説明

内燃機関の燃料供給装置

【課題】リターン燃料中のワックスの析出でフィルタが目詰まりし、エンジンの燃料供給不足が発生することを確実に防止できる内燃機関の燃料供給装置を提供する。
【解決手段】燃料タンク2からの燃料をエンジン1の燃料噴射装置3に供給する供給管路4と、燃料噴射装置からの余剰燃料を燃料クーラー6で冷却して燃料タンクへ戻す戻し管路5と、該戻し管路を流動する燃料を燃料クーラー6の上流側の分岐部7より下流側の合流部8に燃料クーラーを迂回して流動させるバイパス路9と、合流部を通過する燃料の温度Tfnが該燃料の高温判定値Tf2より高温であると燃料クーラーと燃料タンクを連通させ、該燃料温度が低温判定値Tf1以下の低温であるとバイパス路9と燃料タンク2を連通させる流路切換え手段11を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に燃料タンクの燃料を供給するため装備される燃料供給装置、特に、内燃機関より燃料タンク内に還流される燃料の高温化を防止するための燃料クーラーを備えた内燃機関の燃料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、例えば、ディーゼルエンジン(以後単にエンジンと記す)には、燃料タンクの燃料を供給管路を通して供給し、燃料噴射装置で消費されなかった余剰燃料を戻し管路により燃料タンクに戻すようにした燃料供給装置が設けられる。
ところで、従来式の副室式燃料噴射装置を備えたエンジン(IDIディーゼルエンジン)に比べ,直噴式コモンレール燃料噴射装置を備えたエンジン(DIコモンレール式ディーゼルエンジン)は、通常、リターン燃料温度が高いことが知られている。更に、エンジンの高圧燃料ポンプへ供給する燃料の温度は高圧燃料ポンプ側要求燃料温度以下に抑える必要がある。このため、戻し管路(リターンフューエルライン)に燃料クーラーを装着する等の工夫で燃料を冷やしている。
【0003】
例えば、従来の燃料供給装置では、図8に示すように、エンジン100に装備される燃料噴射装置110に対し、燃料タンク120の燃料がフィルタ130を備える供給管路140を介して供給される。ここでの燃料噴射装置100はエンジン駆動に連動して駆動する高圧ポンプ150を備え、高圧ポンプ150に連結された燃料噴射弁160が高圧燃料をエンジン本体内の燃焼室(不図示)に噴射することで、エンジン100の出力発生が成されている。
【0004】
この燃料噴射装置100で消費されなかった余剰燃料はサーモスタット190及び燃料クーラー170を備えた戻し管路180を介して燃料タンク120に戻されている。この際、戻し管路180の燃料クーラー170が余剰燃料を冷却するので、一旦、燃料タンクに戻され、再度エンジン側に供給される燃料が過度に高温化することを抑制している。このため、高圧燃料ポンプ側要求燃料温度以下に抑制でき、またガソリンエンジンの場合は、燃料気化によりベーパ発生や燃料中のベーパ発生に起因する空燃比の希薄化が生じることを抑制でき、エンジン出力が低下することを防止している。
【0005】
一方、雰囲気温度が低い場合、高圧ポンプ150と燃料クーラー170の間のサーモスタット190が切り換え操作され、これによりサーモスタット190の上流側の戻し管路180の燃料がサーモスタット190の下流側のバイパス路200を通して燃料クーラー170を迂回して燃料タンク120に戻されている。ここでは、余剰燃料(低温軽油)が燃料クーラー170で過度に冷却されることを防ぐことが出来、余剰燃料が過冷却されてワックス析出温度を下回り、あるいは、燃料タンク120内の燃料温度が低温軽油中に析出したワックスを溶融させるに必要な溶融温度を確保することができない状態に至り、燃料中に含まれるワックス成分の析出が生じ、これに伴う流動抵抗急増によりエンジンの燃料供給不足が発生してしまうという事態の発生を防ぐようにしている。
【0006】
なお、エンジンの燃料噴射装置からの余剰燃料を戻し管路に設けた燃料クーラーで冷却してから燃料タンクに戻すようにした燃料供給装置の一例が引用文献1(特開2004−162538号公報)に開示される。
ここでは燃料クーラーの上流側分岐部に流路切換え用のサーモスタットを設け、このサーモスタットが余剰燃料の温度が高いと燃料クーラーに燃料を流して燃料の過度の高温化を抑制し、温度が低いとバイパス管路に燃料を流して燃料の過冷却を防止し燃料中に含まれるワックスの析出やエンジンへの燃料供給不足の発生を防止している。
【0007】
更に、引用文献2(特開2003−56344号公報)に開示される燃料供給装置には、エンジンのラジエータと、オイルクーラーと、インタークーラーと、フューエルクーラーとを一体に配置した建設機械のエンジン冷却装置が開示される。ここで、燃料噴射ポンプ17のリターンラインには燃料クーラーの上流側にサーモバルブが設けられ、このサーモバルブは燃料噴射ポンプからの燃料が低温時にあると、燃料クーラーをバイパスして燃料タンクに戻し、過冷却を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−162538号公報
【特許文献2】特開2003−56344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、従来のDIコモンレール式ディーゼルエンジンでは、雰囲気温度が比較的高温の場合、例えば図8に示すように、余剰燃料を燃料クーラー170で冷却してから燃料タンク120に戻すことで、再度エンジン100に供給される燃料が過度に高温化することを抑制し、高圧燃料ポンプ側要求燃料温度以下に抑え、エンジン出力低下を防止している。
一方、雰囲気温度が低い場合、例えば図8に示すように、燃料クーラー170の上流位置のサーモスタット190が燃料温度の低下を検出し、これに応じて燃料をバイパス路200に流して燃料クーラーによる過冷却を避け、余剰燃料(低温軽油)が過度に冷却されることを防止し、燃料中に含まれるワックス成分の析出に伴う流動抵抗急増によりエンジンの燃料供給不足が発生することを抑制している。
【0010】
しかし、上述の引用文献1、2や、図8に示した燃料供給装置では、燃料クーラーの上流位置である、燃料クーラーを通過する前の位置における余剰燃料の温度をサーモスタットで検知して、過冷却防止制御を行っている。
このため、従来装置では高圧ポンプからサーモスタットに達した余剰燃料の温度に応じて余剰燃料を燃料クーラーに流すか、バイパス路に流して保温性を維持するかの切換を行っており、燃料クーラー通過後の燃料温度が雰囲気温度の影響でどの程度低下するかは考慮していない。
【0011】
即ち、引用文献1、2や図8に示した燃料供給装置では、寒冷地を走行する場合、例え、高圧ポンプ1からサーモスタットに達した段階での余剰燃料の温度が、バイパス路への切換を必要としない場合でも、燃料クーラー通過後の余剰燃料の温度が外気で過度に低温化されてしまうような場合には、ワックス析出温度を下回り、あるいは、燃料タンク内の燃料温度が低温化して燃料中に析出したワックスを溶融させるに必要な溶融温度を確保することができず、これに伴い流動抵抗急増によりエンジンの燃料供給不足が生じてしまうという事態の発生を防止できない。
【0012】
本発明は以上のような課題に基づきなされたもので、目的とするところは、リターン燃料が燃料クーラーで過度に冷却されるような場合に、タンク内の燃料中に析出したワックスを溶融することができずフィルタが目詰まりし、エンジンの燃料供給不足が発生するという事態の発生を確実に防止できる内燃機関の燃料供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願請求項1の発明は、燃料タンクからの燃料をエンジンの燃料噴射装置に供給する供給管路と、前記燃料噴射装置からの余剰燃料を燃料クーラーで冷却して前記燃料タンクへ戻す戻し管路と、該戻し管路を流動する燃料を前記燃料クーラーの上流側の分岐部より下流側の合流部に燃料クーラーを迂回して流動させるバイパス路と、前記合流部を通過する燃料の温度に応じて前記戻し管路又は前記バイパス路のどちらか一方と前記燃料タンクとを連通させる流路切換え手段を備えたことを特徴とする。
【0014】
本願請求項2の発明は、請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記流路切換え手段は、前記合流部を通過する燃料温度が高温側第一温度より高温であると前記燃料クーラーと燃料タンクを連通させ、該燃料温度が低温側第一温度以下の低温であると前記バイパス路と燃料タンクを連通させるように切換えるサーモスタットであることを特徴とする。
【0015】
本願請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記燃料噴射装置からの余剰燃料量を制御する余剰燃料制御手段を備え、前記余剰燃料制御手段は、前記燃料温度が前記低温側第一温度より低温の低温側第二温度を下回ると前記余剰燃料量を増量することを特徴とする。
【0016】
本願請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記バイパス路は車体下部に支持された収容ボックス内に保持されたことを特徴とする。
【0017】
本願請求項5の発明は、請求項4に記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記バイパス路は前記燃料クーラーと共に車体下部に支持された収容ボックス内に保持されたことを特徴とする。
【0018】
本願請求項6の発明は、請求項5に記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記収容ボックスは前記燃料クーラーに外気を導くシャッターを備え、前記制御手段は該シャッターを前記燃料温度が前記高温側第一温度を上回ると開放状態に切換え、前記低温側第二温度を下回ると閉鎖状態に切換えることを特徴とする。
【0019】
本願請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料供給装置において、前記内燃機関が発生する出力を制御する出力制御手段を備え、前記出力制御手段は、前記燃料温度が前記高温側第一温度より高温の高温側第二温度を上回ると前期内燃機関からの所値以上の高出力発生を制限することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明は、合流部を通過する燃料の温度、即ち燃料タンクに戻る実際の燃料温度に応じて戻し管路とバイパス路を切換えるため、燃料タンク内の燃料温度をより正確に制御することができる。
【0021】
請求項2の発明は、合流部を通過する燃料温度に応じたサーモスタットの切換えにより、合流部を通過する燃料の温度が高温側第一温度より高温であると、燃料クーラーで燃料を冷却し、高圧燃料ポンプ側要求燃料温度へと至ることを抑制してエンジン出力低下を防止し、一方、低温側第一温度以下の低温であると、燃料をバイパス路より燃料タンクに戻して、燃料中のワックス析出へと至ることを抑制し、あるいは、タンク内の燃料がワックスを溶融させるに必要な温度以上に保持し、ワックスによるフィルタの目詰まりを抑え、エンジンの燃料供給不足が発生することを確実に防止できる。
【0022】
請求項3の発明は、燃料温度が低温側第二温度を下回ると燃料タンクに戻される高温の余剰燃料量を増量させることで、燃料タンク内の燃料温度が過剰に冷却されることを防止できる。
【0023】
請求項4の発明は、バイパス路が収容ボックス内に保持されるので、燃料温度が低温側第一温度以下の低温であって、燃料をバイパス路より燃料タンクに戻す際に、バイパス路での燃料温度の低下を防止して、より確実に、燃料の過冷却による燃料中のワックス析出を抑え、タンク内の燃料がワックスを溶融させるに必要な温度以上に保持することができ、フィルタの目詰まり、エンジンの燃料供給不足を確実に防止できる。
【0024】
請求項5の発明は、バイパス路と燃料クーラーとが共に収容ボックス内に保持されるので、請求項4に記載の内燃機関の燃料供給装置と同様の効果に加え、バイパス路と燃料クーラーとを共に走行時における路面側側の異物との接触を防止して、耐久性を確保できる。
【0025】
請求項6の発明は、請求項5に記載の内燃機関の燃料供給装置と同様の効果に加え、収容ボックスに設けたシャッターを燃料温度が高温側第一温度を上回ると開放状態にあるように制御して燃料クーラーに外気を導き、燃料タンクに流入する燃料の過度の昇温を抑制でき、逆に、燃料温度が低温側第一温度以下でかつバイパス路側に流路が切換え状態にあってもなお低温状態にあると、即ち低温側第二温度を下回るとシャッターを閉鎖して燃料クーラーの冷却機能を抑え、バイパス路側より燃料タンクに流入する燃料の過冷却を防止できる。
【0026】
請求項7の発明は、燃料温度が高温側第二温度を上回る場合、機関出力制御を行うことで余剰燃料の燃料温度を抑制し、燃料温度の過昇温を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態としての内燃機関の燃料供給装置の全体構成図である。
【図2】図1の内燃機関の燃料供給装置の全体概略模式図である。
【図3】図1の内燃機関の燃料供給装置における複数箇所での燃料温度の変動特性を示す線図である。
【図4】本発明の他の実施形態である内燃機関の燃料供給装置の全体構成図である。
【図5】図4の内燃機関の燃料供給装置で用いる燃料流路切換え処理ルーチンのフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施形態である内燃機関の燃料供給装置で用いる戻し管路とその周りの燃料クーラー、バイパス管路及び三方切換え弁、燃料クーラーシャッターの拡大部分切欠正面図である。
【図7】図6の内燃機関の燃料供給装置で用いる燃料流路切換え処理ルーチンのフローチャートである。
【図8】従来装置の内燃機関の燃料供給装置の全体概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の第1の実施の形態である内燃機関の燃料供給装置M1について説明する。
図1は本発明の内燃機関の燃料供給装置M1の全体構成を示し、図2には要部概略構成図を示した。
この内燃機関の燃料供給装置M1は内燃機関としてのディーゼルエンジン(以後エンジンと記す)1と、エンジン1に供給する燃料を貯蔵するための燃料タンク2と、燃料タンク2からの燃料をエンジン1の燃料噴射装置3に供給する供給管路4と、燃料噴射装置3からの余剰燃料を燃料タンク2へ戻す戻し管路5とを備え、図2に示すように、燃料供給路R1は概略的に環状を成すように形成される。
【0029】
更に、内燃機関の燃料供給装置M1はエンジン1から燃料タンク2へ還流される燃料を冷却するための燃料クーラー6と、戻し管路5を流動する燃料を燃料クーラー6の上流側の分岐部7より下流側の合流部8に燃料クーラー6を迂回して流動させるバイパス管路9と、合流部8に配備された流路切換え手段11とを備える。
流路切換え手段11は合流部8に配備されたサーモスタット45と、
合流部8を通過する燃料の温度を検知する温度センサ13と、サーモスタット45の切換え状態(不図示のリミットスイッチの出力)を検出し、ラジエーターシャッター、燃料クーラーシャッター、エンジン余剰燃料増量減量制御、エンジン出力制限を制御する制御手段14とを有する。
【0030】
図1に示す燃料噴射装置3はエンジン1に連動する高圧燃料ポンプ15と、エンジン本体101の長手方向に沿って配備されると共に高圧燃料ポンプ15から高圧燃料が供給されるコモンレール16と、不図示の各気筒の燃焼室に燃料噴射する各気筒と対向配備された燃料噴射弁17とを備える。エンジン本体101に支持された高圧燃料ポンプ15には車体側2支持された燃料タンク2内の燃料が直接フィルタ30を備える供給管路4を介して吸引されている。
また、図1に2点差線で示すように、低圧燃料ポンプ18有り仕様の場合は、電動の低圧燃料ポンプ18からフィルタ30を備える供給管路4を介して燃料を吸引し、その低圧燃料が高圧燃料ポンプ15で吸引され供給される。
【0031】
ここでは、高圧燃料ポンプ30のポンプ作動により供給された燃料を高圧化し、高圧燃料をコモンレール16を経て各気筒の燃料噴射弁17に供給し、制御手段14に制御される燃料噴射弁17により高圧燃料を対向する各燃焼室に噴射する。なお、図1中の符号181はタンク内フィルタを示す。更に、二点差線で示す符号19は低圧燃料ポンプ18有り仕様の場合に用いる供給管路4の低圧燃料圧を所定値に調整する調圧バルブである。
コモンレール16の一端には燃料圧を検知する燃圧センサ21が配備され、他端には燃圧調整弁20が配備され、燃圧調整弁20にはコモンレール16からの余剰燃料を燃料タンク2へ戻す戻し管路5が接続される。ここでは燃圧センサ21の燃圧信号に応じて制御手段14が高圧燃料ポンプ15の駆動及び燃圧調整弁20、余剰燃料量を調整してコモンレール圧を所定値に保持するよう制御している。
【0032】
戻し管路5はコモンレール16よりの余剰燃料を燃料タンク2に戻す流路であり、その途中で、各燃料噴射弁17や高圧燃料ポンプ15側の各リーク燃料を流動させる噴射ポンプ側戻し管22と合流し、それらの余剰燃料を下流側の分岐部7側に流動させる。戻し管路5の分岐部7はバイパス管路9の上流側が分岐して延出するように形成され、合流部8はバイパス管路9の下流側が合流するように形成される。戻し管路5の分岐部7と合流部8との間には燃料クーラー6が配設され、この燃料クーラー6と並列に直状のバイパス管路9が配備される。
【0033】
バイパス管路9の主要部と燃料クーラー6とサーモスタット45とは共に車体下部のフロア板23に締結された収容ボックス24内に収容される。収容ボックス24は強化プラスチック、例えばガラス繊維強化プラスチック(FRP)でよく、鋼板で形成されても良い。このような収容ボックス24の内壁に収容部材の取り付け部を形成しておくことで、容易に車体側に収容部材を取り付け支持できる。しかも、走行時における路面側の異物との接触を防止でき、耐久性を確保できる。
【0034】
特に、燃料クーラー6は収容ボックス24の側壁に設けた導風口25と対向配備され、この導風口より不図示の排気口に向かう走行風の流動により、燃料の放熱を容易に行なえるように形成される。一方、バイパス管路9は導風口25より不図示の排気口に向かう走行風と干渉しないような形状部位、例えば、最も収容ボックス24の上壁に近い部位に配備され、場合により、防風壁241で覆うように形成しておき、これによって、バイパス管路9を流動する燃料の放熱を抑制するようにしている。
ここで、戻し管路5は分岐部7と戻し管路5のとの間にバイパス管路9と燃料クーラー6の管路を並列に配備し、特に、合流部8にサーモスタット45を配備した構成を採る。
【0035】
流路切換え手段11の要部を成すサーモスタット45は収容ボックス24の内壁に固着されたケーシング46と、ケーシング46内の弁摺動穴47に摺動可能に支持された弁体48と、弁体48の一端と収容ボックス24の上端部との間に配備されたサーモスタット本体を成す感温部49と、弁体48の他端と収容ボックス24の下端部との間に配備された戻しばね51とを備える。
収容ボックス24にはバイパス管路9と連通するバイパスポートh1と、燃料クーラー6の管路と連通するクーラーポートh2と、これらと対向する位置に配備された流入ポートh3が形成され、更に、流入ポートh3は連絡路rhを介して弁摺動穴47の燃料流動室471に連通する。更に、燃料流動室471は連絡路rh側と離れた部位より下流側戻し管路501に連通している。
【0036】
弁摺動穴47は収容ボックス24の上下方向に長く形成され、そこに嵌合された弁体48は上下弁部481、482の2区分に区分され、上端には感温部49の外筒部材491が一体結合され、外筒部材491の中央に嵌合された内筒部材492が弁摺動穴47の内壁に一体結合される。
この感温部49は燃料流動室471を流動する燃料の温度に応じて内筒部材492に対し外筒部材491が伸縮変位し、これに応じて外筒部材491と一体の弁体48が戻しばね51の弾性力に抗して上下に摺動する。ここで、内筒部材492に対し外筒部材491が縮小変位し、上端の第1位置d1に保持されると下弁部482がバイパスポートh1を流入ポートh3に連通させ、クーラーポートh2を閉じる状態を保持する。一方、内筒部材492に対し外筒部材491が伸長変位し、下端の第2位置d2に保持されると上弁部481によりクーラーポートh2が流入ポートh3に連通され、バイパスポートh1を閉じる状態を保持する。
【0037】
次に、このようなサーモスタット45を合流部8に配し流路切換え手段11を構成する第1実施形態としての内燃機関の燃料供給装置M1の作動を説明する。
ここで、車両の走行初期にエンジン1の暖気前には、燃料温度の比較的低温(低温側第一温度Tfc)以下であり、サーモスタット45はその感温部が燃料流動室471の燃料温度が低いので、収縮し、上端の第1位置d1に保持され、下弁部482がバイパスポートh1と流入ポートh3を連通し、保温状態を保持するバイパス管路9より燃料を燃料タンク2側に導く。
【0038】
この状態では、燃料の低温化を抑制し、燃料タンク2に流入する燃料温度の過度の低下を抑えるようにし、例え寒冷地走行時でも図3に符号Lb1で示す燃料温度の状態より、符号L1で示す昇温側の温度状態に早期に変位するように出来る。これにより、燃料タンク2に流入した燃料の温度が低温側第二温度(過冷却温度)Tcより比較的高温に保持され、ワックス等の析出物を抑制し、析出物を溶融させることができ、各フィルタ181、30の目詰まりや低圧燃料ポンプ18の作動不良を防止でき、エンジンの燃料供給不足が発生することを確実に防止できる。
【0039】
一方、車両が走行初期に高温側第一温度Tf2を下回る環境域にあるとし(例えばLnの温度域)、サーモスタット45が第1位置d1に保持され、下弁部482がバイパスポートh1と流入ポートh3を連通し、バイパス管路9より燃料を燃料タンク2側に導く状態にあると仮定する。この状態より、車両が高温地域に入り、高温側第一温度Tf2を上回る環境域を走行するとする。この場合、燃料温度の上昇により、感温部49の内筒部材492に対し外筒部材491が伸長変位し、モスタット45が第1位置d1より第2位置d2に切り換わる。これにより、上弁部481によりクーラーポートh2が流入ポートh3に連通し、バイパスポートh1を閉じる状態を保持する。
【0040】
この状態では、燃料を燃料クーラー6で冷却して燃料の高温化を抑制し、燃料タンク2に流入させる。この場合、例えば、図3に符号Lhで示す高温走行域側での温度変動が本来なされるとしても、燃料を燃料クーラー6で確実に冷却して、燃料タンク2側に導くので、燃料タンク2の燃料温度の昇温が抑制され、図3に符号Lmで示す温度変位側に変動する。
これにより、たとえ高温地域走行でも、燃料クーラー6の冷却作用により、高圧燃料ポンプ30の入口での燃料温度が高圧燃料ポンプ側要求燃料温度Tk、例えば、80℃を上回り過度に高温化することを防止するという制御目標を達成できエンジン出力低下を防止できる。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態としての内燃機関の燃料供給装置M2を説明する。
この第2実施形態は、第1実施形態と対比し、流路切換え手段11aが合流部8に設けられた三方切換え弁12である点、及びこの制御部を付加した点以外は同一構成部が多く、ここでは同一部材には同一符号を付し、重複説明を略す。
図4に示すように、ここでの合流部8に設けた流路切換え手段11aは収容ボックス24a内に配備される。この収容ボックス24aはその側壁に常開の導風口25が設けられ、導風口25の奥側に燃料クーラー6画配備される。
合流部8に配備された三方切換え弁12は第1流入ポートp1が燃料クーラー6に連通し、第2流入ポートp2がバイパス管路9に連通し、流出ポートp3が燃料タンク2に達する下流側戻し管路501に連通している。
【0042】
ここでは合流部8の流出ポートp3の近傍に温度センサ13が配備され、これにより合流部8を通過する、即ち、バイパス管路9で温度低下を抑制された燃料、あるいは、燃料クーラー6で冷却された燃料の各温度を検知し、制御手段14に出力するようにしている。
【0043】
ここでの三方切換え弁12は電磁切換え弁であり、高温所定温度(高温側第一温度Tf2)を上回る出力を受ける燃料温度状態(Lhの状態)では第1流入ポートp1が流出ポートp3に連通して燃料クーラー6の燃料を燃料タンク2に流動でき、低温所定温度(低温側第一温度Tf1)以下の出力を受ける燃料温度状態では第2流入ポートp2が流出ポートp3に連通して、バイパス管路9の燃料を燃料タンク2に流動できる。
【0044】
制御手段14は、デジタルコンピュータから構成され、双方向性バス141を介して相互に接続されたROM142、RAM143、CPU144、入力ポート145および出力ポート146を備え、後述する切換え制御機能を発揮する。ここで、入力ポート145には車両の運転情報であるエンジン回転数Neや吸気量Qaや水温Twがそれぞれ不図示のセンサより入力され、更に、燃圧センサ21より燃料圧Pfが、温度センサ13より合流部8の流出ポートp3の近傍の燃料温度Tfnが入力される。
このような第2実施形態の内燃機関の燃料供給装置M2の作動を、図3の温度変動特性線図及び図5の燃料供給制御ルーチンのフローチャートを用いて説明する。
【0045】
制御手段14は、車両の走行時に不図示のメインルーチンにおいて車両の運転情報に応じたエンジン1の駆動制御を行い、特に、燃料噴射装置3と燃料供給装置M2の制御をそれぞれの制御タイミングで順次行う。ここで燃料噴射制御では運転情報に応じてコモンレール圧と噴射量と噴射時期を演算し、その演算結果に応じて高圧燃料ポンプ15と各気筒の燃料噴射弁17を駆動し、所望の出力を発するよう制御している。
一方、燃料供給制御が図4の燃料供給制御ルーチンに沿って行われる。
ここで、ステップs1に達すると、最新の合流部8(図3には燃料クーラー出口と同一位置として概略的に示した)の燃料温度を温度センサ13により余剰燃料温度であるリターン燃料温度Tfnとして検知し、記憶処理する。
【0046】
ステップs2では、車両が常温域、例えば、予め、適宜設定された低温側第一温度である低温判定値Tf1(20℃)以上の地域を走行か、それ以下の低温域を走行か判断し、常温域走行と判断するとステップs3に進み、低温域を走行と判断するとステップs4に進む。
ステップs4に達すると、オン出力を三方切換え弁12に発して、燃料クーラー6と燃料タンク2を遮断し、バイパス路9と燃料タンク2を連通させる。
【0047】
この寒冷地走行を継続した場合、本来、寒冷地走行のため、リターン燃料温度Tfnが外気で過度に冷却され、低温側第二温度(過冷却温度)Tc以下の低温側に変動する。例えば、図3に符号Lb1で示す2点差線のように、燃料温度が低温化し、符号c1より変動し、噴射ポンプ15で加圧、加熱され温度上昇するが、噴射ポンプ15、燃料噴射弁17及びコモンレール16から余剰燃料として排出されると、再度、外気により冷却される。特に、この状態のままで燃料クーラー6を燃料が通過すると過度に冷却され、過冷却温度Tc以下に下がって燃料タンク2に流入し、その場合、過冷却によりワックス等の析出物を生じているタンク内の燃料中の析出物を溶融できない場合がある。このようにワックスが混入する燃料が再度低圧燃料ポンプ18より吐出され燃料供給路R1を流動すると、ポンプ18自体や、低圧燃料ポンプ側フィルタ181、フィルタ30で目詰まりが進み、流路抵抗が増加し、所定の燃料供給量を確保する上で問題となる。
【0048】
しかし、このような事態の発生を防止するため、この燃料供給制御装置M2では、ステップs4において、三方切換え弁12をオンし、燃料をバイパス路9に迂回させ、燃料タンク2に戻すように切換え制御している。
このため、バイパス路9を通過して過度の低温化が防止され、本来、図3に示す符号Lb1(燃料タンク入口での温度c1がTcを下回る状態)に沿って温度変動していた燃料は燃料クーラー6の影響を受けない状態に保持でき、図3に示す細い2点鎖線La1に沿って変位し、燃料タンク2入口に達する位置での温度はc2を保持し、過冷却温度Tcを下回ることを防止される。
【0049】
さらに、この状態での燃料が2点鎖線Lb2に沿って温度上昇して循環することで、燃料タンク2の入口に再度達する位置での温度はc3を保持し、過冷却温度Tcを更に上回ることなる。やがて、図3に実線で示す符号L1の変動状態に達し、外気への放熱とエンジン1側からの加熱との間でのバランスが保たれる。このような走行状態では、たとえ寒冷地走行でも、燃料温度が過冷却温度Tcより十分高めに保持され、燃料タンク2に流入した燃料中にワックス等の析出物を生じることが防止される。
更に、たとえ、燃料タンク2にワックス等の析出物が生じていても、燃料タンク2中に流入した燃料温度の上昇によりタンク内でワックスを溶融させることができる。このため、再度、タンク内の燃料が供給管路4に流動するとしても、各フィルタ181、30の目詰まりや低圧燃料ポンプ18の作動不良を防止でき、エンジンの燃料供給不足が発生することを確実に防止できる。
【0050】
更に、ステップs5、s6に進むと、ここでは燃料噴射装置3からの余剰燃料の温度である最新のリターン燃料温度Tfnを読み取り、これが過冷却温度Tc以下か判断する。燃料が過冷却温度Tcを上回るとこの周期の制御をリターンさせ、外気温が比較的低くいとステップs8に進む。
低温域を走行でステップs8に達すると、走行中の燃料のリターン燃料温度Tfnが過冷却状態を判定する低温側第二温度(過冷却温度)Tc以下の低温であるか否か判断する。
なお、燃料タンク2内の燃料が過冷却によりワックス等の析出物を生じる温度、例えば、−2℃に基づき設定され、ここでは、低温判定値Tf1は燃料タンク内のワックス等の析出物を溶融するに足る燃料温度およびばらつき修正のため、補正値を付けて20℃として予め設定される。
【0051】
ステップs8でYesであると、燃料の昇温が進まない場合、低温化しているとしてステップs9に進む。ステップs9では余剰燃料であるリターン燃料を増量修正するための余剰燃料増量指令信号S1を制御手段14の不図示のメインルーチン側に出力し、メインルーチンにリターンする。
なお、ステップs8で、この過冷却温度Tcより高温であるとNo側に進み、この回の制御を終了し、メインルーチンにリターンする。
【0052】
燃料供給制御ルーチンからステップs9において余剰燃料増量指令信号S1を受けたメインルーチン側では、高圧燃料ポンプ15の吐出量を所定量増量修正する。この増量修正制御により、コモンレール16から戻し管路5を経て燃料タンク2へ戻す加熱された余剰燃料が増え、燃料タンク2の燃料温度の昇温が進み、図3に符号Lb1で示す温度変位より符号L1で示す昇温側に接近する温度変位を早めることができる。これにより、比較的高温化された燃料が徐々に増加し、燃料タンク2に先に流入していたワックス等の析出物を溶融させることができ、各フィルタ181、30の目詰まりや低圧燃料ポンプ18の作動不良を防止でき、エンジンの燃料供給不足が発生することを確実に防止できる。
【0053】
一方、ステップs2で燃料温度Tfnが低温判定値Tf1(20℃)以上として、ステップs3に達すると、ここでは、燃料温度Tfnが所定の高温判定値Tf2(60℃)以上か否か判断し、以下では、現状保持し、この回の制御を終了し、メインルーチンにリターンする。
なお、高温所定温度(高温側第一温度Tf2:60℃)は、高圧燃料ポンプ側要求燃料温度Tk、例えば、80℃を上回ることを防止する制御を確実に行うことで、ここでは制御でのゆとり幅を持たせて高温所定温度(高温側第一温度Tf260℃)を適宜設定したが、これに代えて当該要求燃料温度Tk以下の他の温度を設定してもよい。
【0054】
このように燃料温度Tfnが低温判定値Tf1(20℃)以上で高温判定値Tf2(60℃)以下の通常燃料温度領域にある場合、例えば、図3に符号Lnで示す定常常温走行域にあると、ここでは外気温が過度に高くないため、燃料クーラー6の冷却作用を受け、燃料タンク2での温度は実線で示す符号Lnの変動状態を保ち、即ち、外気への放熱作用とエンジン1側からの加熱作用とのバランスが保たれる。
一方、合流部8での燃料温度が高温判定値Tf2を上回るとステップs10に達し、切換え燃料温度出力を三方切換え弁12に発して、バイパス路9と燃料タンク2を遮断し、燃料クーラー6と燃料タンク2を連通させる。
【0055】
この場合、例えば、図3に符号Lhで示す高温走行域であることより、燃料温度が特に、エンジン側の加熱や、噴射ポンプの加圧、加熱作用で昇温する傾向にある上、外気温度により燃料供給系の各部材の温度が上昇し、燃料タンク2側で例えば、燃料温度Tfnが60℃を上回る。
このような高温走行域でステップs10より、ステップs11、s12に達すると、ここでは、再度、最新のリターン燃料温度Tfnを読み取り、これが高温判定値Tf2(60℃)を上回るか否か判断し、それより低いとこの制御周期の制御をリターンさせ、外気温が比較的高く、燃料の昇温が更に進む傾向にあり、高圧燃料ポンプ側要求燃料温度Tkに到達する場合、ステップs13に進む。
【0056】
ステップs13では余剰燃料であるリターン燃料を減量修正するための余剰燃料減量指令信号S2を制御手段14の不図示のメインルーチン側に出力し、更に、ステップs14では、最新のリターン燃料温度Tfnが高圧燃料ポンプ側要求燃料温度Tk(80℃)を上回るか否か判断し、以下ではこの会の制御を終了し、上回ると、ステップs15に進む。
ステップs15に達すると、エンジンの一定値以上の高出力発生を制限する出力制御指令信号S3を不図示のメインルーチン側に出力し、この回の制御を終了してメインルーチンにリターンする。
【0057】
燃料供給制御ルーチンのステップs13において、余剰燃料減量指令信号S2を受けたメインルーチン側では、高圧燃料ポンプ15の吐出量を所定量減量し、これによりコモンレール16側から戻し管路5を経て燃料タンク2へ戻す加熱された余剰燃料が減量され、燃料タンク2の燃料温度の昇温が抑制され、図3に符号Lhで示す温度変位より低温側の符号Lmで示す温度変位側に変動する。
【0058】
更に、燃料供給制御ルーチンのステップs15において、出力制御指令信号S3を受けたメインルーチン側でエンジンの一定値以上の高出力発生を制限する制御に入ることで、エンジンの高出力発生が抑制され、低温変位が確実に進み、やがて図3に符号Lmで示す温度変位側に達し、外気への放熱作用とエンジン1側の加熱作用とのバランスが保たれ、たとえ高温地域走行でも、燃料クーラー6の冷却作用も加わり、燃料タンク2での温度は実線で示す符号Lmの変動状態が保たれる。この場合、過度の高温化に伴う高圧燃料ポンプ側要求燃料温度Tk、例えば、80℃を上回ることは無く、エンジン出力低下を防止できる。
【0059】
上述のところで、収容ボックス24、24aの側壁に設けた導風口25は常開であったが、場合により導風口25を開閉する燃料クーラーシャッター33を設けた収容ボックス24bを用いた第3の実施形態を構成しても良い。この場合、燃料クーラー6の冷却、バイパス管路9の保温機能を高めることが可能となる。
この第3実施形態は、第2実施形態と対比し、燃料クーラーシャッター33及びラジエーターシャッター37を設け、これらの制御を付加した点で相違し、それ以外、例えば、第3実施形態の流路切換え手段は第2実施形態で用いた流路切換え手段11aと同一の構成のものを採用しており、ここでは同一部材には同一符号を付し、重複説明を略す。
【0060】
図6に示すように、車体下部のフロア板23に締結された収容ボックス24bはその内部に燃料クーラー6とバイパス管路9を収容支持し、燃料クーラー6と接近する側壁には導風口25が形成される。この導風口25は燃料クーラーシャッター33により開閉可能に形成される。
燃料クーラーシャッター33は矩形枠部材331と、その矩形枠部材331に支持され上下方向に複数並列配備のシャッター板34と各シャッター板34をその回転軸回りに開閉作動させるリンク部材35と、リンク部材35を介して複数並列配備のシャッター板34を開閉駆動するモータ36とで構成され、モータ36の開閉駆動制御が制御手段14により行われる。
【0061】
一方、エンジン1の前部にはファン42の駆動により冷却風をラジエータ40側に導き、エンジン冷却を行うラジエータ40が配備される。このラジエータ40の前部にはラジエータ40に向かう冷却風の流動を許容し、遮断可能なラジエーターシャッター37が配設される。
ラジエーターシャッター37は矩形枠部材371と、その矩形枠部材371に支持され上下方向に複数並列配備のシャッター板38と各シャッター板38をその回転軸回りに開閉作動させるリンク部材39と、リンク部材39を介して複数並列配備のシャッター板38を開閉駆動するモータ41とで構成され、モータ41の開閉駆動制御が制御手段14により行われる。
【0062】
このような第3実施形態の内燃機関の燃料供給装置M3の作動を、図7の燃料供給制御ルーチンのフローチャートを用いて説明する。
ここで、図7の燃料供給制御ルーチンの各制御ステップは図5の燃料供給制御ルーチンと比較し、同一ステップ構成が多く、ここでは重複ステップ説明を簡略化する。
図7の燃料供給制御ルーチンでは、ステップa1、a2で最新の合流部8のリターン燃料温度Tfnを検知し、これが低温判定値Tf1(20℃)以上であるとステップa3に進み、低温域を走行と判断するとステップa4に進む。
ステップa4に達すると、寒冷地走行でオン出力を三方切換え弁12に発して、バイパス路9と燃料タンク2を連通させ、次いで、ステップa5に進んでリターン燃料温度Tfnを検知する。
【0063】
次いで、ステップa6では再度、リターン燃料温度Tfnが低温判定値Tf1(20℃)以上であるか否か判断し、低温判定値Tf1より高温であるとこの回の制御を終了し、低温判定値Tf1を下回ると、ステップa7に進む。ここでは、燃料の昇温が進まない場合であり、リターン燃料を増量修正するための余剰燃料増量指令信号S1を出力する。
ステップa7において余剰燃料増量指令信号S1を受けたメインルーチン側では高圧燃料ポンプ15の吐出量を所定量増量修正し、加熱された余剰燃料が増えて燃料タンク2の燃料温度の昇温が進み、例えば、図3に符号Lb1で示す温度変位より符号L1で示す昇温側に接近する。更に、燃料タンク2内の燃料中のワックス等の析出物を溶融させることができ、各フィルタ181、30の目詰まりや低圧燃料ポンプ18の作動不良を防止でき、エンジンの燃料供給不足が発生することを確実に防止できる。
【0064】
次いで、ステップa8に進み、最新の合流部8のリターン燃料温度Tfnを検知し、次いで、ステップa9、ステップa10に達すると、最新のリターン燃料温度Tfnが低温側第二温度(過冷却温度)Tc以下の低温であるか否か判断し、過冷却温度Tcより高温であるとこの回の制御を終了する。一方、寒冷地走行で低温化が継続していると、ラジエーターシャッター37のモータ41にシャッター閉出力を発し、燃料クーラーシャッター33のモータ36にシャッター閉出力を発する。
これにより、各シャッター板38を閉じてラジエータ37の冷却風を遮断してエンジン1の水温上昇を図り、エンジン本体に接近する燃料の昇温化を図る。更に、収容ボックス24bの導風口25の各シャッター板34を閉じてその内部の燃料クーラー6とバイパス管路9への走行風の流動を遮断してバイパス管路9より燃料タンク2に向かう燃料の冷却を防止し、保温を図る。
【0065】
一方、上述のステップa2よりステップa3に達すると、ここでは、燃料温度Tfnが所定の高温判定値Tf2(60℃)以下であると、現状保持のため、この回の制御を終了し、メインルーチンにリターンする。
一方、合流部8での燃料温度が高温判定値Tf2を上回りステップa11に達すると、切換え燃料温度出力を三方切換え弁12に発して、燃料クーラー6と燃料タンク2を連通させ、例えば、図3に符号Lhで示す高温走行域であるとすると、燃料クーラー6での冷却を図る。更に、このような高温走行域で、ステップa12、a13に達すると、最新のリターン燃料温度Tfnが高温判定値Tf2(60℃)を上回るか否か判断し、それより低いとこの制御周期の制御をリターンさせ、燃料の昇温が更に進む傾向にあると、ステップa14に進む。
【0066】
ステップa14に進むと、ここでは、燃料の冷却が進まない場合であり、リターン燃料を減量修正するため、余剰燃料減量指令信号S2を出力する。
余剰燃料減量指令信号S2を受けたメインルーチン側では、高圧燃料ポンプ15の吐出量を所定量減量し、これにより加熱された余剰燃料が減量され、燃料タンク2の燃料温度の昇温が抑制される。
ステップa14において余剰燃料減量指令信号S2が出力され、エンジンの高出力発生が抑制されることで、低温化が進むと、やがて図3に符号Lhの温度変位より符号Lmで示す温度変位側に達する。
【0067】
これにより、たとえ高温地域走行でも、燃料クーラー6の冷却作用も加わり、燃料タンク2での温度は実線で示す符号Lmの変動状態が保たれる。この場合、過度の高温化に伴う高圧燃料ポンプ側要求燃料温度Tk、例えば、80℃を上回ることは無く、エンジン出力低下を防止できる。
次いで、ステップa15、a16に進む。ここでは最新のリターン燃料温度Tfnを取り込み、これが過度の高温化に伴う高圧燃料ポンプ側要求燃料温度Tk(80℃)を上回るか,否か判定し、それより低いとこの制御周期の制御をリターンさせ、燃料の昇温が更に進む傾向にあると、ステップa17、a18に進む。
【0068】
ステップa17では、燃料の昇温が進む傾向にあり、ここでは、ラジエーターシャッター37及び燃料クーラーシャッター33の各開状態が不図示のリミットスイッチにより検出され、開状態ではステップa19に進み、閉状態ではステップa18に進む。ここでは、ラジエーターシャッター37のモータ41にシャッター開出力を発し、燃料クーラーシャッター33のモータ36にシャッター開出力を発する。
これにより、各シャッター板38を開いてラジエータ37に冷却風を通してエンジン1の冷却を図り、エンジン本体に接近する燃料の昇温を阻止する。更に、収容ボックス24bの導風口25の各シャッター板34を開いてその内部の燃料クーラー6へ走行風を導入して燃料タンク2に向かう燃料の冷却を促進する。
【0069】
次いで、ステップa19に進むと、最新のリターン燃料温度Tfnが高圧燃料ポンプ側要求燃料温度Tkを上回るか判断し、以下であり、低温化しているとこの周期の制御をリターンさせ、燃料の冷却が進まない場合、ステップa20に進む。
ステップa20に達すると、エンジンの一定値以上の高出力発生を制限する出力制御指令信号S3を不図示のメインルーチン側に出力し、この回の制御を終了してメインルーチンにリターンする。
【0070】
上述のように、燃料供給制御ルーチンのステップa14において、余剰燃料減量指令信号S2を受けたメインルーチン側では、高圧燃料ポンプ15の吐出量を所定量減量し、これによりコモンレール16側から戻し管路5を経て燃料タンク2へ戻す加熱された余剰燃料が減量され、燃料タンク2の燃料温度の昇温が抑制され、図3に符号Lhで示す温度変位より低温側の符号Lmで示す温度変位側に変動する。
【0071】
更に、燃料供給制御ルーチンのステップa20において、出力制御指令信号S3を受けたメインルーチン側でエンジンの一定値以上の高出力発生を制限する制御に入ることで、エンジンの高出力発生が抑制され、低温変位が確実に進み、やがて図3に符号Lmで示す温度変位側に達し、外気への放熱作用とエンジン1側の加熱作用とのバランスが保たれ、たとえ高温地域走行でも、燃料クーラー6の冷却作用も加わり、燃料タンク2での温度は実線で示す符号Lmの変動状態が保たれる。この場合、過度の高温化に伴う高圧燃料ポンプ側要求燃料温度Tk(80℃)を上回ることは無く、エンジン出力低下を防止できる。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるわけではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で様々な変更を成し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0072】
1 エンジン
2 燃料タンク
3 燃料噴射装置
4 供給管路
5 戻し管路
6 燃料クーラー
7 分岐部
8 合流部
9 バイパス路
11 流路切換え手段
12 三方切換え弁
13 温度センサ
14 制御手段
45 サーモスタット
Tf1 低温判定値
Tf2 高温判定値
Tfn 燃料温度
Tk 高圧燃料ポンプ側要求燃料温度(高温側第二温度)
Tc 過冷却温度(低温側第二温度)
M1,M2,M3 内燃機関の燃料供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクからの燃料をエンジンの燃料噴射装置に供給する供給管路と、前記燃料噴射装置からの余剰燃料を燃料クーラーで冷却して前記燃料タンクへ戻す戻し管路と、該戻し管路を流動する燃料を前記燃料クーラーの上流側の分岐部より下流側の合流部に燃料クーラーを迂回して流動させるバイパス路と、前記合流部を通過する燃料の温度に応じて前記戻し管路又は前記バイパス路のどちらか一方と前記燃料タンクとを連通させる流路切換え手段を備えた内燃機関の燃料供給装置。
【請求項2】
前記流路切換え手段は、前記合流部を通過する燃料温度が高温側第一温度より高温であると前記燃料クーラーと燃料タンクを連通させ、該燃料温度が低温側第一温度以下の低温であると前記バイパス路と燃料タンクを連通させるように切換えるサーモスタットであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項3】
前記燃料噴射装置からの余剰燃料量を制御する余剰燃料制御手段を備え、
前記余剰燃料制御手段は、前記燃料温度が前記低温側第一温度より低温の低温側第二温度を下回ると前記余剰燃料量を増量することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項4】
前記バイパス路は車体下部に支持された収容ボックス内に保持されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項5】
前記バイパス路は前記燃料クーラーと共に車体下部に支持された収容ボックス内に保持されたことを特徴とする請求項4に記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項6】
前記収容ボックスは前記燃料クーラーに外気を導くシャッターを備え、前記制御手段は該シャッターを前記燃料温度が前記高温側第一温度を上回ると開放状態に切換え、前記低温側第二温度を下回ると閉鎖状態に切換えることを特徴とする請求項5記載の内燃機関の燃料供給装置。
【請求項7】
前記内燃機関が発生する出力を制御する出力制御手段を備え、
前記出力制御手段は、前記燃料温度が前記高温側第一温度より高温の高温側第二温度を上回ると前期内燃機関からの所値以上の高出力発生を制限することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の内燃機関の燃料供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−122416(P2012−122416A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273984(P2010−273984)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】