説明

内部の液圧テンション装置を含むロータ構造

【課題】容易に組み立てることができ、偏った重量、または長い中心間距離のためにシャフトの機械的挙動に悪影響を与えることのない、軸方向に重ねたロータ構造を提供することであり、そのために、タイロッドに正確な予圧を加えるようにする。
【解決手段】ロータ構造は、複数のホイール2、複数のホイールを貫通する軸方向の主タイロッド3および主タイロッドの一方の末端部にそれぞれが取り付けられた2つのシャフト4、5を含む。主タイロッド3およびシャフトの一方5と接触している端部ホイール2dの穴は、作動液を受け入れるように設計されたチャンバを画定し、主タイロッド3、液圧チャンバおよび前記端部ホイール2dが、主タイロッドに予圧を加えるように設計された内部の液圧テンション装置10を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠心圧縮機などの回転機械におけるロータの分野に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、中心タイロッドが横断する複数のホイールを含む、軸流圧縮機、ポンプ、軸流またはラジアルタービン、および電気モータのための多重ロータ構造に関する。
【背景技術】
【0003】
ロータは様々な方法で作ることができるが、特にロータは、単一の中実のシャフトを含むことができ、そのシャフト上に翼車などの要素が半径方向に組み立てられ、かつ軸方向に力およびトルクを伝達する様々な手段を用いて固定される。
【0004】
ロータはまた、中心タイロッドなど、軸方向の予圧システムを用いて共に組み立てられた翼車など、軸方向に重ねた要素を含むことができる。軸方向の固定は、予圧システムにより行われ、次いで、トルクが、接触表面間の乾燥摩擦により、またはハースもしくはカービックカップリングなど正面の歯付き部(cogging)を用いて伝達される。
【0005】
本発明は、特にロータの軸周りに配置された中心タイロッドを含む軸方向の多重ロータに適用される。
【0006】
第1の末端部で第1のシャフト端部にねじ込まれ、圧縮機ホイールがその上に取り付けられる中心タイロッドを含む軸方向に重ねたロータがある。タイロッドの第2の末端部は、第2のシャフト端部に挿入され、第2のシャフト端部は、ホイールの1つにボルトで留められる。第2のシャフト端部を貫通し、かつナットを用いて取り付けられるタイロッドを含む軸方向に重ねたロータもある。液圧ツールが、次いで、タイロッドの第2の末端部に取り付けられ、タイロッドに予圧を加えるために第2のシャフト端部に対して圧力をかける。
【0007】
しかし、このような構成は複雑であり、ロータの末端部に偏った重量を付加する。さらに、中心タイロッドの直径は、シャフト端部の直径に依存している。その結果、負荷容量を増加させることができない。このような構成の中心タイロッドの長さを短縮することはできない。
【0008】
直径が大きく、短い中心タイロッドを有するために、第2のシャフト端部は、ボルト締めフランジを用いて組み立てることもできる。しかし、このような組立ては、より複雑であり、かつねじで固定されるボルト締めフランジの予圧を正確に制御することを妨げる。
【0009】
その両方の末端部で2つのシャフト端部にねじ込まれる中心タイロッドを備える多重ロータを記述している文献である米国特許第3,749,516号への参照を行うこともできる。タイロッドは、中心の機械的なシステムにより、ねじを締め付けることにより、かつ/またはタイロッドを予熱することにより予圧をかけ、かつ心出しされる。このような解決策はまた、タイロッドの予圧を正確に制御することを妨げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,749,516号明細書
【発明の概要】
【0011】
前述のことを考慮して、本発明の目的は、中心タイロッドを有するロータに関する欠点を克服することである。
【0012】
本発明の目的は、容易に組み立てることができ、偏った重量、または長い中心間距離のためにシャフトの機械的挙動に悪影響を与えることのない、軸方向に重ねたロータ構造を提供することであり、それにより、タイロッドは、可能な限り正確に予圧が加えられるようになる。
【0013】
本発明の他の目的は、シャフト端部の直径と実質的に同一の、またはそれを超える直径を有するタイロッドを使用できるようにすることである。
【0014】
本発明は、複数のホイール、複数のホイールを貫通する軸方向の主タイロッド、および主タイロッドの一方の末端部にそれぞれが取り付けられる2つのシャフトを含むロータ構造に関する。
【0015】
主タイロッドは、主タイロッド上で直接的に、または主タイロッドに取り付けられた中間的な環状要素上に2つの肩部を有しており、シャフトの一方と接触している端部ホイールの穴と共に、作動液を受け入れるように設計されたチャンバを画定し、主タイロッド、液圧チャンバ、および前記端部ホイールが、主タイロッドに予圧を加えるように設計された内部の液圧テンション装置を形成する。
【0016】
液圧テンション装置は、ロータ構造の内側にあるので、シャフトの末端部に偏った質量が付加されることなく、それにより、ロータの動態に悪影響を与えることが阻止され、かつロータ構造の軸方向寸法を低減できるようになる。さらに、第2のシャフトの直径に関して制限されない大きな直径を有するタイロッド、およびより短い軸方向寸法を有するタイロッドを使用することを可能にし、それにより、タイロッドにおける振動の危険を制限することが可能になる。
【0017】
有利には、主タイロッドの各肩部、または環状要素の各肩部は、端部ホイールの穴と接触する密封手段を含み、前記穴の形状が、主タイロッドおよび環状要素の両方の円筒形表面に対して相補的である。
【0018】
端部ホイールは、ロータの外側へ、かつ液圧チャンバの中へと導く第1のアクセス手段を含むことができ、アクセス手段は、後者に平衡問題を生じないようにロータの軸方向の軸に対して対称であることが好ましい。
【0019】
第2のシャフトは、端部ホイールの心出しを行うための手段を含み、例えば、端部ホイールと軸方向に接触する環状のスカートを備えることが好ましい。
【0020】
有利には、第1のシャフトは、主タイロッドの第1のねじが切られた端部と協動するねじ穴を有し、また第2のシャフトは、主タイロッドの第2のねじが切られた端部と協動するねじ穴を有する。
【0021】
例えば、第1および第2のシャフトの各ねじ穴は、構造の制約に応じて、貫通孔であることも、貫通孔ではないこともありうる。
【0022】
一実施形態では、ロータ構造は、第2のシャフトのねじ穴と協動するねじが切られた雄部分と、主タイロッドの第2のねじが切られた端部と協動するねじが切られた雌部分とを有する補助タイロッドを含む。
【0023】
この場合、心出し手段は、第2のシャフトに、かつ端部ホイールに形成された前面歯付き部を含むことができる。
【0024】
補助タイロッドは、中空にすることができる。
【0025】
主タイロッドは、その全体の軸方向長さに沿った穴を有することができる。
【0026】
第2の態様によれば、本発明は、複数のホイール、複数のホイールを貫通する軸方向の主タイロッド、および2つのシャフトを有するロータ構造を組み立てるための方法に関し、その場合、
− 複数のホイールが第1のシャフトと組み立てられ、
− 主タイロッドの第1の端部が、第1のシャフトに対して心出しされ、かつそれに取り付けられ、
− 主タイロッドの2つの肩部、およびホイールの1つの穴により画定される液圧チャンバが加圧され、
− 第2のシャフトを端部ホイールに接近するように移動させるために、第2のシャフトが、第1の端部とは反対にある主タイロッドの第2の端部に配置されて取り付けられ、かつ
− 圧力が解放され、前記液圧チャンバは排液される。
【0027】
有利には、ロータの外へ、かつ液圧チャンバの中へと導く端部ホイールに形成された第1のアクセス手段を用いて、液圧チャンバは加圧され、圧力が解放され、かつ液圧チャンバが排液されるが、アクセス手段は、主タイロッドの軸方向の軸に対して対称である。
【0028】
主タイロッドの第1の端部は、第1のシャフトのねじ穴の中へとそれが当接するまでねじ込むことができる。
【0029】
第2のシャフトは、主タイロッドの第2の端部へとねじ込み、補助タイロッドを用いて取り付けることができる。
【0030】
本発明の他の目的、特性、および利点は、純粋に非限定的な例として与えられ、かつ添付の図面を参照して行われる以下の記述で述べられる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態によるロータ構造の軸方向横断面図である。
【図2】図1の液圧テンション装置を詳細に示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態によるロータ構造の軸方向の図である。
【図4】本発明の第3の実施形態によるロータ構造の軸方向の図である。
【図5a】図4の液圧テンション装置を詳細に示す図である。
【図5b】図4の液圧テンション装置を詳細に示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態によるロータ構造の軸方向の図である。
【図7】本発明の第5の実施形態によるロータ構造の軸方向の図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1および2で全体として1で参照される軸Xのロータ構造は、主タイロッド3上に軸方向に重ねられた複数の翼車2、またはディスクと、主タイロッド3の端部にそれぞれが取り付けられた2つの端部シャフト4、5とを有する。
【0033】
主タイロッド3は、各ホイール2に形成された穴を貫通する主部分3aと、各端部シャフト4、5にねじ込まれるように設計された2つのねじが切られた端部分3b、3cとを有する。この目的のために、端部シャフト4、5は、めくらのねじ穴4a、5aを有し、その軸方向寸法は、組立てが完了したとき、2つの端部シャフト4、5の望ましい相対位置に応じて決定される。示されたこの例では、様々な数のホイール2を使用することができるが、2a、2b、2c、2dで参照された4つのホイール2がある。
【0034】
第1のシャフト4は、例えば、一定の外径を有し、また第2のシャフト5は、例えば、減少する外径を有し、したがって、第2のシャフト5の最小径を超える直径を有するタイロッド3を使用することも可能である。
【0035】
ロータ構造1はまた、主タイロッド3に予圧を加えるように設計された液圧テンション装置10を含む。テンション装置10は、主タイロッド3上に形成された2つの肩部11、12により形成され、それは、タイロッド3の第2の端部3cに配置された端部ホイール2dと共に、液圧チャンバ13を画定する。液圧チャンバ13は、ロータ1の外へ、かつ液圧チャンバ13の中へと導く端部ホイール2d中に形成された第1のアクセス手段14を介して作動液を受け入れるように意図されている。アクセス手段14は、ロータ1の軸Xに対して対称的に機械加工され、したがって、どんな機械的な不平衡も生じないようにする。非限定的な例として、図示のように、第2のアクセス手段15を端部ホイール2dに形成することができる。主タイロッド3の各肩部11、12は、端部ホイール2dの穴16と接触しており、液圧チャンバ13を隔離するために、Oリングのガスケット17、18を含む。したがって、タイロッド3、液圧チャンバ13、および端部ホイール2dは、液圧シリンダを形成する。
【0036】
ロータ構造1は、以下のようにして組み立てられる。
【0037】
第1のステップでは、第1の端部シャフト4が、ホイール2のすべてのものと共に垂直に組み立てられることが好ましい。第1のホイール2aは、第1のシャフト4と接触し、また最後のホイール2dは、組立てが完了したとき、第2のシャフト5と接触するように設計される。代替的には、第1のステップは、適切なツール(図示せず)を使用して、水平に行うこともできる。
【0038】
第2ステップでは、第1のねじが切られた端部分3bが心出しされて、第1のシャフト4のねじ穴4aにねじ込まれる。主タイロッド3は、第1のシャフト4のねじ穴4aの底部に当接するまで締め付けられ、その後わずかに緩めるようにする。このねじを緩めることは、組立てが完了したとき、第2のシャフト5とホイール2の間の望ましい角度位置に応じて、修正することができる。
【0039】
主タイロッド3が第1のシャフト4にねじ込まれ、軸方向に配置された後、液圧テンション装置10は、アクセス手段14、15を用いて加圧される。代替的には、アクセス手段14、15は、最後のホイール2dの他の側に位置することもできる。いくつかのアクセス手段を設けることもできる。液圧チャンバ13を加圧すると、液圧チャンバ13中の液の圧力と組み合わせて、2つの肩部11、12の間の半径の差により決まるタイロッド3の第2の肩部12の半径方向表面12aが、主タイロッド3上に軸方向の予圧FAを生成する。予圧は、これらのパラメータの1つを変更することにより変えることができる。
【0040】
液圧と組み合わせた、2つのガスケット17、18の間の軸方向距離により決まるタイロッド3の第2の肩部12の軸方向表面12bは、液圧チャンバ13を半径方向に拡大することになる半径方向力FRを生成する。この軸方向距離は、最後のホイール2dを損傷しないように決定され、ガスケット17、18周りの作動液のどんな洩れも阻止するが、第2のシャフト5を主タイロッド上に連続して組み立てることを可能にする。
【0041】
実際に、次の組立ての第4ステップでは、軸方向の接触が、第2のシャフト5と最後のホイール2dとの間の支持表面5cで行われるまで、第2のシャフト5が、主タイロッド3の第2のねじが切られた端部分3cへとねじ込まれる。
【0042】
代替的には、正確さを向上させるために、第1の組立ては、第2のシャフト5と最後のホイール2dの間の連結位置をマーク付けするために行うことができる。
【0043】
組立てが完了すると、液圧チャンバ13中の液圧は解放され、液圧チャンバ13は排液される。アクセス手段14、15は、次いで、制御されない圧力を有する閉じた領域が生じないように、解放されたまま置かれる。液圧チャンバ13で圧力が解放された後、最後のホイール2dは、第2のシャフト5に対して締め付けられて、例えば、部品の加熱など、他の手段を用いることなく、ホイール2dのシャフト5に対する締め付けられた組立てが得られる。シャフト5は、この場合、心出し部分を構成する軸方向の円筒形の延長部5bを備えており、したがって、最後のホイール2dもまた心出しされる。
【0044】
前述の本発明によれば、穴4a、5aは、端部シャフト中でめくら穴にすることができ、それにより、圧縮機の場合に洩れる危険が低減される。このようなロータ構造1では、第2のシャフト5の直径に対して制限されない大きな直径を有するタイロッド3、および短い軸方向寸法を有するタイロッド3を使用することが可能になり、それによりタイロッド3における振動の危険を制限することが可能になる。液圧テンション装置10は、主タイロッド3に対して半径方向に、かつ軸方向に予圧を加えることを可能にする。
【0045】
図3は、図1で示されたものと同様のロータ構造1を示しており、共通の要素は共通の参照記号を有する。図3で示す液圧チャンバ13は、主タイロッド3と、例えば、主タイロッド3と最後のホイール2dとの間に配置された補助的な環状要素19とにより画定される。液圧チャンバ13は、ロータ1の外へ、かつ液圧チャンバ13の中へと導く端部ホイール2dに形成された第1のアクセス手段19aを介して、作動液を受け入れるように設計される。アクセス手段19aは、どんな機械的な不平衡も生じないようにするために、ロータ1の軸Xに対して対称に機械加工される。
【0046】
例えば、図3では、環状要素19は、2つの肩部19b、19cを含み、それぞれが、端部ホイール2dの穴16と接触しており、また液圧チャンバ13を隔離するためにOリングのガスケット19d、19eを含む。環状要素19は、ボルト(参照されていない)を用いて中心のタイロッド3に固定される。代替的には、環状要素19は、例えば、ナットなど、主タイロッド3に対するねじが切られた挿入物とすることができる。したがって、タイロッド3、環状要素19、液圧チャンバ13、および端部ホイール2dは、液圧テンション装置10を形成し、液圧シリンダとして動作する。
【0047】
図示のように、環状要素19の穴19fは、主タイロッド3の肩部11と接触している。
【0048】
したがって、液圧密封要素を支持する環状要素19が、組立てのいくつかの側面を容易にするためにタイロッドの構造に追加され、液圧力が、例えば、主タイロッド3の肩部12、または環状要素19のねじ部などの軸方向の接触要素を介して、組立て中に、主タイロッド3へと伝達される。
【0049】
図4、5a、および5bは、図1で示されたものと同様のロータ構造20を示しており、共通の要素は共通の参照記号を有する。図4で示すロータ構造20は、補助タイロッド21を含み、最後のホイール2dの歯付き部22bと協動する第2のシャフト5の接触表面5c上の歯付き部22aの使用を可能にする。この歯付き部は、例えば、第2のシャフト5および最後のホイールとは反対の各表面に半径方向に配置され、それらは、長手方向の横断面に沿って全体的にテーパの付いた形状をしていることに留意されたい。したがって、第2のシャフト5は、この場合、歯付き部22a、22bにより端部ホイール2d上で心出しされる。したがって、半径方向に拡大させることは、もはや必要ではない。
【0050】
一方の側で、補助タイロッド21は、第2のシャフト5のねじ穴5aにねじ込まれるように設計されたねじが切られた雄部分21aと、主タイロッド3の第2のねじが切られた端部分3c上にねじ込まれるように設計されたねじが切られた雌部分21bとを有する。
【0051】
補助タイロッド21は、補助タイロッド21を締め付け、かつ緩めるための外部ツール(図示せず)と協動するように設計された、その外部の円筒形表面21c上に刻み目21dを有する。代替的には、歯付き部、または軸方向の溝を使用することもできる。刻み目21dに対するアクセス穴5dはこの目的のために、第2のシャフト5の円筒形表面5e上に形成される。
【0052】
ロータ構造20は、以下のようにして組み立てられる。
【0053】
第1、第2、および第3のステップは、図1のロータ構造1を組み立てるための第1、第2、および第3のステップと同一である。液圧チャンバ13の加圧ステップの後に、補助タイロッド21の雄部分21aが、第2のシャフト5へとねじ込まれる。締め付けた後、補助タイロッド21、および第2のシャフト5により形成されたユニットは、外部ツール(図示せず)により回転が固定される。
【0054】
第5のステップで、ユニットは、次いで、第2のシャフト5と最後のホイール2dの間の望ましい角度位置が達成されるまで、すなわち、図4で示すように、歯付き部22a、22bが接触することなく、補助タイロッド21の雌部分21bを介して主タイロッド3にねじ込まれる。
【0055】
第6のステップで、第2のシャフト5および補助タイロッド21の回転が解放され、また補助タイロッド21は、第2のシャフト5の歯付き部22aが、端部ホイール2dの歯付き部22bとかみ合うまで、補助タイロッド21の外部の円筒形表面21c上に形成された刻み目21dを用いてわずかに締め付けられる。補助タイロッド21の雄部分21aのねじの方向、および雌部分21bのねじの方向は、第2のシャフト5と端部ホイール2dとの間で平行移動を生ずるように、補助タイロッド21が回転したとき、第2のシャフト5および主タイロッド3を同時に締め付けるように選択される。代替的には、いくつかの刻み目を、補助タイロッドの外部の円筒形表面上に設けることができ、また補助タイロッドの位置にかかわらずアクセス可能な少なくとも1つの刻み目を有するように、第2のシャフト上にいくつかの穴を設けることもできる。
【0056】
第2のシャフト5および端部ホイール2dが、その各歯付き部22a、22bにより固定された後、液圧チャンバ13中の液の圧力が解放され、次いで、主タイロッド3上に最終的な軸方向応力を確立するために、液圧チャンバ13は除去される。
【0057】
図6および7は、図3のロータ構造に適用される変形形態を示している。そうではあるが、これらの変型形態は、図1および2で示されたロータ構造にも同様に適用することができる。
【0058】
図6は、図4で述べたロータ構造20を示す。図6および図4は、同様の参照記号を有する同様の要素を含む。主タイロッド3は、主タイロッド3の熱慣性を変更するように、その全体の軸方向長さに沿って穴3dを有する。代替的には、補助タイロッド21もまた中空にすることができる。
【0059】
図7は、図4で述べたロータ構造20を示している。図7および図4は、同様の参照記号を有する同様の要素を含む。示した例では、主タイロッド3、および補助タイロッド21は、例えば、ロータの動態、ロータの熱挙動(thermics)、または補助タイロッドを締め付けることを可能にするツールのアクセスを最適化するために、かつ圧縮機の様々な部品間で液の再循環を保証するために、2つの端部シャフト4、5と共に中空である。このような再循環は、受動的または能動的なものとすることができ、また例えば、高温の圧縮機の場合、熱疲労サイクルを低減することが意図されうる。この構成はまた、外部のループにより制御される方法で、液をロータ内に強制的に送ることも可能である。
【0060】
この構成は、端部シャフトの密封が本質的なパラメータではない場合に限って使用することができる。
【0061】
本発明は、上記で述べた液圧装置に限定されることはない。実際に、主タイロッドに取り付けられた環状要素の存在は、何らかの大きな変更を行うことなく、図4から図7の実施形態に適用することができる。
【0062】
端部シャフトはまた、例えば、拡大可能なスリーブ、または90度回転(quarter−turn)組立体など、ねじのない手段を用いて主および/または補助タイロッドに取り付けることもできる。
【0063】
前述の実施形態のすべてにおいて、ロータ構造の構成は、組み立てるのが簡単であり、かつ構造の末端部に何らかの偏った重量要素を有することなく、構造の内側に液圧テンション装置を提供する。さらに、このような構成は、主タイロッドに加えられる応力を正確に制御することを可能にする。
【符号の説明】
【0064】
1 ロータ構造
2 ホイール
2a 第1のホイール
2b ホイール
2c ホイール
2d 端部ホイール
3 主タイロッド
3a 主部分
3b ねじが切られた端部分
3c ねじが切られた端部分
3d 穴
4 第1の端部シャフト
4a めくらのねじ穴
5 第2の端部シャフト
5a めくらのねじ穴
5b 円筒形の延長部
5c 接触表面
5d アクセス穴
5e 円筒形表面
10 液圧テンション装置
11 肩部
12 肩部
12a 半径方向表面
12b 軸方向表面
13 液圧チャンバ
14 第1のアクセス手段
15 第2のアクセス手段
16 穴
17 Oリングのガスケット
18 Oリングのガスケット
19 環状要素
19a 第1のアクセス手段
19b 肩部
19c 肩部
19d Oリングのガスケット
19e Oリングのガスケット
19f 穴
20 ロータ構造
21 補助タイロッド
21a ねじが切られた雄部分
21b ねじが切られた雌部分
21c 外部の円筒形表面
21d 刻み目
22a 歯付き部
22b 歯付き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のホイール(2)、前記複数のホイール(2)を貫通する軸方向の主タイロッド(3)、および前記主タイロッド(3)の一方の末端部にそれぞれが取り付けられた2つのシャフト(4、5)を含むロータ構造であって、前記主タイロッド(3)、および前記シャフトの一方(5)と接触している端部ホイール(2d)の穴(16)が、作動液を受け入れるように設計されたチャンバ(13)を画定し、前記主タイロッド(3)、前記液圧チャンバ(13)、および前記端部ホイール(2d)が、前記主タイロッド(3)に予圧を加えるように設計された内部の液圧テンション装置(10)を形成することを特徴とするロータ構造。
【請求項2】
前記主タイロッド(3)が、前記端部ホイール(2d)の前記穴(16)と共に前記液圧チャンバ(13)を画定する2つの肩部(11、12)を有する、請求項1記載のロータ構造。
【請求項3】
各肩部(11、12)が、前記端部ホイール(2d)の前記穴(16)と接触している密封手段(17、18)を含み、前記穴(16)の形状が、前記主タイロッド(3)の円筒形表面に対して相補的である、請求項2記載のロータ構造。
【請求項4】
前記主タイロッド(3)が、前記端部ホイール(2d)の前記穴(16)と共に、前記液圧チャンバ(13)を画定する2つの肩部(19b、19c)を有する環状挿入部(19)を有しており、各肩部(19b、19c)が、前記端部ホイール(2d)の前記穴(16)と接触している密封手段(19d、19e)を有し、前記穴(16)の前記形状が、前記環状要素(19)の円筒形表面に対して相補的である、請求項1記載のロータ構造。
【請求項5】
前記端部ホイール(2d)が、前記ロータ(1、20)の外へ、かつ前記液圧チャンバ(13)の中へと導く第1のアクセス手段(14、19a)を含み、前記アクセス手段(14、19a)が、前記ロータ(1、20)の前記構造の前記軸方向の軸(X)に対して対称である、請求項1乃至4記載のロータ構造。
【請求項6】
前記第2のシャフト(5)が、前記端部ホイール(2d)を心出しするための手段(5b)を有する、上記請求項の1項記載のロータ構造。
【請求項7】
前記心出し手段(5b)が、前記端部ホイール(2d)と軸方向に接触する環状のスカート(5c)を含む、請求項6記載のロータ構造。
【請求項8】
前記第1のシャフト(4)が、前記主タイロッド(3)の第1のねじが切られた端部(3b)と協動するねじ穴(4a)を有する、上記請求項の1項に記載のロータ構造。
【請求項9】
前記第2のシャフト(5)が、前記主タイロッド(3)の第2のねじが切られた端部(3c)と協動するねじ穴(5a)を有する、上記請求項の1項記載のロータ構造。
【請求項10】
前記第2のシャフト(5)の前記ねじ穴(5a)と協動するねじが切られた雄部分(21a)と、前記主タイロッド(3)の前記第2のねじが切られた端部(3c)と協動するねじが切られた雌部分(21b)とを有する補助タイロッド(21)を有する、請求項1乃至8記載のロータ構造。
【請求項11】
前記心出し手段が、前記第2のシャフト(5)および前記端部ホイール(2d)に形成された前面歯付き部を含む、請求項6に従属する、請求項10記載のロータ構造。
【請求項12】
前記第1および第2のシャフト(4、5)の前記各ねじ穴(4a、5a)が貫通孔である、請求項8乃至11の1項記載のロータ構造。
【請求項13】
前記補助タイロッド(21)が中空である、請求項10乃至12の1項記載のロータ構造。
【請求項14】
前記主タイロッド(3)が、その全体の軸方向長さに沿った穴(3d)を有する、請求項1乃至13の1項記載のロータ構造。
【請求項15】
複数のホイール(2)、前記複数のホイール(2)を貫通する軸方向の主タイロッド(3)、および2つのシャフト(4、5)を有するロータ構造を組み立てるための方法であって、
− 前記複数のホイール(2)が第1のシャフト(4)と組み立てられ、
− 前記主タイロッド(3)の第1の端部(3b)が、前記第1のシャフト(4)に対して心出しされ、かつそれに取り付けられ、
− 前記主タイロッド(3)の2つの肩部(11、12)、および前記ホイール(2d)の1つの穴(16)により、または前記主タイロッド(3)に取り付けられた環状要素(19)の2つの肩部(19b、19c)により画定される液圧チャンバ(13)が加圧され、
− 第2のシャフト(5)を前記端部ホイール(2d)に接近するように移動させるために、前記第2のシャフト(5)が、前記第1の端部(3b)とは反対にある前記主タイロッド(3)の第2の端部(3c)に配置されて取り付けられ、かつ
− 前記圧力が解放され、かつ前記液圧チャンバ(13)が排液される、方法。
【請求項16】
前記ロータ(1、20)の外へ、かつ前記液圧チャンバ(13)の中へと導く前記端部ホイール(2d)に形成された第1のアクセス手段(14)を用いて、前記液圧チャンバ(13)が加圧され、前記圧力が解放され、かつ前記液圧チャンバ(13)が排液され、前記アクセス手段(14)が、前記主タイロッド(3)の前記軸方向の軸(X)に対して対称である、請求項15記載の組立て方法。
【請求項17】
前記主タイロッド(3)の前記第1の端部(3b)が、前記第1のシャフト(4)のねじ穴(4a)の中へと当接するまでねじ込まれる、請求項15または16記載の組立て方法。
【請求項18】
前記第2のシャフト(5)が、前記主タイロッド(3)の前記第2のねじが切られた端部(3c)にねじ込まれる、請求項15乃至17の1項記載の組立て方法。
【請求項19】
前記第2のシャフト(5)が、補助タイロッド(21)により前記主タイロッドに取り付けられる、請求項15乃至18の1項記載の組立て方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−2448(P2013−2448A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−135469(P2012−135469)
【出願日】平成24年6月15日(2012.6.15)
【出願人】(512157977)
【氏名又は名称原語表記】THERMODYN
【Fターム(参考)】