説明

円板状回転工具の取付け装置

【課題】回転軸の座面の磨耗や陥没を防止し、使用時の振動軽減、および回転軸への取り付け、取り外しが簡便に行える円板状回転工具の取付け装置を得る。
【解決手段】駆動側の回転軸11の外端部に段状に縮小する座面11aと小径のねじ軸12とを設け、円板状回転工具15の中心部にアタッチメント20を取り付け、該アタッチメント20は、フランジ部23、円板状回転工具15の軸心部に嵌合する嵌合軸部25、雄ねじ部26が順次形成されたホルダ21と、軸心部にホルダ21の雄ねじ部26に螺合する雌ねじ28が形成され、外側部に操作孔30が形成された円板状の締めナット27と、緩衝用の弾性体31,32とからなり、弾性体31,32は、円板状回転工具15とフランジ部23との間、及び円板状回転工具15と締めナット27との間に介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク砥石、丸鋸等の円板状回転工具を弾圧挟持して回転軸に取り付ける円板状回転工具の取付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、図7に示すものがあった。即ち、軸心部にねじ孔3aが貫通形成され、外周が外端から内端に向かって、外側面に操作穴3cが形成された大径のフランジ部3b、該フランジ部3bよりも小径にした回転止め凸部3d、該回転止め凸部3dよりも小径にした雄ねじ部3eを有するフランジ管状のボルト3を設け、該ボルト3をディスク砥石6の取付け孔6aに外側から挿通してその回転止め凸部3dを前記取付け孔6aに嵌合させ、外周の外側にクッション材5を取り付けたナット4を前記ボルト3の雄ねじ部3eにねじ込む。
【0003】
これにより、前記クッション材5を所定量弾性変形させた状態でディスク砥石6の中心部をボルト3のフランジ部3bとナット4とで挟圧し、ボルト3とディスク砥石6とクッション材5及びナット4からなるアタッチメントとディスク砥石6とを一体化させる。
【0004】
一方、ケース1から突出する駆動用の回転軸2の外端部に段状に縮小する座面2bと小径のねじ軸2aとを形成する。そして、ディスク砥石6と一体化したナット4をケース1側に向けてボルト3のねじ孔3aを前記ねじ軸2aに螺合させ、フランジ部3bに形成した操作穴3cに締め具を係合させて締め付け、ボルト3の内端3fを回転軸2の座面2bに圧接させることにより、前記ディスク砥石6を回転軸2に取り付ける。
【0005】
前記従来のものは、ボルト3、クッション材5及びナット4からなるアタッチメントとディスク砥石6とを一体化させたので、使用時の振動を軽減する機能とディスク砥石6の回転軸2への取り付けおよび取り外しが簡便に行えることになる。しかしながら、ナット4が螺合する雄ねじ部3eの内端3fを回転軸2の座面2bに当接させてディスク砥石6を該回転軸2に取り付けるようにしていたので、ナット4の内端3fの当接面積が少なくなり、回転軸2の座面2bに磨耗や陥没が発生し、新たなディスク砥石6とアタッチメントとのセット品を前記回転軸2に取り付けた際に、ディスク砥石6が傾き、使用時に振動が発生することになるものであった。
【特許文献1】実登3096194号公報
【特許文献2】実登3088708号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、回転軸の座面の磨耗や陥没を防止するとともに、使用時の振動軽減、および回転軸への取り付け、取り外しが簡便に行える円板状回転工具の取付け装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するために以下の如く構成したものである。即ち、請求項1に係る発明は、駆動側の回転軸の外端部に段状に縮小する座面と該座面の軸心部から軸方向外方に突出するねじ軸とを設け、ねじ軸を設け、円板状回転工具の中心部にアタッチメントを取り付け、該アタッチメントは、軸心部に前記ねじ軸に螺合するねじ孔が貫通形成され、外周の軸方向内端から外端に向かって、前記回転軸の座面に当接する大径のフランジ部、該フランジ部よりも小径であってかつ前記円板状回転工具の軸心部に嵌合する嵌合軸部、該嵌合軸部よりも小径の雄ねじ部が順次同軸に形成された段付き管状のホルダと、軸心部にホルダの雄ねじ部に螺合する雌ねじが形成され、外側部に操作孔が形成された円板状の締めナットと、緩衝用の弾性体とからなり、前記弾性体は、前記嵌合軸部に嵌合された円板状回転工具と前記フランジ部との間、及び前記円板状回転工具と前記締めナットとの間にそれぞれ介在されてなる構成にしたものである。
請求項2に係る発明は、前記フランジ部及び締めナットの相対する中周部にリング状の保持溝を形成し、該保持溝にOリングからなる弾性体を側方に露出させて嵌合させる構成にしたものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明は、締めナットが螺合しないフランジ部の軸方向内端が回転軸の座面に全面当接することになり、該座面に磨耗や陥没が発生しなくなる。このため、回転軸に新たな円板状回転工具とアタッチメントとのセット品を再三に亙って高精度に取り付けることができる。しかも、回転軸の座面とフランジ部との当接面積が大きいのでホルダを回転軸へ強固にかつ高精度に係止させることができる。しかも、弾性体を円板状回転工具の両側に介在させてホルダのフランジ部と締めナットとで弾圧挟持して円板状回転工具とアタッチメントとを一体化したので、回転軸への取り付け、取り外しが簡便に行えるとともに、使用時の振動が軽減することになる。
請求項2に係る発明は、Oリングからなる弾性体を前記フランジ部及び締めナットの相対する中周部に形成したリング状の保持溝に嵌合させるようにしたので、弾性体を高精度に位置決めすることができるとともに、弾性体を安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下本発明の実施例を図面に基いて説明する。図面において、図1は本発明の実施例示す断面図、図2は図1のII-II線による拡大断面図、図3は本発明によるホルダの断面図、図4は図3の右側面図、図5は本発明による締めナットの断面図、図6は図5の右側面図である。
【0010】
図1において、10はディスクグラインダーのケース、11はケース10の下側部から外方(右方)に突出させた駆動用の回転軸であり、外端部に座面11aを形成し、該座面11aの軸心部から小径のねじ軸12を右方に向けて突出させる。
【0011】
前記回転軸11にアタッチメント20を介して丸鋸、ディスク砥石等の円板状回転工具15を取り付ける。円板状回転工具15は、本例ではディスク砥石からなり、内周部が左方に向けて台形状に屈曲された基板16の外周部外側面にリング状の砥石17が固着され、基板16の軸心部にスプライン孔形の中心孔18(図2)が形成されている。
【0012】
前記アタッチメント20は段付き管状のホルダ21、円板状の締めナット27、および緩衝用の弾性体31,32を有してなる。前記ホルダ21は、図3、図4に示すように、軸心部に回転軸11のねじ軸12に螺合するねじ孔22が貫通形成され、外周に大径のフランジ部23、該フランジ部23よりも小径の嵌合軸部25、該嵌合軸部25よりも小径の雄ねじ部26が軸方向内端(図1において左端)から軸方向外端に向けて順次段状に形成されている。
【0013】
前記フランジ部23の右面(外側面)の中周部にOリング31(弾性体)が嵌合するリング状の保持溝24が形成されている。該保持溝24はOリング31の一部が外部に露出する深さとなっている。また、前記嵌合軸部25はフランジ部23よりも小径となるスプライン軸形に形成され、円板状回転工具15の中心孔18に相対回転不能に嵌合するようになっている。該嵌合軸部25は円板状回転工具15の基板16の厚さよりも若干長く形成され、その外端に段部25aが形成されている。また、前記雄ねじ部26は前記段部25aの軸心部から右方に向けて突出形成されている。
【0014】
締めナット27は、図5、図6に示すように、円板状の主体の軸心部にホルダ21の雄ねじ部26に螺合する雌ねじ28が形成され、左面(内側面)の中周部にOリング32(弾性体)が嵌合するリング状の保持溝29が形成され、右面(外側面)に4個の操作孔30が円周方向に等ピッチで形成されている。前記保持溝29はフランジ部23に形成された保持溝24と対面して形成され、Oリング32の一部が外部に露出する深さとなっている。前記操作孔30は締め具のフォーク爪が係合するためのもので、該操作孔に締め具を係合させて締めナット27をホルダ21の雄ねじ部26に螺合させる。
【0015】
次に前記実施例の使用態様について説明する。まず、フランジ部23の保持溝24に一方のOリング31を嵌合させ、次いで、ホルダ21の嵌合軸部25を左方(内側方)から円板状回転工具15の基板16の中心孔18に嵌合させる。次いで、締めナット27の保持溝29に他方のOリング32を嵌合させ、該Oリング32を前記基板16側に向けて締めナット27をホルダ21の雄ねじ部26に螺合させ、操作具を締めナット27の操作孔30に係合させてねじ込み、締めナット27の左面(内側面)を嵌合軸部25の段部25aに圧接させる。
【0016】
これにより、前記各Oリング31,32が基板16の両側に弾圧された状態でホルダ21及び締めナット27、即ち、アタッチメント20が円板状回転工具15に一体化される。そして、ホルダ21のフランジ部23をケース10側に向けてそのねじ孔22を回転軸11のねじ軸12に螺合させ、操作具を締めナット27の操作孔30に係合させてねじ込み、フランジ部23の左面(内側面)を回転軸11の座面11aに圧接させる。
【0017】
前記実施例によれば、フランジ部23の端面が回転軸11の座面11aに全面当接することになり、ホルダ21を回転軸11へ強固にかつ高精度に係止させることができる。また、回転軸11の座面11aに磨耗や陥没が発生しなくなるので、新たな円板状回転工具15とアタッチメント20とのセット品を回転軸11に再三に亙って高精度に取り付けることができる。しかも、Oリング(弾性体)31,32を円板状回転工具15の両側に介在させてホルダ21のフランジ部23と締めナット27とで弾圧挟持して円板状回転工具15とアタッチメントとを一体化したので、回転軸11への取り付け、取り外しが簡便に行えることになるとともに、使用時の振動が軽減することになる。
【0018】
また、弾性体を安価なOリング31,32とし、該Oリング31,32をフランジ部23及び締めナット27の相対する中周部に形成した保持溝24,29に嵌合させるようにしたので、前記Oリング31,32を高精度に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例示す断面図である。
【図2】図1のII-II線による拡大断面図である。
【図3】本発明によるホルダの断面図である。
【図4】図3の右側面図である。
【図5】本発明による締めナットの断面図である。
【図6】図5の右側面図である。
【図7】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0020】
10 ディスクグラインダーのケース
11 回転軸
11a 座面
12 ねじ軸
15 円板状回転工具
16 基板
17 砥石
18 中心孔
20 アタッチメント
21 ホルダ
22 ねじ孔
23 フランジ部
24 保持溝
25 嵌合軸部
25a 段部
26 雄ねじ部
27 締めナット
28 雌ねじ
29 保持溝
30 操作穴
31,32 Oリング(弾性体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側の回転軸(11)の外端部に段状に縮小する座面(11a)と該座面(11a)の軸心部から軸方向外方に突出するねじ軸(12)とを設け、円板状回転工具(15)の中心部にアタッチメント(20)を取り付け、該アタッチメント(20)は、軸心部に前記ねじ軸(12)に螺合するねじ孔(22)が貫通形成され、外周の軸方向内端から外端に向かって、前記回転軸(11)の座面(11a)に当接する大径のフランジ部(23)、該フランジ部(23)よりも小径であってかつ前記円板状回転工具(15)の軸心部に嵌合する嵌合軸部(25)、該嵌合軸部(25)よりも小径の雄ねじ部(26)が順次同軸に形成された段付き管状のホルダ(21)と、軸心部にホルダ(21)の雄ねじ部(26)に螺合する雌ねじ(28)が形成され、外側部に操作孔(30)が形成された円板状の締めナット(27)と、緩衝用の弾性体(31,32)とからなり、前記弾性体(31,32)は、前記嵌合軸部(25)に嵌合された円板状回転工具(15)と前記フランジ部(23)との間、及び前記円板状回転工具(15)と前記締めナット(27)との間にそれぞれ介在されてなることを特徴とする円板状回転工具の取付け装置。
【請求項2】
フランジ部(23)及び締めナット(27)の相対する中周部にリング状の保持溝(24,29)を形成し、該保持溝(24,29)にOリングからなる弾性体(31,32)を側方に露出させて嵌合させたことを特徴とする請求項1記載の円板状回転工具の取付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−58177(P2010−58177A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223351(P2008−223351)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000216209)天龍製鋸株式会社 (23)
【Fターム(参考)】