説明

内視鏡用カテーテル

【課題】簡単な構成でありながら確実かつ容易に素早い操作で処置できるようになるとともに安価に提供できる内視鏡用カテーテルを提供することにある。
【解決手段】内チューブ16に形成された第1通路37と、上記外チューブ15により形成された第2通路34とを設け、上記内チューブ16の先端に吸水性膨張部材23を設け、上記操作部12の操作により、上記第2通路34を使用するときに第1通路37を遮断し、上記第1通路37を使用するときに上記第2通路34を遮断するようにした内視鏡用カテーテルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野において、先端を体腔内の目的部位にウェッジして使用する内視鏡用カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気管支肺胞内の液体成分を回収して診断する方法として気管支肺胞洗浄診断(Bronchoalveolar Lavage:BAL)が知られている。このBAL診断の手法は、気管支鏡自体の先端を気管支部位にウェッジして気管支肺胞を密閉した上で、その気管支肺胞に37℃に加温された生理食塩水を注入し、この後、気管支肺胞内の液体を吸引回収した洗浄液に含まれる細胞や細菌やサイトカインや微生物などの有無や成分の分析により、病理診断や病因論的解析をしようとするものである。通常、この手技は、生理食塩水50ccを用いて2〜3回行われる。この場合、気管支肺胞に注入する生理食塩水は、気管支鏡のチャンネルから注入される。また、気管支鏡に接続された外部の吸引装置により気管支鏡のチャンネルに陰圧を加えることにより気管支鏡のチャンネルを介して気管支肺胞内の液体を吸引して回収する。
【0003】
従来のBAL診断手法にあっては、内視鏡を挿入する気管支の部位が比較的太い部分、即ち、中枢気道領域からの生理食塩水の注入および回収が可能な領域のみであり、気管支の比較的太い部位の場所にのみの限定した診断が可能であった。
【0004】
また、気管支鏡を用いた従来のBAL診断手法では、内視鏡先端より先の気管支は無数に分岐しているので、検査目的とする気管支以外の場所にも生理食塩水が注入されてしまう結果、ある程度広範囲な領域の細胞成分を回収してしまう。このため、病巣がどの気管支に存在するかを明確に判別できなかった。
【特許文献1】特開平2−52672号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の一般的なBAL診断手法では、内視鏡が挿入できる気管支が比較的太い部分、即ち中枢気道領域からの生理食塩水の注入および回収が可能な領域のみ適用できることから検査目的とする気管支以外の場所にも生理食塩水が広く注入されてしまい、ある程度広範囲な領域の細胞成分まで回収してしまうという難点があった。
【0006】
したがって、現状の方式では、気管支肺胞洗浄の範囲が広く、病気の範囲の特定が難しい。また、病巣がどの気管支に存在するかは明確に解らず、限局的な解析は望み得なかった。
【0007】
ところで、病気の範囲を特定できれば、それだけ効果的な治療を行える。このため、限局的に気管支肺胞洗浄を行うことの必要性が強い。また、限局的に気管支肺胞洗浄を行う事ができれば、注入される滅菌生理食塩水の範囲が限局される結果、注入液の総量も少なくて済み、また、患者の肺への侵襲を低く抑える事が出来る点でも有利である。
【0008】
そこで、内視鏡のチャンネルを用い、内視鏡の先端部径より細い気管支の深い位置までバルーン付処置具を挿入し、その深い場所で密閉空間を作り限局的に気管支肺胞洗浄を行う工夫が求められる。
【0009】
しかし、従来のバルーン付処置具を内視鏡のチャンネルに挿通させてバルーンの拡張により気管支の内壁を塞ぐ場合、処置具の操作部にバルーン膨張用ポートと送排水用ポートを設けなければならないので、バルーン付処置具の構造が複雑になる。また、バルーン膨張用シリンジと送排水用シリンジの2本のシリンジを用意しなければならず、一層複雑な構造になってしまうとともに、その操作も煩雑で長い時間を要するという難点がある。
【0010】
なお、上記バルーンに吸水性高分子ゲルを用いるカテーテル(特許文献1参照)の使用も考えられるが、吸水性高分子ゲルを収縮させる際の時間が長いため、内視鏡や処置具を気管支内に長い間、放置する事になり、患者への負担が増える事が問題になる。
【0011】
本発明は、上記課題に着目してなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成でありながら素早い操作で確実かつ容易に処置できるようになるとともに安価に提供できる内視鏡用カテーテルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、挿入部が長尺で可撓性がある外チューブと、上記外チューブ内に配置された内チューブと、上記内チューブ内に形成される第1通路と、上記外チューブと内チューブとの間の空間により形成される第2通路と、上記内チューブの先端に設けられ、上記第1通路に連通するノズル部材と、上記ノズル部材に設けられ、上記第2通路の先端に位置して配置されるとともに上記第2通路によって供給される流体により径方向への膨張が可能な膨張部材と、操作部に設けられた流体送排手段接続用口部と、上記操作部に設けられた操作手段と、上記操作部に設けられ、上記操作手段の操作により、上記流体送排手段接続用口部の、上記第1通路と上記第2通路への接続を切り替える手段と、を具備した事を特徴とする内視鏡用カテーテルである。
請求項2に係る発明は、挿入部が長尺で可撓性がある外チューブと、上記外チューブ内に配置された内チューブと、上記内チューブ内に形成される第1通路と、上記外チューブと内チューブとの間の空間により形成される第2通路と、上記内チューブの先端に設けられ、上記第1通路に連通するノズル部材と、上記ノズル部材に設けられ、上記第2通路の先端に位置して配置されるとともに上記第2通路によって供給される流体により径方向への膨張が可能な膨張部材と、操作部に設けられ、上記第2管路の基端開口に通じる流体送排手段接続用口部と、上記操作部に設けられ、上記操作手段により、上記第2通路を塞ぐ位置と上記第2通路の基端開口を開放する位置に進退操作される封止部材と、上記操作部に設けられ、上記流体送排手段接続用口部を上記第1通路に連通する連通路と、上記操作部に設けられ、上記操作手段により、上記封止部材が上記第2通路の基端開口を塞ぐ位置にあるときに上記連通路により上記流体送排手段接続用口部と上記第1通路と間の連通を許容して上記口部からの流体を上記第1通路に供給可能ならしめるとともに、上記封止部材が上記第2通路を開放するときに上記連通路による上記流体送排手段接続用口部と上記第1通路との間の連通を遮断する弁手段と、を具備した事を特徴とする内視鏡用カテーテルである。
請求項3に係る発明は、上記膨張部材は、吸水性高分子ゲルを含む膨張部材である事を特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡用カテーテルである。
請求項4に係る発明は、上記膨張部材は、吸水して膨張した状態で変形可能であり、かつ、上記内チューブが上記外チューブに対して引き込むときに上記膨張部材が上記外チューブ内に引き込み収納可能である事を特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の内視鏡用カテーテルである。
請求項5に係る発明は、上記吸水性高分子ゲルは、伸縮性の包含袋に収納され、包含袋により上記ノズル部材の外周に取着される事を特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の内視鏡用カテーテルである。
請求項6に係る発明は、上記吸水性高分子ゲルは、吸水膨張しない前の状態で上記外チューブの先端から露出する位置に保持するとともに、吸水して膨張するときに上記挿入部の前後軸方向への伸長を抑制する手段を有する事を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の内視鏡用カテーテルである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、体内部位を密閉するために膨張する吸水性高分子ゲルに連通する管路と、その体内部位へ送排水するための管路を素早く切り替えられる事ができ、送排水の選択が容易であり、例えば気管支肺胞洗浄を簡便に行う事が出来る。また、吸水性高分子ゲルを引き込めるようにしたものでは体内からカテーテルを引き抜く操作が容易である。そして、限局的な処置を行うことができるとともに、確実かつ容易に素早い操作で処置できる操作性の良い内視鏡用カテーテルを安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る内視鏡用カテーテルについて図1〜図4に基づいて説明する。
【0015】
(構成)
図1に示すように、内視鏡用カテーテル10は、挿入部11と操作部12を備える。上記挿入部11は可撓性があるシングルルーメンチューブからなる外チューブ15と、この外チューブ15内に挿入される同じく可撓性があるシングルルーメンチューブからなる細めの内チューブ16を有し、両チューブ15,16は同軸的に配置される。内チューブ16は外チューブ15内に前後方向へ進退自在に挿通されている。外チューブ15の内周壁と内チューブ16の外周壁の間には後述するアウター通路34が形成される。上記挿入部11の先端部には後述する処置部20が装備されている。
【0016】
上記処置部20はパイプ状に形成したノズル部材としての送排水部材21と、リング状に形成した固定部材22と、リング状に形成され水分を吸収する事により膨張する膨張部材としての吸水性高分子ゲル23とを備える。そして、吸水性高分子ゲル23は送排水部材21の外周に固定部材22によって取着されている。固定部材22は図1に示す通常の状態では吸水性高分子ゲル23よりも先端側に位置する。また、固定部材22は外チューブ15の内径よりも外径が小さい短い管状に形成され、図4に示すように外チューブ15内に引き込まれたとき、外チューブ15の内壁と固定部材22の外周との間に隙間24を形成する。
【0017】
上記吸水性高分子ゲル23の内面は送排水部材21の外周に密に接触している。図1に示す初期状態では吸水性高分子ゲル23の基端部25が外チューブ15の先端部26に当たり、その外チューブ15の先端開口部分を塞ぐ位置に配置されている。
【0018】
処置部20の膨張部材としての吸水性高分子ゲル23は、前後軸方向の伸長が後述する抑制手段によって規制される。つまり、吸水性高分子ゲル23の先端側部分が固定部材22によって送排水部材21に取着されるとともに吸水性高分子ゲル23の後端(基端)側部分は外チューブ15の先端に当たり前後軸方向の伸長が阻止されている。
【0019】
図1に示すように通常の状態では上記吸水性高分子ゲル23は固定部材22に比べて厚みも体積も大きい。また、吸水性高分子ゲル23は網目状の伸縮性がある袋(包含袋)27に包まれて収納されることにより、所定の形態を確保する。袋27を含めての吸水性高分子ゲル23の外径は外チューブ15の外径よりも小さいことが好ましい。
【0020】
本実施形態では、吸水性高分子ゲル23の外径は、図1に示すように、外チューブ15の外径に略等しく形成されている。また、吸水性高分子ゲル23は膨張した状態でも変形が可能であり、上記外チューブ15に対して上記内チューブ16を引き込むとき、それに応じて変形し、上記内チューブ16内に入り込めるようになっている(図4参照)。
【0021】
また、吸水性高分子ゲル23を収納する袋27の先端部分28は固定部材22の内面に押し潰されて中身が空の状態になり、この締め付けられた袋27の部分には吸水性高分子ゲル23が入り込んでいない。このため、固定部材22の固定力量を確保する。
【0022】
上記吸水性高分子ゲル23としては、基本的に吸水することにより膨潤することができればよく、具体的には高分子電解質ゲル、コラーゲン、吸水性ヒドロゲル、吸水性ゴム、アクアケル(商品名)、スミカゲル(商品名)、ブラウエット(商品名)、アクリルアミド系共重合体等の他、絹、綿、木材等の天然素材やアクリル等の人工繊維に吸水加工を施したもの等を用いることができる。また、粒状物の集合、粉末物の集合または気泡状物等も用いることができる。
【0023】
図1に示すように、送排水部材21の基端部29は、送排水部材21の先端側部分の外周と内周に対し平行で中空に絞られており、この絞られた部分には上記内チューブ16が接続されている。この接続方式によれば、外チューブ15と内チューブ16との間に形成されるアウター通路34の断面積を確保し、送排水や通気を行う上での流量を確保し得る。
【0024】
図1に示すように、上記操作部12には把持操作可能な本体部材31が設けられている。本体部材31の先端部分には外チューブ15の基端が被せられ、密に接合している。本体部材31の途中部分には口部内面をルアーテーパ状に形成したシリンジ接続用口部(流体送排手段接続用口部)32が形成され、このシリンジ接続用口部32に対して注射筒などの送排水装置(流体送排手段)を接続できるようになっている。シリンジ接続用口部32は本体部材31の内部空間33に連通するとともにその内部空間33を経て上述したアウター通路34に連通する。
【0025】
図1に示すように、本体部材31の内部にはパイプ状に形成した内チューブ接続部材36が、本体部材31と同軸に配置されている。内チューブ接続部材36の先端には上記内チューブ16の後端が固定的に接続されている。内チューブ接続部材36の内孔は上記内チューブ16内の通路に連通している。内チューブ接続部材36の先端部外周には後述する封止部材としてのストッパ41が固定的に設けられている。
【0026】
本体部材31の後端部にはリング状のワッシャ42と、リング状のパッキン保持部材43との間に挟まれてリング状に形成された弾性があるパッキン44が保持されている。そして、ワッシャ42とパッキン44の順に本体部材31の後端部内にワッシャ42とパッキン44を挿入した上で、本体部材31の後端部にパッキン保持部材43を螺嵌する。これにより図1に示すようにパッキン44が変形して内チューブ接続部材36と密着する事によりアウター通路34の基端側部分を遮断封止する。
【0027】
そして、内チューブ接続部材36の内部は内チューブ16の内部によって形成されるインナー通路37に連通するとともに、そのインナー通路37を経て上記送排水部材21の内孔部38と連通する。上記パッキン44は内チューブ接続部材36の外周に密着して本体部材31と内チューブ接続部材36の間を密封する。
【0028】
また、上記内チューブ接続部材36の後端側部分は上記パッキン44を貫通して操作部12の外に突き出ている。操作部12の外に突き抜けている内チューブ接続部材36の後端部分にはリング状に形成した操作ノブ46が固定的に取着されている。そして、この操作手段としての操作ノブ46により内チューブ接続部材36を進退操作するとき、内チューブ接続部材36はパッキン44の内面を摺動しながら、図2に示す先端側方向aと、図3に示す基端側方向bに進退する。なお、上記操作ノブ46は、内チューブ接続部材36の後端開口を封止する部材を兼ねている。
【0029】
そして、操作手段としての操作ノブ46により内チューブ接続部材36を図2に示す先端側方向aへ前進させた際、ストッパ41は操作部12の本体部材31における内壁に形成した段差からなる当接部47に突き当たり、インナー通路37の基端開口を閉塞する。つまり、ストッパ41は、操作手段によって進退操作される封止部材となる。また、ストッパ41が当接部47に突き当たる前は、操作ノブ46がパッキン保持部材43に当たらないように設定されている。
【0030】
また、図3に示す基端側方向bへは、ストッパ41がワッシャ42に当たる位置まで後退させることができる。これにより、操作ノブ46により進退させる操作量と操作位置を規制する手段を構成する。
【0031】
さらに、内チューブ接続部材36の途中部分にはその外部と内部を連通するとともに送排水や通気を行うことが可能な側孔(連通路)48が形成されている。そして、図1に示す通常の待機状態にあって、側孔48は、パッキン44よりも後方に位置しており、この待機状態では、アウター通路34に対する連通が遮断されている。また、図3に示すように内チューブ接続部材36を前進させたときは、側孔48はパッキン44よりも前方に位置しており、アウター通路34に対して連通する状態にある。そして、操作ノブ46による操作手段によって内チューブ接続部材36を進退させる操作に応じて、通路の連通を開放及び遮断する弁手段を構成する。
【0032】
(作用)
次に、上述の内視鏡用カテーテル10を使用して、気管支肺胞洗浄を用いた検査方法について説明する。
【0033】
まず、図示しない内視鏡を気管支内に挿入し、内視鏡の挿入部先端を目的部位まで進める。
【0034】
次に、内視鏡の処置具挿入口より内視鏡のチャンネル内に図2に示す状態での内視鏡用カテーテル10の挿入部11を挿入し、その内視鏡用カテーテル10の先端を内視鏡の挿入部先端から突き出す。さらに、内視鏡用カテーテル10の挿入部11のみを気管支肺胞洗浄する目的部位まで挿入する。
【0035】
次に、図2に示す状態で、シリンジ接続用口部32より、滅菌生理食塩水を注入し、アウター通路34を経て吸水性高分子ゲル23に送り、吸水させる。すると、図3に示すように、吸水性高分子ゲル23は、吸水して膨張する。そして、吸水性高分子ゲル23は、膨張する事により気管支50の内壁に圧迫して密着する。
【0036】
次に、図2の状態から図3に示す状態になるまで、操作部12の操作ノブ46を先端側方向aへ前進させる。それにより操作ノブ46がパッキン保持部材43に当たるより先にストッパ41が操作部12の本体部材31における当接部47に突き当たり、それ以上の前進は阻止される。これにより本体部材31の内部空間33に側孔48が連通するとともに、当接部47にストッパ41の先端面が接触し、アウター通路34とシリンジ接続用口部32との連通を遮断する。このため、シリンジ接続用口部32よりアウター通路34を経ての滅菌生理食塩水の注入が止まり、吸水性高分子ゲル23への注水が停止する。
【0037】
次に、シリンジ接続用口部32を通じて滅菌生理食塩水を注入すると、本体部材31の内部空間33に注入された滅菌生理食塩水は側孔48を通り、インナー通路37を経て送排水部材21の内孔部38から気管支50内に注入する。
【0038】
その後、シリンジ接続用口部32から陰圧をかけ排出した液を回収する。この回収液より細胞、蛋白および微生物等の標本を得る事が出来る。
【0039】
この気管支肺胞洗浄後、操作ノブ46を図3から図4に示す状態になるように基端側方向bに操作ノブ46を引き移動させる。ストッパ41の後端が、ワッシャ42に接触する前に吸水性高分子ゲル23は、図4に示すように外チューブ15内に引き込まれ、外チューブ15内に格納される。
【0040】
その後、この内視鏡用カテーテル10を内視鏡から抜去する。同様の検査を何度か行うことができる。
目的の検査やその他の検査が終了したら内視鏡を気管支から抜去する。
【0041】
(効果)
上記の構成により、内視鏡の先端径よりも細い気管支部分まで気管支肺胞洗浄を限局的に行える。また、吸水性高分子ゲルを使用する事により安定した気管支管腔との密着状態が保たれるので、限局的に気管支肺胞洗浄を行う事が出来る。さらに、注射筒などの送排水装置を付け替える必要がないので、操作の簡便化が図れる。しかも、内視鏡用カテーテルの構成の簡略化も図れ、経済性が向上する。
【0042】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る内視鏡用カテーテルについて図5〜図6に基づいて説明する。本実施形態は処置部の膨張部材の一例を示す。この他の構成は第1実施形態の構成と同様なのでその詳しい説明は省略する。
【0043】
(構成)
本実施形態に係る内視鏡用カテーテル60の処置部62は内チューブ16の先端に接続されたパイプ状に形成したノズル部材としての送排水部材51と、この送排水部材51と同軸上に配置され、外チューブ15の先端に接続されたパイプ状の接続管53と、内チューブ16と外チューブ15の先端に露出して配置され、液体や気体を密閉する事ができる膨張部材としてのバルーン52を備える。バルーン52は内チューブ16と外チューブ15の間に形成されるアウター通路34に連通する。内視鏡に挿入する前の状態を示した図5に示すように、内視鏡に挿入する前の状態では、バルーン52は処置部62の先端側に収縮した状態で位置する。また、図5に示すように、バルーン52の一端部分外面は送排水部材51の外周に密に接触して接続されており、バルーン52の他端部分内面は接続管53の外周に密に接触して接続されている。バルーン52は内チューブ16と外チューブ15の間に形成されるアウター通路34の先端を常に塞ぐ状態にある。この処置部62に設置される膨張部材としてのバルーン52は後述する抑制手段によって処置部62の前後軸方向の伸長が規制される。
【0044】
図5に示す通常の状態での、上記バルーン52の外径は外チューブ15の外径より小さいことが好ましい。また、上記バルーン52の材質は基本的に伸縮自在でピンホールやクラックがなくて膨張できればよく、具体的にはラテックス(商品名)等の天然ゴムやイソプレンゴムやシリコーンゴム等の合成ゴムが使用できる。また、液体や気体の送排により、折り畳み自在な他のゴムや樹脂等を用いる事もできる。
【0045】
(作用)
本実施形態に係る内視鏡用カテーテル60は上述した第1実施形態のものと同様に図示しない内視鏡を使用して体腔内に導入して用いることができる。
【0046】
内視鏡用カテーテル60を体腔内に導入する場合、膨張部材としてのバルーン52は図5に示す状態で収縮した状態にある。この膨張部材としてのバルーン52を膨張させる場合は、シリンジ接続用口部32より、滅菌生理食塩水を注入して、アウター通路34を経てバルーン52内に滅菌生理食塩水を送り込み、図6に示すようにバルーン52を膨張させるように加圧する。
【0047】
この際、内チューブ16が図5の状態から図6の状態になるまで、操作部12の操作ノブ46を先端側方向aへ前進させる。それにより操作ノブ46がパッキン保持部材43に当たるよリ先にストッパ41が操作部12の本体部材31における当接部47に突き当たり、それ以上の前進は阻止される(前進阻止機能)。バルーン52が膨張後、操作ノブ46を先端方向aへ前進させる事により、気管支50の内壁に圧迫して密着する。
【0048】
この気管支肺胞洗浄後、操作ノブ46を図6から図5に示す状態になるように基端側方向bへ操作ノブ46を引いて移動させる。これにより、アウター通路34と、シリンジ接続部32が連通して、バルーン52自体の収縮力やシリンジ接続部32に陰圧を加える事により、バルーン52を収縮させる。そして、図5に示すように、バルーン52は外チューブ15の外径より小さくなる。したがって、第1実施形態の構成と同様に気管支肺胞洗浄を用いた検査方法についても使用できる。
【0049】
(効果)
上記の構成により、第1実施形態の効果と同様な効果が得られる。また、バルーン52を膨縮させるので、迅速に操作できるとともに安定した密着状態が保たれるので、限局的に気管支肺胞洗浄を確実に行う事が出来る。
【0050】
なお、本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、他の形態にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係る内視鏡用カテーテル全体の縦断面図。
【図2】同じく第1実施形態に係る内視鏡用カテーテルの使用手順を示す縦断面図。
【図3】同じく第1実施形態に係る内視鏡用カテーテルの使用手順を示す縦断面図。
【図4】同じく第1実施形態に係る内視鏡用カテーテルの使用手順を示す縦断面図。
【図5】本発明の第2実施形態に係る内視鏡用カテーテル全体の縦断面図。
【図6】同じく第2実施形態に係る内視鏡用カテーテル全体の縦断面図。
【符号の説明】
【0052】
10…内視鏡用カテーテル
11…挿入部
12…操作部
15…外チューブ
16…内チューブ
20…処置部
21…送排水部材
23…吸水性高分子ゲル
24…隙間
27…袋
32…シリンジ接続用口部
34…アウター通路
37…インナー通路
44…パッキン
46…操作ノブ
48…側孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部が長尺で可撓性がある外チューブと、
上記外チューブ内に配置された内チューブと、
上記内チューブ内に形成される第1通路と、
上記外チューブと内チューブとの間の空間により形成される第2通路と、
上記内チューブの先端に設けられ、上記第1通路に連通するノズル部材と、
上記ノズル部材に設けられ、上記第2通路の先端に位置して配置されるとともに上記第2通路によって供給される流体により径方向への膨張が可能な膨張部材と、
操作部に設けられた流体送排手段接続用口部と、
上記操作部に設けられた操作手段と、
上記操作部に設けられ、上記操作手段の操作により、上記流体送排手段接続用口部の、上記第1通路と上記第2通路への接続を切り替える手段と、
を具備した事を特徴とする内視鏡用カテーテル。
【請求項2】
挿入部が長尺で可撓性がある外チューブと、
上記外チューブ内に配置された内チューブと、
上記内チューブ内に形成される第1通路と、
上記外チューブと内チューブとの間の空間により形成される第2通路と、
上記内チューブの先端に設けられ、上記第1通路に連通するノズル部材と、
上記ノズル部材に設けられ、上記第2通路の先端に位置して配置されるとともに上記第2通路によって供給される流体により径方向への膨張が可能な膨張部材と、
操作部に設けられ、上記第2管路の基端開口に通じる流体送排手段接続用口部と、
上記操作部に設けられ、上記操作手段により、上記第2通路を塞ぐ位置と上記第2通路の基端開口を開放する位置に進退操作される封止部材と、
上記操作部に設けられ、上記流体送排手段接続用口部を上記第1通路に連通する連通路と、
上記操作部に設けられ、上記操作手段により、上記封止部材が上記第2通路の基端開口を塞ぐ位置にあるときに上記連通路により上記流体送排手段接続用口部と上記第1通路と間の連通を許容して上記口部からの流体を上記第1通路に供給可能ならしめるとともに、上記封止部材が上記第2通路を開放するときに上記連通路による上記流体送排手段接続用口部と上記第1通路との間の連通を遮断する弁手段と、
を具備した事を特徴とする内視鏡用カテーテル。
【請求項3】
上記膨張部材は、吸水性高分子ゲルを含む膨張部材である事を特徴とする請求項1または請求項2に記載の内視鏡用カテーテル。
【請求項4】
上記膨張部材は、吸水して膨張した状態で変形可能であり、かつ、上記内チューブが上記外チューブに対して引き込むときに上記膨張部材が上記外チューブ内に引き込み収納可能である事を特徴とする請求項1、請求項2または請求項3に記載の内視鏡用カテーテル。
【請求項5】
上記吸水性高分子ゲルは、伸縮性の包含袋に収納され、包含袋により上記ノズル部材の外周に取着される事を特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4に記載の内視鏡用カテーテル。
【請求項6】
上記吸水性高分子ゲルは、吸水膨張しない前の状態で上記外チューブの先端から露出する位置に保持するとともに、吸水して膨張するときに上記挿入部の前後軸方向への伸長を抑制する手段を有する事を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の内視鏡用カテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−44141(P2007−44141A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229630(P2005−229630)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】