内装具
【課題】基材を皮革で覆っている構成の内装具において、各皮革を基材に設置する際、各皮革の継ぎ目が曲がらずに見栄えが良い内装具を提供する。
【解決手段】基材3の表面を複数枚の皮革素材7、9で構成された被覆部材で覆っている内装具1において、被覆部材の接合部5に生成されている凹部11が、基材3の表面に形成されている凸部15でガイドされて位置決めされ、被覆部材で基材3を覆っている構成である内装具1である。
【解決手段】基材3の表面を複数枚の皮革素材7、9で構成された被覆部材で覆っている内装具1において、被覆部材の接合部5に生成されている凹部11が、基材3の表面に形成されている凸部15でガイドされて位置決めされ、被覆部材で基材3を覆っている構成である内装具1である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装具に係り、特に、基材の表面が複数の被覆部材で覆われているものに関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来のインストルメントパネル200の断面を示す図である。
【0003】
インストルメントパネル200は、基材201と、端部を折り返すことによって形成される重合部を具備した皮革202と、この皮革202と同様な重合部を具備した皮革203とを備えており、基材201に設けられている溝240に、皮革202の重合部と皮革203の重合部とが入り込んだ状態で、基材201を各皮革202、203で覆っている。溝240の深さt21と、皮革202の重合部や皮革203の重合部のうちの折り返された部位の厚さt23とは、お互いがほぼ等しくなっている。
【0004】
なお、従来の技術に関する文献として、たとえば、特許文献1を掲げることができる。
【特許文献1】特開2002−79852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、皮革202の重合部と皮革203の重合部とが、溝240に確実に入り込むようにすべく、従来のインストルメントパネル200では、重合部の幅B21よりも、溝240の幅B23を広く形成してあり、溝240の幅方向において、各皮革202、203と、溝240との間に隙間ができている。
【0006】
したがって、基材201に各皮革(重合部の端部がお互いに接続されている皮革)202、203を設置する(組み立てる)ときに、溝240(基材201)に対して各皮革202、203の位置ずれが発生し、各皮革202、203の継ぎ目(図11の紙面に直角な方向に延びている継ぎ目)205が曲がってしまう場合(目標とする形状からずれてしまう場合)があるという問題がある。
【0007】
なお、前記問題は、インパネを組み立てる場合だけでなく、インパネと同様な構成の内装具(たとえば、自動車のドアの内側のパネル等)を組み立てる場合にも発生する問題である。
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、基材を皮革で覆っている構成の内装具において、各皮革を基材に設置する際、各皮革の継ぎ目が曲がらずに見栄えが良い内装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基材の表面を、複数枚の皮革素材で構成された被覆部材で覆っている内装具において、前記被覆部材の接合部に生成されている凹部が、前記基材の表面に形成されている凸部でガイドされて位置決めされ、前記被覆部材で前記基材を覆っている構成である内装具である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、表面に凸部を備えた基材と、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第1の部材と、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第2の部材とを、前記各重合部の各端縁がお互いに接するように接合して板状に形成された被覆部材とを有し、前記被覆部材の接合部に形成されている凹部に前記基材の凸部が入り込んだ状態で、前記基材を覆うようにして、前記被覆部材が前記基材に設けられている内装具である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第1の部材と、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第2の部材とを、前記各重合部の各端縁がお互いに接するように接合して板状に形成された被覆部材と、前記折り返された端縁部の厚さよりも深い深さでもしくはほぼ等しい深さで、また、前記接合されている各重合部の幅よりも広い幅でもしくはほぼ等しい幅で形成された帯状の溝を表面に備え、前記溝の幅方向の中間部に凸部を備えた基材とを有し、前記基材の表面に対して直交する方向から眺めた場合、前記基材の凸部が前記被覆部材の接合部に形成される線状の凹部から離れているにもかかわらず、前記凹部と前記凸部とがお互いに重なる状態で、または、前記被覆部材の接合部に形成される線状の凹部に前記基材の凸部が入り込んだ状態で、前記基材を覆うようにして、前記被覆部材が前記基材に設けられている内装具である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材を皮革で覆っている構成の内装具において、各皮革を基材に設置する際、各皮革の継ぎ目が曲がらずに見栄えが良い内装具を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るインストルメントパネル(インパネ)1の概略構成を示す図であり、図2は、図1におけるII−II断面を示す図である。なお、図1に示すインパネ1の表面は、平面状もしくは適宜の曲面形状になっている。
【0014】
インパネ1は、溝13を備えた基材3と、板状の各皮革7、9とを備えて構成されている。なお、本件明細書では、インパネ(自動車の運転席および助手席の前方に設置されるパネル)1を例に掲げて説明するが、ドアパネル(自動車のドアの内側に設置されるパネル)、自動車の屋根の内貼り、自動車のピラー(自動車の屋根の内貼りの桟)、自動車のシフトノブ、パーキングブレーキノブ、ドアの取手等の自動車の内装具、家具や部屋の壁等の室内の内装具にも、インパネ1と同様な構成を備えたものを適用することができる。
【0015】
インパネ1についてより詳しく説明する。
【0016】
板状の皮革(第1の部材)7と皮革(第2の部材)9とが、お互いが接合されていることによって、板状の被覆部材が構成されている。各皮革7、9の接合部は、インパネ1の製造上で、皮革を分割することが必要な場合だけに限らず、製造上分割の必要が無い場合においても設けられる場合がある。たとえば、インパネ1の意匠性を高めるために(美観を向上させるために)設けられる場合がある。
【0017】
皮革7は、板状の素材(皮革素材)の帯状の端縁部(所定の幅の端縁部)17を折り返すことによって形成された重合部を備えている。また、皮革9も皮革7と同様にして、板状の素材(皮革素材)の帯状の端縁部(所定の幅の端縁部)19を折り返すことによって形成された重合部を備えている。これらの重合部は、図2の紙面に対してたとえば直交する方向に延びている。
【0018】
なお、皮革7を構成している皮革素材の厚さと、皮革9を構成している皮革素材の厚さとは、お互いがほぼ等しくなっている。また、皮革7の帯状の端縁部(折り返されている端縁部)の幅と、皮革9の帯状の端縁部(折り返されている端縁部)の幅とは、お互いがほぼ等しくなっている。
【0019】
さらに、皮革7の重合部の端縁と皮革9の重合部の端縁とがお互いに接するように接合されている。この接合は、たとえば、糸25を用い各皮革7、9を縫うことによってなされている。皮革7の重合部は、糸21を用いて縫うことによって形成されており、皮革9の重合部も、皮革7の場合と同様にして糸23を用いて縫うことによって形成されている。糸21や23を用いることに代えてもしくは加えて接着剤を用いて重合部を形成してもよい。
【0020】
各皮革7、9の重合部の各端縁同士を接合することによって板状に形成された被覆部材の接合部(各皮革7、9の接合部;継ぎ目)5には、線状の凹部11が形成されている。凹部11も前記重合と同様にして、図2の紙面に対してたとえば直交する方向に延びている。
【0021】
基材3の表面には、溝13が形成されている。溝13も前記重合や凹部11と同様にして、図2の紙面に対してたとえば直交する方向に延びている。溝13の深さt1は、各皮革7、9の折り返された端縁部17、19の厚さt3よりも深くなっているが、溝13の深さt1と各皮革7、9の折り返された端縁部17、19の厚さt3とがお互いにほぼ等しくてもよい。
【0022】
溝13の幅B3は、皮革7、9の各重合部(お互いが糸25で接合されている重合部)の幅B1よりも広くなっているが、溝13の幅B3と皮革7、9の各重合部の幅B1とがお互いにほぼ等しくてもよい。
【0023】
溝13内には、凸部15が設けられている。凸部15は、たとえば一体成型されることによって基材3に一体的に設けられている。凸部15は、溝13の幅方向の中間部(たとえば、ほぼ中央部)で溝13の長手方向(図2の紙面に直交する方向)に延びて設けられている。凸部15の高さt5は、溝13の深さt1よりも低くなっているが、凸部15の高さt5と、溝13の深さt1とがお互いにほぼ等しいか、または、凸部15の高さt5が溝13の深さt1より高くなっていてもよい。
【0024】
凸部15の断面形状は、図2で示すように、たとえば、二等辺三角形状になっている。凸部15の頂角は、45°もしくは、45°よりも小さい角度であることが望ましい。凸部15の大きさは、各皮革7、9の接合部5に形成されている凹部11の大きさよりも僅かに小さくなっている。
【0025】
皮革7、9は、一方の面(重合部の折り返された端縁部17、19が存在している側の面)のうちで前記重合部から離れている面が、基材3の表面(溝13が形成されている面以外の面)に、接着剤や粘着剤等を用いて固定されている。したがって、皮革7、9の各重合部の折り返された端縁部17、19が基材3側を向いている。
【0026】
また、基材3の表面に対して直交する方向(図1の紙面に直角な方向)から眺めた場合、基材3の凸部15が被覆部材の接合部5に形成される線状の凹部11から離れているにもかかわらず(図2参照)、凹部11と凸部15とがお互いに重なっている。
【0027】
基材3に設置された被覆部材(各皮革7、9)の表面(基材3とは反対側の面)は、溝13や凸部15の影響を受けることなく、たとえば、平坦になっている。すなわち、被覆部材の部位のうちで、溝13のところに位置している部位には、引っ張り応力(図2の左右方向の引っ張り応力、図2の紙面に直角な方向の引っ張り応力のうちの少なくともいずれかの応力)がかかっている。したがって、溝13と被覆部材(各皮革7、9)との間に空間(溝13の空間)が存在していても、前述した平坦な状態を容易に保つことができるようになっている。
【0028】
ここで、基材3に被覆部材(各皮革7、9)を設置する場合について説明する。
【0029】
図3は、基材3に被覆部材(各皮革7、9)を設置する途中の状態を示す図である。
【0030】
まず、被覆部材を接合部5のところで僅かに曲げておき、被覆部材を接合部5の長手方向に(図3の紙面に直角な方向に)引張りながら、凹部11に凸部15が入り込むようにして、被覆部材の接合部5を凹部11の長手方向に沿って上からこするようにして凸部15に押しつけてゆき、被覆部材を基材3に対して位置決めする。
【0031】
続いて、各皮革7、9の重合部以外の部位を、基材3の表面(溝13以外の面)に貼り付けて、基材3に被覆部材を設置(固定)する。この設置は、前述した応力が被覆部材に発生するように、被覆部材を所定の方向に僅かな力で引っ張りながら行うことが望ましい。
【0032】
より詳しくは、図3に示す状態において、皮革7を基材3にまず貼り付け、続いて、皮革9を、図3の左方向に引っ張りながら、基材3に貼り付ける。
【0033】
このように設置することによって、溝13と被覆部材(各皮革7、9)との間に空間が存在し、前述した平坦な状態が形成される。また、基材3の凸部15が接合部5の凹部11が一時的に入り込み、基材3に対して被覆部材が位置決めされる。
【0034】
ところで、図4に示すように、皮革7、9の各重合部の接合部5に形成される線状の凹部11に基材3の凸部15が入り込んで被覆部材が基材3に対して位置決めされた状態で、被覆部材が基材3に設けられていてもよい。この場合、溝13の深さt7と皮革7、9の折り返された部位の厚さt9とはお互いがほぼ等しくなっている。
【0035】
インパネ1によれば、各皮革7、9の接合部5に形成されている凹部11が、基材3の溝13に設けられている凸部15に入り込んでいるか、もしくは、基材3に各皮革7、9を設置する際に入り込んでいた構成であるので、基材3に対する皮革7、9の位置ずれの発生を抑えつつ、各皮革7、9を基材3に設置することができる。したがって、各皮革7、9を基材3に設置する際、各皮革7、9の継ぎ目5が曲がりにくくなる(目標位置からずれにくくなる)。そして、インパネ1の見栄えを良好なものにすることができる。
【0036】
なお、インパネ1では、各皮革7、9の接合部5が、直線状に延びているが、図1に一点鎖線L1で示すように凸状(凹状)に湾曲して延びていてもよいし、図1に一点鎖線L2で示すように波状に湾曲して延びていてもよいし、図1に一点鎖線L3で示すように、折れ曲がって延びていてもよい。
【0037】
ところで、図7に示すように、溝13を削除した構成であってもよい。また、図5(a)に示すように、凸部15aを等脚台形状に形成してもよいし、図5(b)に示すように、凸部15bを2つの円弧を組み合わせた形状に形成し凹部11に隙間無く入り込むようにしてもよい。すなわち、凸部15bの頂上部から裾野部にうつるにしたがって、凸部15bの幅が増加する割合が大きくなるような形状に、凸部15bが形成されていてもよい。また、図6に示すように、凸部15cを溝13の長手方向で断続的に設けてあってもよい。
【0038】
さらに、図12で示すように、凸部15dに断続的に切欠部30を設けてあってもよい。切欠部30を設けることにより、被覆部材(各皮革7、9)を、接合部5の長手方向に引張りながら、凹部11に凸部15が入り込むように上から接合部15に沿ってこするようにして基材3に対して位置決めしていくときに、各皮革7、9を接合する糸25が切欠部30内の周壁31に引っ掛かるため、被覆部材が長手方向にずれにくくなる。また、凸部15dが湾曲して設けられている場合には、同様に糸25が周壁31に引っ掛かり、湾曲の内周方向への張力による被覆部材(各皮革7、9)のずれを防止することができる。
【0039】
ここで、皮革7(9)の重合部について説明する。上述した重合部は、皮革の端縁の近傍を折り返して形成したものであるが、図8(a)に示すように、折り返す部位L5のところに、小さな溝7aを設け、矢印の方向に折り返して、重合部を形成してもよい。また、図8(b)に示すように、折り返す部位L6のところを境にして、端部側に切り欠き(皮革の端部側の帯状部位が薄くなるような切り欠き)7bを設け、矢印の方向に折り返して、重合部を形成してもよい。さらに、図8(c)に示すように、折り返す部位L7が中央にくるような、切り欠き7cを設け、矢印の方向に折り返して、重合部を形成してもよい。
【0040】
また、図9に示すように、皮革7(9)の重合部の縁を、玉縁27としてもよい。玉縁27は、内部中央にたとえば所定の直径のワイヤー等の線材29を設けて形成されている。
【0041】
さらに、図10に示すように、一方の皮革7のみに重合部を形成し、他方の皮革9の端部側部位をたとえばほぼ直角に折り曲げただけの構成であってもよい。この場合、皮革7の重合部が溝13aに入り込み、皮革9の端部側部位が深い溝13bに入り込むことになる。
【0042】
なお、インパネ1は、基材の表面を複数枚の皮革素材で構成された被覆部材で覆っている構成の内装具において、前記被覆部材の接合部に生成されている線状の僅かな大きさの凹部が、前記基材の表面に形成されている凸部でガイドされて位置決めされ、前記被覆部材で前記基材を覆っている構成である内装具の例である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係るインストルメントパネルの概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるII−II断面を示す図である。
【図3】基材に被覆部材(各皮革)を設置する途中の状態を示す図である。
【図4】インパネの変形例を示す図であり、図2に対応した図である。
【図5】凸部の変形例を示す図である。
【図6】凸部の変形例を示す図である。
【図7】インパネの変形例を示す図であり、図2に対応した図である。
【図8】皮革の重合部を形成する際の変形例を示す図である。
【図9】インパネの変形例を示す図であり、図2に対応した図である。
【図10】インパネの変形例を示す図であり、図2に対応した図である。
【図11】従来のインストルメントパネルの断面を示す図である。
【図12】凸部の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 インパネ
3 基材
5 接合部(継ぎ目)
7、9 皮革
11 凹部
13 溝
15 凸部
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装具に係り、特に、基材の表面が複数の被覆部材で覆われているものに関する。
【背景技術】
【0002】
図11は、従来のインストルメントパネル200の断面を示す図である。
【0003】
インストルメントパネル200は、基材201と、端部を折り返すことによって形成される重合部を具備した皮革202と、この皮革202と同様な重合部を具備した皮革203とを備えており、基材201に設けられている溝240に、皮革202の重合部と皮革203の重合部とが入り込んだ状態で、基材201を各皮革202、203で覆っている。溝240の深さt21と、皮革202の重合部や皮革203の重合部のうちの折り返された部位の厚さt23とは、お互いがほぼ等しくなっている。
【0004】
なお、従来の技術に関する文献として、たとえば、特許文献1を掲げることができる。
【特許文献1】特開2002−79852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、皮革202の重合部と皮革203の重合部とが、溝240に確実に入り込むようにすべく、従来のインストルメントパネル200では、重合部の幅B21よりも、溝240の幅B23を広く形成してあり、溝240の幅方向において、各皮革202、203と、溝240との間に隙間ができている。
【0006】
したがって、基材201に各皮革(重合部の端部がお互いに接続されている皮革)202、203を設置する(組み立てる)ときに、溝240(基材201)に対して各皮革202、203の位置ずれが発生し、各皮革202、203の継ぎ目(図11の紙面に直角な方向に延びている継ぎ目)205が曲がってしまう場合(目標とする形状からずれてしまう場合)があるという問題がある。
【0007】
なお、前記問題は、インパネを組み立てる場合だけでなく、インパネと同様な構成の内装具(たとえば、自動車のドアの内側のパネル等)を組み立てる場合にも発生する問題である。
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、基材を皮革で覆っている構成の内装具において、各皮革を基材に設置する際、各皮革の継ぎ目が曲がらずに見栄えが良い内装具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、基材の表面を、複数枚の皮革素材で構成された被覆部材で覆っている内装具において、前記被覆部材の接合部に生成されている凹部が、前記基材の表面に形成されている凸部でガイドされて位置決めされ、前記被覆部材で前記基材を覆っている構成である内装具である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、表面に凸部を備えた基材と、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第1の部材と、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第2の部材とを、前記各重合部の各端縁がお互いに接するように接合して板状に形成された被覆部材とを有し、前記被覆部材の接合部に形成されている凹部に前記基材の凸部が入り込んだ状態で、前記基材を覆うようにして、前記被覆部材が前記基材に設けられている内装具である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第1の部材と、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第2の部材とを、前記各重合部の各端縁がお互いに接するように接合して板状に形成された被覆部材と、前記折り返された端縁部の厚さよりも深い深さでもしくはほぼ等しい深さで、また、前記接合されている各重合部の幅よりも広い幅でもしくはほぼ等しい幅で形成された帯状の溝を表面に備え、前記溝の幅方向の中間部に凸部を備えた基材とを有し、前記基材の表面に対して直交する方向から眺めた場合、前記基材の凸部が前記被覆部材の接合部に形成される線状の凹部から離れているにもかかわらず、前記凹部と前記凸部とがお互いに重なる状態で、または、前記被覆部材の接合部に形成される線状の凹部に前記基材の凸部が入り込んだ状態で、前記基材を覆うようにして、前記被覆部材が前記基材に設けられている内装具である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、基材を皮革で覆っている構成の内装具において、各皮革を基材に設置する際、各皮革の継ぎ目が曲がらずに見栄えが良い内装具を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るインストルメントパネル(インパネ)1の概略構成を示す図であり、図2は、図1におけるII−II断面を示す図である。なお、図1に示すインパネ1の表面は、平面状もしくは適宜の曲面形状になっている。
【0014】
インパネ1は、溝13を備えた基材3と、板状の各皮革7、9とを備えて構成されている。なお、本件明細書では、インパネ(自動車の運転席および助手席の前方に設置されるパネル)1を例に掲げて説明するが、ドアパネル(自動車のドアの内側に設置されるパネル)、自動車の屋根の内貼り、自動車のピラー(自動車の屋根の内貼りの桟)、自動車のシフトノブ、パーキングブレーキノブ、ドアの取手等の自動車の内装具、家具や部屋の壁等の室内の内装具にも、インパネ1と同様な構成を備えたものを適用することができる。
【0015】
インパネ1についてより詳しく説明する。
【0016】
板状の皮革(第1の部材)7と皮革(第2の部材)9とが、お互いが接合されていることによって、板状の被覆部材が構成されている。各皮革7、9の接合部は、インパネ1の製造上で、皮革を分割することが必要な場合だけに限らず、製造上分割の必要が無い場合においても設けられる場合がある。たとえば、インパネ1の意匠性を高めるために(美観を向上させるために)設けられる場合がある。
【0017】
皮革7は、板状の素材(皮革素材)の帯状の端縁部(所定の幅の端縁部)17を折り返すことによって形成された重合部を備えている。また、皮革9も皮革7と同様にして、板状の素材(皮革素材)の帯状の端縁部(所定の幅の端縁部)19を折り返すことによって形成された重合部を備えている。これらの重合部は、図2の紙面に対してたとえば直交する方向に延びている。
【0018】
なお、皮革7を構成している皮革素材の厚さと、皮革9を構成している皮革素材の厚さとは、お互いがほぼ等しくなっている。また、皮革7の帯状の端縁部(折り返されている端縁部)の幅と、皮革9の帯状の端縁部(折り返されている端縁部)の幅とは、お互いがほぼ等しくなっている。
【0019】
さらに、皮革7の重合部の端縁と皮革9の重合部の端縁とがお互いに接するように接合されている。この接合は、たとえば、糸25を用い各皮革7、9を縫うことによってなされている。皮革7の重合部は、糸21を用いて縫うことによって形成されており、皮革9の重合部も、皮革7の場合と同様にして糸23を用いて縫うことによって形成されている。糸21や23を用いることに代えてもしくは加えて接着剤を用いて重合部を形成してもよい。
【0020】
各皮革7、9の重合部の各端縁同士を接合することによって板状に形成された被覆部材の接合部(各皮革7、9の接合部;継ぎ目)5には、線状の凹部11が形成されている。凹部11も前記重合と同様にして、図2の紙面に対してたとえば直交する方向に延びている。
【0021】
基材3の表面には、溝13が形成されている。溝13も前記重合や凹部11と同様にして、図2の紙面に対してたとえば直交する方向に延びている。溝13の深さt1は、各皮革7、9の折り返された端縁部17、19の厚さt3よりも深くなっているが、溝13の深さt1と各皮革7、9の折り返された端縁部17、19の厚さt3とがお互いにほぼ等しくてもよい。
【0022】
溝13の幅B3は、皮革7、9の各重合部(お互いが糸25で接合されている重合部)の幅B1よりも広くなっているが、溝13の幅B3と皮革7、9の各重合部の幅B1とがお互いにほぼ等しくてもよい。
【0023】
溝13内には、凸部15が設けられている。凸部15は、たとえば一体成型されることによって基材3に一体的に設けられている。凸部15は、溝13の幅方向の中間部(たとえば、ほぼ中央部)で溝13の長手方向(図2の紙面に直交する方向)に延びて設けられている。凸部15の高さt5は、溝13の深さt1よりも低くなっているが、凸部15の高さt5と、溝13の深さt1とがお互いにほぼ等しいか、または、凸部15の高さt5が溝13の深さt1より高くなっていてもよい。
【0024】
凸部15の断面形状は、図2で示すように、たとえば、二等辺三角形状になっている。凸部15の頂角は、45°もしくは、45°よりも小さい角度であることが望ましい。凸部15の大きさは、各皮革7、9の接合部5に形成されている凹部11の大きさよりも僅かに小さくなっている。
【0025】
皮革7、9は、一方の面(重合部の折り返された端縁部17、19が存在している側の面)のうちで前記重合部から離れている面が、基材3の表面(溝13が形成されている面以外の面)に、接着剤や粘着剤等を用いて固定されている。したがって、皮革7、9の各重合部の折り返された端縁部17、19が基材3側を向いている。
【0026】
また、基材3の表面に対して直交する方向(図1の紙面に直角な方向)から眺めた場合、基材3の凸部15が被覆部材の接合部5に形成される線状の凹部11から離れているにもかかわらず(図2参照)、凹部11と凸部15とがお互いに重なっている。
【0027】
基材3に設置された被覆部材(各皮革7、9)の表面(基材3とは反対側の面)は、溝13や凸部15の影響を受けることなく、たとえば、平坦になっている。すなわち、被覆部材の部位のうちで、溝13のところに位置している部位には、引っ張り応力(図2の左右方向の引っ張り応力、図2の紙面に直角な方向の引っ張り応力のうちの少なくともいずれかの応力)がかかっている。したがって、溝13と被覆部材(各皮革7、9)との間に空間(溝13の空間)が存在していても、前述した平坦な状態を容易に保つことができるようになっている。
【0028】
ここで、基材3に被覆部材(各皮革7、9)を設置する場合について説明する。
【0029】
図3は、基材3に被覆部材(各皮革7、9)を設置する途中の状態を示す図である。
【0030】
まず、被覆部材を接合部5のところで僅かに曲げておき、被覆部材を接合部5の長手方向に(図3の紙面に直角な方向に)引張りながら、凹部11に凸部15が入り込むようにして、被覆部材の接合部5を凹部11の長手方向に沿って上からこするようにして凸部15に押しつけてゆき、被覆部材を基材3に対して位置決めする。
【0031】
続いて、各皮革7、9の重合部以外の部位を、基材3の表面(溝13以外の面)に貼り付けて、基材3に被覆部材を設置(固定)する。この設置は、前述した応力が被覆部材に発生するように、被覆部材を所定の方向に僅かな力で引っ張りながら行うことが望ましい。
【0032】
より詳しくは、図3に示す状態において、皮革7を基材3にまず貼り付け、続いて、皮革9を、図3の左方向に引っ張りながら、基材3に貼り付ける。
【0033】
このように設置することによって、溝13と被覆部材(各皮革7、9)との間に空間が存在し、前述した平坦な状態が形成される。また、基材3の凸部15が接合部5の凹部11が一時的に入り込み、基材3に対して被覆部材が位置決めされる。
【0034】
ところで、図4に示すように、皮革7、9の各重合部の接合部5に形成される線状の凹部11に基材3の凸部15が入り込んで被覆部材が基材3に対して位置決めされた状態で、被覆部材が基材3に設けられていてもよい。この場合、溝13の深さt7と皮革7、9の折り返された部位の厚さt9とはお互いがほぼ等しくなっている。
【0035】
インパネ1によれば、各皮革7、9の接合部5に形成されている凹部11が、基材3の溝13に設けられている凸部15に入り込んでいるか、もしくは、基材3に各皮革7、9を設置する際に入り込んでいた構成であるので、基材3に対する皮革7、9の位置ずれの発生を抑えつつ、各皮革7、9を基材3に設置することができる。したがって、各皮革7、9を基材3に設置する際、各皮革7、9の継ぎ目5が曲がりにくくなる(目標位置からずれにくくなる)。そして、インパネ1の見栄えを良好なものにすることができる。
【0036】
なお、インパネ1では、各皮革7、9の接合部5が、直線状に延びているが、図1に一点鎖線L1で示すように凸状(凹状)に湾曲して延びていてもよいし、図1に一点鎖線L2で示すように波状に湾曲して延びていてもよいし、図1に一点鎖線L3で示すように、折れ曲がって延びていてもよい。
【0037】
ところで、図7に示すように、溝13を削除した構成であってもよい。また、図5(a)に示すように、凸部15aを等脚台形状に形成してもよいし、図5(b)に示すように、凸部15bを2つの円弧を組み合わせた形状に形成し凹部11に隙間無く入り込むようにしてもよい。すなわち、凸部15bの頂上部から裾野部にうつるにしたがって、凸部15bの幅が増加する割合が大きくなるような形状に、凸部15bが形成されていてもよい。また、図6に示すように、凸部15cを溝13の長手方向で断続的に設けてあってもよい。
【0038】
さらに、図12で示すように、凸部15dに断続的に切欠部30を設けてあってもよい。切欠部30を設けることにより、被覆部材(各皮革7、9)を、接合部5の長手方向に引張りながら、凹部11に凸部15が入り込むように上から接合部15に沿ってこするようにして基材3に対して位置決めしていくときに、各皮革7、9を接合する糸25が切欠部30内の周壁31に引っ掛かるため、被覆部材が長手方向にずれにくくなる。また、凸部15dが湾曲して設けられている場合には、同様に糸25が周壁31に引っ掛かり、湾曲の内周方向への張力による被覆部材(各皮革7、9)のずれを防止することができる。
【0039】
ここで、皮革7(9)の重合部について説明する。上述した重合部は、皮革の端縁の近傍を折り返して形成したものであるが、図8(a)に示すように、折り返す部位L5のところに、小さな溝7aを設け、矢印の方向に折り返して、重合部を形成してもよい。また、図8(b)に示すように、折り返す部位L6のところを境にして、端部側に切り欠き(皮革の端部側の帯状部位が薄くなるような切り欠き)7bを設け、矢印の方向に折り返して、重合部を形成してもよい。さらに、図8(c)に示すように、折り返す部位L7が中央にくるような、切り欠き7cを設け、矢印の方向に折り返して、重合部を形成してもよい。
【0040】
また、図9に示すように、皮革7(9)の重合部の縁を、玉縁27としてもよい。玉縁27は、内部中央にたとえば所定の直径のワイヤー等の線材29を設けて形成されている。
【0041】
さらに、図10に示すように、一方の皮革7のみに重合部を形成し、他方の皮革9の端部側部位をたとえばほぼ直角に折り曲げただけの構成であってもよい。この場合、皮革7の重合部が溝13aに入り込み、皮革9の端部側部位が深い溝13bに入り込むことになる。
【0042】
なお、インパネ1は、基材の表面を複数枚の皮革素材で構成された被覆部材で覆っている構成の内装具において、前記被覆部材の接合部に生成されている線状の僅かな大きさの凹部が、前記基材の表面に形成されている凸部でガイドされて位置決めされ、前記被覆部材で前記基材を覆っている構成である内装具の例である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係るインストルメントパネルの概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるII−II断面を示す図である。
【図3】基材に被覆部材(各皮革)を設置する途中の状態を示す図である。
【図4】インパネの変形例を示す図であり、図2に対応した図である。
【図5】凸部の変形例を示す図である。
【図6】凸部の変形例を示す図である。
【図7】インパネの変形例を示す図であり、図2に対応した図である。
【図8】皮革の重合部を形成する際の変形例を示す図である。
【図9】インパネの変形例を示す図であり、図2に対応した図である。
【図10】インパネの変形例を示す図であり、図2に対応した図である。
【図11】従来のインストルメントパネルの断面を示す図である。
【図12】凸部の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0044】
1 インパネ
3 基材
5 接合部(継ぎ目)
7、9 皮革
11 凹部
13 溝
15 凸部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面を、複数枚の皮革素材で構成された被覆部材で覆っている内装具において、
前記被覆部材の接合部に生成されている凹部が、前記基材の表面に形成されている凸部でガイドされて位置決めされ、前記被覆部材で前記基材を覆っている構成であることを特徴とする内装具。
【請求項2】
表面に凸部を備えた基材と;
板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第1の部材と、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第2の部材とを、前記各重合部の各端縁がお互いに接するように接合して板状に形成された被覆部材と;
を有し、前記被覆部材の接合部に形成されている凹部に前記基材の凸部が入り込んだ状態で、前記基材を覆うようにして、前記被覆部材が前記基材に設けられていることを特徴とする内装具。
【請求項3】
板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第1の部材と、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第2の部材とを、前記各重合部の各端縁がお互いに接するように接合して板状に形成された被覆部材と;
前記折り返された端縁部の厚さよりも深い深さでもしくはほぼ等しい深さで、また、前記接合されている各重合部の幅よりも広い幅でもしくはほぼ等しい幅で形成された帯状の溝を表面に備え、前記溝の幅方向の中間部に凸部を備えた基材と;
を有し、前記基材の表面に対して直交する方向から眺めた場合、前記基材の凸部が前記被覆部材の接合部に形成される線状の凹部から離れているにもかかわらず、前記凹部と前記凸部とがお互いに重なる状態で、または、前記被覆部材の接合部に形成される線状の凹部に前記基材の凸部が入り込んだ状態で、前記基材を覆うようにして、前記被覆部材が前記基材に設けられていることを特徴とする内装具。
【請求項1】
基材の表面を、複数枚の皮革素材で構成された被覆部材で覆っている内装具において、
前記被覆部材の接合部に生成されている凹部が、前記基材の表面に形成されている凸部でガイドされて位置決めされ、前記被覆部材で前記基材を覆っている構成であることを特徴とする内装具。
【請求項2】
表面に凸部を備えた基材と;
板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第1の部材と、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第2の部材とを、前記各重合部の各端縁がお互いに接するように接合して板状に形成された被覆部材と;
を有し、前記被覆部材の接合部に形成されている凹部に前記基材の凸部が入り込んだ状態で、前記基材を覆うようにして、前記被覆部材が前記基材に設けられていることを特徴とする内装具。
【請求項3】
板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第1の部材と、板状の素材の帯状の端縁部を折り返すことによって形成された重合部を備えた第2の部材とを、前記各重合部の各端縁がお互いに接するように接合して板状に形成された被覆部材と;
前記折り返された端縁部の厚さよりも深い深さでもしくはほぼ等しい深さで、また、前記接合されている各重合部の幅よりも広い幅でもしくはほぼ等しい幅で形成された帯状の溝を表面に備え、前記溝の幅方向の中間部に凸部を備えた基材と;
を有し、前記基材の表面に対して直交する方向から眺めた場合、前記基材の凸部が前記被覆部材の接合部に形成される線状の凹部から離れているにもかかわらず、前記凹部と前記凸部とがお互いに重なる状態で、または、前記被覆部材の接合部に形成される線状の凹部に前記基材の凸部が入り込んだ状態で、前記基材を覆うようにして、前記被覆部材が前記基材に設けられていることを特徴とする内装具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−162343(P2008−162343A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352285(P2006−352285)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(506292332)株式会社ミドリテクノパーク (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(506292332)株式会社ミドリテクノパーク (9)
【Fターム(参考)】
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