説明

内視鏡装置

【課題】静電型エンコーダをレンズ位置検出手段として用いる内視鏡装置において、大型化や挿入部先端機構の複雑化を防ぎながら、精度の高いレンズ位置決めが可能な内視鏡装置を提供する。
【解決手段】本体装置2は、互いに所定の距離を離して配置された2つの電極を有する静電型エンコーダを用いて、移動可能なレンズ32の位置を検出する内視鏡装置である。本体装置2は、静電型エンコーダの出力値に基づき、レンズ32の位置を算出する位置算出部と、位置算出部により算出されたレンズ32の位置の値を、非接触変位計82により測定されたレンズ32の位置を示す値に補正する補正処理を行うリニアリティ補正部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡装置に関し、特に、移動可能な撮像光学系を有する内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内視鏡装置が工業及び医療の分野で広く利用されている。例えば、工業用の内視鏡装置は、メインユニットとこのメインユニットに装着されるスコープユニットとからなる。スコープユニットには可撓性の挿入チューブからなる挿入部が設けられ、この挿入部の先端部には、被写体を撮像するためのCCDあるいはCMOS等の撮像素子が取り付けられる。
【0003】
撮像素子の撮像面側には、通常被検体からの反射光を集光するためのレンズが設けられている。また、レンズは、焦点距離、F値、視野角等の特性が変えられるように交換式にすることもある。撮像素子からの映像信号は、メインユニットに送られて画像処理され、モニタ用の液晶表示装置に被検体の撮影画像が表示される。
【0004】
また、挿入部の先端は湾曲する構造となっており、その湾曲量を調整するための操作部が挿入部とメインユニットの間に設けられている。さらにまた、コンパクトフラッシュ(登録商標)やUSBメモリなどの可搬性の記憶デバイスに撮像素子で撮影した静止画や動画を記録する、或いは、その画像を再生して液晶表示装置に表示する機能も設けられている。
【0005】
ところで、最近の内視鏡装置では、レンズ特性を変える手段として小型のアクチュエータが挿入部先端部に設けられることがある。アクチュエータを使ってレンズの位置を調整しCCDへの集光具合を変える。そして、その際、レンズ位置決め精度を高めるために、位置検出手段を挿入部先端部に設けるようにしてもよい。たとえ、アクチュエータの特性が耐性、温度等の影響で変化しても、位置検出手段の検出結果に基づいて適切な駆動指示をアクチュエータにフィードバックするようにして、ばらつきの無いレンズ位置決めが可能となるからである。
【0006】
その位置検出手段としては各種のセンサが想定されるが、内視鏡先端部のような微小空間での適用を考慮した場合、部品点数が少なく、かつシンプルな構成で精度の高い位置検出が可能な静電型リニアエンコーダを利用することが考えられる。静電型リニアエンコーダの場合、外部電磁ノイズの影響も受けにくい。静電型リニアエンコーダとしては、例えば特許文献1に提案されているような位相検出方式の静電型リニアエンコーダがあり、外部環境の変化に強く有効である。
【0007】
上記の特許文献1に開示された静電リニアエンコーダの場合、正負に帯電された櫛状電極を用いてスライダ電極の移動に伴い、二つの交番信号(ベクトル信号)が発生され、その信号の位相より変位と方向が検出される。基本的には櫛状電極の電極間隔により位置検出精度が決定されるものであり、耐性や温度の変化の影響を受けず高精度な位置決めが実現できるのである。特に、工業用内視鏡の挿入部先端部は、エンジン内部など温度変化の大きなところで使用されることが想定される。また、先端部への衝撃もある程度想定されるものであり、そのような状況においても安定した出力が得られるセンサが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−221472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
静電型リニアエンコーダは、向かい合う2枚の電極基板から構成される。2枚の電極間の容量変化を信号として出力して位置検出を行うため、電極間の距離は正確に一定に保つ必要がある。
【0010】
電極間の距離は正確に一定に保つために、例えば、2枚の電極をポリイミド等の絶縁部材で保護し、摺動駆動すれば、ポリイミドの厚みで2つの電極間の距離は制限されかつ距離を一定に保つことができるので、最も望ましい。
【0011】
しかし、ポリイミド等の絶縁材の表面を摺動駆動する方法は、摺動時の摩擦の影響で可動部側の電極が動きにくくなるという問題がある。また、電極駆動時に距離が変動しないように、2枚の電極を互いに密着させる当て付け機構も必要となる。よって、摺動駆動させる方法は、レンズ駆動用アクチュエータの大型化を招き、摺動駆動ための当て付け機構が必要となり、結果として、大型化及び機構の複雑化に繋がるので望ましくない。
そこで、2つの電極基板が接触しないように積極的に遠ざけて配置する方法も考えられるが、その場合は、上述したような問題は発生しなくなるものの、逆に、2枚の電極間の距離が、一方の電極基板の全移動範囲内で正確に常に一定に維持するような機構にすることは容易ではないので、2枚の電極間の容量結合が理想的な状態で無くなるため、位置検出センサの出力精度が劣化してしまうという問題が生じる。ひいては、その位置検出センサの出力を用いて算出されるレンズ位置の精度が悪くなってしまう。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、静電型エンコーダをレンズ位置検出手段として用いる内視鏡装置において、大型化や挿入部先端機構の複雑化を防ぎながら、精度の高いレンズ位置決めが可能な内視鏡装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、互いに所定の距離を離して配置された2つの電極を有する静電容量型の位置検出センサを用いて、移動可能な撮像光学系の位置を検出する内視鏡装置であって、前記静電容量型の位置検出センサの出力値に基づき、前記撮像光学系の位置を算出する位置算出部と、前記位置算出部により算出された前記撮像光学系の位置の値を、前記静電容量型の位置検出センサとは別の位置測定装置により測定された前記撮像光学系の位置を示す値、あるいは前記撮像光学系を移動させるアクチュエータへの駆動指示値を位置算出部出力相当値に換算した値、を用いて補正する補正処理を行う位置補正部とを有する内視鏡装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、静電型エンコーダをレンズ位置検出手段として用いる内視鏡装置において、大型化や挿入部先端機構の複雑化を防ぎながら、精度の高いレンズ位置決めが可能な内視鏡装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡システムの構成を示す構成図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる静電型エンコーダのセンサ部とセンサ信号出力回路の構成を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わる静電型エンコーダのスケールに相当する固定子1の構成を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係わる移動子12の構成を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係わる内視鏡システム1の回路構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係わるアクチュエータ駆動回路49とレンズ位置検出回路50の構成を説明するためのブロック図である。
【図7】図2に示す静電型エンコーダ10のリニアリティ特性を説明するための図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係わるキャリブレーションの方法について説明するための図である。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係わるルックアップテーブル75aの例を示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係わるレンズ位置検出回路50Aの構成を説明するためのブロック図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係わるレンズ位置検出回路50Bの構成を説明するためのブロック図である。
【図12】図11の回路の各信号のタイミングチャートである。
【図13】本発明の第4の実施の形態に係わるレンズ位置検出回路50Cの構成を説明するためのブロック図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態に係わるベクトル信号の歪みを説明するための図である。
【図15】本発明の第4の実施の形態に係わるルックアップテーブルを説明するための図である。
【図16】本発明の第4の実施の形態に係わるルックアップテーブルを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(第1の実施の形態)
まず図1に基づき、本実施の形態に係わる内視鏡システムの構成を説明する。図1は、本実施の形態に係わる内視鏡システムの構成を示す構成図である。
【0017】
図1において、工業用の内視鏡システム1は、メインユニットである本体装置2と、本体装置2に接続されるスコープユニット3とを含んで構成される。本体装置2は、内視鏡装置であり、内視鏡画像、操作メニュー等が表示される表示部4を有する。スコープユニット3は、操作部5を有し、接続ケーブル6により、本体装置2と接続され、可撓性の挿入チューブからなる挿入部7を有する。挿入部7の先端部8には、図示しない撮像素子、例えばCCD等、が内蔵され、撮像素子の撮像面側には、レンズ等の撮像光学系が配置されている。挿入部7の先端部8には、光学アダプタ9が取り付け可能になっている。
【0018】
先端部8には、撮像光学系のレンズ位置を検出する位置検出センサとして、後述するような静電型リニアエンコーダ(以下、静電型エンコーダという)のセンサ部が設けられている。その静電型エンコーダのセンサ部の出力は、挿入部7内の信号線を介して、本体装置2へ供給される。
【0019】
図2は、本実施の形態に係る静電型エンコーダのセンサ部とセンサ信号出力回路の構成を説明するための図である。静電容量型の位置検出センサとしての静電型エンコーダ10は、大まかに、固定子11と、移動子12とからなるセンサ部13を有する。静電型エンコーダ10は、センサ部13の他に、本体装置2に設けられる周辺回路であるベクトル生成回路20を有する。ベクトル生成回路20は、静電容量型の位置検出センサの出力に基づいてベクトル信号を生成するベクトル生成部である。
【0020】
センサ部13は、2つの電極を有する。センサ部13では、一方の電極である固定子11と他方の電極の移動子12は互いに所定の距離だけ離れて配置され、移動子12は、固定子11に対して、撮像光学系のレンズの移動に伴って移動可能に設けられている。
【0021】
図2に示すように、交流発信器21の出力(a)をアンプ22により適当な大きさに増幅し、固定子11の端子Uと端子Vに、搬送波の差動出力として印加する。そして、ベクトル生成回路20は、固定子11の端子Aと端子Cとにおいて得られる信号を差動アンプ23aで受け、また端子Bと端子Dとにおいて得られる信号を差動アンプ23bで受け、それぞれの出力(b)と(c)が後段の乗算器24a,24bとローパスフィルタ(LPF)25a,25bとからなる同期検波回路に入力されて搬送波成分を取り除き、2つのベースバンド信号からなる複素数成分「REAL」と「IMAG」とを抽出する。これらの2つの差動アンプ23a,23b、乗算器24a,24b及びローパスフィルタ25a,25bは全体でベクトル生成回路20を構成する。レンズ位置の変化に対して三角関数的に変化するベクトル信号であるA相とB相の2種の信号が、それぞれ、ローパスフィルタ25aと25bから出力される。そのA相とB相信号は、互いに位相が丁度90度ずれた性質を持つ信号である。ベクトル生成回路20は、後述するレンズ位置検出回路に含まれる。
【0022】
図3は、静電型エンコーダのスケールに相当する固定子1の構成を示す図であり、図4は、移動子12の構成を示す図である。
【0023】
固定子11は、誘導電極13a,13bと電位検出電極14とから構成され、絶縁体15の中に組み込まれている。そして、搬送波を入力する端子Uは誘導電極13aに接続され、もう一方の端子Vは誘導電極13bに接続されている。このような固定子11は、一般的に電子機器に用いられているプリント基板や、フレキシブルプリント基板(FPC)により容易に製作可能である。
【0024】
この固定子11の上に、移動子12が所定の距離だけ離して位置している。この移動子12では、絶縁体16の中に櫛歯状電極12a,12bが互いに交差指状に相対配置され、固定子11の基板平面を平面視したときに櫛歯状電極の基部が固定子11の誘導電極13a,13bの上に重なるように配置される。特徴的なことは、この移動子12には外部との接続が一切なくとも、静電誘導の原理によって、固定子11の誘導電極13a,13bを径由して電気エネルギーが移動子12へ供給されることである。このため、駆動されるレンズ等の被測定物にこの移動子12を取り付ければ、信号線引き回しなどの制約無しに被測定物を自由に移動させることができる。なお、図4に示す移動子12の櫛歯状電極12a,12bの櫛歯ピッチは、図3の固定子11の電位検出電極14の配列ピッチの2倍となっている。
【0025】
一般的に、エンコーダのスケールと呼ばれる長尺の基準体は、図2では固定子側になっているが、機能的には移動子側にもってきて移動子を長く、信号線が接続された固定子を短くしても、基本的な作用は何ら変わらない。
【0026】
図5は、内視鏡システム1の回路構成を示すブロック図である。図5に示すように、挿入部7の先端部8には、撮像素子としてのCCD31と、CCD31の撮像面に被写体像を投影するための撮像光学系のレンズ32と、被写体を照明するための照明部としてのLED33が設けられている。さらに、先端部8には、被写体のズーム等のために、レンズ32を移動するためのアクチュエータ34と、レンズ32の位置を検出するための、位置検出センサとしての静電型エンコーダ10のセンサ部13とが設けられている。
【0027】
内視鏡装置である本体装置2は、操作部5を介して、挿入部7と接続されている。本体装置2は、CPU41と、メモリ42と、操作部回路43と、電源回路44と、LED駆動回路45と、CCD信号処理回路46と、画像信号処理回路47と、画像記録回路48と、アクチュエータ駆動回路49と、レンズ位置検出回路50と、を含む。
【0028】
CPU41は、内視鏡システム1の全体の動作を制御する制御部として機能する。CPU41は、メモリ42に記憶された各種動作プログラムを実行することによって、通常動作及び後述するキャリブレーション動作を実現する。
【0029】
操作部回路43は、本体装置2及び操作部5に設けられた各種操作スイッチ等に対するユーザの操作指示を検出して、CPU41へ送信するための回路である。電源回路44は、内視鏡システム1の全体の各種回路へ必要な電源を供給するための回路である。LED駆動回路45は、挿入部7のLED33を駆動するための回路である。
【0030】
CCD信号処理回路46は、CCD31からの画像信号を処理する回路であり、画像信号処理回路47は、CCD信号処理回路46で処理された画像信号を処理するための回路である。画像記録回路48は、得られた内視鏡画像をメモリ42あるいはメモリカード等の記録媒体(図示せず)に記録するための回路である。LCD4は、画像信号処理回路47によって生成された内視鏡画像等を表示する。
【0031】
アクチュエータ駆動回路49は、レンズ32を駆動するためにアクチュエータ34を駆動する回路である。レンズ位置検出回路50は、センサ部13からの信号を処理して、レンズ32の位置を検出するための回路である。CPU41、操作部43、CCD信号処理回路46、画像信号処理回路47、アクチュエータ駆動回路49及びレンズ位置検出回路50は、バス51を介して接続されている。
【0032】
上述したように、内視鏡システム1は、通常動作モードとキャリブレーション動作モード(以下、キャリブレーションモードという)を有し、それぞれのモードにおいて、先端部8内のレンズ32を移動させるレンズ制御機構を有する。レンズ制御機構は、微小変位が可能なアクチュエータ34と、そのアクチュエータ駆動回路49、及びレンズ微小変位を検出可能なセンサ部13と、センサ部13の出力を処理するレンズ位置検出回路50を含んで構成される。レンズ位置検出回路50の出力は、アクチュエータ駆動回路49にフィードバックされる。
【0033】
CPU41は、ユーザからの操作指示に応じて、アクチュエータ駆動回路49にレンズ32の目標位置を設定すると共に、後述するキャリブレーション動作に必要なモード切り替え信号を出力する。更に、CPU41は、レンズ位置検出回路50にキャリブレーション補正用のデータを設定する。
【0034】
図6は、アクチュエータ駆動回路49とレンズ位置検出回路50の構成を説明するためのブロック図である。
【0035】
アクチュエータ駆動回路49は、ドライバ61、ゼロ検出部62、差分器63、スイッチ64、パルスジェネレータ(PG)65、キャリブレーションパルスジェネレータ(CPG)66を含む。
【0036】
ドライバ61は、アクチュエータ34へアクチュエータ駆動信号ADを出力する回路である。アクチュエータ駆動信号ADは、パルス信号であり、パルス信号のオンとオフのデューティ比によって、アクチュエータ34の動作方向(前進あるいは後退)と動作速度が決定される。
【0037】
ゼロ検出部62は、差分器63の出力が0(ゼロ)であるか否かを検出する回路であり、0(ゼロ)を検出すると、スイッチ64をオフに切り替えて、ドライバ61の出力を停止させる切り替え信号を出力する。
【0038】
差分器63は、CPU41からの目標位置信号と、レンズ位置検出回路50からの現在位置信号との差分をとり、差分信号をゼロ検出部62とパルスジェネレータ65に出力する回路である。差分器63は、CPU41からの制御信号に基づき、動作がオンとなる。
スイッチ64は、CPU41及びゼロ検出部62からの切り替え信号に基づいて、ドライバ61への出力を切り替える回路である。
【0039】
パルスジェネレータ65は、差分器63からの差分信号に応じたパルス信号を生成する回路である。キャリブレーションパルスジェネレータ66は、キャリブレーション時のパルス信号を生成する回路である。キャリブレーションパルスジェネレータ66は、CPU41からの制御信号に基づいて、動作がオンとなり、所定のパルス信号を生成して出力する。
【0040】
レンズ位置検出回路50は、ベクトル生成回路20、増幅器(AMP)71,72、アナログデジタル変換器(以下、ADCという)73、位置算出部74及びリニアリティ補正部75を含む。リニアリティ補正部75は、後述するルックアップテーブル75aを含む。ベクトル生成回路20は、上述した図2の回路である。
増幅器71と72は、それぞれ、ベクトル生成回路20からのベクトル信号であるA相信号とB相信号を、後段の回路で処理可能な振幅レベルに増幅する回路である。ADC73は、増幅器71と72からのアナログ信号を、それぞれデジタル信号に変換する回路である。
【0041】
位置算出部74は、センサ部13からの出力値に基づいてレンズ32の位置を算出する回路である。具体的には、位置算出部74は、ADC73からのA相信号とB相信号の2つの位相に基づいて、レンズ32の位置を算出し、レンズ32の現在位置信号を出力する算出回路である。
リニアリティ補正部75は、算出された位置を、正しい位置に補正するための回路であり、位置算出部74により算出されたレンズ32の位置を、後述する別の位置測定装置により測定されたレンズ32の位置を示す値に補正する補正処理を行う位置補正部である。よって、図6に示すように、位置算出部74の後段にリニアリティ補正演算部75が設けられている。
なお、静電型エンコーダ10を交流駆動する場合には、同期検波回路が必要となるが、ここでは説明は省略する。
【0042】
次に、アクチュエータ駆動回路49とレンズ位置検出回路50の動作について説明する。
図6に示すように、レンズ位置検出回路50の位置算出部74において算出されたレンズ32の現在位置は、CPU41にも出力され、CPU41でモニタ可能となっている。そして、その後段のリニアリティ補正部75において歪み特性が補正された現在位置信号は、アクチュエータ駆動回路49に入力される。
【0043】
アクチュエータ駆動回路49では、通常動作時、CPU41から設定される目標位置とレンズ位置検出回路50からの補正された現在位置の差分に応じて、アクチュエータ34への駆動指示(オンとオフ)及び極性反転が行われる。
【0044】
図6のアクチュエータ駆動回路49は、圧電素子を用いたマイクロアクチュエータの駆動回路の場合の回路の例である。アクチュエータ34は、上述したように、パルスジェネレータ(PG)65から出力されるパルス信号のデューティ比によって、レンズ32の移動速度、向きが変わる特性を持つ。ドライバ61は、パルスジェネレータ(PG)65からの指示に従ってアクチュエータ34に必要な電力を供給する。
【0045】
例えば、目標位置と位置検出結果である現在位置との差分(残差量)が正の値である場合には、パルスジェネレータ(PG)65へは負方向の極性指示が与えられ、パルスジェネレータ(PG)65は、その指示に応じたデューティ比のパルス信号を出力する。また、ゼロ検出部62は差分(残差量)を検出し、差分の絶対値が小さく無い(0(ゼロ)でない)と判断した場合には、後段のスイッチ64をオン状態にして(すなわちドライバ61へパルスジェネレータ65の出力が供給される状態にして)、アクチュエータ駆動回路49は、アクチュエータ34を駆動する。
【0046】
また、差分(残差量)が負の値の場合には、上記と同様の処理が行われ、結果として常にレンズ32の位置は、目標位置と一致するように制御される。
【0047】
さらにまた、逆に差分が0(ゼロ)と判断された場合には、スイッチ64をオフ状態(OFF)にして(すなわち、ドライバ61がOFFに接続される状態にして)、アクチュエータ駆動回路49は、アクチュエータ34の駆動を停止する。
【0048】
また、アクチュエータ駆動回路49は、キャリブレーション動作時、後述するレンズ位置検出回路50のキャリブレーション処理に対応するため、CPU41からのキャリブレーションモードへのモードセット信号に応じて、キャリブレーション専用のキャリブレーションパルスジェネレータ(CPG)66からのパルス信号出力に応じた動作を行う。
【0049】
その場合、スイッチ64は、ドライバ61がキャリブレーションパルスジェネレータ(CPG)66の出力と接続するように切り替わる。このキャリブレーションモードでは、レンズ位置検出回路50の出力は、アクチュエータ駆動回路49においては利用されない。アクチュエータ駆動回路49は、CPU41からの直接指示に従ったデューティ比のパルス信号出力が可能である。これは、キャリブレーション動作時、レンズ32を適切な位置に移動するために必要となる。
【0050】
ここで、静電型エンコーダ10のリニアリティについて説明する。
【0051】
図7は、図2に示す静電型エンコーダ10のリニアリティ特性を説明するための図である。静電型リニアリティエンコーダ10のセンサ部13では、上述したように、2枚の基板を密着させて摺動させるのではなく、固定子11と移動子12からなる2枚の電極基板は、所定の距離だけ離して配置される。すなわち、2枚の電極は、移動子12の全移動範囲に亘って所定の距離だけ離れているように、先端部8内に配置される。
【0052】
しかし、2枚の電極間を、移動子12の全移動範囲において正確に所定の距離に維持するような機構にすることは極めて困難である。そのため、静電型エンコーダ10の出力信号に基づいて算出されたレンズ移動量は、レンズ32の実際の移動量に対して、誤差が生じてしまう。すなわち、2枚の電極間の距離が、移動子12の移動範囲内において、正確に所定の距離が維持できるならば、静電型エンコーダ10の出力は、レンズ移動量に対して線形となるが、製造されたセンサ部13における2枚の電極間の距離を移動子12の移動範囲内の全てに亘って、精度良く所定の値に維持できないため、静電型エンコーダ10の出力に基づいて算出される現在位置は、実際のレンズ移動量に対して非線形となる。すなわち、誤差が生じる。
【0053】
図7に示すように、レンズ移動量に対する実際のエンコーダ出力、具体的には位置算出部74の出力は、理想的な線形特性Iにはならず、非線形な実特性Rとなる。すなわち、位置算出部74の出力は、線形な理想特性に対して、誤差を有する。従って、静電型エンコーダ10の出力値をそのまま用いて算出したレンズ32の現在位置をアクチュエータ駆動回路49にフィードバックしても、精度の高いレンズ位置制御を行うことができない。
【0054】
そこで、内視鏡システム1のキャリブレーションモードにおいて、レンズ32の実際の位置をモニタしながら、その誤差を無くすように、位置算出部74の出力値を補正するためのデータが取得される。キャリブレーションモードにおいて取得したデータを用いて、リニアリティ補正部75において、位置算出部74の出力値が補正される。その結果、リニアリティ補正部75から出力される補正された現在位置は、理想特性に沿った値とすることができる。
【0055】
図8は、キャリブレーションの方法について説明するための図である。キャリブレーションは、例えば、内視鏡システム1の製造時に行われる。キャリブレーションを行うとき、本体装置2とキャリブレーション調整用のパソコン(PC)81が接続される。その接続は、本体装置2の外部インターフェース(以下、I/Fと略す)83を介して行われる。
【0056】
さらに、調整用のPC81に、レンズ32の実際の変位量を計測する計測器としての非接触変位計82が接続される。位置測定装置としての非接触変位計82は、例えば、光学式の距離計である。その非接触変位計82からの出力が、PC81へ入力される。
【0057】
キャリブレーション時、アクチュエータ駆動回路49は、キャリブレーションモードに設定される。キャリブレーションモードになると、アクチュエータ駆動回路49のスイッチ64は、キャリブレーションパルスジェネレータ(CPG)66をドライバ61に接続するように、切り替えられる(図6参照)。
【0058】
PC81は、CPU41を介して、アクチュエータ駆動回路49ヘレンズ32の駆動指示信号を与える。このとき、PC81は、CPU41を介してレンズ位置検出回路49で算出される位置をモニタ可能になっている。
【0059】
キャリブレーション動作について説明する。ます、PC81は、非接触変位計82の出力結果に基づいて、レンズ32が移動する全移動範囲の片端部の位置までレンズを移動する。その移動した状態のレンズ位置を起点とし、PC81は、他方の端部までレンズ32を順次移動しながら、移動中のレンズ位置算出回路49の出力をモニタして記録していく。その結果、図7の実特性Rに示したデータが得られる。この実特性Rは、以下の式(1)の関係となっている。位置算出部74により算出されたレンズ位置算出値s(エンコーダ出力値)は、非接触変位計82により得られた実レンズ位置l(レンズ移動量)の関数である。
【0060】
レンズ位置算出値s=f(l) ・・・式(1)
よって、l=f−1(s) ・・・式(2)
以上のようにして得られた実特性Rから理想的な線形特性Iの位置を求めるためのデータが生成されて、リニアリティ補正部75内のルックアップテーブル75aに記憶される。
【0061】
図9は、そのルックアップテーブルの例を示す図である。ルックアップテーブル75aは、アドレスAとアドレスデータA1とを有するものである。アドレスデータA1を書き換えることにより任意に補正量を調整することができる。
図9に示す補正前のレンズ位置(すなわち位置算出部74の算出したレンズ位置算出値)sと、補正後のレンズ位置(すなわち実レンズ位置)s1は、アドレス値、及びデータ値を変位に換算したものである。ここでは、いずれもアドレス値幅を0〜255、変位を0〜2mmのスケーリングとした。
【0062】
CPU81は、CPU41を経由して得られたデータに基づいて、ルックアップテーブル75aのデータを生成して、リニアリティ補正部75のルックアップテーブル75aに、記憶する。そして、位置補正部であるリニアリティ補正部75は、センサ部13の各出力値に対応する、別の位置測定装置である非接触変位計82により測定された値を保持するルックアップテーブル75aの補正テーブルデータにより、補正処理を行う。
【0063】
なお、上述した例では、ルックアップテーブル75aを用いて補正後のレンズ位置を求めているが、上記式(2)の具体的な計算式を求め、リニアリティ補正部75においてその計算式を用いてレンズ32の位置を計算するようにしてもよい。すなわち、リニアリティ補正部75は、センサ部13の出力値を、別の位置測定装置である非接触変位計82により測定された値に変換する演算により、補正処理を行うようにしてもよい。その場合、上記の式(2)が、簡単な計算式であれば、計算に必要な係数がメモリ42に保存される。
【0064】
なお、その求めた計算式が複雑な式となる場合には、上述したような図9に示したようなルックアップテーブル75aを生成して、リニアリティ補正部75あるいはメモリ42に保存される。
【0065】
キャリブレーション時は、上述したようなルックアップテーブル75aのデータが生成されて記憶される。通常動作時は、位置算出部74で算出された現在位置のデータは、リニアリティ補正部75においてルックアップテーブル75aを用いて補正される。その補正された現在位置は、図7において、レンズ移動量に対して理想的な線形特性Iに沿った値となる。
【0066】
その補正された現在位置が差分器63に入力されるため、精度の高いレンズ位置決めが可能となる。
以上のように、本実施の形態によれば、静電型エンコーダをレンズ位置検出手段として用いる内視鏡装置において、大型化や挿入部先端機構の複雑化を防ぎながら、精度の高いレンズ位置決めが可能な内視鏡装置を実現することができる。
【0067】
特に、上述した本実施の形態によれば、リニアリティ誤差の発生要因の如何に拘わらず、位置算出結果の誤差を補正することができる。
【0068】
なお、上述した例において、ADC73より後段からドライバ61の前段までの処理は、処理速度が許容する限りにおいてソフトウェアで実現するようにしても良い。
また、外部の非接触変位計を使わず、アクチュエータヘの駆動指示値を位置算出部出力相当値に換算した値を基準にキャリブレーションを行っても良い。その場合は、キャリブレーションを実施した時から後に発生するアクチュエータの特性変化のみを吸収する制御となる。さらに、その場合には外部の調整用のPCを使わず装置内部のCPU41を使って処理を行うことが可能となる。
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態は、静電型エンコーダにおいて出力される各ベクトル信号の振幅を一定に保つようにして、より位置検出誤差の低減を図るものである。そのために、第2の実施の形態における内視鏡システムの構成は、第1の実施の形態とは、レンズ位置検出回路の構成だけが、異なる。従って、第1の実施の形態と同じ構成については、同じ符号を用いて説明を省略し、異なる構成を主に説明する。
【0069】
図10は、本実施の形態におけるレンズ位置検出回路50Aの構成を説明するためのブロック図である。
【0070】
レンズ位置検出回路50Aは、ベクトル生成回路20、増幅器71,72、ADC73、位置算出部74及びリニアリティ補正部75に加えて、さらに、スイッチ部101と、ピーク検出部102,103を含む。スイッチ部101は、ADC73と位置算出部74の間に設けられる。
【0071】
スイッチ部101は、ADC73からのベクトル信号のA相信号とB相信号を、それぞれ、ピーク検出部102と103へ出力するように切り替える2つのスイッチ101a、101bを有している。
【0072】
CPU41は、キャリブレーションモードが設定されると、スイッチ部101に切り替え信号を出力する。スイッチ部101は、その切り替え信号が入力されると、点線で示すように、A相信号をピーク検出部102へ出力し、B相信号をピーク検出部103へ出力するように、スイッチ101a、101bを動作させる。
【0073】
CPU41は、キャリブレーションモードで、少なくともベクトル信号のA相及びB相信号の一周期分に相当する量だけレンズを移動させる。
【0074】
ピーク検出部102と103は、それぞれ入力されたA相信号とB相信号のピーク値を検出し、かつ検出したピーク値に応じたゲイン設定値SPA,SPBを増幅器71,72に設定する回路である。増幅器71,72は、それぞれ、設定されたゲイン設定値SPA,SPBに応じて入力信号を増幅する。
【0075】
ピーク検出部102,103は、入力信号の中の最大値を検出し、例えば、検出した最大値の、所定の目標値に対する比率を算出し、その比率に応じたゲインの設定を行う。従って、キャリブレーションモード時、CPU41とスイッチ部101とピーク検出部102,103は、A相信号とB相信号の振幅を一定に保つように振幅を調整する振幅調整部を構成する。この振幅調整部は、いわゆるAGC処理部ともいうことができる。
【0076】
すなわち、振幅調整部は、2つのベクトル信号の最大値を検出するピーク検出部102,103と、検出された最大値に基づいて、ベクトル信号の振幅を調整する振幅調整部とを有し、振幅調整部は、最大値に応じたゲインに基づいて2つのベクトル信号を増幅する増幅器71,72を有する。
【0077】
以上のように、キャリブレーションモード時に、スイッチ部101は、A相信号とB相信号をそれぞれピーク検出部102と103へ入力するように設定されているので、ピーク検出部102と103は、モニタした信号の最大振幅値を検出し、保持する。そして、ピーク検出部102と103は、それぞれ予め目標振幅値が設定されているので、保持された最大振幅値と目標振幅値の比率に応じて、後段の増幅器71,72に適切なゲインを設定し保持させる。
【0078】
なお、キャリブレーションモードとは別に、ピーク検出モードをユーザが指示できるようにして、ピーク検出モードが設定されると、上述した動作が行われるようにしてもよい。
【0079】
通常動作時、すなわち、内視鏡システム1の使用時は、スイッチ部101は、A相信号とB相信号を位置算出部74に入力するように、スイッチ101a、101bを動作させる。通常動作時、増幅器71と72は、設定されたゲインにより、A相及びB相信号の最大値は、所定の目標値と同じになる。
【0080】
よって、本実施の形態によれば、第一の実施の形態の効果に加えて、位置算出部74に入力される位相信号の振幅は一定になるので、各ベクトル信号の振幅誤差による位置検出誤差の低減を図ることができる。
【0081】
なお、上述した例では、A相信号とB相信号の両方に対してピークを検出して振幅調整を行っているが、A相信号とB相信号の少なくとも一方に対してのみ、ピークを検出して振幅調整を行うようにしてもよい。
【0082】
また、上述した例では、ピーク検出は、信号波形の一周期内において検出するようにしているが、2周期以上に亘って検出するようにしてもよい。
さらに、移動子12の位置に応じて、ピークを検出するようにしてもよい。例えば、移動範囲を複数に分割して、分割された範囲毎に、ピークを検出し、その分割範囲毎に異なるゲインを設定できるようにしてもよい。
【0083】
さらに、変形例として、前段の増幅器71と72にゲインをフィードバックして設定するのでは無く、検出したピーク値を使って入力されたベクトル信号を正規化する(除算する)処理を行って、位置算出部74に出力するようにしても良い。
さらになお、ゲイン制御の他に、入力信号のオフセット調整機能を併せて行う機能を有するようにしても良い。
(第3の実施の形態)
第2の実施の形態では、AGCのゲイン設定等の処理がキャリブレーション時に行われているが、第3の実施の形態は、通常動作時に逐次、具体的にはゼロクロスが発生する度に、最大振幅保持値を更新するようにして、振幅誤差による位置検出誤差の低減を図っている。第3の実施の形態における内視鏡システムの構成は、第1及び第2の実施の形態とは、レンズ位置検出回路の構成だけが、異なる。従って、第1及び第2の実施の形態と同じ構成については、同じ符号を用いて説明を省略し、異なる構成を主に説明する。
【0084】
図11は、本実施の形態におけるレンズ位置検出回路50Bの構成を説明するためのブロック図である。
レンズ位置検出回路50Bは、ベクトル生成回路20、増幅器71,72及びリニアリティ補正部75は、第1及び第2の実施の形態と同じであるが、ADC73A、2値化回路112,ピーク検出部71A、ゼロクロス検出部113、除算部114及び位置算出部74Aを有する。
【0085】
2値化回路112は、増幅器72の出力Bを2値化処理する。2値化回路112から出力される信号Bdは、ゼロクロス検出部113と位置算出部74Aに出力される。ゼロクロス検出部113は、2値化された信号Bdのゼロクロスを検出する回路である。ゼロクロス検出部113は、信号Bdがゼロクロスするタイミングを検出して、その検出信号Bzをピーク検出部71Aに出力する。すなわち、ゼロクロス検出部113は、センサ部13の2つの電極の出力に基づいて生成された2つのベクトル信号の一方のゼロクロスを検出する。
【0086】
一方、ADC73Aは、増幅器71の出力をA/D変換する。ADC73Aから出力される信号Aは、ピーク検出部71Aと除算部114に出力される。ピーク検出部71Aは、ゼロクロス検出部71Aからの検出信号Bzが入力されるタイミングで、入力された2値化データである信号Aの最大値Apを検出して除算部114に出力する回路である。
【0087】
除算部114は、信号Aを最大値Apで除算する演算回路である。除算された値のデータは、位置算出部74Aに供給されて、レンズ32の位置が算出される。なお、2値化回路112の出力が位置算出部74Aに供給されているのは、ゼロクロス時の信号Aの極性を判定するためである。従って、ピーク検出部71Aと除算部114は、検出された最大値に基づいて、A相信号の振幅を一定に保つように振幅を調整する振幅調整部を構成する。
【0088】
図12は、図11の回路の各信号のタイミングチャートである。図12を用いて、レンズ位置検出回路50Bの動作を説明する。
ベクトル信号のA相信号(図12(A))は、ADC73Aでデジタル信号に変換され、A相信号に対して位相が90度ずれたB相信号(図12(B))は、ゼロクロス点を基準としてコンパレ一夕により2値化される(図12(C))。
更に、2値化された信号Bdの立ち上がりと立下りタイミング信号である検出信号Bz(図12(D))が、ゼロクロス検出部113で生成される。A相信号は、ピーク検出部71Aに入力されており、ピーク検出部71Aは、タイミング信号Bzが入力された時の信号レベルの絶対値を検出、保持するようになっている(図12(E))。図12(E)に示すように、0度から180度の間は、ピーク値A0が保持されて出力され、180度から360度の間は、ピーク値A1が保持されて出力されている。
【0089】
A相信号とB相信号は、位相が互いに90度ずれた信号であるため、B相信号がゼロクロスするタイミングでは、A相信号は最大振幅のタイミングとなっておりピークの検出ができるのである。B相信号のレベルは、位相角が0〜180度の範囲か、180度〜360度の範囲かの判断に利用される。
【0090】
そして、検出したピーク値を用いて、後段の除算部(割り算回路)において、A相信号をピーク値で割り算して、正規化して振幅ばらつきを補正する。
【0091】
更に、正規化されたA相信号と2値化されたB相信号は、位置算出部74Aに入力され、sin−1、またはcos−1の演算を行うことにより位置が算出される。従って、位置検出演算において、tan−1の演算を行う必要が無いため、割り算における分母が0の状態を回避することができる。
【0092】
以上のように、本実施の形態では、ベクトル信号のA相信号とB相信号の何れか一方を2値化し、他方の信号のピーク検出のタイミングを与えるために用い、更に、同じ2値化した値を位置算出時の位相判定に用いる。
【0093】
よって、本実施の形態によれば、第2の実施の形態にように、キャリブレーション動作への切り替えをすることなく、逐次(ゼロクロスが発生する度に)、最大振幅保持値を更新し、リアルタイムなAGC制御のような制御を行うことにより、振幅誤差による位置検出誤差の低減を図ることができる。また、本実施の形態によれば、第2の実施の形態の構成に比べて回路規模を小さくすることができる。
【0094】
なお、ゼロクロスが発生するタイミングの範囲をレンズ駆動範囲(すなわち動作レンジ端部)となるような構造設計をしておけば、キャリブレーション処理等の起点検出に活用することもできる。
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態は、移動子12が、一位相(一周期)の範囲でしか移動しないような場合に、ベクトル信号に波形歪みがあっても、精度の高いレンズ位置決めが可能な内視鏡装置を実現するものである。
【0095】
第1の実施の形態では、キャリブレーションモード時に、A相あるいはB相の信号波形の歪みは、考慮されていないが、本実施の形態では、キャリブレーションモード時に信号波形の影響も考慮して、レンズの位置を正確に算出できるようにした。
【0096】
第4の実施の形態における内視鏡システムの構成は、第1及び第3の実施の形態とは、レンズ位置検出回路の構成だけが、異なる。従って、第1及び第3の実施の形態と同じ構成については、同じ符号を用いて説明を省略し、異なる構成を主に説明する。
【0097】
図13は、本実施の形態におけるレンズ位置検出回路50Cの構成を説明するためのブロック図である。
キャリブレーションモード時には、除算部114の出力は、CPU41へ供給される。そして、位置算出/リニアリティ補正部121は、位置算出とリニアリティ補正の機能を一つの回路で実現する回路である。通常動作時、位置算出/リニアリティ補正部121は、除算部114の出力データを入力して、位置算出を行い、アクチュエータ駆動回路49にレンズ32の現在位置を出力する。
【0098】
図14は、ベクトル信号の歪みを説明するための図である。静電型エンコーダ10のリニアリティ誤差は、位置算出処理前のベクトル信号の歪みによるものである。
【0099】
第1の実施の形態で説明したキャリブレーションモードにおいて、レンズ32の移動時に、PC81でモニタされた実際のレンズ位置(すなわち一周期内の位置)に対応する除算部114の出力値を、A相信号のデータとし、位置算出/リニアリティ補正部121のルックアップテーブル121a、121bに格納しておく。すなわち、ルックアップテーブル121a、121bには、そして、実際に位置決め制御を行う場合に、位置算出処理とリニアリティ補正の処理を同時に行うためのデータが格納されている。
【0100】
図15と図16は、ルックアップテーブルの例を説明するための図である。図15は、移動子12の全移動範囲中、位相が0度から180度の範囲に対応するルックアップテーブル121aであり、図16は、移動子12の全移動範囲中、位相が180度から360度の範囲に対応するルックアップテーブル121bである。ルックアップテーブル121aと121bは、共に256のアドレスに分けて構成される。
なお、ルックアップテーブル121aと121bに基づいて、各アドレスAにおける補正前のベクトルVAと、その補正前のベクトルVAに対応する補正後アドレスデータA1と、補正後アドレスデータA1に対応する補正後のレンズ位置(すなわち実レンズ位置)s1とに補正する。
【0101】
よって、位置算出/リニアリティ補正部121は、入力されたベクトル信号のレベルに応じて、リニアリティ誤差を加味したレンズ変位量を出力することができる。
【0102】
すなわち、位置算出/リニアリティ補正部121は、生成されたベクトル信号の振幅値に基づき、レンズ32の位置を算出し、かつ算出されたレンズ32の位置の値を、別の位置測定装置により測定されたレンズ32の位置を示す値に補正する補正処理を行う位置補正部を構成する。
【0103】
CPU81は、CPU41を経由して得られたデータに基づいて、ルックアップテーブルのデータを生成して、位置算出/リニアリティ補正部121のルックアップテーブル121aと121bに、記憶する。
【0104】
以上のように、本実施の形態の内視鏡システムによれば、キャリブレーションモード時に、A相信号あるいはB相信号の波形歪みを考慮して、レンズの位置を正確に算出するためのルックアップテーブルを作成する。よって、静電型エンコーダをレンズ位置検出手段として用いる内視鏡装置において、大型化や挿入部先端機構の複雑化を防ぎながら、精度の高いレンズ位置決めが可能な内視鏡装置を実現することができる。
【0105】
また、位置算出の処理をハードウェア処理で実現する場合、sin−1演算を実施するためのROMテーブルメモリを保有する必要があるが、本実施の形態の場合、そのようなメモリとリニアリティ補正テーブルメモリを共通化しているため、回路規模が小さく、また無駄な処理が無くなるため処理を高速に行うことができる。
【0106】
さらにまた、本実施の形態でも、外部の非接触変位計を使わず、アクチュエータヘの駆動指示値を基準にキャリブレーションを行っても良い。
【0107】
なお、本実施の形態においても、第2の実施の形態で説明したピーク検出によるAGC制御も併せて行うようにしてもよい。
さらになお、上述した例では、位置算出とリニアリティ補正の2つの処理を行うためにルックアップテーブルを用いているが、そのようなルックアップテーブルを用いずに、変換式を求めてその変換式により2つの処理を行うようにしてもよい。
【0108】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変えない範囲において、種々の変更、改変等が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 内視鏡システム、2 本体装置、3 スコープユニット、4 モニタ、5 操作部、6 接続ケーブル、7 挿入部、8 先端部、9 アダプタ、10 静電型エンコーダ、11 固定子、12 移動子、12a、12b 櫛歯状電極、13 センサ部、13a、13b 誘導電極、14 電位検出電極、15,16 絶縁体、20 ベクトル生成回路、21 交流発信器、22 アンプ、23a、23b 差動アンプ、24a、24b 乗算器、25a、25b ローパスフィルタ、31 CCD,32 レンズ、33 LED、34 アクチュエータ、49 アクチュエータ駆回路、50、50A、50B、50C レンズ位置検出回路、51 バス、63 差分器、64 スイッチ、65 パルスジェネレータ、66 キャリブレーションパルスジェネレータ、75a、121a、121b ルックアップテーブル、101 スイッチ部、101a、101b スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定の距離を離して配置された2つの電極を有する静電容量型の位置検出センサを用いて、移動可能な撮像光学系の位置を検出する内視鏡装置であって、
前記静電容量型の位置検出センサの出力値に基づき、前記撮像光学系の位置を算出する位置算出部と、
前記位置算出部により算出された前記撮像光学系の位置の値を、前記静電容量型の位置検出センサとは別の位置測定装置により測定された前記撮像光学系の位置を示す値、あるいは前記撮像光学系を移動させるアクチュエータへの駆動指示値を位置算出部出力相当値に換算した値、を用いて補正する補正処理を行う位置補正部と、
を有することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記位置補正部は、前記静電容量型の位置検出センサの各出力値に対応する、前記別の位置測定装置により測定された値、あるいは前記駆動指示値を位置算出部出力相当値に換算した値を保持する補正テーブルデータにより、前記補正処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記位置補正部は、前記静電容量型の位置検出センサの各出力値を、前記別の位置測定装置により測定された値、あるいは前記駆動指示値を位置算出部出力相当値に換算した値に変換する演算により、前記補正処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記静電容量型の位置検出センサの前記2つの電極の出力に基づいて生成された2つのベクトル信号の少なくとも1つのベクトル信号の最大値を検出するピーク検出部と、
検出された前記最大値に基づいて、前記少なくとも1つのベクトル信号の振幅を調整する振幅調整部と、
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記振幅調整部は、前記最大値に応じたゲインに基づいて前記少なくとも1つのベクトル信号を増幅する増幅器を有することを特徴とする請求項4に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記静電容量型の位置検出センサの前記2つの電極の出力に基づいて生成された2つのベクトル信号の一方のゼロクロスを検出するゼロクロス検出部と、
前記ゼロクロス検出部のゼロクロス検出タイミングに応じて、前記2つのベクトル信号の他方の最大値を検出するピーク検出部と、
検出された前記最大値に基づいて、前記2つのベクトル信号の他方のベクトル信号の振幅を調整する振幅調整部と、
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記振幅調整部は、検出された前記最大値により前記他補のベクトル信号の前記振幅を除算する除算部を有することを特徴とする請求項6に記載の内視鏡装置。
【請求項8】
互いに所定の距離を離して配置された2つの電極を有する静電容量型の位置検出センサを用いて、移動可能な撮像光学系の位置を検出する内視鏡装置であって、
前記静電容量型の位置検出センサの出力に基づいてベクトル信号を生成するベクトル生成部と、
生成された前記ベクトル信号の振幅値に基づき、前記撮像光学系の位置を算出し、かつ算出された前記撮像光学系の位置の値を、前記静電容量型の位置検出センサとは別の位置測定装置により測定された前記撮像光学系の位置を示す値、あるいは前記撮像光学系を移動させるアクチュエータへの駆動指示値をベクトル生成部出力相当値に換算した値、を用いて補正する補正処理を行う位置補正部と、
を有することを特徴とする内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−27999(P2011−27999A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173595(P2009−173595)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】