される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−220115(P2011−220115A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86487(P2010−86487)
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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