説明

内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造

【課題】シリンダヘッドの冷却水路全体の傾斜に影響を与えることなく袋小路状冷却水路に入った空気を容易に排出できる内燃機関のシリンダヘッド冷却水路構造の提供。
【解決手段】袋小路状冷却水路116内の残留空気は天井面116aが冷却水出口114側を上方とする斜面であることにより容易に排出できる。空気を排出した後は袋小路状冷却水路116にて加熱された冷却水は軽くなって天井面116a側に上昇し天井面116aの傾斜により冷却水出口114側に誘導される。したがって袋小路状冷却水路116内の冷却水の入れ替わりも促進される。冷却水流は、整流板114aを迂回するので冷却水出口114には直接的に流れ込みにくく、主として袋小路状冷却水路116内に流れ込む。このため袋小路状冷却水路116内の冷却水撹拌流が強まり、空気及び加熱冷却水を冷却水出口114側に排出する作用が高まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のシリンダヘッド内に気筒配列方向に冷却水を流す冷却水路を形成し、この冷却水路に冷却水入口から冷却水を導入して冷却水出口から排出することによりシリンダヘッドを冷却するシリンダヘッド冷却水路構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダヘッドを冷却水にて冷却する場合、シリンダヘッド内に形成されているウォータジャケットに気筒配列方向の一端から他端へ向けて冷却水を流している。
この構成の冷却水路では、内部に空気が滞留するとエア溜まりにより冷却水路壁面が断熱されることで、冷却水による冷却効率低下を生じたり沸騰を引き起こしたりするおそれがある。
【0003】
このような冷却水路内のエア溜まりを防止するために、冷却水路の天井を構成する上壁面を、冷却水の上流から下流に向かって次第に上方になるように全体を傾斜させたウォータジャケットが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
更に、出力軸が下方傾斜するように搭載された内燃機関の冷却水路を、その天井部分を階段状に構成することで、ウォータジャケット内におけるエア溜まりを防止しつつボルトボス部の剛性を高めたシリンダヘッド構造が知られている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
更に、出力軸が下方傾斜するように搭載された内燃機関の冷却水路の上部側と、冷却水の供給口とを接続する連通管を設けて冷却水路に空気が溜まった場合に連絡管を介して空気を給水口より排出するエア抜き装置が知られている(例えば特許文献3参照)。この特許文献3では清水ポンプから空気を抜くためのキリ孔も設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−53741号公報(第7頁、図1〜3)
【特許文献2】特開平8−338300号公報(第6〜7頁、図1,4,6)
【特許文献3】特開2003−254060号公報(第3〜4頁、図2〜4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シリンダヘッドにウォータジャケットを形成する場合、設計上の都合、例えばシリンダブロック側との関係から、冷却水の出口の位置が制約されて、気筒の配列方向の端部に出口を形成できず、中央よりになってしまう場合がある。このような制約は、特に、シリンダヘッドに複数の冷却水路を、気筒の配列方向に形成した場合に生じやすい。
【0008】
このように出口が中央よりとなると、出口と冷却水路端部との間が袋小路状冷却水路となる。このような構成では入口と出口との間の冷却水路では十分な水流が得られるが、袋小路状冷却水路では水流を生じさることは困難である。このため袋小路状冷却水路に空気が入った場合には、抜けにくくなり、冷却効率が低下する。
【0009】
前述した特許文献1〜3では、出口が冷却水路の中央よりに配置されたウォータジャケットについての対策は存在しない。
すなわち特許文献1,3のごとく天井面全体を一律に傾けても入口から出口までの空気は排出されるが、傾きの上方側にある袋小路状冷却水路に入った空気は、袋小路状冷却水路の内奥に入り込むのみである。このため冷却効率が更に低下してしまう。このことは天井を階段状にしている特許文献2についても、同様である。
【0010】
袋小路状冷却水路が下方となるように冷却水路全体を傾斜すれば、袋小路状冷却水路内の空気は排出できるが、冷却水路設計の制約が大きい内燃機関では、シリンダヘッドの冷却水路全体を傾斜させること自体が困難である。しかも冷却水路全体を傾斜させると冷却水路内にて流速分布の差が大きくなり、シリンダヘッド全体を均一に冷却できなくなるおそれがある。
【0011】
これらのことは、冷却水の入口が、気筒の配列方向の端部に形成できず、中央よりになってしまう場合も同様である。すなわち入口と冷却水路の端部との間が袋小路状冷却水路となってしまうことから同様な課題が生じる。
【0012】
本発明は、シリンダヘッドの冷却水路全体の傾斜に影響を与えることなく袋小路状冷却水路に入った空気を容易に排出できる冷却水路構造の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用・効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造は、内燃機関のシリンダヘッド内に気筒配列方向に冷却水を流す冷却水路を形成し、この冷却水路に冷却水入口から冷却水を導入して冷却水出口から排出することによりシリンダヘッドを冷却するシリンダヘッド冷却水路構造であって、前記冷却水出口は、前記冷却水路における冷却水流下流側端部から上流側に離れた位置に設定されていると共に、前記冷却水出口と前記冷却水流下流側端部との間の袋小路状冷却水路の天井面は、前記冷却水出口側を上方とする傾斜面を形成していることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、冷却水出口と冷却水流下流側端部との間の袋小路状冷却水路の天井面を、冷却水出口側を上方とする傾斜面としている。したがって冷却水路全体を傾斜させる必要がない。
【0015】
袋小路状冷却水路に空気が入っても、空気は冷却水との比重の差により天井側に押される。この天井面は冷却水出口側を上方とする傾斜面であるので、冷却水との比重差により天井面に押しつけられた空気は冷却水出口側に移動する。そして冷却水出口の位置に到達すると、その位置では十分な冷却水流が存在していることから、空気は冷却水出口に吸い込まれて冷却水路から排出される。
【0016】
更に空気を排出した後についても、内燃機関の運転中に袋小路状冷却水路にて加熱された冷却水は軽くなって天井側に上昇する。このため加熱された冷却水も天井面の傾斜により冷却水出口側に誘導される。したがって天井面の傾斜により袋小路状冷却水路内の冷却水の入れ替わりが促進されるという副次的効果を伴う。
【0017】
冷却水入口から冷却水出口までの冷却水路については、特に傾斜を考慮しなくても空気は冷却水流により出口から排出される。
したがってシリンダヘッドの冷却水路全体の傾斜に影響を与えることなく袋小路状冷却水路に入った空気を容易に排出できる冷却水路構造を実現できる。
【0018】
請求項2に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造では、請求項1に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造において、前記冷却水路は、前記冷却水出口の上流側に、水流方向を前記冷却水出口への直行を阻止して、前記袋小路状冷却水路へ向ける水流方向変更部を備えていることを特徴とする。
【0019】
このように水流方向変更部を設けることにより、冷却水路を流れる冷却水は、冷却水出口に直行せずに、冷却水流下流側端部に向かうので、袋小路状冷却水路内の冷却水撹拌流を強めて、空気及び加熱された冷却水を冷却水出口側に排出する作用を高める。
【0020】
このことにより空気や加熱冷却水の排出をより効果的なものにできる。
請求項3に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造は、内燃機関のシリンダヘッド内に気筒配列方向に冷却水を流す冷却水路を形成し、この冷却水路に冷却水入口から冷却水を導入して冷却水出口から排出することによりシリンダヘッドを冷却するシリンダヘッド冷却水路構造であって、前記冷却水入口は、前記冷却水路における冷却水流上流側端部から下流側に離れた位置に設定されていると共に、前記冷却水入口と前記冷却水流上流側端部との間の袋小路状冷却水路の天井面は、前記冷却水入口側を上方とする傾斜面を形成していることを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、冷却水入口と冷却水流上流側端部との間の袋小路状冷却水路の天井面を、冷却水入口側を上方とする傾斜面としている。したがって冷却水路全体を傾斜させる必要がない。
【0022】
袋小路状冷却水路に空気が入っても、空気は冷却水との比重の差により天井側に押される。この天井面は冷却水入口側を上方とする傾斜面であるので、冷却水との比重差により天井面に押しつけられた空気は冷却水入口側に移動する。そして冷却水入口の位置に到達すると、その位置では十分な冷却水流が存在していることから、空気は冷却水入口の位置から下流の冷却水出口へと流されて、最終的に冷却水出口に吸い込まれて冷却水路から排出される。
【0023】
更に空気を排出した後についても、内燃機関の運転中に袋小路状冷却水路にて加熱された冷却水は軽くなって天井側に上昇する。このため加熱された冷却水も天井面の傾斜により冷却水入口側に誘導される。したがって天井面の傾斜により袋小路状冷却水路内の冷却水の入れ替わりが促進されるという副次的効果を伴う。
【0024】
冷却水入口から冷却水出口までの冷却水路に空気が存在しても、前述したごとく冷却水流により、特に傾斜を考慮しなくても空気は出口から排出される。
したがってシリンダヘッドの冷却水路全体の傾斜に影響を与えることなく袋小路状冷却水路に入った空気を容易に排出できる冷却水路構造を実現できる。
【0025】
請求項4に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造では、請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造において、前記内燃機関は車両走行駆動用であり、前記袋小路状冷却水路は、前記内燃機関が車両に搭載された状態で、前記傾斜面の状態が維持されている傾斜角度に形成されていることを特徴とする。
【0026】
特に車両に搭載した状態で、袋小路状冷却水路の天井面が、冷却水出口側を上方とする傾斜面の状態、あるいは冷却水入口側を上方とする傾斜面の状態を維持するように、傾斜角度が形成されていることにより、前述した作用及び効果を確実に生じさせることができる。
【0027】
請求項5に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造において、内燃機関のシリンダヘッドには、シリンダヘッドの大部分を冷却するメインウォータジャケットとシリンダヘッドの一部を冷却するサブウォータジャケットとを備え、このサブウォータジャケットが、前記冷却水路に相当することを特徴とする。
【0028】
シリンダヘッドがメインウォータジャケットとサブウォータジャケットとを備える場合には、メインウォータジャケット側に冷却水が主として供給されることで、サブウォータジャケット側では冷却水流が弱くなる傾向になる。
【0029】
しかし袋小路状冷却水路からの空気排出は天井面の傾斜によるものであるので、このような冷却水流の強弱には関係なく十分に効果を発揮することができる。
したがってこのような複数の冷却水路を備える内燃機関のシリンダヘッドにおいて、そのサブウォータジャケットに本発明を適用することにより、顕著な空気排出効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態1の内燃機関シリンダヘッドの水平断面構成説明図。
【図2】実施の形態1のサブウォータジャケットの垂直方向断面構成説明図。
【図3】(a),(b)実施の形態2のサブウォータジャケットの構成説明図。
【図4】(a),(b)実施の形態3のサブウォータジャケットの構成説明図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
[実施の形態1]
〈構成〉図1は、上述した発明が適用された内燃機関のシリンダヘッド2であり、その水平断面構成を示している。シリンダヘッド2は、直列の複数気筒(本実施の形態においては直列4気筒)の燃焼室に対応するものであり、それぞれの燃焼室には、2つの吸気ポート4及び2つの排気ポート6が設けられている。そして各燃焼室の中心に相当する位置には点火プラグ取り付け用の孔8が形成されている。
【0032】
シリンダヘッド2の内部には、複数のウォータジャケット10,12が設けられている。メインウォータジャケット10は排気ポート6の湾曲内側の領域を除いて、シリンダヘッド2の全体に設けられている。このメインウォータジャケット10は冷却水を、シリンダブロックや外部からの供給経路により、図示右側にRで示すリア側に供給され、このリア側から図示左側にFで示すフロント側へ流し、シリンダブロック側へ排出している。
【0033】
サブウォータジャケット12は、排気ポート6の湾曲内側の領域、すなわち排気ポート6とシリンダブロック接続面との間の領域に、リア側からフロント側に一続きに長く形成されている。このサブウォータジャケット12にはメインウォータジャケット10側に供給される冷却水が分配されることにより、リア側で冷却水が供給され、このリア側からフロント側へ流れ、冷却水出口14からシリンダブロック側へ排出している。
【0034】
サブウォータジャケット12の垂直方向の断面構成を図2に示す。このサブウォータジャケット12へは、メインウォータジャケット10に供給される冷却水の一部が分配通路12aから分配されて供給される。分配通路12aはサブウォータジャケット12のリア側の端部に設けられた冷却水入口12bからサブウォータジャケット12内に冷却水を導入している。
【0035】
冷却水入口12bから導入された冷却水は、実線の矢線にて示すごとく、一続きのサブウォータジャケット12内をフロント側へ流れ、サブウォータジャケット12の冷却水流下流側端部12cに到達する手前に設けられた冷却水出口14からシリンダブロック側に排出される。
【0036】
ここで冷却水出口14がサブウォータジャケット12の冷却水流下流側端部12cの位置に設けられていないのは、内燃機関の設計上の制約からである。
ただしこの冷却水流下流側端部12cと冷却水出口14との間の領域である袋小路状冷却水路16では、その天井面16aは冷却水出口14側を上方とする傾斜面を形成している。
【0037】
ここで内燃機関は車両走行駆動用であり、内燃機関が車両に搭載された状態でも、天井面16aは冷却水出口14側を上方とする傾斜面となるように形成されている。すなわち内燃機関がクランク軸を水平とするのではなく、フロント側をリア側よりも高くした搭載角にて車両に搭載された状態においても、冷却水出口14側を上方とする1°の傾斜面が確保されるように天井面16aの傾きが設計されている。
〈作用〉上述のごとく構成した内燃機関において、そのシリンダヘッド2では冷却水入口12bから冷却水出口14に至るサブウォータジャケット12の冷却水路では、実線の矢線にて示すごとくの水流により、内部に空気が残留していても冷却水出口14から排出することができる。
【0038】
しかし冷却水出口14よりもフロント側に存在する袋小路状冷却水路16では、冷却水流下流側端部12c側が行き止まりであるので、冷却水入口12bからの水流に伴う冷却水の流れはほとんど生じない。したがって袋小路状冷却水路16内に空気が残留したとしても、水流による排出は望めない。
【0039】
ところが空気と水との比重の差から、袋小路状冷却水路16内では、空気は天井面16a側に押しつけられる。この天井面16aは冷却水出口14側を上方として傾斜していることから、袋小路状冷却水路16内の空気は天井面16aの傾斜に誘導されて、破線の矢線にて示すごとく冷却水出口14側へ移動する。そして冷却水出口14の上方の位置に至ると、冷却水入口12b側から冷却水出口14へ流れ込む冷却水により冷却水出口14内に誘導されて、サブウォータジャケット12から排出される。
〈効果〉(1)上述したごとく袋小路状冷却水路16内の残留空気は、天井面16aが冷却水出口14側を上方とする斜面であることにより容易に排出できる。したがってサブウォータジャケット12全体を傾斜させる必要がない。
【0040】
更に空気を排出した後についても、袋小路状冷却水路16にて加熱された冷却水は軽くなって天井面16a側に上昇する。このため加熱された冷却水も天井面16aの傾斜により冷却水出口14側に誘導される。したがって天井面16aの傾斜により袋小路状冷却水路16内の冷却水の入れ替わりが促進される。
【0041】
サブウォータジャケット12のうちで、冷却水入口12bから冷却水出口14までの冷却水路については、その天井面の傾斜を考慮しなくても、すなわち水平状態であろうとも、内部に入った空気は冷却水流により冷却水出口14から排出される。
【0042】
このためサブウォータジャケット12全体の傾斜に影響を与えることなく袋小路状冷却水路16に入った空気を容易に排出できる。
そして、このことによりサブウォータジャケット12による冷却効果を十分に発揮できる。
【0043】
(2)シリンダヘッド2はメインウォータジャケット10とサブウォータジャケット12との2つの冷却水路を備えているため、サブウォータジャケット12側では冷却水流が弱くなる傾向になる。
【0044】
しかし袋小路状冷却水路16からの空気の排出は天井面16aの傾斜によるものであるため、冷却水流の強弱には関係なく、空気排出や加熱冷却水排出については十分に効果を発揮できる。
【0045】
[実施の形態2]
〈構成〉本実施の形態では、図3の(a),(b)に示すごとく、サブウォータジャケット112には、冷却水出口114の上流側に隣接して整流板114a(水流方向変更部に相当)を備えている。これ以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。尚、図3の(a)はシリンダヘッド102における水平断面の主要部構成を示し、(b)は垂直方向の断面構成を示している。
【0046】
このようにサブウォータジャケット112では整流板114aの存在により、サブウォータジャケット112内に絞りが形成されることになる。したがって圧力損失過大を防止するために、この絞りの断面積は、サブウォータジャケット112の冷却系における最小断面積の1.2〜2倍の範囲に止めている。この程度の絞りであれば、圧力損失は過大とならず流量や流速が大きく低下することがない。したがってサブウォータジャケット112内に十分な流量及び流速で冷却水を流すことができる。
〈作用〉上述のごとく構成したシリンダヘッド102を備えた内燃機関において、そのシリンダヘッド102では冷却水入口112bから冷却水出口114に至るサブウォータジャケット112の冷却水路では、実線の矢線にて示すごとくの冷却水流が生じる。
【0047】
ここで冷却水入口112bから整流板114aの直前までは、ほぼ前記実施の形態1の図1,2に示したごとくの冷却水流である。しかし整流板114aが冷却水出口114の上流側に隣接して存在するため、冷却水流は整流板114aにより冷却水出口114への直行が阻止される。したがって冷却水流は整流板114aの上側及び冷却水流方向から見て左側の隙間を迂回することになる。しかもサブウォータジャケット112は整流板114aにより絞られているので、迂回する冷却水流の流速が高まる。
【0048】
したがって整流板114aを迂回して隙間から冷却水出口114側へ流れ出ても、その冷却水流は、冷却水出口114には直接的に流れ込みにくくなり、実線の矢線にて示すごとく、主として袋小路状冷却水路116内に流れ込むことになる。
【0049】
このため前記実施の形態1にて説明した冷却水出口114側を上方とする傾斜面を形成している天井面116aによる残留空気及び加熱冷却水の排出作用と共に、冷却水流下流側端部112cへ向かう冷却水流により、袋小路状冷却水路116内の冷却水撹拌流が強まり、空気及び加熱冷却水を冷却水出口114側に排出する作用が高まる。
〈効果〉(1)前記実施の形態1の効果に加えて、整流板114aにより更に袋小路状冷却水路116内の空気排出効果や加熱冷却水排出効果が高くなる。
【0050】
したがってサブウォータジャケット112による冷却効果をより高めることができる。
[実施の形態3]
〈構成〉本実施の形態の主要部構成は、図4の(a)あるいは(b)に示すごとくである。図4の(a)の構成例では、サブウォータジャケット212において冷却水出口214はサブウォータジャケット212の冷却水流下流側端部に存在する。このため冷却水流下流側端部には袋小路状冷却水路は存在しない。この代わりに冷却水入口218が冷却水流上流側端部212aよりも中央よりであるので、冷却水入口218と冷却水流上流側端部212aとの間に袋小路状冷却水路216が形成されている。この袋小路状冷却水路216の天井面216aは、冷却水入口218側を上方とする傾斜面を形成している。
【0051】
図4の(b)の構成例では、サブウォータジャケット312において冷却水出口314はサブウォータジャケット312の冷却水流下流側端部312bから中央よりに形成されている。したがって前記実施の形態1と同様に冷却水出口314と冷却水流下流側端部312bとの間に袋小路状冷却水路316が存在する。そしてこの袋小路状冷却水路316の天井面316aは冷却水出口314側を上方とする傾斜面を形成している。
【0052】
更に図4の(b)の構成では冷却水入口318についても冷却水流上流側端部312aよりも中央よりであるので、冷却水入口318と冷却水流上流側端部312aとの間に袋小路状冷却水路320が形成されている。この袋小路状冷却水路320の天井面320aは冷却水入口318側を上方とする傾斜面を形成している。
【0053】
図4の(a)あるいは(b)のいずれの例においても他の構成は前記実施の形態1と同じである。
〈作用〉冷却水入口218,318より上流側の袋小路状冷却水路216,320は、冷却水入口218,318から導入される冷却水流は流れ込まない。このため冷却水流による残留空気の排出はなされない。しかし袋小路状冷却水路216,320に空気が入っても、空気は冷却水との比重の差により袋小路状冷却水路216,320の天井面216a,320a側に押しつけられる。この天井面216a,320aは冷却水入口218,318側を上方とする傾斜面であるので、冷却水との比重差により天井面216a,320aに押しつけられた空気は冷却水入口218,318側へ移動する。そして冷却水入口218,318の位置に到達する。この冷却水入口218,318の位置から冷却水出口214,314までは冷却水流が存在している。このことから空気はサブウォータジャケット212,312内を流れて最終的に冷却水出口214,314に吸い込まれてサブウォータジャケット212,312から排出される。
【0054】
更に空気を排出した後についても、袋小路状冷却水路216,320にて加熱された冷却水は軽くなって天井面216a,320a側に上昇する。このため加熱された冷却水も天井面216a,320aの傾斜により冷却水入口218,318側に誘導される。そして冷却水入口218,318の位置に到達すれば、冷却水流によりサブウォータジャケット212,312内を流れて冷却水出口214,314からシリンダブロック側へ排出される。
【0055】
このように天井面216a,320aの傾斜により袋小路状冷却水路216,320内の冷却水の入れ替わりが促進される。
図4の(b)に示した冷却水出口314よりも冷却水流下流側に存在する袋小路状冷却水路316における空気排出や加熱冷却水排出については前記実施の形態1にて説明したごとくである。
〈効果〉(1)冷却水入口218,318よりも冷却水上流側に存在する袋小路状冷却水路216,320についても、天井面216a,320aの傾斜により、サブウォータジャケット212,312全体の傾斜に影響を与えることなく、袋小路状冷却水路216,320に入った空気を容易に排出できる。更に加熱冷却水も容易に排出できる。
【0056】
このことによりサブウォータジャケット212,312による冷却効果を十分に発揮できる。
(2)図4の(b)の例については、更に前記実施の形態1と同様な効果を生じる。
【0057】
[その他の実施の形態]
・前記実施の形態3に示した図4の(b)において冷却水出口314の上流側に前記実施の形態2に示した整流板を設けても良い。
【0058】
・前記内燃機関はガソリンエンジンの例であったが、ディーゼルエンジンにも適用できる。
【符号の説明】
【0059】
2…シリンダヘッド、4…吸気ポート、6…排気ポート、8…点火プラグ取り付け用の孔、10…メインウォータジャケット、12…サブウォータジャケット、12a…分配通路、12b…冷却水入口、12c…冷却水流下流側端部、14…冷却水出口、16…袋小路状冷却水路、16a…天井面、102…シリンダヘッド、112…サブウォータジャケット、112b…冷却水入口、112c…冷却水流下流側端部、114…冷却水出口、114a…整流板、116…袋小路状冷却水路、116a…天井面、212…サブウォータジャケット、212a…冷却水流上流側端部、214…冷却水出口、216…袋小路状冷却水路、216a…天井面、218…冷却水入口、312…サブウォータジャケット、312a…冷却水流上流側端部、312b…冷却水流下流側端部、314…冷却水出口、316…袋小路状冷却水路、316a…天井面、318…冷却水入口、320…袋小路状冷却水路、320a…天井面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のシリンダヘッド内に気筒配列方向に冷却水を流す冷却水路を形成し、この冷却水路に冷却水入口から冷却水を導入して冷却水出口から排出することによりシリンダヘッドを冷却するシリンダヘッド冷却水路構造であって、
前記冷却水出口は、前記冷却水路における冷却水流下流側端部から上流側に離れた位置に設定されていると共に、前記冷却水出口と前記冷却水流下流側端部との間の袋小路状冷却水路の天井面は、前記冷却水出口側を上方とする傾斜面を形成していることを特徴とする内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造において、前記冷却水路は、前記冷却水出口の上流側に、水流方向を前記冷却水出口への直行を阻止して、前記袋小路状冷却水路へ向ける水流方向変更部を備えていることを特徴とする内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造。
【請求項3】
内燃機関のシリンダヘッド内に気筒配列方向に冷却水を流す冷却水路を形成し、この冷却水路に冷却水入口から冷却水を導入して冷却水出口から排出することによりシリンダヘッドを冷却するシリンダヘッド冷却水路構造であって、
前記冷却水入口は、前記冷却水路における冷却水流上流側端部から下流側に離れた位置に設定されていると共に、前記冷却水入口と前記冷却水流上流側端部との間の袋小路状冷却水路の天井面は、前記冷却水入口側を上方とする傾斜面を形成していることを特徴とする内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造において、前記内燃機関は車両走行駆動用であり、前記袋小路状冷却水路は、前記内燃機関が車両に搭載された状態で、前記傾斜面の状態が維持されている傾斜角度に形成されていることを特徴とする内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造において、内燃機関のシリンダヘッドには、シリンダヘッドの大部分を冷却するメインウォータジャケットとシリンダヘッドの一部を冷却するサブウォータジャケットとを備え、このサブウォータジャケットが、前記冷却水路に相当することを特徴とする内燃機関シリンダヘッド冷却水路構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−225270(P2012−225270A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94083(P2011−94083)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】