説明

内燃機関の燃料噴射ポンプおよび内燃機関

【課題】本発明は、少なくとも1つのプランジャ(10)を備え、特に2つの吸込み孔(13)を介して相互に接続されている吸込み室(11)とポンプ室(12)が、プランジャと、プランジャが第1位置において吸込み孔(13)を閉鎖し、かくして吸込み室からポンプ室への燃料の流入を阻止し、プランジャが第2位置において吸込み孔或いは各吸込み孔を開き、かくして吸込み室からポンプ室への燃料の充填を可能にするように協働する内燃機関の燃料噴射ポンプに関し、吸い込み孔の範囲でキャビテーションが発生するのを防止して、燃料ポンプの点検期間を延長し、寿命を延ばすことを課題とする。
【解決手段】本発明に基づき、吸込み孔が、吸込み室に隣接して段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域(14)を有し、各々段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域が、吸込み室から出発してポンプ室に向けて次第に狭められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1および請求項6の前文に記載の内燃機関の燃料噴射ポンプに関する。また本発明は請求項14の前文に記載の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の実際に知られた切欠き傾斜縁付きプランジャ式の高圧燃料噴射ポンプは、通常、プランジャを利用し、その吸込み室とポンプ室は高圧燃料噴射ポンプのプランジャと協働する。燃料噴射ポンプの吸込み室並びにポンプ室は、通常、2つの吸込み孔を介して互いに接続され、高圧燃料噴射ポンプのプランジャは、第1の位置で、吸込み孔を閉鎖し、もって吸込み室からポンプ室への燃料の流入を阻止する。プランジャの第2の位置で、プランジャは吸込み孔を開き、かくして、吸込み室からポンプ室への燃料の充填が可能になる。燃料は高圧燃料噴射ポンプの吸込み室に所謂予搬送系を介して到達し、吸込み室から出発し、吸込み孔を介してポンプ室に到達し、詳しくは燃料噴射ポンプのプランジャの位置に関係して到達する。該プランジャの位置はカムを介して制御される。プランジャが吸込み孔を閉鎖している場合、吸込み室からポンプ室への燃料の流入は阻止され、燃料はポンプ室内で、内燃機関のシリンダに所定の圧力で噴射が行える迄圧縮される。プランジャの切欠き制御縁が吸込み孔を再び開き始めるや否や、燃料噴射過程が終了し、燃料が吸込み室から燃料噴射ポンプのポンプ室に搬送される。
【0003】
従って、吸込み孔の領域に生ずる圧力は、強く且つ衝撃的に変動し、このため、吸込み孔の領域にキャビテーションが生ずる。該キャビテーションで、吸込み孔が浸食される。キャビテーションは、燃料噴射ポンプの点検間隔と寿命に大きな影響を与える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、内燃機関の新しい燃料噴射ポンプと相応した内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、第1の観点に基づき、請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射ポンプによって解決される。それに応じて、吸込み孔或いは各吸込み孔は、吸込み室に隣接して双曲線状入口区域を有し、各々の双曲線状入口区域は、吸込み室から出発してポンプ室に向けて次第に狭められている。
【0006】
本発明の第1の観点に基づき、吸込み孔は吸込み室に隣接した双曲線状の入口区域を利用する。各吸込み孔の双曲線状入口区域の壁は、断面円弧状に輪郭付けられる。入口区域は、吸込み室から出発してポンプ室に向けて次第に狭まっている。吸込み孔のかかる形成により、吸込み孔がキャビテーションの影響を受けず、キャビテーションにより損傷しないようになし得る。
【0007】
本発明の課題は、第2の観点に基づき、請求項6に記載の、内燃機関の燃料噴射ポンプにより解決される。それに応じて、吸込み孔ないし各吸込み孔は、吸込み室に隣接して段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域を有し、各々段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域は、吸込み室から出発してポンプ室に向けて次第に狭まっている。
【0008】
本発明の第2の観点に基づき、吸込み孔は、吸込み室に隣接して段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域を利用し、該区域は、異なった開き角を持つ複数の裁頭円錐状区域を利用する。各々段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域は、吸込み室から出発してポンプ室に向けて次第に狭まっている。そのように輪郭付けた吸込み孔も、キャビテーションによる浸食を殆ど受けない。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上述の両観点は、吸込み室を高圧燃料噴射ポンプのポンプ室に接続する吸込み孔の幾何学形状を、キャビテーション発生領域における吸込み孔の表面が広がるように形成又は輪郭付け、もって、気泡の破裂が吸込み孔の表面への有害な影響なしに燃料内で直接起こる点で共通している。この結果、吸込み孔の壁における気泡の堆積を助長する鋭い角部並びに急な角度が生じない。従って全体として、高圧燃料噴射ポンプにおける吸込み孔のキャビテーションによる浸食を減少でき、この結果、高圧燃料噴射ポンプは長い寿命を持ち、点検間隔時間が増大する。これに伴い、大きな経済性が生ずる。
【0010】
請求項14は、本発明に基づく内燃機関は規定している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の有利な発展形態を、従属請求項および以下の説明から明らかにする。次に図を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
以下、本発明を、図1〜図4を参照して詳細に説明する。ここで、図1と図2は本発明の第1の観点に基づく2つの実施例、図3と図4は本発明の第2の観点に基づく2つの実施例を各々示す。
【実施例1】
【0013】
図1は、ディーゼルエンジンの所謂切欠き傾斜縁付きプランジャ式の高圧燃料噴射ポンプを部分概略断面図で示す。該ポンプはプランジャ10を有し、プランジャ10は燃料噴射ポンプの吸込み室11並びにポンプ室12と協働する。典型的に、吸込み室11はポンプ室12に2つの吸込み孔13を介して接続されている。なお、唯一の又は3つ以上の吸込み孔を設け得る。プランジャ10の位置に応じ、プランジャ10は吸込み孔13を開閉する。プランジャ10が吸込み孔13を閉鎖すると、吸込み室11からポンプ室12への燃料の流入が止まる。これに対しプランジャ10が吸込み孔13を開くと、吸込み孔13を経て燃料が流れ、ポンプ室に燃料ポンプの吸込み室13から燃料が流入する。
【0014】
吸込み孔13は2つの区域、即ち吸込み室11に隣接して位置する入口区域14と、ポンプ室12に隣接して位置する出口区域15からなる。本発明に従い、各吸込み孔13の吸込み室11に隣接して位置する入口区域14を、吸込み孔13がキャビテーションによる浸食を受けないよう輪郭づけている。そのため、吸込み孔13の入口区域14を、キャビテーション発生領域内の吸込み孔の表面が広がるか後退するように輪郭付けている。この結果最終的に、気泡の破裂が、吸込み孔13に有害な影響を与えることなく、燃料内で直接起こる。
【0015】
本発明の第1の観点に応じ、吸込み孔13の入口区域14は双曲線状に輪郭づけられている。双曲線状に輪郭づけられた該入口区域14は、断面円弧状に輪郭づけられた壁16を利用し、その断面円弧状に輪郭づけられた壁16の曲率半径を図1では半径Rで示している。吸込み孔13の双曲線状入口区域14は、吸込み室11から出発してポンプ室12の方向に向けて次第に狭まっている。図1では、双曲線状入口区域14はそれに対応した出口区域15に移行させ、該区域15は円筒状に形成している。
【0016】
図1の実施例において、各吸込み孔13の双曲線状入口区域14は、円筒状出口区域15に連続して移行し、この結果各吸込み孔13の入口区域14と出口区域15との間に角部は生じていない。
【0017】
或いは、図2の実施例に示すように、吸込み孔13の双曲線状入口区域14を、対応した円筒状出口区域15に対し、各吸込み孔13の入口区域14と出口区域15との間に不連続部又は角部17を形成すべく、角度αを成して折り曲げるかねじ曲げてもよい。
【実施例2】
【0018】
本発明の第2の観点に応じ(図3と4の実施例参照)、吸込み孔13の吸込み室11に隣接して位置する入口区域14を、数段に裁頭円錐状、即ち図3と図4の実施例では、各々2つの裁頭円錐状区域18、19に区分している。この区域18、19は各々所謂開き角で特色づけられル。図3の実施例では、吸込み孔13における入口区域14の裁頭円錐状区域18、19の開き角β18、β19を、各裁頭円錐状区域18、19が吸込み室11に近ければ近い程開き角β18、β19が大きくなるよう形成している。従って図3の実施例では、裁頭円錐状区域19の開き角β19を、吸込み孔13における入口区域14の裁頭円錐状区域18の開き角β18より大きくしている。これと異なり、図4の実施例に示すように、裁頭円錐状区域18、19の開き角γ18、γ19を、各々の裁頭円錐状区域18、19が吸込み室11に近ければ近い程裁頭円錐状区域18、19の開き角γ18、γ19が小さくなるよう形成してもよい。即ち、図4の実施例では、裁頭円錐状区域19の開き角γ19を吸込み孔13における入口区域14の裁頭円錐状区域18の開き角γ18より小さくしている。しかもこれら両実施例では、両裁頭円錐状区域18、19を、吸込み室11および該吸込み室11に続く吸込み孔13における入口区域14の裁頭円錐状区域19から出発して、ポンプ室12に向けて次第に狭まるように相対配置している。またその入口区域14は、各吸込み孔13の円筒状出口区域15に移行している。
【0019】
図3と図4の実施例では、吸込み孔13の、数段に裁頭円錐状に区分けした入口区域14を、2つの裁頭円錐状区域に区分けしている。なお、2つ以上の裁頭円錐状区域を設けるようにしてもよい。裁頭円錐状区域の開き角は、吸込み室11から出発し、ポンプ室12に向けて漸増するか(図4)、ポンプ室12に向けて漸減する(図3)。吸込み孔13の入口区域14の、互いに隣接する裁頭円錐状区域18、19間に、円筒状区域を置くことができる。図4の実施例で、入口区域14の裁頭円錐状区域19と吸込み室11の間に、円筒状区域を配置できる。互いに隣接する裁頭円錐状区域間、或いは裁頭円錐状区域とそれに隣接する円筒状区域との間に生ずる角部は、丸めておくとよい。
【0020】
吸込み孔13の入口区域14を本発明に基づき形成することで、吸込み孔13でのキャビテーションによる浸食を最小にできる。同じことは、吸込み室11の中に並びに場合によっては吸込み孔13の中に、損耗要素として(噴射による圧力波を減衰する)ボルト状デフレクタないし突起状ボルトを突出させたときも当てはまる。この場合、ボルト状デフレクタ又は突起状ボルトのキャビテーションによる浸食が減少し、この結果燃料噴射ポンプの寿命が延び、且つ点検時間間隔を増大できる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
燃料噴射ポンプは、好適には多気筒形ディーゼルエンジンに利用され、その場合、燃料噴射ポンプのポンプ室12内で圧縮された燃料をディーゼルエンジンの各シリンダに噴射するために、各シリンダにそのような燃料噴射ポンプを付属させ、ポンプ室12内で圧縮した燃料を、通路20を介して噴射ノズルに供給する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に基づく燃料噴射ポンプの第1実施例の部分概略断面図。
【図2】本発明に基づく燃料噴射ポンプの第2実施例の部分概略断面図。
【図3】本発明に基づく燃料噴射ポンプの第3実施例の部分概略断面図。
【図4】本発明に基づく燃料噴射ポンプの第4実施例の部分概略断面図。
【符号の説明】
【0023】
10 プランジャ、11 吸込み室、12 ポンプ室、13 吸込み孔、14 入口区域、15 出口区域、16 壁、17 角部、18、19 裁頭円錐状区域、20 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのプランジャ(10)を備え、特に2つの吸込み孔(13)を介して相互に接続されている吸込み室(11)およびポンプ室(12)が、プランジャないし各プランジャ(10)と、
第1位置において、プランジャないし各プランジャ(10)が吸込み孔ないし各吸込み孔(13)を閉鎖し、かくして吸込み室(11)からポンプ室(12)への燃料の流入を阻止し、
第2位置において、プランジャないし各プランジャ(10)が吸込み孔ないし各吸込み孔(13)を開き、かくして吸込み室(11)からポンプ室(12)への燃料の充填を可能にする
ように協働する内燃機関の燃料噴射ポンプにおいて、
吸込み孔ないし各吸込み孔(13)が、吸込み室(11)に隣接して双曲線状入口区域(14)を有し、各双曲線状入口区域(14)が、吸込み室(11)から出発してポンプ室(12)に向けて次第に狭められていることを特徴とする燃料噴射ポンプ。
【請求項2】
各々の双曲線状入口区域(14)の壁(16)が、断面円弧状に輪郭づけられていることを特徴とする請求項1記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項3】
各々の双曲線状入口区域(14)がその吸込み孔(13)の円筒状区域(15)に移行していることを特徴とする請求項1又は2記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項4】
双曲線状入口区域(14)がその吸込み孔(13)の円筒状区域(15)に、連続的に或いは角部を形成して不連続的に移行していることを特徴とする請求項3記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項5】
吸込み孔(13)の中に損耗要素として各々ボルト状デフレクタが突出していることを特徴とする請求項1から4の1つに記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項6】
少なくとも1つのプランジャ(10)を備え、特に2つの吸込み孔(13)を介して相互に接続されている吸込み室(11)およびポンプ室(12)が、プランジャないし各プランジャ(10)と、
第1位置において、プランジャないし各プランジャ(10)が吸込み孔ないし各吸込み孔(13)を閉鎖し、かくして吸込み室(11)からポンプ室(12)への燃料の流入を阻止し、
第2位置において、プランジャないし各プランジャ(10)が吸込み孔ないし各吸込み孔(13)を開き、かくして吸込み室(11)からポンプ室(12)への燃料の充填を可能にする
ように協働する内燃機関の燃料噴射ポンプにおいて、
吸込み孔或いは各吸込み孔(13)が、吸込み室(11)に隣接して段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域(14)を有し、各々段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域(14)が、吸込み室(11)から出発してポンプ室(12)に向けて次第に狭められたことを特徴とする内燃機関の燃料噴射ポンプ。
【請求項7】
各々段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域(14)の裁頭円錐状区域(18、19)の開き角(β18、β19)が、各々の裁頭円錐状区域(18、19)が吸込み室(11)に近ければ近い程大きくされたことを特徴とする請求項6記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項8】
各々段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域(14)の裁頭円錐状区域(18、19)の開き角(18、γ19)が、裁頭円錐状区域(18、19)が吸込み室(11)に近ければ近い程小さくされたことを特徴とする請求項6記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項9】
各々段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域と吸込み室との間に、円筒状区域が置かれたことを特徴とする請求項7又は8記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項10】
各々段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域の互いに隣接する2つの裁頭円錐状区域間に、円筒状区域が置かれたことを特徴とする請求項6から9の1つに記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項11】
各々段階的に裁頭円錐状に区分けされた入口区域(14)が、その吸込み孔(13)の円筒状区域(15)に移行することを特徴とする請求項6から10の1つに記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項12】
入口区域の互いに隣接する裁頭円錐状区域間又は裁頭円錐状区域と、それに隣接する円筒状区域間に位置する角部が丸められたことを特徴とする請求項6から11の1つに記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項13】
吸込み孔(13)内に、損耗要素として各々ボルト状デフレクタが突出することを特徴とする請求項6から12の1つに記載の燃料噴射ポンプ。
【請求項14】
複数のシリンダを備え、所定の噴射圧力下で燃料を各々のシリンダに噴射すべく、各シリンダに各々燃料噴射ポンプが付属する内燃機関において、
燃料噴射ポンプが請求項1から5の1つ或いは請求項6から13の1つに応じて形成されたことを特徴とする内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−336653(P2006−336653A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−153613(P2006−153613)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】