説明

円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの製造方法

【課題】 振動用モータとして用いられる超小型の円筒形モータの印刷配線コミューテータの直径が約3mm以下と小さいために火花防止用の抵抗体を内蔵することは不可能であった。
【解決手段】 本発明では、円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータに印刷抵抗体21A、21C、21Eが内蔵されている。具体的には、裏セグメントパターン間の極めて狭い余白部分を利用し、コミューテータ12の裏面をレジスト層208で覆い、露光現像してレジスト層208の領域に開口部22A、22C、22Eを設ける。これにより、開口部はホトレジスト技術の解像度の誤差である50μm以下で実現され、スクリーン印刷で印刷抵抗体を形成しても開口部の誤差で形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小型モータには複数の扁平コイルと円板状回転子を面対向配置した扁平形モータと細長の回転子とコイルが共に円筒状に配置した円筒形モータがある。
【0003】
扁平形モータは例えば、特開2002−291198号公報(特許文献1)に開示されている。
【0004】
図7に示すように、従来の扁平形モータ100は回転軸Zに直交する平面内に、回転軸Zを中心として周方向に配設された複数のシートコイル101を内包する平面板101aと、マグネット102をコイル101に面対向する位置に保持すると共にシャフト105を中心として回転するロータヨーク104およびロータヨーク104、シャフト105およびコイル101やマグネット102等のモータ駆動部全体を格納するハウジング107等から構成される。ベアリング106はシャフト105を回転自在に支持し、磁気吸収用のワッシヤー108も備えている。
【0005】
扁平形モータはこのようにロータヨーク104に設けたマグネット102に面対向し扁平にしたコイルを設けていたので、平面板101aの径が大きくなり、扁平形モータ全体の径が大きくなるので、小型化が要求される携帯電話機等に用いられる振動モータには不向きである。
【0006】
次に、円筒形モータは例えば、特開2005−175387号公報(特許文献2)に開示されている。
【0007】
図8(A)(B)に示すように、円筒形モータは軸10にマグネット11を有するロータRが設けられており、マグネット11の周囲に円筒形のコイル13、13が設けられている。コイル13、13は印刷配線コミューテータ12に形成されたセグメントパターンに接続される。セグメントパターンが給電ブラシ14に接触することによりコイル13、13に順次電流が給電される。図8(A)のB−B線断面が図8(B)であり、図8(B)のA−A線断面が図8(A)と対応する。
【0008】
図9は印刷配線コミューテータ12の平面図である。中央に軸装着孔15が設けられ、軸装着孔15の周囲に6個のセグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fが形成されている。セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fはコイル13、13に一端に接続されている。
【0009】
対向するセグメントパターン16Aとセグメントパターン16D、セグメントパターン16Bとセグメントパターン16Eおよびセグメントパターン16Cとセグメントパターン16Fはモータの回転原理から接続させる必要がある。
【0010】
図10は印刷配線コミューテータ12の裏面図である。結線パターン18Aとスルーホール19Dによりセグメントパターン16Aとセグメントパターン16Dを結線し、結線パターン18Cとスルーホール19Fによりセグメントパターン16Cとセグメントパターン16Fを結線し、結線パターン18Eとスルーホール19Bによりセグメントパターン16Eとセグメントパターン16Bを結線する。
【0011】
上述の構成において、給電ブラシ14から電流を供給することにより、セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fを介してコイル13、13に順次電流が供給され、ロータRが回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−291198号公報
【特許文献2】特開2005−175387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、給電ブラシ14がセグメントパターン16Aから次のセグメントパターン16B、16C、16D、16E、16Fに移動するときに火花を発し、セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fおよび給電ブラシ14を放電により損傷する。そのためセグメントパターン16A、16B、16C間にそれぞれ3個の火花防止用の抵抗を設ける必要がある。従来このような抵抗は十分に大きな印刷配線コミューテータ12に抵抗を印刷することにより設けていたが、円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータ12の直径が約3mm以下と小さいために抵抗印刷を設けることは不可能である。
【0014】
そのために、火花を発生し、セグメントパターンおよび給電ブラシを放電で損傷し、製品寿命が500時間以上に延ばすことが出来なかった。
【0015】
本発明は上記した問題に鑑みて為されたものであり、直径が約3mm以下の印刷配線コミューテータに微小印刷抵抗を形成する円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされ、プリント基板の一面に給電ブラシと接触する複数のセグメントパターンと、反対面に前記各セグメントパターンとスルーホール電極で接続される裏セグメントパターンと対向する前記セグメントパターンを接続するのに用いる結線パターンとを備えた円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの製造方法において、両面に第1の導電箔および第2の導電箔を設けた前記プリント基板を用意し、前記プリント基板に前記スルーホール電極を設ける位置に貫通孔を設け、前記貫通孔にスルーホールメッキ膜をメッキして前記スルーホール電極を形成し、前記第1の導電箔をエッチングして前記セグメントパターンを形成し、前記第2の導電箔をエッチングして前記裏セグメントパターン、前記結線パターンおよび抵抗電極を形成し、前記プリント基板の反対面をレジスト層で覆い、前記レジスト層の露光現像により前記結線パターンの外側の前記印刷配線コミューテータの微小な領域に印刷抵抗体の開口部を設け、前記印刷抵抗体をスクリーン印刷により前記開口部を覆うように形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に依れば、直径が3mm以下の極めて小さい円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータに火花防止用の印刷抵抗体をスクリーン印刷により実現できるようになった。このために、給電ブラシが次のセグメントパターンに移動するときに発生する火花を内蔵する印刷抵抗体で防止でき、セグメントパターンおよび給電ブラシの製品寿命を約800時間まで延ばすことが可能になった。
【0018】
また、本発明に依れば、扁平形モータより小型にできる円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータに印刷抵抗体が内蔵できるようになったことで、携帯電話などのPDA装置、腕時計などの小型薄型機器への円筒形モータを振動型アラーム装置として組み込みを可能にし、大型の扁平形モータと同等以上の製品寿命を実現できる。
【0019】
更に、本発明に依れば、開口部をレジスト層を用いて形成されるので、開口部はホトレジスト技術の解像度の誤差である50μm以下で実現される。このために、開口部を覆うようにスクリーン印刷で印刷抵抗体を形成しても開口部の誤差で印刷抵抗体が形成可能なため、3mm以下の超小型円筒形モータの印刷配線コミューテータに火花防止用の印刷抵抗体が内蔵できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を適用する円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの平面図である。
【図2】本発明を適用する円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの裏面図である。
【図3】本発明を適用する円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータを実際にプリント基板に形成されるときの拡大平面図である。
【図4】本発明を適用する印刷配線コミューテータが一列に多数個配列してプリント基板に形成された状態を示す平面図である。
【図5】(A)〜(D)は本発明を適用する印刷配線コミューテータの製造方法を説明する断面図である。
【図6】(E)〜(G)は本発明を適用する印刷配線コミューテータの製造方法を説明する断面図である。
【図7】一般的な扁平形モータを説明する断面図である。
【図8】一般的な円筒形モータを説明する断面図である。
【図9】一般的な円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの平面図である。
【図10】一般的な円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に本発明を適用する円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの平面図、図2に裏面図を示す。
【0022】
図8に示すように、円筒形モータは軸10にマグネット11を有するロータRが設けられており、マグネット11の周囲に円筒形のコイル13、13が設けられている。コイル13、13は印刷配線コミューテータ12に形成されたセグメントパターンに接続される。セグメントパターンが給電ブラシ14に接触することによりコイル13、13に順次電流が給電される。
【0023】
図1は印刷配線コミューテータ12の平面図である。
【0024】
中央に軸装着孔15が設けられ、軸装着孔15の周囲に等間隔に6個のセグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fが形成されている。セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fの突出した先端部にはコイル13、13の一端が接続されている(図8(A)参照)。
【0025】
印刷配線コミューテータ12は対向する先端部間が直径2.8mmに形成され、軸装着孔15は直径0.7mmである。各セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fは軸装着孔15とは0.09mm離間しており、各セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16F間は0.12mm離間して扇形状に周端まで広がっている。かかる各セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fにプラス電位とマイナス電位の給電ブラシ14が接触することによりコイル13,13に順次電流を流し、発生する磁界の極性を変えてロータRのマグネット11と反発をしてロータRを回転させる(図8(A)参照)。
【0026】
図2は印刷配線コミューテータ12の裏面図である。
【0027】
中央に軸装着孔15が設けられ、先端部には各セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fとスルーホール電極20A、20B、20C、20D、20E、20Fを介して接続された各裏セグメントパターン17A、17B、17C、17D、17E、17Fが設けられている。各セグメントパターンおよび各裏セグメントパターンはコイル13を印刷配線コミューテータ12の両面で接続されるためにも用いる。また、スルーホール電極19B、19D、19Fは各セグメントパターン16B、16D、16Fと結線パターン18A、18C、18Eとを接続されるために用いる。
【0028】
セグメントパターン16A、16B、16Cはそれぞれ対向するセグメントパターン16D、16E、16Fとモータの回転原理から接続する必要があり、結線パターン18A、18C、18Eが設けられる。セグメントパターン16Aはスルーホール電極20A、結線パターン18A、スルーホール電極19Dの順でセグメントパターン16Dと接続されている。また、セグメントパターン16Bはスルーホール電極19B、結線パターン18E、裏セグメントパターン17E、スルーホール電極20Eの順でセグメントパターン16Eと接続されている。更に、セグメントパターン16Cはスルーホール電極20C、裏セグメントパターン17C、結線パターン18C、スルーホール電極19Fの順でセグメントパターン16Fと接続されている。
【0029】
従って、結線パターン18A、18C、18Eは各裏セグメントパターン17A、17B、17C、17D、17E、17Fと軸装着孔15の間の狭い領域に配置される。軸装着孔15と結線パターン18A、18B、18Cとは0.09mm離間しており、結線パターン18A、18C、18Eは0.07mmの線幅で延在される。印刷抵抗体を形成する領域は裏セグメントパターン17Aと17Fの間で結線パターン18Eよりも外側の部分と、裏セグメントパターン17Bと17Cの間で結線パターン18Aよりも外側の部分と、裏セグメントパターン17Dと17Eの間で結線パターン18Cよりも外側の部分である。この領域は具体的には、結線パターン18A、18C、18Eから印刷配線コミューテータ12の突起していない端部まで約0.6mm程度しかなくスクリーン印刷による印刷抵抗の形成では誤差が0.15mmもあり、スクリーン印刷による印刷抵抗体は形成が不能である。
【0030】
印刷抵抗体21A、21C、21Eは本発明の特徴とする点であり、裏セグメントパターン17Aと17Fの間、裏セグメントパターン17Bと17Cの間、裏セグメントパターン17Dと17Eの間の極めて狭い余白部分を利用して設けられている。印刷配線コミューテータの裏面をレジスト層208(図6(E)参照)で覆い、露光現像してレジスト層208(図6(E)参照)に点線で囲んだ領域に開口部22A、22C、22Eを設け、この開口部22A、22C、22Eを覆うように印刷抵抗体21A、21C、21Eを設ける。
【0031】
開口部22A、22C、22Eは長さ0.60mm、幅0.32mmに形成され、一端に結線パターン18A、18C、18Eから突出する抵抗電極23A、23C、23Eが露出され、他端には裏セグメントパターン17A、17C、17Eが露出されている。印刷抵抗体21A、21C、21Eは開口部22A、22C、22Eを覆うように長さ0.90mm、幅0.62mmにスクリーン印刷で形成され、スクリーン印刷の誤差である0.15mmの余裕を開口部より長さの両方向、幅の両方向に設けることでレジスト層208(図6(E)参照)の解像誤差0.05mmで形成可能となります。従って、印刷抵抗体21A、21C、21Eはレジスト層の開口部22A、22C、22Eに設けた約500オームの抵抗体を実現できる。実際に印刷抵抗体21A、21C、21Eは印刷配線コミューテータ12の端部よりはみ出して形成されるために図2で点線で示すように一部は印刷配線コミューテータ12から欠落する。
【0032】
図3は本発明を適用する円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータを実際にプリント基板に形成されるときの拡大平面図である。図4は複数の円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータをプリント基板に形成したときの平面図である。
【0033】
図3では、裏セグメントパターン17A、17B、17C、17D、17E、17Fおよび結線パターン18A、18C、18Eが図2と同じパターンに形成され、裏セグメントパターン17A、17B、17C、17D、17E、17Fは連結パターン24A、24B、24C、24D、24E、24Fで一番外側の環状パターン25に接続され、プリント基板に設けた共通電極パターン26に接続される。点線で示す部分がプリント基板から切り離されて印刷配線コミューテータ12を形成する。
【0034】
図4では、各印刷配線コミューテータが一列に多数個配列してプリント基板に形成された状態を示している。
【0035】
各印刷配線コミューテータ12の上下に設けたプリント基板の孔27はプリント基板から各印刷配線コミューテータ12を分離するとき、中央に軸装着孔15が設けられるとき、印刷抵抗体21A、21C、21Eをスクリーン印刷するときなどに位置合わせとして用いる。また、共通電極パターン26は電解メッキのときに各印刷配線コミューテータ12に電気を印加するために用いる。
【0036】
なお、各印刷配線コミューテータ12は複数列プリント基板に配列しても良い。
【0037】
図5および図6は本発明の特徴とする円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの製造方法を説明する断面図である。断面は図3でX−Y線で示す部分に対応している。
【0038】
先ず、図5(A)に示すように、上面に第1の導電箔202が貼着され、下面に第2の導電箔203が貼着された基板201を用意し、基板201、第1の導電箔202および第2の導電箔203を貫通する貫通孔204を形成する。
【0039】
基板201としては、ガラスエポキシ基板またはガラスポリイミド基板を用いることが好適であるが、場合によってはフッ素基板、ガラスPPO基板またはセラミック基板などを採用してもよい。本形態では、厚さ0.3mm程度のガラスエポキシ基板を採用した。
【0040】
第1の導電箔202および第2の導電箔203としては、エッチングが可能な金属であればよい。本形態では、銅から成る金属箔を採用した。第1の導電箔202および第2の導電箔203は、配線に用いられるので、両者の膜厚を18μm程度にした。配線の厚さは、実装される回路素子の電流容量などによって任意に決定することができる。
【0041】
図5および図6では、第1の導電箔202および第2の導電箔203が上面と下面が逆に示されているが、本発明の特徴が下面側にあるためにこのような図面を示している。
【0042】
基板201には所定の位置に直径は0.15mm程度の貫通孔204を形成した。貫通孔204は、NC工作機械を用いて形成することができる。
【0043】
なお、この工程で軸装着孔15も形成される。
【0044】
図5(B)に示すように、第1の導電箔202および第2の導電箔203の表面および貫通孔204の内壁を被覆するスルーホールメッキ膜205を形成する。スルーホールメッキ膜205によって第1の導電膜202と第2の導電箔203とが電気的に接続されるスルーホール電極(図1および図2で示す19B、19D、19F、20A、20B、20C、20D、20E、20F)が形成される。本形態では、スルーホールメッキ膜205は銅メッキであり、無電解メッキ法によって形成した。しかし、電解メッキ法または無電解メッキ法と電解メッキ法を組み合わせによってスルーホールメッキ膜205を形成してもよい。
【0045】
図5(C)に示すように、貫通孔204を充填材206にて充填する。充填材206はスクリーン印刷によって充填することができる。充填材206として、銅ペーストなどの導電材料を用いれば、第1の導電箔202と第2の導電箔203との電気的接続を確実にすることができること、電流容量を確保することができることなどの利点がある。しかし、充填材206に樹脂などを用いてもよい。樹脂を用いれば銅ペーストなどと比較して容易に貫通孔204を充填することができる。充填材206によって、第1の導電箔202および第2の導電箔203の表面と貫通孔204とを一様に平坦にすることができ、実装面との接続信頼性を向上させることができる。
【0046】
その後、第1の導電箔202、第2の導電箔203および貫通孔204を埋めた充填材206表面に約20μmの銅メッキ層207を形成する。
【0047】
図5(D)に示すように、第1の導電箔202をエッチングして、図1に示す各セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fをパターニングし、第2の導電箔203をエッチングして、図2に示す各裏セグメントパターン17A、17B、17C、17D、17E、17F、結線パターン18A、18C、18Eおよび抵抗電極23A、23C、23Eをパターニングする。
【0048】
本工程はウェットエッチングで行い、エッチャントは、塩化第二鉄または塩化第二銅が主に採用される。そして、第1の導電箔202、第2の導電箔203の所望の箇所をマスクしてエッチングをする部分を露出した状態で、このエッチャントの中にディッピングされるか、またはこのエッチャントでシャワーリングされる。
【0049】
その後、残された各セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16F、各裏セグメントパターン17A、17B、17C、17D、17E、17F、結線パターン18A、18C、18Eおよび抵抗電極23A、23C、23Eの表面にニッケル下地メッキ層を約0.1μm、その上に銀メッキ層を約4μm、金メッキ層を約0.3μmほど形成して表面処理を行い、給電ブラッシとの接触に耐えうるようにする。
【0050】
続いて、図6(E)に示すように、基板201の下面の第2の導電箔203で形成された各裏セグメントパターン17A、17B、17C、17D、17E、17F、結線パターン18A、18C、18Eおよび抵抗電極23A、23C、23Eを覆うようにレジスト層208で基板201の下面全体に付着し、図2及び図3に示す印刷抵抗体21A、21C、21Eの開口部22A、22C、22Eを設ける。
【0051】
開口部22A、22C、22Eはレジスト層208に開口部22A、22C、22Eとなるパターンを露光現像することで形成され、開口部22A、22C、22Eはホトレジスト技術の解像度の誤差である50μm以下で実現される。
【0052】
開口部22A、22C、22Eには長さ0.60mm、幅0.32mmに形成され、一端に結線パターン18A、18C、18Eから突出する抵抗電極23A、23C、23Eが露出され、他端には裏セグメントパターン17A、17C、17Eが露出されている。
【0053】
本工程では、ホトレジスト技術の解像度で開口部22A、22C、22Eが形成できるので、結線パターン18A、18C、18Eから印刷配線コミューテータ12の突起していない端部まで約0.6mm程度狭い領域に確実に開口部22A、22C、22Eを形成できる。
【0054】
更に、図6(F)に示すように、印刷抵抗体21A、21C、21Eをスクリーン印刷により開口部22A、22C、22Eを覆うように形成する。
【0055】
本工程では、印刷抵抗体21A、21C、21Eは開口部22A、22C、22Eよりスクリーン印刷の誤差である0.15mmの余裕を開口部より長さの両方向、幅の両方向に設け、長さ0.90mm、幅0.62mmの大きさにスクリーン印刷で形成される。そのためにスクリーン印刷の最大誤差0.15mmが生じても確実に開口部22A、22C、22Eを覆ってスクリーン印刷が行え、確実に開口部22A、22C、22Eに抵抗ペーストをスクリーン印刷できる。また、図2および図3に示すように、印刷抵抗体21A、21C、21Eは印刷配線コミューテータ12よりはみ出して形成されるが、実質抵抗体として働く部分は開口部22A、22C、22Eにある抵抗体部分であり、印刷抵抗体21A、21C、21Eはホトレジスト技術の解像度の誤差である50μm以下で実現されるのと等価になる。
【0056】
なお、抵抗ペーストは周知のように、焼成炉で高温で焼成されて抵抗体を形成する。
【0057】
更に、本工程で開口部22A、22C、22Eよりはみ出した印刷抵抗体21A、21C、21Eの部分は一様にレジスト層208が露出するまで研磨をして除去しても良い。
【0058】
最後に、図6(G)に示すように、印刷抵抗体21A、21C、21E表面を表面保護層209で覆う。
【0059】
表面保護層としてはメッキレジスト層などを用いて印刷配線コミューテータ12の下面全体を覆えばよい。なお、印刷配線コミューテータ12の上面は各セグメントパターン16A、16B、16C、16D、16E、16Fを露出し、給電ブラッシと接触を行えるようにしている。
【符号の説明】
【0060】
10 軸
11 マグネット
12 印刷配線コミューテータ
13 コイル
14 給電ブラシ
15 軸装着孔
16A、16B、16C、16D、16E、16F セグメントパターン
17A、17B、17C、17D、17E、17F 裏セグメントパターン
18A、18C、18E 結線パターン
19B、19D、19F、 スルーホール電極
20A、20B、20C、20D、20E、20F スルーホール電極
21A、21C、21E 印刷抵抗体
22A、22C、22E 開口部
23A、23C、23E 抵抗電極
24A、24B、24C、24D、24E、24F 連結パターン
25 環状パターン
26 共通電極
201 プリント基板
202 第1の導電箔
203 第2の導電箔
204 貫通孔
205 スルーホールメッキ膜
206 充填材
207 銅メッキ層
208 レジスト層
209 表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板の一面に給電ブラシと接触する複数のセグメントパターンと、反対面に前記各セグメントパターンとスルーホール電極で接続される裏セグメントパターンと対向する前記セグメントパターンを接続するのに用いる結線パターンとを備えた円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの製造方法において、
両面に第1の導電箔および第2の導電箔を設けた前記プリント基板を用意し、前記プリント基板に前記スルーホール電極を設ける位置に貫通孔を設け、
前記貫通孔にスルーホールメッキ膜をメッキして前記スルーホール電極を形成し、
前記第1の導電箔をエッチングして前記セグメントパターンを形成し、前記第2の導電箔をエッチングして前記裏セグメントパターン、前記結線パターンおよび抵抗電極を形成し、
前記プリント基板の反対面をレジスト層で覆い、前記レジスト層の露光現像により前記結線パターンの外側の前記印刷配線コミューテータの微小な領域に印刷抵抗体の開口部を設け、
前記印刷抵抗体をスクリーン印刷により前記開口部を覆うように形成することを特徴とする円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの製造方法。
【請求項2】
前記印刷抵抗体は前記開口部の大きさに長さ方向および幅方向の両側にスクリーン印刷の誤差を加えた大きさに設定していることを特徴とする請求項1に記載の円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの製造方法。
【請求項3】
前記印刷配線コミューテータの大きさは直径が3mm以下であり、前記プリント基板に列状に多数個配列されて製造され、完成後に前記プリント基板から分離されることを特徴とする請求項1に記載の円筒形モータに用いる印刷配線コミューテータの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−109845(P2011−109845A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263701(P2009−263701)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(598150488)株式会社エレメント電子 (13)
【Fターム(参考)】