内燃機関用制御装置
【課題】プリイグ判定レベルの設定を容易に行うことができるとともに、プリイグの検出をより確実に行うことができる内燃機関用制御装置を得る。
【解決手段】クランク角センサからの信号によりクランク角加速度を算出するクランク角加速度算出手段(42)と、所定の信頼区間を得るための上限のクランク角加速度を判定レベルしきい値として予め設定し、クランク角加速度が判定レベルしきい値よりも大きい場合にプリイグニッションが発生したと判断する判定手段(44、45)とを備え、逐次算出されるクランク角加速度に対して統計処理を施すことにより、実運転におけるクランク角加速度の実データ分布を求め、実データ分布に適した新たな判定レベルしきい値を算出する判定レベル設定手段(43)をさらに備え、判定手段は、新たな判定レベルしきい値を用いて、プリイグニッションが発生したか否かを判断する。
【解決手段】クランク角センサからの信号によりクランク角加速度を算出するクランク角加速度算出手段(42)と、所定の信頼区間を得るための上限のクランク角加速度を判定レベルしきい値として予め設定し、クランク角加速度が判定レベルしきい値よりも大きい場合にプリイグニッションが発生したと判断する判定手段(44、45)とを備え、逐次算出されるクランク角加速度に対して統計処理を施すことにより、実運転におけるクランク角加速度の実データ分布を求め、実データ分布に適した新たな判定レベルしきい値を算出する判定レベル設定手段(43)をさらに備え、判定手段は、新たな判定レベルしきい値を用いて、プリイグニッションが発生したか否かを判断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の異常燃焼を高精度に検出する内燃機関用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧縮比の火花点火式内燃機関において、燃焼騒音や出力変動を引き起こす異常燃焼が発生することがある。この異常燃焼は、燃焼に伴う燃焼室内の圧力変動が過剰に大きくなる現象を指す。また、このような異常燃焼には、火花点火実行前に発生するプリイグニッション(以下、「プリイグ」と略称する)と、火花点火実行後に発生するノッキングとがある。
【0003】
このうち、プリイグには、燃焼室内の混合気が圧縮により自着火する異常燃焼と、点火プラグ先端部の熱やデポジットなどを火元に着火する異常燃焼との2種類の現象が存在する。また、ノッキングは、点火後の燃焼過程において、燃焼室周辺のエンドガスが自着火する現象である。
【0004】
このような現象は、騒音や振動を伴うだけでなく、燃焼室内の損傷を招き、最終的には内燃機関が動作しなくなる恐れがある。
【0005】
そこで、上記の問題点を解決する従来技術の1つとして、プリイグをエンジン回転数の変動幅によって検出する技術が提案されている。例えば、特定気筒の点火時期を一定角度遅角すると、エンジン出力が低下し、エンジン回転数が変動する。このとき、特定気筒にプリイグが生じると、点火タイミングよりも早く燃焼室内に火炎が生じることにより、エンジン回転数の変動幅が小さくなる。従って、このエンジン回転数の変動幅が所定幅(プリイグ検出用エンジン回転数変動幅)よりも小さいか否かを判定することで、プリイグの検出を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−136566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
従来技術では、エンジン回転数の変動幅が所定幅よりも小さいか否かを判定することにより、プリイグの検出を行うことができる。しかしながら、内燃機関やクランク角センサの製造バラツキ、あるいは内燃機関の運転状態等を考慮して、所定幅を予め適切な値に設定しておく必要がある。その結果、エンジン回転数に対する所定幅を設定する際に手間が掛かってしまうといった問題点があった。
【0008】
また、従来技術では、所定幅の設定が小さすぎると、プリイグの検出がしにくくなり(すなわち、未検出状態が発生し)、内燃機関へのダメージが大きくなる可能性があった。逆に、所定幅の設定が大きすぎると、プリイグが発生していないにもかかわらずプリイグが検出されてしまい(すなわち、過検出状態が発生し)、プリイグ回避動作(例えば、有効圧縮比低減)により内燃機関の出力が十分に引き出されないという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、プリイグ判定レベルの設定を容易に行うことができるとともに、プリイグの検出をより確実に行うことができる内燃機関用制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る内燃機関用制御装置は、内燃機関の回転速度を検出するクランク角センサからの信号を所定間隔ごとに処理し、所定間隔ごとのクランク角加速度を算出するクランク角加速度算出手段と、クランク角加速度のデータ分布が正規分布であると仮定した場合に、所定の信頼区間を得るための上限のクランク角加速度を判定レベルしきい値として予め設定しておき、クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度が判定レベルしきい値よりも大きい場合にプリイグニッションが発生したと判断する判定手段とを備えた内燃機関用制御装置であって、クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度に対して統計処理を施すことにより、実運転におけるクランク角加速度の実データ分布を求め、実データ分布に適した新たな判定レベルしきい値を算出して判定手段に与える判定レベル設定手段をさらに備え、判定手段は、判定レベル設定手段で算出された新たな判定レベルしきい値を用いて、プリイグニッションが発生したか否かを判断するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る内燃機関用制御装置よれば、クランク角加速度の頻度分布を統計処理し、クランク角速度の頻度分布に応じてプリイグ判定レベルを自動的に設定することができ、プリイグ判定レベルの設定を容易に行うことができるとともに、プリイグの検出を確実に行うことができる内燃機関用制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る内燃機関を示す構成図である。
【図2】図1におけるECUの内部構成図である。
【図3】点火時期が圧縮TDCよりも遅角側であった場合のクランク角加速度を示すグラフである。
【図4】プリイグ未発生時のクランク角加速度の頻度分布が正規分布に従う場合のクランク角加速度の頻度分布図である。
【図5】プリイグ発生時のクランク角加速度の頻度分布が正規分布に従う場合のクランク角加速度の頻度分布図である。
【図6】クランク角加速度の頻度分布が正規分布に従わない場合に、プリイグ判定レベルαTHを求める場合の説明図である。
【図7】クランク角加速度の頻度分布が正規分布に従わない場合に、適切なプリイグ判定レベルαTHを求める場合の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るECUによる1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHの設定動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2に係るECUによる1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHの設定動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2に係るECUにおける気筒毎及び点火時期毎のマップの一例を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係るECUによる1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHの設定動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態3に係るECUにおける信頼係数マップの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る内燃機関を示す構成図である。図1における内燃機関の燃焼室1は、シリンダヘッド2、シリンダブロック3、ピストン4により形成されている。また、燃焼室1の上部には、吸気ポート5と排気ポート6とが接続されている。さらに、燃焼室1の上部中央には、燃焼室1に供給された混合気に点火する点火プラグ7が設けられている。シリンダヘッド2の吸気ポート5側の下部には、燃料噴射弁8が設けられている。
【0015】
燃焼室1の吸気ポート5側の上部には、混合気及び燃焼ガスを適正な時期に吸入するための吸気バルブ9が設けられている。吸気バルブ9は、吸気カム10によって動作される。また、燃焼室1の排気ポート6側の上部には、混合気及び燃焼ガスを適正な時期に排出するための排気バルブ11が設けられている。排気バルブ11は、排気カム12によって動作される。
【0016】
吸気カム10には、吸気カム10の位相を可変する位相可変システム(図示せず)が接続されている。これにより、吸気カム10は、吸気バルブ9の開閉タイミングを変更することができる。
【0017】
ピストン4には、クランク軸13が接続されている。クランク軸13は、ピストン4が上下方向へ変位することにより回転可能となっている。クランク軸13には、突起が設けられているクランクプレート(図示せず)が取り付けられている。
【0018】
クランクプレートの突起の近傍には、クランク角センサ14が配置されている。クランク角センサ14は、クランクプレートの突起を検出することにより、クランク軸13の回転数及びクランク角度位置を検出する。また、クランク角センサ14は、クランク軸13の回転数及びクランク角度位置を内燃機関の制御装置の要部を構成するエンジンコントロールユニット20(以下、「ECU20」と略称する)に出力する。
【0019】
ECU20には、クランク角センサ14、燃焼室1に導入される吸気量を検出する吸気量センサ15、運転状態を検出するスロットルポジションセンサ16、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサ17、吸気カム10の位相角センサ18、内燃機関の振動を検出するノックセンサ19等からの信号が入力される。ECU20は、これらの情報に基づいて内燃機関の回転速度、点火時期、燃料噴射量及び吸気カム10の位相変化量等の計算を行っている。さらに、ECU20は、後述するプリイグの検出によって吸気カム10の位相を変更し、有効圧縮比の低減といったプリイグ回避制御も行っている。
【0020】
ここで、1点火サイクルについて説明する。まず、吸気行程において、燃焼室1では、吸気ポート5から吸気バルブ9を介して導入された空気と、燃料噴射弁8から噴射された燃料とで混合気が形成される。次に、圧縮行程において、混合気がピストン4によって圧縮される。その後、圧縮TDC(TDC:Top Death Center)付近にて点火プラグ7により点火される。次に、膨張行程において、ピストン4を押し下げてクランク軸13を回転させる。次に、排気行程において、燃焼室1内の混合気は、排気バルブ11を介して排気ポート6を通り排出される。以上が1点火サイクルである。
【0021】
図2は、図1におけるECU20の内部構成図である。ECU20は、I/F回路30及びマイクロコンピュータ40を備えている。
【0022】
I/F回路30は、ローパスフィルタ31(以下、「LPF31」と略称する)を有している。LPF31は、クランク角センサ14からの出力信号の高周波成分を除去する。
【0023】
マイクロコンピュータ40は、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、制御プログラムや制御定数を記憶しておくROM領域、プログラムを実行した際の変数を記憶しておくRAM領域等から構成されている。以下に、マイクロコンピュータ40の具体的な構成・機能を説明する。
【0024】
マイクロコンピュータ40は、記憶手段41、クランク角加速度算出手段42、プリイグ判定レベル設定手段43、比較演算手段44、プリイグ判定手段45及び有効圧縮比演算手段46を備えている。
【0025】
記憶手段41は、LPF31からの出力信号を一定のクランク角間隔(例えば、30degCA)ごとに記憶する。例えば、記憶手段41は、割り込み発生時刻ごとに、LPF31からの出力信号を記憶部(ROM領域あるいはRAM領域に相当)に記憶させることで、一定間隔でのクランク角の遷移データを格納する。
【0026】
なお、記憶手段41は、LPF31からの出力信号を常に記憶してもよい。また、記憶手段41は、LPF31からの出力信号をプリイグが発生する期間(例えば、BTDC30degCAからATDC60degCA)だけ記憶してもよい。
【0027】
ここで、BTDCは、上死点前の意味であり、Before Top Death Centerの略称である。また、ATDCは、上死点後の意味であり、After Top Death Centerの略称である。
【0028】
クランク角加速度算出手段42は、記憶部に格納されたクランク角の遷移データに基づいてクランク角周期、クランク角速度及びクランク角加速度αを算出する。
【0029】
ここで、クランク角加速度算出手段42は、クランク角加速度αを次のように算出する。まず、クランク角加速度算出手段42は、例えば、TDCからATDC30degCAごとに格納されたクランク角の遷移データからクランク角速度を算出し、その算出結果から、クランク角加速度αを算出する。
【0030】
一例として、TDC〜ATDC30degCAの角速度がt1として求まり、ATDC30degCA〜ATDC60degCAの角速度がt2として求まったとする。この場合、クランク角加速度αは、下式により算出できる。
α=t2/(30/t2−30/t1)
【0031】
プリイグ判定レベル設定手段43は、クランク角加速度算出手段42より算出されるクランク角加速度αを用いて、プリイグ判定レベルαTHを設定する。また、プリイグ判定レベル設定手段43は、図示していないが、平均値算出手段と、標準偏差算出手段と、上側分散算出手段と、下側分散算出手段と、信頼係数補正手段とを有している。
【0032】
平均値算出手段は、クランク角加速度算出手段42より算出されるクランク角加速度αの平均値を算出する。標準偏差算出手段は、クランク角加速度算出手段42より算出されるクランク角加速度αの標準偏差を算出する。上側分散算出手段は、平均値算出手段より算出される平均値よりも上側のクランク角加速度αのばらつき(分散値)を算出する。下側分散算出手段は、平均値算出手段より算出される平均値よりも下側のクランク角加速度αのばらつき(分散値)を算出する。信頼係数補正手段は、上側分散算出手段及び下側分散算出手段の算出結果に基づいて信頼係数を補正する。なお、プリイグ判定レベル設定手段43の詳細については、後述する。
【0033】
比較演算手段44は、現在のクランク角加速度αとプリイグ判定レベルαTHとを読み取り、現在のクランク角加速度αがプリイグ判定レベルαTHよりも上回っているか否かを判定する。また、比較演算手段44は、判定結果をプリイグ判定手段45に出力する。
【0034】
プリイグ判定手段45は、比較演算手段44からの判定結果に基づいてプリイグの発生有無を判定する。また、プリイグ判定手段45は、判定結果を有効圧縮比演算手段46に出力する。
【0035】
有効圧縮比演算手段46は、プリイグの発生状況に応じて有効圧縮比を調整する。例えば、プリイグが発生していれば有効圧縮比を低減するように演算を実施し、演算結果を位相可変システム50に出力する。
【0036】
ここで、有効圧縮比の調整について説明する。有効圧縮比の調整は、例えば、位相可変システム50により吸気カム10の位相を変更し、吸気バルブ9の閉じるタイミングを変更して行う。通常、吸気バルブ9の閉じるタイミングを早くすることにより有効圧縮比が低減され、プリイグの発生を抑制することができる。
【0037】
なお、本実施の形態1では、プリイグを判定した際に変更する吸気バルブ9の閉じるタイミングの変化量を予め設定しておき、タイミングの変更を行う。また、吸気バルブ9の閉じるタイミングの変化量としては、1degCA程度早めることとする。
【0038】
図3は、点火時期が圧縮TDCよりも遅角側であった場合のクランク角加速度を示すグラフである。図3のグラフでは、クランク角加速度を縦軸に示し、クランク角度を横軸に示している。また、図3のグラフでは、プリイグ未発生の場合のクランク角加速度を実線、プリイグ発生の場合のクランク角加速度を破線で示す。さらに、図3のグラフでは、圧縮DTCに相当するクランク角度を1点鎖線、点火時期に相当するクランク角度を2点鎖線で示す。
【0039】
点火時期が圧縮TDCよりも遅角側であった場合、クランク角度の動きは、圧縮TDC後クランク角加速度が増加し、その後、点火時期となり点火を実施するまで略等加速度運動の状態であることが実験的に確認されている(図3の実線参照)。
【0040】
しかし、点火時期が圧縮TDCよりも遅角側であった場合において、点火時期と圧縮TDCとの間でプリイグが発生すると、圧縮TDCから点火時期までの間にかけてクランク角速度が大きくなり、点火時期後には、略等加速度運動状態ではなくなることが実験的に確認されている(図3の破線参照)。従って、本発明は、このプリイグが起きることによりクランク角加速度が大きくなる現象を利用して、プリイグの検出を行うものである。
【0041】
ここで、プリイグ判定レベル設定手段43について詳細に説明する。図4は、プリイグ未発生時のクランク角加速度の頻度分布が正規分布に従う場合のクランク角加速度の頻度分布図、図5は、プリイグ発生時のクランク角加速度の頻度分布が正規分布に従う場合のクランク角加速度の頻度分布図である。
【0042】
まず、特定のクランク角時点でのクランク角加速度の頻度分布を統計処理することでプリイグ判定レベルαTHを設定する方法について、図4、5を用いて説明する。図4、5に示すように、クランク角加速度の頻度分布が正規分布に従う場合には、頻度分布の標準偏差αSDと中央値αMとから次式(1)に基づいてプリイグ判定レベルαTHを算出することができる。
αTH=αM+KR×αSD (1)
【0043】
上記式(1)のKRは、データの信頼区間を決定する信頼係数である。クランク角加速度αの頻度分布が正規分布に従う場合には、KR=3の設定で99.7%の信頼区間をとることが一般的に知られている。そこで、本実施の形態1では、信頼係数KRの初期値をKR=3と設定する。
【0044】
このように、KR=3として上式(1)で求まったプリイグ判定レベルαTHを用いることで、図5に示すように、クランク角加速度αがプリイグ判定レベルαTHよりも大きい場合には、プリイグが発生していると判定することができる。また、このときのクランク角加速度αは、異常値であるため、標準偏差αSDと中央値αMとの算出には用いないこととする。
【0045】
しかし、実際には、クランク角加速度αの頻度分布が正規分布に従うことは少なく、右に歪んだ頻度分布形状となる場合や左に歪んだ頻度分布形状となる場合が一般的である。そこで、本発明では、実運転中のデータを統計処理することで、その内燃機関固有の頻度分布を取得した上で、適切なプリイグ判定レベルαTHを求めることを行っている。
【0046】
図6は、クランク角加速度の頻度分布が正規分布に従わない場合に、上式(1)によりプリイグ判定レベルαTHを求める場合の説明図である。一方、図7は、クランク角加速度の頻度分布が正規分布に従わない場合に、適切なプリイグ判定レベルαTHを求める場合の説明図である。
【0047】
図6に示すように、クランク角加速度αの分布が右に歪んだ場合、クランク角加速度αの頻度分布を正規分布とみなして、上式(1)を用いてプリイグ判定レベルαTHを設定する方法では、プリイグが発生していないにもかかわらず、クランク角加速度αがプリイグ判定レベルαTHよりも大きくなってしまう場合が発生する。この結果、プリイグが発生していると過検出してしまう。
【0048】
そこで、本発明の実施の形態1においては、図7に示すように、クランク角加速度αの頻度分布の歪みに基づいて、信頼係数KRを補正することにより、プリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定する。この適切な値の設定方法について、図7を参照しながら、以下に説明する。
【0049】
本発明においては、クランク角加速度αの頻度分布の歪みを表す指標として、中央値αMより上側のデータの分散αVRHあるいは標準偏差αSDHと、中央値αMより下側のデータの分散αVRLあるいは標準偏差αSDLとを用いる。これらの値に基づいて、次式(2)、(3)を用いて信頼係数KRを補正することで、補正後の信頼係数KRCを算出する。
KRC:2×KR=αVRH:(αVRL+αVRH) (2)
KRC=2×KR×{αVRH/(αVRL+αVRH)} (3)
【0050】
上式(3)の補正後の信頼係数KRCを上式(1)の信頼係数KRとして採用し、プリイグ判定レベルαTHを求めることで、クランク角加速度αの頻度分布の歪みに応じて、適切なプリイグ判定レベルαTHを得ることが可能となる。即ち、内燃機関やクランク角センサの個体差(製造ばらつき)及び内燃機関の運転状態等に起因するクランク角加速度αの頻度分布の歪みに応じて、適切なプリイグ判定レベルαTHを得ることできる。この結果、綿密な適合を要することなく、実運転中のクランク角加速度αの検出結果を統計処理して頻度分布を求め、その頻度分布に基づいてプリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定することができる。
【0051】
ここで、ECU20が、1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHを設定するために実行するプログラムの制御構造について、図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0052】
まず、ECU20は、クランク角センサ14からの出力信号に基づいて特定のクランク角時点(例えば、ATDC60degCA時点での30degCA間隔の角加速度)でのクランク角加速度αを算出する(ステップS101)。
【0053】
そして、ステップS102において、ECU20は、クランク角加速度α[n]がプリイグ判定レベルの前回値αTH[n−1]よりも大きいか否かを判別する。
【0054】
このとき、クランク角加速度α[n]がプリイグ判定レベルの前回値αTH[n−1]よりも大きい場合(即ち、Yes)にはプリイグ発生と判定し、ステップS103へ処理が移行する。
【0055】
ステップS103において、ECU20は、有効圧縮比の調整を行う。例えば、予めプリイグ判定時に吸気バルブ9の閉じるタイミングを1degCA早めると設定しておき、吸気バルブ9の閉じるタイミングを1degCA早めることで有効圧縮比の低減を行う。また、ECU20は、有効圧縮比の調整動作と同時に、クランク角加速度の前回値α[n−1]をクランク角加速度の今回値α[n]とする。即ち、クランク角加速度α[n]は異常値であるため、頻度分布のデータとしては採用せず、以降のプリイグ判定レベルの演算には、プリイグと判定されたこのクランク角加速度α[n]を用いない。
【0056】
一方、クランク角加速度α[n]がプリイグ判定レベルの前回値αTH[n−1]よりも小さい場合(即ち、No)にはプリイグ未発生と判定し、ステップS104へ処理が移行する。
【0057】
ステップS104において、ECU20は、クランク角加速度α[n]を、そのままα[n]に設定する。即ち、クランク角加速度α[n]は正常値であるため、頻度分布のデータとして採用し、以降のプリイグ判定レベルの演算に用いることとする。
【0058】
次に、ステップS105において、ECU20は、クランク角加速度α[n]の平均値αave[n]を次式(4)に基づいて算出する。
αave[n]=Kave×αave[n−1]+(1−Kave)×α[n] (4)
【0059】
上記式(4)のKaveは、0<Kave<1の値をとるフィルタ係数であり、予めエンジン回転数毎に適合された値が用いられる。なお、クランク角加速度α[n]の平均値αave[n]の算出には、エンジン回転数毎に適合された値に限定されず、例えば、移動平均値を用いてもよい。
【0060】
ここで、分布の中央値αMを求めるには、分布形状を把握することができるデータ数を一旦RAM領域に格納しておく必要がり、多大なRAM領域が必要となる。そこで、本実施の形態1においては、上式(4)を用いて一次フィルタによりなまし処理を施した値αaveが、中央値αMの代わりに用いられる。上式(4)で算出される値αaveを前回値として記憶しておくことで、分布形状を把握することができるデータ数を格納することなく、統計処理を行うことができる。
【0061】
また、ステップS102において、プリイグ発生と判定された場合には、ステップS103において、クランク角加速度α[n]にクランク角加速度の前回値α[n−1]を用いる場合を説明した。しかし、この方法の代わりに、フィルタ係数KVRHをプリイグ発生と判定されたクランク角加速度α[n]の影響が小さくなるように調節してもよい。
【0062】
次に、ステップS106において、ECU20は、クランク角加速度α[n]の頻度分布全体の分散αVR[n]を、次式(5)に基づいて算出する。
αVR [n]=(α[n]−αave[n])2 (5)
【0063】
また、ステップS106において、ECU20は、平均値αave[n]よりも上側のクランク角加速度α[n]の分散αVRH[n]を、次式(6)又は(7)に基づいて算出する。
【0064】
【数1】
【0065】
さらに、ステップS106において、ECU20は、平均値αave[n]よりも下側のクランク角加速度α[n]の分散αVRL[n]を、次式(8)又は(9)に基づいて算出する。
【0066】
【数2】
【0067】
そして、ステップS107において、ECU20は、ステップS106において求めた各分散に対して、次式(10)〜(12)に基づいてなまし処理を施す。
αFVR [n]=KVR ×αFVR [n−1]+(1−KVR )×αVR [n−1] (10)
αFVRH[n]=KVRH×αFVRH[n−1]+(1−KVRH)×αVRH[n−1] (11)
αFVRL[n]=KVRL×αFVRL[n−1]+(1−KVRL)×αVRL[n−1] (12)
【0068】
上記式(10)〜(12)のKVR、KVRH及びKVRLは、それぞれフィルタ係数であり、予めエンジン回転数毎に適合された値が用いられる。
【0069】
そして、ステップS108において、ECU20は、クランク角加速度α[n]の標準偏差αSD[n]を、次式(13)に基づいて算出する。
αSD[n]=(αFVR[n])1/2 (13)
【0070】
なお、αFVR[n]の代わりに、上記式(11)、(12)のαFVRH[n]及びαFVRL[n]を用いても良い。
【0071】
そして、ステップS109において、ECU20は、これまでの演算結果を元に、次式(14)、(15)に基づいて、補正後の信頼係数KRC及びプリイグ判定レベルαTH[n]を算出する。
KRC=2×KR×αVRH[n]/(αVRH[n]+αVRL[n]) (14)
αTH[n]=αave[n]+KRC×αSD[n] (15)
【0072】
上記式(14)のKRは、信頼係数である。このとき、補正後の信頼係数KRCの最小値が信頼係数KRとなるように制限する。また、補正後の信頼係数KRCの算出においては、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]が用いられる。なお、補正後の信頼係数KRCの算出においては、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]の代わりに、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]の正の平方根である上側標準偏差αSDH[n]及び下側標準偏差αSDL[n]を用いてもよい。
【0073】
以上のように、実施の形態1によれば、実運転中の測定結果に基づいてクランク角加速度αの頻度分布を統計処理し、クランク角加速度αの頻度分布に応じてプリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定することができる。従って、内燃機関やクランク角センサの個体差(製造ばらつき)及び内燃機関の運転状態等に起因するクランク角加速度αの頻度分布の歪みを反映したプリイグ判定レベルαTHの最適設定を容易に行うことができ、プリイグの検出をより確実に行うことができる。
【0074】
また、クランク角加速度αの頻度分布において、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]又は、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]の正の平方根である上側標準偏差αSDH[n]及び下側標準偏差αSDL[n]の歪みを正確に把握することができる。
【0075】
さらに、算出された上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]又は、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]の正の平方根である上側標準偏差αSDH[n]及び下側標準偏差αSDL[n]をなまし処理することにより、多量のデータをメモリ領域等に格納しておく必要がなくなるので、メモリ領域を削減することができる。
【0076】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、クランク角加速度αの頻度分布の歪みに基づいて信頼係数KRを補正することにより、プリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定する方法について、説明した。しかしながら、クランク角加速度αの頻度分布は、気筒自体の加工差、経年劣化によるばらつき及び点火時期によるばらつきがあるため、クランク角加速度αの頻度分布の歪みが補正しきれない可能性がある。そこで、本実施の形態2では、クランク角加速度αの頻度分布の平均値、標準偏差、分散を、気筒別、点火時期別に算出することでプリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定する方法について説明する。なお、内燃機関及び制御装置の構成は、実施の形態1と同様である。
【0077】
図9は、本発明の実施の形態2に係るECU20による1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHの設定動作を示すフローチャートである。なお、ステップS101〜S109の処理については、先の実施の形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0078】
まず、ステップS201において、ECU20は、現在点火時期が所定点火時期よりも遅角側か否かを判定する。
【0079】
このとき、現在点火時期が所定点火時期よりも遅角側である場合(即ち、Yes)には、ステップS202へ処理が移行する。また、現在点火時期が所定点火時期よりも遅角側でない場合(即ち、No)には、処理が終了となる。
【0080】
ステップS202において、ECU20は、現在気筒及び現在点火時期を判定し、各点火時期に対応した平均値、標準偏差、分散及びプリイグ判定レベルを選択する。ステップS202にて選択される値としては、例えば、図10に示めすようなマップが、気筒毎に用意されているものとする。
【0081】
その後、先の実施の形態1と同様に、ステップS101〜S109を実施後、ステップS203において、ECU20は、ステップS105〜S109にて算出したそれぞれの値を気筒及び点火時期に応じたマップに格納し処理が終了となる。
【0082】
以上のように、実施の形態2によれば、実運転中の測定結果に基づいてクランク角加速度αの頻度分布を、気筒別、点火時期別で統計処理し、クランク角加速度αの頻度分布に応じてプリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定することができる。従って、先の実施の形態1の効果に加え、気筒自体のばらつき、あるいは点火時期のばらつきを考慮して、プリイグの検出をより確実に行うことができる。
【0083】
なお、上記実施の形態2では、気筒毎、点火時期毎のマップを用いたが、点火時期毎の
マップを用いてもよい。
また、上記実施の形態2では、点火時期の軸を2degCA毎にしたが、必ずしもこれに限定されず、例えば、点火時期の軸を10degCA毎にしてもよい。
【0084】
実施の形態3.
先の実施の形態1、2では、クランク角加速度αの頻度分布の歪みに基づいて補正される信頼係数KRを定数にて予め設定しておく方法について説明した。これに対して、本実施の形態3では、信頼係数KRを、定数ではなく、エンジン回転数又は、エンジン回転数の負荷に相関のあるパラメータを軸として設定する方法について説明する。なお、内燃機関及び制御装置の構成は、先の実施の形態1、2と同様である。
【0085】
図11は、本発明の実施の形態3に係るECU20による1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHの設定動作を示すフローチャートである。なお、ステップS101〜S109の処理については、先の実施の形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0086】
先の実施の形態1と同様にしてステップS101〜S108を実施後、ステップS301において、ECU20は、図12に示す充填効率[%]と回転数[r/min]とに基づいて、固定定数ではなく、運転状態に応じた信頼係数KRを算出する。
【0087】
そして、ステップS109において、ECU20は、ステップ301で算出した、運転状態に応じた信頼係数KRを用いて補正後の信頼係数KRCを算出する。ここで、補正後の信頼係数KRCの最小値は、算出した信頼係数KRとなるように制限する。
【0088】
以上のように、実施の形態3によれば、プリイグ判定レベル設定手段43は、充填効率[%]と回転数[r/min]とに基づいて、固定定数ではなく、運転状態に応じた信頼係数KRを算出し、クランク角加速度αの頻度分布に応じてプリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定することができる。従って、先の実施の形態1、2と同様の効果を得ることができるとともに、運転状態に応じて、プリイグの検出をより確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0089】
1 燃焼室、2 シリンダヘッド、3 シリンダブロック、4 ピストン、5 吸気ポート、6 排気ポート、7 点火プラグ、8 燃料噴射弁、9 吸気バルブ、10 吸気カム、11 排気バルブ、12 排気カム、13 クランク軸、14 クランク角センサ、15 吸気量センサ、16 スロットルポジションセンサ、17 水温センサ、18 位相角センサ、19 ノックセンサ、20 エンジンコントロールユニット、30 I/F回路、31 ローパスフィルタ、40 マイクロコンピュータ、41 記憶手段、42 クランク角加速度算出手段、43 プリイグ判定レベル設定手段、44 比較演算手段、45 プリイグ判定手段、46 有効圧縮比演算手段、50 位相可変システム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の異常燃焼を高精度に検出する内燃機関用制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高圧縮比の火花点火式内燃機関において、燃焼騒音や出力変動を引き起こす異常燃焼が発生することがある。この異常燃焼は、燃焼に伴う燃焼室内の圧力変動が過剰に大きくなる現象を指す。また、このような異常燃焼には、火花点火実行前に発生するプリイグニッション(以下、「プリイグ」と略称する)と、火花点火実行後に発生するノッキングとがある。
【0003】
このうち、プリイグには、燃焼室内の混合気が圧縮により自着火する異常燃焼と、点火プラグ先端部の熱やデポジットなどを火元に着火する異常燃焼との2種類の現象が存在する。また、ノッキングは、点火後の燃焼過程において、燃焼室周辺のエンドガスが自着火する現象である。
【0004】
このような現象は、騒音や振動を伴うだけでなく、燃焼室内の損傷を招き、最終的には内燃機関が動作しなくなる恐れがある。
【0005】
そこで、上記の問題点を解決する従来技術の1つとして、プリイグをエンジン回転数の変動幅によって検出する技術が提案されている。例えば、特定気筒の点火時期を一定角度遅角すると、エンジン出力が低下し、エンジン回転数が変動する。このとき、特定気筒にプリイグが生じると、点火タイミングよりも早く燃焼室内に火炎が生じることにより、エンジン回転数の変動幅が小さくなる。従って、このエンジン回転数の変動幅が所定幅(プリイグ検出用エンジン回転数変動幅)よりも小さいか否かを判定することで、プリイグの検出を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−136566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
従来技術では、エンジン回転数の変動幅が所定幅よりも小さいか否かを判定することにより、プリイグの検出を行うことができる。しかしながら、内燃機関やクランク角センサの製造バラツキ、あるいは内燃機関の運転状態等を考慮して、所定幅を予め適切な値に設定しておく必要がある。その結果、エンジン回転数に対する所定幅を設定する際に手間が掛かってしまうといった問題点があった。
【0008】
また、従来技術では、所定幅の設定が小さすぎると、プリイグの検出がしにくくなり(すなわち、未検出状態が発生し)、内燃機関へのダメージが大きくなる可能性があった。逆に、所定幅の設定が大きすぎると、プリイグが発生していないにもかかわらずプリイグが検出されてしまい(すなわち、過検出状態が発生し)、プリイグ回避動作(例えば、有効圧縮比低減)により内燃機関の出力が十分に引き出されないという問題点があった。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、プリイグ判定レベルの設定を容易に行うことができるとともに、プリイグの検出をより確実に行うことができる内燃機関用制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る内燃機関用制御装置は、内燃機関の回転速度を検出するクランク角センサからの信号を所定間隔ごとに処理し、所定間隔ごとのクランク角加速度を算出するクランク角加速度算出手段と、クランク角加速度のデータ分布が正規分布であると仮定した場合に、所定の信頼区間を得るための上限のクランク角加速度を判定レベルしきい値として予め設定しておき、クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度が判定レベルしきい値よりも大きい場合にプリイグニッションが発生したと判断する判定手段とを備えた内燃機関用制御装置であって、クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度に対して統計処理を施すことにより、実運転におけるクランク角加速度の実データ分布を求め、実データ分布に適した新たな判定レベルしきい値を算出して判定手段に与える判定レベル設定手段をさらに備え、判定手段は、判定レベル設定手段で算出された新たな判定レベルしきい値を用いて、プリイグニッションが発生したか否かを判断するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る内燃機関用制御装置よれば、クランク角加速度の頻度分布を統計処理し、クランク角速度の頻度分布に応じてプリイグ判定レベルを自動的に設定することができ、プリイグ判定レベルの設定を容易に行うことができるとともに、プリイグの検出を確実に行うことができる内燃機関用制御装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る内燃機関を示す構成図である。
【図2】図1におけるECUの内部構成図である。
【図3】点火時期が圧縮TDCよりも遅角側であった場合のクランク角加速度を示すグラフである。
【図4】プリイグ未発生時のクランク角加速度の頻度分布が正規分布に従う場合のクランク角加速度の頻度分布図である。
【図5】プリイグ発生時のクランク角加速度の頻度分布が正規分布に従う場合のクランク角加速度の頻度分布図である。
【図6】クランク角加速度の頻度分布が正規分布に従わない場合に、プリイグ判定レベルαTHを求める場合の説明図である。
【図7】クランク角加速度の頻度分布が正規分布に従わない場合に、適切なプリイグ判定レベルαTHを求める場合の説明図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係るECUによる1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHの設定動作を示すフローチャートである。
【図9】本発明の実施の形態2に係るECUによる1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHの設定動作を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態2に係るECUにおける気筒毎及び点火時期毎のマップの一例を示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係るECUによる1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHの設定動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態3に係るECUにおける信頼係数マップの一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る内燃機関を示す構成図である。図1における内燃機関の燃焼室1は、シリンダヘッド2、シリンダブロック3、ピストン4により形成されている。また、燃焼室1の上部には、吸気ポート5と排気ポート6とが接続されている。さらに、燃焼室1の上部中央には、燃焼室1に供給された混合気に点火する点火プラグ7が設けられている。シリンダヘッド2の吸気ポート5側の下部には、燃料噴射弁8が設けられている。
【0015】
燃焼室1の吸気ポート5側の上部には、混合気及び燃焼ガスを適正な時期に吸入するための吸気バルブ9が設けられている。吸気バルブ9は、吸気カム10によって動作される。また、燃焼室1の排気ポート6側の上部には、混合気及び燃焼ガスを適正な時期に排出するための排気バルブ11が設けられている。排気バルブ11は、排気カム12によって動作される。
【0016】
吸気カム10には、吸気カム10の位相を可変する位相可変システム(図示せず)が接続されている。これにより、吸気カム10は、吸気バルブ9の開閉タイミングを変更することができる。
【0017】
ピストン4には、クランク軸13が接続されている。クランク軸13は、ピストン4が上下方向へ変位することにより回転可能となっている。クランク軸13には、突起が設けられているクランクプレート(図示せず)が取り付けられている。
【0018】
クランクプレートの突起の近傍には、クランク角センサ14が配置されている。クランク角センサ14は、クランクプレートの突起を検出することにより、クランク軸13の回転数及びクランク角度位置を検出する。また、クランク角センサ14は、クランク軸13の回転数及びクランク角度位置を内燃機関の制御装置の要部を構成するエンジンコントロールユニット20(以下、「ECU20」と略称する)に出力する。
【0019】
ECU20には、クランク角センサ14、燃焼室1に導入される吸気量を検出する吸気量センサ15、運転状態を検出するスロットルポジションセンサ16、内燃機関の冷却水温を検出する水温センサ17、吸気カム10の位相角センサ18、内燃機関の振動を検出するノックセンサ19等からの信号が入力される。ECU20は、これらの情報に基づいて内燃機関の回転速度、点火時期、燃料噴射量及び吸気カム10の位相変化量等の計算を行っている。さらに、ECU20は、後述するプリイグの検出によって吸気カム10の位相を変更し、有効圧縮比の低減といったプリイグ回避制御も行っている。
【0020】
ここで、1点火サイクルについて説明する。まず、吸気行程において、燃焼室1では、吸気ポート5から吸気バルブ9を介して導入された空気と、燃料噴射弁8から噴射された燃料とで混合気が形成される。次に、圧縮行程において、混合気がピストン4によって圧縮される。その後、圧縮TDC(TDC:Top Death Center)付近にて点火プラグ7により点火される。次に、膨張行程において、ピストン4を押し下げてクランク軸13を回転させる。次に、排気行程において、燃焼室1内の混合気は、排気バルブ11を介して排気ポート6を通り排出される。以上が1点火サイクルである。
【0021】
図2は、図1におけるECU20の内部構成図である。ECU20は、I/F回路30及びマイクロコンピュータ40を備えている。
【0022】
I/F回路30は、ローパスフィルタ31(以下、「LPF31」と略称する)を有している。LPF31は、クランク角センサ14からの出力信号の高周波成分を除去する。
【0023】
マイクロコンピュータ40は、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、制御プログラムや制御定数を記憶しておくROM領域、プログラムを実行した際の変数を記憶しておくRAM領域等から構成されている。以下に、マイクロコンピュータ40の具体的な構成・機能を説明する。
【0024】
マイクロコンピュータ40は、記憶手段41、クランク角加速度算出手段42、プリイグ判定レベル設定手段43、比較演算手段44、プリイグ判定手段45及び有効圧縮比演算手段46を備えている。
【0025】
記憶手段41は、LPF31からの出力信号を一定のクランク角間隔(例えば、30degCA)ごとに記憶する。例えば、記憶手段41は、割り込み発生時刻ごとに、LPF31からの出力信号を記憶部(ROM領域あるいはRAM領域に相当)に記憶させることで、一定間隔でのクランク角の遷移データを格納する。
【0026】
なお、記憶手段41は、LPF31からの出力信号を常に記憶してもよい。また、記憶手段41は、LPF31からの出力信号をプリイグが発生する期間(例えば、BTDC30degCAからATDC60degCA)だけ記憶してもよい。
【0027】
ここで、BTDCは、上死点前の意味であり、Before Top Death Centerの略称である。また、ATDCは、上死点後の意味であり、After Top Death Centerの略称である。
【0028】
クランク角加速度算出手段42は、記憶部に格納されたクランク角の遷移データに基づいてクランク角周期、クランク角速度及びクランク角加速度αを算出する。
【0029】
ここで、クランク角加速度算出手段42は、クランク角加速度αを次のように算出する。まず、クランク角加速度算出手段42は、例えば、TDCからATDC30degCAごとに格納されたクランク角の遷移データからクランク角速度を算出し、その算出結果から、クランク角加速度αを算出する。
【0030】
一例として、TDC〜ATDC30degCAの角速度がt1として求まり、ATDC30degCA〜ATDC60degCAの角速度がt2として求まったとする。この場合、クランク角加速度αは、下式により算出できる。
α=t2/(30/t2−30/t1)
【0031】
プリイグ判定レベル設定手段43は、クランク角加速度算出手段42より算出されるクランク角加速度αを用いて、プリイグ判定レベルαTHを設定する。また、プリイグ判定レベル設定手段43は、図示していないが、平均値算出手段と、標準偏差算出手段と、上側分散算出手段と、下側分散算出手段と、信頼係数補正手段とを有している。
【0032】
平均値算出手段は、クランク角加速度算出手段42より算出されるクランク角加速度αの平均値を算出する。標準偏差算出手段は、クランク角加速度算出手段42より算出されるクランク角加速度αの標準偏差を算出する。上側分散算出手段は、平均値算出手段より算出される平均値よりも上側のクランク角加速度αのばらつき(分散値)を算出する。下側分散算出手段は、平均値算出手段より算出される平均値よりも下側のクランク角加速度αのばらつき(分散値)を算出する。信頼係数補正手段は、上側分散算出手段及び下側分散算出手段の算出結果に基づいて信頼係数を補正する。なお、プリイグ判定レベル設定手段43の詳細については、後述する。
【0033】
比較演算手段44は、現在のクランク角加速度αとプリイグ判定レベルαTHとを読み取り、現在のクランク角加速度αがプリイグ判定レベルαTHよりも上回っているか否かを判定する。また、比較演算手段44は、判定結果をプリイグ判定手段45に出力する。
【0034】
プリイグ判定手段45は、比較演算手段44からの判定結果に基づいてプリイグの発生有無を判定する。また、プリイグ判定手段45は、判定結果を有効圧縮比演算手段46に出力する。
【0035】
有効圧縮比演算手段46は、プリイグの発生状況に応じて有効圧縮比を調整する。例えば、プリイグが発生していれば有効圧縮比を低減するように演算を実施し、演算結果を位相可変システム50に出力する。
【0036】
ここで、有効圧縮比の調整について説明する。有効圧縮比の調整は、例えば、位相可変システム50により吸気カム10の位相を変更し、吸気バルブ9の閉じるタイミングを変更して行う。通常、吸気バルブ9の閉じるタイミングを早くすることにより有効圧縮比が低減され、プリイグの発生を抑制することができる。
【0037】
なお、本実施の形態1では、プリイグを判定した際に変更する吸気バルブ9の閉じるタイミングの変化量を予め設定しておき、タイミングの変更を行う。また、吸気バルブ9の閉じるタイミングの変化量としては、1degCA程度早めることとする。
【0038】
図3は、点火時期が圧縮TDCよりも遅角側であった場合のクランク角加速度を示すグラフである。図3のグラフでは、クランク角加速度を縦軸に示し、クランク角度を横軸に示している。また、図3のグラフでは、プリイグ未発生の場合のクランク角加速度を実線、プリイグ発生の場合のクランク角加速度を破線で示す。さらに、図3のグラフでは、圧縮DTCに相当するクランク角度を1点鎖線、点火時期に相当するクランク角度を2点鎖線で示す。
【0039】
点火時期が圧縮TDCよりも遅角側であった場合、クランク角度の動きは、圧縮TDC後クランク角加速度が増加し、その後、点火時期となり点火を実施するまで略等加速度運動の状態であることが実験的に確認されている(図3の実線参照)。
【0040】
しかし、点火時期が圧縮TDCよりも遅角側であった場合において、点火時期と圧縮TDCとの間でプリイグが発生すると、圧縮TDCから点火時期までの間にかけてクランク角速度が大きくなり、点火時期後には、略等加速度運動状態ではなくなることが実験的に確認されている(図3の破線参照)。従って、本発明は、このプリイグが起きることによりクランク角加速度が大きくなる現象を利用して、プリイグの検出を行うものである。
【0041】
ここで、プリイグ判定レベル設定手段43について詳細に説明する。図4は、プリイグ未発生時のクランク角加速度の頻度分布が正規分布に従う場合のクランク角加速度の頻度分布図、図5は、プリイグ発生時のクランク角加速度の頻度分布が正規分布に従う場合のクランク角加速度の頻度分布図である。
【0042】
まず、特定のクランク角時点でのクランク角加速度の頻度分布を統計処理することでプリイグ判定レベルαTHを設定する方法について、図4、5を用いて説明する。図4、5に示すように、クランク角加速度の頻度分布が正規分布に従う場合には、頻度分布の標準偏差αSDと中央値αMとから次式(1)に基づいてプリイグ判定レベルαTHを算出することができる。
αTH=αM+KR×αSD (1)
【0043】
上記式(1)のKRは、データの信頼区間を決定する信頼係数である。クランク角加速度αの頻度分布が正規分布に従う場合には、KR=3の設定で99.7%の信頼区間をとることが一般的に知られている。そこで、本実施の形態1では、信頼係数KRの初期値をKR=3と設定する。
【0044】
このように、KR=3として上式(1)で求まったプリイグ判定レベルαTHを用いることで、図5に示すように、クランク角加速度αがプリイグ判定レベルαTHよりも大きい場合には、プリイグが発生していると判定することができる。また、このときのクランク角加速度αは、異常値であるため、標準偏差αSDと中央値αMとの算出には用いないこととする。
【0045】
しかし、実際には、クランク角加速度αの頻度分布が正規分布に従うことは少なく、右に歪んだ頻度分布形状となる場合や左に歪んだ頻度分布形状となる場合が一般的である。そこで、本発明では、実運転中のデータを統計処理することで、その内燃機関固有の頻度分布を取得した上で、適切なプリイグ判定レベルαTHを求めることを行っている。
【0046】
図6は、クランク角加速度の頻度分布が正規分布に従わない場合に、上式(1)によりプリイグ判定レベルαTHを求める場合の説明図である。一方、図7は、クランク角加速度の頻度分布が正規分布に従わない場合に、適切なプリイグ判定レベルαTHを求める場合の説明図である。
【0047】
図6に示すように、クランク角加速度αの分布が右に歪んだ場合、クランク角加速度αの頻度分布を正規分布とみなして、上式(1)を用いてプリイグ判定レベルαTHを設定する方法では、プリイグが発生していないにもかかわらず、クランク角加速度αがプリイグ判定レベルαTHよりも大きくなってしまう場合が発生する。この結果、プリイグが発生していると過検出してしまう。
【0048】
そこで、本発明の実施の形態1においては、図7に示すように、クランク角加速度αの頻度分布の歪みに基づいて、信頼係数KRを補正することにより、プリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定する。この適切な値の設定方法について、図7を参照しながら、以下に説明する。
【0049】
本発明においては、クランク角加速度αの頻度分布の歪みを表す指標として、中央値αMより上側のデータの分散αVRHあるいは標準偏差αSDHと、中央値αMより下側のデータの分散αVRLあるいは標準偏差αSDLとを用いる。これらの値に基づいて、次式(2)、(3)を用いて信頼係数KRを補正することで、補正後の信頼係数KRCを算出する。
KRC:2×KR=αVRH:(αVRL+αVRH) (2)
KRC=2×KR×{αVRH/(αVRL+αVRH)} (3)
【0050】
上式(3)の補正後の信頼係数KRCを上式(1)の信頼係数KRとして採用し、プリイグ判定レベルαTHを求めることで、クランク角加速度αの頻度分布の歪みに応じて、適切なプリイグ判定レベルαTHを得ることが可能となる。即ち、内燃機関やクランク角センサの個体差(製造ばらつき)及び内燃機関の運転状態等に起因するクランク角加速度αの頻度分布の歪みに応じて、適切なプリイグ判定レベルαTHを得ることできる。この結果、綿密な適合を要することなく、実運転中のクランク角加速度αの検出結果を統計処理して頻度分布を求め、その頻度分布に基づいてプリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定することができる。
【0051】
ここで、ECU20が、1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHを設定するために実行するプログラムの制御構造について、図8のフローチャートに基づいて説明する。
【0052】
まず、ECU20は、クランク角センサ14からの出力信号に基づいて特定のクランク角時点(例えば、ATDC60degCA時点での30degCA間隔の角加速度)でのクランク角加速度αを算出する(ステップS101)。
【0053】
そして、ステップS102において、ECU20は、クランク角加速度α[n]がプリイグ判定レベルの前回値αTH[n−1]よりも大きいか否かを判別する。
【0054】
このとき、クランク角加速度α[n]がプリイグ判定レベルの前回値αTH[n−1]よりも大きい場合(即ち、Yes)にはプリイグ発生と判定し、ステップS103へ処理が移行する。
【0055】
ステップS103において、ECU20は、有効圧縮比の調整を行う。例えば、予めプリイグ判定時に吸気バルブ9の閉じるタイミングを1degCA早めると設定しておき、吸気バルブ9の閉じるタイミングを1degCA早めることで有効圧縮比の低減を行う。また、ECU20は、有効圧縮比の調整動作と同時に、クランク角加速度の前回値α[n−1]をクランク角加速度の今回値α[n]とする。即ち、クランク角加速度α[n]は異常値であるため、頻度分布のデータとしては採用せず、以降のプリイグ判定レベルの演算には、プリイグと判定されたこのクランク角加速度α[n]を用いない。
【0056】
一方、クランク角加速度α[n]がプリイグ判定レベルの前回値αTH[n−1]よりも小さい場合(即ち、No)にはプリイグ未発生と判定し、ステップS104へ処理が移行する。
【0057】
ステップS104において、ECU20は、クランク角加速度α[n]を、そのままα[n]に設定する。即ち、クランク角加速度α[n]は正常値であるため、頻度分布のデータとして採用し、以降のプリイグ判定レベルの演算に用いることとする。
【0058】
次に、ステップS105において、ECU20は、クランク角加速度α[n]の平均値αave[n]を次式(4)に基づいて算出する。
αave[n]=Kave×αave[n−1]+(1−Kave)×α[n] (4)
【0059】
上記式(4)のKaveは、0<Kave<1の値をとるフィルタ係数であり、予めエンジン回転数毎に適合された値が用いられる。なお、クランク角加速度α[n]の平均値αave[n]の算出には、エンジン回転数毎に適合された値に限定されず、例えば、移動平均値を用いてもよい。
【0060】
ここで、分布の中央値αMを求めるには、分布形状を把握することができるデータ数を一旦RAM領域に格納しておく必要がり、多大なRAM領域が必要となる。そこで、本実施の形態1においては、上式(4)を用いて一次フィルタによりなまし処理を施した値αaveが、中央値αMの代わりに用いられる。上式(4)で算出される値αaveを前回値として記憶しておくことで、分布形状を把握することができるデータ数を格納することなく、統計処理を行うことができる。
【0061】
また、ステップS102において、プリイグ発生と判定された場合には、ステップS103において、クランク角加速度α[n]にクランク角加速度の前回値α[n−1]を用いる場合を説明した。しかし、この方法の代わりに、フィルタ係数KVRHをプリイグ発生と判定されたクランク角加速度α[n]の影響が小さくなるように調節してもよい。
【0062】
次に、ステップS106において、ECU20は、クランク角加速度α[n]の頻度分布全体の分散αVR[n]を、次式(5)に基づいて算出する。
αVR [n]=(α[n]−αave[n])2 (5)
【0063】
また、ステップS106において、ECU20は、平均値αave[n]よりも上側のクランク角加速度α[n]の分散αVRH[n]を、次式(6)又は(7)に基づいて算出する。
【0064】
【数1】
【0065】
さらに、ステップS106において、ECU20は、平均値αave[n]よりも下側のクランク角加速度α[n]の分散αVRL[n]を、次式(8)又は(9)に基づいて算出する。
【0066】
【数2】
【0067】
そして、ステップS107において、ECU20は、ステップS106において求めた各分散に対して、次式(10)〜(12)に基づいてなまし処理を施す。
αFVR [n]=KVR ×αFVR [n−1]+(1−KVR )×αVR [n−1] (10)
αFVRH[n]=KVRH×αFVRH[n−1]+(1−KVRH)×αVRH[n−1] (11)
αFVRL[n]=KVRL×αFVRL[n−1]+(1−KVRL)×αVRL[n−1] (12)
【0068】
上記式(10)〜(12)のKVR、KVRH及びKVRLは、それぞれフィルタ係数であり、予めエンジン回転数毎に適合された値が用いられる。
【0069】
そして、ステップS108において、ECU20は、クランク角加速度α[n]の標準偏差αSD[n]を、次式(13)に基づいて算出する。
αSD[n]=(αFVR[n])1/2 (13)
【0070】
なお、αFVR[n]の代わりに、上記式(11)、(12)のαFVRH[n]及びαFVRL[n]を用いても良い。
【0071】
そして、ステップS109において、ECU20は、これまでの演算結果を元に、次式(14)、(15)に基づいて、補正後の信頼係数KRC及びプリイグ判定レベルαTH[n]を算出する。
KRC=2×KR×αVRH[n]/(αVRH[n]+αVRL[n]) (14)
αTH[n]=αave[n]+KRC×αSD[n] (15)
【0072】
上記式(14)のKRは、信頼係数である。このとき、補正後の信頼係数KRCの最小値が信頼係数KRとなるように制限する。また、補正後の信頼係数KRCの算出においては、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]が用いられる。なお、補正後の信頼係数KRCの算出においては、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]の代わりに、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]の正の平方根である上側標準偏差αSDH[n]及び下側標準偏差αSDL[n]を用いてもよい。
【0073】
以上のように、実施の形態1によれば、実運転中の測定結果に基づいてクランク角加速度αの頻度分布を統計処理し、クランク角加速度αの頻度分布に応じてプリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定することができる。従って、内燃機関やクランク角センサの個体差(製造ばらつき)及び内燃機関の運転状態等に起因するクランク角加速度αの頻度分布の歪みを反映したプリイグ判定レベルαTHの最適設定を容易に行うことができ、プリイグの検出をより確実に行うことができる。
【0074】
また、クランク角加速度αの頻度分布において、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]又は、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]の正の平方根である上側標準偏差αSDH[n]及び下側標準偏差αSDL[n]の歪みを正確に把握することができる。
【0075】
さらに、算出された上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]又は、上側分散αVRH[n]及び下側分散αVRL[n]の正の平方根である上側標準偏差αSDH[n]及び下側標準偏差αSDL[n]をなまし処理することにより、多量のデータをメモリ領域等に格納しておく必要がなくなるので、メモリ領域を削減することができる。
【0076】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、クランク角加速度αの頻度分布の歪みに基づいて信頼係数KRを補正することにより、プリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定する方法について、説明した。しかしながら、クランク角加速度αの頻度分布は、気筒自体の加工差、経年劣化によるばらつき及び点火時期によるばらつきがあるため、クランク角加速度αの頻度分布の歪みが補正しきれない可能性がある。そこで、本実施の形態2では、クランク角加速度αの頻度分布の平均値、標準偏差、分散を、気筒別、点火時期別に算出することでプリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定する方法について説明する。なお、内燃機関及び制御装置の構成は、実施の形態1と同様である。
【0077】
図9は、本発明の実施の形態2に係るECU20による1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHの設定動作を示すフローチャートである。なお、ステップS101〜S109の処理については、先の実施の形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0078】
まず、ステップS201において、ECU20は、現在点火時期が所定点火時期よりも遅角側か否かを判定する。
【0079】
このとき、現在点火時期が所定点火時期よりも遅角側である場合(即ち、Yes)には、ステップS202へ処理が移行する。また、現在点火時期が所定点火時期よりも遅角側でない場合(即ち、No)には、処理が終了となる。
【0080】
ステップS202において、ECU20は、現在気筒及び現在点火時期を判定し、各点火時期に対応した平均値、標準偏差、分散及びプリイグ判定レベルを選択する。ステップS202にて選択される値としては、例えば、図10に示めすようなマップが、気筒毎に用意されているものとする。
【0081】
その後、先の実施の形態1と同様に、ステップS101〜S109を実施後、ステップS203において、ECU20は、ステップS105〜S109にて算出したそれぞれの値を気筒及び点火時期に応じたマップに格納し処理が終了となる。
【0082】
以上のように、実施の形態2によれば、実運転中の測定結果に基づいてクランク角加速度αの頻度分布を、気筒別、点火時期別で統計処理し、クランク角加速度αの頻度分布に応じてプリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定することができる。従って、先の実施の形態1の効果に加え、気筒自体のばらつき、あるいは点火時期のばらつきを考慮して、プリイグの検出をより確実に行うことができる。
【0083】
なお、上記実施の形態2では、気筒毎、点火時期毎のマップを用いたが、点火時期毎の
マップを用いてもよい。
また、上記実施の形態2では、点火時期の軸を2degCA毎にしたが、必ずしもこれに限定されず、例えば、点火時期の軸を10degCA毎にしてもよい。
【0084】
実施の形態3.
先の実施の形態1、2では、クランク角加速度αの頻度分布の歪みに基づいて補正される信頼係数KRを定数にて予め設定しておく方法について説明した。これに対して、本実施の形態3では、信頼係数KRを、定数ではなく、エンジン回転数又は、エンジン回転数の負荷に相関のあるパラメータを軸として設定する方法について説明する。なお、内燃機関及び制御装置の構成は、先の実施の形態1、2と同様である。
【0085】
図11は、本発明の実施の形態3に係るECU20による1点火サイクル毎にプリイグ判定レベルαTHの設定動作を示すフローチャートである。なお、ステップS101〜S109の処理については、先の実施の形態1と同様であるため、説明は省略する。
【0086】
先の実施の形態1と同様にしてステップS101〜S108を実施後、ステップS301において、ECU20は、図12に示す充填効率[%]と回転数[r/min]とに基づいて、固定定数ではなく、運転状態に応じた信頼係数KRを算出する。
【0087】
そして、ステップS109において、ECU20は、ステップ301で算出した、運転状態に応じた信頼係数KRを用いて補正後の信頼係数KRCを算出する。ここで、補正後の信頼係数KRCの最小値は、算出した信頼係数KRとなるように制限する。
【0088】
以上のように、実施の形態3によれば、プリイグ判定レベル設定手段43は、充填効率[%]と回転数[r/min]とに基づいて、固定定数ではなく、運転状態に応じた信頼係数KRを算出し、クランク角加速度αの頻度分布に応じてプリイグ判定レベルαTHを適切な値に設定することができる。従って、先の実施の形態1、2と同様の効果を得ることができるとともに、運転状態に応じて、プリイグの検出をより確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0089】
1 燃焼室、2 シリンダヘッド、3 シリンダブロック、4 ピストン、5 吸気ポート、6 排気ポート、7 点火プラグ、8 燃料噴射弁、9 吸気バルブ、10 吸気カム、11 排気バルブ、12 排気カム、13 クランク軸、14 クランク角センサ、15 吸気量センサ、16 スロットルポジションセンサ、17 水温センサ、18 位相角センサ、19 ノックセンサ、20 エンジンコントロールユニット、30 I/F回路、31 ローパスフィルタ、40 マイクロコンピュータ、41 記憶手段、42 クランク角加速度算出手段、43 プリイグ判定レベル設定手段、44 比較演算手段、45 プリイグ判定手段、46 有効圧縮比演算手段、50 位相可変システム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の回転速度を検出するクランク角センサからの信号を所定間隔ごとに処理し、上記所定間隔ごとのクランク角加速度を算出するクランク角加速度算出手段と、
クランク角加速度のデータ分布が正規分布であると仮定した場合に、所定の信頼区間を得るための上限のクランク角加速度を判定レベルしきい値として予め設定しておき、上記クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度が上記判定レベルしきい値よりも大きい場合にプリイグニッションが発生したと判断する判定手段と
を備えた内燃機関用制御装置であって、
上記クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度に対して統計処理を施すことにより、実運転におけるクランク角加速度の実データ分布を求め、上記実データ分布に適した新たな判定レベルしきい値を算出して上記判定手段に与える判定レベル設定手段をさらに備え、
上記判定手段は、上記判定レベル設定手段で算出された上記新たな判定レベルしきい値を用いて、上記プリイグニッションが発生したか否かを判断する
ことを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関用制御装置において、
上記判定レベル設定手段は、
上記クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度の平均値を算出する平均値算出手段と、
上記クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度の標準偏差を算出する標準偏差算出手段と、
上記実データ分布に含まれるクランク角加速度のうち、上記平均値算出手段により算出された上記平均値以上となるクランク角加速度のばらつきを算出する上側ばらつき算出手段と、
上記実データ分布に含まれるクランク角加速度のうち、上記平均値算出手段により算出された上記平均値未満となるクランク角加速度のばらつきを算出する下側ばらつき算出手段と、
上記上側ばらつき算出手段及び上記下側ばらつき算出手段の算出結果に基づいて上記新たな判定レベルしきい値を算出する補正手段と
を含むことを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関用制御装置において、
上記判定レベル設定手段に含まれる補正手段は、クランク角加速度のデータ分布が正規分布であると仮定し、標準偏差をαSD、中央値をαM、信頼係数をKRをとして、上記判定レベルしきい値αTHが下式
αTH=αM+KR×αSD
で予め設定されている場合において、上記上側ばらつき算出手段で算出されたクランク角加速度のばらつきを上側分散値αVRHとし、上記下側ばらつき算出手段で算出されたクランク角加速度のばらつきを下側分散値αVRLとして、補正後の信頼係数KRCを下式
KRC=2×KR×αVRH/(αVRH+αVRL)
により算出し、上記平均値算出手段で算出された上記平均値をαaveとし、上記標準偏差算出手段で算出された上記標準偏差をαSDとしたときに、上記補正後の信頼係数KRCを用いて上記新たな判定レベルしきい値αTHCを下式
αTHC=αave+KRC×αSD
により算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関用制御装置において、
上記補正手段は、上記補正後の信頼係数KRCの最小値を、上記信頼係数KRとして制限することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の内燃機関用制御装置において、
上記上側ばらつき算出手段は、クランク角加速度のばらつきとして、上記分散値の代わりに標準偏差を算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の内燃機関用制御装置において、
上記上側ばらつき算出手段は、前回周期で算出したクランク角加速度のばらつきに対して1次フィルタによるなまし処理を行った結果に基づいて今期周期のクランク角加速度のばらつきを算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の内燃機関用制御装置において、
上記下側ばらつき算出手段は、クランク角加速度のばらつきとして、上記分散値の代わりに標準偏差を算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項8】
請求項3、4、7のいずれか1項に記載の内燃機関用制御装置において、
上記下側ばらつき算出手段は、前回周期で算出したクランク角加速度のばらつきに対して1次フィルタによるなまし処理を行った結果に基づいて今期周期のクランク角加速度のばらつきを算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項9】
請求項3乃至8のいずれか1項に記載の内燃機関用制御装置において、
上記補正手段は、上記信頼係数として、エンジン回転数及びエンジン負荷を表すパラメータを軸としてマップ設定された値を用いることを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の内燃機関用制御装置において、
上記判定レベル設定手段は、上記新たな判定レベルしきい値を気筒別又は点火時期別に算出し、
上記判定手段は、上記判定レベル設定手段で算出された上記新たな判定レベルしきい値を用いて、上記プリイグニッションが発生したか否かを気筒別又は点火時期別に判断する
ことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の内燃機関用制御装置において、
上記判定レベル設定手段は、上記クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度のうち、所定の点火時期より遅角側のクランク角加速度に対して統計処理を施すことにより、実運転におけるクランク角加速度の実データ分布を求めることを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項1】
内燃機関の回転速度を検出するクランク角センサからの信号を所定間隔ごとに処理し、上記所定間隔ごとのクランク角加速度を算出するクランク角加速度算出手段と、
クランク角加速度のデータ分布が正規分布であると仮定した場合に、所定の信頼区間を得るための上限のクランク角加速度を判定レベルしきい値として予め設定しておき、上記クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度が上記判定レベルしきい値よりも大きい場合にプリイグニッションが発生したと判断する判定手段と
を備えた内燃機関用制御装置であって、
上記クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度に対して統計処理を施すことにより、実運転におけるクランク角加速度の実データ分布を求め、上記実データ分布に適した新たな判定レベルしきい値を算出して上記判定手段に与える判定レベル設定手段をさらに備え、
上記判定手段は、上記判定レベル設定手段で算出された上記新たな判定レベルしきい値を用いて、上記プリイグニッションが発生したか否かを判断する
ことを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関用制御装置において、
上記判定レベル設定手段は、
上記クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度の平均値を算出する平均値算出手段と、
上記クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度の標準偏差を算出する標準偏差算出手段と、
上記実データ分布に含まれるクランク角加速度のうち、上記平均値算出手段により算出された上記平均値以上となるクランク角加速度のばらつきを算出する上側ばらつき算出手段と、
上記実データ分布に含まれるクランク角加速度のうち、上記平均値算出手段により算出された上記平均値未満となるクランク角加速度のばらつきを算出する下側ばらつき算出手段と、
上記上側ばらつき算出手段及び上記下側ばらつき算出手段の算出結果に基づいて上記新たな判定レベルしきい値を算出する補正手段と
を含むことを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の内燃機関用制御装置において、
上記判定レベル設定手段に含まれる補正手段は、クランク角加速度のデータ分布が正規分布であると仮定し、標準偏差をαSD、中央値をαM、信頼係数をKRをとして、上記判定レベルしきい値αTHが下式
αTH=αM+KR×αSD
で予め設定されている場合において、上記上側ばらつき算出手段で算出されたクランク角加速度のばらつきを上側分散値αVRHとし、上記下側ばらつき算出手段で算出されたクランク角加速度のばらつきを下側分散値αVRLとして、補正後の信頼係数KRCを下式
KRC=2×KR×αVRH/(αVRH+αVRL)
により算出し、上記平均値算出手段で算出された上記平均値をαaveとし、上記標準偏差算出手段で算出された上記標準偏差をαSDとしたときに、上記補正後の信頼係数KRCを用いて上記新たな判定レベルしきい値αTHCを下式
αTHC=αave+KRC×αSD
により算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の内燃機関用制御装置において、
上記補正手段は、上記補正後の信頼係数KRCの最小値を、上記信頼係数KRとして制限することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の内燃機関用制御装置において、
上記上側ばらつき算出手段は、クランク角加速度のばらつきとして、上記分散値の代わりに標準偏差を算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の内燃機関用制御装置において、
上記上側ばらつき算出手段は、前回周期で算出したクランク角加速度のばらつきに対して1次フィルタによるなまし処理を行った結果に基づいて今期周期のクランク角加速度のばらつきを算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の内燃機関用制御装置において、
上記下側ばらつき算出手段は、クランク角加速度のばらつきとして、上記分散値の代わりに標準偏差を算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項8】
請求項3、4、7のいずれか1項に記載の内燃機関用制御装置において、
上記下側ばらつき算出手段は、前回周期で算出したクランク角加速度のばらつきに対して1次フィルタによるなまし処理を行った結果に基づいて今期周期のクランク角加速度のばらつきを算出することを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項9】
請求項3乃至8のいずれか1項に記載の内燃機関用制御装置において、
上記補正手段は、上記信頼係数として、エンジン回転数及びエンジン負荷を表すパラメータを軸としてマップ設定された値を用いることを特徴とする内燃機関用制御装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載の内燃機関用制御装置において、
上記判定レベル設定手段は、上記新たな判定レベルしきい値を気筒別又は点火時期別に算出し、
上記判定手段は、上記判定レベル設定手段で算出された上記新たな判定レベルしきい値を用いて、上記プリイグニッションが発生したか否かを気筒別又は点火時期別に判断する
ことを特徴とする内燃機関制御装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか1項に記載の内燃機関用制御装置において、
上記判定レベル設定手段は、上記クランク角加速度算出手段で逐次算出されるクランク角加速度のうち、所定の点火時期より遅角側のクランク角加速度に対して統計処理を施すことにより、実運転におけるクランク角加速度の実データ分布を求めることを特徴とする内燃機関用制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−12607(P2011−12607A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157984(P2009−157984)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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