説明

内燃機関用すべり軸受およびすべり軸受装置

【課題】すべり軸受の内周面に沿って流れる潤滑オイルが段差によって掻き取られるワイピング現象の発生を防止できるすべり軸受およびすべり軸受装置の提供。
【解決手段】内燃機関のクランク軸またはクランクピンを支承する一対の軸受半円筒体10,20から成るすべり軸受である。このすべり軸受は分割型軸受ハウジング内に収容される。一対のハウジング分割体のうち、少なくとも相対的に高い剛性を有する一方のハウジング分割体に組み込まれる軸受半円筒体10の内周面に、周方向に延在する多数の周方向溝14が存在し、該軸受半円筒体の2つの周方向端面のうち、少なくとも軸回転方向とは反対方向を向いた周方向端面12を含む軸受半円筒体10の周方向端部領域に形成された周方向溝14の深さが10μm以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のクランク軸またはクランクピンを支承する一対の軸受半円筒体から成り、互いに組み合わせて円筒形状体として用いられるすべり軸受であり、その組み合わせ状態と整合する態様で2分割された円筒形状の軸受保持穴を有する分割型軸受ハウジング内に収容して用いられる前記すべり軸受に関するものである(例えば、特許文献1参照)。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のクランクジャーナルまたはクランクピンを支承するすべり軸受は、一対の軸受半円筒体を互いに組み合わせて円筒形状体として用いられている。このすべり軸受と、被支持軸(すなわち、回転軸)との間には、強制的に潤滑オイルが供給される。
【0003】
近年、内燃機関の軽量化が図られており、軸受ハウジングを構成する部材が低剛性化するという傾向がある。一対の軸受半円筒体を軸受ハウジング内に組み込んで、前記軸受キャップを、クランクケース側ハウジング、または、コンロッド側ハウジングに対してボルトで締結すると、形状の違いによる剛性の違いから低剛性である前記軸受キャップの弾性変形量が、クランクケース側ハウジング、または、コンロッド側ハウジングの弾性変形量に比して大きくなる。この状態が図1、図2に示されている。図1では、コンロッド側ハウジング(01)に対して、軸受キャップ(02)が、ボルト(03)で締結されている。図2では、クランクケース側ハウジング(04)に対して、軸受キャップ(05)が、ボルト(06)で締結されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、コンロッド側ハウジング(01)、クランクケース側ハウジング(04)に対する軸受キャップ(02、05)の相対的弾性変形量が大きいと、コンロッド側ハウジング(01)と軸受キャップ(02)の突合せ面、あるいは、クランクケース側ハウジング(04)と軸受キャップ(05)の突合せ端面における組み合わせ部材間の内径寸法差による比較的大きな段差(07、08)が生じる。このような段差が生じた状態では、ハウジングの軸受保持穴の変形形状に追従して、一対の軸受半円筒体(09、010)から成るすべり軸受も弾性変形し、一対の軸受半円筒体(09、010)の突合せ端面における両軸受半円筒体間の内径寸法差による、前記ハウジングの段差と同様な段差(011)(図3)が生じる。
【0005】
一方、前記のとおり内燃機関の軽量化のために、機関潤滑用オイルポンプの小型化も図られており、この結果としての供給オイル量の低減化に対応して、すべり軸受と被支持軸(すなわち、クランクピンまたはクランクジャーナル)の間の隙間を可及的に狭くすることにより、すべり軸受の幅方向両端部からのオイル漏れ量を減らすという構成が採用されている。この構成において、すべり軸受の前記段差(011)が生じると、すべり軸受の内周面に沿って流れる潤滑オイルの流れが妨げられ、被支持軸(012:図3ではクランクピン)の回転方向(013)と同方向に流れる潤滑オイルが段差(011)によって掻き取られる「ワイピング現象」がおきやすくなる。この結果、すべり軸受の幅方向両端部からのオイル漏れ量が増し、すべり軸受の内周面(すなわち、摺動面)に対するオイル供給量が不足して、摩耗、焼付などの軸受不具合が生じる。
【0006】
すべり軸受の突合せ端面における斯かる段差の発生を防ぐ試みが、特許文献2に記載されている。特許文献2の開示によれば、分割型軸受ハウジングをボルト締結すると、相対的に低剛性である軸受キャップの弾性変形量が相手ハウジングよりも大きいため、この変形量を考慮して、軸受キャップの内径形状を調整し、相手ハウジングとの突合せ面における両部材の肉厚を整合させた軸受が提案されている。
このような構成を採用しても、内燃機関の作動中は、分割型軸受ハウジングに動荷重が作用し、相対的に剛性の異なる軸受キャップと相手ハウジングとでは、弾性変形量が互いに異なり、すべり軸受の突合せ端面における前記段差の発生と、それに伴って発生するワイピング現象を防ぐことはできない。
【特許文献1】特開平8−210355号公報
【特許文献2】特表平9−511050号公報
【0007】
かくして、本発明の目的は、分割型軸受ハウジング内に保持された一対の軸受半円筒体から成るすべり軸受の突合せ端面における、両軸受半円筒体間の内径寸法差による段差が生じても、被支持軸(クランクピンまたはクランクジャーナル)の回転方向と同方向に、すべり軸受の内周面に沿って流れる潤滑オイルが段差によって掻き取られる「ワイピング現象」の発生を防止できるすべり軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的に照らし、本発明の第一の観点によれば、以下のすべり軸受が提供される。
内燃機関のクランク軸またはクランクピンを支承する一対の軸受半円筒体から成り、互いに組み合わせて円筒形状体として用いられるすべり軸受であり、その組み合わせ状態と整合する態様で2分割された円筒形状の軸受保持穴を有する分割型軸受ハウジング内に収容して用いられる前記すべり軸受において、
前記分割型軸受ハウジングを構成する一対のハウジング分割体が互いに異なる剛性を有し、
前記一対のハウジング分割体のうち、少なくとも相対的に高い剛性を有する一方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に、周方向に延在する多数の周方向溝が存在し、該軸受半円筒体の2つの周方向端面のうち、少なくとも軸回転方向とは反対方向を向いた前記周方向端面を含む前記軸受半円筒体の周方向端部領域に形成された前記周方向溝の深さが10μm以上になされている内燃機関用すべり軸受。
ここで、内燃機関の分割型軸受ハウジングに生じる段差のサイズは、一般的には最大でも10μm程度であり、このことを考慮して、周方向溝深さを10μm以上に限定した。周方向溝深さが10μm以上であれば、すべり軸受の内周面に沿う潤滑オイルの流れが、段差をなす軸受半円筒体の周方向端面で阻害されることはないからである。
本発明の第二の観点によれば、以下のすべり軸受装置が提供される。
内燃機関のクランク軸またはクランクピンを支承する一対の軸受半円筒体から成り、互いに組み合わせて円筒形状体として用いられるすべり軸受と、
前記一対の軸受半円筒体の組み合わせ状態と整合する態様で2分割された円筒形状の軸受保持穴を有し、該軸受保持穴内に前記一対の軸受半円筒体を収容する分割型軸受ハウジングとを含むすべり軸受装置において、
前記分割型軸受ハウジングを構成する一対のハウジング分割体が互いに異なる剛性を有し、
前記一対のハウジング分割体のうち、少なくとも相対的に高い剛性を有する一方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に、周方向に延在する多数の周方向溝が存在し、該軸受半円筒体の2つの周方向端面のうち、少なくとも軸回転方向とは反対方向を向いた前記周方向端面を含む前記軸受半円筒体の周方向端部領域に形成された前記周方向溝の深さが10μm以上になされている内燃機関のすべり軸受装置。
【0009】
本発明の第一の実施形態によれば、前記内周面における前記周方向端部領域が、当該周方向端面を始点とする少なくとも円周角10°、最大で円周角50°に相当する周方向長さで規定される範囲である。この円周角範囲は、すべり軸受の内周面(すなわち、摺動面)における主荷重受部を除く範囲である。
本発明の第二の実施形態によれば、前記円周角周方向長さで規定される範囲以外の前記内周面の表面粗さが3.2μmRz以下である。
本発明の第三の実施形態によれば、前記周方向溝のピッチが0.5mm〜1.5mmである。
本発明の第四の実施形態によれば、前記一方のハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に形成された前記周方向溝の溝底と、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面である、被支持軸との摺動面とが、前記一対の軸受半円筒体の突き合わせ端面で互いに整合する位置関係にある。
本発明の第五の実施形態によれば、前記一対のハウジング分割体のうちの他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に、周方向に延在する多数の周方向溝が存在し、該軸受半円筒体の2つの周方向端面のうち、少なくとも軸回転方向とは反対方向を向いた前記周方向端面を含む前記軸受半円筒体の周方向端部領域に形成された前記周方向溝の深さが10μm以上になされる。
本発明の第六の実施形態によれば、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の前記内周面における前記周方向端部領域が、当該周方向端面を始点とする少なくとも円周角10°、最大で円周角50°に相当する周方向長さで規定される範囲である。
本発明の第七の実施形態によれば、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体における、前記周方向長さで規定される範囲以外の前記内周面の表面粗さが3.2μmRz以下である。
本発明の第八の実施形態によれば、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体における、前記周方向溝のピッチが0.5mm〜1.5mmである。
本発明の第九の実施形態によれば、前記一対の軸受半円筒体の前記周方向端部領域における厚さ調整により、前記一方のハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面と、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面とが前記一対の軸受半円筒体の突き合わせ端面で互いに整合する。この構成では、ワイピング防止効果が高まり、動荷重負荷による変動段差が大きい場合でも、一対の軸受半円筒体がお互いに周方向溝内を流れるオイルの障壁になりにくい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の利点は以下のとおりである。
(1)分割型軸受ハウジングを構成する一対のハウジング分割体のうち、相対的に低い剛性を有するハウジング分割体は、相対的に高い剛性を有するハウジング分割体に比して、組み付け状態で弾性変形量が大きく、それに対応して、相対的に低い剛性を有するハウジング分割体に組み込まれた軸受半円筒体の弾性変形量も、相対的に高い剛性を有するハウジング分割体に組み込まれた軸受半円筒体の弾性変形量に比して大きい。そのため、両軸受半円筒体の周方向端面(すなわち、突合せ端面)における内径が、互いに相違し、通常、相対的に高い剛性を有するハウジング分割体に組み込まれた軸受半円筒体の突合せ端面が、相対的に低い剛性を有するハウジング分割体に組み込まれた軸受半円筒体の突合せ端面に対して、内側(すべり軸受の軸線側)に突出した状態になる。この偏位した状態は、相対的に高い剛性を有するハウジング分割体に組み込まれた軸受半円筒体の突合せ端面が、すべり軸受の内周面(すなわち、摺動面)側で突出する段差として把握される。従来のすべり軸受にあっては、この段差によるオイル掻き取り現象(ワイピング現象)が生じていたが、本発明では、一対のハウジング分割体のうち、少なくとも相対的に高い剛性を有する一方の前記ハウジング分割体に組み込まれる軸受半円筒体の内周面に、周方向に延在する多数の周方向溝が存在し、該軸受半円筒体の2つの周方向端面のうち、少なくとも軸回転方向とは反対方向を向いた前記周方向端面を含む軸受半円筒体の周方向端部領域に形成された前記周方向溝の深さが10μm以上になされているため、すべり軸受の内周面に沿って被支持軸の回転方向に流れる潤滑オイルの流れが前記段差によって阻害されずに、深さが10μm以上の周方向溝に案内されて円滑にすべり軸受の内周面に沿って流れる。故に、軸受半円筒体の突合せ端面において、前記段差に沿って、すべり軸受の幅方向に流れる潤滑オイルの量を低減化でき、オイル供給量の不足による軸受の摩耗、焼付などの不具合を効果的に防ぐことができる。
(2)本発明の第一および第二の実施形態において、10μm以上の大きな深さの周方向溝の形成範囲を、周方向端面を始点とする少なくとも円周角10°、最大で円周角50°に相当する周方向長さで規定される範囲に限定し、主荷重受部の摺動面粗さを通常の表面粗さである3.2μmRz以下にすることにより、主荷重受部における油膜形成を通常通りに維持できる。
(3)本発明の第三の実施形態において、周方向溝の凸部は、軸受幅方向における潤滑オイル漏れの障壁となるが、周方向溝のピッチを0.5mm以上にすることにより、各凸条部の頂点付近の横断面積が大きくなるので、凸条部の強度が高くなり、相手軸と接触しても塑性変形し難く、かつ、摩耗し難くなるので、該頂部と被支持軸との間隙の増加を防ぐことができ、軸受幅方向への潤滑オイルの漏れ量の増加を防ぐことができる。周方向溝のピッチが0.5mm未満の場合には、各凸条部の頂点付近の横断面積が小さくなるので、凸条部の強度が低くなり、相手軸と接触しても塑性変形しやすく、かつ、摩耗しやすくなる。また、周方向溝のピッチが上限1.5mmを超えると、凸条部の数が少なくなり過ぎて、各凸条部の頂点における被支持軸との接触面圧が高くなり、摩耗量の増大を招く。
(4)本発明の第四の実施形態では、前記一方のハウジング分割体に組み込まれる軸受半円筒体の内周面に形成された周方向溝の溝底と、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面である、被支持軸との摺動面とが、前記一対の軸受半円筒体の突き合わせ端面で互いに整合する位置関係にある。このような構成を採用すれば、前記一方のハウジング分割体に組み込まれる軸受半円筒体の内周面にのみ深さ10μm以上の周方向溝が形成され、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれた前記軸受半円筒体の内周面の表面粗さが通常の粗さ(例えば、3.2μmRz以下)であって、後者の軸受半円筒体の一方の周方向端面が段差状に突出しており、前者側から後者側に向かって潤滑オイルが流れる際に、後者の軸受半円筒体の前記周方向端面がオイルの流れの障壁になることがない。
(5)本発明の第五の実施形態では、前記一対のハウジング分割体のうちの他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に、周方向に延在する多数の周方向溝が存在し、該軸受半円筒体の2つの周方向端面のうち、少なくとも軸回転方向とは反対方向を向いた前記周方向端面を含む前記軸受半円筒体の周方向端部領域に形成された前記周方向溝の深さが10μm以上になされる。動荷重負荷により相対的低剛性の分割型ハウジングの突合せ端面での内径が減少する側への弾性変形が大きい場合(クローズイン)には、すべり軸受を構成する一対の軸受半円筒体の両者に周方向溝を形成すると、弾性変形による段差が発生しても、両軸受半円筒体の周方向端面がお互いに周方向溝内を流れるオイルの障壁になり難い。
(6)本発明の第五〜第九の実施形態では、前記一対の軸受半円筒体の前記周方向端部領域における厚さ調整により、前記一方のハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面と、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面とが前記突き合わせ端面で互いに整合している。この構成によれば、ワイピング現象発生の防止効果が高まり、動荷重負荷による変動段差が大きい場合でも、一対のワイピング防止効果が高まり、動荷重負荷による変動段差が大きい場合でも、一対の軸受半円筒体がお互いに周方向溝内を流れるオイルの障壁になり難い。
以下、添付図4〜図8を見ながら本発明の実施例および比較例について説明する。
【実施例】
【0011】
図4は、本発明の一実施例に係る、一対の軸受半円筒体10、20から成るすべり軸受の一部を、軸線と交差する横断面図として示している。このすべり軸受は、図1または図2に示す軸受ハウジングによって図3に示される態様で保持される。図4では、軸受半円筒体10、20によって、矢印A方向に回転する被支持軸30(クランクピンまたはクランクジャーナルである)が支持されている。被支持軸30と軸受半円筒体10、20との間には間隙CL1が存在し、間隙CL1内に、潤滑オイルOILが加圧供給され、矢印A方向と同方向であるB方向に流動する。
分割型ハウジングの相対的に高剛性であるハウジング分割体に組み込まれる軸受半円筒体10の内周面において、周方向端部領域に、深さ10μm以上の多数の周方向溝14が形成されている。周方向溝14を、軸受半円筒体10の周方向端面12側から見ると図5(1)または(2)のようになっている。図5(1)、(2)に示した周方向溝14は、深さHが等しく、互いにピッチが相違する(ピッチの違いが作用効果に及ぼす影響については、0010欄の項目(3)で述べた)。周方向溝14は、軸受半円筒体10の周方向端面12から少なくとも円周角10°、最大で円周角50°に相当する周方向長さ範囲に形成するのが好ましい(図8参照)。
また、周方向溝14は、必須ではないが、図示されない他方の周方向端面を始点とする少なくとも円周角10°、最大で円周角50°に相当する周方向長さ範囲にも形成可能である。周方向溝14が形成されない内周面範囲では、通常の粗さである3.2μmRz以下になされる。
【0012】
分割型ハウジングの相対的に低剛性であるハウジング分割体に組み込まれる軸受半円筒体20は、一対のハウジング分割体をボルトで締結して組み立てた時に、低剛性であるハウジング分割体の相対的に大きな弾性変形に付随して、軸受半円筒体10に比し、周方向端面22位置で相対的に大きく外側に変形偏位して、周方向端面22の外側段差部24が生じ、また、周方向端面22の偏位に対応して、周方向端面12の内側段差部16が生じる。内側段差部16が生じた箇所では、被支持軸30と軸受半円筒体10との間隙CL1に比して大きな、被支持軸30と軸受半円筒体20との間の間隙CL2が形成される。
【0013】
間隙CL2内で矢印B方向に流れる潤滑オイルOILは、軸受半円筒体10の周方向端面12の一部である内側段差部16でも、その流れを妨げられることなく、周方向溝14に誘導され、軸受半円筒体10の内周面に沿って円滑に流れる。この状態を図6、図7に示す。周方向溝14の深さHは10μm以上に設定されるが、この大きさは、内燃機関のクランクピン用分割型軸受およびクランクジャーナル用分割型軸受で生じる軸受組み付け時の変形、および、内燃機関作動時の動的変形に対処でき、軸受半円筒体20の内周面(すなわち、摺動面)が、周方向溝14の溝底よりも上位(図4では、右側)にある。このことによって、相対的に大きな間隙CL2部分を流れて軸受半円筒体10の周方向端面12に達した潤滑オイルOILが周方向溝14に首尾よく誘導される。したがって、軸受半円筒体20の幅方向両端から外部に流出する潤滑オイルの量が十分に低減化される。
仮に、従来の分割型すべり軸受のように、軸受半円筒体10の内周面周方向端部領域に、相対的に大きな深さHの多数の周方向溝14が存在しない場合、間隙CL2部分を流れて軸受半円筒体の周方向端面に達した潤滑オイルOILは、周方向端面で流れが妨げられ、間隙CL2が間隙CL1に比して大きくなっていることとも相俟って、軸受半円筒体の周方向端面に沿って軸受幅方向(図4では紙面に対して垂直方向)に流れて、多量の潤滑オイルが滑り軸受の幅方向両端から外部に流出する結果となる。
【0014】
ここで、軸受半円筒体10、20の四つの内周面周方向端部領域のうちのいずれに、相対的に大きな深さHの周方向溝を形成するかについて考察する。軸受ハウジングで保持される内燃機関の分割型すべり軸受の典型的な組み付け変形状態(静的変形状態)は、図4に示されるように、低剛性であるハウジング分割体に保持される軸受半円筒体20の周方向両端部が外側に変形偏位して、軸受半円筒体10に対して拡開状に弾性変形した状態である。この状態では、図4に示されるとおり、軸受半円筒体10の2つの周方向端面のうち、軸回転方向Aとは反対方向を向いた周方向端面12を含む軸受半円筒体10の周方向端部領域に周方向溝14を設ければ十分である。しかしながら、内燃機関の作動状態では、動的変形により、低剛性であるハウジング分割体に保持される軸受半円筒体20の周方向端面22が、軸受半円筒体10の周方向端面12よりも内側(すなわち、被支持軸30側)に変形偏位する状態(クローズイン状態)も出現するだろう。また、分割型軸受ハウジングをボルトで定着するときに突合せ面の位置がずれる場合や、すべり軸受および軸受ハウジングの製造時の加工誤差のために突合せ面の位置がずれる場合がある。このため、軸受ハウジングに対して分割型すべり軸受を組み付けた状態(静的状態)であっても、分割型軸受ハウジングの組み付け状態によっては、常に、図4に示す状態になる保証はないので、軸受半円筒体10、20の全ての周方向端部領域に、相対的に大きな深さの多数の周方向溝を形成することも妥当であろう。この状態が図8に示されている。
【0015】
図8は、内燃機関のコネクチングロッド40がクランクピン60に結合された状態を示す。コネクチングロッド40の大端部42と、大端部42に対してボルトで締結される軸受キャップ50とで分割型軸受ハウジングが形成され、軸受ハウジングの軸受保持穴内に分割型すべり軸受が装着され、軸受保持穴とすべり軸受をクランクピン60が貫通する。分割型すべり軸受は、一対の軸受半円筒体10A、10Bから成る。軸受半円筒体10A、10Bの全ての内周面周方向端部領域に、図4に示す多数の周方向溝14と同様な態様で、周方向溝14A、14B、14C、14Dが形成されている。これら周方向溝の形成範囲は、軸受半円筒体10A、10Bの各周方向端面から軸受内周面に沿って円周角αに相当する周方向長さ範囲である。この角度αは、軸受半円筒体10A、10Bの主荷重受部である、コネクチングロッド40の軸線Lで規定される軸受半円筒体10A、10Bの中央領域を省いて決定され、適正角度は、α=10°〜50°である。なお、図8において、全ての円周角を同一角αにしているが、これらの角度は必ずしも同一にする必要はない。
【0016】
周方向溝の横断面形状は、図5に示されるような円弧形状に限らず、V形状であってもよい。周方向溝の形成方法としては、刃先がV形状または円弧形状の切削刃を用い、旋削加工により、切削刃先の形状を軸受半円筒体の内周面の周方向端部に転写させることにより形成できる。
周方向溝の横断面形状がV形状の場合、軸受半円筒体の突き合わせ面で生じる段差面積の約50%以上が周方向溝の凹部で形成される(これは、段差部の壁厚さに換算すると、内周面を基準にして厚さを1/2以上減少させたことに等しい)ので、潤滑オイルの流通路面積が十分確保される。
周方向溝の横断面形状が円弧形状である場合、軸受半円筒体の突き合わせ面で生じる段差面積の約2/3が周方向溝の凹部で形成される(これは、段差部の壁厚さに換算すると、内周面を基準にして厚さを2/3以上減少させたことに等しい)ので、潤滑オイルの流通路面積が十分確保される。
また、本願の分割型すべり軸受の軸受半円筒体には、従来の分割型すべり軸受と同じく、軸受半円筒体の厚さを、軸受周方向の中央部から端面に向って薄くなるように偏肉させ、あるいはまた、軸受半円筒体の周方向端部領域の内周面側にクラッシュリリーフや面取りを形成することもできる。
【0017】
[本発明例1〜4]
(1)本発明例1: コネクチングロッドの大端部に保持される軸受半円筒体の内周面全体に、深さ10μm以上、ピッチ0.5〜1.5mmの周方向溝を形成する。軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面には周方向溝を付与しない。一対の軸受半円筒体を組み込んで、ボルト締結によってコネクチングロッドの大端部に軸受キャップを組み付けた時、図4、図8に示されるように、軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面周方向端部領域が外側に拡開せしめられる。
(2)本発明例2: コネクチングロッドの大端部に保持される軸受半円筒体の内周面周方向両端部領域である円周角α=10°〜50°に相当する周方向長さ範囲において、深さ10μm以上、ピッチ0.5〜1.5mmの周方向溝を付与する。また、内周面周方向両端部領域以外の内周面(主荷重受部)に表面粗さ3.2μmRz以下を付与する。軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面には周方向溝を付与しない。一対の軸受半円筒体を組み込んで、ボルト締結によってコネクチングロッドの大端部に軸受キャップを組み付けた時、図4、図8に示されるように、軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面周方向端部領域が外側に拡開せしめられる。
(3)本発明例3: コネクチングロッドの大端部に保持される軸受半円筒体の内周面全体に、深さ10μm以上、ピッチ0.5〜1.5mmの周方向溝を付与する。軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面には周方向溝を付与しない。一対の軸受半円筒体を組み込んで、ボルト締結によってコネクチングロッドの大端部に軸受キャップを組み付けた時、図4、図8に示されるように、軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面周方向端部領域が外側に拡開せしめられる。
(4)本発明例4: コネクチングロッドの大端部に保持される軸受半円筒体の内周面全体に、深さ10μm以上、ピッチ0.5〜1.5mmの周方向溝を付与する。軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面全体に、深さ10μm以上、ピッチ0.5〜1.5mmの周方向溝を付与する。また、軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面周方向両端部の壁厚さを通常よりも厚くして、ボルト締結によってコネクチングロッドの大端部に軸受キャップを組み付けた静的状態で、対をなす軸受半円筒体の突合せ端面における内径部を整合状態にする。一対の軸受半円筒体を組み込んで、ボルト締結によってコネクチングロッドの大端部に軸受キャップを組み付けた時、図4、図8に示されるように、軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面周方向端部領域が外側に拡開せしめられる。
(5)比較例: コネクチングロッドの大端部に保持される軸受半円筒体、および、軸受キャップに保持される軸受半円筒体のいずれの内周面にも、周方向溝を付与しない。一対の軸受半円筒体を組み込んで、ボルト締結によってコネクチングロッドの大端部に軸受キャップを組み付けた時、図4、図8に示されるように、軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面周方向端部領域が外側に拡開せしめられる。
【0018】
[本発明例と比較例の対比]
比較例について: 一対の軸受半円筒体を組み込んで、ボルト締結によってコネクチングロッドの大端部に軸受キャップを組み付けた時、図4、図8に示されるように、軸受キャップに保持される軸受半円筒体の内周面周方向端部領域が外側に拡開せしめられるため、該軸受半円筒体と、コネクチングロッドの大端部に保持される軸受半円筒体との突合せ端面部分で、段差が形成される。このため、相対的に剛性の高いコネクチングロッドの大端部に保持された軸受半円筒体の周方向端面が、周方向に流れる潤滑オイルの障壁になり、ワイピング現象が起こる。その結果、オイル漏れ量が増し、すべり軸受の摺動面へのオイル供給不良を起こす。
本発明例1について: 相対的に高剛性であるコネクチングロッドの大端部に保持される軸受半円筒体の内周面周方向端部領域に、深さ10μm以上、ピッチ0.5〜1.5mmの周方向溝を付与するので、相対的に剛性の高いコネクチングロッドの大端部に保持された軸受半円筒体の周方向端面がオイルの流れの障壁にならず、潤滑オイルが周方向溝内を流れるため、ワイピング現象が起こらない。
本発明例2について: 相対的に高剛性であるコネクチングロッドの大端部に保持される軸受半円筒体の内周面周方向端部領域に、深さ10μm以上、ピッチ0.5〜1.5mmの周方向溝を付与するので、潤滑オイルのワイピング現象を防止できる。さらに、内周面周方向両端部領域以外の内周面(主荷重受部)に表面粗さ3.2μmRz以下を付与するので、主荷重受部である摺動面において、油膜が形成され易く、すべり軸受の耐負荷能力が良好である。
本発明例3について: 内燃機関運転の動荷重負荷の往復慣性力により軸受キャップ側の合わせ面をむすぶ方向の内径が減少するクローズイン現象により段差が増減を繰り返す変動をする場合でも、一対の半割軸受の周方向端面がオイルの流れの障壁にならず、ワイピングを防止できる。
本発明例4について: 相対的に低剛性である軸受キャップの内周面周方向両端部の壁厚さを通常よりも厚くして、対をなす軸受半円筒体の突合せ端面における内径部を整合状態にするので、ワイピング防止効果が更に向上する。また、軸受内周面とクランクピンとの間隙が減少するため、潤滑オイルの漏れ量が低減化される。
【0019】
[ワイピング抑制効果確認試験]
(1)試験は、表2に示す試験材を用いて、図9に示す態様で、一対の軸受半円筒体10C、10Dを組み合わせて行なった。なお、実施例1および実施例2の周方向溝の形成範囲は、軸受半円筒体10C、10Dの各周方向端面を始点とする軸受内周面に沿う円周角α=45°に相当する周方向長さ範囲である。試験軸30Aを、軸受半円筒体10C、10Dで支承し、軸受半円筒体10Cの周方向中間位置に形成した給油口10aを通じて、試験軸30Aと、すべり軸受である軸受半円筒体10C、10Dとの間に潤滑オイルを供給した。矢印Aで示す試験軸30Aの回転方向に対して、ワイピング発生の懸念があるX箇所に近い位置Yで温度測定を行なった。位置Yは、軸受半円筒体10Dの周方向端面を始点とする、軸受半円筒体10Dの外周面に沿って高さ7mm離れている(図9における上下方向高さ位置)。
(2)試験方法: 表1に示す試験条件で、動荷重(回転荷重)軸受試験機を用いて行なった。本発明試験材1〜3、比較試験材の仕様を表2に示す。
まず、一対の軸受半円筒体10C、10Dの周方向端面を突き合わせ、突き合わせ部において、軸受半円筒体10C、10Dの位置ずれ(段差)がない状態で試験を行ない、位置Yにおいて、温度を測定した。次に図9で示すように、一対の軸受半円筒体10C、10Dの周方向端面を突き合わせ、突き合わせ部において、軸受半円筒体10C、10Dの位置ずれ(段差)がある状態で試験を行ない、位置Yにおいて、温度を測定した。この温度差によって、ワイピング発生による潤滑状態の変化を確認できる。
試験結果を、図10に示す。図示グラフの縦軸は、軸受半円筒体10Cの位置Yにおける軸受半円筒体10C、10Dの位置ずれ(段差)がある状態とない状態での温度差(すなわち、上昇温度)を示す。各試験材ごとに、2種類の突き合わせ部偏位量(または段差量)t=10μm(左側の無地の表示棒)、および、t=20μm(右側の砂地模様表示棒)の場合の、試験による上昇温度を示した(偏位量tについては、図9参照)。各表示棒の上に示した数字は、縦軸の目盛温度に対応する。
図10から判るように、相対的に大きな深さの周方向溝を、軸受半円筒体の内周面周方向端部領域に設けた場合の位置Yにおける軸受温度上昇値は小さく、良好な潤滑状態が維持される。また、相対的に大きな深さの周方向溝を、軸受半円筒体の全内周面に設けた場合でも、相対的に大きな深さの周方向溝を設けない在来の比較試験材に比して、位置Yにおける軸受温度上昇値は小さく、相対的に良い潤滑状態が維持されることが判る。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来例に係わるコネクチングロッド大端部と、これに組み合わされた軸受キャップを示す正面図。
【図2】従来例に係わるクランクケースの一部と、これに組み合わされた軸受キャップを示す正面図。
【図3】従来例に係わるコネクチングロッド大端部と軸受キャップとで構成される軸受ハウジングと、これに保持されたコネクチングロッド軸受と、クランクピンとを示す正面図。
【図4】本発明の一実施例に係わる分割型すべり軸受と、これに支持された被支持軸(回転軸)のいずれも一部を示す図面。
【図5】図4における矢印B方向から見た軸受半円筒体の周方向端面を示す図((1)、(2)は周方向溝のピッチの違いを示す)。
【図6】図5と同様な図であるが、周方向溝内を流れる潤滑オイルをも示す。
【図7】図4において段差が生じた箇所(一対の軸受半円筒体の突き合わせ端面位置)をすべり軸受の内周面側から見た図。
【図8】本発明の他の実施例に係わる、コネクチングロッド大端部と軸受キャップとで構成される軸受ハウジングと、これに保持されたコネクチングロッド軸受と、クランクピンとを示す図。
【図9】本発明試験材である分割型すべり軸受であるコネクチングロッド軸受と、クランクピンとを示す図。
【図10】本発明試験材および比較試験材について実施したワイピング抑制効果確認試験の結果を試験前後の温度変化(温度上昇)で示すグラフ。
【符号の説明】
【0023】
10 軸受半円筒体
10A、10B 軸受半円筒体
12 周方向端面
14 周方向溝
14A、14B、14C、14D 周方向溝
16 内側段差部
20 軸受半円筒体
22 周方向端面
24 外側段差部
30 被支持軸
40 コネクチングロッド
42 大端部
50 軸受キャップ
60 クランクピン
A 被支持軸の回転方向
B 潤滑オイルの流動方向
CL1 間隙
CL2 間隙
OIL 潤滑オイル
H 深さ
L コネクチングロッドの軸線
α 円周角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のクランク軸またはクランクピンを支承する一対の軸受半円筒体から成り、互いに組み合わせて円筒形状体として用いられるすべり軸受であり、その組み合わせ状態と整合する態様で2分割された円筒形状の軸受保持穴を有する分割型軸受ハウジング内に収容して用いられる前記すべり軸受において、
前記分割型軸受ハウジングを構成する一対のハウジング分割体が互いに異なる剛性を有し、
前記一対のハウジング分割体のうち、少なくとも相対的に高い剛性を有する一方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に、周方向に延在する多数の周方向溝が存在し、該軸受半円筒体の2つの周方向端面のうち、少なくとも軸回転方向とは反対方向を向いた前記周方向端面を含む前記軸受半円筒体の周方向端部領域に形成された前記周方向溝の深さが10μm以上になされている内燃機関用すべり軸受。
【請求項2】
前記内周面における前記周方向端部領域が、当該周方向端面を始点とする少なくとも円周角10°、最大で円周角50°に相当する周方向長さで規定される範囲である請求項1に記載された内燃機関用すべり軸受。
【請求項3】
前記周方向長さで規定される範囲以外の前記内周面の表面粗さが3.2μmRz以下である請求項2に記載された内燃機関用すべり軸受。
【請求項4】
前記周方向溝のピッチが0.5mm〜1.5mmである請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された内燃機関用すべり軸受。
【請求項5】
前記一方のハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に形成された前記周方向溝の溝底と、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面である、被支持軸との摺動面とが、前記一対の軸受半円筒体の突き合わせ端面で互いに整合する位置関係にある請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載された内燃機関用すべり軸受。
【請求項6】
前記一対のハウジング分割体のうちの他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に、周方向に延在する多数の周方向溝が存在し、被支持軸に摺接する前記軸受半円筒体の内周面における、少なくとも軸回転方向とは反対側に位置する前記軸受半円筒体の周方向端部領域に形成された周方向溝の深さが10μm以上になされている請求項1に記載された内燃機関用すべり軸受。
【請求項7】
他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の前記内周面における前記周方向端部領域が、当該周方向端面を始点とする少なくとも円周角10°、最大で円周角50°に相当する周方向長さで規定される範囲である請求項6に記載された内燃機関用すべり軸受。
【請求項8】
他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体における、前記周方向長さで規定される範囲以外の前記内周面の表面粗さが3.2μmRz以下である請求項7に記載された内燃機関用すべり軸受。
【請求項9】
他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体における、前記周方向溝のピッチが0.5mm〜1.5mmである請求項6から請求項8までのいずれか一項に記載された内燃機関用すべり軸受。
【請求項10】
前記一対の軸受半円筒体の前記周方向端部領域における厚さ調整により、前記一方のハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面と、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面とが前記突き合わせ端面で互いに整合している請求項6から請求項9までのいずれか一項に記載された内燃機関用すべり軸受。
【請求項11】
内燃機関のクランク軸またはクランクピンを支承する一対の軸受半円筒体から成り、互いに組み合わせて円筒形状体として用いられるすべり軸受と、
前記一対の軸受半円筒体の組み合わせ状態と整合する態様で2分割された円筒形状の軸受保持穴を有し、該軸受保持穴内に前記一対の軸受半円筒体を収容する分割型軸受ハウジングとを含むすべり軸受装置において、
前記分割型軸受ハウジングを構成する一対のハウジング分割体が互いに異なる剛性を有し、
前記一対のハウジング分割体のうち、少なくとも相対的に高い剛性を有する一方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に、周方向に延在する多数の周方向溝が存在し、該軸受半円筒体の2つの周方向端面のうち、少なくとも軸回転方向とは反対方向を向いた前記周方向端面を含む前記軸受半円筒体の周方向端部領域に形成された前記周方向溝の深さが10μm以上になされている内燃機関のすべり軸受装置。
【請求項12】
前記内周面における前記周方向端部領域が、当該周方向端面を始点とする少なくとも円周角10°、最大で円周角50°に相当する周方向長さで規定される範囲である請求項11に記載された内燃機関のすべり軸受装置。
【請求項13】
前記周方向長さで規定される範囲以外の前記内周面の表面粗さが3.2μmRz以下である請求項12に記載された内燃機関のすべり軸受装置。
【請求項14】
前記周方向溝のピッチが0.5mm〜1.5mmである請求項11から請求項13までのいずれか一項に記載された内燃機関のすべり軸受装置。
【請求項15】
前記一方のハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に形成された前記周方向溝の溝底と、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面である、被支持軸との摺動面とが、前記一対の軸受半円筒体の突き合わせ端面で互いに整合する位置関係にある請求項11から請求項14までのいずれか一項に記載された内燃機関のすべり軸受装置。
【請求項16】
前記一対のハウジング分割体のうちの他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面に、周方向に延在する多数の周方向溝が存在し、被支持軸に摺接する前記軸受半円筒体の内周面における、少なくとも軸回転方向とは反対側に位置する前記軸受半円筒体の周方向端部領域に形成された周方向溝の深さが10μm以上になされている請求項11に記載された内燃機関のすべり軸受装置。
【請求項17】
他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の前記内周面における前記周方向端部領域が、当該周方向端面を始点とする少なくとも円周角10°、最大で円周角50°に相当する周方向長さで規定される範囲である請求項16に記載された内燃機関のすべり軸受装置。
【請求項18】
他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体における、前記周方向長さで規定される範囲以外の前記内周面の表面粗さが3.2μmRz以下である請求項17に記載された内燃機関のすべり軸受装置。
【請求項19】
他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体における、前記周方向溝のピッチが0.5mm〜1.5mmである請求項16から請求項18までのいずれか一項に記載された内燃機関のすべり軸受装置。
【請求項20】
前記一対の軸受半円筒体の前記周方向端部領域における厚さ調整により、前記一方のハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面と、他方の前記ハウジング分割体に組み込まれる前記軸受半円筒体の内周面とが前記突き合わせ端面で互いに整合している請求項16から請求項19までのいずれか一項に記載された内燃機関のすべり軸受装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−116961(P2010−116961A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289730(P2008−289730)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(591001282)大同メタル工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】