説明

内部洗浄可能な真空装置

【課題】 熱交換器などの洗浄が可能な真空冷却装置または真空解凍装置の提供。
【解決手段】 処理槽2、蒸気エゼクタ4、熱交換器5、真空ポンプ6、洗浄液供給手段10を備える。真空ポンプ6は、処理槽2内の気体を、排気管3を介して外部へ吸引排出する。熱交換器5は、排気管3の中途に上下方向に沿って設けられ、冷却用水が給排水されることで排気管3内の蒸気の凝縮を図る。蒸気エゼクタ4は、処理槽2と熱交換器5との間に設けられる。蒸気エゼクタ4のディフューザ19は、熱交換器5と平行に隣接して配置されると共に、上方の吐出口を熱交換器5の上部に接続される。洗浄液供給手段10は、熱交換器5、ディフューザ19、および処理槽2の各上部から下方へ向けて、洗浄液を造泡して供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理槽内や、その処理槽内の気体を外部へ吸引排出する排気管内について、所望時にその洗浄が可能な各種真空装置に関するものである。特に、真空ポンプと熱交換器とを備え、所望時にその熱交換器の洗浄が可能な真空冷却装置または真空解凍装置などに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、真空冷却装置や真空解凍装置は、運転の完了後や、作業員の交代時に、手作業により洗浄されている。しかしながら、洗浄に時間や労力を要し、それに伴い洗浄を怠るおそれもあった。また、洗浄を簡易に実現するにしても、そのための設備も簡易でなければならず、たとえば圧縮空気や原水圧や耐圧容器を用いることなく実現する必要がある。
【0003】
ところで、下記特許文献1には、真空配管(9)の途中に熱交換器(12)を設けた真空冷却装置において、その熱交換器(12)を洗浄する方法が開示されている。すなわち、先端にゴム製の差し込み部材(14)を設けた洗浄水供給ライン(11)を、処理槽(2)の真空吸込口(6)に差し込み、水エゼクタ(1)を作動させた状態で、洗浄水供給ライン(11)から真空配管(9)内へ水道水を噴射することにより、熱交換器(12)を洗浄するものである。なお、括弧書きの符号は、特許文献1中の符号である。
【特許文献1】特開2001−221546公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載の発明では、熱交換器は横方向に細長く配置されており、下流側の水エゼクタを作動させた状態で、上流側から洗浄水としての水道水を供給する構成であった。従って、洗浄水は、水平に配置された熱交換器内の下辺に沿って流れることとなり、上辺に沿う部分の洗浄は十分に行えない。仮に、熱交換器内を洗浄水で満たそうとすれば、水エゼクタを作動させて真空引きしていることも伴い、相当な水量を要することとなり、そのような構成は現実的ではない。また、仮に発泡状態の洗剤を供給するにしても、熱交換器を水平に配置している限りは、水道水を供給する場合と何ら変わりはない。
【0005】
さらに、前記特許文献1に記載の発明では、洗浄水供給ラインの差し込み部材を処理槽の真空吸込口に差し込む構成であるから、必然的に処理槽内の洗浄が行えなかった。また、熱交換器以外の構成(蒸気エゼクタなど)の洗浄については、全く考慮させていなかった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、簡易な設備および作業で洗浄を確実に行うことができ、また所望により処理槽内や蒸気エゼクタ内の洗浄も併せて行うことができる真空冷却装置や真空解凍装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、密閉可能な処理槽と、この処理槽内の気体を、排気管を介して外部へ吸引排出する減圧手段と、前記排気管の中途に上下方向に沿って設けられ、冷却用水が給排水されることで前記排気管内の蒸気の凝縮を図る熱交換器と、この熱交換器の上方から下方へ向けて洗浄液を供給可能な洗浄液供給手段とを備えることを特徴とする内部洗浄可能な真空装置である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、熱交換器を縦に配置して、その上方から下方へ向けて洗浄液を供給する構成である。従って、熱交換器内の全域をムラなく確実に洗浄することができる。しかも、洗浄液は、重力によっても下方へ移動するから、減圧手段の能力に左右されず、簡易で確実な洗浄を行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記排気管には、前記処理槽と前記熱交換器との間に、蒸気エゼクタが設けられ、この蒸気エゼクタのディフューザは、前記熱交換器と平行に隣接して配置されると共に、上方の吐出口を前記熱交換器の上部に接続され、前記洗浄液供給手段からの洗浄液は、前記熱交換器の上方から下方へ向けて供給されると共に、前記ディフューザの上方から下方へ向けて供給されることを特徴とする請求項1に記載の内部洗浄可能な真空装置である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、減圧手段と熱交換器とに加えて蒸気エゼクタをさらに備える真空装置において、熱交換器に加えて蒸気エゼクタの洗浄も同様に行うことができる。しかも、蒸気エゼクタのディフューザを熱交換器と平行に隣接して配置するので、コンパクトに構成できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記排気管には、前記処理槽と前記熱交換器との間に、蒸気エゼクタが設けられ、この蒸気エゼクタのディフューザは、前記熱交換器の上部に上下方向に沿って配置されると共に、下方の吐出口を前記熱交換器へ向けて配置され、前記洗浄液供給手段からの洗浄液は、前記ディフューザの上方から下方へ向けて供給されることを特徴とする請求項1に記載の内部洗浄可能な真空装置である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、減圧手段と熱交換器とに加えて蒸気エゼクタをさらに備える真空装置において、熱交換器に加えて蒸気エゼクタの洗浄も同様に行うことができる。しかも、蒸気エゼクタのディフューザと熱交換器とを上下一直線上に配置することで、洗浄液をディフューザから熱交換器へと導いて、両者を一挙に洗浄することもできる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記洗浄液供給手段からの洗浄液は、前記処理槽内へも供給可能とされたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内部洗浄可能な真空装置である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、熱交換器などに加えて、処理槽内の洗浄も同様に行うことができる。
【0015】
さらに、請求項5に記載の発明は、前記洗浄液は、洗浄液供給管内を通過中に造泡されるか、あるいはその洗浄液供給管の先端部に設けたノズルにて造泡される洗剤とされ、前記処理槽内の気体の吸引排出手段として前記減圧手段のみを作動させた状態で、前記排気管の内外の差圧を利用して前記洗浄液が供給されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内部洗浄可能な真空装置である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、洗剤を用いて、その泡により熱交換器などを一層確実に洗浄することができる。しかも、そのための洗浄液は、減圧手段のみを作動させたときの差圧を利用して自然に行うので、簡易な設備および作業で洗浄することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の内部洗浄可能な真空装置によれば、簡易な設備および作業で洗浄を確実に行うことができ、また所望により処理槽内や蒸気エゼクタ内の洗浄も併せて行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
本発明は、減圧手段と熱交換器とを備える各種装置に適用される。具体的には、たとえば、真空冷却装置、真空解凍装置、蒸煮装置、蒸煮冷却装置などに適用される。真空冷却装置は、処理槽内の気体を外部へ吸引排出することで、処理槽内に収容された食材または食品からの水分蒸発を促し、その気化熱を利用して食材または食品の冷却を図る装置である。真空解凍装置は、処理槽内の気体を外部へ吸引排出後、処理槽内へ蒸気を供給することで、処理槽内に収容された冷凍食材または冷凍食品の解凍を図る装置である。蒸煮装置は、処理槽内の気体を外部へ吸引排出後、処理槽内へ蒸気を供給することで、処理槽内に収容された食材または食品の加熱調理を図る装置である。蒸煮冷却装置は、処理槽内の気体を外部へ吸引排出後、処理槽内へ蒸気を供給することで、処理槽内に収容された食材または食品の加熱調理を図った後、処理槽内の気体を外部へ吸引排出することで、処理槽内に収容された加熱調理後の食材または食品の冷却を図る装置である。
【0019】
いずれにしても、本実施形態の真空装置は、食材や食品などの被処理物が収容される処理槽と、排気管を介して処理槽内の気体を外部へ吸引排出して処理槽内を減圧する減圧手段と、減圧された処理槽内へ外気を導入して処理槽内を復圧する復圧手段とを備える。さらに、装置の用途に応じて所望により、処理槽内へ蒸気を供給する給蒸手段、さらには、処理槽内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する排出手段などを備えてもよい。たとえば、真空冷却装置の場合には、処理槽に減圧手段と復圧手段とが備えられ、真空解凍装置の場合には、さらに給蒸手段が備えられる。
【0020】
さらに、本実施形態の真空装置は、処理槽からの前記排気管の中途に、熱交換器を備える。この熱交換器は、冷却用水を用いて、排気管内の蒸気を冷却し、凝縮液化させるものである。熱交換器の典型的構成は、排気管内にコイル状配管を設けたものであり、そのコイル状配管内に冷却用水が通される。コイル状配管には、冷却用水として水道水を給排水してもよいし、チラーとの間で冷却用水を循環供給してもよい。また、本実施形態の真空装置は、少なくとも前記熱交換器の洗浄を図るために、洗浄液を供給可能な洗浄液供給手段を備える。以下、前記各構成について、具体的に説明する。
【0021】
前記処理槽は、食材や食品などの被処理物を収容可能な中空構造に形成され、典型的には略矩形のボックス状に形成された金属製の缶体である。この処理槽は、一側面へ開口して中空部を有する処理槽本体と、この処理槽本体の開口部を開閉する扉とから構成される。この扉が閉められた状態では、前記中空部は密閉される。但し、処理槽の構成はこれに限らず、上方へ開口する有底円筒状の処理槽本体と、この上部開口部を開閉可能に閉じる扉とから構成してもよい。
【0022】
処理槽には、処理槽内の圧力を検出する圧力センサが設けられる。但し、処理槽内の圧力と温度とは所定の関係にあるから、圧力センサに代えて、処理槽内の温度を検出する温度センサを用いてもよい。その他、処理槽には、処理槽内に収容される被処理物の温度を検出する品温センサを設置してもよい。
【0023】
前記減圧手段は、処理槽内の気体(空気および/または蒸気)を外部へ吸引排出して、処理槽内を減圧する手段であり、典型的には真空ポンプから構成される。ここでは、減圧手段は真空ポンプである、として説明する。処理槽を密閉した状態で、真空ポンプを作動させることで、処理槽内の気体は排気管を介して外部へ吸引排出され、処理槽内の減圧が図られる。処理槽内の減圧の有無は、真空ポンプの作動の有無を切り替えることでなされる。
【0024】
前記復圧手段は、減圧手段により減圧された処理槽内へ外気を導入して、処理槽内を復圧する手段である。処理槽内への外気の導入は、衛生面を考慮して、フィルターを介して行うのが望ましい。フィルターを介した清浄空気は、給気管を介して、処理槽内へ供給される。給気管の中途に設けた給気弁を開閉することで、処理槽内への外気導入の有無が切り替えられる。
【0025】
所望により設けられる前記給蒸手段は、処理槽内へ蒸気発生装置からの蒸気を供給する手段である。蒸気発生装置は、典型的にはボイラから構成される。この際、ボイラ(一次ボイラ)からの蒸気を熱源として、軟水または純水をリボイラ(二次ボイラ)にて蒸気化し、このリボイラからの清浄蒸気を処理槽内へ供給するのが好ましい。これにより、配管内の錆や、防錆剤などのボイラ水処理薬品が、処理槽内への蒸気に混入されるおそれがなく衛生的である。給蒸手段による蒸気は、給蒸管を介して処理槽内へ供給される。この給蒸管の中途には、給蒸弁が開閉可能に設けられる。この給蒸弁を開閉することで、処理槽内への蒸気供給の有無が切り替えられる。
【0026】
所望により設けられる前記排出手段は、処理槽内の蒸気やその凝縮水を外部へ排出する手段である。この排出手段は、処理槽内から蒸気を排出する排蒸管と、スチームトラップを介して処理槽内の底部から凝縮水を排出する排水管とから構成される。ここで、前記排蒸管は、処理槽の底部に接続することで、蒸気に加えてその凝縮水も排出可能となる。処理槽からの排蒸管の中途には、排蒸弁が設けられる。また、処理槽からの排水管の中途には、排水弁が設けられる。この排蒸弁および/または排水弁を開閉することで、処理槽内からの蒸気および/または凝縮水の排出の有無が切り替えられる。
【0027】
前記熱交換器は、処理槽と真空ポンプとを接続する排気管の中途に設けられる。従って、真空ポンプは、熱交換器よりも下流側に配置される。排気管内の蒸気を予め熱交換器で凝縮させておくことで、その後の真空ポンプの負荷を軽減して、減圧能力を高めることができる。この熱交換器は、排気管の中途に上下方向に沿って配置される。従って、処理槽内からの気体は、熱交換器の上方から供給され下方へ排出される。その際、熱交換器内において、蒸気が冷却されて凝縮液化が図られる。熱交換器は、前記コイル状配管への冷却用水の給水の有無が、熱交給水弁を開閉することで操作される。
【0028】
前記洗浄液供給手段は、熱交換器の上方から下方へ向けて洗浄液を供給する手段である。具体的には、洗浄液が貯留された洗浄液タンクは、洗浄液供給管を介して熱交換器の上部に接続される。その際、洗浄液供給管は、熱交換器自体に接続してもよいし、熱交換器上部の排気管に接続してもよい。後者の場合、洗浄液供給管からの洗浄液は、排気管を介して熱交換器内へ供給される。
【0029】
洗浄液タンクからの洗浄液は、ポンプを用いて強制的に熱交換器へ供給してもよいが、本実施形態では内外の差圧を利用して供給する構成である。すなわち、洗浄液供給管の中途には、電磁弁などからなる洗浄液供給弁を設けておき、真空ポンプを作動させた状態で、その洗浄液供給弁を開くことで、洗浄液タンクからの洗浄液を自然に供給することができる。
【0030】
洗浄液としては、特に問わないが、水で希釈された洗剤または石鹸水が好適に使用される。この場合、洗浄液は、洗浄液供給管内を通過中に造泡されるか、あるいはその洗浄液供給管の先端部に設けたノズルにて造泡される。従って、その泡にて、前記コイル状配管の外面など、前記熱交換器内の洗浄を効率的で確実に行うことができる。
【0031】
前記減圧手段、復圧手段、洗浄液供給手段、熱交換器、さらには所望により設けられる給蒸手段および排出手段などは、制御手段に接続されて制御される。つまり、真空ポンプ、給気弁、洗浄液供給弁、熱交給水弁、さらには所望により設けられる給蒸弁や、排蒸弁および排水弁は、制御手段としての制御器に接続されて制御される。その際、処理槽内の圧力を検出する圧力センサや、制御器自身が把握する経過時間などを用いて制御する。具体的には、予め設定されたプログラムに従い、所定の運転工程が順次に実行されると共に、その運転終了後には、所望の洗浄工程が実行可能とされる。
【0032】
洗浄工程においては、給気弁を閉じて処理槽を密閉した状態で、真空ポンプを作動させつつ、洗浄液供給弁を開けて処理槽内へ洗浄液を供給する。これにより、熱交換器の上部から下方へ向けて洗浄液が供給され、熱交換器内の洗浄が図られる。この際、熱交換器は縦に配置されているので、洗浄液が熱交換器の横断面の全域を通過して洗浄が図られる。特に、洗浄液が造泡されて供給される場合には、一層ムラのない洗浄を図ることができる。しかも、熱交換器を縦に配置していることで、洗浄液は重力によっても下方へ移動するから、真空ポンプの能力に左右されず、簡易で確実な洗浄を行うことができる。
【0033】
ところで、前記排気管には、さらに蒸気エゼクタ(ejector)を設けてもよい。この蒸気エゼクタは、周知のとおり、ディフューザと蒸気噴出ノズルとを備えて構成される。そして、蒸気エゼクタのディフューザは、基端側の吸入口が処理槽に接続され、先端側の吐出口が熱交換器へ接続される。また、ディフューザの基端部には、前記ノズルが、その噴出口をディフューザの先端側へ向けて配置されると共に、ディフューザと同一軸線上に配置される。従って、このノズルから蒸気を噴出させることで、処理槽内の気体が吸引されて吐出口へ排出される。そして、蒸気エゼクタを介した排気管内の蒸気は、熱交換器にて冷却され、凝縮液化を図られる。
【0034】
蒸気エゼクタを備える場合、蒸気エゼクタのディフューザは、熱交換器と平行に隣接して配置すると共に、上方の吐出口を熱交換器の上部に接続するのが、コンパクトに構成できるので好ましい。そして、このような構成の真空装置は、熱交換器だけでなく、蒸気エゼクタ(特にそのディフューザ)内の洗浄を図るよう構成できる。そのためには、洗浄液供給手段からの洗浄液は、熱交換器の上方から下方へ向けて供給されると共に、ディフューザの上方から下方へ向けて供給される。
【0035】
あるいは、蒸気エゼクタのディフューザは、熱交換器の上部に上下方向に沿って配置すると共に、下方の吐出口を熱交換器に接続してもよい。この場合、ディフューザと熱交換器とは、一直線上に上下方向に沿って配置される。そして、この場合も、熱交換器だけでなく、蒸気エゼクタ内の洗浄を図るように構成できる。そのためには、洗浄液供給手段からの洗浄液は、ディフューザの上方から下方へ向けて供給される。これにより、洗浄液をディフューザから熱交換器へと導いて、両者を一挙に洗浄することができる。
【0036】
いずれの構成の場合も、さらに処理槽内の洗浄を図るよう構成してもよい。その場合、洗浄液供給手段からの洗浄液を処理槽内へも供給すればよい。そして、洗浄後には、少なくとも処理槽内は、水洗いするのが好ましい。ところで、熱交換器の他、蒸気エゼクタおよび/または処理槽へも洗浄液を供給する場合、一つの洗浄液タンクからの洗浄液供給管を分岐させて、それぞれへ接続することができる。そして、洗浄液供給弁は、各分岐管それぞれに設けてもよいし、分岐前の共通管にまとめて一つ設けてもよい。各分岐管に分けて設けた場合には、各所への洗浄液の供給の有無を個別に切り替えることができる。
【実施例1】
【0037】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の真空装置の実施例1を示す概略構成図であり、真空冷却装置に適用した例を示している。この図に示すように、本実施例の真空冷却装置は、被冷却物(食材または食品)1が収容される中空構造の処理槽2と、この処理槽2内の気体(空気および/または蒸気)を、排気管3を介して外部へ吸引排出して処理槽2内を減圧する蒸気エゼクタ4、熱交換器5および真空ポンプ6と、減圧された処理槽2内へ外気を導入して復圧する復圧手段7と、処理槽2内の圧力を計測する圧力センサ8と、この圧力センサ8の出力などに基づき前記各構成4〜7を制御する制御手段9とを備える。さらに、本実施例の真空冷却装置は、処理槽2、蒸気エゼクタ4および熱交換器5の内部洗浄を図るために、それらに洗浄液を供給するための洗浄液供給手段10を備える。この洗浄液供給手段10による洗浄液の供給の有無も、前記制御手段9により制御される。
【0038】
本実施例の処理槽2は、一側面へ開口して中空部を有する処理槽本体11と、この処理槽本体11の開口部を開閉する扉12とを備えた金属製の缶体である。このような構成であるから、扉12を閉じることで、処理槽本体11の中空部は密閉される。処理槽2内への被冷却物1の収容は、処理槽2に出し入れされるワゴン(不図示)を介して行ってもよいし、図示例のように処理槽2内に棚板13を設けることで対応してもよい。また、被冷却物1は、適宜の容器に入れて、処理槽2内へ収容してもよい。
【0039】
処理槽2内の圧力を検出するために、処理槽2には圧力センサ8が設けられる。但し、圧力センサ8に代えて、温度センサ(不図示)を用いてもよい。圧力と温度とを換算することで、いずれのセンサでも利用可能である。また、処理槽2内に収容される被冷却物1の温度を検出するために、品温センサ(不図示)をさらに設けてもよい。
【0040】
処理槽2からの排気管3には、処理槽2の側から順に、蒸気エゼクタ4、熱交換器5、逆止弁14、および水封式真空ポンプ6が接続される。真空ポンプ6には、封水給水弁15を介して水が供給され、真空ポンプ6からの排水は、排水口(不図示)へ排出される。この封水給水弁15は、真空ポンプ6に連動して開かれる。一方、図示例の熱交換器5は、排気管3の一部を兼ねる円筒状外ケース16内に、コイル状配管17が上下方向に沿って配置されている。そして、コイル状配管17内には、熱交給水弁18を介して水が供給され、排水口(不図示)へ排水される。熱交換器5に冷却用水が供給されることで、排気管3内の蒸気を冷却し凝縮させることができる。
【0041】
蒸気エゼクタ4は、周知のとおり、ディフューザ19と蒸気噴出ノズル(不図示)とを備えて構成される。ディフューザ19は、先端側(図示例では上方)へ行くに従って断面積が次第に小さくなる縮径円錐台状部20が形成された後、先端側へ行くに従って断面積が次第に大きくなる拡径円錐台状部21が形成されてなる。縮径円錐台状部20は、その基端部に蒸気噴出ノズルが先端側へ向けて設けられ、その基端側周側壁に処理槽2が接続される。この蒸気噴出ノズルには、エゼクタ給蒸弁22を介して、蒸気が供給可能とされる。このエゼクタ給蒸弁22を開閉することで、蒸気噴出ノズルへの蒸気供給、ひいては処理槽2内からの真空引きが操作される。一方、ディフューザ19の拡径円錐台状部21は、その先端側周側壁が熱交換器5の外ケース16上部に接続される。
【0042】
処理槽2には、蒸気エゼクタ4や真空ポンプ6にて減圧された後、復圧するための復圧手段7が接続される。本実施例の復圧手段7は、処理槽2に接続された給気管23が、除菌フィルター24を介して外気と連通可能に設けられて構成される。この給気管23の中途には、給気弁25が開閉可能に設けられており、この給気弁25の開放により、処理槽2内は大気圧に開放可能とされる。
【0043】
処理槽2、蒸気エゼクタ4、熱交換器5には、これらに洗浄液を供給してその洗浄を図るための洗浄液供給手段10が接続される。本実施例の洗浄液供給手段10は、洗浄液が貯留された洗浄液タンク26と、この洗浄液タンク26からの洗浄液を前記各所2,4,5へ供給するための洗浄液供給管27と、その供給の有無を切り替える洗浄液供給弁28とを備える。
【0044】
洗浄液は、特に問わないが、本実施例では水で希釈された洗剤または石鹸水が使用される。洗浄液タンク26からの洗浄液供給管27は、洗浄液供給弁28を介した後、処理槽2、蒸気エゼクタ4、および熱交換器5の各所へ分岐して接続される。具体的には、処理槽2の上部、蒸気エゼクタ4のディフューザ19の上部、熱交換器5の外ケース16の上部に、それぞれ下方へ向けて洗浄液が供給可能とされる。その際、洗浄液供給管27からの洗浄液は、ノズル29を介して噴霧するのが好ましい。また、特に処理槽2内は比較的広い空間があるので、回転ノズルを用いるのがよい。
【0045】
蒸気エゼクタ4、熱交換器5、真空ポンプ6の他、復圧手段7および洗浄液供給手段10は、制御手段9により制御される。この制御手段9は、それが把握する経過時間や前記圧力センサ8からの検出信号などに基づいて、前記各構成を制御する制御器30である。具体的には、エゼクタ給蒸弁22、熱交給水弁18、真空ポンプ6、封水給水弁15、給気弁25、洗浄液供給弁28、圧力センサ8は、制御器30に接続される。
【0046】
そして、制御器30は、所定の手順(プログラム)に従い、処理槽2内の被冷却物1の真空冷却を図る。具体的には、被冷却物1を処理槽2内に収容し、処理槽2の扉12を閉じて、熱交換器5および真空ポンプ6を機能させると共に、さらに蒸気エゼクタ4を作動させて、処理槽2内の空気を吸引排出する。これにより、被冷却物1からの水分蒸発が生じ、その気化熱により被冷却物1の冷却が図られる。このような真空冷却後には、エゼクタ給蒸弁22、熱交給水弁18、封水給水弁15を閉じて、蒸気エゼクタ4および真空ポンプ6を停止した後、給気弁25を開いて一連の処理が完了する。
【0047】
真空冷却作業完了後には、処理槽2内から被冷却物1を取り出した状態で、所望により内部洗浄工程がなされる。それには、封水給水弁15を開いて真空ポンプ6を作動させた状態で、洗浄液供給弁28を開けばよい。この際、給気弁25、エゼクタ給蒸弁22、熱交給水弁18を閉じて、蒸気エゼクタ4および熱交換器5を機能させない状態とされる。真空ポンプ6を作動させた状態で、洗浄液供給弁28を開くことで、洗浄液タンク26内の洗浄液は、差圧により処理槽2内、蒸気エゼクタ4のディフューザ19内、および熱交換器5の外ケース16内に、それぞれ上方から下方へ向けて供給される。洗浄液として洗剤または石鹸水を使用している場合には、洗浄液供給管27内またはノズル29にて自然に造泡されて供給される。このようにして、処理槽2、蒸気エゼクタ4、熱交換器5、および排気管3内の洗浄が図られる。洗浄後には、少なくとも処理槽2内は、作業者により水洗いされる。
【実施例2】
【0048】
図2は、本発明の真空装置の実施例2を示す概略構成図であり、真空冷却装置に適用した例を示している。本実施例の真空冷却装置も、基本的には前記実施例1と同様の構成である。そこで、以下では、両者の異なる部分を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0049】
本実施例2では、蒸気エゼクタ4が熱交換器5の真上に配置されている点で、前記実施例1と相違する。すなわち、熱交換器5の外ケース16の上端部に、蒸気エゼクタ4のディフューザ19の下端部が接続される。
【0050】
本実施例2の場合、蒸気エゼクタ4のディフューザ19は、先端側を下方へ向けられており、蒸気噴出ノズルからの蒸気は上方から下方へ向けて噴出される。また、洗浄液供給管27は、蒸気エゼクタ4のディフューザ19の上端部(基端部)から供給され、蒸気エゼクタ4を介してその下部の熱交換器5へも供給可能とされる。これにより、蒸気エゼクタ4および熱交換器5の双方を一挙に洗浄することができる。
【0051】
本発明の蒸気加熱装置は、前記各実施例の構成に限らず、適宜変更可能である。具体的には、前記各実施例では、真空冷却装置に適用した例について説明したが、これ以外の装置にも本発明は適用可能である。たとえば、真空解凍装置、蒸煮装置または蒸煮冷却装置などにも適用可能である。真空解凍装置とする場合には、前記各実施例の構成に、処理槽2内へ蒸気を供給するための給蒸手段を設ければよい。また、蒸煮装置や蒸煮冷却装置とする場合には、前記各実施例の構成に、給蒸手段の他、処理槽2内の蒸気や空気を外部へ排出するための排蒸手段や、処理槽2内に生じた凝縮水を外部へ排出するための排水手段を設ければよい。
【0052】
また、前記各実施例のように、熱交換器5の他、蒸気エゼクタ4および/または処理槽2へも洗浄液を供給する場合、一つの洗浄液タンク26からの洗浄液供給管27を分岐させて、それぞれへ接続するが、その際、洗浄液供給弁28は各分岐管それぞれに設けて個別に開閉制御してもよい。さらに、前記各実施例では、蒸気エゼクタ4が設けられていたが、これは省略可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の真空装置の実施例1を示す概略構成図であり、真空冷却装置に適用した一例を示している。
【図2】本発明の真空装置の実施例2を示す概略構成図であり、真空冷却装置に適用した他の例を示している。
【符号の説明】
【0054】
2 処理槽
3 排気管
4 蒸気エゼクタ
5 熱交換器
6 真空ポンプ(減圧手段)
10 洗浄液供給手段
16 外ケース
17 コイル状配管
19 ディフューザ
27 洗浄液供給管
28 洗浄液供給弁
29 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉可能な処理槽と、
この処理槽内の気体を、排気管を介して外部へ吸引排出する減圧手段と、
前記排気管の中途に上下方向に沿って設けられ、冷却用水が給排水されることで前記排気管内の蒸気の凝縮を図る熱交換器と、
この熱交換器の上方から下方へ向けて洗浄液を供給可能な洗浄液供給手段と
を備えることを特徴とする内部洗浄可能な真空装置。
【請求項2】
前記排気管には、前記処理槽と前記熱交換器との間に、蒸気エゼクタが設けられ、
この蒸気エゼクタのディフューザは、前記熱交換器と平行に隣接して配置されると共に、上方の吐出口を前記熱交換器の上部に接続され、
前記洗浄液供給手段からの洗浄液は、前記熱交換器の上方から下方へ向けて供給されると共に、前記ディフューザの上方から下方へ向けて供給される
ことを特徴とする請求項1に記載の内部洗浄可能な真空装置。
【請求項3】
前記排気管には、前記処理槽と前記熱交換器との間に、蒸気エゼクタが設けられ、
この蒸気エゼクタのディフューザは、前記熱交換器の上部に上下方向に沿って配置されると共に、下方の吐出口を前記熱交換器へ向けて配置され、
前記洗浄液供給手段からの洗浄液は、前記ディフューザの上方から下方へ向けて供給される
ことを特徴とする請求項1に記載の内部洗浄可能な真空装置。
【請求項4】
前記洗浄液供給手段からの洗浄液は、前記処理槽内へも供給可能とされた
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内部洗浄可能な真空装置。
【請求項5】
前記洗浄液は、洗浄液供給管内を通過中に造泡されるか、あるいはその洗浄液供給管の先端部に設けたノズルにて造泡される洗剤とされ、
前記処理槽内の気体の吸引排出手段として前記減圧手段のみを作動させた状態で、前記排気管の内外の差圧を利用して前記洗浄液が供給される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の内部洗浄可能な真空装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−20118(P2008−20118A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191924(P2006−191924)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【出願人】(504143522)株式会社三浦プロテック (488)
【Fターム(参考)】