説明

再生可能な原料から1〜3個の炭素原子を有するカルボン酸を製造する方法

本発明は、1〜3個の炭素原子を有するカルボン酸を製造する方法であって、2,3−ブタンジオールおよび/またはアセトインを、1〜3個の炭素原子を有するカルボン酸へと反応させることを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1〜3個の炭素原子を有するカルボン酸を製造する方法、特に2,3−ブタンジオールおよび/またはアセトインから酢酸を製造する方法に関する。
【0002】
酢酸は、アセトアルデヒドの酸化、エチレンの酸化、エタンの酸化、およびその他の炭化水素の酸化により、ならびにメタノールのカルボニル化により、工業的な規模で製造することができる(Ullmans Encyclopedia of Industrial Chemistry、2000、第1巻、"Acetic Acid(酢酸)"、第151〜164頁)。
【0003】
酢酸は、植物原料から得られたエタノールを酸化発酵することにより、再生可能な原料をベースとして取得することができる(Ullmans Encyclopedia of Industrial Chemistry、2000、第1巻、"Acetic Acid(酢酸)"、第164〜165頁)。しかしこの方法は、上記の化石原料を基礎とする方法と経済的に競合できるものではない。
【0004】
本発明の課題は、1〜3個の炭素原子を有するカルボン酸、特に酢酸を製造するための安価な方法であって、再生可能な原料を出発の基礎として使用することができる方法を提供することである。
【0005】
前記課題は、2,3−ブタンジオールおよび/またはアセトインを、1〜3個の炭素原子を有するカルボン酸へと反応させることを特徴とする方法によって解決される。
【0006】
有利には2,3−ブタンジオールおよび/またはアセトインを、化学的な酸化により酢酸へと反応させる。
【0007】
2,3−ブタンジオールおよびアセトインの酸化は、有利には酸素を用いて、または酸素を含有するガスを用いて行う。これは有利には均一系触媒または不均一系触媒を用いた酸化であり、この場合、不均一系触媒を用いた酸化が特に有利である。酸化は、液相中で、または気相中で行うことができる。
【0008】
特に有利には、2,3−ブタンジオールおよび/またはアセトインを、炭水化物を含有する原料から発酵により得られた混合物の形で使用する。
【0009】
2,3−ブタンジオールおよびアセトインの発酵法による製造は公知である(たとえばAppl.Microbiol.Biotechnol.、(2001)、55、第10〜18頁、およびWO2006/053480)。発酵の出発材料として、あらゆる炭水化物含有原料を使用することができる。これは有利には、リグノセルロースを含有する物質の分解に由来する、発酵可能な炭水化物含有フラクションである(たとえば"Lignocellulosic Biomass to Ethanol Process Design and Economics Utilizing Co−Current Dilute Acid Prehydrolysis and Enzymatic Hydrolysis for Corn Stover"、A.Aden、M.Ruth、K.Ibsen、J.Jechura、K.Neeves、J.Sheehan、およびB.Wallace、National Renewable Energy Laboratory L.Montague、A.Slayto、およびJ.Lukas、Harris Group、Seattle、Washington、National Renewable Energy Laboratory、Contract No.DE−AC36−99−GO10337、June2002、NREL/TP−510−32438)。
【0010】
炭水化物を含有する原料は有利には単糖類、二糖類およびオリゴ糖類、たとえばサッカロース、マルトース、ならびにC6および/またはC5単糖類を含有している。特に有利にはC6およびC5糖類は、グルコース、キシロースまたはアラビノースである。
【0011】
炭水化物を含有する原料は、まず、2,3−ブタンジオールを製造するための公知の発酵法で、2〜5個の炭素原子を有する化合物を含有する発酵混合物へと反応させる。これらの化合物は、特に有利には2,3−ブタンジオールの立体異性体である(S,S−、R,R−またはメソ型)か、またはアセトインの立体異性体(3−ヒドロキシ−2−ブタノン、R型またはS型)である。
【0012】
2,3−ブタンジオールを発酵法により製造する際に生じ、ひいては同様に発酵混合物中に存在しうる典型的な結合生成物は、アセトイン、エタノールおよび酢酸である。これらの化合物は同様に、酢酸への酸化の中間生成物であるので、得られた発酵混合物は、それ以上2,3−ブタンジオールから分離することなく、2,3−ブタンジオールとの混合物中で化学的な酸化法において使用し、かつこれにより酢酸の収率を向上することが可能である。
【0013】
発酵により得られた発酵混合物中の化合物は、有利には1〜90質量%の水濃度を有する、特に有利には40〜80質量%の水含有率を有する水溶液として存在する。
【0014】
特に有利であるのは、発酵により得られた発酵混合物を本発明による方法で使用する前に部分的に精製することである。この場合、水含分の一部、および気化することができない不純物(細胞、塩、重合体、タンパク質、糖類)を除去する。有利には水含分の10〜90質量%と、前記の不純物の99%以上を除去する。
【0015】
特に有利であるのは、発酵から得られた発酵ブロスをデカンテーション、遠心分離、濾過、精密濾過、ナノ濾過、限外濾過、逆浸透圧法、膜透過、透析蒸発法、単蒸留、精留、抽出、結晶化により処理して、2,3−ブタンジオールおよびアセトインを主成分とし、ならびに発酵の通常の副生成物を含有する水性混合物が生じる。発酵における通常の副生成物は、有利にはアルコール、たとえばエタノール、および有機酸、たとえばピルビン酸、乳酸および酢酸である。
【0016】
発酵における通常の副生成物の混合物中での濃度は、水溶液中の2,3−ブタンジオールおよびアセトインの合計の含有率に対して、それぞれ単独で30質量%未満であり、かつ合計して60質量%未満である。
【0017】
これらの2,3−ブタンジオールおよびアセトイン含有発酵混合物は、本発明による方法の特に有利な出発材料である。
【0018】
2,3−ブタンジオールおよび/またはアセトインの酸化は、有利には、酸化反応を実施するために適切であり、かつ反応混合物を過剰に加熱することなく高い反応熱を除去することができる反応器中で行う。これは有利には攪拌式反応器、泡鐘塔反応器、または管型もしくは多管式反応器である。原則として、酸化反応および化学的に純粋な酢酸の精製ならびに取得のために適切な方法は、特にUS6,320,075B1、US6,692,706B2、US6,429,331、US6,884,909B2、US6,793,777B1およびUS6,695,952B1に記載されている。
【0019】
酸化の反応温度は有利には100℃〜400℃、特に有利には150℃〜300℃、とりわけ有利には180℃〜290℃である。
【0020】
酸化は有利には1.2×105〜51×105Pa、特に有利には3×105〜21×105Pa、とりわけ有利には4×105〜12×105Paの圧力で実施する。
【0021】
触媒としては、炭化水素の部分酸化に関して記載されているあらゆる触媒が適切である。触媒は有利には1もしくは複数の元素バナジウム、モリブデン、アンチモン、ニオブ、チタンおよび貴金属を含有している。触媒中の貴金属の割合は有利には1もしくは複数の元素Ru、Rh、Pd、Ptを含有している。有利であるのは混合酸化物触媒であり、特に有利であるのは酸化バナジウムを含有している触媒である。
【0022】
適切な触媒は特に、US4,350,830、US4,415,752、US4,620,035、US5,162,578、US5,300,682、US6,060,421、US6,274,763B1、US6,274,765B1、US6,310,241B1、US6,399,816、WO03/033138A1、US2005/0085678A1、US2006/0128988A1、US7,642,214B2、US6,429,331B1第7欄、第1〜33行目、US6,320,075B1、US6,884,909B2に記載されている。
【0023】
本発明による酸化は、連続的に、または不連続的に実施することができる。つまり、反応させるべき物質混合物の供給を、一定した供給速度および組成で行うか、または時間的に変更可能な供給速度で、および/または組成を変更しながら行うことができる。
【0024】
反応させるべき物質混合物は有利には触媒を用いて固定床で、たとえば多管式反応器または縦型反応器中で、または流動床中で反応させることができる。
【0025】
固定床触媒を有する、冷却される多管式反応器が有利である。特に有利であるのは、管束として配置された、管の内径10mm〜50mmおよび管の長さ1m〜6mを有する単独の管を用いる実施態様である。
【0026】
反応管中の平均流速は、充填されていない管に対して、0.1m/s〜10m/s、有利には0.3m/s〜5m/s、特に有利には0.5〜3m/sである。
【0027】
反応管は、異なった組成、形状および寸法の触媒によって充填されていてよい。充てん物は有利には、軸方向で均質であってもよいし、帯域ごとに変化させて反応管に導入されていてもよい。帯域ごとに変化する充てん物の場合には、それぞれの帯域が有利にはランダムに希釈されているか、または混合された触媒を含有している。
【0028】
気相酸化のために必要な酸素源は、酸素を含有するガスである。酸素を含有するガスとして、たとえば空気を、場合により機械的に精製した後のものを、有利には酸素が富化された空気を、および特に有利には純粋な酸素を使用することができる。しかしまた、本発明による方法では、さらに不活性ガス、有利には窒素および/またはアルゴンが、0〜25体積%の量で存在していてもよい。
【0029】
反応器に供給されるガス流の酸素含有率は、有利には1〜35体積%、特に有利には3〜20体積%、とりわけ4〜12体積%であり、その際、ガス混合物が反応器の入口において支配的な条件(温度、各成分の分圧)下に発火しない(DIN EN 1839もしくはASTM E681と同様)実施態様が有利である。
【0030】
反応器に供給されるガス流の水蒸気の体積割合は、水蒸気が一般に0〜80体積%、有利には1〜40体積%、特に有利には3〜30体積%である。
【0031】
反応器に供給されるガス流の反応器入口で測定されるガス流中の2,3−ブタンジオールおよび/またはアセトインの割合は、一般に0.1〜20体積%、有利には0.5〜10体積%、特に有利には1〜8.0体積%である。
【0032】
本発明の特に有利な実施態様では、本発明による方法を、循環法で運転し、その際、反応器から排出されるガス混合物の一部を、場合によりこの混合物から種々の物質を分離した後で、反応器入口に返送する。その際、反応ガスの循環は、反応器出口ガスで、気相酸化の際に生じた有機酸の一部を取り出して、反応器出口ガスの返送される割合の酸の割合が、0.01〜8体積%に低減されるように実施することができる。
【0033】
ガスを返送する方法では、反応器入口ガスにおける酸化炭素およびその他の反応副生成物の割合は、反応の実施および酸の分離に依存し、一般に1〜99体積%、有利には20〜95体積%、特に有利には50〜92体積%である。この場合、反応器入口ガスの個々の成分の体積%で示される割合は、その都度合計して100体積%である。
【0034】
本発明による酸化を実施するための装置として一般に、ガスが反応器を通過する装置および循環法を使用することができる。循環法の場合、返送されるガス流から高沸点成分(有機酸および選択された析出条件下で酢酸と同じか、または酢酸より高い蒸気圧を有する化合物)、特に酢酸を、有利にはより沸点の低い成分(選択された析出条件下で、酢酸よりも低い蒸気圧を有する化合物、特に水、アセトアルデヒド、CO、CO2、エタノール、O2および酢酸エチル、2−ブタノン、酢酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸メチル、エチレン)に対して析出する装置が有利である。
【0035】
水性の、酸化生成物を含有する粗酸は、有利には向流洗浄、並流洗浄、交差流洗浄、急冷、部分的な凝縮またはこれらの方法の組み合わせによって、反応器から排出されるガス混合物から分離される。有利な実施態様に関するその他の詳細は、US6,320,075B1に記載されており、当該明細書の関連する開示内容を本願の一部とし、これをもって引用することによって取り入れるものとする(incorporated by reference)(第2欄、第28行目〜第4欄、第21行目、および第7欄、第13行目〜第8欄、第6行目)。
【0036】
粗酸は、有利には向流洗浄によって反応器出口ガスから分離する。本発明の特に有利な実施態様では、反応ガスの循環は、反応器出口ガスから、気相酸化の際に生じた有機酸、有利には酢酸を、部分的な凝縮のための装置を介して、または適切な溶剤、有利に水を用いた向流洗浄により除去して実施する。その際に、この分離は、反応器入口の酢酸の分圧が低いままであるが、さらに反応することができる副生成物、たとえばアセトアルデヒド、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸メチル等の大部分は循環ガス中にとどまり、反応器入口に返送されるように実施する。
【0037】
1つの実施態様では、反応器出口の一部から、一般に20〜99.8質量%、有利には80〜99.5質量%の酸の割合を分離し、かつ引き続き酸が低減されたガス流の部分を再び反応器入口に返送する。反応器出口ガスの未処理の部分は廃棄し、たとえば燃焼することができる。未処理の反応器出口ガスの割合は、どのような量の酸化炭素COxが形成されているかに依存する。というのも、これらはこの分岐流を介して排出しなくてはならないからである。その後、たとえば燃焼によって廃棄処理することができる。
【0038】
別の実施態様では、全ての反応器出口において酸の割合を完全に、または部分的に、有利には20〜99.8質量%、特に有利には80〜99.5質量%の割合で低減させ、かつ酸が低減されたガス混合物の割合を反応器入口に返送する。この実施態様が特に有利である。
【0039】
この場合、返送されたガスの質量流は一般に、新たに供給される出発材料流(2,3−ブタンジオールまたはアセトインおよび酸素を含有する水溶液)の1倍〜100倍であり、有利には2倍〜20倍、特に有利には3倍〜9倍である。
【0040】
吸収装置から排出されるガス流の水蒸気含有率は、有利には吸収装置の出口において支配的な温度および運転圧力によって確定される。この温度は、通常、吸収装置から排出される熱量と、洗浄水流の量および温度によって確定され、有利には50℃〜200℃である。吸収装置から排出されるガス流中に残留する酸の含有率は、有利には圧力および温度、吸収装置の分離段数、および供給される吸収剤の量(水の供給量)によって確定される。この方法は有利には、反応器に再び返送されるガス流の残留酸濃度が、向流洗浄によって0.01〜12体積%、有利には0.1〜8体積%、特に有利には0.35〜1.4体積%に低減されるように実施する。
【0041】
分離された粗酸は、有利には慣用の方法、たとえば液−液抽出、抽出精留、精留、共沸蒸留による精留、結晶化、および膜分離法によって脱水し、かつ精製する。粗酸をさらにその純粋な物質へと分離する前に分離される低沸点成分(その蒸気圧が、目的生成物、有利に酢酸よりも低い成分)は同様に単独で、または低沸点成分と一緒に、精製および濃縮から、完全に、または部分的に、2,3−ブタンジオールを酸化するための反応器の入口に返送することができる。
【0042】
希釈された粗酸の後処理のために特に適切であるのは、コストに関して最適化された方法、たとえばUS6,793,777B1(第2欄、第38行目〜第7欄、第19行目)およびUS6,695,952B1(第2欄、第39行目〜第8欄、第49行目)に記載されており、この方法に関するこれらの明細書の開示内容を本願の一部とする。これらの内容は、これをもって引用することによって取り入れるものとする(incorporated by reference)。
【0043】
粗酸中での酢酸濃度が50%を超える場合には、脱水に関して装置的に簡単な方法、たとえば共沸蒸留による精留が一層有利である。
【0044】
粗酸の濃縮および精製の際に生じる水は、部分的に、場合により化学的に、および/または物理的に処理した後で、向流吸収に返送することができる。全プロセスにおいて水の過剰量が生じ、かつさらに別途で添加した水が、酸化プロセスによりさらに水を生じるので、吸収装置の塔頂に別途で添加された洗浄水の、最大で全量を、酸の濃縮から返送される水によって交換することができる。依然としてごく少量の酢酸およびその他の有機酸を含有している過剰の水は、生物学的な浄化装置によって問題なく廃棄処理することができる。
【0045】
図1aは、本発明による方法によって2,3−ブタンジオールおよび/またはアセトインの気相酸化により酢酸を製造するための装置を略図を用いて記載している。混合帯域(5)を介して酸素(15)が、返送されるガス流(4)と混合され、かつ該ガス流と一緒に多管式反応器(10)に供給される。反応器から排出される反応器出口ガス(8)は、ガス/ガス熱交換器(2)に案内されて冷却され、予め冷却された反応ガス(18)として該熱交換器(2)から排出される。予め冷却された反応ガス(18)は、供給流蒸発器(1)中で液状の出発材料流(14)を加熱し、該流はここで気化される。場合により供給流蒸発器(1)の付加的な外部加熱が必要である。
【0046】
これに引き続き、反応ガスを導管(17)により、1もしくは複数の塔冷却器(7)を備えた吸収塔(6)へと案内する。塔の最上段の棚段には、溶剤、有利に水が導管(19)によって供給される。この吸収塔において粗酸は、向流洗浄によって分離され、管(9)によってその後の後処理に供給される。この吸収塔中で粗酸は、向流洗浄によって分離され、管(9)を介してその後の後処理に供給される。残りの反応ガスは、循環ガス圧縮機(11)によって供給流蒸発器(1)に供給され、ここで蒸発された出発材料流(14)と混合され、かつ返送されたガス流(16)として、ガス/ガス熱交換器(2)に供給され、ここで反応器排出ガス(8)によって加熱され、返送されたガス流(4)として、混合帯域(5)において再び酸素(15)と混合され、かつ多管式反応器(10)に返送される。
【0047】
多管式反応器(10)は、循環冷却(3a蒸気凝縮液の供給、3b蒸気の排出)によって冷却される。
【0048】
図1b)は、本発明による方法の変法を示しており、この場合、蒸気(3b)により供給流蒸発器(1)の付加的な加熱が行われる。
【0049】
この装置および方法では、出発材料流(14)が、別個に蒸発され、かつ酸素の供給混合(15および5)の前に蒸気の形で循環ガス流に供給され、かつ混合される。この蒸発および循環ガス流との混合は、出発材料流(14)のための蒸発器として構成されており、かつこの蒸気を循環ガス流と混合するための、循環ガス流がその中を通過して流れる、ある種の流下薄膜式蒸発器の形の共通の装置(1)中で実施される場合には、循環ガス流によるエネルギー入力のための付加的なこの装置の加熱は場合により有意義である。導管(12)を介して、反応循環中での定常条件を維持しながら排ガス流が取り出される。この排ガス流は、排ガス冷却器中で冷却することができ、その際、生じる凝縮液は、廃棄処理されるか、または有利には供給流蒸発器(1)の場所で反応の循環に返送される。この場合、循環ガス流は、循環ガス装置中で循環しながら、つまり循環ガス圧縮機(11)から循環流1→2→5→10→2→1→6→1の全ての装置を通過してポンプ輸送されるガス流である。
【0050】
図2は、実施例で使用した装置を示す。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1a】本発明による2,3−ブタンジオールおよび/またはアセトインの気相酸化により酢酸を製造するための装置を示す図
【図1b】本発明による方法の変法のための装置を示す図
【図2】本発明の実施例で使用した装置を示す図
【0052】
以下の実施例は、本発明をさらに詳細に説明するためのものである。
【0053】
選択率(モル%により記載)は、以下のとおりに計算した:
2,3−ブタンジオールまたはアセトインの反応率(モル%)に対する酢酸選択率:
((モル/h粗酸中の酢酸))/(モル/h反応したC4出発材料/2)×100
2,3−ブタンジオールまたはアセトインの反応率(モル%)に対するギ酸選択率:
((モル/h粗酸中のギ酸)/4)/(モル/h反応したC4出発材料)×100
実施例で使用した触媒:
触媒I(例1〜14):
触媒活性材料の製造は、US6,281,385B1、例19に記載されているとおりに行う。活性材料は、実験式TiabSbcd(a:10、b:1、c:1、d:24)によるチタン、バナジウム、およびアンチモンの酸化物からなる。この材料を、押出成形され、かつ切断された、外径5mm×内径2mm×高さ5mmの寸法を有するリングの形で使用した。
【0054】
触媒II(例15および16):
触媒活性材料の製造は、US6,310,241B1、製造手順Aに記載されているとおりに行った。活性材料は、実験式PdabMocNbde(a:0.0067、b:1、c:2、d:0.16、e:9)によるパラジウム、バナジウム、モリブデン、およびニオブの酸化物からなる。この材料を、押出成形され、かつ切断された、外径5mm×内径2mm×高さ5mmの寸法を有するリングの形で使用した。
【0055】
触媒III(例17〜20):
触媒活性材料の製造は、US6,281,385B1、例19に記載されているとおりに行った。活性材料は、実験式TiabMocd(a:10、b:1、c:0.2、d:23)によるチタン、バナジウム、およびモリブデンの酸化物からなる。この材料を、押出成形され、かつ切断された、外径5mm×内径2mm×高さ5mmの寸法を有するリングの形で使用した。
【0056】
これらの試験は、図2に記載の単管式の反応器(10)を有する装置中で実施したが、この反応器は、循環油による冷却部(21)を有し、反応管の内径は15mmであり、かつ内径43mmで充てん物の高さが3240mmである、構造化された充てん物を有し、塔冷却器としてのサーモスタット制御される頭頂部凝縮器(22)を有する吸収塔(6)を備えている。液状の出発材料流(27)は、加熱される蒸発および混合装置(20)中で気化され、かつ酸素(29)と共に、循環ガス流に混合される。導管(8)を介して反応器(10)から排出される反応器出口ガスは、吸収塔(6)中で洗浄される。洗浄液の添加は、導管(26)を介して、塔の塔頂で行われる。塔頂温度は、塔頂冷却器(22)を介して調整される。塔頂冷却器から排出されるガスは、コンプレッサー(11)を介してふたたび加熱される蒸発および混合装置(20)へとポンプ輸送される。吸収装置(6)から排出されるガス混合物から排ガス流(12)が取り出され、かつ排ガスコンデンサー(23)中で冷却される。凝縮することができない成分、主として酸化炭素は、放圧後に導管(24)を介して、反応系から排出され、凝縮可能な成分、主として水は、ポンプ(28)および導管(25)を介して加熱可能な蒸発および混合装置(20)へと返送され、気化され、かつ循環ガス流と混合される。生成物である酢酸は、水性の粗酸によって吸収塔の塔底(6)において導管(9)を介して取り出され、反応の循環から排出される。
【0057】
例1 2,3−ブタンジオールの酸化
反応管の内径15mmを有する反応器中に、触媒Iを充填高さ1310mmで導入した。反応器入口の酸素含有率は、反応器入口で純粋な酸素を添加することにより自動的に4.5体積%に調整した。反応供給流として、次の組成を有する立体異性体混合物97.9gを使用した:R,R−2,3−ブタンジオール約15質量%、S,S−2,3−ブタンジオール約15質量%、メソ−2,3−ブタンジオール約70質量%。この立体異性体混合物を以下では2,3−ブタンジオールと呼ぶ。吸収のために、水498g/hを循環ガス流の方向で吸収塔の塔頂冷却器の直前に供給した。循環ガス流は、反応器が安定した状態で、7000g/hの循環ガス流に達するように調整した。反応器を圧力10.9×105Paおよび冷媒温度180.0℃で運転した。
【0058】
反応ガスからの酸の分離は、構造化された充てん物を有し、内径43mmおよび充填高さ3240mmを有する向流吸収装置中で、吸収装置の頭部温度130℃において吸収することにより行った。
【0059】
これらの条件下で、100%の2,3−ブタンジオールの反応率が達成された。反応率に関する酢酸選択率は、82モル%であり、反応率に関するギ酸選択率は6モル%であった。体積比の酢酸生産性は、453g/lhであった。粗酸は、水80質量%を含有していた。
【0060】
例2〜9
例2〜9は、例1と同様に実施し、その際の相違点は第1表に記載されている。
【0061】
例10 アセトイン(3−ヒドロキシ−2−ブタノン)の酸化
反応管の内径15mmを有する反応器中に、触媒Iを充填高さ1310mmで導入した。反応器入口における酸素含有率は、反応器入口において純粋な酸素を添加することにより自動的に4.54体積%に調整した。反応供給流として、アセトイン(3−ヒドロキシ−2−ブタノン)のラセミ体(R型およびS型の等モル混合物、以下ではアセトインと呼ぶ)の水溶液233g/hを添加した。これは、アセトイン58.2g/hの使用に相当する。吸収のためには、循環流の方向で水218g/hを吸収塔の塔頂冷却器の直前に供給した。循環ガス流は、反応器が安定した状態で、6950g/hの循環ガス流を達成するように調整した。反応器は、圧力11×105および冷媒温度208℃で運転した。
【0062】
反応ガスからの酸の分離は、構造化された充てん物を有し、内径43mmおよび充填高さ3240mmを有する向流吸収装置中で、吸収装置の頭部温度130℃で行った。これらの条件下で、100%のアセトイン反応率が達成された。反応率に関する酢酸選択率は80モル%であり、反応率に関するギ酸選択率は2.4モル%であった。体積比の酢酸生産性は、270g/lhであった。粗酸は、水87質量%を含有していた。
【0063】
例11〜14
例11〜14は、例10と同様に実施し、その際の相違点は第2表に記載されている。
【0064】
例15 2,3−ブタンジオールの酸化
反応管の内径15mmを有する反応器中に、触媒IIを充填高さ1300mmで導入した。反応器入口の酸素含有率は、反応器入口で純粋な酸素を添加することにより自動的に4.5体積%に調整した。反応供給流として、次の組成を有する立体異性体混合物105gを使用した:R,R−2,3−ブタンジオール約15質量%、S,S−2,3−ブタンジオール約15質量%、メソ−2,3−ブタンジオール約70質量%。この立体異性体混合物を以下では2,3−ブタンジオールと呼ぶ。吸収のために、水520g/hを循環ガス流の方向で吸収塔の塔頂冷却器の直前に供給した。循環ガス流は、反応器が安定した状態で、6000g/hの循環ガス流に達するように調整した。反応器を圧力10.9×105Paおよび冷媒温度243.5℃で運転した。
【0065】
反応ガスからの酸の分離は、構造化された充てん物を有し、内径43mmおよび充填高さ3240mmを有する向流吸収装置中で、吸収装置の頭部温度130℃において吸収することにより行った。
【0066】
これらの条件下で、100%の2,3−ブタンジオールの反応率が達成された。反応率に関する酢酸選択率は92モル%であり、反応率に関するギ酸選択率は1モル%であった。体積比の酢酸生産性は、549g/lhであった。粗酸は、水80質量%を含有していた。
【0067】
例16
例16は、例15と同様に実施し、その際の相違点は、第3表に記載されている。
【0068】
例17 2,3−ブタンジオールの酸化
反応管の内径15mmを有する反応器中に、触媒IIIを充填高さ1000mmで導入した。反応器入口の酸素含有率は、反応器入口で純粋な酸素を添加することにより自動的に4.5体積%に調整した。反応供給流として、次の組成を有する立体異性体混合物99.7gを使用した:R,R−2,3−ブタンジオール約15質量%、S,S−2,3−ブタンジオール約15質量%、メソ−2,3−ブタンジオール約70質量%。この立体異性体混合物を以下では2,3−ブタンジオールと呼ぶ。吸収のために、水497g/hを循環ガス流の方向で吸収塔の塔頂冷却器の直前に供給した。循環ガス流は、反応器が安定した状態で、6kg/hの循環ガス流に達するように調整した。反応器を圧力11×105Paおよび冷媒温度180.0℃で運転した。
【0069】
反応ガスからの酸の分離は、構造化された充てん物を有し、内径43mmおよび充填高さ3240mmを有する向流吸収装置中で、吸収装置の頭部温度130℃において吸収することにより行った。
【0070】
これらの条件下で、100%の2,3−ブタンジオールの反応率が達成された。反応率に関する酢酸選択率は、84.5モル%であり、反応率に関するギ酸選択率は5.4モル%であった。体積比の酢酸生産性は、約600g/lhであった。粗酸は、水80質量%を含有していた。
【0071】
例18
例18は、例17と同様に実施し、その際の相違点は、第4表に記載されている。
【0072】
例19 2,3−ブタンジオール/アセトイン(3−ヒドロキシ−2−ブタノン)混合物の酸化:
反応管の内径15mmを有する反応器中に、触媒IIIを充填高さ1000mmで導入した。反応器入口の酸素含有率は、反応器入口で純粋な酸素を添加することにより自動的に4.52体積%に調整した。反応供給流として、アセトイン(3−ヒドロキシ−2−ブタノン)のラセミ体(R型およびS型の等モル混合物、以下ではアセトンと呼ぶ)の混合物10g/h、および次の組成を有する立体異性体混合物89.6gを使用した:R,R−2,3−ブタンジオール約15質量%、S,S−2,3−ブタンジオール約15質量%、メソ−2,3−ブタンジオール約70質量%。この立体異性体混合物を以下では2,3−ブタンジオールと呼ぶ。吸収のために、水497g/hを循環ガス流の方向で吸収塔の塔頂冷却器の直前に供給した。循環ガス流は、反応器が安定した状態で、5800g/hの循環ガス流に達するように調整した。反応器を圧力11×105Paおよび冷媒温度180℃で運転した。
【0073】
反応ガスからの酸の分離は、構造化された充てん物を有し、内径43mmおよび充填高さ3240mmを有する向流吸収装置中で、吸収装置の頭部温度130℃において吸収することにより行った。
【0074】
これらの条件下で、それぞれ100%の2,3−ブタンジオールおよびアセトインの反応率が達成された。反応率に関する酢酸選択率は81モル%であり、反応率に関するギ酸選択率は6.7モル%であった。体積比の酢酸生産性は、約600g/lhであった。粗酸は、水80質量%を含有していた。
【0075】
例20
例20は、例19と同様に実施し、その際の相違点は、第5表に記載されている。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1〜3個の炭素原子を有するカルボン酸を製造する方法であって、2,3−ブタンジオールおよび/またはアセトインを、1〜3個の炭素原子を有するカルボン酸へと反応させることを特徴とする方法。
【請求項2】
1〜3個の炭素原子を有する飽和有機酸が、酢酸であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酸素を用いた、または酸素を含有するガスを用いた酸化を、触媒の存在下に実施することを特徴とする、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
酸化を、不均一系触媒による気相酸化として実施することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
2,3−ブタンジオールまたはアセトインを、炭水化物を含有する原料から発酵により得られた混合物の形で使用することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
炭水化物を含有する原料が、単糖類、二糖類およびオリゴ糖類、たとえばサッカロース、マルトース、ならびにC6および/またはC5の単糖、有利にはグルコース、キシロースまたはアラビノースを含有することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
混合物が、1〜90質量%の水濃度、特に有利には40〜80質量%の水含有率を有する水溶液として存在し、かつ有利には混合物中の発酵の副生成物は、水溶液中の2,3−ブタンジオールおよびアセトインの合計の含有率に対して、それぞれ単独で30質量%未満であり、かつ合計して60質量%未満であることを特徴とする、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
酸化を、100℃〜400℃、特に有利には150℃〜300℃、とりわけ有利には180℃〜290℃の反応温度で実施することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
酸化を、1.2×105〜51×105Pa、特に有利には3×105〜21×105Pa、とりわけ有利には4×105〜12×105Paの圧力で実施することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
酸化の際に、バナジウム含有触媒を使用することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−518081(P2013−518081A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550434(P2012−550434)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051102
【国際公開番号】WO2011/092228
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】