説明

内燃機関の排気装置

【課題】内燃機関の排気装置において、テールパイプの排気口の大きさを細かに調整できるようにする。
【解決手段】内燃機関の排気ガスをマフラー30を介して排出する内燃機関の排気装置において、マフラー30の後部に設けられるテールパイプ46の内径を連続的に可変可能な開閉装置55を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排気ガスの消音を行う排気装置では、排気装置を構成する各パイプの径を細くすることで排出される音は小さくなるが、径が小さすぎると内燃機関の高回転での出力が低下する。逆に、パイプの径を大きくすることで高回転での出力を増加させることができるが、低回転における排気の音が大きくなってしまうという課題がある。この課題を解決する手段として、内燃機関の負荷に応じて排気装置のテールパイプの開口面積を変更できるようにした排気装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、テールパイプの周囲に位置する複数のシャフトで支持される複数のバルブを設け、これらバルブを複数のギヤを介してモーターで駆動することで、テールパイプの排気口の大きさを変化させる構成となっており、排気口の大きさは、全開及び全閉の2段階で制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−9392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の排気装置では、複数のシャフトやギヤを用いるため排気装置の構造が複雑であるとともに、テールパイプの排気口の大きさは2段階であり、排気口の大きさの細かな調整ができなかった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、内燃機関の排気装置において、テールパイプの排気口の大きさを細かに調整できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、内燃機関(11)の排気ガスをマフラー(30)を介して排出する内燃機関の排気装置において、前記マフラー(30)の後部に設けられるテールパイプ(46)の内径を連続的に可変可能な開閉装置(55)を設けたことを特徴とする。
この構成によれば、マフラーの後部に設けられるテールパイプの内径を連続的に可変可能な開閉装置を設けるため、テールパイプの排気口の大きさを細かに調整することができる。これにより、負荷に応じてテールパイプの内径を連続的に可変にでき、低負荷時にはテールパイプの排気口の大きさを小さくして排気音を小さく抑えることができるとともに、高負荷時にはテールパイプの排気口の大きさを大きくして出力を向上できる。
【0006】
また、上記構成において、前記開閉装置(55)は排気流の上流側から下流側に向かって徐々に内径が小さくなるように構成されていても良い。
この場合、開閉装置は排気流の上流側から下流側に向かって徐々に内径が小さくなるため、排気をスムーズに流すことができる。
また、前記開閉装置(55)は前記テールパイプ(46)に対して回転自在なベースリング(62)と、一端が前記ベースリング(62)に連結され、他端がテールパイプ(46)に連結された支持部材(66)に連結された複数のバルブ片(63,63A)と、前記ベースリング(62)を所定の回転方向に付勢するリターンスプリング(64)と、前記リターンスプリング(64)に抗して前記ベースリング(62)を回転させる回転手段(65)とを有する構成としても良い。
この場合、開閉装置はテールパイプに対して回転自在なベースリングと、一端がベースリングに連結され、他端がテールパイプに連結された支持部材に連結された複数のバルブ片と、ベースリングを所定の回転方向に付勢するリターンスプリングと、リターンスプリングに抗してベースリングを回転させる回転手段とを有し、ベースリングを回転させることでバルブ片を動かすことができ、簡単な構成でテールパイプの排気口の大きさを細かに調整できる。
【0007】
さらに、前記回転手段(65)は、前記ベースリング(62)に取付けたワイヤー(57)と、前記ワイヤー(57)を牽引するモーター(56)と、前記モーター(56)をコントロールする制御装置(50)とを有する構成としても良い。
この場合、回転手段は、ベースリングに取付けたワイヤーと、ワイヤーを牽引するモーターと、モーターをコントロールする制御装置とを有し、ワイヤーでベースリングを牽引するため、モーターをマフラーから離して配置でき、マフラーの周囲にモーターを取付ける必要がない。このため、自動二輪車のように排気管が車体の外に取り付けられる構成において、外観性に影響させずにテールパイプの排気口の大きさを細かに調整できる。
【0008】
また、前記回転手段(65)はエンジン回転数及びスロットルバルブ開度によりコントロールされても良い。
この場合、回転手段はエンジン回転数及びスロットルバルブ開度によりコントロールされるため、テールパイプの排気口の大きさを、内燃機関の出力に応じて適正な大きさに細かに調整できる。
また、前記開閉装置(55)はエンジン回転数が高く且つスロットルバルブ開度が大きいほど開度を大きくし、スロットルバルブ開度が小さいほど開度を小さくする構成としても良い。
この場合、開閉装置はエンジン回転数が高く且つスロットルバルブ開度が大きいほど開度を大きくし、スロットルバルブ開度が小さいほど開度を小さくするため、高回転・高負荷領域ではテールパイプの排気口が大きくなることで高出力が得られ、低負荷領域ではテールパイプの排気口が小さくなることで排気音を低減できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る内燃機関の排気装置では、マフラーのテールパイプの内径を連続的に可変可能な開閉装置を設けるため、テールパイプの排気口の大きさを細かに調整することができる。これにより、負荷に応じてテールパイプの内径を連続的に可変にでき、低負荷時にはテールパイプの排気口の大きさを小さくして排気音を小さく抑えることができるとともに、高負荷時にはテールパイプの排気口の大きさを大きくして出力を向上できる。
また、開閉装置は排気流の上流側から下流側に向かって徐々に内径が小さくなるため、排気をスムーズに流すことができる。
【0010】
また、開閉装置はテールパイプに対して回転自在なベースリングと、一端がベースリングに連結され、他端がテールパイプに連結された支持部材に連結された複数のバルブ片と、ベースリングを所定の回転方向に付勢するリターンスプリングと、リターンスプリングに抗してベースリングを回転させる回転手段とを有し、ベースリングを回転させることでバルブ片を動かすことができ、簡単な構成でテールパイプの排気口の大きさを細かに調整できる。
さらに、回転手段は、ベースリングに取付けたワイヤーと、ワイヤーを牽引するモーターと、モーターをコントロールする制御装置とを有し、ワイヤーでベースリングを牽引するため、モーターをマフラーから離して配置でき、マフラーの周囲にモーターを取付ける必要がない。このため、自動二輪車のように排気管が車体の外に取り付けられる構成において、外観性に影響させずにテールパイプの排気口の大きさを細かに調整できる。
【0011】
また、回転手段はエンジン回転数及びスロットルバルブ開度によりコントロールされるため、テールパイプの排気口の大きさを、内燃機関の出力に応じて適正な大きさに細かに調整できる。
また、開閉装置はエンジン回転数が高く且つスロットルバルブ開度が大きいほど開度を大きくし、スロットルバルブ開度が小さいほど開度を小さくするため、高回転・高負荷領域ではテールパイプの排気口が大きくなることで高出力が得られ、低負荷領域ではテールパイプの排気口が小さくなることで排気音を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】排気管及びマフラーを示す図である。
【図3】マフラーの後部の拡大断面図である。
【図4】開閉装置の断面図である。
【図5】図4におけるV−V断面図である。
【図6】バルブ片の開閉状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る自動二輪車の内燃機関の排気装置について図面を参照して説明する。なお、以下の説明で、上下、前後、左右の方向は、車両の運転者から見た方向をいう。
図1は、本発明の実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。
自動二輪車1は、車体フレーム10の前後の中央にエンジン11(内燃機関)が配置され、前輪2を支持するフロントフォーク12が車体フレーム10の前端に操舵可能に支持され、後輪3を支持するスイングアーム13が車体フレーム10の後部の下部に設けられた鞍乗型車両である。
【0014】
車体フレーム10は、左右一対のフロントフォーク12を支持するヘッドパイプ14と、ヘッドパイプ14から後下方に延びるメインフレーム15と、メインフレーム15の後端から左右一対で後下方に延びるセンターフレーム16と、センターフレーム16の下部に設けられる左右一対のピボットプレート17と、ヘッドパイプ14から左右一対で下方に延び、後方に屈曲してエンジン11の下方を延びてピボットプレート17の下端に連結されるダウンフレーム18と、センターフレーム16の上部から後方に延びる左右一対のシートフレーム(不図示)と、ピボットプレート17から上後方に延びて上記シートフレームに連結される左右一対のリアフレーム19とを備えて構成される。
【0015】
ピボットプレート17には、左右のピボットプレート17を車幅方向に貫通するピボット軸20が設けられ、スイングアーム13は、ピボット軸20に揺動可能に軸支されている。スイングアーム13とリアフレーム19との間には、左右一対のリヤサスペンション21が掛け渡されている。
ヘッドパイプ14には、ステアリングシャフト(不図示)が軸支され、フロントフォーク12は、上記ステアリングシャフトに連結される。操行ハンドル23はステアリングシャフトの上方に取り付けられる。
燃料タンク24は、メインフレーム15に沿うようにメインフレーム15の上方に固定され、運転者が着座するシート25は、燃料タンク24の後部に連続し、上記シートレールに支持されて後方に延びる。
【0016】
エンジン11は、直列4気筒の4ストロークエンジンであり、車幅方向に延びるクランク軸(不図示)が収容されるクランクケース26と、クランクケース26の前部から僅かに前傾して上方に延びるシリンダ27とを備え、メインフレーム15とダウンフレーム18との間に支持されている。クランクケース26の後部には変速機28が一体的に設けられている。
シリンダ27 の前部の排気口には、4つの気筒の各気筒に対応して排気管29がそれぞれ接続され、4本の排気管29はエンジン11の下方の集合部29Aで1本に集合して後方に延び、後輪3の右側方に配置されたマフラー30(排気装置)に接続される。マフラー30は、エンジン11の高温・高圧の排気ガスを減圧して外部に排出する。
シリンダ27の後方には、エンジン11に燃料及び空気を供給する吸気装置9が配置されている。
【0017】
図2は、排気管29及びマフラー30を示す図である。
排気管29は集合部29Aから後方に延びる後部接続管29Bを有し、後部接続管29Bはマフラー30の前端に接続される。
マフラー30は、後部接続管29Bに接続される接続管31と、接続管31の後端に接続されるマフラー本体32とを有している。マフラー本体32は、前端及び後端が開口した円筒部33と、円筒部33を前方から覆うフロントキャップ34と、円筒部33の後端の開口を塞ぐように設けられるテールキャップ35とを備える。円筒部33の前後の中間部には、取付けフランジ36が設けられ、この取付けフランジ36を介してマフラー30は車体フレーム10に取り付けられる。
【0018】
マフラー本体32の円筒部33は、接続管31が嵌合する開口を有する前壁部37と、テールキャップ35とによって前後を塞がれている。
円筒部33内において前壁部37とテールキャップ35との間には、円筒部33の軸方向に間隔をあけて前壁部37側から順に、第1隔壁41、第2隔壁42及び第3隔壁43が設けられている。そして、マフラー本体32内は、前壁部37及びこれらの隔壁41,42,43によって、第1膨張室51、第2膨張室52、及び第3膨張室53に仕切られている。すなわち、マフラー30は、3室構造の多段膨張式マフラーである。
【0019】
排気管29の接続管31は前壁部37を貫通して第1膨張室51に開口している。また、マフラー本体32には、第1隔壁41及び第2隔壁42を貫通し、第1膨張室51と第2膨張室52とを連通する第1連通管44と、第2隔壁42を貫通し、第2膨張室52と第3膨張室53とを連通する第2連通管45と、第2隔壁42、第3隔壁43及びテールキャップ35を貫通し、第3膨張室53と外部とを連通するテールパイプ46とが設けられている。テールパイプ46は、マフラー本体32の軸線を通るように略中央に設けられている。
テールキャップ35は、円筒部33の後端の内周側からテールパイプ46の外周面へ延びてテールパイプ46の後部を支持する支持板部35Aと、支持板部35Aに支持され、テールパイプ46の外周面を覆うアウターパイプ35Bとを有している。
【0020】
排気管29を通ってマフラー30に流入した排気ガスは、第1膨張室51に流入して膨張し、第1連通管44を通って第2膨張室52に流入して膨張する。第2膨張室52に流入した排気ガスは、流れ方向を反転して、第2連通管45を通って第3膨張室53に流入して膨張し、流れ方向を反転してテールパイプ46内を通り、外部へ排出される。
【0021】
テールパイプ46には、テールパイプ46の内径を連続的に可変可能な開閉装置55が設けられており、開閉装置55は、回転手段65によって駆動される。回転手段65は、開閉装置55を駆動するサーボモーター56(モーター)と、サーボモーター56と開閉装置55とを接続するワイヤー57と、サーボモーター56をコントロールするコントローラー58と、コントローラー58及び自動二輪車1の各部を制御するECU50(制御装置)とを有している。サーボモーター56は、車体フレーム10側に設けられており、マフラー30の外側に配置される。
ECU50は、エンジン11の回転数を検出するエンジン回転数センサー7、及び、吸気装置9のスロットルバルブ(不図示)の開度を検出するスロットルバルブ開度センサー8に接続されている。
【0022】
図3は、マフラー30の後部の拡大断面図である。図4は、開閉装置55の断面図である。
図3及び図4に示すように、テールパイプ46は、第2隔壁42と第3隔壁43の前面43A側とを接続する前部テールパイプ59と、前部テールパイプ59に連通し、第3隔壁43の後面43B側から後方に延びて外部に連通する後部テールパイプ60とを有し、開閉装置55は後部テールパイプ60に設けられる。
【0023】
開閉装置55は、第3隔壁43の後面43Bに固定される円筒状のアウターガイド61と、アウターガイド61の後端に固定される後部テールパイプ60と、アウターガイド61内に収容されて後部テールパイプ60に対し回転自在なベースリング62と、ベースリング62に連結される複数枚のバルブ片63と、ベースリング62を所定の回転方向に付勢するリターンスプリング64と、リターンスプリング64に抗してベースリング62を回転させる回転手段65と、後部テールパイプ60とバルブ片63とを連結する複数の支持棒66(支持部材)とを有している。
【0024】
図5は、図4におけるV−V断面図である。図6は、バルブ片63の開閉状態を示す模式図であり、図6(a)はバルブ片63が閉じられた状態であり、図6(b)はバルブ片63が開かれた状態である。
図3〜図6を参照し、アウターガイド61は、ベースリング62を収容する円筒状の筒部70と、筒部70の一端を塞ぐように設けられて第3隔壁43の後面43Bに固定される底板部71と、筒部70の他端に設けられて後部テールパイプ60を支持するパイプ支持部72とを有している。底板部71の周縁部には、径方向外側に突出するステー片71Aが一対設けられ、アウターガイド61は、ステー片71Aに挿通されるボルト(不図示)によって後面43Bに固定される。
【0025】
パイプ支持部72は後部テールパイプ60の前端60Aが嵌合される管状の支持孔部72Aを有し、後部テールパイプ60の前端60Aは、筒部70の内部で開口している。底板部71には前部テールパイプ59よりも小径の開口71Bが形成されており、この開口71Bを介して前部テールパイプ59と後部テールパイプ60とが連通する。
筒部70には、リターンスプリング64が固定されるばね固定孔70A(図5)、及び、ワイヤー57が挿通されるワイヤー孔70B(図5)が形成されている。
【0026】
ベースリング62は、アウターガイド61の底板部71とパイプ支持部72との間に設けられるリング状部材であり、後部テールパイプ60の前端60Aの外周面に嵌合する円筒部73と、円筒部73の端に設けられて底板部71に当接する円板状の基部74とを有している。基部74の中央には開口74Aが形成されており、排気ガスは開口74Aを通ってベースリング62を通過する。開口74Aは、アウターガイド61の開口71Bよりも小径に形成されている。
【0027】
基部74において円筒部73の内側には、排気ガスの流れの下流側に向けて突出するバルブガイド75が複数(本実施の形態では18ヶ所)形成されている。バルブガイド75は、円形の開口71Bの周縁部に沿って環状の並びとなるように配置され、互いに略等間隔をあけて開口71Bの周縁部を一周するように設けられている。バルブガイド75は、基部74の一部を切り起こすとともに、この切り起こした部分をU字状に屈曲させてフック状に形成されており、バルブガイド75を回動可能に支持するフック状のバルブ支持部75Aを有している。
【0028】
ベースリング62は、円筒部73が後部テールパイプ60の前端60Aの外周面に対して摺動自在に嵌合されており、後部テールパイプ60の軸線を中心として、アウターガイド61内で周方向に回転自在となっている。また、ベースリング62は、アウターガイド61の底板部71とパイプ支持部72との間に設けられることで軸方向の位置を規制される。
ベースリング62の円筒部73の外周面には、リターンスプリング64が巻き付けられるようにして取り付けられている。リターンスプリング64は、ねじりコイルばねであり、一端64Aがベースリング62の円筒部73に固定され、他端64Bがアウターガイド61の筒部70のばね固定孔70Aに引っ掛けられるようにして固定される。
【0029】
ベースリング62の円筒部73には、外周面から突出するワイヤー取付部73Aが設けられており、ワイヤー取付部73Aに取り付けられたワイヤー57は、ワイヤー孔70Bを通ってマフラー30の外側に延び、サーボモーター56(図2)に接続される。ベースリング62は、リターンスプリング64によって図5に矢印で示す閉方向に回転するように付勢されており、サーボモーター56によってワイヤー57が牽引されると、リターンスプリング64に抗して図5の開方向に回転する。本実施の形態では、リターンスプリング64がベースリング62を付勢する所定の回転方向は閉方向である。
【0030】
図4及び図6に示すように、バルブ片63は板ばね状の板材であり、複数のバルブ片63(本実施の形態では18枚)が合わさることで、後部テールパイプ60の内径を可変とする筒状のバルブ体76を形成している。
各バルブ片63は、ベースリング62のバルブ支持部75Aに回動可能に連結される連結部77と、連結部77から延びる略矩形の羽部78とを有している。バルブ片63は、各バルブ支持部75Aに連結されることで環状に並んで配置されるとともに、各羽部78は、各羽部78の一部分が両隣りの羽部78の間に重なるように配置され、各羽部78の先端が合わさることで、バルブ体76の先端には略円形の開口部79が形成される。また、各羽部78は、後部テールパイプ60の径方向外側に凸となるように僅かに湾曲して形成されており、バルブ体76は先端側にかけて先細りに形成されている。
【0031】
支持棒66は3本が設けられ、各支持棒66の一端は後部テールパイプ60の内周面のパイプ側接続部60Bに接続され、各支持棒66の他端は羽部78の先端の羽側連結部78Aに接続される。羽側連結部78Aは、バルブ体76の周方向に互いに略等間隔をあけて3箇所に設けられており、本実施の形態では、6枚毎に設けられている。パイプ側接続部60Bは、後部テールパイプ60の軸方向において羽側連結部78Aの近傍に設けられており、周方向に互いに略等間隔をあけて3箇所に設けられている。
すなわち、バルブ片63は一端がベースリング62に連結され、他端が各支持棒66を介して後部テールパイプ60に連結されている。
【0032】
バルブ体76は、バルブ片63が支持棒66に引っ張られることでその開度が変更される。
バルブ体76は、ベースリング62がリターンスプリング64によって閉方向に付勢されることで、図6(a)に示すように、開度が最小となる閉状態となる。閉状態においても開口部79は開口しており、排気ガスは開口部79を流れることができる。この閉状態では、バルブ体76がベースリング62と一体に後部テールパイプ60に対して相対回転されており、これに伴い、支持棒66が連結されている3つのバルブ片63Aは、図4及び図6に示すように、後部テールパイプ60の中央側に倒れるように支持棒66によって引っ張られる。支持棒66に連結されていない他のバルブ片63はバルブ片63Aに重なって連なっているため、バルブ片63Aと共に中央側に倒れ、これにより、バルブ体76の開度は最小となる。
【0033】
バルブ体76は、ベースリング62がワイヤー57を介してサーボモーター56によって開方向に牽引されることで、図6(b)に示すように、開度が最大となる開状態となる。この開状態では、バルブ体76がベースリング62と一体に後部テールパイプ60に対して閉状態とは逆方向に相対回転されており、これに伴い、支持棒66が連結されている3つのバルブ片63Aは、図4及び図6に示すように、後部テールパイプ60の内周面に近接して起きるように支持棒66によって引っ張られる。支持棒66に連結されていない他のバルブ片63はバルブ片63Aに重なって連なっているため、バルブ片63Aと共に後部テールパイプ60の内周面に接近し、これにより、バルブ体76の開度は最大となる。
閉状態から開状態への変化に対応するベースリング62の回転量は略180°であり、少ない回転量でバルブ体76を開閉できる。
【0034】
本実施の形態では、バルブ体76の開度は、ベースリング62の回転位置がサーボモーター56の駆動によって任意の位置にセットされることで開状態と閉状態との間で連続的に無段階で変化する。これにより、後部テールパイプ60の内径は連続的に可変となり、後部テールパイプ60の排気口の大きさを細かに調整することができる。
また、バルブ片63は、湾曲して形成されるとともに、上流側のバルブガイド75に支持されて回動し、バルブ体76を閉じていく際には下流側ほどバルブ体76の内径が小さくなるように構成されるため、バルブ体76を通過する排気ガスの流れの抵抗が小さくなり、排気ガスをスムーズに流すことができる。
【0035】
バルブ体76の開閉の制御は回転手段65によって行われる。ECU50は、エンジン回転数センサー7及びスロットルバルブ開度センサー8から取得したエンジン11のエンジン回転数及びスロットルバルブ開度に基づいてバルブ体76の開閉を制御する。
具体的には、ECU50は、エンジン回転数が高く且つスロットルバルブ開度が大きいほどバルブ体76の開度を大きくし、スロットルバルブ開度が小さいほどバルブ体76の開度を小さくする。これにより、エンジン11の負荷が大きい状態では、後部テールパイプ60の内径を大きくすることで排気ガスを効率良く排出し、エンジン11の大きな出力を得ることができ、エンジン11の負荷が小さい状態では、後部テールパイプ60の内径を小さくすることで排気ガスの排出量を減少させ、排気音を小さくすることができる。すなわち、バルブ体76の開閉によって、後部テールパイプ60の内径をエンジン11の負荷に応じた大きさに細かに調整でき、出力と排気音の音量の低減を両立できる。
【0036】
以上説明したように、本発明を適用した実施の形態によればマフラー30の後部に設けられるテールパイプ46の後部テールパイプ60内径を連続的に可変可能な開閉装置55を設けるため、後部テールパイプ60の排気口の大きさを細かに調整することができる。これにより、エンジン11の負荷に応じて後部テールパイプ60の内径を連続的に可変にでき、低負荷時には後部テールパイプ60の排気口の大きさを小さくして排気音を小さく抑えることができるとともに、高負荷時には後部テールパイプ60の排気口の大きさを大きくして出力を向上できる。
また、開閉装置55は排気流の上流側から下流側に向かって徐々に内径が小さくなるため、排気ガスをスムーズに流すことができる。
また、開閉装置55は後部テールパイプ60に対して回転自在なベースリング62と、一端がベースリング62に連結され、他端が後部テールパイプ60に連結された支持棒66に連結された複数のバルブ片63と、ベースリング62を所定の回転方向に付勢するリターンスプリング64と、リターンスプリング64に抗してベースリング62を回転させる回転手段65とを有し、回転手段65でベースリング62を回転させることでバルブ片63を動かすことができ、簡単な構成で後部テールパイプ60の排気口の大きさを細かに調整できる。
【0037】
さらに、回転手段65は、ベースリング62に取付けたワイヤー57と、ワイヤー57を牽引するサーボモーター56と、サーボモーター56をコントロールするECU50とを有し、ワイヤー57でベースリング62を牽引するため、サーボモーター56をマフラー30から離して配置でき、マフラー30の周囲にサーボモーター56を取付ける必要がない。このため、自動二輪車1のようにマフラー30が車体の外に取り付けられる構成において、外観性に影響させずに後部テールパイプ60の排気口の大きさを細かに調整できる。
【0038】
また、回転手段65はエンジン回転数及びスロットルバルブ開度によりコントロールされるため、後部テールパイプ60の排気口の大きさを、エンジン11の出力に応じて適正な大きさに細かに調整できる。
さらに、開閉装置55はエンジン回転数が高く且つスロットルバルブ開度が大きいほど開度を大きくし、スロットルバルブ開度が小さいほど開度を小さくするため、高回転・高負荷領域では後部テールパイプ60の排気口が大きくなることで高出力が得られ、低負荷領域では後部テールパイプ60の排気口が小さくなることで排気音を低減できる。
【0039】
なお、上記実施の形態は本発明を適用した一態様を示すものであって、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
上記実施の形態では、バルブ片63は板ばね状の板材であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、バルブ片63に複数の孔を形成し、排気ガスの一部がこれらの孔を通るように構成しても良い。この構成によれば、上記孔を通過する排気ガスは圧力が低減され、排気音を低減することができる。
また、上記実施の形態では、ECU50は、エンジン回転数及びスロットルバルブ開度に基づいてバルブ体76の開閉を制御するものとして説明したが、これに限らず、例えば、変速機28のギヤポジションセンサーにより得たギヤポジションにも基づいてバルブ体76の開閉を制御しても良い。
また、上記実施の形態では、リターンスプリング64がベースリング62を付勢する所定の回転方向は閉方向であるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、リターンスプリング64がベースリング62を付勢する所定の回転方向を開方向とし、回転手段65によってベースリング62を閉方向に回転させるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0040】
11 エンジン(内燃機関)
30 マフラー(排気装置)
46 テールパイプ
50 ECU(制御装置)
55 開閉装置
56 サーボモーター(モーター)
57 ワイヤー
61 アウターガイド
62 ベースリング
63,63A バルブ片
64 リターンスプリング
65 回転手段
66 支持棒(支持部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(11)の排気ガスをマフラー(30)を介して排出する内燃機関の排気装置において、
前記マフラー(30)の後部に設けられるテールパイプ(46)の内径を連続的に可変可能な開閉装置(55)を設けたことを特徴とする内燃機関の排気装置。
【請求項2】
前記開閉装置(55)は排気流の上流側から下流側に向かって徐々に内径が小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の排気装置。
【請求項3】
前記開閉装置(55)は前記テールパイプ(46)に対して回転自在なベースリング(62)と、一端が前記ベースリング(62)に連結され、他端がテールパイプ(46)に連結された支持部材(66)に連結された複数のバルブ片(63,63A)と、前記ベースリング(62)を所定の回転方向に付勢するリターンスプリング(64)と、前記リターンスプリング(64)に抗して前記ベースリング(62)を回転させる回転手段(65)とを有することを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の排気装置。
【請求項4】
前記回転手段(65)は、前記ベースリング(62)に取付けたワイヤー(57)と、前記ワイヤー(57)を牽引するモーター(56)と、前記モーター(56)をコントロールする制御装置(50)とを有することを特徴とする請求項3記載の内燃機関の排気装置。
【請求項5】
前記回転手段(65)はエンジン回転数及びスロットルバルブ開度によりコントロールされることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の排気装置。
【請求項6】
前記開閉装置(55)はエンジン回転数が高く且つスロットルバルブ開度が大きいほど開度を大きくし、スロットルバルブ開度が小さいほど開度を小さくすることを特徴とする請求項5記載の内燃機関の排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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