説明

円盤搬送用のパレット

【課題】円盤状の材料を積み込み、安全に搬送するパレットとし、かつ使用場所で、パレットから円盤状の材料を容易に出し入れすることができる。
【解決手段】 床用基板56上に、円盤63の厚さtに応じた所定巾Dを有し(t<D)、円盤63が転がるように収容できる収容溝3、3を複数並列して形成して床部材を構成し、上床板1、下床板2とする(b)(c)。収容溝3は、軸を水平にした円盤63、63が、少なくとも3つの収容できるような長さLを有する。収容溝3上の円盤63の移動を規制するストッパー51を配置する。ストッパーは収容した各円盤63、63の間に、挿入される緩衝材54を有する連結部材53、53と、連結部材53、53を同時に昇降させる操作機構50とからなる。収容溝3の出入口4に扉14を取り付け、パレット60とする。扉4は開状態で、角度θだけ開いて傾斜を保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、円盤状の材料を積み込み、安全に搬送して、使用場所で、円盤状の材料を容易に出し入れすることができるパレットに関する。
【背景技術】
【0002】
軸を垂直にして収容するタイプでは、多数の円盤状の材料を収容して搬送する場合、台座座上に水平に積み上げて円盤を横に寝かせて、積み上げた円盤の周囲に、移動防止用のポールを立てた発明が提案されている(特許文献1)。この場合、円盤は例えば、ICタグ、ダイオードチップ、抵抗など電子部品や、各種巻き取り用のリールなどを指す。
【0003】
また、軸を水平にして収容するタイプでは、円盤状の材料として、タイヤを搬送するコンテナが提案されている。この場合、底枠上にタイヤを収容し、底枠に配置した櫛歯状のホルダーを起伏させて、タイヤの拘束及び拘束の解除をして、タイヤの移動を規制して搬送状態とし、あるいは取り出し可能状態としていた(特許文献2)。
【特許文献1】特開平8−324662
【特許文献2】特開2001−206468
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記軸を垂直にして、ディスクを平置きするタイプでは、収容個数を多くできるが、最下端に位置するディスクに上方のディスクの重量が作用するので、歪みや破損の原因となっていた。また、異なる種類のディスクを重ねた場合、下側のディスクを取り出すことは困難であった。
【0005】
また、前記軸を水平にして収容するタイプでは、1つの物品ホルダー(櫛歯格子状)の空所に対して、1つのタイヤしか収容できず、物品の出し入れ方向に対して、1列しかタイヤを収容できず、収容量に制限があった。また、物品ホルダーが、タイヤの転がり防止と列方向のタイヤの干渉防止をかねているため、物品ホルダーを外した場合に、収容したタイヤは安定を欠き、コンテナへの出し入れに支障をきたしていた。また、物品出し入れ方向に対して、2面から収容する場合には、奥行き方向(物品出し入れ方向)に緩衝材が無く、タイヤに傷が付くおそれがあり、また、出し入れ方向が2面となりコンテナに表裏が形成され、作業がし難いおそれがあった。また、物品ホルダーを底枠上に設置したので、底枠の面積を有効に活用できなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
然るに、この発明は、円盤を複数並べられる収容溝を設け、収容した円盤の間に挿入される緩衝材を昇降自在に設置し、出入口に扉を取り付けてパレットを構成したので、前記問題点を解決した。
【0007】
即ち、この発明は、円盤を収容する所定巾と長さを有する収容溝を複数並列して形成した床部材と、該床部材に収容した円盤の移動を規制するストッパーを配置してなり、以下のような特徴としたことを特徴とする円盤搬送用のパレットである。
(1) 前記収容溝は、前記円盤の厚さに応じた巾を有し、軸を水平にした前記円盤が転がるようにして収容できる構造とすると共に、前記収容溝は、少なくとも3つの円盤を収容できる長さとする。
(2) 前記ストッパーは、前記収容溝に配置される各円盤の間に、上方又は下方から挿入される緩衝材を昇降自在に配置し、前記各緩衝材を連結して同時に昇降させる操作部材とから構成する。
(3) 前記床部材で、前記収容溝の端縁側を出入口として、該出入口に扉を取り付けてなり、
(4)前記扉は下端を前記床部材側に位置させて開閉軸を設け、前記扉は開状態で、上端側を前記出入口から離れるように所定角度だけ傾斜を保持できるように取り付けた。
【0008】
また、前記において、ストッパーを以下のように構成したことを特徴とする円盤搬送用のパレットである。
(1) 操作部材は、1つの収容溝内に収容する円盤の間隙に対応させて、少なくとも2つの操作部材を並べて配置した。
(2) 前記各操作部材は、上片と下片とを中間部軸で回動自在に連結してなり、前記上片の上端部軸を収容庫のいずれかの位置に回動自在に取付けた。
(3) 前記各操作部材の前記中間部軸を上昇降部材で連結し、前記下片の下端部軸を下昇降部材で連結し、前記上昇降部材に操作用の握り手を取付け、前記下昇降部材に、前記円盤の間隙に挿入される緩衝材を取り付けた。
【0009】
また、前記において、扉を以下のように構成したことを特徴とする請求項1記載の円盤搬送用のパレットである。
(1) 前記扉は並列した横桟材を有する格子構造とする。
(2) 前記横桟材の間隙を、収容するディスクの直径より小径として、かつディスクが隣接する横桟材間に当接した際に、ディスクの外周が前記横桟材の外縁より突出しないように形成した。
(3) 前記隣接する溝の間に、溝方向の保護部材を配置する。
(4) 前記扉を開いた際に、「最下端に位置する桟材」と「前記収容溝の扉側の端縁」との水平距離X、及び「最下端に位置する桟材」と「保護部材の扉側の端縁」との水平距離Xを、いずれも収容する円盤の外径Dの「2分の1」より小さく形成した。
【0010】
前記における円盤状の材料とは、製品又は製品用の部品であって、例えば、磁気円盤、光学円盤、各種リールなどのデータ保存用の円盤、車両用のタイヤ、車両用のブレーキディスクなどに使用する物を指す。
【0011】
また、前記における同時に昇降させるとは、全体が同時に昇降する場合、出入口から奥側が連続して昇降して、操作時に全体として同時に昇降する場合のいずれの機構であっても良い。
【発明の効果】
【0012】
軸を水平にして転がるように少なくとも3つの円盤を収容できるように収容溝を構成したので、円盤に負荷を与えることなく、大量の円盤を収容することができる。
【0013】
また、ストッパーに、円盤間の間隙に上方から挿入される緩衝材を配置したので、一度の下降操作で、収容溝内の円盤の移動を規制して、搬送状態とすることができる。また、一度の上昇操作で、収容溝内の円盤の規制を解除して、出し入れ状態とすることができる。従って、円盤を積み込み及び取り出す作業を確実かつ簡略化できる効果がある。
【0014】
また、扉を、開閉軸周りに回転自在で、かつ傾斜を保持できるように取り付けたので、閉状態では出入口を塞ぎ、開状態でも円盤の飛び出しを防ぎ、かつ斜め上方への円盤の移動で収容庫から効率良く円盤を取り出すことができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
床用基板56上に、円盤63の厚さtに応じた所定巾Dを有し(t<D)、円盤63が転がるように収容できる収容溝3、3を複数並列して形成して床板(床部材)を構成し、上床板(床部材)1、下床板(床部材)2とする(図1(b)(c)、図8、図9)。収容溝3は、軸を水平にした円盤63、63が、少なくとも3つの収容できるような長さLを有する。
【0016】
上床板2の下面に、下床板側の収容溝3、3に対応して、収容溝3、3上の円盤63、63の移動を規制するストッパー51を配置する。ストッパーは、収容溝3、3に配置される各円盤63、63の間に、上方から挿入される緩衝材54、54を有する連結部材53、53と、連結部材53、53を同時に昇降させる操作機構50(操作部材)とから構成する(図2〜図4)。また、上床板2の上方に天板9を配置し、上床板2の収容溝3、3に対応したストッパー51を天板9の下面9aに同様に取り付ける。
【0017】
上下床板1、2で、収容溝3の端縁側を出入口4として、出入口4に扉14を取り付ける。扉は下端を上下床板1、2側に位置させて回転軸(開閉軸)11を設け、扉4は開状態で、上端側を出入口4から離れるように所定角度θだけ傾斜を保持できるように取り付ける(図10〜図12)。
【0018】
以上のようにして、円盤63、63を収容するパレット60を構成する(図1(a)(b)(c))。
【実施例1】
【0019】
この発明の実施例を説明する。ここでは、厚さt、直径Dの円盤(車両のブレーキ用のディスク円盤)を収容する場合で、収容庫を上下2層に形成した実施例である。
【0020】
[1]
【0021】
床板用基板56に所定巾D、所定長さLの収容溝3、3を並列して、8本形成する。収容溝3の巾Dは収容する円盤の厚さtに対応して形成し、t<D となるように形成し、収容溝3内で円盤が転がることができるように形成する(図1(a)(c)、図8、図9)。
【0022】
また、収容溝3の長さLは、軸64を水平に配置した円盤を4つ収容できるように形成し、即ち、
L>4×D
となるように形成されている(図1(b)(c))。
【0023】
また、隣接する収容溝3、3に収容した円盤63、63の側面が当たらないように、床板用基板56の上面で、収容溝3、3の間に、収容溝3のほぼ全長に亘る保護部材5を取り付ける(図1)。保護部材5は、水平材料の両端部を下方に屈曲して垂直材料を形成して構成し、少なくとも水平材料及び垂直材料の表面を樹脂材料(例えば、ポリプロピレン製)で被覆する。保護部材5に使用する樹脂材料は、円盤63の側面が触れても傷が付かない材料を採用する。また、保護部材5自体を樹脂材料から構成することもできる。
【0024】
また、前記における収容溝3は、断面V字状で、底を直角に形成し、表面を樹脂材料(例えば、ポリプロピレン製)からなる円盤保護材66で被覆してある(図1(c)、図9)。以上のようにして床板を構成し、上床板1、下床板2とする(図1(b)(c)、図8、図9)。円盤保護部材66に使用する樹脂材料は、ポリプロピレン他各種ゴム材、エラストマー材など、円盤63の円周面が触れても傷が付かない材料を採用する。また、収容溝3自体を樹脂材料から構成することもできる。
【0025】
[2]
【0026】
前記のように形成した下床板2と上床板1とを所定高さHだけ離して、上下に配置し、両床板1、2の四隅に支柱6、7を立設し、支柱6、7と上下床板1、2とを固定する。また、上床板1の上方に高さH1だけ離して、天板9を配置して、天板9の四隅も支柱6、7の上端に固定する。支柱6、7は、出入口側の支柱を支柱6とし、奥側の支柱を支柱7とする(図1)。
【0027】
[3]
【0028】
上下床板1、2の収容溝3の一端縁を出入口4として、下床板1、上床板2の出入口側に夫々扉14、14を配置する(図1)。扉14は出入口側の支柱6、6の外面6aに配置され、出入口側の支柱6、6で、上床板付1近及び下床板2付近に、扉14を回転する軸となる回動軸11を取付ける。また、出入口側の支柱6の外面6aで、回動軸11の上方に、閉じた扉14を保持する係止受け12を取り付ける(図1、図9)。
【0029】
扉14は、支柱6、6に対応した位置に、扉支柱15、15を夫々配置して、扉支柱間15、15間に横桟材20A、20B、20Cの両端を固定して構成する。また、扉支柱15、横桟材20A、20C間に、補強やネームプレート取付のために、補助的な桟材21、21を取り付けてある。
扉支柱15の下端部16、即ち扉14の両端部(収容溝3の巾方向)で下端部に、回動軸11を挿入する縦長孔18を形成する。扉支柱15の下縁、即ち扉14の下縁(縦長孔18の下方)に傾斜面17を形成する。傾斜面17は鉛直と角度θとなるように形成され、扉14の開く角度が鉛直に対してθ(ここでは、θ=55°)となるように設定される。扉支柱15、15の下端部16、16の間には桟材20、21が配置されず、扉14の下端部で、傾斜面17を設定した両端部の間に、開口部22が形成される。また、扉支柱15の支柱6側の面15aに、下方に向けた係止突起19を取り付ける。係止突起19は、支柱6の係止受け12に上方から差し込み係止できるように形成する(図10、図11)。
【0030】
横桟材20A、20B、20Cは、下から(回転軸11に近い側から)20A、20B、20Cとなっており、開口部22の高さ(回転軸11と横桟材20Aの間隔)を長さLで形成し、横桟材20Aと横桟材20Bとの間隔22AをLで形成し、横桟材20Bと横桟材20Cとの間隔22BをLで形成する(図11)。各開口部22、間隙22A、22Bの長さL、L、Lは、
<R、L<R、L<R
としてあり、かつ、軸を水平にした収容する円盤63の外周側を扉14に当接した際に、開口部22A、間隙22A、22Bから円板63の外周縁が突出しないように形成してある(図12(a)(b))。
【0031】
また、扉14を開いた時、「鉛直との角度θ」「扉の一番下の横桟材20Aと保護部材5の出入口側端縁5aとの水平距離X」「扉の一番下の横桟材20Aと収容溝3の出入口側の端縁4との水平距離X」は、扉から入れた円盤63が、横桟材20A、保護部材5の出入口側端縁5a、収容溝3の出入口側の端縁4の3点で支持され、円滑に収容溝3内に収容されるように調節されている。更に、水平距離X、Xは、扉14の横桟材20Aに当接した円盤63が、不慮に90°回転して、収容溝3の出入口側の端縁4と扉4の間に落下しにように形成されている(図12(c))。
【0032】
また、扉14の少なくとも内面(各桟材20A、20B・・・の内面)には円盤63が当接しても円盤63が傷付かないように緩衝材を施してある(図示していない)。
【0033】
[4]
【0034】
(1)上床板1の下面1aであって、収容溝3の巾方向で一端側に、収容溝3の長さ方向に、所定距離を空けて、3つの縦操作部材25、26、27を取り付ける。各縦操作部材25〜27は、上片28及び下片29からなり、上片28の上端部に上端部軸31を設け、上片27の下端部と下片28の上端部とを重ねて中間部軸32を設け、下片29の下端部に下端部軸33を設け、各軸31〜33は、軸を収容溝3の巾方向に向けた回転軸となっている。収容溝3の長さ方向に長い昇降部材35、36を、上下に配置し、上側の昇降部材35の両端部37、39及び中間部38を、各縦操作部材25〜27の中間部軸32に夫々軸止めする。同様に下側の昇降部材36の両端部37、39及び中間部38を、各縦操作部材25〜27の下端部軸33に夫々軸止めする。
【0035】
縦操作部材25〜27は、隣接する縦操作部材25〜27で下端部軸33、33の間隔が長さLで配置され、収容する円盤63の径をDとした場合、
>D
となるように形成されている(図2)。径Dが異なる円盤63を収容する場合には、収容する最大径をDとして、Lを調節する。
【0036】
(2) また、2つ(収容溝3の巾方向で両端)の上側の昇降部材35、35で、出入口側の端部37、37間に連結部材41、41の両端を夫々固定する。最も出入口側の連結部材41の中央部で、出入口側に向けて横方向の握り手43を突設する。握り手43は水平よりも若干先端下向きに形成されている(図5、6)。尚、握り手43は、連結部材41を介さずに、一番出入口側の縦操作部材25、25の中間部軸32に直接に取り付けることもでき、この場合には握り手43が常に横方向に位置させることができるように、取り付ける(図示していない)。
【0037】
また、出入口側の縦操作部材25、25の付近で、縦方向に操作案内板46を夫々設ける(図1(a)(b)、図2〜図4)。操作案内板46に縦方向(略鉛直方向)の案内孔47を設け、案内孔47の上端47bで出入口側に、水平よりも先端を下向きに形成した係止孔48を連設する。案内孔47には、出入口側の縦操作部材25の下端部軸33が挿入され、下端部軸33が案内孔47に沿って、略垂直方向に昇降できるように設定される。縦操作部材25の下端部軸が案内孔47の下縁47aに当接した状態で、縦操作部材25の下端部軸33は、下端部軸33の最下端位置より若干上方の位置にあり、縦操作部材25〜27は折れた状態にある(図2)。また、縦操作部材25の下端部軸33が案内孔47の上縁47bに当接した状態で、上側の昇降部材35が最上位に位置する状態にある。
【0038】
(3) 以上のようにして、縦操作部材25、26、27、昇降部材35、36から操作機構50を構成する。操作機構50を、天板9の下面9aで収容溝3の巾方向で他端側にも同様に取り付ける。
【0039】
(4) 前記において、上床板の収容溝と天板9の下面9aで囲まれる部分が上側の収容庫61を構成し、上側の収容庫61用に、操作案内板46は上端を天板9の下面に固定し、下端を上床板2の上面に固定してある。また、下床板2の収容溝3と上床板2の下面で囲まれる部分が下側の収容庫62を構成し、下側の収容庫62用に、操作案内板46は上端を上床板2の下面に固定し、下端を下床板1の上面に固定してある。
【0040】
各操作機構50で、両操作機構間50、50に収容溝3の巾方向の連結部材53を配置して、連結部材53の両端を下側の昇降部材36、36(即ち、各縦操作部材25〜27の下端部軸33)に連結する。連結部材53の外周には、収容物の外周部周辺を傷つけないように、緩衝材54を巻いてある。以上のようにして、ストッパー51を構成する(図2〜図4)。
【0041】
[5]
【0042】
以上のようにして、この発明のパレット60を構成する(図1(a)(b)(c))。図中58は、各収容庫61、62で、奥側の支柱7、7に取りつけた奥側緩衝材58であり、円盤63が当接しても円盤を傷つけないように、内表面に樹脂材料(例えば、ポリプロピレン)を被覆してある。円奥側緩衝材58に使用する樹脂材料は、ポリプロピレン他、各種ゴム材、エラストマー材など、円盤63の円周面や側面が触れても傷が付かない材料を採用する。また、奥側緩衝材58自体を樹脂材料から構成することもできる。
【0043】
[6]
【0044】
続いて、パレット60の使用について説明する。
【0045】
(1) 扉14を開いた状態で(図1(b)鎖線図示14、14)、ストッパー51の握り手43を握って、昇降部材35を上昇させれば、縦操作部材25〜27が折り畳まれ、下側の昇降部材36も上昇する(図2鎖線図示35、36、25〜27)。この操作を、両収容庫61、62で行う。
【0046】
続いて、半径Dの円盤63を1本の収容溝に対して、4本づつ転がしながら収容する。
【0047】
この際、収容溝3、3の間に保護部材5、5があるので、隣接する収容溝3、3に収容した円盤63、63同士は、触れることがなく、また円盤63、63の傾斜を整え、整然と並べられる。1つの収容庫61又は収容庫62で、総ての収容溝3、3に円盤63、63を収容し、又は必要な個数の円盤63、63を収容したならば、握り手43を押し下げ、縦操作部材25〜27の折り畳みを解除し、昇降部材35、36を下降させる。
【0048】
昇降部材36の下降に伴い、縦操作部材25〜27の下端部軸33(連結部材53)に取り付けた3つの緩衝材54が、各収容溝3で、収容した円盤63、63間の3つの間隙に夫々挿入される。1本の収容溝3内の4つの円盤63、63は緩衝材54、54によりを分離され、円盤63、63同士が接触することがない。また、1回の操作で、総ての収容溝3、3で、4つの円盤63、63の3つの間隙に緩衝材54を介装させることができる。また、収容溝3で、円盤63の収容数が4枚に満たないような、2枚又は3枚であっても、緩衝材54は各円盤63を区画することができる(図示していない)。
【0049】
各収容庫61、62で、円盤63、63の収容が完了したならば、扉14を支柱6、6側に戻し、一旦上昇させて(縦長孔18内で回転軸11が移動できるので)、係止突起19を、支柱6、6の係止受け12に係止する。これにより、パレット60に多少の振動があっても扉14、14が開くことはない(図10の下収容庫62側)。この状態で、パレット60を単独で、又は必要数を積層、並列して、搬送する。また、搬送中、円収容溝3上の円盤63、63は、緩衝材54、54、円盤保護材66、66に保護されるので、傷がついたり、衝撃を受けることを防止できる。
【0050】
(2) 収容した円盤63、63を使用する現場までパレットを搬送する。使用場所で、扉14を一旦上昇させて、係止突起19と係止受け12との係止を外して、扉14を開く。この状態で、扉14に傾斜面17が支柱6の外側面6aに当接するので、扉14は角度θで開いた状態を維持でき、扉14と天板9の下面aの出入口側の縁9cとの距離Lを維持できる(図10)。Lは、D<L、であって、取り出す際に、円盤63が天板9や扉14等に触れることを防止できる程度に、Dより充分に大きく形成してあるので、円盤63を容易に取り出すことができる。
【0051】
続いて、握り手43を操作者側(手前。出入口側)へ引けば、操作案内板46の案内溝47に沿って、連結部材53が下端47aから上端47bまで上昇するので、なめらかな操作で、収容庫61、62毎に、全部の収容溝3の円盤63、63の移動規制が解除できる。更に、握り手43を手前(出入口側)に引けば、連結部材53は、案内溝47の上端47aから係止孔48に案内され、係止孔48は先端に向けて下降傾斜しているので、ストッパー51(昇降部材35、36、緩衝材54)を上昇位置で保持できる。ストッパー51で移動規制を解除しても、隣接する収容溝3、3の間には保護部材5が配置されているので、収容された円盤63、63同士が接触するおそれがなく、円盤63の側面が傷つくおそれがない。
【0052】
この際、握り手43の先端44が下方に向けて傾斜してるので、昇降部材35、36の昇降作業がし易く、上側の昇降部材35が天板9付近(または上床板1付近)に位置する場合でも、操作に支障が無い。
【0053】
移動規制を解除された円盤63、63は、パレット60を出入口側4が低くなるように傾斜させ、あるいは出入口側4に円盤63、63を軽く移動させれば、ゆっくりと転がりながら、収容溝3の出入口側4に移動し、扉14の内面に当接して止まり、そのまま矢示65方向に引き出すことができるので、円盤63を直線的な移動で取り出しができる(図10、図1(b))。また、収容庫61、62に高さに対して、取り出し作業が上からの作業となるため、作業がし易い。
【0054】
(3) 各収容庫61、62には、Dより小径のD01の円盤63Aを収容することもできる(図1(b))。また、一つの収容溝3で異なる径や構造の円盤63を収容することもできる。この場合、緩衝材54(連結部材53)の間隔Lは同じであっても(図2)、円盤63Aは緩衝材54、54間で、収容溝3内で、回動しながら収容溝3の長さ方向に、移動する場合があるが、円盤63Aの搬送に支障はない。
【0055】
[7]他の実施例
【0056】
(1) 前記実施例において、縦操作部材25〜27の下端部軸33が案内孔47の下縁47aに当接した状態で、縦操作部材25〜27の下端部軸33は、最下端より若干上方位置に設定したが、緩衝材54が、収容する円盤63を止められる位置まで下がっていれば、案内孔47の下縁47aの位置は任意である(図示していない)。
【0057】
(2) また、前記実施例において、収容溝3の断面を略V字状としたが、円盤63を安定して収容でき、かつできるだけ円盤63との接触面積を軽減して、円盤63に衝撃を与えない構造であれば任意である。例えば、断面円弧状や断面U字状、断面縦コ状で溝内にリブや多数の突起を形成した形状など任意である(図示していない)。
【0058】
(3) また、前記実施例において、収容溝3内に4つの円盤63が収容できるように形成したが、円盤63は3つ以上、即ち円盤63間の間隙が2つ以上形成されていいれば良い。従って、収容溝3の長さLは、L>3×D となるように形成する(図示していない)。
【0059】
(4) また、縦操作部25〜27材の下端部軸33が案内孔47の上縁47aに当接した状態で、上側の昇降部材35が最上位に位置する状態にあるように案内孔47の上縁47a位置を設定したが、下側の昇降部材36(緩衝材54を含めて)を上げた状態で、円盤63、63の出し入れが支障なくできるように、案内孔47の上縁47bの位置を調節する(図示していない)。
【0060】
(5) また、前記実施例において、上床板1と下床板2とに同じ収容溝3、3を形成したが、異なる形状構造の収容溝3、3を形成して、異なる種類の円盤63、63を収容できる構造とすることもできる(図示していない)。この場合には、縦操作部材25、26、27、昇降部材35、36等と緩衝しないように配置する。
【0061】
(6) また、前記実施例において、隣接する収容溝3の円盤63、63同士が触れないようにする保護部材5、5は、収容溝3を形成した床板の上面に取りつけたが、上方の床板の下面(下床板2なら上床板1の下面、上床板1ならば天板9の下面)に、夫々下方に向けて取り付けることもできる(図示していない)。
【0062】
(7) また、前記実施例において、収容溝3を形成した床板1、2を上下2段に配置して、収容庫61、62を2つ形成したが、1段で、収容庫が1つのパレットを構成することもできる。また収容溝3付きの床板を3つ以上配置して、3つ以上の収容庫を有するパレットとすることもできる(いずれも図示していない)。
【0063】
(8) また、前記実施例において、操作部材25、26、27は3つ設けたが、少なくとも2つ設けてあれば、昇降部材35、36をバランスを保って昇降させることができる(図示していない)。また、昇降部材35、36が長い場合などでは、昇降部材25、26、27を4つ以上配置することもできる(図示していない)。要は、操作部材25は少なくとも2つ配置されることが必要である。
【0064】
(9) また、前記実施例において、縦操作部材25〜27の下端部軸33(連結部材53)に取り付けた3つの緩衝材54が、円盤63、63に挿入される構造としたが、他の構造とすることすることもできる。即ち、下端部軸33と、緩衝材54を巻いた連結部材53とを共通としたが、緩衝材54が各収容溝3、3に配置された各円盤63、63の間に挿入できれば、下端部軸33とは別に連結部材53を配置することもできる(図示していない)。
【0065】
また、連結部材53を、総ての収容溝3、3を横断する構造としたが、収容溝3、3毎に異なる径Dの円盤63を収容する場合には、収容溝3毎に径Dに対応して緩衝材54の間隔Lが配置されるように、緩衝材54の間隙(連結部材53の間隙L)を違えて構成することもできる(図示していない)。
【0066】
(10) また、前記実施例において、ストッパー51の操作機構50は、縦操作部材25〜27の下端部軸33(連結部材53)に取り付けた3つの緩衝材54が、円盤63、63の上方からに挿入される構造としたが、円盤63、63の下方から挿入される構造とすることすることもできる(図示していない)。また、ストッパー51の操作機構50は、上床板1の下面1a(即ち収容庫61の天井部分)に取り付けて緩衝材54を昇降できる構造としたが、収容庫61(または収容庫62)の側面、床面など収容庫61(または収容庫62)の他の位置に取り付けることもできる(図示していない)。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の実施例で(a)は一部を破折した横断面図、(b)は正面図、(c)はストッパーを省略した縦断面図である。
【図2】この発明の実施例に使用するストッパーの拡大正面図である、
【図3】同じくストッパーの拡大平面図である。
【図4】同じくストッパーの拡大左側面図である。
【図5】同じくストッパーの昇降部材と握り手の拡大平面図である。
【図6】同じくストッパーの昇降部材と握り手で、(a)は拡大正面図、(b)は拡大右側面図である。
【図7】この発明の実施例に使用する上床材の拡大正面図である。
【図8】同じく上床材の拡大平面図である。
【図9】図7のA−A線における断面図である。
【図10】この発明の実施例に使用する扉の開閉を説明する正面図である。
【図11】この発明の実施例に使用する扉で、(a)は左側面図、(b)は正面図である。
【図12】(a)〜(c)は、この発明の扉と円盤との関係を説明する概略した正面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 上床板
2 下床板
3 収容溝
4 収容溝の出入口側端縁
5 保護部材
5a 保護部材の出入口側端縁
6 支柱(出入口側)
7 支柱(奥側)
9 天板
11 扉の回転軸
12 係止受け
14 扉
16 扉の下端部
17 扉の傾斜面
19 扉の係止突起
20、20A、20B、20C 扉の横桟材
22A、22B、22C 扉の開口部
25 縦操作部材(出入口側)
26 縦操作部材(中間部)
27 縦操作部材(奥側)
28 縦操作部材の上片
29 縦操作部材の下片
31 上端部軸
32 中間部軸
33 下端部軸
35 昇降部材(上側)
36 昇降部材(下側)
37 昇降部材の出入口側の端部
38 昇降部材の中間部
39 昇降部材の奥側端部
41 連結部材(握り手)
43 握り手
44 握り手の先端
46 操作案内板
47 操作案内板の案内孔
48 操作案内板の係止孔
50 操作機構
51 ストッパー
53 連結部材(緩衝材)
54 緩衝材
56 床板用基板
58 奥側緩衝材
60 パレット
61 収容庫(上側)
62 収容庫(下側)
63、63A 円盤
64 円盤の中心
66 収容溝の表面の円盤保護部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤を収容する所定巾と長さを有する収容溝を複数並列して形成した床部材と、該床部材に収容した円盤の移動を規制するストッパーを配置してなり、以下のような特徴としたことを特徴とする円盤搬送用のパレット。
(1) 前記収容溝は、前記円盤の厚さに応じた巾を有し、軸を水平にした前記円盤が転がるようにして収容できる構造とすると共に、前記収容溝は、少なくとも3つの円盤を収容できる長さとする。
(2) 前記ストッパーは、前記収容溝に配置される各円盤の間に、上方又は下方から挿入される緩衝材を昇降自在に配置し、前記各緩衝材を連結して同時に昇降させる操作部材とから構成する。
(3) 前記床部材で、前記収容溝の端縁側を出入口として、該出入口に扉を取り付けてなり、
(4)前記扉は下端を前記床部材側に位置させて開閉軸を設け、前記扉は開状態で、上端側を前記出入口から離れるように所定角度だけ傾斜を保持できるように取り付けた。
【請求項2】
ストッパーを以下のように構成したことを特徴とする請求項1記載の円盤搬送用のパレット。
(1) 操作部材は、1つの収容溝内に収容する円盤の間隙に対応させて、少なくとも2つの操作部材を並べて配置した。
(2) 前記各操作部材は、上片と下片とを中間部軸で回動自在に連結してなり、前記上片の上端部軸を収容庫のいずれかの位置に回動自在に取付けた。
(3) 前記各操作部材の前記中間部軸を上昇降部材で連結し、前記下片の下端部軸を下昇降部材で連結し、前記上昇降部材に操作用の握り手を取付け、前記下昇降部材に、前記円盤の間隙に挿入される緩衝材を取り付けた。
【請求項3】
扉を以下のように構成したことを特徴とする請求項1記載の円盤搬送用のパレット。
(1) 前記扉は並列した横桟材を有する格子構造とする。
(2) 前記横桟材の間隙を、収容するディスクの直径より小径として、かつディスクが隣接する横桟材間に当接した際に、ディスクの外周が前記横桟材の外縁より突出しないように形成した。
(3) 前記隣接する溝の間に、溝方向の保護部材を配置する。
(4) 前記扉を開いた際に、「最下端に位置する桟材」と「前記収容溝の扉側の端縁」との水平距離X、及び「最下端に位置する桟材」と「保護部材の扉側の端縁」との水平距離Xを、いずれも収容する円盤の外径Dの「2分の1」より小さく形成した。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−105711(P2008−105711A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290724(P2006−290724)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(390005463)ヤマト・インダストリー株式会社 (16)
【Fターム(参考)】