説明

内燃機関の燃料噴射制御システム

【課題】低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプを備えた内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、ベーパの発生を抑制しつつ、フィード圧を可及的に低くする。
【解決手段】低圧燃料ポンプから吐出される燃料を高圧燃料ポンプにより昇圧して燃料噴射弁へ供給する内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、低圧燃料ポンプの吐出圧力であるフィード圧を低下させるための低下処理を実行する処理部と、高圧燃料ポンプの吐出圧力を検出する圧力センサと、高圧燃料ポンプの駆動デューティの比例積分制御を行う制御部と、低下処理実行中の比例積分制御に用いられる積分項の変化傾向に応じて低下処理を停止させる停止部と、を備え、停止部は、内燃機関の停止時にも低下処理を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を気筒内へ直接噴射するタイプの内燃機関においては、燃料タンクから燃料を吸い上げる低圧燃料ポンプと、低圧燃料ポンプにより吸い上げられた燃料を気筒内へ噴射可能な圧力まで昇圧させる高圧燃料ポンプと、を備えた燃料噴射制御システムが知られている。
【0003】
上記したような燃料噴射制御システムにおいては、低圧燃料ポンプの作動に伴うエネルギ消費を抑えるために、低圧燃料ポンプの吐出圧力(フィード圧)を可及的に低下させることが望まれている。ただし、低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプとの間の圧力が燃料の飽和蒸気圧より低くなると、高圧燃料ポンプ内でベーパが発生する可能性がある。
【0004】
これに対し、特許文献1には、高圧燃料ポンプの駆動デューティが所定値以上となった場合にベーパが発生していると判定して、フィード圧を上昇させる技術について記載されている。
【0005】
また、特許文献2−5には、内燃機関の停止時にベーパの発生を抑制するために、燃料配管内の圧力を増加させる技術について記載されている。
【0006】
ところで、高圧ポンプの駆動デューティの積分項は、ベーパの発生のみならず、噴射量の増加または運転状態の変化などによって変わる。したがって、特許文献1に記載の技術では、ベーパが発生していないのにもかかわらず、フィード圧を上昇させてしまい、燃費の悪化を招く虞がある。また、前記積分項の変化割合に応じてフィード圧を小さくすることで燃費を改善することも考えられるが、内燃機関の停止時には、該内燃機関の熱などにより燃料配管内の温度が上昇してベーパが発生しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−071224号公報
【特許文献2】特開平08−246975号公報
【特許文献3】特開平09−088763号公報
【特許文献4】特開2006−299824号公報
【特許文献5】特開平09−303227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプを備えた内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、ベーパの発生を抑制しつつ、フィード圧を可及的に低くすることができる技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために本発明による内燃機関の燃料噴射制御システムは、
低圧燃料ポンプから吐出される燃料を高圧燃料ポンプにより昇圧して燃料噴射弁へ供給する内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、
前記低圧燃料ポンプの吐出圧力であるフィード圧を低下させるための低下処理を実行す
る処理部と、
前記高圧燃料ポンプの吐出圧力を検出する圧力センサと、
前記高圧燃料ポンプの目標吐出圧力と前記圧力センサの検出値との差に基づいて、前記高圧燃料ポンプの駆動デューティの比例積分制御を行う制御部と、
前記低下処理実行中の比例積分制御に用いられる積分項の変化傾向に応じて前記低下処理を停止させる停止部と、
を備え、
前記停止部は、内燃機関の停止時にも前記低下処理を停止させる。
【0010】
ここで、高圧燃料ポンプの駆動デューティを比例積分制御によりフィードバック制御する場合において、比例積分制御の積分項は、ベーパが発生し始めるとき、言い換えれば、少量のベーパが発生したときに増加傾向を示すことが判明した。
【0011】
なお、前記積分項は、燃料噴射量が増加した場合や燃料温度が上昇した場合などにも増加傾向を示す。ただし、低下処理の実行中において積分項が変化する要因は、ベーパの発生にあると考えることができる。
【0012】
したがって、本願発明によれば、失火や空燃比の乱れを招くような多量のベーパが発生する前に、フィード圧の低下処理を停止させることが可能となる。たとえば、停止部は、低下処理の実行中に比例積分制御の積分項が増加傾向を示したときに、低下処理を停止させるようにしてもよい。その結果、多量のベーパが発生しない範囲においてフィード圧を低下させることができる。また、本願発明は、低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプとの間の燃料経路に圧力センサや温度センサなどを設ける必要もないため、燃料噴射制御システムの簡略化を図ることもできる。
【0013】
ところで、内燃機関の温度が十分に高くなっているときに、該内燃機関が停止されると、内燃機関の周りに配置されている燃料配管内の燃料が、該内燃機関から輻射熱を受ける。これにより、燃料の温度が上昇すると、ベーパが発生する虞がある。ここで、内燃機関の運転中に低下処理を実行しても、燃料配管内の燃料がすぐに入れ替わるため、ベーパは発生し難い。一方、内燃機関が停止されると、内燃機関の冷却水の循環なども停止されるため、内燃機関やエンジンルーム内の温度が一時的に上昇する。このため、内燃機関の停止時に低下処理を実行して燃料の圧力が低下すると、内燃機関から熱を受けた燃料の温度上昇により、ベーパが発生し易い。内燃機関の停止時にベーパが発生すると、内燃機関の次回の始動時にフィード圧の上昇が遅れ、始動するのに時間がかかってしまう。
【0014】
そこで停止部は、内燃機関の停止時にも低下処理を停止させる。内燃機関の停止時とは、内燃機関への燃料の供給が停止された後、または、内燃機関の火花点火が停止された後とすることができる。このように低下処理を停止させることにより、燃料配管内の圧力が低下することを抑制できるため、ベーパが発生することを抑制できる。これにより、内燃機関の始動時間を短縮することができる。なお、ベーパの発生する虞がなくなる規定時間だけ、低下処理を停止させてもよい。
【0015】
このように、ベーパが発生しやすい状態では、フィード圧の低下を抑制することにより、ベーパの発生を抑制できる。また、ベーパが発生し難い状態では、フィード圧を低下させることができる。
【0016】
また、本発明においては、前記処理部は、内燃機関の停止時において、フィード圧をベーパが発生しない所定圧力とすることができる。この所定圧力は、内燃機関の温度に応じて変更してもよい。また、所定圧力は、設定し得る最大圧力としてもよい。フィード圧をこのような所定圧力とすることにより、ベーパの発生を抑制できる。
【0017】
また、本発明においては、前記停止部は、内燃機関の温度が所定温度未満の場合には、前記内燃機関の停止時であっても、前記低下処理を継続することができる。この所定温度は、低下処理を実行したときにベーパが発生する温度の下限値とすることができる。すなわち、内燃機関の温度が低いほど、ベーパが発生し難くなるため、低下処理を継続してもベーパが発生しない温度のときには、低下処理を継続する。これにより、フィード圧を必要以上に高めることを抑制できる。なお、内燃機関の温度は、内燃機関の冷却水温度または内燃機関の潤滑油温度とすることができる。
【0018】
また、本発明においては、前記処理部は、前記停止部により前記低下処理実行中の比例積分制御に用いられる積分項の変化傾向に応じて前記低下処理が停止されたときに、前記フィード圧を維持または上昇させてもよい。その場合、ベーパの発生量が失火や空燃比の乱れなどが発生しない範囲内に維持され、あるいはベーパの発生量が減少される。
【0019】
また、本発明においては、前記処理部は、前記積分項の変化量が大きいときは小さいときに比べ、前記フィード圧を高めてもよい。積分項の変化量は、ベーパの発生量が少ないときより多いとき方が大きくなる。そのため、積分項の変化量が大きいときは小さいときより、フィード圧が高くされると、ベーパの発生量をより確実に減少させることが可能となる。
【0020】
また、本発明に係る低下処理において、フィード圧の低下速度は、内燃機関の運転条件を示すパラメータに応じて変更されるようにしてもよい。低下処理実行中におけるベーパの発生し易さは、内燃機関の運転条件に応じて変化する。そのため、ベーパが発生しやすい運転条件下においては、ベーパが発生し難い運転条件下に比べ、フィード圧の低下速度を低くしてもよい。その場合、ベーパの発生量が急増する事態を回避しつつフィード圧を低下させることができる。
【0021】
ここで、上記した運転条件を示すパラメータとしては、機関負荷や、燃料温度と相関するパラメータを用いることができる。機関負荷が高いときは低いときに比べ、ベーパが発生しやすい。そのため、機関負荷が高いときは低いときに比べ、フィード圧の低下速度を低くしてもよい。また、燃料温度が高いときは低いときに比べ、ベーパが発生しやすい。そのため、燃料温度が高いときは低いときに比べ、フィード圧の低下速度を低くしてもよい。なお、燃料温度と相関するパラメータとしては、吸気温度、前記した積分項の絶対値、などを用いることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、低圧燃料ポンプと高圧燃料ポンプを備えた内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、ベーパの発生を抑制しつつ、フィード圧を可及的に低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用する内燃機関の燃料噴射系の概略構成を示す図である。
【図2】低圧燃料ポンプの吐出圧力(フィード圧)Plを低下させたときの積分項Itの挙動および高圧燃料通路内の燃料圧力Phの挙動を示す図である。
【図3】第1の実施例における低下処理ルーチンを示すフローチャートである。
【図4】第1の実施例における低下処理が実行されたときのフィード圧Plと積分項Itと燃料圧力Phと空燃比の挙動を示す図である。
【図5】内燃機関の停止時におけるフィード圧制御のフローを示したフローチャートである。
【図6】燃料温度とフィード圧Plと積分項Itとの関係を示す図である。
【図7】燃料温度と低下定数との関係を示す図である。
【図8】燃料温度と相関するパラメータを示す図である。
【図9】第2の実施例における低下処理ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載される構成部品の寸法、材質、形状、相対配置等は、特に記載がない限り発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0025】
<実施例1>
図1は、内燃機関の燃料噴射制御システムの概略構成を示す図である。図1に示す燃料噴射制御システムは、直列4気筒の内燃機関に適用される燃料噴射制御システムであり、低圧燃料ポンプ1と、高圧燃料ポンプ2とを備えている。なお、内燃機関の気筒数は、4つに限られず、5つ以上であってもよく、或いは3つ以下であってもよい。
【0026】
低圧燃料ポンプ1は、燃料タンク3に貯留されている燃料を汲み上げるためのポンプであり、電力により駆動されるタービン式ポンプ(ウェスコ式ポンプ)である。低圧燃料ポンプ1から吐出された燃料は、低圧燃料通路4によって高圧燃料ポンプ2の吸入口へ導かれる。
【0027】
高圧燃料ポンプ2は、低圧燃料ポンプ1から吐出された燃料を昇圧するためのポンプであり、内燃機関の動力(たとえば、カムシャフトの回転力)により駆動される往復式のポンプ(プランジャー式ポンプ)である。高圧燃料ポンプ2の吸入口には、該吸入口の導通と閉塞とを切り換える吸入弁2aが設けられている。吸入弁2aは、電磁駆動式の弁機構であり、プランジャの位置に対する開閉タイミングを変更することによって高圧燃料ポンプ2の吐出量を変更する。また、高圧燃料ポンプ2の吐出口には、高圧燃料通路5の始端が接続されている。高圧燃料通路5の終端は、デリバリパイプ6に接続されている。
【0028】
デリバリパイプ6には、4つの燃料噴射弁7が接続されており、高圧燃料ポンプ2からデリバリパイプ6へ圧送された高圧の燃料が各燃料噴射弁7へ分配される。燃料噴射弁7は、内燃機関の気筒内へ直接燃料を噴射する弁機構である。
【0029】
なお、上記した燃料噴射弁7のような筒内噴射用の燃料噴射弁に加え、吸気通路(吸気ポート)内へ燃料を噴射するためのポート噴射用の燃料噴射弁が内燃機関に取り付けられている場合は、低圧燃料通路4の途中から分岐してポート噴射用のデリバリパイプへ低圧の燃料が供給されるように構成されてもよい。
【0030】
上記した低圧燃料通路4の途中には、パルセーションダンパ11が配置されている。パルセーションダンパ11は、前記高圧燃料ポンプ2の動作(吸引動作と吐出動作)に起因する燃料の脈動を減衰するものである。また、上記した低圧燃料通路4の途中には、分岐通路8の始端が接続されている。分岐通路8の終端は、燃料タンク3に接続されている。分岐通路8の途中には、プレッシャーレギュレータ9が設けられている。プレッシャーレギュレータ9は、低圧燃料通路4内の圧力(燃料圧力)が所定値を超えたときに開弁することにより、低圧燃料通路4内の余剰の燃料が分岐通路8を介して燃料タンク3へ戻るように構成される。
【0031】
上記した高圧燃料通路5の途中には、チェック弁10が配置されている。チェック弁10は、前記高圧燃料ポンプ2の吐出口から前記デリバリパイプ6へ向かう流れを許容し、前記デリバリパイプ6から前記高圧燃料ポンプ2の吐出口へ向かう流れを規制する。
【0032】
上記したデリバリパイプ6には、該デリバリパイプ6内の余剰の燃料を前記燃料タンク3へ戻すためのリターン通路12が接続されている。リターン通路12の途中には、該リターン通路12の導通と遮断とを切り換えるリリーフ弁13弁が配置されている。リリーフ弁13は、電動式または電磁駆動式の弁機構であり、デリバリパイプ6内の燃料圧力が目標値を超えたときに開弁される。
【0033】
前記リターン通路12の途中には、連通路14の終端が接続されている。前記連通路14の始端は、前記高圧燃料ポンプ2に接続されている。この連通路14は、前記高圧燃料ポンプ2から排出される余剰燃料を前記リターン通路12へ導くための通路である。
【0034】
ここで、本実施例における燃料供給システムは、上記した各機器を電気的に制御するためのECU15を備えている。ECU15は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMなどを備えた電子制御ユニットである。ECU15は、燃圧センサ16、吸気温度センサ17、アクセルポジションセンサ18、クランクポジションセンサ19、冷却水温度センサ20などの各種センサと電気的に接続されている。
【0035】
燃圧センサ16は、デリバリパイプ6内の燃料圧力(高圧燃料ポンプの吐出圧力)Phに相関した電気信号を出力するセンサである。吸気温度センサ17は、内燃機関に吸入される空気の温度に相関した電気信号を出力する。吸気温度センサ17によれば、内燃機関の吸気温度を検出することができる。アクセルポジションセンサ18は、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)に相関した電気信号を出力する。アクセルポジションセンサ18の出力信号により、内燃機関の負荷が検出される。クランクポジションセンサ19は、内燃機関の出力軸(クランクシャフト)の回転位置に相関した電気信号を出力するセンサである。クランクポジションセンサ19の出力信号により内燃機関の回転数が検出される。冷却水温度センサ20は、内燃機関の冷却水の温度に相関した電気信号を出力する。冷却水温度センサ20によれば、内燃機関の冷却水温度、または、内燃機関の温度を検出することができる。
【0036】
ECU15は、上記した各種センサの出力信号に基づいて、低圧燃料ポンプ1や吸入弁2aを制御する。たとえば、ECU15は、燃圧センサ16の出力信号(実燃圧)が目標値に収束するように、吸入弁2aの開閉タイミングを調整する。その際、ECU15は、吸入弁2aの制御量である駆動デューティ(ソレノイドの通電時間と非通電時間との比)に対し、実燃圧と目標値との偏差に基づく比例積分制御(PI制御)を行う。なお、前記した目標値は、燃料噴射弁7の目標燃料噴射量に応じて定められる値である。
【0037】
上記した比例積分制御において、ECU15は、目標燃料噴射量に応じて定まる制御量(フィードフォワード項)と、実燃圧と目標値との差(以下、「燃圧の差」と称する)の大きさに応じて定める制御量(比例項)と、実燃圧と目標値との差の一部を積算した制御量(積分項)と、を加算することにより、駆動デューティを算出する。なお、本実施例においては、このように駆動デューティを算出するECU15が、本発明に係る制御部に相当する。
【0038】
なお、上記した燃圧の差とフィードフォワード項との関係、および、上記した燃圧の差と比例項との関係は、予め実験などを利用した適合作業によって定められるものとする。また、上記した燃圧の差のうち、積分項に加算される量の割合についても、予め実験などを利用した適合作業によって定められるものとする。
【0039】
また、ECU15は、低圧燃料ポンプ1の消費電力を可及的に低減するために、低圧燃料ポンプ1の吐出圧力(フィード圧)を低下させる低下処理を実行する。具体的には、ECU15は、低圧燃料ポンプ1の吐出圧力を一定量(以下、「低下定数」と称する)ずつ
低下させる。なお、低圧燃料ポンプ1の吐出圧力が急速に低下すると、低圧燃料通路4内の燃料圧力が燃料の飽和蒸気圧を大幅に下回る可能性がある。その場合、低圧燃料通路4内に多量のベーパが発生し、高圧燃料ポンプ2の吸引不良や吐出不良が誘発される。そのため、上記した低下定数は、低圧燃料通路4内の燃料圧力が飽和蒸気圧を大幅に下回らない範囲で最大の値に設定されることが望ましく、予め実験などの適合処理により求めておくことが望ましい。
【0040】
また、上記した低下処理によって低圧燃料通路4内の燃料圧力が燃料の飽和蒸気圧を下回った場合は、低圧燃料ポンプ1の吐出圧力を上昇させることが望ましい。これに対し、低圧燃料通路4の燃料圧力を検出するセンサと燃料の飽和蒸気圧を検出するセンサを設け、低圧燃料通路4内の燃料圧力が飽和蒸気圧を下回ったときに低圧燃料ポンプ1の吐出圧力を上昇させる方法が考えられる。しかしながら、燃料噴射制御システムの部品点数が増加するため、車載性の低下や製造コストの増加を招くという問題がある。
【0041】
そこで、本実施例の低下処理では、高圧燃料ポンプ2の駆動デューティを演算する際に用いられる積分項の変化傾向に基づいて低圧燃料ポンプ1の吐出圧力を調整する。
【0042】
図2は、低圧燃料ポンプ1の吐出圧力(フィード圧)Plを連続的に低下させた場合における積分項Itと高圧燃料通路5内の燃料圧力Phの挙動を示す図である。図2において、フィード圧Plが飽和蒸気圧を下回ると(図2中のt1)、積分項Itが穏やかな増加傾向を示す。その後、フィード圧Plがさらに低下されると、高圧燃料ポンプ2の吸引不良または吐出不良が発生する(図2中のt2)。高圧燃料ポンプ2の吸引不良または吐出不良が発生すると、積分項Itの増加速度が大きくなるとともに、高圧燃料通路5内の燃料圧力Phが低下する。
【0043】
図2に示したような関係を参酌すると、積分項Itの大きさ(絶対値)が閾値を超えたときに低圧燃料ポンプ1の吐出圧力を上昇させる方法が考えられる。しかしながら、積分項Itの大きさは、ベーパの発生のみならず、燃料温度の上昇や目標噴射量の増加などによっても増加する。
【0044】
よって、ベーパの発生をより正確に検出するためには、一定期間(たとえば、低下処理の実行周期、または高圧燃料ポンプ2の駆動デューティの演算周期)当たりの積分項Itの変化傾向に基づいて、低圧燃料ポンプ1の吐出圧力を調整するとよい。たとえば、積分項Itが一定あるいは低下傾向にあるときは低圧燃料ポンプ1の吐出圧力を低下させ、積分項Itが増加傾向にあるときは低圧燃料ポンプ1の吐出圧力を上昇させる方法が好適である。このような方法によれば、高圧燃料ポンプ2の吸引不良や吐出不良が発生する前(たとえば、図2中のt1からt2までの期間)に、ベーパの発生を検知することができる。
【0045】
以下、本実施例における低下処理の実行手順について図3に沿って説明する。図3は、低下処理ルーチンを示すフローチャートである。低下処理ルーチンは、予めECU15のROMに記憶されており、内燃機関の始動(たとえば、イグニションスイッチがオフからオンへ切り換えられたとき)をトリガとして実行される。
【0046】
図3の低下処理ルーチンにおいて、ECU15は、先ずステップS101の処理を実行する。すなわち、ECU15は、低圧燃料ポンプ1の駆動デューティIdを初期値Id0に設定する。この初期値Id0は、予め最適値を実験等により求めてECU15に記憶しておく。
【0047】
ステップS102では、ECU15は、高圧燃料ポンプ2の駆動デューティの演算に用
いられた積分項Itの値を読み込む。続いて、ECU15は、前記ステップS102で読み込まれた積分項Itから前回の積分項Itoldを減算することにより、差分値ΔIt(=It−Itold)を算出する。
【0048】
ステップS103では、ECU15は、前記ステップS102で算出された差分値ΔItと低下定数Cdwnを用いて、低圧燃料ポンプ1の駆動デューティIdを演算する。その際、ECU15は、以下の式にしたがって駆動デューティIdを演算する。
Id=Idold+ΔIt*α−Cdwn
上記した式中のαは、なまし係数であり、予め実験などを用いた適合作業により求められている。
【0049】
ここで、前記差分値ΔItが正の値を示すとき(積分項Itが増加傾向を示すとき)は、駆動デューティIdが増加する。その場合、低圧燃料ポンプ1の吐出圧力(フィード圧)Plが上昇する。その結果、本発明に係る停止部が実現される。一方、前記差分値ΔItが零であるとき(積分項Itが一定であるとき)、または前記積分項Itが負の値を示すとき(積分項Itが減少傾向にあるとき)は、駆動デューティIdが減少する。その場合、低圧燃料ポンプ1の吐出圧力(フィード圧)Plが低下する。その結果、本発明に係る処理部が実現される。
【0050】
次に、ステップS104では、ECU15は、前記ステップS103で求められた駆動デューティIdのガード処理を実行する。すなわち、ECU15は、前記ステップS103で求められた駆動デューティIdが下限値以上かつ上限値以下の値であるか否かを判別する。前記ステップS103で求められた駆動デューティIdが下限値以上かつ上限値以下の値であるときは、ECU15は、前記駆動デューティIdを目標駆動デューティIdtrgに定める。前記駆動デューティIdが上限値を超える場合は、ECU15は、目標駆動デューティIdtrgを上限値と等しい値に定める。前記駆動デューティIdが下限値を下回る場合は、ECU15は、目標駆動デューティIdtrgを下限値と等しい値に定める。
【0051】
ステップS105では、ECU15は、前記ステップS104で定められた目標駆動デューティIdtrgを低圧燃料ポンプ1に印加することにより、低圧燃料ポンプ1を駆動させる。なお、ECU15は、ステップS105の処理を実行した後に、ステップS102以降の処理を繰り返し実行する。
【0052】
以上述べたようにECU15が図3の低下処理ルーチンを実行すると、積分項Itが一定または低下傾向を示すとき(差分値ΔItが零以下の値になるとき)は、低圧燃料ポンプ1の吐出圧力が低下され、積分項Itが増加傾向を示すとき(差分値ΔItが正の値を示すとき)は、低圧燃料ポンプ1の吐出圧力が上昇される。
【0053】
したがって、本実施例によれば、低圧燃料通路4内に多量のベーパが発生する前(ベーパが発生し始めたとき)にフィード圧Plの低下を停止させることができる。その結果、図4に示すように、燃料圧力Phの大幅な低下や空燃比の乱れを招くことなく、フィード圧Plを可及的に低下させることが可能になる。ここで、図4は、第1の実施例における低下処理が実行されたときのフィード圧Plと積分項Itと燃料圧力Phと空燃比の挙動を示す図である。さらに、フィード圧Plの低下が停止されるときは、前記差分値ΔItが大きくなるほどフィード圧Plが高められるため、高圧燃料ポンプ2の吸引不良や吐出不良をより確実に抑制することが可能となる。また、本実施例の低下処理は、低圧燃料通路4内の燃料圧力を検出するセンサや燃料の飽和蒸気圧を検出するセンサを必要としないため、燃料噴射制御システムの車載性の低下や製造コストの増加を招くこともない。
【0054】
ところで、内燃機関の温度が十分に高くなっているときに、該内燃機関が停止されると、内燃機関の周りに配置されている低圧燃料通路4内の燃料が、該内燃機関から熱を受ける。これにより、低圧燃料通路4内の温度が上昇すると、ベーパが発生する虞がある。ここで、内燃機関の運転中に、低下処理ルーチンを実行すると、低圧燃料通路4内の燃料の圧力は低いものの、低圧燃料通路4内の燃料が速やかに入れ替わるため、ベーパは発生し難い。一方、内燃機関が停止されると、内燃機関の冷却水の循環なども停止される。また、エンジンルーム内の空気の流れも止まる。これらにより、内燃機関やエンジンルーム内の温度が一時的に上昇する。このため、内燃機関の停止時に低下処理ルーチンを実行していると、内燃機関から熱を受けた燃料の温度が上昇し易くなるので、ベーパが発生し易い。内燃機関の停止時にベーパが発生すると、内燃機関の次回の始動時にフィード圧の上昇が遅れ、内燃機関が始動するのに時間がかかってしまう。
【0055】
そこで本実施例では、内燃機関の停止時には、低下処理を停止する。このときには、フィード圧を所定圧力で一定としてもよい。ここでいう内燃機関の停止時とは、内燃機関を停止させるため操作が行われた後、または、内燃機関を停止させるための処理が開始された後を含むことができる。また、火花点火を停止させた後、または、燃料噴射を停止させた後を含むことができる。また、ここでいう所定圧力は、ベーパの発生しない圧力とすることができる。
【0056】
さらに、内燃機関の停止時には、ベーパの発生を抑制するために、フィード圧を上昇させてもよい。例えば、燃料噴射が停止され、内燃機関の回転数が低下している最中に、低圧燃料ポンプ1からの燃料の吐出量を可及的に多くする。これにより、低圧燃料通路4内の燃料の圧力を、プレッシャーレギュレータ9が作動する(開弁する)圧力まで上昇させる。そうすると、低圧燃料通路4内の燃料が速やかに入れ替わるために燃料の温度上昇を抑制できるので、ベーパが発生することを抑制できる。また、燃料噴射が停止され且つ内燃機関の回転数が低下している最中に、低圧燃料ポンプ1からの燃料の吐出量を可及的に多くすることで、運転者が騒音等の違和感を覚えることを抑制できる。
【0057】
なお、内燃機関の始動直後または冷間始動後などであって、内燃機関の温度が所定温度未満の場合には、内燃機関の停止時に低下処理を継続して実行してもよい。ここでいう所定温度は、内燃機関の停止時に低下処理を行うと、ベーパが発生する温度の下限値である。また、内燃機関の温度は、内燃機関の冷却水温度、または内燃機関の潤滑油温度としてもよい。すなわち、内燃機関の温度が十分に低ければ、内燃機関を停止させても、低圧燃料通路4内の燃料は内燃機関から熱をほとんど受けないため、低圧燃料通路4内の温度が上昇しないためにベーパが発生しない。このような場合には、低下処理を停止する必要はない。
【0058】
また、内燃機関の停止時に、フィード圧を、内燃機関の温度に応じて設定してもよい。このときには、フィード圧をベーパが発生しない範囲で設定する。すなわち、内燃機関から熱を受けて燃料の温度が上昇したときに、フィード圧が飽和蒸気圧よりも高くなるように、フィード圧を設定する。ベーパが発生しない範囲のフィード圧と、内燃機関の温度との関係は、予め実験等により求める。
【0059】
図5は、内燃機関の停止時におけるフィード圧制御のフローを示したフローチャートである。本ルーチンは、所定の時間毎にECU15により実行される。
【0060】
ステップS201では、内燃機関の停止要求があるか否か判定される。例えば、運転者が内燃機関を停止させるための操作をした場合に内燃機関の停止要求があると判定される。また、車両の停止時に内燃機関が運転者の意思によらずに停止される場合には、車両が停止した場合に内燃機関の停止要求があると判定される。また、車両の駆動源として内燃
機関の他に電動モータを備えたハイブリッド車両の場合には、電動モータのみで走行する運転領域に入った場合に内燃機関の停止要求があると判定される。そして、ステップS201で肯定判定がなされた場合にはステップS202へ進み、一方、否定判定がなされた場合には本ルーチンを終了させる。
【0061】
ステップS202では、内燃機関の火花点火及び燃料噴射が停止されたか否か判定される。本ステップでは、内燃機関が惰性で回転している状態となったか否か判定している。すなわち、燃料の温度が高くなる状態であるか否か判定している。ステップS202で肯定判定がなされた場合にはステップS203へ進み、否定判定がなされた場合にはステップS202を再度実行する。
【0062】
ステップS203では、内燃機関の冷却水温度が取得される。本ステップでは、内燃機関の温度として、冷却水温度を取得している。
【0063】
ステップS204では、目標フィード圧及び目標駆動デューティが算出される。目標フィード圧は、ベーパが発生しない範囲のフィード圧であり、内燃機関の停止時において目標とされるフィード圧である。すなわち、目標フィード圧は、燃料の飽和蒸気圧よりも高い圧力である。目標フィード圧は、内燃機関の冷却水温度に応じて算出される。例えば、目標フィード圧と内燃機関の冷却水温度との関係を予め実験等により求めてマップ化し、ECU15に記憶させておく。また、本ステップでは、目標フィード圧に対応した低圧燃料ポンプ1の目標駆動デューティを算出する。なお、目標フィード圧と低圧燃料ポンプ1の目標駆動デューティとの関係は予め実験等により求めてECU15に記憶させておく。
【0064】
ステップS205では、低圧燃料ポンプ1が規定時間駆動される。すなわち、ステップS204で算出される目標駆動デューティにしたがって、低圧燃料ポンプ1が駆動される。また、規定時間は、ベーパが発生しなくなるまでの時間として予め実験等により求めておく。
【0065】
このように、内燃機関の停止時において、低下処理を停止させることにより、ベーパの発生を抑制できる。このため、次回の内燃機関の始動時に始動時間を短縮することができる。また、内燃機関の温度に応じて目標駆動デューティを設定することで、低圧燃料ポンプ1の不要な駆動を低減することができる。
【0066】
<実施例2>
次に、本発明の第2の実施例について説明する。ここでは、前述した第1の実施例と異なる構成について説明し、同様の構成については説明を省略する。
【0067】
前述した第1の実施例と本実施例との相違点は、低下定数Cdwnの決定方法にある。すなわち、前述した第1の実施例では、低下定数Cdwnが一定値に設定されるが、本実施例では、低下定数が燃料温度に応じて変更される。
【0068】
図6は、フィード圧Plと積分項Itとの関係を示す図である。図6中の実線は、燃料温度がT1であるときの関係を示す。図6中の一点鎖線は、燃料温度が前記T1より高いT2であるときの関係を示す。図6中の二点鎖線は、燃料温度が前記T2より高いT3であるときの関係を示す。
【0069】
図6に示すように、燃料温度が高いときは低いときに比べ、積分項Itの大きさが大きくなる。さらに、燃料温度が高いときは低いときに比べ、フィード圧Plが飽和蒸気圧を下回ったときの積分項Itの増加度合が大きくなる。そのため、低圧燃料通路4内にベーパが発生し始めるときのフィード圧Plと、高圧燃料ポンプ2の吸引不良や吐出不良が発
生(高圧燃料通路5内の燃料圧力Phの低下が発生)するときのフィード圧Plと、の差が小さくなる。
【0070】
そこで、本実施例の低下処理では、図7に示すように、燃料温度が高いときは低いときに比べ、低下定数Cdwnが小さい値に設定されるようにした。このように燃料温度に応じて低下定数Cdwnの値が変更されると、一定期間におけるフィード圧Plの低下速度は、燃料温度が低いときより高いときの方が遅くなる。その結果、燃料温度が低いときにはフィード圧Plを速やかに低下させることができるとともに、燃料温度が高いときには低圧燃料通路4内のベーパ発生量を急増させることなくフィード圧Plを低下させることができる。
【0071】
ここで、低下定数Cdwnを決定する際の引数となるパラメータとしては、燃料温度の実測値を用いてもよいが、低圧燃料通路4に温度センサを取り付ける必要がある。これに対し、冷却水温度センサ20の出力信号(内燃機関を循環する冷却水の温度)、内燃機関の潤滑油の温度、または吸気温度センサ17の出力信号(吸気温度)を用いるようにしてもよい。
【0072】
図8は、燃料温度に対する冷却水温度、油温、吸気温度のそれぞれの相関を示す図である。図8中の実線は、吸気温度を示す。図8中の一点鎖線は、潤滑油の温度(油温)を示す。図8中の二点鎖線は、冷却水の温度(冷却水温度)を示す。
【0073】
図8に示すように、吸気温度、油温、および冷却水温度は、燃料温度と略同等の変化を示す。ただし、吸気温度は、油温や冷却水温度に比べ、燃料温度との相関が高い。これは、図8に示す吸気温度がエンジンルーム内に設置された吸気温度センサ17により検出された温度であるためと考えられる。すなわち、低圧燃料通路4内の温度がエンジンルーム内の温度と略同等になるとともに、吸気温度センサ17により検出される空気の温度もエンジンルーム内の温度と略同等になると考えられる。よって、本実施例では、燃料温度と相関するパラメータとして、吸気温度センサ17の出力信号(吸気温度)を用いるようにした。なお、上記した各種温度と燃料温度との相関は、内燃機関の仕様や車両の仕様によって異なる可能性もあるため、そのような場合には吸気温度以外のパラメータを用いてもよい。
【0074】
以下、本実施例における低下処理の実行手順について図9に沿って説明する。図9は、本実施例における低下処理ルーチンを示すフローチャートである。図9において、前述した第1の実施例の低下処理ルーチン(図3を参照)と同等の処理については、同一の符号が付されている。
【0075】
前述した第1の実施例の低下処理ルーチンと本実施例の低下処理ルーチンとの相違点は、ステップS102とステップS103との間にステップS301,ステップS302の処理が実行される点にある。すなわち、ステップS301では、ECU15は、吸気温度センサ17の出力信号(吸気温度)Tintを読み込む。続いて、ステップS302では、ECU15は、前記ステップS202で読み込まれた吸気温度Tinkを引数として低下定数Cdwn(=F(Tint))を演算する。その際、ECU15は、図7で述べたような関係を規定したマップを用いてもよい。
【0076】
ECU15は、ステップS302の処理を実行した後にステップS103へ進む。ステップS103では、ECU15は、ステップS102で読み込まれた積分項Itと、ステップS302で求められた低下定数Cdwnと、を用いて低圧燃料ポンプ1の駆動デューティIdを演算する。
【0077】
図9に示すような低下処理ルーチンにしたがって低下処理が実行されると、燃料圧力Phの大幅な低下や空燃比の乱れを招くことなく、フィード圧Plを可及的速やかに低下させることが可能になる。
【0078】
なお、本実施例では、燃料温度と相関するパラメータとして、吸気温度、冷却水温度、油温を例に挙げたが、これに限られないことは勿論である。たとえば、前述した図6の説明で述べたように、積分項Itの大きさ(絶対値)は、燃料温度が高くなるほど大きくなる傾向を有している。よって、積分項Itの大きさをパラメータとして、低下定数Cdwnを決定してもよい。
【0079】
また、積分項Itの増加度合、言い換えれば低圧燃料通路4内におけるベーパの発生しやすさは、内燃機関の負荷(アクセル開度)や回転数が高いときに高まる傾向がある。よって、内燃機関の負荷や回転数を引数として低下定数Cdwnが決定されてもよく、あるいは機関負荷およびまたは機関回転数と燃料温度とを引数として低下定数Cdwnが決定されてもよい。
【符号の説明】
【0080】
1 低圧燃料ポンプ
2 高圧燃料ポンプ
2a 吸入弁
3 燃料タンク
4 低圧燃料通路
5 高圧燃料通路
6 デリバリパイプ
7 燃料噴射弁
8 分岐通路
9 プレッシャーレギュレータ
10 チェック弁
11 パルセーションダンパ
12 リターン通路
13 リリーフ弁
14 連通路
15 ECU
16 燃圧センサ
17 吸気温度センサ
18 アクセルポジションセンサ
19 クランクポジションセンサ
20 冷却水温度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧燃料ポンプから吐出される燃料を高圧燃料ポンプにより昇圧して燃料噴射弁へ供給する内燃機関の燃料噴射制御システムにおいて、
前記低圧燃料ポンプの吐出圧力であるフィード圧を低下させるための低下処理を実行する処理部と、
前記高圧燃料ポンプの吐出圧力を検出する圧力センサと、
前記高圧燃料ポンプの目標吐出圧力と前記圧力センサの検出値との差に基づいて、前記高圧燃料ポンプの駆動デューティの比例積分制御を行う制御部と、
前記低下処理実行中の比例積分制御に用いられる積分項の変化傾向に応じて前記低下処理を停止させる停止部と、
を備え、
前記停止部は、内燃機関の停止時にも前記低下処理を停止させる内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項2】
前記処理部は、内燃機関の停止時において、フィード圧をベーパが発生しない所定圧力とする請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項3】
前記停止部は、内燃機関の温度が所定温度未満の場合には、前記内燃機関の停止時であっても、前記低下処理を継続する請求項1または2に記載の内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項4】
前記停止部は、前記積分項が増加傾向を示すときに、前記低下処理を停止させる請求項1から3の何れか1項に記載の内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項5】
前記処理部は、前記停止部により前記低下処理実行中の比例積分制御に用いられる積分項の変化傾向に応じて前記低下処理が停止されたときに、前記フィード圧を維持または上昇させる請求項1から4の何れか1項に記載の内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項6】
前記処理部は、前記積分項の変化量が大きいときは小さいときに比べ、前記フィード圧を高める請求項5に記載の内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項7】
前記低下処理におけるフィード圧の低下速度は、内燃機関の運転条件に応じて変更される請求項1から6の何れか1項に記載の内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項8】
前記低下処理におけるフィード圧の低下速度は、燃料温度と相関する温度パラメータが低いときより高いときに遅くされる請求項7に記載の内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項9】
前記低下処理におけるフィード圧の低下速度は、機関負荷が低いときより高いときに遅くされる請求項7に記載の内燃機関の燃料噴射制御システム。
【請求項10】
前記低下処理におけるフィード圧の低下速度は、前記積分項の絶対値が小さいときより大きいときに遅くされる請求項1から6の何れか1項に記載の内燃機関の燃料噴射制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−64391(P2013−64391A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204804(P2011−204804)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】