説明

内視鏡装置

【課題】自家蛍光画像による内視鏡診断において、明るく、かつ、病変部を容易に識別できる画像が得られる内視鏡装置を提供する。
【解決手段】蛍光成分を励起して蛍光を発光させる励起光を照射する蛍光観察用光源と白色光を照射する通常光観察用光源を有する光源装置と、励起光の照射によって生体内の蛍光成分が発光した蛍光を内視鏡が撮影して得られたG蛍光信号およびR蛍光信号を用いて、通常光観察画像に補正係数を乗じることにより画像補正94を行い処理する処理手段92を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の自家蛍光を利用して診断を行なう内視鏡装置に関し、詳しくは、明るく、かつ、自家蛍光による病変部の識別が容易な内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において用いられている内視鏡装置による生体内部の観察としては、観察光として、白色光を生体の観察部位に入射して、生体からの反射光をCCDセンサ等で受光して、測光(光電変換)する、いわゆる通常光観察が一般的である。
【0003】
これに対して、近年では、生体内に存在する、紫外光〜青光の照射によって蛍光する生体組織を利用する、いわゆる自家蛍光観察を行なう内視鏡装置も知られている。
この自家蛍光観察では、所定の波長帯域の光を、励起光として生体の観察部位に入射して、この励起光の入射によって生体組織が発生する蛍光をCCDセンサ等で測光する。生体内の正常部と病変部とでは、励起光の入射によって生体組織が発生する蛍光の強度等が異なる。従って、この自家蛍光を利用することにより、生体内の正常部位と病変部位都を識別(判別)できる。
【0004】
このような自家蛍光観察を行なう内視鏡装置としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載される装置が知られている。
特許文献1に記載される装置では、励起光を観察部位に入射し、観察部位からの反射光および自家蛍光を、正常部と異常部とで自家蛍光強度が異なる第1のスペクトル帯域と、同自家蛍光強度が同一の第2のスペクトル帯域とに分光してCCDセンサ等の光検出器で測光する。この第1のスペクトル帯域での測光結果を例えばG(緑)チャンネルに、第2のスペクトル帯域での測光結果を例えばR(赤)チャンネルに、それぞれ、振り分けることにより、疑似カラー画像を生成して、自家蛍光観察を行なう。
【0005】
他方、特許文献2に記載される内視鏡装置では、所定の波長帯域を有する照明光と、生体組織の蛍光を発光させる励起光とを、所定の周期で、順次、観察部位に照射して、CCDセンサ等で撮像し、照明光による第1の画像信号と、生体の自家蛍光による第2の画像信号とを得る。この第1の画像信号および第2の画像信号を記憶して、前記周期に応じて同期させ、一方の画像信号を表示のためのR、G、およびB(青)チャンネルの1チャンネルあるいは2チャンネルに割り振り、他方の画像信号を残りのチャンネルに割り振ることにより、同様に疑似カラー画像を生成して、自家蛍光観察を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3810337号公報
【特許文献2】特開2006−43289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、病変部と正常部とでは、生体組織による自家蛍光の強度等が異なる。そのため、自家蛍光観察の画像によって、病変部と正常部との判別を行なうことができる。
ところが、従来の自家蛍光観察を行なう内視鏡装置は、前記特許文献1および特許文献2にも示されるように、生体組織の自家蛍光あるいはさらに生体からの反射光を受光/測光して、これを表示用のR,GおよびBのチャンネルに割り振って疑似カラー画像を表示するのみである。
ここで、周知のように、生体組織の自家蛍光は、強度(発光量)が低い。そのため、このような疑似カラー画像では、病変部と正常部とが明確に識別できない場合も多い。
【0008】
また、自家蛍光の画像信号や、所定波長帯域の観察光による画像信号を用いて、疑似カラー画像を生成しているため、白色光を観察光として用いる通常光画像に比して、全体的に、暗く、かつ、鮮鋭度が低い画像となってしまう。
【0009】
本発明の目的は、前記従来技術の問題点を解決することにあり、励起光を入射して生体組織の自家蛍光を測光する自家蛍光観察を行なう内視鏡装置において、生体組織の自家蛍光によって病変部と正常部とを明確に識別することができ、しかも、明るい自家蛍光画像を得ることができる内視鏡装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の内視鏡装置は、生体内の画像を光電的に撮影する内視鏡と、生体内の蛍光成分を励起して蛍光を発光させる励起光を照射する蛍光観察用光源、および、白色光を照射する通常光観察用光源を有する光源装置と、前記励起光の照射によって前記生体内の蛍光成分が発光した蛍光を前記内視鏡が撮影して得られたG蛍光信号およびR蛍光信号を用いて、前記白色光の照射によって前記内視鏡が撮影した通常光観察画像を処理する処理手段とを有することを特徴とする内視鏡装置を提供する。
【0011】
このような本発明の内視鏡装置において、前記蛍光観察用光源は、波長370〜470nmの光を前記励起光として照射するのが好ましい。
【0012】
また、前記処理手段は、R蛍光信号をG蛍光信号で除してなる『R蛍光信号/G蛍光信号』を用いて、前記通常光観察画像の処理を行なうのが好ましい。
この際において、前記処理手段は、前記通常画像信号のR画像信号、G画像信号、およびB画像信号の少なくとも1つに、前記『R蛍光信号/G蛍光信号』を含む補正係数を乗じることにより、前記通常光観察画像の処理を行なうのが好ましく、また、前記処理手段は、1に前記『R蛍光信号/G蛍光信号』を加算して得られる補正係数を乗じることにより、前記通常光観察画像の処理を行なうのが好ましく、さらに、前記処理手段は、前記『R蛍光信号/G蛍光信号』に所定の係数αを乗じた後に、1に加算して前記補正係数を生成するのが好ましい。
また、前記処理手段は、1から前記『R蛍光信号/G蛍光信号』を減算して得られる補正係数を乗じることにより、前記通常光観察画像の処理を行なうのが好ましく、また、前記処理手段は、前記『R蛍光信号/G蛍光信号』に所定の係数αを乗じた後に、1から減算して前記補正係数を生成するのが好ましい。
【0013】
さらに、前記内視鏡は、前記白色光の照射による通常光観察画像を撮影するための第1の固体撮像素子と、前記励起光の照射によって前記生体内の蛍光成分が発光した蛍光を撮像するための第2の固体撮像素子とを有するのが好ましい。
この際において、前記内視鏡は、1つの結像レンズで、前記第1の固体撮像素子と第2の固体撮像素子とに画像を結像するのが好ましく、さらに、前記第2の固体撮像素子は、前記励起光が通過せず、かつ、前記生体内の蛍光成分が発光した蛍光は通過するフィルタを介して、前記生体内の蛍光成分が発光した蛍光を撮影するのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
上記構成を有する本発明の内視鏡装置は、病変部と正常部とで、緑領域の自家蛍光と赤領域の自家蛍光との強度が逆になるという特性を利用することにより、病変部を強調することができる。しかも、この特性を利用して、通常光観察を基本にして、前記特性を利用して病変部の強調を行なうので、通常光観察画像と同等の明るさの自家蛍光画像を生成することができる。
従って、本発明によれば、明るい自家蛍光画像によって、病変部と正常部との識別を正確に行い、適正な診断を行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の内視鏡装置の一例の概略斜視図である。
【図2】図1に示す内視鏡装置の構成を概念的に示すブロック図である。
【図3】図1に示す内視鏡装置の処理部を概念的に示すブロック図である。
【図4】生体の病変部および正常部が生じる自家蛍光スペクトルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の内視鏡装置について、添付の図面に示される好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0017】
図1に、本発明の内視鏡装置の一例の概略斜視図を示し、図2に、図1に示す内視鏡装置の構成を概念的に示す。
【0018】
図示例の内視鏡装置10は、内視鏡12と、内視鏡12が撮影した画像の処理等を行なうプロセッサ装置14と、内視鏡12での観察(撮影)を行なうための観察光および励起光を供給する光源装置16とを有して構成される。
また、プロセッサ装置14には、内視鏡が撮影した画像を表示する表示装置18と、各種の指示等を入力するための入力装置20とが接続される。なお、プロセッサ装置14には、さらに、内視鏡が撮影した画像をハードコピーとして出力するプリンタ(記録装置)等が接続されてもよい。
本発明の内視鏡装置10は、白色光を観察光とする、いわゆる通常光観察と、観察部位に励起光を入射して、生体組織の自家蛍光を測光して画像とする、いわゆる自家蛍光観察(以下、蛍光観察とする)とを行なうことができる装置である。
【0019】
図2に示すように、内視鏡12は、CCDセンサ48等の撮像素子を用いて、生体内の画像を光電的に撮影する、いわゆる電子内視鏡である。この内視鏡12は、通常の内視鏡と同様、挿入部26と、操作部28と、ユニバーサルコード30と、コネクタ32と、ビデオコネクタ36とを有する。
内視鏡12は、観察時(診断時)には、ビデオコネクタ36がプロセッサ装置14の接続部14aに、コネクタ32が光源装置16の接続部16aに、それぞれ接続される。なお、コネクタ32には、通常の内視鏡と同様、観察部位の吸引や送気を行なう吸引手段や送気手段、観察部位に水を噴射するための吸水手段等が接続される。
【0020】
また、通常の内視鏡と同様、内視鏡12の挿入部26は、基端側の長尺な軟性部38と、CCDセンサ48等が配置される先端のスコープ部(内視鏡先端部)42と、軟性部38とスコープ部42との間の湾曲部(アングル部)40とを有し、さらに、操作部28には、湾曲部40を湾曲させる、操作ノブ28aや静止画を撮影するための撮影ボタン等が設けられる。
【0021】
図2に概念的に示すように、スコープ部42には、撮影レンズ46、CCDセンサ48、高感度CCDセンサ50、励起光カットフィルタ52、ハーフミラー54、照明用レンズ56、光ファイバ58、レンズ等を保護するためカバーガラス(図示省略)等が配置される。
【0022】
なお、図示は省略するが、内視鏡12には、鉗子等の各種の処置具を挿通するための鉗子チャンネルおよび鉗子口、吸引、送気、送水等を行うための送気/送水チャンネルおよび送気/送水口等も設けられる。
鉗子チャンネルは、湾曲部40および軟性部38を通って操作部28に設けられる鉗子挿入口に連通し、送気/送水チャンネルは、湾曲部40、軟性部38、操作部28、およびユニバーサルコード30を通って、コネクタ32の吸引手段、送気手段、送水手段との接続部に連通する。
【0023】
光ファイバ58は、湾曲部40、軟性部38、操作部28、およびユニバーサルコード30を通って、光源装置16に接続されるコネクタ32まで挿通されている。
後述する光源装置16が照射する白色光および励起光は、コネクタ32から光ファイバ58に入射して、光ファイバ58で伝搬されて、スコープ部42において、光ファイバ58の先端部から、照明用レンズ56に入射して、照明用レンズ56によって観察部位に照射される。
【0024】
また、観察光が照射された観察部位の画像(生体による反射光)は、CCDセンサ48によって撮影される。また、励起光の照射によって観察部位の生体組織が発光した自家蛍光(以下、蛍光とする)は、高感度CCDセンサ50によって撮影される。
【0025】
CCDセンサ48は、R(赤)光、G(緑)光およびB(青)光を測光することにより、カラー画像を撮像(撮影)する、一般的な内視鏡やデジタルカメラ等に利用されている通常のカラーのCCDセンサである。従って、CCDセンサ48からは、R画像、G画像、およびB画像の信号が出力される。
他方、高感度CCDセンサ50(以下、高感度センサ50とする)は、R光およびG光を測光する、微弱(低光量)な入射光も検出して信号を出力できる、高感度なCCDセンサである。従って、高感度センサ50からは、R画像およびG画像が出力される。
このようなCCDセンサ48および高感度センサ50を含むスコープ部42に関しては、後に詳述する。
【0026】
なお、本発明において、撮像素子はCCDセンサ48に限定はされず、CMOSイメージセンサ等、公知の各種の撮像素子が利用可能である。
また、高感度センサ50は、通常のカラーのCCDセンサと同様に、R光、G光およびB光を測光する高感度なCCDセンサを用い、その内のR画素およびG画素の出力信号のみを用いることにより、後述する蛍光観察を行なうようにしてもよい。
【0027】
CCDセンサ48および高感度センサ50の出力信号は、信号線によって、スコープ部42から湾曲部40、軟性部38、操作部28、ユニバーサルコード30、およびコネクタ32を通ってビデオコネクタ36に送られる。
【0028】
図示例においては、ビデオコネクタ36に、AFE(Analog Front Eend)基板64が配置される。
AFE基板64には、一例として、相関二重サンプリング回路、アンプ(自動利得制御回路)、およびA/D変換器が配置される。CCDセンサ48や高感度センサ50の出力信号は、AFE基板64において、相観二重サンプリングによるノイズ除去、アンプによる増幅を行なわれ。さらに、A/D変換器によってアナログ信号からデジタル信号に変換されて、デジタルの画像信号として、プロセッサ装置14(後述するDSP72)に、出力される。
なお、本発明の内視鏡装置において、これらの処理は、ビデオコネクタ36ではなく、コネクタ32で行なってもよく、あるいは、プロセッサ装置14で行なってもよい。
【0029】
前述のように、内視鏡装置10において、内視鏡12のコネクタ32は、光源装置16の接続部16aに接続される。
光源装置16は、生体内での観察を行なうための観察光、および、生体組織に蛍光を発光させるための励起光を、内視鏡12に供給するものである。前述のように、光源装置16から内視鏡12に供給された観察光および励起光は、コネクタ32から光ファイバ58に入射して伝搬されて、挿入部26先端のスコープ部42から観察部位に照射される。
【0030】
図2に概念的に示すように、内視鏡装置10において、光源装置16は、白色光を照射する白色光光源60と、蛍光観察を行なうための励起光を照射する励起光光源62と、光ファイバ60sおよび62aとを有する。
【0031】
白色光光源60は、いわゆる内視鏡での通常光観察に用いられる観察光である白色光を照射するものである。
従って、図示例の内視鏡装置10においては、白色光光源60のみ用いて、カラーのCCDセンサであるCCDセンサ48のみで画像を撮影することにより、白色光を観察光として用いる通常光観察を行なうことができる。
【0032】
白色光光源60には、特に限定はなく、キセノンランプや自然光LED等、内視鏡装置等で利用されている白色光を照射可能な光源が、各種、利用可能である。
また、本件出願人による特開2009−56248号公報等に例示される、光源から発せられる第一の波長帯域の光で蛍光体を励起させて、第二の波長帯域の光を生じさせ、第一および第二の波長帯域の光を混合することで白色の照明光を生成する光源(光源装置)も、白色光光源60として好適に利用可能である。
【0033】
このような蛍光体を利用する白色光光源60としては、一例として、中心波長445nmのB光のレーザ光源と、B光の一部を吸収して、緑色〜黄色に励起発光する複数種の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl1017)等の蛍光体)とからなる光源が例示される。
この白色光の光源では、B光によって励起された蛍光体による緑色〜黄色の発光光と、蛍光体で吸収されずに透過したB光とが合わされて、疑似的な白色光が得られる。
【0034】
また、このようは蛍光体を用いる白色光の光源に、中心波長405nmの青紫色光のレーザ光源を組み合わせることにより、狭帯域光を観察光として用いる、いわゆる特殊光観察(狭帯域光観察)を行なうことも可能になる。
この中心波長405nmの青紫色光のレーザ光源は、前記蛍光体には、殆ど、吸収されずに透過する。従って、この青紫色光のレーザ光源を併用することにより、白色光に青紫色光の狭帯域光が観察光として加わり、狭帯域光での特殊光撮影が可能となる。加えて、B光のレーザ光源をonにした状態で、青紫色光のレーザ光源を所定周期でon/off(高出力点灯/低出力点灯)することにより、通常光観察と特殊光観察とを(略)同時に行なうことができる。
【0035】
他方、励起光光源62は、生体内の生体組織、例えば、ポルフィリン、NADH(nicotinamide adenine dinucleotideの還元型)、NADPH(nicotinamide adenine dinucleotide phosphateの還元型)、FAD(flavin adenine dinucleotide)等を励起して、(自家)蛍光を発光させる、励起光を照射する光源である。
【0036】
励起光には、特に限定はなく、生体組織を励起して蛍光を発光させることができる波長の光が、全て利用可能である。
中でも、後述する生体組織によるR蛍光およびG蛍光の発光強度の逆特性を好適に発現できる等の点で、波長370〜470nmの光(この波長範囲内にピーク(最高強度)を有する光)が、励起光として好適に利用される。特に、前記逆特性の発現に加え、生体への安全性もより確実に確保できる等の点で、波長400〜450nmの光は、より好適に利用可能である。
【0037】
励起光光源62としては、生体組織に蛍光を発生させる励起光を十分な強度で照射できる各種の光源が、全て、利用可能である。
励起光光源62としては、一例として、上記波長範囲内にピークを有するLD等の各種のレーザ光源が、好適に例示される。また、前述の特許文献2に示されるような、キセノンランプなどの白色光光源と、励起光に対応する所定波長帯域の光を透過させるフィルタとを用いる光源も、励起光光源62として、利用可能である。
【0038】
白色光光源60が照射した白色光(通常光観察の観察光)は、光ファイバ60aによって伝搬されて、接続部16aから内視鏡12のコネクタ32に供給され、コネクタ32から光ファイバ58に供給される。他方、励起光光源62が照射した励起光は、光ファイバ62aによって伝搬されて、同様に、接続部16aから内視鏡12のコネクタ32に供給され、コネクタ32から光ファイバ58に供給される。
光ファイバ58に供給された白色光および励起光は、前述のように、光ファイバ58に寄って伝搬され、スコープ部42側の光ファイバ58の端部から出射して、照明用レンズ56によって、生体内の観察部位に照射される。
【0039】
観察光が照射された観察部位の画像(生体による反射光)、および、励起光の照射によって観察部位の生体組織が発光した蛍光は、撮影レンズ46およびハーフミラー54によって、CCDセンサ48および高感度センサ50に結像され、撮影される。
すなわち、スコープ部42には、結像レンズ46の光軸上にハーフミラー54が配置されている。このハーフミラー54を通過した光は、CCDセンサ48に入射/結像され、ハーフミラー54によって反射された光は、励起光カットフィルタ52に入射し、励起光以外の波長の光が通過して、高感度センサ50に入射/結像される。
【0040】
励起光カットフィルタ52は、励起光を遮蔽して、励起光よりも長波長側(少なくともR光領域を含む波長域)の光を透過するフィルタが、各種、利用可能である。
一例として、励起光の最大波長以下の光は遮蔽し、励起光の最大波長を超える長波長側の光を透過するフィルタが例示される。例えば、励起光光源62がLDなどのレーザ光源である場合には、中心波長+20nm以下の光、好ましくは中心波長+10nm以下の光を遮蔽し、それ以上の長波長側の光を透過するフィルタが例示される。すなわち、励起光光源62が中心波長が400nmのレーザ光源であれば、波長が420nm以下の光を遮蔽し(好ましくは波長が410nm以下の光を遮蔽し)、それ以上の長波長側の光を透過する励起光カットフィルタ52が、例示される。
また、励起光が、前記特許文献2に示されるような帯域制限フィルタによって生成された励起光である場合には、この特許文献2に示されるような、公知の励起光カットフィルタが、各種、利用可能である。
【0041】
内視鏡装置10において、通常光観察を行なう場合には、光源装置16は、白色光光源60のみから連続的に白色光(観察光)を照射して、CCDセンサ48のみで撮影を行なうことにより、通常の内視鏡装置における通常光観察と同様にして、通常光観察画像を撮影する。
【0042】
これに対し、蛍光観察を行なう場合には、光源装置16は、後述するプロセッサ装置14の制御部14bによる制御の下、白色光光源60および励起光光源62を、所定の周期で交互に点灯(駆動)する。すなわち、内視鏡装置10において、蛍光観察を行なう場合には、通常光観察を行なための観察光である白色光と、蛍光観察を行なうための励起光とが、所定周期で交互に観察部位に照射される。
なお、この白色光光源60と励起光光源62との交互点灯の周期は、センサの感度や撮影部位等に応じて、適宜、設定すればよい。
【0043】
また、蛍光観察を行なう場合には、内視鏡12は、制御部14bによる制御の下、白色光光源60が白色光を照射している際にCCDセンサ48によって撮影(サンプリング)を行い、励起光光源62が励起光を照射している際に、高感度センサ50によって撮影を行う。すなわち、内視鏡装置10において、蛍光観察を行なう場合には、前記所定周期の白色光光源60および励起光光源62の交互点灯に応じて(同期して)、CCDセンサ48での通常光画像(R画像、G画像およびB画像)の撮影と、高感度センサ50での蛍光画像(R画像およびG画像)の撮影とを、交互に行なう。
【0044】
なお、本発明において、CCDセンサ48および高感度センサ50への光路(光)の振り分けは、ハーフミラー54によって行なう構成に限定はされない。例えば、光路への全反射ミラーの出し入れによって、CCDセンサ48および高感度センサ50への光路の振り分け行なってもよい。
また、本発明の内視鏡装置10に用いられる内視鏡は、図示例のように、CCDセンサ48および高感度センサ50への光路を振り分けて、1つの撮影レンズ46に対して、通常光観察用と蛍光観察用との2つの撮像素子を設ける、いわゆる1レンズ2センサの構成にも限定はされない。例えば、同じ観察部位の通常光観察画像と蛍光画像とを所定周期で交互に撮影することができれば、通常光観察用の撮像素子と蛍光観察用の撮像素子の、それぞれに対応して撮像レンズを設ける、2レンズ2センサの構成であってもよい。
あるいは、撮像素子が十分な感度を有するものであれば、1レンズ1センサとして、結像レンズと撮像素子との間に、例えば素抜け部と励起光カットフィルタとを有するフィルタターレットを設け、通常光観察と蛍光観察とを交互に行なうようにしてもよい。
すなわち、本発明の内視鏡装置10は、同じ観察部位において、白色光による通常光観察と、励起光をカットした蛍光観察とを、交互に行なう(撮影)できる構成であれば、各種の構成が利用可能である。
【0045】
前述のように、CCDセンサ48および高感度センサ50の出力信号は、ビデオコネクタ36に送られて、AFE64によってA/D変換等の処理を行なわれ、デジタルの画像(デジタル画像信号(画像データ/画像情報))として、プロセッサ装置14(その処理部14a)に供給される。
【0046】
プロセッサ装置14は、内視鏡12から供給(出力)された通常光観察画像および蛍光画像(以下、両者を区別する必要が無い場合には、まとめて単に『画像』とも言う)に所定の処理を施して、内視鏡12が撮影した画像として表示装置18に表示すると共に、内視鏡装置10の制御を行なうものである。
図示例において、プロセッサ装置14は、画像の処理部14a、および、プロセッサ装置14自身を含む内視鏡装置10の全体を制御する制御部14bを有する。
【0047】
図3に、プロセッサ装置14における画像の処理部14aを、ブロック図によって概念的に示す。
図3に示すように、処理部14aは、DSP72と、記憶部74と、画像生成部76と、蛍光画像処理部78と、表示画像生成部80とを有する。
【0048】
プロセッサ装置14において、内視鏡12から供給された画像は、DSP72に供給される。
DSP72は、公知のDSP(Digital Signal Processor)であって、供給された画像に、ガンマ補正、色補正処理等の所定の処理を施した後、記憶部(メモリ)74の所定領域に記憶させる。
【0049】
画像が記憶部74に記憶されると、画像生成部76もしくは蛍光画像処理部78が、画像を読み出し、所定の処理を施す。
【0050】
蛍光画像処理部78は、読み出し部84およびRF/GF演算部86を有する。この蛍光画像処理部78は、蛍光観察を行なう場合のみに作用する。
蛍光画像処理部78の読み出し部84は、制御部14bによる制御の下、記憶部74に高感度センサ50によって撮影された画像が記憶された際に、画像を読み出し、RF/GF演算部86に供給する。前述のように、高感度センサ50は、R光およびG光を測光するものであり、撮影するのは励起光の入射によって生体組織が発する(自家)蛍光画像である。従って、読み出し部84が読み出して、RF/GF演算部86に供給するのは、Rの蛍光画像RFおよびGの蛍光画像GFである。
F/GF演算部86は、供給された蛍光画像RFおよび蛍光画像GFを用いて、この蛍光画像RFと蛍光画像GFとの比であるRF/GFを演算して、後述する画像生成部76の蛍光処理部92に供給する。
【0051】
他方、画像生成部76は、読み出し部90、蛍光処理部92、および、画像補正部94を有する。
画像生成部76の読み出し部90は、制御部14bによる制御の下、記憶部74にCCDセンサ48によって撮影された画像が記憶された際に、画像を読み出す。前述のように、CCDセンサ48は、通常のカラーCCDセンサであり、撮影するのは通常光画像である。従って、読み出し部84が読み出すのは、Rの通常画像RN、Gの通常画像GN、および、Bの通常画像BNである。
【0052】
蛍光処理部92は、蛍光撮影を行なう場合にのみ、作用する。従って、通常光観察の際には、読み出し部84が読み出した、通常画像RN、通常画像GNおよび通常画像BNは、蛍光処理部92では何も処理も行なわれず(蛍光処理部92を通過して)、そのまま、Rの画像RD、Gの画像GD、および、Bの画像BDとして、画像補正部94に供給される。
画像補正部94は、R、GおよびBの画像に、3×3のマトリクス処理、階調変換処理、3次元LUT処理などによる色変換処理; 画面内の血管と粘膜との色味の差をつけて血管が見易くなるように、画像の平均的な色味よりも血管と粘膜との色味の差をつける方向に強調する色彩強調処理; シャープネス処理や輪郭強調などの像構造強調処理; 等の画像補正を行なって、表示に対応する画像として、表示信号生成部80に送る。
【0053】
これに対し、蛍光観察を行なう際には、読み出し部84が読み出した、通常画像RN、通常画像GNおよび通常画像BNに、蛍光処理部92で所定の処理を施した後に、画像RD、画像GDおよび画像BDとして、画像補正部94に供給し、先と同様の画像補正を行なって、表示に対応する画像として、表示信号生成部80に送る。
【0054】
蛍光処理部92は、R画像処理部92r、G画像処理部92gおよびB画像処理部92bを有する。各画像処理部は、蛍光観察の際に、通常画像(その各画素)に対して、RF/GF演算部86が算出したRF/GF(通常画像の各画素に対応するRF/GF)を用いた処理を行なうものであり、R画像処理部92rは通常画像RNを処理してRの画像RDを、G画像処理部92gは通常画像GNを処理してGの画像GDを、B画像処理部92bは通常画像BNを処理してBの画像BDを、それぞれ、生成する。
【0055】
具体的には、図示例において、蛍光処理部92の各画像処理部は、それぞれ、下記式によって、通常画像をRF/GFで処理して、画像RD、画像GDおよび画像BDを生成する。
【数1】


なお、上記式において、αは、好ましい態様として用いられるものであり、病変部におけるRF/GFが1に近づき、好ましくは、さらに正常部におけるRF/GFが0に近づくように、適宜、設定された係数である。
【0056】
図4に、中心波長が380nmのレーザ光源から照射した光を、励起光として生体(人の大腸粘膜)に照射した際における、生体組織の(自家)蛍光スペクトルを示す。
なお、図4において、横軸は蛍光の波長を、縦軸は蛍光の強度を示すものであり、また、通常の線が病変部の蛍光で、破線が正常部の蛍光である。
【0057】
B光や青紫光を励起光として入射した際に生じる蛍光において、Rの蛍光RFは、主にポルフィリンに起因する蛍光であり、Gの蛍光GFは、主にNADHやNADPHに起因する蛍光であると考えられる。
ここで、Rの蛍光RFを見ると、例えば630nm付近の蛍光特性に示されるように、正常部では、それほど強い蛍光を示さないが、病変部では蛍光が非常に強くなっている。これに対し、Gの蛍光GFは、例えば、470〜530nm付近の蛍光特性に示されるように、正常部では強い蛍光を示すが、病変部では、差程、強い蛍光は示さない。すなわち、B光を励起光として入射した際に生体組織が発生する蛍光RFと蛍光GFとは、正常部と病変部とで、強度が逆の特性を有している。
【0058】
この病変部と正常部との蛍光RFと蛍光GFとの逆特性を利用することにより、病変部を強調することができる。
すなわち、病変部では、蛍光RFが強で蛍光GFが弱であるのでRF/GFは、大きくなり、正常部では、逆に、蛍光RFが弱で蛍光GFが強であるのでRF/GFは、小さくなる。従って、これを利用して、通常画像の、適宜、選択した色に、RF/GFを乗ずる、加算する、減算する等の処理を行なうことにより、通常画像において病変部の強調や正常部の抑制等を行なって、病変部を強調した画像を得ることができる。
【0059】
ここで、図示例においては、好ましい態様として、RF/GFが大きくなる病変部では、RF/GFが1に近づき、RF/GFが小さくなる正常部では、RF/GFが0に近づくように設定された係数αを用いている。
また、R画像では、α×RF/GFを1に加算して通常画像RNに乗じて画像RDを算出する。他方、G画像およびB画像では、α×RF/GFを1から減算して、通常画像GNおよび通常画像BNに乗算して、画像GDおよび画像BDを、それぞれ算出している。
【0060】
従って、蛍光処理部92で処理された通常画像は、正常部では、いずれも、RF/GFが0(0に近い値)であるので、R、GおよびB画像共に、通常画像には1(1に近い値)が乗じられる。従って、正常部では、通所画像と、画像RD、画像GDおよび画像BDとの間に、大きな画像の変化は無い。
これに対し、蛍光処理部92で処理された通常画像は、病変部では、通常画像RNに2(2に近い値)が乗じられ、画像RDは、通常画像RNを2倍に強調した画像となる。また、病変部では、通常画像GNおよび通常画像BNには、共に、0(0に近い値)が乗じられるので、画像GDおよび画像BDは、共に、0に近い画像となる。
すなわち、この例では、正常部に対して、病変部が赤色で強調された画像が得られる。
【0061】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、正常部と病変部とにおける蛍光RFと蛍光GFとの逆特性を利用することにより、蛍光画像(通常画像を、蛍光画像で処理した画像)において、病変部を、所定の色で強調表示することができる。しかも、通常光観察画像を基本として、蛍光画像による強調表示を行なうので、一般的な通常光観察画像と同等の明るさで、蛍光画像を表示できる。
従って、本発明の内視鏡装置によれば、病変部を強調した、明るい蛍光画像によって、正確な病変部と正常部との識別を行なうことができる。
【0062】
前述のように、係数αは、蛍光処理部92でのRF/GFを用いた通常画像の処理において、好ましい態様として用いられるものであり、病変部におけるRF/GFが1に近づくように、適宜、設定される係数である。より好ましくは、係数αは、病変部におけるRF/GFが1に近づき、さらに、正常部におけるRF/GFが0に近づくように、適宜、設定された係数である。
このような係数αを用いることにより、各色の画像が不要に大きく/小さくなることを防止して、よりバランスよく好適な病変部の強調を行なうことができる。
【0063】
このような係数αは、高感度センサ50の分光感度特性(フィルタの帯域特性や素子の(分光)感度)、光源装置16が照射する励起光の波長(分光特性)、励起光カットフィルタ52の分光特性(フィルタ特性)等の内視鏡12や光源装置14の装置特性に応じて、病変部におけるRF/GFが1に近づく(1となる)ような係数αを、適宜、設定すればよい。好ましくは、上記装置特性に応じて、病変部におけるRF/GFが1に近づき、かつ、正常部におけるRF/GFが0に近づく(0となる)ような係数αを、適宜、設定すればよい。
【0064】
以上の例では、R画像では、α×RF/GFを1に加算して画像RDを算出し(以下、このような処理を単に『加算』とする)、G画像およびB画像ではα×RF/GFを1から減算して画像GDおよび画像BDを算出して(以下、このような処理を単に『減算』とする)、病変部を赤色で強調している。
しかしながら、本発明は、これに限定はされず、蛍光処理部92では、各種の通常画像の加算および減算の処理が利用可能である。
【0065】
一例として、下記に示すように、R画像およびB画像は減算し、G画像を加算するようにしてもよい。この処理によれば、病変部は緑色で強調される。
【数2】

【0066】
あるいは、以下に示すように、R画像およびG画像は減算し、B画像は加算するようにしてもよい。この処理によれば、病変部は青色で強調される。
【数3】

【0067】
あるいは、以下に示すように、R画像およびG画像は加算し、B画像は減算するようにしてもよい。この処理によれば、病変部は黄色で強調される。
【数4】

【0068】
あるいは、以下に示すように、R画像およびB画像は加算し、G画像は減算するようにしてもよい。この処理によれば、病変部はマゼンタ色で強調される。
【数5】

【0069】
あるいは、以下に示すように、R画像は減算し、B画像およびG画像は加算するようにしてもよい。この処理によれば、病変部はシアン色で強調される。
【数6】

【0070】
あるいは、以下に示すように、R画像、B画像およびG画像を、全て、減算するようにしてもよい。この処理によれば、病変部は、正常部に対して暗く表示される。
【数7】

【0071】
さらに、以下に示すように、R画像、B画像およびG画像を、全て、加算するようにしてもよい。この処理によれば、病変部は、正常部に対して明るく表示される。
【数8】

【0072】
前述のように、係数αは、好ましい態様として用いられるものであり、必ずしも、用いる必要はない。また、前述のような内視鏡装置10の装置特性によっては、係数αを用いなくても、病変部におけるRF/GFが1に近い値となり、あるいはさらに、正常部におけるRF/GFが0に近い値となる。
また、1にRF/GFを加減算して、通常画像RN、GNおよびBNを処理するのにも限定はされず、RF/GFを、そのまま通常画像に乗算して、画像RD、GDおよびBDを算出してもよい。あるいは、RF/GFを、そのまま通常画像に加算、あるいは、減算して、画像RD、GDおよびBDを算出してもよい。
【0073】
さらに、以上の例では、R画像、G画像、および、B画像の全てに対して、RF/GFを含む補正係数での処理を行なって、画像RD、GDおよびBDを算出しているが、本発明は、これに限定はされない。
例えば、前述のような処理(数1〜数8の式に示されるような演算)において、R画像でRF/GFを加算(1+RF/GFを乗算)し、G画像ではRF/GFを減算(1−RF/GFを乗算)し、B画像は何の処理も行なわずに、画像RD、GDおよびBDを算出してもよい。あるいは、強調したい色のみに対して、RF/GFを加算してもよい。
【0074】
前述のように、読み出し部90が読み出した通常画像RN、GNおよびBNは、通常光観察の場合には蛍光処理部92では何の処理も行なわれずに、画像RD、GDおよびBDとして画像補正部94に供給される。また、蛍光観察の場合には、読み出し部90が読み出した通常画像RN、GNおよびBNは、蛍光処理部92でRF/GFによって処理された後に、画像RD、GDおよびBDとして画像補正部94に供給される。
画像RD、GDおよびBDは、画像補正部94において、色変換処理や像構造強調処理等の所定の処理を施された後に、表示用の画像(通常光観察画像/蛍光画像)として、表示画像生成部80に供給される。
【0075】
表示信号生成部80は、画像生成部76から供給された通常光観察画像や蛍光画像に、色空間の変換や拡大/縮小等の必要な処理を行い、また、画像の割り付けや被検者の氏名などの文字情報の組み込み等の必要な処理を行なって、通常光観察画像や蛍光画像を組み込んだ表示用の画像を生成し、表示装置18に、この画像を表示させる。
なお、本発明の内視鏡装置10は、通常光観察画像のみの表示、蛍光画像のみの表示を行なうのに限定はされず、蛍光処理部92で処理した蛍光画像と、蛍光処理部92で処理しない通常光観察画像とを並べて表示(並列表示)するようにしても良く、蛍光画像と通常光観察画像とをトグル的に切り替え表示するようにしてもよい。また、蛍光画像の表示、通常光画像の表示、前記並列表示、および、切り替え表示の2以上を、表示モードとして選択できるようにしてもよい。
【0076】
以下、蛍光観察を行なう場合を例に、内視鏡装置10の作用の一例を説明する。
入力装置20によって、内視鏡12による撮影開始が指示されると、光源装置16では、白色光光源60と励起光光源62とを、所定の周期で交互に点灯する。同時に、内視鏡12では、CCDセンサ48および高感度センサ50が、撮影を開始する。
白色光光源60か照射した白色光は、光ファイバ60aによって伝搬され、励起光光源が照射した励起光は、光ファイバ62aによって伝搬されて、共に、接続部16bから内視鏡12のコネクタ32に供給される。
【0077】
内視鏡12のコネクタ32に供給された白色光および励起光は、光ファイバ58がスコープ部42まで伝搬して、スコープ部42において、光ファイバ58の先端から出射して、生体の観察部位に照射される。
白色光が照射された際には、CCDセンサ48が撮影を行い、観察部位(生体による反射光)のR、GおよびBの画像が出力される。また、励起光が照射された際には、高感度センサ50が撮影を行い、観察部位の生体組織が発した蛍光のRおよびGの画像が出力される。
【0078】
両センサの出力信号は、AFE基板64に供給される。AFE基板64は、両センサの出力信号に、相関二重サンプリングによるノイズ除去、増幅、A/D変換等を行い、されて、デジタルの画像信号として、プロセッサ装置14(処理部14a)のDSP72に供給する。
DSP72は、供給された画像(画像信号)にガンマ補正、色補正処理等の所定の処理を施した後、処理済の画像を記憶部74の所定部位に記憶させる。
【0079】
画像信号が記憶部74に記憶されると、高感度センサ50が撮影したRの蛍光画像RFおよびGの蛍光画像GFは、蛍光画像処理部78の読み出し部84が読み出して、RF/GF演算部86に供給する。
また、RF/GF演算部86は、RF/GFを演算して、蛍光処理部92(R画像処理部92r、G画像処理部92gおよびB画像処理部92b)に供給する。
【0080】
他方、CCDセンサ48が撮影したRの通常画像RN、Gの通常画像GN、およびBの通常画像BNは、画像生成部76の読み出し部が読み出して、蛍光処理部92に供給する。
蛍光処理部92では、R画像処理部92rが通常画像RNを、G画像処理部92gが通常画像GNを、B画像処理部92bが通常画像BNを、それぞれ、下記に示す前述の式によってRF/GFで処理して、画像RD、画像GDおよび画像BDを、演算する。
【数9】

【0081】
蛍光処理部92で得られた画像RD、画像GDおよび画像BDは、次いで、画像補正部94において、色変換処理や像構造処理等の所定の画像補正を施されて、表示用の画像として表示画像生成部80に表示され、表示画像生成部80によって、蛍光画像として表示装置18に表示される。
この表示画像は、前述のように、通常光観察画像の基礎として、蛍光観察によって撮影された病変部を赤で強調した画像であるので、正常部と病変部との認識が容易で、かつ、通常光観察画像と同等の明るさを有する画像である。
【0082】
以上、本発明の内視鏡装置について詳細に説明したが、本発明は、上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 内視鏡装置
12 内視鏡
14 プロセッサ装置
16 光源装置
18 表示装置
20 入力装置
26 挿入部
28 操作部
30 ユニバーサルコード
32 コネクタ
36 ビデオコネクタ
38 軟性部
40 湾曲部
42 スコープ部
46 撮影レンズ
48 CCDセンサ
50 高感度(CCD)センサ
52 励起光カットフィルタ
54 ハーフミラー
56 照明用レンズ
58,60a,62a 光ファイバ
60 白色光光源
62 励起光光源
64 AFE基板
72 DSP
74 記憶部
76 画像生成部
78 蛍光画像処理部
80 表示画像生成部
80,84 読み出し部
86 RF/GF演算部
92 蛍光処理部
94 画像補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の画像を光電的に撮影する内視鏡と、
生体内の蛍光成分を励起して蛍光を発光させる励起光を照射する蛍光観察用光源、および、白色光を照射する通常光観察用光源を有する光源装置と、
前記励起光の照射によって前記生体内の蛍光成分が発光した蛍光を前記内視鏡が撮影して得られたG蛍光信号およびR蛍光信号を用いて、前記白色光の照射によって前記内視鏡が撮影した通常光観察画像を処理する処理手段とを有することを特徴とする内視鏡装置。
【請求項2】
前記蛍光観察用光源は、波長370〜470nmの光を前記励起光として照射する請求項1に記載の内視鏡装置。
【請求項3】
前記処理手段は、R蛍光信号をG蛍光信号で除してなる『R蛍光信号/G蛍光信号』を用いて、前記通常光観察画像の処理を行なう請求項1または2に記載の内視鏡装置。
【請求項4】
前記処理手段は、前記通常画像信号のR画像信号、G画像信号、およびB画像信号の少なくとも1つに、前記『R蛍光信号/G蛍光信号』を含む補正係数を乗じることにより、前記通常光観察画像の処理を行なう請求項3に記載の内視鏡装置。
【請求項5】
前記処理手段は、1に前記『R蛍光信号/G蛍光信号』を加算して得られる補正係数を乗じることにより、前記通常光観察画像の処理を行なう請求項4に記載の内視鏡装置。
【請求項6】
前記処理手段は、前記『R蛍光信号/G蛍光信号』に所定の係数αを乗じた後に、1に加算して前記補正係数を生成する請求項5に記載の内視鏡装置。
【請求項7】
前記処理手段は、1から前記『R蛍光信号/G蛍光信号』を減算して得られる補正係数を乗じることにより、前記通常光観察画像の処理を行なう請求項4〜6のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項8】
前記処理手段は、前記『R蛍光信号/G蛍光信号』に所定の係数αを乗じた後に、1から減算して前記補正係数を生成する請求項7に記載の内視鏡装置。
【請求項9】
前記内視鏡は、前記白色光の照射による通常光観察画像を撮影するための第1の固体撮像素子と、
前記励起光の照射によって前記生体内の蛍光成分が発光した蛍光を撮像するための第2の固体撮像素子とを有する請求項1〜8のいずれかに記載の内視鏡装置。
【請求項10】
前記内視鏡は、1つの結像レンズで、前記第1の固体撮像素子と第2の固体撮像素子とに画像を結像する請求項9に記載の内視鏡装置。
【請求項11】
前記第2の固体撮像素子は、前記励起光が通過せず、かつ、前記生体内の蛍光成分が発光した蛍光は通過するフィルタを介して、前記生体内の蛍光成分が発光した蛍光を撮影する請求項9または10に記載の内視鏡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−147935(P2012−147935A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8723(P2011−8723)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】