説明

内視鏡の配管部材の接続方法

【課題】レーザ溶接により接続固定される二つの配管部材内の管路の酸化を防止して、各種不具合の発生を未然に防止することができる内視鏡の配管部材の接続方法を提供すること。
【解決手段】耐蝕性合金材からなる二つの配管部材1,2の接続部の外面にレーザビームRが照射されて二つの配管部材1,2が溶接され、二つの配管部材1,2内の管路が連通接続された状態になる内視鏡の配管部材の接続方法において、レーザビームR照射時に、二つの配管部材1,2の接続部の外面に向かって不活性ガスA1を吹き付けると同時に、二つの配管部材1,2内の管路にも不活性ガスA2を通すようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は内視鏡の配管部材の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡に用いられる配管部材の多くは耐蝕性合金材で形成されていて、二つの配管部材の接続部は溶接や銀ロー付け等により水密に接続固定される。そして近年は、作業の容易性及び溶接の確実性等からレーザビーム照射によるいわゆるレーザ溶接が用いられるようになってきている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特公平4−25007
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レーザ溶接が行われる場合に、レーザビームが照射された接続部は温度上昇により著しく酸化して接続強度が大幅に低下する場合がある。そこで、アルゴンガス等のような不活性ガスを接続部の外面に吹き付けて酸化防止を図る手法がとられる。
【0004】
しかし、そのような酸化現象は配管部材内の管路でも発生し、特に、配管部材が肉厚の薄いパイプ状のものの場合等にはその現象が顕著に発生する。そして、管路内が酸化されると、内視鏡検査の際に管路に液やガスが通された時に酸化物が剥離して、被検者の体内に送り込まれてしまうおそれがある。また、体内の汚液等が酸化部にこびりついて汚物溜まりになるおそれもあり、酸化物の存在が母材である配管部材の酸化をさらに促進させてしまう場合もある。
【0005】
本発明は、レーザ溶接により接続固定される二つの配管部材内の管路の酸化を防止して、各種不具合の発生を未然に防止することができる内視鏡の配管部材の接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の配管部材の接続方法は、耐蝕性合金材からなる二つの配管部材の接続部の外面にレーザビームが照射されて二つの配管部材が溶接され、二つの配管部材内の管路が連通接続された状態になる内視鏡の配管部材の接続方法において、レーザビーム照射時に、二つの配管部材の接続部の外面に向かって不活性ガスを吹き付けると同時に、二つの配管部材内の管路にも不活性ガスを通すようにしたものである。
【0007】
なお、二つの配管部材のうち一方の配管部材の外端開口部に不活性ガス噴出ノズルが接続されてもよく、或いは、筒状体の外周壁に複数の透孔が穿設された不活性ガス注入治具が二つの配管部材のうち一方の配管部材の外端開口部に接続され、透孔から不活性ガス注入治具内に送り込まれた不活性ガスが二つの配管部材内の管路に通されるようにしてもよい。
【0008】
二つの配管部材内の管路に通される不活性ガスの圧力は0.05〜0.5MPaの範囲であるとよく、二つの配管部材内の管路に通される不活性ガスの温度は0〜40℃の範囲であるとよい。
【0009】
また、二つの配管部材内の管路に通される不活性ガスがアルゴンガスであってもよく、二つの配管部材の少なくとも一方がパイプ状の部材であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザビーム照射時に、二つの配管部材の接続部の外面に向かって不活性ガスを吹き付けると同時に、二つの配管部材内の管路にも不活性ガスを通すようにしたことにより、レーザ溶接により接続固定される二つの配管部材内の管路の酸化を防止して、各種不具合の発生を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
耐蝕性合金材からなる二つの配管部材の接続部の外面にレーザビームが照射されて二つの配管部材が溶接され、二つの配管部材内の管路が連通接続された状態になる内視鏡の配管部材の接続方法において、レーザビーム照射時に、二つの配管部材の接続部の外面に向かって不活性ガスを吹き付けると同時に、二つの配管部材内の管路にも不活性ガスを通す。
【実施例】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1は、内視鏡に用いられる二つの配管部材1,2が接続される際の状態を示している。二つの配管部材1,2は各々、ステンレス鋼(例えばSUS304等)等のような耐蝕性合金材により形成されており、第1の配管部材1は肉薄のパイプ状に形成され、第2の配管部材2はシリンダ状に形成されている。
【0013】
第1の配管部材1と第2の配管部材2とは、第2の配管部材2側に形成された差し込み孔に第1の配管部材1の一端側が嵌挿接続されて、その接続部の外面全周にレーザビームRが照射されることにより溶接され(シーム溶接)、その結果、二つの配管部材1,2内の管路が連通接続された状態になる。3がその溶接部である。
【0014】
なお、第2の配管部材2の差し込み孔に対する第1の配管部材1の軸線方向の嵌合長dは第1の配管部材1の肉厚tの0.5〜2倍の範囲に設定されており、それによって、溶接後に嵌合部に隙間が残ることなく強固にレーザ溶接を行うことができる。
【0015】
そのような第1の配管部材1と第2の配管部材2との溶接を行うためのレーザビームR照射時には、二つの配管部材1,2の接続部の外面に向かって第1の不活性ガス噴出ノズル11から、例えばアルゴンガス等のような不活性ガスA1が吹き付けられ、それによって、レーザ溶接部3表面の酸化が抑制される。
【0016】
また、それと同時に、第1の配管部材1の外端開口部に接続された第2の不活性ガス噴出ノズル12から二つの配管部材1,2内の管路にもアルゴンガス等のような不活性ガスA2が通され、それにより、レーザ溶接部3の内側に位置する配管部材1,2内の管路の酸化が抑制されて、酸化に伴う各種の不具合発生が防止される。
【0017】
なお、二つの配管部材1,2内の管路に通される不活性ガスA2の温度は常温(0〜40℃程度の範囲)でよく、その不活性ガスA2の圧力が0.05〜0.5MPa程度の範囲にあれば実用的な作業条件により酸化防止の効果が得られる。
【0018】
また、不活性ガスA2のガス濃度は80%以上、流量は、配管部材1,2の内径サイズが0.1〜30mmの場合に1〜20リットル/分であり、レーザビームRを発生させるレーザ装置の設定電圧は、配管部材1,2の内径サイズが0.1〜1mmの場合に50〜500V程度の範囲である。
【0019】
図2は、本発明の第2の実施例を示しており、第2の不活性ガス噴出ノズル12が、第1の配管部材1に接続されるのではなくて、厚肉円筒状に形成されている第2の配管部材2の外端開口部に接続されている点が第1の実施例と相違する。その他に関しては第1の実施例と同じであり、このようにしても第1の実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0020】
図3は、本発明の第3の実施例を示しており、筒状体の外周壁に複数の透孔5が穿設された不活性ガス注入治具4が、第2の実施例と同様の厚肉円筒状に形成された第2の配管部材2の外端開口部に接続され、第2の不活性ガス噴出ノズル12が不活性ガス注入治具4の外方から透孔5に向けられている。
【0021】
第1の配管部材1と第2の配管部材2と不活性ガス注入治具4は、不活性ガス注入治具4の軸線周り方向に一体的に回転され、その結果、透孔5から不活性ガス注入治具4内に送り込まれた不活性ガスA2が二つの配管部材1,2内の管路に通される。その他に関しては第1の実施例と同じであり、このようにしても第1及び第2の実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0022】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば二つの配管部材1,2が共に薄肉パイプでなくても本発明を適用することができる。また、不活性ガスA1,A2がアルゴンガス以外の不活性ガスであっても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施例の内視鏡の配管部材の接続状態を示す側面断面図である。
【図2】本発明の第2の実施例の内視鏡の配管部材の接続状態を示す側面断面図である。
【図3】本発明の第3の実施例の内視鏡の配管部材の接続状態を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 第1の配管部材
2 第2の配管部材
3 溶接部
4 不活性ガス注入治具
5 透孔
11 第1の不活性ガス噴出ノズル
12 第2の不活性ガス噴出ノズル
A1,A2 不活性ガス
R レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐蝕性合金材からなる二つの配管部材の接続部の外面にレーザビームが照射されて上記二つの配管部材が溶接され、上記二つの配管部材内の管路が連通接続された状態になる内視鏡の配管部材の接続方法において、
上記レーザビーム照射時に、上記二つの配管部材の接続部の外面に向かって不活性ガスを吹き付けると同時に、上記二つの配管部材内の管路にも不活性ガスを通すようにしたことを特徴とする内視鏡の配管部材の接続方法。
【請求項2】
上記二つの配管部材のうち一方の配管部材の外端開口部に不活性ガス噴出ノズルが接続される請求項1記載の内視鏡の配管部材の接続方法。
【請求項3】
筒状体の外周壁に複数の透孔が穿設された不活性ガス注入治具が上記二つの配管部材のうち一方の配管部材の外端開口部に接続され、上記透孔から上記不活性ガス注入治具内に送り込まれた不活性ガスが上記二つの配管部材内の管路に通される請求項1記載の内視鏡の配管部材の接続方法。
【請求項4】
上記二つの配管部材内の管路に通される不活性ガスの圧力が0.05〜0.5MPaの範囲である請求項1ないし3のいずれかの項に記載の内視鏡の配管部材の接続方法。
【請求項5】
上記二つの配管部材内の管路に通される不活性ガスの温度が0〜40℃の範囲である請求項1ないし4のいずれかの項に記載の内視鏡の配管部材の接続方法。
【請求項6】
上記二つの配管部材内の管路に通される不活性ガスがアルゴンガスである請求項1ないし5のいずれかの項に記載の内視鏡の配管部材の接続方法。
【請求項7】
上記二つの配管部材の少なくとも一方がパイプ状の部材である請求項1ないし6のいずれかの項に記載の内視鏡の配管部材の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−172081(P2009−172081A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12433(P2008−12433)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】