説明

再帰性反射塗装物

【課題】 単純に接着層を有するだけでは、微小球型再帰性反射体を単層配置することが困難であり、再帰反射現象を有効的に発現できない問題があった。
【解決手段】 積層塗膜からなる再帰性反射塗装物において、少なくとも反射層と、接着層と、微小球型再帰性反射体を有し、接着層は、反射層と微小球型再帰性反射体との間に配置するとともに、接着層のウエット塗膜の厚さが、微小球型再帰性反射体の半径以下であることを特徴とする再帰性反射塗装物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再帰性反射塗装物に関するものである。
特に万年筆やボールペンやシャープペンシルなどの筆記具や、口紅やアイライナーなどの容器、釣り竿、ドアノブ、手摺りなどの非平面(筒状部材など)に形成された再帰性反射塗装物が挙げられる。
【背景技術】
【0002】
再帰反射は、光学上の特殊な反射機構で、入射した光が再び入射した方向に帰る反射現象の一つである(以下、再帰反射現象と称する)。この再帰反射現象を得るためには、一般的に屈折率を制御した(高屈折率とした)微小球型再帰性反射体を用いることが知られている。
【0003】
また、再帰反射現象を有効的に発現させるためには、微小球型再帰性反射体を均一且つ緻密に配置(以下、単層配置)させることが重要である。
文献1には、再帰反射現象を備え、金属蒸着層との組み合わせで金属光沢的な再帰性反射塗装物及び、その再帰性反射塗装物の形成方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−266149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている再帰性反射塗装物は、反射層上に微小球型再帰性反射体を固定させるために接着層を有することが記載されている。しかし、単純に接着層を有するだけでは、微小球型再帰性反射体を単層配置することが困難であり、再帰反射現象を有効的に発現できない問題があった。
具体的な再帰反射現象は、微小球型再帰性反射体の屈折率にも左右されるが、屈折率が2.2の場合は、入射した光線が微小球型再帰性反射体への入射とともに屈折し、背面の軸上に達したところで、背面に設置した反射材で反射され、軸対象で同じ方向に反射光は放出される。この再帰反射現象は、微小球型再帰性反射体が単層配置している場合に発現する現象である。しかし、微小球型再帰性反射体が2層以上配置した状態(以下、複層配置と称する。)では、入射光が複数の微小球型再帰性反射体を経由して反射材に達する為、反射した反射光は、最初に光が入射した微小球型再帰性反射体には戻らず、入射した方向と異なる反射光となり、所謂、乱反射現象となり、再帰反射現象が発現しないものである。
このように特許文献1に記載されている図2参照符号6のような微小球型再帰性反射体が単層配置していない場合には、有効的な再帰反射現象を発現させることが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、積層塗膜からなる再帰性反射塗装物において、少なくとも反射層と、接着層と、微小球型再帰性反射体を有し、接着層は、反射層と微小球型再帰性反射体との間に配置するとともに、接着層のウエット塗膜の厚さT1と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T1=0.34×(r/2)以下であることを第1の要旨とし、前記微小球型再帰性反射体の上層に再配置塗膜層を有するとともに、再配置塗膜層のウエット塗膜の厚さT2と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T2=r−T1以上であることを第2の要旨とし、前記接着層と、微小球型再帰性反射体と、再配置塗膜層とが、一体の複合塗膜層となることを第3の要旨とし、前記反射層が、銀及び銀合金からなる金属層であることを第4の要旨とし、前記接着層と再配置塗膜層を形成する塗料が、少なくともリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤であることを第5の要旨とし、前記微小球型再帰性反射体の屈折率が、2.2以上であることを第6の要旨とし、前記再帰性反射塗装物を筒状部材に用いたことを第7の要旨とするものである。
【0007】
被塗物の材質は、反射層を形成できる材料であればよく特に限定されない。具体的には、アルミニウムまたはその合金、銅またはその合金、鉄またはその合金、亜鉛またはその合金、マグネシウムまたはその合金、チタンまたはその合金、金またはその合金、銀またはその合金、白金またはその合金、スズまたはその合金、ニッケルまたはその合金などの金属材料、塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリロニトリルスチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリアミド、ナイロン、ポリアセタールなどの熱可塑性樹脂材料、ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系などの熱可塑性エラストマー、シリコーン、スチレンブタジエン、ウレタン、ブタジエン、イソプレン、フッ素などの合成ゴムや天然ゴム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂などの熱硬化樹脂材料、アルミナ、ジルコニア、陶磁器、ガラスなどのセラミック材料、木材、紙、石などの天然材料などを用いることができる。特に金属材料を用いることにより反射層を兼ねることができる。
また、これらの材料は1種または2種以上の混合物であってもよい。さらに、これら材質には彫刻や、エッチング、印刷などで模様を形成してもよい。
【0008】
反射層は、湿式めっき法や乾式めっき法、塗装、印刷、化成処理などの公知の方法により、ニッケルやクロムや黒クロムなどの金属めっき層、あるいは金や銀やパラジウムなどの貴金属めっき層、塗膜層、印刷層、酸化物層などが用いることができる。特に銀や銀合金の金属めっき層を用いることにより再帰反射現象を有効に発現できる。また、反射層上にクロメート処理などの酸化物層を施してもよい。
【0009】
接着層を形成する塗料は、少なくとも鎖状高分子材料と液媒体を含んでいればよい。液媒体として有機溶剤を使用した有機溶剤系塗料や、水または水と有機溶剤を混合した溶液を使用した水系塗料であれば特に限定しない。さらに、鎖状高分子材料を含む塗料は、透明もしくは半透明の所謂クリヤー塗料やカラークリヤー塗料が好ましい。
特に、前記鎖状高分子材料は、前記液媒体に可溶で、且つ接着性を有する樹脂がよく、熱可塑性接着剤が好適に使用できる。具体的には、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−イソブチルアクリレート共重合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ブチラール樹脂、ポリ酢酸ビニルおよび共重合体、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はこれら樹脂を主成分とする混合物が挙げられ、これらは一種もしくは二種以上の混合物でもよい。また、これらに、テルペン系樹脂やロジン系樹脂などの粘着性付与剤や、パラフィン系オイルなどの柔軟剤、カーボンブラック、タルク、クレー、シリカ、炭酸カルシウム、無機顔料、有機顔料などの充填剤、ゼオライト、シリカゲルなどの吸着剤などを必要に応じて添加することもできる。特に、吸水性が少ないポリエステル樹脂が好適に使用できる。
接着層のウエット塗膜の厚さT1と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T1=0.34×(r/2)以下にすることが重要である。
本発明における平均粒子径とは、JIS R 6002(1998)に規定されている測定方法(沈殿試験)での累積高さ50%に相当する粒子径を示す。
さらに、前記塗料に硬化剤を添加することにより、前記鎖状高分子材料を時間の経過とともに反応硬化させることができる。その硬化剤の具体例としては、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート樹脂など挙げられる。
【0010】
微小球型再帰性反射体は、再帰反射を発現できるものであればよく特に限定されない。具体的には、BaO−SiO−TiO系ガラスビーズ、BaO−ZnO−TiO系ガラスビーズなどを用いることができる。屈折率が2.2であるBaO−ZnO−TiO系ガラスビーズが良好な再帰反射特性が得られる。
【0011】
再配置塗膜層を形成する塗料は、少なくとも前記接着層を形成する塗料に使用される樹脂を溶解する液媒体を含んでいればよい。特に、前記接着層を形成する塗料と同組成の塗料を使用することが好適に使用できる。
再配置塗膜層のウエット塗膜の厚さT2と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T2=r−T1以上にすることが重要である。
【0012】
本発明においては、少なくとも前記被塗物、反射層、接着層、微小球型再帰性反射体及び再配置塗膜層を有していれば良いが、それら上層にクリヤー塗膜や、カラークリヤー塗膜や、薄膜蒸着膜などの光透過性層を形成しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の効果を、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の再帰性反射塗装物の形成過程の塗膜断面図である。接着層を反射層と微小球型再帰性反射体との間に配置するとともに、接着層のウエット塗膜の厚さT1と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T1=0.34×(r/2)以下にすることで、微小球型再帰性反射体の隙間(空隙)から接着層を形成するための塗料が露出せず、微小球型再帰性反射体を単層配置することが可能となる。
一方、図2は、接着層のウエット塗膜の厚さT1と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T1=0.34×(r/2)以上にした塗膜断面図である。図1と異なり微小球型再帰性反射体を配置するとともに微小球型再帰性反射体の隙間(空隙)から接着層を形成するための塗料が露出し、その部分に微小球型再帰性反射体が配置され、結果的に単層配置が困難となる。
故に、接着層のウエット塗膜の厚さT1と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T1=0.34×(r/2)以下に形成させることにより、微小球型再帰性反射体が厚み方向に複数接着される接着層の状態を抑制することで、微小球型再帰性反射体を単層配置させるものである。
図3は、図1に示した形成過程の再帰性反射塗装物の上層部に再配置塗膜層を形成させた塗膜断面図である。ウエット状態の接着層3上に再配置塗膜6を形成するための塗料を塗布することで、ウエット状態の接着層3とウエット状態の再配置塗膜6は一つのウエット状態の複合塗膜7となり、ウエット状態の複合塗膜内で微小球型再帰性反射体4が再配列をし、より単層配置状態がよくなる。このように微小球型再帰性反射体の上層に再配置塗膜層を有するとともに、再配置塗膜層のウエット塗膜の厚さT2と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T2=r−T1以上にすることで、微小球型再帰性反射体をウエット状態の複合塗膜内で再配置することが可能となる。
さらに、接着層と、微小球型再帰性反射体と、再配置塗膜層とが、一体の複合塗膜層にすることで、接着機構を有しない微小球型再帰性反射体を完全に複合塗膜内に配置することができ、一体の複合塗膜層の上層と下層との密着性が向上する効果が得られる(図4)。
また、反射層が、銀及び銀合金からなる金属層で、微小球型再帰性反射体の屈折率が、2.2以上とすることで、銀特有の淡い黄色みをおびた白色金属光沢と再帰反射の相乗効果により外観特性が向上する。
特に、筒状部材に用いたことにより、図5に示す見る位置8(正面部分)と見る位置9(側面部分)とで再帰反射特性が異なる。具体的には、見る位置8から見る位置9に移動するにつれて、再帰反射特性は減少し、色相の変化を伴わない明度差(濃淡差)が発生し、その結果、実際の塗膜厚さより厚く見える錯覚により、深み感や奥行き感が発現した外観特性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】再帰性反射塗装物の形成過程の塗膜断面図。
【図2】再帰性反射塗装物の形成過程の塗膜断面図(従来の技術)。
【図3】再帰性反射塗装物の形成過程の塗膜断面図。
【図4】再帰性反射塗装物の形成過程の塗膜断面図。
【図5】再帰性反射塗装物の形成過程の塗膜断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、反射層と、接着層と、微小球型再帰性反射体を有し、接着層は、反射層と微小球型再帰性反射体との間に配置し形成したことを最も主要な特徴とし、接着層のウエット塗膜の厚さが、微小球型再帰性反射体の半径以下にすることで、微小球型再帰性反射体が単層配置した後、その上層部には接着層が存在しないために、微小球型再帰性反射体が接着せず(複層配置せず)、微小球型再帰性反射体を単層配置させる目的を実現した。
次に製造方法を基に本発明の塗膜構成の一例を詳細に説明する。
【0016】
(処理工程1)
被塗物の表面を公知の方法によりバフ研磨し、脱脂した後電気めっき法により、Ni/Ag層を形成し反射層とする。
(処理工程2)
前記Ni/Ag層を形成した被塗物上に、クロム酸を主成分とする水溶液を用いて、酸化クロム層(所謂クロメート処理)を電気化学法により形成する。
(処理工程3)
前記酸化クロム層上に、ポリエステル樹脂を主成分とする塗料(透明)をスプレー法により塗布し接着層を形成する。
(処理工程4)
前記接着層上に、微小球型再帰性反射体であるガラスビーズを塗布(振り掛けあるいは塗し)し単層配置させる。
(処理工程5)
前記ガラスビーズの単層配置層上に、処理工程3で使用した塗料を用いて、再配置塗膜層を形成する。
(処理工程6)
前記再配置塗膜層上に、公知の熱硬化型アクリルメラミン系塗料を用いてクリヤー塗膜を形成する。
(処理工程7)
市販の粒度800の耐水研磨紙(D耐水ペーパー(DCCS)、三共理化学(株))を使用し、前記クリヤー塗膜を研磨し、表面を平滑にする(尚、研磨は処理工程5の再配置塗膜層までは達しない)。
(処理工程8)
公知のアルコール脱脂により表面の研磨粉を除去した後、処理工程6で用いた塗料にてクリヤー塗膜層を形成する。
(処理工程9)
前記クリヤー塗膜上に、公知の熱硬化型アクリルメラミン系塗料を用いてカラークリヤー塗膜を形成する。
(処理工程10)
処理工程6で用いた塗料にてクリヤー塗膜層を形成する。
(処理工程11)
市販の粒度2000の耐水研磨紙(D耐水ペーパー(DCCS)、三共理化学(株))を使用し、前記クリヤー塗膜を研磨し、表面を平滑にする(尚、研磨は処理工程9のカラークリヤー塗膜までは達しない)。
(処理工程12)
さらに、表面を公知の方法によりバフ研磨し鏡面状態にする。
以上が、本発明における塗膜構成の一例であるが、本発明において最も重要な工程は、処理工程3であり、接着層のウエット塗膜の厚さを制御したことにある。
【0017】
(実施例1)
真鍮製の、100mm×100mm×厚さ1mmである板状の材料をバフ研磨し、表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し被塗物とした。次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。次いでアクリルラッカー塗料(トアインクラック(クリヤー)、(株)トウペ製)をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した後、100℃、30分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0018】
(実施例2)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料をバフ研磨し、表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し被塗物とした。次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。次いでアクリルラッカー塗料(トアインクラック(クリヤー)、(株)トウペ製)をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した後、100℃、30分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0019】
(実施例3)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した後、160℃、20分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0020】
(実施例4)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが3.2μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した後、160℃、20分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0021】
(実施例5)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが5.5μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した後、160℃、20分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0022】
(実施例6)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが9.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した後、160℃、20分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0023】
(実施例7)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した後、160℃、20分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0024】
(実施例8)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した。
次いで接着層を形成した同成分の塗料を用いて、ウエット塗膜の厚さが1.0μmになるようにスプレー塗装にて再配置塗膜層を形成した後、160℃、20分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0025】
(実施例9)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した。
次いで接着層を形成した同成分の塗料を用いて、ウエット塗膜の厚さが10μmになるようにスプレー塗装にて再配置塗膜層を形成した後、160℃、20分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0026】
(実施例10)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した。
次いで接着層を形成した同成分の塗料を用いて、ウエット塗膜の厚さが20μmになるようにスプレー塗装にて再配置塗膜層を形成した後、160℃、20分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0027】
(実施例11)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した。
次いで接着層を形成した同成分の塗料を用いて、ウエット塗膜の厚さが30μmになるようにスプレー塗装にて再配置塗膜層を形成した後、160℃、20分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0028】
(実施例12)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した。
次いで接着層を形成した同成分の塗料を用いて、ウエット塗膜の厚さが52μmになるようにスプレー塗装にて再配置塗膜層を形成した後、160℃、20分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0029】
(実施例13)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した。次いで接着層を形成した同成分の塗料を用いて、ウエット塗膜の厚さが52μmになるようにスプレー塗装にて再配置塗膜層を形成した後、160℃、20分の条件で乾燥した。次いで熱硬化性アクリル塗料(マジクロン1000(クリヤー)、関西ペイント(株)製を専用シンナーで2倍希釈)をスプレー塗装し、180℃、20分の条件で乾燥し、被塗物表面からの乾燥塗膜の厚さが100μmの再帰性反射塗装物を得た。
【0030】
(実施例14)
実施例2と同様の被塗物を用いた。
次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−24M(平均粒子径51.8μm、屈折率1.93)、(株)ユニオン製)を塗布した。次いで接着層を形成した同成分の塗料を用いて、ウエット塗膜の厚さが65μmになるようにスプレー塗装にて再配置塗膜層を形成した後、160℃、20分の条件で乾燥した。次いで熱硬化性アクリル塗料(マジクロン1000(クリヤー)、関西ペイント(株)製を専用シンナーで2倍希釈)をスプレー塗装し、180℃、20分の条件で乾燥し、被塗物表面からの乾燥塗膜の厚さが100μmの再帰性反射塗装物を得た。
【0031】
(実施例15)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料をバフ研磨し表面を平滑にした後、公知の方法にて長手方向に線状の彫刻、所謂光線彫りを施し、ジクロロメタンで脱脂処理し被塗物とした。次いで公知の電気めっき法により金属Ni/Ag層を形成し反射層とした。次いでポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤(PES−360HVXM30(透明)、東亜合成(株)製)にポリイソシアネート樹脂を主成分とする硬化剤(コロネートL、日本ポリウレタン工業(株)製)を10wt%添加した塗料をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが1.0μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−24M(平均粒子径51.8μm、屈折率1.93)、(株)ユニオン製)を塗布した。次いで接着層を形成した同成分の塗料を用いて、ウエット塗膜の厚さが65μmになるようにスプレー塗装にて再配置塗膜層を形成した後、160℃、20分の条件で乾燥した。次いで熱硬化性アクリル塗料(マジクロン1000(クリヤー)、関西ペイント(株)製を専用シンナーで2倍希釈)をスプレー塗装し、180℃、20分の条件で乾燥し、被塗物表面からの乾燥塗膜の厚さが100μmの再帰性反射塗装物を得た。
【0032】
(比較例1)
真鍮製の、100mm×100mm×厚さ1mmである板状の材料をバフ研磨し、表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し被塗物とした。次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。次いでアクリルラッカー塗料(トアインクラック(クリヤー)、(株)トウペ製)をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが8.4μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した後、100℃、30分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0033】
(比較例2)
真鍮製の、外径10mm、長さ100mmである横断面外形状が円形の材料をバフ研磨し、表面を平滑にし、ジクロロメタンで脱脂処理し被塗物とした。次いで公知の電気めっき法により金属Ni層を形成し反射層とした。次いでアクリルラッカー塗料(トアインクラック(クリヤー)、(株)トウペ製)をスプレー塗装にてウエット塗膜の厚さが8.4μmになるように接着層を形成した。次いで微小球再帰性反射体(ユニビーズUB−23NH(平均粒子径53.0μm、屈折率2.2)、(株)ユニオン製)を塗布した後、100℃、30分の条件で乾燥し、再帰性反射塗装物を得た。
【0034】
<外観特性の評価>
JIS K 5600−4−3:1999「塗料一般試験方法−第4部:塗膜の視覚特性−第3節:色の目視比較」に準じた色観察用照明(自然昼光照明)下で目視にて再帰性反射塗装物の外観特性(再帰反射性、単層配置性及び深み感)を評価した。
【0035】
<水に対する塗膜耐性評価(沸騰水試験)>
2級の純度の水(ISO3696)を沸騰状態にし、実施例及び比較例で得た光輝性塗装物を前記沸騰状態の水に25分間浸漬した後、塗装物を沸騰状態の水の中から取りだし常温に戻す。次にJIS K 5600−5−6「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」に規定されているクロスカット法(1mmの正方形を10×10コマ(計100コマ))にて密着性を評価する。尚評価は、100コマの碁盤目内で塗膜が残ったコマ数とした。
【0036】
各実施例、比較例をまとめたものを表1に、前記4項目による評価結果を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【符号の説明】
【0039】
1 被塗物
2 反射層
3 ウエット状態の接着層(塗膜の厚さT1と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T1=0.34×(r/2)以下)
4 微小球型再帰性反射体
5 ウエット状態の接着層(塗膜の厚さT1と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T1=0.34×(r/2)以上)
6 ウエット状態の再配置塗膜層
7 ウエット状態の複合塗膜
8 見る位置(正面部分)
9 見る位置(側面部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層塗膜からなる再帰性反射塗装物において、少なくとも反射層と、接着層と、微小球型再帰性反射体を有し、接着層は、反射層と微小球型再帰性反射体との間に配置するとともに、接着層のウエット塗膜の厚さT1と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T1=0.34×(r/2)以下であることを特徴とする再帰性反射塗装物。
【請求項2】
前記微小球型再帰性反射体の上層に再配置塗膜層を有するとともに、再配置塗膜層のウエット塗膜の厚さT2と微小球型再帰性反射体の平均粒子径rの関係が、T2=r−T1以上であることを特徴とする請求項1記載の再帰性反射塗装物。
【請求項3】
前記接着層と、微小球型再帰性反射体と、再配置塗膜層とが、一体の複合塗膜層となることを特徴とする請求項1乃至2記載の再帰性反射塗装物。
【請求項4】
前記反射層が、銀及び銀合金からなる金属層であることを特徴とする請求項1乃至3記載の再帰性反射塗装物。
【請求項5】
前記接着層と再配置塗膜層を形成する塗料が、少なくともポリエステル樹脂を主成分とする熱可塑性接着剤であることを特徴とする請求項1乃至4記載の再帰性反射塗装物。
【請求項6】
前記微小球型再帰性反射体の屈折率が、2.2以上であることを特徴とする請求項1乃至5の再帰性反射塗装物。
【請求項7】
前記再帰性反射塗装物を筒状部材に用いたことを特徴とする請求項1乃至6記載の再帰性反射塗装物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−25207(P2011−25207A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176409(P2009−176409)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】