説明

内燃機関

【課題】簡単な構造で燃焼室内のスワール流およびタンブル流を制御できる内燃機関を提供する。
【解決手段】複数の吸気バルブ64からそれぞれ上流に延びる吸入気ポート51,52と、吸入気ポート51,52の上流に設けられるスロットルバルブ85,86と、を備える内燃機関において、各吸入気ポート51,52に対してそれぞれスロットルバルブ85,86が設けられるとともに、少なくとも一組のスロットルバルブ軸98,99の軸線100,101が交差し、それぞれが独立して駆動することを特徴とする内燃機関。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸気の際にスワール流、タンブル流を生成する内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、単一のポート内の同一面上に複数のバタフライバルブを配置したスロットルバルブを備え、各バタフライバルブを互い違いに開くことでポート内に渦流を発生させ、燃焼室内にスワール流を発生させる内燃機関が知られている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−029300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、ポート内に強い渦流を発生させることはできるものの、燃焼室内に強力なスワール流を発生させることは難しいという課題がある。また、単一のポート内に複数のバタフライバルブが配置されているため、各バタフライバルブ間のクリアランス調整が難しくスロットルボディが高価になるという課題がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構造で燃焼室内のスワール流およびタンブル流を制御できる内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の吸気バルブ(64)からそれぞれ上流に延びる吸入気ポート(51,52)と、吸入気ポート(51,52)の上流に設けられるスロットルバルブ(85,86)と、を備える内燃機関において、各吸入気ポート(51,52)に対してそれぞれスロットルバルブ(85,86)が設けられるとともに、少なくとも一組のスロットルバルブ軸(98,99)の軸線(100,101)が交差し、それぞれが独立して駆動することを特徴とする。
【0006】
本発明では、各吸入気ポートにそれぞれスロットルバルブが設けられているので、これらのスロットルバルブが低開度で開いて空気が流れるときには、各吸入気ポートに、ポート壁面の一部に沿う強い流れを有する不均一な気流が生じ、この気流の強い流れがポート壁面に沿って燃焼室内に吸入され、燃焼室内にスワール流やタンブル流が生じる。
ここで、少なくとも一組の吸入気ポートのスロットルバルブ軸の軸線が交差しているので、これら2つのスロットルバルブのうち、一方を低開度で開くときに生じるスワール流およびタンブル流と、他方を低開度で開くときに生じるスワール流およびタンブル流とが異なる。そして、この2つの吸入気ポートに設けられたスロットルバルブはそれぞれが独立して駆動するので、燃焼室内のスワール流およびタンブル流を調整できる。
これにより、各ポートにそれぞれ一つのスロットルバルブを設けただけの簡単な構造で、燃焼室内のスワール流およびタンブル流を制御できる。
【0007】
前記一組のスロットルバルブ軸(98,99)の軸線(100,101)が直交しても良い。
2つの不均一な気流の流れが強い箇所が重複することがないので、効率よくスワール流、タンブル流を発生させることができる。
前記スロットルバルブ(85,86)の開口の一側に拡開部(102,103)を設け、スロットルバルブ(85,86)低開度での拡開部(102,103)側の吸入気を制限しても良い。
気流がより不均一となるので、スロットルバルブ低開度で強いスワール流やタンブル流を発生させることができる。
それぞれのスロットルバルブ(85,86)はモータ(87,88)によって独立して駆動されても良い。
各スロットルバルブの開度を正確に制御できるので、スワール流およびタンブル流の強さや比率を正確に制御できる。
【0008】
前記スロットルバルブ(85,86)は内燃機関の低回転から高回転になるにつれて、スワール燃焼、タンブル燃焼、通常燃焼に順次切り換えられるように前記一組のスロットルバルブ軸(98,99)が駆動されても良い。
燃焼状態を順次切り換えることで、内燃機関の燃焼効率を向上させることができる。
スワール発生側のスロットルバルブ(85)は、シリンダ(42)外側寄りのポート壁面に沿って吸入気が流れても良い。
シリンダ外側の流れが強い気流を燃焼室に導入できるので、より強力なスワール流を発生させることができる。
タンブル発生側のスロットルバルブ(86)は、ポート軸線(108)に対して外周側のポート壁面に沿って吸入気が流れても良い。
ポート軸線に対して外周側の流れが強い気流を燃焼室に導入できるので、より強力なタンブル流を発生させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各吸入気ポートにそれぞれスロットルバルブが設けられているので、これらのスロットルバルブが低開度で開いて空気が流れるときには、各吸入気ポートに、ポート壁面の一部に沿う強い流れを有する不均一な気流が生じ、気流の強い流れがポート壁面に沿って燃焼室内に吸入され、燃焼室内にスワール流やタンブル流が生じる。
ここで、少なくとも一組の吸入気ポートのスロットルバルブ軸の軸線が交差しているので、これら2つのスロットルバルブのうち、一方を低開度で開くときに生じるスワール流およびタンブル流と、他方を低開度で開くときに生じるスワール流およびタンブル流とが異なる。そして、この2つの吸入気ポートに設けられたスロットルバルブはそれぞれが独立して駆動するので、燃焼室内のスワール流およびタンブル流を調整できる。
これにより、各ポートにそれぞれ一つのスロットルバルブを設けただけの簡単な構造で燃焼室内のスワール流およびタンブル流を制御できる。
【0010】
一組のスロットルバルブ軸の軸線を直交させれば、2つの不均一な気流の流れが強い箇所が重複することがないので、効率よくスワール流、タンブル流を発生させることができる。
スロットルバルブの開口の一側に拡開部を設け、スロットルバルブ低開度での拡開部側の吸入気を制限すれば、気流がより不均一となり、スロットルバルブ低開度で強いスワール流やタンブル流を発生させることができる。
それぞれのスロットルバルブがモータによって駆動されていれば、各スロットルバルブの開度を正確に制御でき、スワール流およびタンブル流の強さや比率を正確に制御できる。
【0011】
スロットルバルブは内燃機関の低回転から高回転になるにつれて、スワール燃焼、タンブル燃焼、通常燃焼に順次切り換えられれば、内燃機関の燃焼効率を向上させることができる。
スワール発生側のスロットルバルブは、シリンダ外側寄りのポート壁面に沿って吸入気が流れるようにすれば、シリンダ外側の流れが強い気流を燃焼室に導入できるので、より強力なスワール流を発生させることができる。
タンブル発生側のスロットルバルブは、ポート軸線に対して外周側のポート壁面に沿って吸入気が流れるようにすれば、ポート軸線に対して外周側の流れが強い気流を燃焼室に導入できるので、より強力なタンブル流を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係るエンジンを搭載した自動二輪車の左側面図である。
【図2】エンジンの一部断面図である。
【図3】シリンダヘッドの一部省略背面図である。
【図4】図2におけるスロットルボディのIV−IV断面図である。
【図5】(A)は低回転時のスロットルボディおよびエンジンの右側吸気通路近傍の断面図、(B)は低回転時の右側および左側の吸気通路を模式的に示す図である。
【図6】(A)は中回転時のスロットルボディおよびエンジンの右側吸気通路近傍の断面図、(B)は中回転時の右側および左側の吸気通路を模式的に示す図である。
【図7】(A)は高回転時のスロットルボディおよびエンジンの右側吸気通路近傍の断面図、(B)は低回転時の右側および左側の吸気通路を模式的に示す図である。
【図8】エンジンの燃焼状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印FRは車両前方を、矢印LHは車両左方を、矢印UPは車両上方をそれぞれ示す。
図1は、本発明に係る内燃機関を搭載した自動二輪車1の左側面図である。自動二輪車1は、車体フレーム2を備える。車体フレーム2の前端部に位置するヘッドパイプ3には、前輪4を軸支する左右のフロントフォーク5がステアリングステム6を介して操向可能に枢支される。ステアリングステム6の上部には、転舵用のバーハンドル7が取り付けられる。
【0014】
ヘッドパイプ3には、斜め下後方に延びる一本のメインチューブ8の前端部が結合されている。メインチューブ8の後端部には左右のピボットプレート10が接合され、該左右のピボットプレート10には後輪11を軸支するスイングアーム12の前端部が揺動可能に枢支される。メインチューブ8の後部には、斜め上後方へ延びる左右のシートフレーム13の前端部が接合され、該左右のシートフレーム13の前後中間部とスイングアーム12の左右アーム後端部との間には、それぞれ左右のリアクッション14が配置される。左右のシートフレーム13の上方には、運転者用及び後部同乗者用の座面を前後に有する前記シート9が配置される。なお、図中符号15は運転者用のステップを、符号16は後部同乗者用のステップをそれぞれ示す。
【0015】
車体フレーム2の中央下部には、内燃機関であるエンジン20が配置される。エンジン20は、クランク軸線が車幅方向(左右方向)に沿い、大きく前傾した空冷単気筒エンジンであり、クランクケース21と、クランクケース21の前端部から前方に延びるシリンダ部22とからなる。エンジン20は、クランクケース21の後部上下が左右のピボットプレート10に支持されると共に、クランクケース21の上部がエンジンハンガ8aを介してメインチューブ8の前後中間部に支持されることで、車体フレーム2に懸架される。
【0016】
シリンダ部22の上面には、スロットルボディ26が接続され、このスロットルボディ26にはメインチューブ8前部下側に支持されたエアクリーナケース26aが接続される。シリンダ部22の下面には、排気管27が接続される。排気管27は、シリンダ部22下方で一端前方に屈曲した後に後方へ折り返して延び、エンジン20後方でサイレンサ27aに接続される。排気管27においてシリンダ部22の下方に位置する部位には、排ガス浄化用の触媒コンバータ28が設けられる。
クランクケース21後部左側にはドライブスプロケット32が設けられている。このドライブスプロケット32には、クランクケース21内のクラッチ及び変速機を介して、エンジン20の回転動力が出力される。ドライブスプロケット32と後輪11左側のドリブンスプロケット34とにはドライブチェーン33が掛け回されており、エンジン20の回転動力はドライブスプロケット32からドライブチェーン33およびドリブンスプロケット34を介して後輪11に伝達される。
【0017】
車体フレーム2の前部、エンジン20のシリンダ部22、スロットルボディ26、及びエアクリーナケース26a等は、合成樹脂製の前部車体カバー35により覆われる。前部車体カバー35は、運転者の脚部を前方からの風圧等から保護するレッグシールドも兼ねる。また、車体フレーム2の後部は、同じく合成樹脂製の後部車体カバー36により覆われる。この後部車体カバー36は、左右のシートフレーム13と共にシート9を支持する。後部車体カバー36内には、シート9下に位置する物品収納箱37が配置され、該物品収納箱37の前部下側には、左右のシートフレーム13の前部に支持される燃料タンク38が配置される。
【0018】
次にエンジン20について詳細に説明する。
図2はエンジンの一部断面図である。尚、スロットルボディ26の配置に関し図1のものと一部不整合があるが、この部位に関し図1は概略図とする。
図2に示すように、エンジン20は、クランクケース21と、シリンダ部22とを備えている。シリンダ部22は、クランクケース21に連設されたシリンダブロック39と、シリンダブロック39の前側に設けられたシリンダヘッド40と、シリンダヘッド40の前側を覆うシリンダヘッドカバー41とからなる。
シリンダブロック39には、シリンダ室42が形成されており、このシリンダ室42内には、ピストン43が摺動自在に嵌め込まれている。ピストン43はコンロッド44を介して、クランクケース21に回転自在に支持されたクランクシャフト45に連結されており、ピストン43の往復動がクランクシャフト45の回転動に変換される。
ピストン43のピストン頂面46、シリンダ室42の側壁47、およびシリンダヘッド40で囲まれた部分は、燃焼室49を形成している。
【0019】
図2、図3に示すように、シリンダヘッド40の上部には、第1吸気ポート51および第2吸気ポート52が左右に並んで形成されている。第1吸気ポート51および第2吸気ポート52はそれぞれ弓状に湾曲し、燃焼室49とシリンダヘッド上面50とを連通する。第1吸気ポート51の一端はシリンダヘッド後面48の燃焼室前壁部48aの左上部に第1吸気口53を形成し、他端はシリンダヘッド上面50の左部に第1吸気接続口54を形成する。第2吸気ポート52の一端はシリンダヘッド後面48の燃焼室前壁部48aの右上部に第2吸気口55を形成し、他端はシリンダヘッド上面50の右部に第2吸気接続口56を形成する。
【0020】
シリンダヘッド40の下部には、燃焼室49とシリンダヘッド下面57とを連通する排気ポート58が形成されている。排気ポート58は燃焼室49側で二股に分かれ、一方が燃焼室前壁部48aの左下部に第1排気口60を形成し、他方が燃焼室前壁部48aの右下部に第2排気口62を形成する。排気ポート58はシリンダヘッド下面57側では合流し、シリンダヘッド下面57に排気接続口61を形成する。燃焼室前壁部48aの中央部には、点火プラグ孔59が設けられ、この点火プラグ孔59に点火プラグ(不図示)が配置される。
【0021】
第1吸気ポート51および第2吸気ポート52には、それぞれ第1吸気口53および第2吸気口55を開閉する第1吸気バルブ(不図示)および第2吸気バルブ64が設けられている。また排気ポート58には、第1排気口60および第2排気口62を開閉する第1排気バルブ(不図示)および第2排気バルブ65が設けられている。
図2に示すように、第2吸気バルブ64は、第2吸気口55に沿う傘部66と、傘部66から前方上方へ延びる棒状のステム部67とを備え、第2排気バルブ65は、第2排気口62に沿う傘部68と、傘部68から前方下方へ延びる棒状のステム部69とを備えている。
【0022】
第2吸気バルブ64のステム部67および第2排気バルブ65のステム部69は、それぞれシリンダヘッド40に設けられたバルブガイド70に摺動自在に挿通され、それぞれの先端が、シリンダヘッド40の動弁室72内に突出している。
そして、第2吸気バルブ64のステム部67の先端および第2排気バルブ65のステム部69の先端には、それぞれリテーナ73,74が取り付けられ、このリテーナ73,74とシリンダヘッド40との間にバルブスプリング75,76が設けられている。
すなわち、第2吸気バルブ64および第2排気バルブ65は、それぞれリテーナ73,74およびバルブスプリング75,76を介してシリンダヘッド40に支持され、バルブスプリング75,76により、第2吸気口55および第2排気口62を閉じる方向に付勢されている。
【0023】
また、図示を省略するが、第1吸気バルブは、第1吸気口53(図3参照)に沿う傘部と傘部から前方上方へ延びる棒状のステム部とを備え、第1排気バルブは、第1排気口60(図3参照)に沿う傘部と傘部から前方下方へ延びる棒状のステム部とを備えている。第1吸気バルブのステム部および第1排気バルブのステム部は、それぞれシリンダヘッド40に設けられたバルブガイドに摺動自在に挿通され、それぞれの先端が、シリンダヘッド40の動弁室72内に突出している。そして、第1吸気バルブのステム部の先端および第1排気バルブのステム部の先端には、それぞれリテーナが取り付けられ、このリテーナとシリンダヘッド40との間にバルブスプリングが設けられている。すなわち、第1吸気バルブおよび第1排気バルブは、それぞれリテーナおよびバルブスプリングを介してシリンダヘッド40に支持され、バルブスプリングにより、第1吸気口53(図3参照)および第1排気口60(図3参照)を閉じる方向に付勢されている。
【0024】
図2に示すように、シリンダヘッド40の動弁室72の中央部には、クランクシャフト45と平行に延びる単一のカムシャフト77が配置されている。カムシャフト77はシリンダヘッド40に回転自在に支持され、その長手方向中間部に2つの吸気カム78及び2つの排気カム79を一体に備えている。カムシャフト77には、カムチェーン(不図示)を介してクランクシャフト45の回転が伝達される。
また、シリンダヘッド40の動弁室72のシリンダヘッドカバー41側には、吸気側ロッカーアームシャフト80及び排気側ロッカーアームシャフト81が設けられている。
【0025】
吸気側ロッカーアームシャフト80には、2つの吸気カム78と、第1吸気バルブ(不図示)のステム部(不図示)先端および第2吸気バルブ64のステム部67先端に跨って延びる2つの吸気側ロッカーアーム82の中間部が揺動自在に支持されている。
排気側ロッカーアームシャフト81には、2つの排気カム79と、第1排気バルブ(不図示)のステム部(不図示)先端および第2排気バルブ65のステム部69の先端とに跨って延びる2本の排気側ロッカーアーム83の中間部が揺動自在に支持される。
そして、カムシャフト77の回転に伴い各カムの外周パターンに応じて各ロッカーアーム82,83が揺動することで、各バルブが往復動し、各吸気口53,55および各排気口60,62を開閉させる。
【0026】
図2に示すように、シリンダヘッド上面50には、スロットルボディ26が設けられている。図4は、図2のIV−IV断面図(スロットルバルブ軸で切った断面図。)である。図2および図4に示すように、スロットルボディ26は、ケース体84と、第1スロットルバルブ85と、第2スロットルバルブ86と、第1モータ87と、第2モータ88と、第1インジェクタ(不図示)と、第2インジェクタ89とを備えている。
【0027】
ケース体84には、第1吸気通路90および第2吸気通路91が左右に並んで形成されている。第1吸気通路90は、その入口(不図示)がエアクリーナケース26a(図1参照)に接続され、入口から前下方へ延びて下方へ湾曲し、その出口(不図示)がシリンダヘッド上面50の第1吸気接続口54に接続されている。また、第2吸気通路91は、その入口95がエアクリーナケース26a(図1参照)に接続され、入口95から前下方へ延びて下方へ湾曲し、その出口93がシリンダヘッド上面50の第2吸気接続口56に接続されている。
すなわち、スロットルボディ26の第1吸気通路90とシリンダヘッド40の第1吸気ポート51とは連通して、側面視で弓状に湾曲した左側吸気通路92(図4B参照)を構成し、スロットルボディ26の第2吸気通路91とシリンダヘッド40の第2吸気ポート52とは連通して、側面視で弓状に湾曲した右側吸気通路94を構成している。これにより、エアクリーナを通った空気は、左側吸気通路92または右側吸気通路94を通り、燃焼室49に供給される。
【0028】
第1吸気通路90の出口(不図示)および第2吸気通路91の出口93近傍には、それぞれ第1インジェクタ(不図示)および第2インジェクタ89が設けられている。第1インジェクタ(不図示)および第2インジェクタ89は、それぞれ、第1吸気通路90および第2吸気通路91から第1吸気ポート51および第2吸気ポート52に流れる空気に微粒子化した(霧状にした)燃料を噴射する。第1インジェクタ(不図示)および第2インジェクタ89は、第1吸気バルブ(不図示)の傘部(不図示)および第2吸気バルブ64の傘部66に向かって燃料を直接噴射可能な位置に設けられている。
【0029】
第1吸気通路90および第2吸気通路91の各入口側には、それぞれ第1スロットルバルブ85および第2スロットルバルブ86が設けられている。
第1スロットルバルブ85および第2スロットルバルブ86は、それぞれ第1吸気通路90および第2吸気通路91を開閉して、燃焼室49に供給される空気量を調整するバタフライバルブである。第1スロットルバルブ85および第2スロットルバルブ86は、それぞれ、弁体96,97と、弁体96,97に一体に設けられた弁軸98,99とを備え、それぞれの弁軸98,99が、ケース体84に回動自在に支持されている。第1スロットルバルブ85の弁軸98の軸線100は、第2スロットルバルブ86の弁軸99の軸線101と直交している。
第1スロットルバルブ85の弁軸98および第2スロットルバルブ86の弁軸99には、図示しないギヤを介してそれぞれ第1モータ87および第2モータ88が連結されている。第1スロットルバルブ85および第2スロットルバルブ86は、第1モータ87および第2モータ88によりそれぞれ独立に駆動される。
【0030】
図8は本実施形態に係るエンジン20の燃焼状態の説明図である。縦軸がタンブル比を示し、横軸がスワール比を示し。スワール比とは、燃焼室49内に生じるスワール流Sの回転数をエンジン回転数で除した値であり、タンブル比とはタンブル流Tの回転数をエンジン回転数で除した値である。また、図中の数字は燃焼下限界空燃比を示し、図中の曲線は燃焼下限界空燃比の等高線を示している。
エンジン20の低回転モードにおける燃焼状態は、点104で示される。点104では、スワール比が3に近く、強いスワール流Sが生じている。また、燃焼下限界空燃比も23付近と高い。中回転モードにおける燃焼状態は、点105で示される。点105では、スワール比は小さいが、タンブル比が2を超えており、強いタンブル流Tが生じている。また、燃焼下限界空燃比も22付近と高い。
移行モードにおける燃焼状態は、点104から点105への移行で示される。
高回転モードにおける燃焼状態は、点106で示される。点106では、スワール比、タンブル比ともに小さく、燃焼下限界空燃比も20を下回っている。
【0031】
ところで、スロットルボディ26およびエンジン20は、第1スロットルバルブ85を低開度として燃焼室49に空気を吸入することで、燃焼室49内に吸入される空気に、シリンダ室42の円周方向の渦流であるスワール流Sを発生可能に構成されている。
具体的には、図4および図5に示すように、第1スロットルバルブ85の弁軸98の軸線100は、第1吸気通路90の中心軸線107と直交して車体左右方向と垂直な面内で前傾して延びている。そして、第1スロットルバルブ85は、図5(A)中矢印109で示すように前上方から見たときには、弁体96が左右方向に略沿う場合に閉状態となり、弁体96が時計回りに回動することで開状態となるように構成されている。すなわち、図5(B)に示すように、第1スロットルバルブ85が低開度で開いて空気が流れる場合には、第1スロットルバルブ85の左方を流れる空気の流速が、右方を流れる空気の流速より速くなり、第1吸気通路90の出口側に左側に強い流れを有する不均一な気流が生じる。
【0032】
さらに、第1吸気通路90において、第1スロットルバルブ85の右方入口側には、吸気通路の断面形状変化部である第1拡開部102が設けられている。この第1拡開部102は、第1スロットルバルブ85を回動させたときの弁体96外縁の軌跡に沿う形状に形成されており、第1スロットルバルブ85が低開度のときには、この第1拡開部102により第1吸気通路90右側の空気の流れが制限される。すなわち、第1スロットルバルブ85が低開度で開いて空気が流れる場合には、第1吸気通路90の出口側に、左側に特に強い流れを有する不均一な気流が生じる。
【0033】
そして、上述したように、第1吸気通路90はシリンダヘッド40の上部左側に設けられた第1吸気ポート51と連通し、第1吸気ポート51は燃焼室前壁部48aの左上部に形成された第1吸気口53で燃焼室49と連通している。
これにより、第1スロットルバルブ85を低開度として燃焼室49に空気が吸入される場合には、第1スロットルバルブ85および第1拡開部102により生成された左側に強い流れを有する不均一な気流が、第1吸気通路90および第1吸気ポート51を通り第1吸気口53から燃焼室49内に入る。このとき、気流の強い流れは、第1吸気通路90および第1吸気ポート51の左側に沿って第1吸気口53の左側からシリンダ室42に導入され、シリンダ室42の側壁47に沿って進行してシリンダ室42の円周方向に旋回する。これにより、燃焼室49内に吸入される空気に強いスワール流Sが生成される。
【0034】
また、スロットルボディ26およびエンジン20は、第2スロットルバルブ86を低開度として燃焼室49に空気を吸入することで、燃焼室49内に吸入される空気に、シリンダ室42の軸方向の渦流であるタンブル流Tを発生可能に構成されている。
具体的には、図4および図6に示すように、第2スロットルバルブ86の弁軸99の軸線101は、第1吸気通路90の中心軸線108と直交して車体左右方向に延びている。そして、第2スロットルバルブ86は、右側面視では、弁体97が第1吸気通路90の中心軸線108と略直交する場合に閉状態となり、弁体97が時計回りに回動することで開状態となるように構成されている。
すなわち、図6Aに示すように、第2スロットルバルブ86が低開度で開いた場合には、第2スロットルバルブ86の上方すなわち第2吸気通路91の湾曲外側を流れる空気の流速が、下方すなわち第2吸気通路91の湾曲内側を流れる空気の流速より速くなり、第2吸気通路91の出口側に湾曲外側に強い流れを有する不均一な気流が生じる。
【0035】
さらに、第2吸気通路91において、第2スロットルバルブ86の下方入口側(湾曲内側)には、吸気通路の断面形状変化部である第2拡開部103が設けられている。この第2拡開部103は、第2スロットルバルブ86を回動させたときの弁体97外縁の軌跡に沿う形状に形成されており、第2スロットルバルブ86が低開度のときには、この第2拡開部103により第2吸気通路91の下側すなわち湾曲内側の空気の流量が制限される。すなわち、第2スロットルバルブ86が低開度で開いて空気が流れる場合には、第2吸気通路91の出口側に、湾曲外側に特に強い流れを有する不均一な気流が生じる。
【0036】
そして、上述したように、第2吸気通路91はシリンダヘッド40の上部右側に設けられた第2吸気ポート52と連通し、第2吸気ポート52は燃焼室前壁部48aの右上部に形成された第2吸気口55で燃焼室49と連通している。
これにより、第2スロットルバルブ86を低開度として燃焼室49に空気が吸入される場合には、第2スロットルバルブ86および第2拡開部103により生成された湾曲外側に強い流れを有する不均一な気流が、第2吸気通路91および第2吸気ポート52を通り第2吸気口55から燃焼室49内に入る。このとき、気流の強い流れは、第2吸気通路91および第2吸気ポート52の湾曲外側に沿って第2吸気口55の下側からシリンダ室42に導入され、後方(ピストン43側)へ向かった後、ピストン頂面46の中央付近に衝突して前方(シリンダヘッド40側)へ向きを変え、シリンダ室42の軸方向に旋回する。これにより、燃焼室49内に吸入される空気に強いタンブル流Tが生成される。
【0037】
この実施の形態では、いわゆるスロットル・バイ・ワイヤ(TBW)方式のスロットルシステムが採用されている。この方式のスロットルシステムは、前述した第1スロットルバルブ85、第2スロットルバルブ86を、ECUにより制御された第1モータ87、および第2モータ88により開閉制御している。
このスロットルシステムは、第1スロットルバルブ85および第2スロットルバルブ86と、第1モータ87および第2モータ88と、第1モータ87および第2モータ88を制御する図示しないECUと、ECUにユーザのアクセル操作を示す信号を出力するアクセル開度センサ(不図示)と、ECUにスロットルバルブ開度を示す信号を出力するスロットルバルブ開度センサ(不図示)とを備え、ユーザのアクセル操作量や操作速度に応じて、燃焼室49への供給空気量を制御する。
【0038】
また、スロットルシステムは、上述した構成の他に、ECUにエンジン回転数を示す信号を出力するクランク角センサ(不図示)を備え、エンジン回転数に応じて、燃焼室49に供給される空気のスワール流Sおよびタンブル流Tを制御する。
以下、このスワール流Sおよびタンブル流Tの制御について説明する。
ECUは、第1スロットルバルブ85および第2スロットルバルブ86の開閉を制御する4つの制御モード、すなわち、低回転モード、移行モード、中回転モード、高回転モードを記憶している。
【0039】
ECUは、エンジン回転数の閾値として、所定の低回転閾値と、中回転閾値を記憶しており、クランク角センサ(不図示)の信号が示すエンジン回転数が低回転閾値未満すなわち低回転のときには低回転モードで各スロットルバルブの開閉を制御し、低回転閾値未満と低回転閾値を超える値との間を移行するときには移行モードで各スロットルバルブの開閉を制御し、低回転閾値を超えかつ中回転閾値未満すなわち中回転のときには中回転モードで各スロットルバルブの開閉を制御し、中回転閾値以上すなわち高回転のときには高回転モードで各スロットルバルブの開閉を制御する。
【0040】
低回転モードでは、ECUは、第2スロットルバルブ86を全閉状態としたまま、第1スロットルバルブ85だけを開閉する。
例えば、アクセル全閉の状態からアクセルを開けていく操作が入力された場合には、ECUは、第2スロットルバルブ86および第1スロットルバルブ85の両方を全閉とした状態から、図5に示すように、第2スロットルバルブ86を全閉としたまま、第1スロットルバルブ85だけを開いていき、エンジン回転数をアイドル回転数から上昇させていく。第1スロットルバルブ85が所定開度だけ開くと、エンジン回転数が低回転閾値近傍となる。この所定開度が低回転モードにおける第1スロットルバルブ85の最大開度であるが、この最大開度は低開度である。
【0041】
このように低回転モードでは、第2スロットルバルブ86が全閉のまま、第1スロットルバルブ85だけが開閉される。したがって、吸気行程で第1吸気口53および第2吸気口55が開くと、空気が、左側吸気通路92を通って燃焼室49内に吸入される。
ここで、低回転モードでは、第1スロットルバルブ85の開度が低開度であるため、上述したように燃焼室49内に強いスワール流Sが生成される。これにより、インジェクタから燃焼室49内に噴射された燃料がスワール流Sに巻込まれて燃焼室49内の混合気が均一となるうえ、スワール流Sにより火炎速度が速くなり、いわゆるスワール燃焼が生じて燃焼が促進される。
【0042】
移行モードでは、ECUは、空気供給量が一定となるように、第1スロットルバルブ85と第2スロットルバルブ86とを連動させて開閉する。
例えば、エンジン回転数が低回転閾値未満であり低回転閾値近傍のときにアクセルを連続的に開けていく操作が入力された場合には、ECUは、燃焼室49に供給される空気量が一定と成るように、図示は省略したが、第1スロットルバルブ85を、低回転モードにおける最大開度から閉じていくと同時に、第2スロットルバルブ86を開いていく。すなわち、移行モード開始時には、第1スロットルバルブ85が低開度で開き、第2スロットルバルブ86が全閉であるが、移行モード終了時には、第1スロットルバルブ85が全閉となり、第2スロットルバルブ86が低開度で開く。
【0043】
中回転モードでは、ECUは、第2スロットルバルブ86を低開度で開いたまま保持し、第1スロットルバルブ85を開閉する。
例えば、エンジン回転数が低回転閾値を超えたときにアクセルを連続的に開けていく操作が入力された場合には、ECUは、図6に示すように、第2スロットルバルブ86を低開度で開いたまま、第1スロットルバルブ85だけを全閉から開いていき、エンジン回転数を低回転閾値から上昇させていく。第1スロットルバルブ85が全開のときエンジン回転数が中回転閾値近傍となる。
【0044】
このように中回転モードでは、第2スロットルバルブ86は低開度のまま、第1スロットルバルブ85が開閉される。したがって、吸気行程で第1吸気口53および第2吸気口55が開くと、空気が、左側吸気通路92および右側吸気通路94を通って燃焼室49内に吸入される。
ここで、第2スロットルバルブ86は低開度であるため、上述したように燃焼室49内に強いタンブル流Tが生成される。これにより、インジェクタから燃焼室49内に噴射された燃料がタンブル流Tに巻込まれて空気との混合が促進され、また圧縮行程の後半でタンブル流Tが崩壊する際には、ガス流動や乱れが強まって更に混合が促進され、燃焼室49内の混合気が均一となるうえ、タンブル流Tにより火炎速度が速くなり、いわゆるタンブル燃焼が生じて燃焼が促進される。
【0045】
高回転モードでは、ECUは、第1スロットルバルブ85を全開のまま保持し、第2スロットルバルブ86を開閉する。
例えば、エンジン回転数が中回転閾値を超えたときにアクセルを連続的に開けていく操作が入力された場合には、図7に示すように、第1スロットルバルブ85を全開としたまま、第2スロットルバルブ86を開いていき、中回転閾値からエンジン回転数を上昇させていく。第1スロットルバルブ85および第2スロットルバルブ86が全開のとき、エンジン回転数は上限値近傍となる。
【0046】
高回転モードでは、第1スロットルバルブ85は全開のまま、第2スロットルバルブ86が低開度からさらに開かれる。したがって、吸気行程で第1吸気口53および第2吸気口55が開くと、空気が、左側吸気通路92および右側吸気通路94を通って燃焼室49内に吸入される。
ここで、左側吸気通路92の第1スロットルバルブ85は全開であり、右側吸気通路94の第2スロットルバルブ86の開度も大きいため、吸気行程では、多量の空気が2つの吸気ポートにより迅速且つ円滑にシリンダ内に吸入されて、いわゆる通常燃焼が生じて大きいエンジン出力が得られる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態では、エンジン20の第1吸気バルブ(不図示)から上流に延びる第1吸気ポート51にスロットルボディ26の第1吸気通路90が連通して左側吸気通路92を構成し、エンジン20の第2吸気バルブ64から上流に延びる第2吸気ポート52にスロットルボディ26の第2吸気通路91が連通して右側吸気通路94を構成している。左側吸気通路92には第1スロットルバルブ85が設けられ、第1スロットルバルブ85の軸線100は、車体左右方向と垂直な面内で前傾するように延在し、第1スロットルバルブ85を低開度としたときに左側吸気通路92に左右不均一な気流を生じて燃焼室49内にスワール流Sを発生可能になっている。
【0048】
右側吸気通路94には、第2スロットルバルブ86が設けられており、第2スロットルバルブ86の軸線101は、車体左右方向に延在し、第2スロットルバルブ86を低開度としたときに上下不均一な気流を生じて燃焼室49内にタンブル流Tを発生可能になっている。そして、第1スロットルバルブ85および第2スロットルバルブ86はそれぞれ独立して駆動されるので、左側吸気通路92および右側吸気通路94にそれぞれ一つのバタフライバルブを設けただけの簡単な構造で、燃焼室49内におけるスワール流Sおよびタンブル流Tの生成を制御できる。なお、第2スロットルバルブ86の軸線101は第1スロットルバルブ85の軸線100と直交するので、不均一な気流の流れが強い箇所が重複することがない。
【0049】
また、本実施形態では、第1吸気通路90において、第1スロットルバルブ85の右方入口側に、第1拡開部102を設け、第1スロットルバルブ85が低開度のときの第1吸気通路90右側の空気の流れを制限している。また、第2吸気通路91において、第2スロットルバルブ86の下方入口側(湾曲内側)に、第2拡開部103を設け、第2スロットルバルブ86が低開度のときの第2吸気通路91の下側すなわち湾曲内側の空気の流れを制限している。これにより、各スロットルバルブの下流に生成される不均一な気流の強い部分をさらに強めることができ、各スロットルバルブを低開度で開くことで強いスワール流Sやタンブル流Tを発生させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、第1スロットルバルブ85および第2スロットルバルブ86は、それぞれ第1モータ87および第2モータ88により駆動されるので、各スロットルバルブの開度を正確に制御でき、スワール流Sやタンブル流Tの生成を正確に制御できる。
【0051】
また、本実施形態では、ECUがエンジン回転数に応じて各スロットルバルブの開閉を制御し、エンジン回転数が低回転のときには燃焼室49内に強いスワール流Sを発生させて燃焼状態をスワール燃焼とし、エンジン回転数が中回転のときには燃焼室49内強いタンブル流Tを発生させて燃焼状態をタンブル燃焼とし、エンジン回転数が高回転のときには、燃焼室49内に多量の空気を迅速且つ円滑に供給して燃焼状態を通常燃焼とする。そして、エンジン回転数が低回転から高回転になるにつれて、燃焼状態をスワール燃焼、タンブル燃焼、通常燃焼に順次切り換えるので、エンジン20の燃焼効率を向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、第1スロットルバルブ85を低開度としたときに、第1スロットルバルブ85および第1拡開部102により、第1吸気通路90に左側に強い流れを有する不均一な気流が生じ、この気流の強い流れは、第1吸気ポート51の左側に沿って流れる。そして、第1吸気ポート51は燃焼室前壁部48aの左上部に形成された第1吸気口53で燃焼室49と連通しているので、気流の強い流れを、第1吸気口53の左側からシリンダ室42の側壁47に沿って導入できる。これにより、シリンダ室42に入った気流の強い流れを、シリンダ室42の側壁47に沿って進行させてシリンダ室42の円周方向に旋回させることができ、より強力なスワール流Sを発生させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、第2スロットルバルブ86を低開度としたときに、第2スロットルバルブ86および第2拡開部103により第2吸気通路91に湾曲外側に強い流れを有する不均一な気流が生じ、この気流の強い流れは、第2吸気ポート52の湾曲外側に沿って流れる。そして、第2吸気ポート52は燃焼室前壁部48aの右上部に形成された第2吸気口55で燃焼室49と連通しているので、気流の強い流れを、第2吸気口55の下側から後方(ピストン43側)に向けて導入できる。これにより、シリンダ室42に入った気流の強い流れを、ピストン頂面46の中央付近に衝突させて前方(シリンダヘッド40側)へ向きを変えさせ、シリンダ室42の軸方向に旋回させることができ、より強力なタンブル流Tを発生させることができる。
【0054】
また、本実施形態では、第1スロットルバルブ85および第2スロットルバルブ86によりスワール流Sおよびタンブル流Tを制御可能としたので、スワールコントロールバルブやタンブルコントロールバルブが不要となり、部品数を削減するとともにスロットルボディ26をコンパクト化できる。また、本実施形態では、第1インジェクタ(不図示)および第2インジェクタ89をスロットルボディ26に配置したので、シリンダヘッド40をコンパクトな構造とできる。
【0055】
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形が可能である。
例えば、上述した実施の形態では、第1スロットルバルブ85の軸線100を、第1吸気通路90の中心軸線107と直交して車体左右方向と垂直な面内で前傾するように延在させ、第2スロットルバルブ86の軸線101を、第1吸気通路90の中心軸線108と直交して車体左右方向に延在させることで、第1スロットルバルブ85を低開度としたときに燃焼室49内にスワール流Sを発生可能に、また第2スロットルバルブ86を低開度としたときに燃焼室49内にタンブル流Tを発生可能な構成としたが、各スロットルバルブの軸線の向きはこれに限定されず、例えば、各スロットルバルブを、各スロットルバルブの軸線が正面視でV字状をなすように設けても良い。この構成によれば、一方のスロットルバルブだけを低開度で開くことで、吸気通路内の左右いずれかに強い流れを有する空気の流れを生成して、燃焼室49内にスワール流Sを生成できる。また、両方のスロットルバルブを低開度で開くことで、吸気通路内の湾曲外側に強い流れを有する空気の流れを生成して燃焼室49内にタンブル流Tを生成できる。
【0056】
また、上述した実施の形態では、第1吸気通路90において、第1スロットルバルブ85の右方入口側に、第1拡開部102を設け、第1スロットルバルブ85が低開度のときの第1吸気通路90右側の空気の流れを制限し、第2吸気通路91において、第2スロットルバルブ86の下方入口側(湾曲内側)に、第2拡開部103を設け、第2スロットルバルブ86が低開度のときの第2吸気通路91の下側すなわち湾曲内側の空気の流れを制限し、各スロットルバルブの下流に生成される不均一な気流の強い部分をさらに強める構成としたが、不均一な気流の強い部分を強める方法はこれに限定されず、例えば、各吸気通路におけるスロットルバルブの下流の一側に突起を設けても良い。この構成によれば、突起を設けた一側の流速が低くなるので、不均一な気流の強い部分をさらに強めることができる。また、例えば各スロットルバルブの裏面に遮蔽物を取り付けても良い。
また、上述した実施の形態では、単気筒エンジンを例示したが、エンジンの気筒数はこれに限定されず、多気筒エンジンであっても良い。さらに、上述した実施の形態では、燃料噴射位置を吸気バルブの傘部とした構成を例示したが、燃料噴射位置はこれに限定されず、筒内噴射いわゆる直噴であっても良い。また、本実施の形態では、各スロットルバルブを駆動する各モータを、ケース体(84)に一体に取り付けているが、各モータを、例えばケース体(84)から離れた場所に配置し、リンクやワイヤなどを介して、各スロットルバルブを駆動しても良い。
【符号の説明】
【0057】
20 エンジン(内燃機関)
26 スロットルボディ
42 シリンダ室(シリンダ)
51 第1吸気ポート(吸入気ポート)
52 第2吸気ポート(吸入気ポート)
64 第2吸気バルブ
85 第1スロットルバルブ
86 第2スロットルバルブ
87 第1モータ
88 第2モータ
89 第2インジェクタ
98,99 弁軸(バルブ軸)
100,101 軸線
102 第1拡開部
103 第2拡開部
107,108 中心軸線(ポート軸線)
S スワール流
T タンブル流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の吸気バルブ(64)からそれぞれ上流に延びる吸入気ポート(51,52)と、
吸入気ポート(51,52)の上流に設けられるスロットルバルブ(85,86)と、を備える内燃機関において、
各吸入気ポート(51,52)に対してそれぞれスロットルバルブ(85,86)が設けられるとともに、少なくとも一組のスロットルバルブ軸(98,99)の軸線(100,101)が交差し、それぞれが独立して駆動することを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記一組のスロットルバルブ軸(98,99)の軸線(100,101)が直交することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記スロットルバルブ(85,86)の開口の一側に拡開部(102,103)を設け、スロットルバルブ(85,86)低開度での拡開部(102,103)側の吸入気を制限したことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関。
【請求項4】
それぞれのスロットルバルブ(85,86)はモータ(87,88)によって独立して駆動されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記スロットルバルブ(85,86)は内燃機関の低回転から高回転になるにつれて、スワール燃焼、タンブル燃焼、通常燃焼に順次切り換えられるように前記一組のスロットルバルブ軸(98,99)が駆動されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項6】
スワール発生側のスロットルバルブ(85)は、シリンダ(42)外側寄りのポート壁面に沿って吸入気が流れることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の内燃機関。
【請求項7】
タンブル発生側のスロットルバルブ(86)は、ポート軸線(108)に対して外周側のポート壁面に沿って吸入気が流れることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−207611(P2012−207611A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74872(P2011−74872)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】