説明

内燃機関用ピストン

【課題】タンブル強度の均一化、ひいては混合気の均一性を高めることができる内燃機関用ピストンを提供することを課題とする。
【解決手段】ピストン(1)は、吸気行程で形成されるタンブル流に沿うように冠面に円弧状の凹部(5a)を形成したキャビティ室(5)が設けられている。キャビティ室(5)内には減衰部(6)が配置されている。減衰部(6)は、ピストン(1)の冠面の中心を含む部分を占めている。減衰部(6)は、吸気弁が開弁し、燃焼室内にガスが流入して生成されるタンブル流のタンブル強度を低減させる。これにより、タンブル強度の均一化、ひいては混合気の均一性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に用いられるピストンに関し、特にその冠面形状に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内燃機関用ピストンとして、例えば、特許文献1に、ピストンの頂面上にその中心部を挟む形で、クランク軸線と平行な方向に延びる稜線をそれぞれ持つ峰部を略対象に形成し、クランク軸と平行な中心軸線を持つ円筒面よりなる凹部を形成する提案がされている。この凹部の円筒面の曲率半径Rはボア径Bの1/2とされている。
【0003】
また、特許文献2には、ピストンの冠面中央部に吸気弁配置側から排気弁配置側に亘ってキャビティ燃焼室を設けると共にその断面形状を、吸気弁配置側に大きな曲率半径Rを持ち、排気弁配置側に小さな曲率半径Rを持つ構成が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−8968号公報
【特許文献2】特開2001−98947号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内燃機関の筒内ではタンブル流が形成されるが、このタンブル流は筒内におけるタンブル強度の分布が不均一になりやすい。すなわち、吸気弁から吸入される吸気の速度は燃焼室の中心付近で速く、ボア壁近傍では遅くなりやすい。このためタンブル強度の分布も不均一なものとなり、タンブル強度の分布が不均一であると、混合気形成も不均一なものとなる。この結果、タンブル維持効果が十分発揮できず、燃焼改善効果を引き出すことが困難であった。このような問題は、特許文献1や特許文献2で開示された提案であっても十分に解決できるものとはなっていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、タンブル強度の均一化、ひいては混合気の均一性を高めることができる内燃機関用ピストンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を達成するための、本発明の内燃機関用ピストンは、吸気行程で形成されるタンブル流に沿うように冠面に円弧状の凹部を形成したキャビティ室と、当該キャビティ室内に配置され、タンブル流の少なくとも一部のタンブル強度を低減させる減衰部と、を備えたことを特徴とする(請求項1)。このような構成として、燃焼室内のタンブル強度(乱れ強度)を均一に近づけることができ、この結果、混合気形成の改善、燃焼改善が促進される。これにより、A/F制御をリーン側に振ることができ、点火遅角も可能となって、エミッションを低減させることができる。
【0008】
このような内燃機関用ピストンにおける前記減衰部は、前記凹部内において、前記タンブル流のタンブル強度がその周辺よりも強い位置に配置された構成とすることができる(請求項2)。ピストンの冠面に減衰部が設けられていない場合、燃焼室内のタンブル流の強さは、燃焼室内の位置によって大きく異なる。例えば、2個の吸気弁が設けられている場合、それぞれの吸気バルブが開弁して吸入されたガスが合流した後のタンブル流はそのタンブル強度が強くなることがある。このように、燃焼室内におけるタンブル流は、吸気バルブの配置や向きによっても異なるが、そのタンブル強度の分布に不均一な状態がみられることがある。すなわち、タンブル強度に位置による強弱がみられる。このようなタンブル強度の分布に対して、タンブル強度が周囲よりも強い位置に減衰部を配置するようにすれば、そのタンブル強度を減衰させ、周囲のタンブル強度との差を減縮し、燃焼室内におけるタンブル強度を均一に近づけることができる。
【0009】
このような内燃機関用ピストンでは、前記減衰部は、前記凹部の曲率半径よりも曲率半径が大である減衰面を備えた構成とすることができる(請求項3)。曲率半径が凹部の曲率半径よりも大である減衰面にタンブル流が衝突すれば、タンブル強度を減衰することができる。これにより、タンブル強度を減衰部の周囲と均一にすることができる。ここで、減衰面は平坦面とすることができる。すなわち、前記減衰部は、平坦面を有する構成とすることができる(請求項13)。また、減衰面は凸状とすることもできる。
【0010】
タンブル流のタンブル強度は、燃焼室の中心部が強く、ボア壁側に近いほど弱い傾向にある。このため、ピストンの冠面に設けられる減衰部は燃焼室の中心部においてタンブル強度の減衰を促進する形状となっていることが望ましい。そこで、前記減衰部は、前記凹部の曲率半径よりも曲率半径が小である減衰面を備え、当該減衰面の吸気弁配置側から排気弁配置側に向かう方向の距離は、前記減衰面の中心部と、当該中心部から遠ざかった位置とで異なる構成とすることができる(請求項4)。
【0011】
以下、同様の観点から、前記減衰面の吸気弁配置側から排気弁配置側に向かう方向の距離は、前記減衰面の中心部における距離が、当該中心部から遠ざかった位置における距離と比較して長い構成とすることができる(請求項5)。
【0012】
また、前記減衰部は、円形の減衰面が形成された構成とすることができるし(請求項6)、前記減衰部は、楕円形の減衰面が形成された構成とすることもできる(請求項7)。減衰面を円形とすれば、中心部における距離が、当該中心部から遠ざかった位置における距離と比較して長い構成となる。減衰面を楕円形とするときは楕円の短軸方向、長軸方向は、適宜選択して配置することができる。
【0013】
さらに、前記減衰部は、前記凹部内に凸状に形成された構成とすることもできる(請求項8)。このとき、当該凸状に形成された減衰部の天面と前記凹部との連続部は、当該減衰部の中心部よりも、当該中心部から遠ざかった位置の方がなだらかに連続している構成とすることができる(請求項9)。例えば、天面と凸部の立ち上がり部との角度を中心部から遠ざかった位置ほど大きく取ったり、凹部と立ち上がり部との連続部にRを設け、そのRの大きさを中心部から遠ざかった位置ほど大きくしたりする構成とすることができる。
【0014】
また、前記減衰部は、前記凹部内に凹状に形成され、当該凹状に形成された減衰部の深さは、中心部における深さよりも、当該中心部から遠ざかった位置における深さの方が浅い構成とすることもできる(請求項10)。減衰部を凹状とした場合、減衰部の深さが深いほど、流れの剥離等の影響でタンブル強度を減衰させることができると考えられる。そこで、減衰部の中心部ほど減衰効果が高くなるように中心部の深さを深くした構成とすることができる。
【0015】
さらに、前記減衰部は、前記凹部内に凹状に形成され、当該凹状に形成された減衰部の天面と前記凹部との連続部は、当該減衰部の中心部よりも、当該中心部から遠ざかった位置の方がなだらかに連続している構成とすることもできる(請求項11)。例えば、天面と凹部の立ち下がり部との角度を中心部から遠ざかった位置ほど大きく取ったり、凹部と立ち下がり部との連続部にRを設け、そのRの大きさを中心部から遠ざかった位置ほど大きくしたりする構成とすることができる。
【0016】
また、減衰部が配置される凹部自体の曲率半径を変更した構成とすることもできる。例えば、前記凹部の曲率半径は、中心部における曲率半径よりも、当該中心部から遠ざかった位置における曲率半径の方が大きい構成とすることができる(請求項12)。このような構成とすることにより、燃料室内でタンブル強度を均一な状態に近づけることができる。
【0017】
なお、本発明の他の内燃機関用ピストンは、吸気行程で形成されるタンブル流のタンブル強度を低減させて燃焼室内のタンブル強度を均一に近づける減衰部を備えた構成とすることができる(請求項13)。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、タンブル強度が強くなる位置にタンブル流の減衰部を設けたので、ピストンの冠面に、タンブル流のタンブル強度を低減させる減衰部を備えた構成としたので燃焼室内のタンブル強度を均一に近づけることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0020】
まず、本発明の内燃機関用ピストン(以下、単に「ピストン」という)1が装着される内燃機関の燃焼室周辺の構成を図1の説明図を参照しつつ説明する。図1(a)は、シリンダヘッド2を上方から見た説明図、図1(b)は、シリンダヘッド2を側方から見た説明図、図1(c)は、図1(a)おける矢示A側から見た説明図である。なお、排気弁は説明の都合上、図面から省略している。シリンダヘッド2には、二つの吸気ポート3が設けられており、それぞれ吸気弁4が組み込まれている。吸気弁4を並列させた構成では、吸気弁4の間、すなわち、燃焼室の中心部近傍でタンブル流のタンブル強度が強くなる。すなわち、左右の吸気ポート3から吸入されたエアーが合流することとなる燃焼室の中心部で吸入ガスの流速が大きくなり、タンブル強度が強くなる傾向にある。このようなタンブル強度の大まかな分布を示すと図2に示す如くなる。すなわち、燃焼室の中心部が最もタンブル強度が強く、ボア壁側へ向かうほどタンブル強度は弱まる。
【0021】
本発明のピストンは、このようなタンブル流が生成される筒内に配置されることによって、筒内のタンブル強度の均一化を図る。次に、このようなピストンの冠面の形状について説明する。
【0022】
図3は、本発明のピストン1の斜視図である。図4は、図3におけるB−B線断面図、図5は、図3におけるC−C線断面図である。なお、ピストン1は、C−C線に沿う方向がクランク軸方向となる。図6は、ピストン1を平面視するとともに、図中のA−A線、B−B線、C−C線で断面とした状態を並べて示した説明図である。
【0023】
ピストン1は、吸気行程で形成されるタンブル流に沿うように冠面に円弧状の凹部5aを形成したキャビティ室5が設けられている。キャビティ室5は、クランク軸方向を長手方向としている。キャビティ室5の側方には図に示すように吸排気弁の干渉を回避するためのインテーク側リセス7、エキゾースト側リセス8がそれぞれ2個ずつ形成されている。
凹部5aの曲率半径は、位置によって異なっており、中心部における曲率半径R1よりも、中心部から遠ざかった位置における曲率半径R2の方が大きい。
【0024】
このようなキャビティ室5内には減衰部6が配置されている。この減衰部6は、ピストン1の冠面の中心を含む部分を占めている。減衰部6は、吸気弁4が開弁し、燃焼室内にガスが流入して生成されるタンブル流のタンブル強度を低減させる。タンブル強度の分布は、吸気弁4の配置、向き等によって異なってくるので、減衰部6の配置は適宜変更することができる。本実施例では、前記のようにタンブル強度がその周辺よりも強いピストン1の冠面の中心を含む部分を占めるように配置されている。
【0025】
減衰部6の天面である減衰面6aは、図6に示すように、円形の平坦面となっている。減衰面6aには、吸気弁4が開弁することによりガスが吹き込まれることによって生成されるタンブル流が衝突する。このような減衰面6aは、凹部5aの曲率半径よりも曲率半径が大きくなっていることが望ましい。凹部5aの曲率半径よりも大きい曲率半径とすることによりタンブル強度の低下が大きくなると考えられるからである。本実施例では曲率半径を0とした平坦面としている。このような減衰面6aは円形となっており、減衰面6aの吸気弁配置側(図中、IN側)から排気弁配置側(図中、EX側)に向かう方向の距離は、減衰面6aの中心部と、この中心部から遠ざかった位置とで異なっている。すなわち、図6におけるA−A線断面に現れる平坦面長さとB−B線断面に現れる平坦面長さとを比較すると、A−A線断面に現れる平坦面長さが長い。平坦面長さは長いほどタンブル強度の減衰効果が大きいと考えられ、タンブル強度の大きい中心部ほど高い減衰効果を得る構成としている。
【0026】
以上のように構成されるピストン1のタンブル強度の減衰、均一化の効果につき、図7を参照しつつ説明する。図7(a)は、減衰部6が設けられていない場合のタンブル強度の分布を示しており、図7(b)は、減衰部6を設けた本実施例のピストン1におけるタンブル強度の分布を示している。なお、タンブル強度の分布は5段階で示しているが、図中の数字は絶対値を示すものはなく、相対的な大きさの分布を示している。従って、図7(a)中の「3」との評価と、図7(b)中の「3」との評価とでは、タンブル強度の絶対的な大きさは異なることもある。図7(a)に示すように、減衰部6が設けられていない場合のタンブル強度の分布は、中心部が「5」の強さで、周縁部に向かうに従って順次弱まり、周縁部では「1」となる。すなわち、強度の分布が広範囲に渡っている。これに対し、本実施例のピストン1では、中心部が「4」の強さで、周縁部「3」の強さである。すなわち、強度の分布が均一な状態に近づいている。このように燃焼室内でのタンブル強度の分布が均一に近づくと、混合気形成も良好となり、燃焼改善が促進される。この結果、A/Fをリーン側に設定したり、点火遅角制御を行ったりすることが可能となり、エミッションの低減を図ることができる。
【0027】
以上説明したように、本発明における減衰部6は、タンブル強度に応じてその強度が高い位置ほどタンブル流の抵抗となり、タンブル強度を低減させるような構成となっている。すなわち、その形状、寸法は、目的とするタンブル強度の低減の程度に応じて、適宜変更することができる。このため、図8に示すような構成とすることもできる。すなわち、減衰部6にクランク軸方向に延びる拡張部6bを延設し、中心部から離れた位置においてもタンブル強度の低減を図る構成とすることができる。このような拡張部6bもタンブル強度を低減の程度に応じて、その形状、寸法を変更することができるチューニング要素となる。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明の実施例2について、図9乃至図11を参照しつつ説明する。実施例2のピストン51は、以下の点で、実施例1のピストン1と異なっている。すなわち、実施例1のピストン1が備える減衰部6は、図6中のA−A線における断面に示されたように中心部において、凹部5aとの間に段差が形成されていないのに対し、ピストン51では、減衰部52は凹部5a内に凸状に形成されている。図9は、ピストン51を平面視するとともに、図中のA−A線、B−B線、C−C線で断面とした状態を並べて示した説明図である。このA−A線における断面から明らかなように減衰部52は、ピストン51の中心部において凹部5aと減衰部52の天面である減衰面52aとの連続部53に段部が形成されている。筒内のタンブル流がこのような減衰部52に衝突すると、効果的にタンブル強度を低減させることができる。
【0029】
このような減衰部52の減衰面(天面)52aと凹部5aとの連続部は、減衰部52の中心部よりも、中心部から遠ざかった位置の方がなだらかに連続している。図10は、図9中の領域X、すなわち、ピストン51の中心部における減衰面52aと凹部5aとの連続部を拡大して示した説明図である。また、図11は、図9中の領域Y、すなわち、ピストン51の中心部から遠ざかった位置における減衰面52aと凹部5aとの連続部を拡大して示した説明図である。中心部(A−A線断面)における凹部5aと減衰部52の側壁面52bとを繋ぐ連続部は曲率半径R3の円弧状に形成されており、減衰面52aと側壁面52bとの角度はθ1となるように形成されている。一方、中心部から遠ざかった部分(B−B千断面)における凹部5aと減衰部52の側壁面52bとを繋ぐ連続部は曲率半径R4の円弧状に形成されており、減衰面52aと側壁面52bとの角度はθ2となるように形成されている。曲率半径R3と曲率半径R4との関係は、R3<R4であり、θ1とθ2との関係は、θ1<θ2となっている。すなわち、中心部から遠ざかった部分における連続部は中心部と比較して滑らかに連続している。このような形状とすることにより、タンブル強度の低減効果は、ピストン51の中心部において大きく、中心部から遠ざかった部分において小さくなる。この結果、筒内でのタンブル強度を均一な状態に近づけることができる。
【0030】
なお、他の構成は、実施例1のピストンと同様であるので、共通する構成要素には図面中同一の参照番号を付して、その詳細な説明は省略する。
【実施例3】
【0031】
次に、本発明の実施例3について、図12乃至図14を参照しつつ説明する。実施例3のピストン101は、以下の点で、実施例1のピストン1と異なっている。すなわち、実施例1のピストン1が備える減衰部6は、図6中のA−A線における断面に示されたように中心部において、凹部5aとの間に段差が形成されていないのに対し、ピストン51では、減衰部102は凹部5a内に凹状に形成されている。図12は、ピストン101を平面視するとともに、図中のA−A線、B−B線、C−C線で断面とした状態を並べて示した説明図である。図13は、図12中の領域Z、すなわち、ピストン101の中心部から遠ざかった部分における減衰面102aと凹部5aとの連続部を拡大して示した説明図である。減衰部102の深さは、中心部(A−A線断面)における深さh1よりも、中心部から遠ざかった位置(B−B線断面)における深さh2の方が浅い。このような構成とすることにより、中心部から遠ざかった位置におけるタンブル流の剥離が減少し、タンブル強度の低減が抑制される。一方のピストン101の中心部では、減衰部102の深さが深く、タンブル流の剥離効果も強く、タンブル強度の低減の効果も大きい。このような形状とすることにより、タンブル強度の低減効果は、ピストン51の中心部において大きく、中心部から遠ざかった部分において小さくなる。この結果、筒内でのタンブル強度を均一な状態に近づけることができる。
【0032】
このように、凹部5a内に凹状に形成された減衰部102を備えた構成とする場合、図14に示すθ、すなわち、凹状の減衰部102の側壁102bの垂直方向に対する角度θを変更することにより、タンブル強度の低減の効果を調整することができる。角度θを大きく採れば、側壁102b近傍におけるタンブル流の剥離を抑制し、タンブル強度低減の効果を弱めることができる。この結果、ピストン101の中心部のタンブル強度が低減されることと相俟って、筒内でのタンブル強度を均一な状態に近づけることができる。
【0033】
また、側壁102bを湾曲させ、その湾曲の大きさRを変更することによってタンブル強度の低減の効果を調整することができる。すなわち、側壁102bの湾曲のRを大きく取り、側壁102bに沿ってタンブル流が流れるようにし、タンブル流の剥離を抑制することによって、タンブル強度低減の効果を弱めることができる。この結果、ピストン101の中心部のタンブル強度が低減されることと相俟って、筒内でのタンブル強度を均一な状態に近づけることができる。
【0034】
上記実施例は本発明を実施するための例にすぎず、本発明はこれらに限定されるものではなく、これらの実施例を種々変形することは本発明の範囲内であり、更に本発明の範囲内において、他の様々な実施例が可能であることは上記記載から自明である。本発明のピストンが備える減衰部は、タンブル強度を減衰させることができるものであれば、どのようなものであっても良い。例えば、強度が高いタンブル流が吹き付けるピストンの冠面の表面粗さをその周囲と比較して高くしておく等の構成とすることもできる。
【0035】
また、減衰部の形状は、減衰面の中心部における吸気弁配置側から排気弁配置側に向かう距離が、中心部から遠ざかった位置における距離と比較して長い形状とすることができ、例えば、図15に示すような形状とすることができる。すなわち、減衰部6は、楕円形の減衰面6aが形成された構成とすることができる。また、図16に示すように、減衰部6は、菱形の減衰面6aが形成された構成とすることができる。
【0036】
また、上記実施例ではキャビティ室5内を形成する凹部5a内に減衰部を形成した構成としているが、キャビティ室については、このような形状、構成に拘泥されることはない。すなわち、キャビティ室の構成にかかわらず、吸気行程で形成されるタンブル流のタンブル強度を低減させて燃焼室内のタンブル強度を均一に近づける減衰部を備えた構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は、シリンダヘッドを上方から見た説明図、(b)は、シリンダヘッドを側方から見た説明図、(c)は、(a)おける矢示A側から見た説明図である。
【図2】減衰部を有さない場合のタンブル強度の分布を示す説明図である。
【図3】実施例1のピストンの斜視図である。
【図4】図3におけるB−B線断面図である。
【図5】図3におけるC−C線断面図である。
【図6】実施例1のピストンを平面視するとともに、図中のA−A線、B−B線、C−C線で断面とした状態を並べて示した説明図である。
【図7】(a)は、減衰部を有さない場合のタンブル強度の分布を示す説明図、(b)は、減衰部を有する場合のタンブル強度のぶんぷを示す説明図である。
【図8】他の実施例のピストンを平面視するとともに、図中のA−A線、B−B線、C−C線で断面とした状態を並べて示した説明図である。
【図9】実施例2のピストンを平面視するとともに、図中のA−A線、B−B線、C−C線で断面とした状態を並べて示した説明図である。
【図10】図9中の領域Xを拡大して示した説明図である。
【図11】図9中の領域Yを拡大して示した説明図である。
【図12】実施例3のピストンを平面視するとともに、図中のA−A線、B−B線、C−C線で断面とした状態を並べて示した説明図である。
【図13】図12中の領域Zを拡大して示した説明図である。
【図14】凹状の減衰部の側壁周辺を拡大して示した説明図である。
【図15】他の実施例のピストンの平面図である。
【図16】他の実施例のピストンの平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1、51、101 ピストン
2 シリンダヘッド
3 吸気ポート
4 吸気弁
5 キャビティ室
5a 凹部
6、52、102 減衰部
6a、52a、102a 減衰面
7 インテーク側リセス
8 エキゾースト側リセス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気行程で形成されるタンブル流に沿うように冠面に円弧状の凹部を形成したキャビティ室と、
当該キャビティ室内に配置され、タンブル流の少なくとも一部のタンブル強度を低減させる減衰部と、
を備えたことを特徴とする内燃機関用ピストン。
【請求項2】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰部は、前記凹部内において、前記タンブル流のタンブル強度がその周辺よりも強い位置に配置されたことを特徴とする内燃機関用ピストン。
【請求項3】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰部は、前記凹部の曲率半径よりも曲率半径が大である減衰面を備えたことを特徴とした内燃機関用ピストン。
【請求項4】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰部は、前記凹部の曲率半径よりも曲率半径が小である減衰面を備え、当該減衰面の吸気弁配置側から排気弁配置側に向かう方向の距離は、前記減衰面の中心部と、当該中心部から遠ざかった位置とで異なることを特徴とした内燃機関用ピストン。
【請求項5】
請求項4記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰面の吸気弁配置側から排気弁配置側に向かう方向の距離は、前記減衰面の中心部における距離が、当該中心部から遠ざかった位置における距離と比較して長いことを特徴とした内燃機関用ピストン。
【請求項6】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰部は、円形の減衰面が形成されたことを特徴とした内燃機関用ピストン。
【請求項7】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰部は、楕円形の減衰面が形成されたことを特徴とした内燃機関用ピストン。
【請求項8】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰部は、前記凹部内に凸状に形成されたことを特徴とする内燃機関用ピストン。
【請求項9】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰部は、前記凹部内に凸状に形成され、当該凸状に形成された減衰部の天面と前記凹部との連続部は、当該減衰部の中心部よりも、当該中心部から遠ざかった位置の方がなだらかに連続していることを特徴とした内燃機関用ピストン。
【請求項10】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰部は、前記凹部内に凹状に形成され、当該凹状に形成された減衰部の深さは、中心部における深さよりも、当該中心部から遠ざかった位置における深さの方が浅いことを特徴とした内燃機関用ピストン。
【請求項11】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰部は、前記凹部内に凹状に形成され、当該凹状に形成された減衰部の天面と前記凹部との連続部は、当該減衰部の中心部よりも、当該中心部から遠ざかった位置の方がなだらかに連続していることを特徴とした内燃機関用ピストン。
【請求項12】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記凹部の曲率半径は、中心部における曲率半径よりも、当該中心部から遠ざかった位置における曲率半径の方が大きいことを特徴とした内燃機関用ピストン。
【請求項13】
請求項1記載の内燃機関用ピストンにおいて、
前記減衰部は、平坦面を有することを特徴とした内燃機関用ピストン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−46985(P2009−46985A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210812(P2007−210812)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】