説明

再生弾性ロール、弾性ロールの再生方法、現像剤担持ロール、電子写真プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置

【課題】簡便かつロール性能を損なわない弾性ロールの再生方法、これに用いられる再生軸芯体、性能が良好で低コストな再生弾性ロール、現像剤担持ロール、電子写真プロセスカートリッジ及び電子写真画像形成装置を提供する。
【解決手段】軸芯体;再生前に軸芯体の周囲に形成された第一弾性層(厚さta);及び第一弾性層の周囲に再生時に形成された第二弾性層を有しta≦0.2tb(tb:第一及び第二弾性層の総厚)且つta≧0.2mmである再生弾性ロール。これを得るための弾性ロールの再生方法。この再生弾性ロールを用いた現像剤担持ロール。この現像剤担持ロールを有する電子写真プロセスカートリッジ及び画像形成装置。軸芯体上に弾性層を有する弾性ロールから得られる再生軸芯体であって軸芯体外周上に弾性層のうちの厚さtaだけを有しta≦0.2tc(tc:弾性ロールの弾性層の総厚)且つta≧0.2mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性ロールの再生方法および再生弾性ロール、またこれに用いられる再生軸芯体に関する。また複写機やレーザービームプリンタなどの電子写真画像形成装置、電子写真画像形成装置に用いられる電子写真プロセスカートリッジおよび現像剤担持ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製軸芯体を用いた弾性ロールの製造方法としては、あらかじめゴム弾性層を押出し加工になどにより成形し、得られた弾性体チューブを軸芯体に圧入する方法や、必要とするロール形状の内部構造をもった金型内に軸芯体を配し、金型内に材料を注入し、その後硬化させるインジェクション成形法などが用いられている。これらロール製造方法においては、外径形状の不具合、ロール表面の凹み、異物の付着等の様々な不良現象が発生することがあり、さらにこの弾性層の表面にコーティングなどにより外層を設ける場合には、このコーティング層についても表面の性状ムラなどの塗工欠陥が発生することがある。このような不良が発生した弾性ロールは、不良品となり、出荷できずに廃棄されている。
【0003】
しかしながら、コスト削減の観点はもとより、環境保全の観点からも不良品の廃棄量削減が非常に重要な問題となっていた。すなわち、従来は一度加工したものの使用できず廃棄処分していた不良品から、ロールを構成する材料のうち一部を取り出して再利用する要求が高まっている。
【0004】
このような要求に対し、加工が済んでいる弾性ロールから、弾性体部分を剥離し軸芯体のみを再利用する方法が広く行われている。これにより、再利用時にはロール用原材料費をコストダウンできるだけでなく、金属製軸芯体に使用する金属資源を有効活用することを可能にしている。
【0005】
しかしながら、弾性ロールに用いる軸芯体は、通常弾性体との境界面に接着性をもった層を設けて、金属製軸芯体と弾性体とを接着させていることが殆どであり、弾性ロールから軸芯体を引き抜くだけでは、元の状態の軸芯体を得ることは出来ない。つまり、表面に弾性体が付着して残るため、この残った弾性体を研磨や拭きによって除去する必要があった。この際、軸芯体表面にキズをつけてしまうことがあり、キズのついた軸芯体を再利用する為には、特許文献1に示されるように再メッキ等の追加処理が必要となっていた。
【0006】
追加処理を必要とすることなく、さらに軸芯体を再利用する際に必要となる弾性体材料の使用量を削減できるという観点から、軸芯体を再生する際に弾性ロール表面の不具合部分のみ除去し、再度弾性ロールとして用いる方法も特許文献2に提案されている。
【0007】
しかしながら上記手法によって再生した軸芯体を用いると、再生軸芯体に付着している弾性層は、再加工時にその弾性層の硬化等のために必要な熱処理を再度受けることになり、本来ロール弾性層に要求される必要性能を満足させることが出来ない懸念があった。
【特許文献1】特開2000−291637号公報
【特許文献2】特開平09−155427号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、メッキ等の追加処理を必要とせずに簡便であり、しかも弾性ロールの性能を損なうことのない弾性ロールの再生方法を提供すること、良好な性能を有しかつ比較的低コストな再生弾性ロールを提供すること、およびこれに好適に用いられる再生軸芯体を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、このような再生弾性ロールを利用して、性能が良好でかつ比較的低コストな現像剤担持ロール、電子写真プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、軸芯体;再生前に該軸芯体の周囲に形成された第一の弾性層;および該第一の弾性層の周囲に再生時に形成された第二の弾性層を有し
第一の弾性層の厚さをta、第一および第二の弾性層の総厚をtbとしたとき、
ta≦0.2tb、且つ、taが0.2mm以上
である再生弾性ロールが提供される。
【0011】
前記第一および第二の弾性層がいずれも付加反応架橋型液状シリコーンゴムの硬化物であることが好ましい。
【0012】
本発明により、前記軸芯体の少なくとも表面が金属からなり、前記第一および第二の弾性層が導電性を有する上記再生弾性ロールからなる現像剤担持ロールが提供される。
【0013】
本発明により、現像剤担持ロールを有し、該現像剤担持ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像剤担持ロールを画像形成体に接触あるいは近接させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真プロセスカートリッジにおいて、
該現像剤担持ロールが、上記現像剤担持ロールである電子写真プロセスカートリッジが提供される。
【0014】
本発明により、現像剤担持ロールを有し、該現像剤担持ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像剤担持ロールを画像形成体に接触あるいは近接させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真画像形成装置において、
該現像剤担持ロールが、請求項3記載の現像剤担持ロールである電子写真画像形成装置が提供される。
【0015】
本発明により、軸芯体と、該軸芯体の周囲に配された弾性層を有する弾性ロールの再生方法であって、
弾性層を厚さtaだけ残して弾性層の外周側から剥離する剥離工程;および、
該剥離工程において残された弾性層の周囲に新たに弾性層を形成し、弾性層の総厚をtbとする弾性層形成工程を有し、
ta≦0.2tb、且つ、taが0.2mm以上
とする弾性ロールの再生方法が提供される。
【0016】
本発明により、軸芯体と、該軸芯体の周囲に配された弾性層を有する弾性ロールから得られる再生軸芯体であって、
該弾性ロールの弾性層の総厚をtcとしたとき、
該軸芯体の周囲に、該弾性層のうちの厚さtaの部分のみを有し、
ta≦0.2tc、且つ、taが0.2mm以上
である再生軸芯体が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、メッキ等の追加処理を必要とせずに簡便であり、しかも弾性ロールの性能を損なうことのない弾性ロールの再生方法が提供され、良好な性能を有しかつ比較的低コストな再生弾性ロールが提供され、またこれに好適に用いることのできる再生軸芯体が提供される。
【0018】
また本発明によれば、このような再生弾性ロールを利用して、性能が良好でかつ比較的低コストな現像剤担持ロール、電子写真プロセスカートリッジおよび電子写真画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明について図面を用いて説明する。
【0020】
図1は本発明の再生弾性ロールの一形態の、軸に垂直な断面図である。丸棒状の軸芯体11の外周面上には不図示の接着剤層を介して、再生前の弾性ロールに存在し、再生時に剥離されずに残された、円筒状の第一の弾性層12がある。第一の弾性層の厚さをtaで表す。第一の弾性層の外周面上には再生時に新たに形成された、円筒状の第二の弾性層(1層目)13がある。さらに第二の弾性層の周囲に、必要に応じて形成される表面層14が第二の弾性層の2層目として存在する。第一および第二の弾性層の厚さの合計をtbで表す。
【0021】
再生しようとする元の弾性ロールの弾性層、第一の弾性層、第二の弾性層のいずれも単層構造でも多層構造でもよい。
【0022】
元の弾性ロールの弾性層を剥離する際、剥離に際して軸芯体表面を保護する観点から第一の弾性層の厚さを0.2mm以上とする。
【0023】
また、再生弾性ロールのセット性などの物性が、新規に製造する場合の弾性ロールよりも低下することを回避するために、第一の弾性層の厚さtaは再生弾性ロールの全弾性層の厚さ(すなわち第一の弾性層の厚さと第二の弾性層の厚さの合計)tbの0.2倍以下とする。
【0024】
弾性ロール用の再生軸芯体は、弾性ロールから再生される軸芯体をいうが、必ずしも軸芯体のみを意味するものではなく、軸芯体以外の部材が含まれていてもよい。本発明の再生軸芯体は、軸芯体上に弾性層の一部を有するものである。具体的には、本発明の再生軸芯体15は、剥離工程によって得ることができ、軸芯体11の周囲に第一の弾性層12を有する。
【0025】
第二の弾性層(第二の弾性層が多層構造を有する場合は第一の弾性層に最も近い層)を形成する材料としては、第一の弾性層(第一の弾性層が多層構造を有する場合は第二の弾性層に最も近い層)の材料と同一のものが、両者の適合性の観点から好ましいが、必ずしもその限りではない。第一の弾性層と第二の弾性層との接着性が所望の範囲であり、互いに硬化阻害を引き起こさない場合には、同一材料でなくてもよい。
【0026】
また、弾性ロールを再生する際には、通常、元の弾性ロールと同じ仕様の再生弾性ロールを作成する。このような場合、元の弾性ロールの弾性層の総厚tcと、再生弾性ロールの弾性層の総厚tbとは同じとされる。tcとtbが同じ場合、再生弾性ロールを作成するために、軸芯体の周囲に元の弾性層(厚さtc)のうちの厚さtaの部分のみを有し、ta≦0.2tc、且つ、taが0.2mm以上である再生軸芯体を好適に使用することができる。
【0027】
〔軸芯体再生方法〕
図2は弾性ロールの弾性層の一部を剥離する方法の例を説明するための模式図である。
【0028】
弾性ロールから弾性層の一部をその外周側から剥離する方法、つまり再生軸芯体を取り出す方法としては、軸芯体の周囲の弾性層を研磨にて、所望の厚みだけ残して剥離する方法や、ブラスト処理により剥離する方法、または手作業にて削りとる方法が採用できる。しかしながら、これらの方法よりも短時間・小工数にて比較的均一な膜厚を残して剥離することができる方法として、以下の方法が好ましい。
【0029】
即ち、図2に示すように、ロールの軸芯体の径より、残したい弾性層の厚み分だけ径の太い穴(弾性層剥離穴という)24が空いた板状部材(弾性層剥離板という)21を用い、この弾性層剥離穴に弾性ロールを通過させることで、所望の厚みの弾性層を軸芯体上に残した再生軸芯体を得ることができる。軸芯体が通過する穴24の入り口側には弾性体を切り、剥離しやすくするために、刃が取り付けられている。
【0030】
また、複数の剥離方法を併用することも可能である。
【0031】
〔軸芯体〕
軸芯体の材料は、剛直さなどを勘案し、弾性ロールの軸芯体として公知の材料から適宜選ぶことができる。その形状は通常丸棒状あるいは円筒状である。
【0032】
現像剤担持ロールなど、電子写真プロセスに用いられる導電性弾性ロールの場合、軸芯体は、少なくともその表面が金属である丸棒状あるいは円筒状のものであり、鉄、アルミニウム、チタン、銅およびニッケル等の金属やステンレス、ジュラルミン、真鍮及び青銅等の合金からなる丸棒もしくは円筒、あるいは非導電性のプラスチック製の丸棒あるいは円筒の表面に金属の導電層を形成したもの等の、所望の剛直さを有し少なくとも表面が金属である、導電性弾性ロールの軸芯体として公知ものを使用することができる。例えば、炭素鋼や鉄などではその表面にニッケルを2〜20μm、好ましくは3〜10μmの厚さで化学メッキしておくことも好ましい。
【0033】
軸芯体の直径は、軸芯体材料や弾性ロールの使用目的により適宜決定されるが、例えば電子写真プロセスに用いられる弾性ロールにおいては、通常、4〜10mmとされる。
【0034】
〔弾性層〕
弾性層の材料としては、公知の弾性ロールの弾性層から適宜選ぶことができる。弾性の度合いは使用目的に応じて適宜決めることができる。
【0035】
導電性弾性ロールの場合、弾性層は導電性を有する。導電性の度合いは使用目的に応じて適宜決めることができる。
【0036】
電子写真プロセスに用いられる導電性弾性ロールの場合、弾性層の材料として、液状のゴム材料、好ましくは液状付加反応架橋型シリコーンゴムに導電性付与剤としてカーボンブラック等の導電性フィラーを配合したものが好ましく用いられる。
【0037】
(液状シリコーンゴム材料)
弾性層の材料として、加工性に優れている、硬化反応に伴う副生成物の発生がないため寸法安定性が良好である、硬化後の物性が安定している等の理由から、液状付加反応架橋型シリコーンゴムが好ましく用いられる。
【0038】
この付加反応架橋型シリコーンゴムは、例えば、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、および式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含み、さらにこれらと触媒や他の添加物とを適宜混合させて用いることができる。
【0039】
なお、式(1)で表されるオルガノポリシロキサン、式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンに、触媒や添加物を配合して得られる組成物を液状シリコーンゴム材料と呼ぶ。
【0040】
【化1】

【0041】
式中、R1およびR2は互いに同一でも異なっていてもよいアルケニル基であり、xは正の整数である。
【0042】
式(1)で表されるオルガノポリシロキサンは液状シリコーンゴム原料のベースポリマーであり、その分子量は特に限定されないが10万以上100万以下が好ましく、重量平均分子量は40万以上70万以下が好ましい。さらに加工特性および得られる液状シリコーンゴム組成物の特性等の観点から、オルガノポリシロキサンの粘度(25℃での)は、下限値として10Pa・s以上が好ましく、50Pa・s以上がより好ましく、上限値としては300Pa・s以下が好ましく250Pa・s以下がより好ましい。
【0043】
式(1)で表されるオルガノポリシロキサンのアルケニル基は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの活性水素と反応して架橋点を形成する部位であり、その種類は特に限定されないが、活性水素との反応性が高い等の理由から、ビニル基およびアリル基から選ばれることが好ましく、ビニル基が特に好ましい。
【0044】
【化2】

【0045】
式中、yは2以上の正の整数であり、zは正の整数である。
【0046】
式(2)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、硬化工程における付加反応の架橋剤の働きをするもので、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数は2個以上であり、硬化反応を優れて行わせる観点から、一分子中のケイ素原子結合水素原子の数が3個以上であることが好ましい。
【0047】
ポリオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量に特に制限は無く、例えば1000から10000までの分子量のものが含有されるが、硬化反応を適切に行わせるために、比較的低分子量(例えば重量平均分子量1000以上5000以下)が好ましい。
【0048】
(架橋触媒)
オルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの反応の架橋触媒として、例えば、塩化白金酸六水和物を使用することができ、また、ヒドロシリル化反応において触媒作用を示す遷移金属化合物も使用可能である。その具体例としては、Fe(CO)5、Co(CO)8、RuCl3、IrCl3、〔(オレフィン)PtCl22、ビニル基含有ポリシロキサン−Pt錯体、L2Ni(オレフィン)、L4Pd、L4Pt、L2NiCl2(但し、LはPPh3若しくはPR’3であり、ここでPはリン、Phはフェニル基、R’はアルキル基を示す)を挙げることができる。その中でも、好ましくは白金、パラジウム、ロジウム系遷移金属化合物触媒である。
【0049】
上記触媒の配合量は、白金系金属化合物触媒の場合、液状シリコーンゴム材料中、白金として1〜100質量ppmが好ましいが、この範囲に限定されることはなく、目標とする可使時間、硬化時間、製品形状等により適宜選択される。
【0050】
(硬化反応遅延剤)
また液状シリコーンゴム材料は、硬化反応遅延剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール、フェニルブチノール等の不飽和アルコールを含むことができる。上記硬化反応遅延剤の配合量としては、オルガノポリシロキサン量100質量部に対し0.05〜0.5質量部の範囲で、目標とする可使時間、硬化時間、製品形状により適宜選択される。
【0051】
(充填剤)
液状シリコーンゴム材料に含ませることのできるフィラー(補強充填剤及び増量剤)としては、例えば、ヒュームドシリカ、湿式シリカ、石英微粉末、ケイソウ土、カーボンブラック、酸化亜鉛、塩基性炭酸マグネシウム、活性炭酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、二酸化チタン、タルク、雲母粉末、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、ゴム用カーボンブラック、有機補強剤、有機充填剤を挙げることができる。これらの充填剤の表面を有機珪素化合物、例えば、ポリジオルガノシロキサン等で処理して疎水化して、液状シリコーンゴム材料への分散性を挙げることが好ましい。
【0052】
(導電剤)
弾性層に含ませることのできる導電剤、特には液状シリコーンゴムに含ませることのできる導電剤としては、例えば、アルミニウム、パラジウム、鉄、銅、銀等の金属系の粉体や繊維;酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物;硫化銅、硫化亜鉛等の金属化合物粉;適当な粒子の表面に、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化モリブデン、亜鉛、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、コバルト、鉄、鉛、白金あるいはロジウムを電解処理、スプレー塗工もしくは混合振とうなどにより付着させた粉体;およびアセチレンブラック、ケッチェンブラック、PAN系カーボンブラック、ピッチ系カーボンブラック等のカーボン粉が挙げられる。また、KSCN、LiClO4、NaClO4、4級アンモニウム塩等のイオン伝導物質も使用可能である。
【0053】
導電剤としては、比較的少量の添加で電気抵抗率を低下させることができ、ゴム組成物の硬度を大きくすることなく導電性を付与することができるので、特にカーボンブラックが好ましい。
【0054】
(液状シリコーンゴム材料の物性)
必要な充填剤等が配合された液状シリコーンゴム材料の粘度ρ(25℃で測定)は特に制限はないが、材料の流動性をある程度抑制して材料漏れを防止する観点から10Pa・s以上が好ましく、注入ゲート間にウェルドが発生する等の成形加工性の問題を回避するための観点から、300Pa・s以下が好ましい。
【0055】
〔弾性層の形成〕
ゴム材料として付加反応架橋型液状シリコーンゴムを用いた場合の導電性弾性層の形成方法の例について説明する。
【0056】
加硫接着タイプのシリコーンゴム用プライマーを極薄く塗布した金属製の軸芯体(芯金)を、円筒状金型内に置き、金型と芯金の間に形成された弾性層形成キャビティ内に上記した液状シリコーンゴム材料を注入し、金型内で100〜150℃、0.1〜1時間一次加熱加硫させた後、成形物を取り出し、必要によりさらに180〜220℃の恒温槽中で加熱加硫を完了させ、芯金の上に導電性弾性層を形成することができる。
【0057】
第一の弾性層の周囲に第二の弾性層を形成するために、上記と同様の方法を採用することができる。この場合、第一の弾性層の表面にプライマーを塗布することなく第二の弾性層を形成することができる。あるいは、第一の弾性層と第二の弾性層との接着性をより良くするために、プライマーを用いてもよい。
【0058】
なお、電子写真プロセスにおいて用いられる導電性弾性層の厚みとしては、通常、2〜6mm、好ましくは3〜5mmとするのが適当である。
【0059】
〔表面層の形成〕
以上のようにして作成した弾性層上に更に表面層として樹脂層を形成することができる。本発明においては、表面層も弾性層の一部である。
【0060】
樹脂層を形成する材料として、例えば、各種のポリアミド、フッ素樹脂、水素添加スチレン−ブチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、オレフィン樹脂等を用いることができる。
【0061】
これらの材料は、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミル等のビーズを利用した従来公知の分散装置を使用して、適当な溶媒としてメチルエチルケトン、トルエン、メチルイソブチルケトン等に分散させることができる。この分散を行うことにより、表面欠損の少ない表面層を得るための塗工液を得ることができる。
【0062】
得られた表面層形成用の分散体は、スプレー塗工法、ディッピング法等により弾性層の上に塗工することができる。
【0063】
表面層の厚みとしては、電子写真プロセスに用いる弾性ロールの場合、表面層の下層の弾性層成分がしみ出してきて画像形成体を汚染することを優れて防止する観点から5μm以上が好ましく、弾性ロールの表面が硬くなることを防止し、トナーの融着を防止する観点から500μm以下が好ましく、より好ましくは10〜30μmである。
【0064】
弾性ロールが現像剤担持ロールの場合、表面層中に質量平均粒径が1〜20μmの微粒子を分散させることにより、現像剤担持ロール表面の現像剤の搬送を容易にすることができ、充分な量の現像剤を現像領域に搬送することができるので、好ましい。このような目的に使用する微粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリル酸メチル微粒子、シリコーンゴム微粒子、ポリウレタン微粒子、ポリスチレン微粒子、アミノ樹脂微粒子、フェノール樹脂微粒子等のプラスチックピグメントが挙げられる。特にポリメチルメタクリル酸メチル微粒子及びポリウレタン微粒子が好ましい。これらの微粒子はこの微粒子を除く表面層構成成分の総質量に対して約3〜200質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0065】
〔画像形成装置〕
次に本発明の現像剤担持ロールを組込んでなる電子写真プロセスカートリッジを用いた接触現像方式の画像形成装置の一例の概略を図3に示す。
【0066】
画像形成体である感光体ドラム31、一次帯電ロール32、現像剤担持ロール33、現像剤供給ロール34、現像剤層厚規制部材であるトナー層厚規制部材35、撹拌羽36および現像剤であるトナー37が一つのカートリッジにまとめられ、電子写真装置の中で一体的に交換可能なカートリッジとなっている。
【0067】
一次帯電ロール32で均一に帯電された感光体ドラム31は矢印の方向に回転しており、一次帯電ロール32と現像剤供給ロール33との間でその表面に記録情報を乗せたレーザー光40が照射され、潜像が形成される。一方、撹拌羽36で現像剤供給ロール34に送られたトナー37は、トナー層厚規制部材35によって現像剤担持ロール33表面に均一にコートされ、感光体ドラム31表面へと運ばれ、感光体ドラム31表面上に形成されている潜像をトナー像として顕像化する。感光体ドラム31がさらに回転してトナー像が転写領域に到達すると、紙等の記録メディア43にトナー像が感光体ドラム31に対し対置された転写ロール42により転写される。感光体ドラム31は、表面がクリーニング用弾性部材38で記録メディア43に転写せずに残ったトナーを除去された後、一次帯電ロール32で再び均一に帯電される。
【0068】
記録メディア43に転写された未定着のトナー像は、定着ロール44と加圧ロール45の間を通り、圧力と熱で記録メディアに定着され、電子写真装置から排出される。
【0069】
一方、現像に使用されずに残ったトナーを表面に坦持したまま現像剤担持ロール33は現像容器41に戻される。現像容器41の内部では現像剤供給ロール34が現像剤担持ロール33表面に残ったトナーを現像剤担持ロール33表面から取り除くとともに、新しいトナーを現像剤担持ロール33の表面に供給する。現像剤担持ロール33表面に供給された新しいトナーは、その層厚がトナー層厚規制部材35により均一に整えられ、現像領域に搬送されていく。この繰り返しによって現像剤担持ロール33に常に新しいトナーが均一にコートされて静電潜像が現像される。
【0070】
本発明によれば、弾性ロールから弾性層を剥離する際に、軸芯体からすべての弾性層を剥離せずに弾性層の一部を残すことにより、軸芯体の再生にかかる時間を低減できるのはもとより、軸芯体をキズつけることを回避することができる。従って、メッキ等の追加処理が不要となる。さらには新たな弾性層を形成する際に、既に軸芯体と接着している弾性層が存在している為、軸芯体に接着層を形成する必要がない。また、新規に使用する弾性体材料が、弾性層の厚みとして全体の80%以上を占める為、再生された弾性ロールの性能も、新規の弾性ロールと同等にすることができる。
【0071】
従って、本発明によれば、再生軸芯体、さらには再生弾性ロールを、少ない工程で製造できる。また、再生弾性ロールの特性については、従来の手法により再生した軸芯体を使用した場合と比較して、軸芯体キズの発生、ロール性能の低下および局部的な物性異常の無いものを得ることが可能である。
【0072】
また、再生弾性ロールを作成する際に必要な弾性材料使用量を、新規に弾性ロールを作るよりも少なくすることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。これは本発明を何ら限定するものではない。
【0074】
〔弾性層の厚み測定〕
弾性層の厚みは、弾性ロール及び軸芯体の外径測定値から算出した。即ち図4に示すように、弾性ロールもしくは軸芯体402をレーザー測長器(キーエンス社製、商品名:LS−5040)のレーザー光間(レーザー発光部402およびレーザー受光部403の間)に挿入し、回転速度120°/sにて回転させ、その外径を0.33ms間隔(回転角3.6°毎)で測定した。その後ロールもしくは軸芯体1周分(100個)のデータを平均し、その位置での外径とした。ロールもしくは軸芯体の長手方向における外径測定ポイントは、図5に示すように弾性層端部から20mm中央よりの位置をそれぞれL1(注入側)、L2(出口側)とした。さらに、L1とL2との中央をLCとした。この各ポイントL1、L2及びLCでの外径の平均値を、その測定対象物の外径とした。このようにして測定した、弾性ロール及び軸芯体の各測定ポイント同士の外径差1/2を弾性層厚みとした。
【0075】
〔実施例1〕
再生しようとする弾性ロールを用意した。この弾性ロールの軸芯体は、直径8mm、長さ280mmの鉄製丸棒に厚み5μmの無電解ニッケルメッキをしたものであった。また、この軸芯体上に、長さが230mmで厚みが4mmであるシリコーンゴム層が弾性層として配されていた。さらにその外周上にポリウレタン樹脂原料に平均粒径15μmのウレタン粒子及び導電性カーボンブラックを配合してなる表面層が配されていた。
【0076】
図2に示した構造の、直径9.6mmの弾性層剥離穴を有する弾性層剥離板を用い、この弾性ロールを弾性層剥離穴に通すことにより、弾性層を0.8mmの厚みを残して剥離し、再生軸芯体を得た。
【0077】
次に、この再生軸芯体を、内径16mmの円筒状金型に両端から駒で保持してセットした。その駒に設けられた注入口より金型内へ付加反応架橋型液状シリコーンゴム(オルガノポリシロキサン・オルガノハイドロジエンポリシロキサン・導電性カーボンブラック・白金触媒・石英・シリカを適宜配合し、液状状態での粘度150Pa・sで、硬化後のアスカC硬度40度品)を注入し、150℃×30分間加熱硬化することにより、再生軸芯体上の弾性層(第一の弾性層)の外周面上に新たな弾性層(第二の弾性層の一層目)を形成した。
【0078】
得られた第二の弾性層(一層目)の表面に、ポリウレタン樹脂原料に平均粒径15μmのウレタン粒子及び導電性カーボンブラックを均一に分散した塗工液をディップ塗工し、熱処理を施して硬化させ、厚み20μmの均一なポリウレタン樹脂層(第二の弾性層のニ層目)を形成し、現像剤担持ロールとして使用可能な再生弾性ロールを得た。
【0079】
得られた再生軸芯体のキズの有無を調べ、また、再生弾性ロール作成時の弾性材料使用量を、新規軸芯体を使用した場合の弾性材料使用量との比率で調べ、表1にまとめた。
【0080】
さらに、再生弾性ロールを現像剤担持ロールとして電子写真プロセスカートリッジにセットし、環境温度40℃、相対湿度90%の環境に1週間放置後、このカートリッジを電子写真画像形成装置に取り付けて画像評価を行った。その際の、層厚規制部材との接触跡が画像に表れるかどうかを確認し、この結果も表1のセット画像評価結果の欄にまとめた。
【0081】
表中、再生軸芯体外観およびセット画像の評価結果は、優れている場合に○、優れているとは言えないが許容範囲である場合に△、現像剤担持ロールとして使用不可の場合に×、特に劣る場合に××で表した。また総合判定においては、現像剤担持ロールとして使用可の場合に○、使用不可の場合に×とした。
【0082】
実施例1では、新規軸芯体使用時に比べてセット性がやや劣るものの許容範囲内であり、芯金にキズも無かった。この再生された弾性ロールは、現像剤担持ロールとして好適に利用可能であった。
【0083】
〔実施例2〕
弾性層剥離穴の直径を変更し、再生軸芯体上に残す弾性層厚みを0.2mmとした以外は、実施例1と同様に、再生軸芯体を用いた現像剤担持ロールを作成し、実施例1と同項目の評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0084】
実施例2の再生弾性ロールは、第一の弾性層の厚さが比較的薄いため、軸芯体に僅かにキズがついたが許容範囲内であり、セット性に問題はなく、現像剤担持ロールとして好適に利用可能であった。
【0085】
〔実施例3〕
再生軸芯体上に残す弾性層厚みが0.4mmであること以外は、実施例1と同様に、再生軸芯体を用いた現像剤担持ロールを作成し、実施例1と同項目の評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0086】
実施例3の再生弾性ロールは、第一の弾性層の厚さが薄いものの、軸芯体にキズがつかない程度に充分の厚みを持っているため、軸芯体のキズおよびセット性に問題は無く、現像剤担持ロールとして好適に利用可能であった。
【0087】
〔比較例1〕
実施例1と同様に、弾性層を剥離した後、軸芯体上に残っている弾性層を研磨により軸芯体上から完全に取り去り、再生軸芯体上に弾性材料を全く残さないこと以外は、実施例1と同様に、再生軸芯体を用いた現像剤担持ロールを作成し、実施例1と同項目の評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0088】
比較例1の再生弾性ロールは、軸芯体上(芯金)にキズがつき、現像剤担持ロールとしての使用に適さなかった。
【0089】
〔比較例2〕
再生軸芯体上に残す弾性層厚みが3mmであること以外は、実施例1と同様に、再生軸芯体を用いた現像剤担持ロールを作成し、実施例1と同項目の評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0090】
比較例2の再生弾性ロールは、セット性が悪く、現像剤担持ロールとしての使用に適さなかった。
【0091】
〔比較例3〕
再生軸芯体上に残す弾性層厚みが0.1mmであること以外は、実施例1と同様に、再生軸芯体を用いた現像剤担持ロールを作成し、実施例1と同項目の評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0092】
比較例3の再生弾性ロールは、現像剤端持ロールとしての使用に適する為の軸芯体のキズの許容範囲を超えていたため現像剤担持ロールとしての使用に適さなかった。
【0093】
〔比較例4〕
再生軸芯体上に残す弾性層厚みが1.0mmであること以外は、実施例1と同様に、再生軸芯体を用いた現像剤担持ロールを作成し、実施例1と同項目の評価を行い、結果を表1にまとめた。
【0094】
比較例4の再生弾性ロールは、セット性が不十分であり、現像剤担持ロールとしての使用に適さなかった。
【0095】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、例えば電子写真プロセスカートリッジもしくは電子写真画像形成装置用の現像剤担持ロールを再生する際に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の再生弾性ロールの一例の軸に垂直な断面を示す断面図である。
【図2】本発明の再生軸芯体を得る方法の一例を説明するための概念図である。
【図3】本発明の画像形成装置の一例の概念図である。
【図4】弾性層厚さの測定に用いた装置の模式図である。
【図5】弾性層厚さの測定を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0098】
11:軸芯体
12:第一の弾性層
13:第二の弾性層
14:表面層(第二の弾性層に含まれる)
15:再生軸芯体
21:弾性層剥離板
22:弾性ロール
23:再生軸芯体
24:弾性層剥離穴
31:感光体ドラム
32:一次帯電ロール
33:現像剤担持ロール
34:現像剤供給ロール
35:トナー層厚規制部材
36:撹拌羽
37:トナー
38:クリーニング用弾性部材
40:レーザー光
41:現像容器
42:転写ロール
43:記録メディア
44:定着ロール
45:加圧ロール
401:ロールもしくは軸芯体
402:レーザー発光部
403:レーザー受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸芯体;再生前に該軸芯体の周囲に形成された第一の弾性層;および該第一の弾性層の周囲に再生時に形成された第二の弾性層を有し
第一の弾性層の厚さをta、第一および第二の弾性層の総厚をtbとしたとき、
ta≦0.2tb、且つ、taが0.2mm以上
である再生弾性ロール。
【請求項2】
前記第一および第二の弾性層がいずれも付加反応架橋型液状シリコーンゴムの硬化物である請求項1記載の再生弾性ロール。
【請求項3】
前記軸芯体の少なくとも表面が金属からなり、前記第一および第二の弾性層が導電性を有する請求項1または2記載の再生弾性ロールからなる現像剤担持ロール。
【請求項4】
現像剤担持ロールを有し、該現像剤担持ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像剤担持ロールを画像形成体に接触あるいは近接させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真プロセスカートリッジにおいて、
該現像剤担持ロールが、請求項3記載の現像剤担持ロールである電子写真プロセスカートリッジ。
【請求項5】
現像剤担持ロールを有し、該現像剤担持ロールの表面に現像剤の薄層を形成し、該現像剤担持ロールを画像形成体に接触あるいは近接させて該画像形成体表面に該現像剤を供給することにより該画像形成体表面に可視画像を形成させる電子写真画像形成装置において、
該現像剤担持ロールが、請求項3記載の現像剤担持ロールである電子写真画像形成装置。
【請求項6】
軸芯体と、該軸芯体の周囲に配された弾性層を有する弾性ロールの再生方法であって、
弾性層を厚さtaだけ残して弾性層の外周側から剥離する剥離工程;および、
該剥離工程において残された弾性層の周囲に新たに弾性層を形成し、弾性層の総厚をtbとする弾性層形成工程を有し、
ta≦0.2tb、且つ、taが0.2mm以上
とする弾性ロールの再生方法。
【請求項7】
軸芯体と、該軸芯体の周囲に配された弾性層を有する弾性ロールから得られる再生軸芯体であって、
該弾性ロールの弾性層の総厚をtcとしたとき、
該軸芯体の周囲に、該弾性層のうちの厚さtaの部分のみを有し、
ta≦0.2tc、且つ、taが0.2mm以上
である再生軸芯体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−4044(P2007−4044A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−186815(P2005−186815)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】