冗長化通信装置
【課題】マスター装置が故障した場合に、このマスター装置に接続していたスレーブ装置が、自ら新たに接続すべきマスター装置を選択する通信冗長化装置を提供する。
【解決手段】サーバー3に接続されたマスター装置1bに接続されて、この装置1bとデータの送受信をするスレーブ装置21a〜21zの各スレーブは、万一マスター装置1bが故障した場合は、接続可能で最適なマスター装置を、周波数帯域や送信データのプリアンブルパタンを変更するなどして探索し、当該マスター装置に自ら接続する。
【解決手段】サーバー3に接続されたマスター装置1bに接続されて、この装置1bとデータの送受信をするスレーブ装置21a〜21zの各スレーブは、万一マスター装置1bが故障した場合は、接続可能で最適なマスター装置を、周波数帯域や送信データのプリアンブルパタンを変更するなどして探索し、当該マスター装置に自ら接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビル内通信、列車内通信等、メタル線等の各種通信伝送路を用いる有線通信及び無線通信をおこなう通信装置に関し、特にマスター装置の故障や伝送路に異常が発生した場合、当該マスター装置に接続しているスレーブ装置が、次に接続する最適なマスター装置を選択する冗長化通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスター装置故障時における冗長化方式として、例えば特許文献1に示すように、通信系が途中で切断された場合でも、故障点の下側のスレーブ装置を自動的にマスター装置として機能させ、更に下側に接続されている他のスレーブ装置の制御を継続するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−218232号公報(第5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冗長化方式は、マスター装置とこれにデイジーチェーン接続されたスレーブ装置で構成される。そして、万一マスター装置の故障が発生すると、故障したマスター装置の直下に接続されているスレーブ装置がマスター装置として機能するものである。
この構成では、全てのスレーブ装置がデイジーチェーン接続されていること及び全てのスレーブ装置がマスター装置を兼ね得る仕様とする必要がある。
しかしながら、複数のスレーブ装置が1台のマスター装置に接続されるバス型伝送路を備えた通信装置では、対等な関係にあるスレーブ装置が複数併存するため、この方式を直接適用できないという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、マスター装置が故障した場合や伝送路劣化・異常が発生した場合に、当該マスター装置に接続されていた各スレーブ装置が自動的に他の最適なマスター装置へ接続する、最適マスター選択による冗長化通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る冗長化通信装置は、
それぞれがスレーブ装置を制御する複数のマスター装置と、
各マスター装置にデータを配信するサーバとがバス型伝送路で接続された冗長化通信装置であって、
スレーブ装置は、
バス型伝送路の通信断を検出する通信断検出手段を備え、
スレーブ装置が、接続しているマスター装置との間の通信断を検出したときは、次にスレーブ装置が接続すべきマスター装置を自ら選択して接続することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る冗長化通信装置のスレーブ装置は、バス型伝送路の通信断を検出する通信断検出手段を備え、スレーブ装置は、接続しているマスター装置との間の通信断を検出したときは、次にスレーブ装置が接続すべきマスター装置を自ら選択して接続することを特徴とするものなので、障害が発生しても通信装置全体の運用を継続でき、通信品質を確保できる。
また、装置二重化の必要がなく二重化のための装置コストや、設置スペースが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態1における全体構成を示す概念図である。
【図2】図1に示す冗長化通信装置の故障発生時の状態を示す図である。
【図3】図1に示す冗長化通信装置を列車に適用した概念図である。
【図4】図3に示す冗長化通信装置の故障発生時の状態を示す図である。
【図5】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態1におけるスレーブ装置2aの構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態1におけて使用するデータフレーム構成の一例を示す図である。
【図7】実施の形態1において使用する周波数帯域の一例を示す図である。
【図8】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態2におけるスレーブ装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態2におけるスレーブ装置のマスター選択リストの内容の一例を示す図である。
【図10】実施の形態2において使用するデータフレーム構成の一例を示す図である。
【図11】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態3におけるスレーブ装置の構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態3に係るマスター装置及びスレーブ装置で追加された手段を示す図である。
【図13】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態4におけるスレーブ装置の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態5におけるスレーブ装置の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態5におけるマスター装置のブリッジと周辺の要部ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明に係る冗長化通信装置の実施の形態1を図を用いて説明する。
図1は冗長化通信装置100(以下装置100という)の全体構成を示す概念図であり、正常動作時の状態を示している。図2は、装置100のマスター装置1bに不具合が発生した状態を示している。図1及び図2に示す装置100を列車の通信装置として適用したものが図3及び図4である。
本発明に係る冗長化通信装置は、ビル間や、移動体間の通信を確保するため使用する装置であるが、伝送路は、有線でも無線でも構わない。
【0010】
次に、装置の構成について図1を用いて説明する。
バス型の伝送路4にサーバ3、マスター装置1a、1b、スレーブ装置2a〜2z及びスレーブ装置21a〜21zが接続されている。各装置が正常に動作しているとき、破線で囲まれたグループ101内の各スレーブ装置2a〜2zはマスター装置1aの制御下に置かれ、グループ102内のスレーブ装置21a〜21bの各スレーブ装置はマスター装置1bの制御下に置かれている。このような接続とすることにより、サーバ3から各装置に提供されるデータがスムーズに流れるよう通信処理を装置100内の複数のマスター装置に分散して担当させている。
【0011】
この装置100のマスター装置の1台が故障した場合でも装置100全体の通信を最適に確保することが本発明の目的である。
マスター装置の1台が故障した場合の各スレーブ装置の動作について図3及び図4を用いて説明する。
【0012】
図3において、マスター装置1aはスレーブ装置2a〜2zまでを制御し、マスター装置1bはスレーブ装置21a〜21zを制御し、同様にマスター装置1cはスレーブ装置22a〜22zを制御している。ここで、何らかの原因によってマスター装置1bが故障し、その制御下にあるスレーブ装置21a〜21zへの制御ができなくなった場合、各スレーブ装置21a〜21zは独自に付近に存在する最適なマスター装置を割り出し自らそのマスター装置に接続し通信を確保する。
具体的には図4に示すように、スレーブ装置21aはマスター装置1aに自ら接続し、スレーブ装置21b〜21zはマスター装置1cに自ら接続する。
このように、故障前にマスター装置1bが制御していたグループ102に属するスレーブ装置21a〜21zはそれぞれが最適と判断したマスター装置の制御下に自ら入ることになる。
【0013】
次に、各スレーブ装置の構成を図5を用いて説明する。
図5は、装置100で使用するスレーブ装置2aの構成を示すブロック図である。
スレーブ装置2aは変復調手段51と、ブリッジ52と、ブリッジバッファ53と、周波数帯域変更手段56と、プリアンブルパタン変更手段57と、通信断検出手段58と、CPU60とから構成されている。
そして、スレーブ装置2aの変復調手段51は、外部にあってこのスレーブ装置2aを制御下に置くマスター装置1aと伝送路4で接続されている。
また、変復調手段51はブリッジ52を介してマスター装置1aから受け取ったデータを処理するPC7に接続されている。
【0014】
変復調手段51は、送信・受信での変復調手段を有するモデムであり、受信したアナログ信号をディジタル信号に変換し、送信するときはその逆の処理をする。
構成としては受信信号タイミングを検出する同期回路、送信側で変調した信号を復調する復調回路、誤り訂正機能等を有するがここでは詳細は省略する。
図5に示すように、変復調手段51の受信側はマスター装置1aからの信号を伝送路4を通して受信し、予め定められた方式で復調してブリッジ52を介してPC7へイーサネット(登録商標)形式のデータとして受け渡す。反対に、送信側は、PC7からブリッジ52を介して受け取ったイーサネット(登録商標)形式データを予め定めた方式で変調して伝送路4を通してマスター装置1aへ送信する。
【0015】
次に、変復調手段51に接続されている各手段の機能について説明する。
変復調手段51の主たる機能は前述の通りであるが、スレーブ装置2aは、万一、このスレーブ装置2aが接続するマスター装置1aに故障が発生し、データ通信が途絶えた場合に備えて、他のマスター装置に自ら接続するための各種の手段を備えている。
通信断検出手段58は、このスレーブ装置2aが接続するマスター装置1aとの通信プロトコルを監視する。そして、例えば一定時間受信がない場合、ACK等の応答が返らない場合、或いは、ヘルスチェック機能等を設け、その応答が返らない等の条件設定により通信断を検出する。
その他、通信断を検出する要因としては、例えばマスター装置の故障や、伝送路が減衰のみではなくレベルの大きなノイズ等も想定される。
スレーブ装置2aが、通信断検出手段58により通信断を検出した場合、内部タイマー等により一定時間経過後、通信断が発生したマスター装置との接続をスレーブ装置2a側からも切断する。
このような場合でも継続して安定した通信の確保を行うため、スレーブ装置2aは新たに接続すべきマスター装置を選択することで冗長化構成を実現する。
【0016】
通信断検出手段58がマスター装置1aとの通信の遮断を検出すると、スレーブ装置2aは、新たなマスター装置と接続するためにプリアンブルパタン変更手段57によって、プリアンブルパタンを変更して接続可能なマスター装置の探索を行う。
【0017】
図6に示すように、それぞれのマスター装置への送信データは、複数のマスター装置間の信号干渉による誤接続防止を目的として、フレーム先頭部分に異なるプリアンブルパタンを有する。この場合、スレーブ装置2aが新たなマスター装置と接続するためには、このプリアンブルパタンが合致する必要がある。
スレーブ装置2aが新たなマスターを探索するにあたり、プリアンブルパタン変更手段57は、以後送出するデータのプリアンブルパタンを、予め当該手段に登録しておいた他のマスター装置のプリアンブルパタンに変更する要求を変復調手段51に通知して新たなマスター装置の探索を行う。
【0018】
新たなマスター装置から応答があり、通信が完了した場合、当該マスター装置は、スレーブ装置2aの参入処理を行う。もし、新たなマスター装置が探索されず通信が確立しなかった場合は、プリアンブルパタン変更手段57はさらに新たなプリアンブルパタンを変復調手段51へ設定する。
【0019】
プリアンブルパタン変更手段57によって新たなマスター装置を探査した結果、新たなマスター装置を発見することができなかった場合は、周波数帯域変更手段56へ処理を移行する。
【0020】
周波数帯域変更手段56は、変復調手段51が通信する際に使用可能な周波数帯域を複数有する場合、それらの周波数帯域から1つの周波数帯域を選択し、変復調手段51に設定する。
周波数帯域変更手段56は、図7に示すような周波数帯域の一覧を保持している。予め設定されたこれらの周波数帯域の中から現在使用する周波数と異なる周波数帯域を変復調手段51へ設定する。
変復調手段51は、設定された周波数帯域を送信部及び受信部へ設定し新たに接続すべきマスター装置の探索を開始する。新たなマスター装置との通信が完了した場合は、当該マスター装置は、スレーブ装置2aの参入処理を行う。もし、新たなマスター装置が探索されず通信が確立しなかった場合は、周波数帯域変更手段56はさらに新たな周波数帯域を変復調手段51へ設定する。
【0021】
以上のように、故障したスレーブ装置は、送出するデータのプリアンブルパタンを変更することや、通信に使用する周波数帯域を変更することによって、最適なマスター装置を自ら探索し、当該マスター装置に自動的に接続されるため、障害が発生しても通信装置全体の運用を継続でき、通信品質を確保できる。
また、装置二重化の必要がなく二重化のための装置コストや、設置スペースが不要となる。
【0022】
実施の形態2.
この発明に係る冗長化通信装置の実施の形態2を図8を用いて、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
図8は、冗長化通信装置200(以下装置200という)で使用するスレーブ装置202aの構成を示すブロック図である。
図9は、この実施の形態で使用するマスター選択リスト55に記載するデータの1例を示す図である。
【0023】
この実施の形態の装置200は、周波数帯域変更手段56によって新たなマスター装置を探査した結果、接続可能な新たなマスター装置を発見することができなかった場合に、更にマスター装置を探索する手段を備えている。
スレーブ装置202aのマスター選択手段54は、マスター選択リスト55を元に、次にスレーブ装置202aが接続すべきマスター装置を選択する。
マスター選択リスト55には、予め、スレーブ装置202aが接続可能なマスター装置の諸情報を記載している。
【0024】
例えば、「マスター番号欄」には、MACアドレスなど、マスター装置を一意に特定できるデータを記載する。「受信電力」の欄には、スレーブ装置2aからそれぞれのマスター装置までの距離などを元にした計算上の各マスター装置からの信号の標準受信電力を記載する。「優先順位」の欄は、接続するマスター装置の優先順位を記載する。
「排他」の欄には、このスレーブ装置202aからの接続を禁止するマスター装置がある場合には、その装置にマークを記載する。
【0025】
マスター選択手段54は、マスター選択リスト55に格納されたデータを元に、次に接続すべきマスター装置との通信に必要なデータを変復調手段251に設定する。
マスター選択手段54が使用するマスター選択リストのデータ欄は、1つのみを使用しても良いし、複数の欄を使用して条件を組み合わせても良い。組合せによってマスター装置を選択するための複数のルールを設定できる。
これらのルールのアルゴリズムについては外部接続したPC等により変更可能であり、マスター選択リストの編集も可能である。
例えば、「優先順位」と「排他」欄を使用する場合は、優先順位に従い、「排他」に該当しないマスター装置に接続するルール等を使用する。
尚、マスター装置の識別には、図10に示すようにフレームのヘッダ部の一部にMACアドレスや識別コードを設ければよい。
【0026】
また、運用中に、あるマスター装置に障害が発生した場合、全てのスレーブ装置のマスター選択リスト55に記載されている当該マスター装置の「排他」欄に、接続不可である旨を示すフラグを立てることにより、スレーブ装置が障害発生中のマスター装置に接続しようとする無駄を省き、早期に新たなマスター装置との通信を開始することができる。
【0027】
このように、マスター選択手段54及びマスター選択リスト55を設けることにより、実際の装置200のマスター装置及びスレーブ装置の構成に合わせてフレキシブルな冗長化通信手段を確保できる。
また、それぞれのスレーブ装置が最適なマスター装置を選択することが可能であり、トラフィック容量や伝送路特性が既知である場合には事前のネットワーク設計に従って任意にマスター選択リストを作成できる利点がある。
【0028】
実施の形態3.
この発明に係る冗長化通信装置の実施の形態3を図11を用いて、実施の形態2と異なる部分を中心に説明する。
図11は、冗長化通信装置300(以下装置300という)で使用するスレーブ装置302aの構成を示すブロック図である。
図12はこの実施の形態で追加された手段のブロック図である。
実施の形態2で説明した各手段の他に、この実施の形態におけるスレーブ装置302aの変復調手段351は、このスレーブ装置302aが接続しているマスター装置301aからの信号の受信電力を測定する受信電力測定手段59を備えている。信号の受信電力の測定は、例えばフレームの先頭のプリアンブルでの受信電力を測定する。
また、図12に示すマスター装置301aは、各スレーブ装置に送信する信号の送信電力を増幅する電力増幅手段9を備えている。
【0029】
この実施の形態による装置300は、マスター装置とスレーブ装置との通信が遮断しないまでも、送信電力の低下から通信が不安定な場合や、スレーブ装置が新たなマスター装置に接続した場合において受信電力が小さく通信品質を確保できないような場合の対策を備えている。
以下、後者の場合を例に説明する。
スレーブ装置302aと旧マスター装置との間の通信が遮断され、スレーブ装置302aが新たなマスター装置301aの制御下に入ったが、受信電力が小さすぎて通信状態が不安定になる場合がある。
このような場合、スレーブ装置302aはマスター装置301aに対し、送信電力の増幅を要請する必要がある。
【0030】
スレーブ装置302aがマスター装置301aの制御下に入り、マスター装置301aとの通信が開始されると、受信電力測定手段59は、マスター装置301aから送信されるフレームの先頭のプリアンブルでの受信電力レベルを測定し計算する。
【0031】
次に、受信電力測定手段59は、この受信電力とマスター選択リスト55に記載されているマスター装置301aからの信号の標準受信電力の値、あるいはその値から計算される受信電力期待値より実際の受信電力が低下した場合には、受信電力低下であること及び受信電力値をCPU60へ通知する。
受信電力期待値は、例えば復調動作が可能な最低の電力値を設定する。受信電力が期待値より低下する要因としては、例えばマスター装置の故障による送信電力低下や、伝送路減衰が大きく十分な受信電力が得られない場合を想定する。
【0032】
さて、受信電力低下の通知を受けたCPU60は、受信電力通知手段8に対し、マスター装置301aに対して送信電力の増幅要請を出すよう指令する。
指令を受けた受信電力通知手段8は専用プロトコルにてマスター装置301aに対し送信電力を上げるよう、現在の受信電力の値を添付して通知する。
【0033】
スレーブ装置302aから送信電力の増幅要請を受けたマスター装置301aの電力増幅手段9は、実際にマスター装置301aが送信している送信電力と、スレーブ装置302aが受信している受信電力との差から、最適な送信電力を計算して送信電力を制御する。
この実施の形態によれば、例えば移動体通信において、移動局は、受信電力の測定結果で通信品質に問題がある場合には、送信電力を大きくするよう基地局に要求し、基地局は当該要求に基づき移動局に向けた信号の送信電力を制御することにより、移動局における基地局からの信号受信品質をほぼ一定に保てるという効果がある。
【0034】
実施の形態4.
この発明に係る冗長化通信装置の実施の形態4を図13を用いて、実施の形態4と異なる部分を中心に説明する。
図13は、冗長化通信装置400(以下装置400という)で使用するスレーブ装置402aの構成を示すブロック図である。
外見上の構成は実施の形態3のスレーブ装置302aと同じである。
異なる部分は、マスター選択手段454の機能及びマスター選択リスト455が、図示しない「測定受信電力」欄を有する点である。
【0035】
スレーブ装置402aのマスター選択手段454は周期的にマスター選択リスト455に登録されている全てのマスター装置に接続テストを行い、その応答フレームのプリアンブル部の受信電力を受信電力測定手段59で測定する。
そしてそれぞれのマスター装置からの信号の受信電力を対応するマスター選択リスト455の「測定受信電力」欄に記載する。
【0036】
スレーブ装置402aは、現在通信に常用しているマスター装置の異常を検知したときは、まず旧マスター装置との接続を遮断する。
次に、マスター選択手段454は、マスター選択リスト455に記載した測定受信電力を元に、十分な受信電力を期待できるマスター装置に接続するよう各種データを変復調手段451に設定する。
これにより、スレーブ装置402aは、新たなマスター装置に接続後、直ちに最適な通信を開始でき、接続当初から通信の品質を確保することができる。
【0037】
実施の形態5.
この発明に係る冗長化通信装置の実施の形態5を図14を用いて、実施の形態4と異なる部分を中心に説明する。
図14は、冗長化通信装置500(以下装置500という)で使用するスレーブ装置502aの構成を示すブロック図である。
実施の形態4のスレーブ装置402aの構成に加えて、通信量監視手段50を設けている。
通信量監視手段50は、ブリッジバッファ53のバッファ容量及びバッファあふれを監視する。
図14は、スレーブ装置502aに備えたブリッジ52及びブリッジバッファ53を示しているが、マスター装置側にも同様のブリッジ及びバッファを備えている。
図15は、装置500に接続された、あるマスター装置501xのブリッジ92とその周辺の要部ブロック図である。
【0038】
マスター装置501xが制御する各スレーブ装置からのデータは、変復調手段591で予め定められた方式で復調してブリッジ92を介してPC507へイーサネット(登録商標)形式のデータとして受け渡される。反対に、送信時は、PC507からブリッジ92が受け取ったイーサネット(登録商標)形式データは、ブリッジ92を介して変復調手段591で予め定めた方式で変調して伝送路4を通して各スレーブ装置へ送信される。
【0039】
ブリッジ92にはブリッジバッファ93を接続している。
ブリッジバッファ93は、PC等の端末とブリッジ92間のデータの通信速度と、マスター装置501xと、これに接続している各スレーブ装置間の通信速度差によって発生する通信データ量の差を吸収するための装置であってデータの差分を一時的に保存するデータメモリ領域を有する。
ブリッジバッファ93は、例えば、FIFO(FIRST IN FIRST OUT)のようなメモリ機能である。
ここで、例えば、図15において、マスター装置501xがPC等のデータ端末からデータを受信する場合、マスター装置501xと各スレーブ装置間の伝送路4の帯域が十分でなければ、ブリッジバッファ93の送信バッファは伝送路4へデータをスムーズに送信できなくなる。
すると、バッファ残量が次第に小さくなり、バッファあふれが発生する場合がある。
また、マスター装置501xが複数のスレーブ装置からデータを受信する場合、スレーブ装置の数が多く、総合データ量が大きい場合は、データ端末側へデータを十分に送り出せず、バッファ残量が小さくなってバッファあふれが発生する。
【0040】
マスター装置501xも、ブリッジバッファ93からのバッファ残量やバッファあふれ情報を受信する通信量監視手段90を有する。
通信量監視手段90がバッファ異常を検出すると、マスター装置501xは、装置500の全てのスレーブ装置に割り込んで接続し、注意情報を送信する。
マスター装置501xから注意情報を受信した各スレーブ装置は、以後マスター装置501xには接続しないようにするために次の処理をする。
【0041】
図14において、注意情報を受信したスレーブ装置502aのCPU60は、マスター選択手段554を介して、マスター選択リストの「排他」欄に当該マスター装置501xを接続不可とするフラグを記載する。
【0042】
本機能により、後にスレーブ装置502aが、新たなマスター装置を選択して接続しようとした場合、トラフィック処理能力の限界に近いマスター装置501xへの接続を回避し、ネットワークの破綻(オーバーフロー)を発生させる心配のない新たなマスター装置を選択することが可能となり、通信の品質を保持できる。
【符号の説明】
【0043】
1a,1b,1c,301a,501x マスター装置、101,102 グループ、2a〜2z,21a〜21z,22a〜22z,202a,402a,302a,502a スレーブ装置,
3 サーバ、4 伝送路、50 通信量監視手段、
51,251,351,451 変復調手段、52,92 ブリッジ、
53,93 ブリッジバッファ、54,454,554 マスター選択手段、
55 マスター選択リスト、56 周波数帯域変更手段、
57 プリアンブルパタン変更手段、通信断検出手段、59 受信電力測定手段、
60,7 CPU、8 受信電力通知手段、9 電力増幅手段、90 通信量監視手段、100,200,300,400,500 冗長化通信装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビル内通信、列車内通信等、メタル線等の各種通信伝送路を用いる有線通信及び無線通信をおこなう通信装置に関し、特にマスター装置の故障や伝送路に異常が発生した場合、当該マスター装置に接続しているスレーブ装置が、次に接続する最適なマスター装置を選択する冗長化通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、マスター装置故障時における冗長化方式として、例えば特許文献1に示すように、通信系が途中で切断された場合でも、故障点の下側のスレーブ装置を自動的にマスター装置として機能させ、更に下側に接続されている他のスレーブ装置の制御を継続するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−218232号公報(第5頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の冗長化方式は、マスター装置とこれにデイジーチェーン接続されたスレーブ装置で構成される。そして、万一マスター装置の故障が発生すると、故障したマスター装置の直下に接続されているスレーブ装置がマスター装置として機能するものである。
この構成では、全てのスレーブ装置がデイジーチェーン接続されていること及び全てのスレーブ装置がマスター装置を兼ね得る仕様とする必要がある。
しかしながら、複数のスレーブ装置が1台のマスター装置に接続されるバス型伝送路を備えた通信装置では、対等な関係にあるスレーブ装置が複数併存するため、この方式を直接適用できないという問題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、マスター装置が故障した場合や伝送路劣化・異常が発生した場合に、当該マスター装置に接続されていた各スレーブ装置が自動的に他の最適なマスター装置へ接続する、最適マスター選択による冗長化通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る冗長化通信装置は、
それぞれがスレーブ装置を制御する複数のマスター装置と、
各マスター装置にデータを配信するサーバとがバス型伝送路で接続された冗長化通信装置であって、
スレーブ装置は、
バス型伝送路の通信断を検出する通信断検出手段を備え、
スレーブ装置が、接続しているマスター装置との間の通信断を検出したときは、次にスレーブ装置が接続すべきマスター装置を自ら選択して接続することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る冗長化通信装置のスレーブ装置は、バス型伝送路の通信断を検出する通信断検出手段を備え、スレーブ装置は、接続しているマスター装置との間の通信断を検出したときは、次にスレーブ装置が接続すべきマスター装置を自ら選択して接続することを特徴とするものなので、障害が発生しても通信装置全体の運用を継続でき、通信品質を確保できる。
また、装置二重化の必要がなく二重化のための装置コストや、設置スペースが不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態1における全体構成を示す概念図である。
【図2】図1に示す冗長化通信装置の故障発生時の状態を示す図である。
【図3】図1に示す冗長化通信装置を列車に適用した概念図である。
【図4】図3に示す冗長化通信装置の故障発生時の状態を示す図である。
【図5】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態1におけるスレーブ装置2aの構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態1におけて使用するデータフレーム構成の一例を示す図である。
【図7】実施の形態1において使用する周波数帯域の一例を示す図である。
【図8】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態2におけるスレーブ装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態2におけるスレーブ装置のマスター選択リストの内容の一例を示す図である。
【図10】実施の形態2において使用するデータフレーム構成の一例を示す図である。
【図11】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態3におけるスレーブ装置の構成を示すブロック図である。
【図12】実施の形態3に係るマスター装置及びスレーブ装置で追加された手段を示す図である。
【図13】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態4におけるスレーブ装置の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態5におけるスレーブ装置の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明に係る冗長化通信装置の実施の形態5におけるマスター装置のブリッジと周辺の要部ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
この発明に係る冗長化通信装置の実施の形態1を図を用いて説明する。
図1は冗長化通信装置100(以下装置100という)の全体構成を示す概念図であり、正常動作時の状態を示している。図2は、装置100のマスター装置1bに不具合が発生した状態を示している。図1及び図2に示す装置100を列車の通信装置として適用したものが図3及び図4である。
本発明に係る冗長化通信装置は、ビル間や、移動体間の通信を確保するため使用する装置であるが、伝送路は、有線でも無線でも構わない。
【0010】
次に、装置の構成について図1を用いて説明する。
バス型の伝送路4にサーバ3、マスター装置1a、1b、スレーブ装置2a〜2z及びスレーブ装置21a〜21zが接続されている。各装置が正常に動作しているとき、破線で囲まれたグループ101内の各スレーブ装置2a〜2zはマスター装置1aの制御下に置かれ、グループ102内のスレーブ装置21a〜21bの各スレーブ装置はマスター装置1bの制御下に置かれている。このような接続とすることにより、サーバ3から各装置に提供されるデータがスムーズに流れるよう通信処理を装置100内の複数のマスター装置に分散して担当させている。
【0011】
この装置100のマスター装置の1台が故障した場合でも装置100全体の通信を最適に確保することが本発明の目的である。
マスター装置の1台が故障した場合の各スレーブ装置の動作について図3及び図4を用いて説明する。
【0012】
図3において、マスター装置1aはスレーブ装置2a〜2zまでを制御し、マスター装置1bはスレーブ装置21a〜21zを制御し、同様にマスター装置1cはスレーブ装置22a〜22zを制御している。ここで、何らかの原因によってマスター装置1bが故障し、その制御下にあるスレーブ装置21a〜21zへの制御ができなくなった場合、各スレーブ装置21a〜21zは独自に付近に存在する最適なマスター装置を割り出し自らそのマスター装置に接続し通信を確保する。
具体的には図4に示すように、スレーブ装置21aはマスター装置1aに自ら接続し、スレーブ装置21b〜21zはマスター装置1cに自ら接続する。
このように、故障前にマスター装置1bが制御していたグループ102に属するスレーブ装置21a〜21zはそれぞれが最適と判断したマスター装置の制御下に自ら入ることになる。
【0013】
次に、各スレーブ装置の構成を図5を用いて説明する。
図5は、装置100で使用するスレーブ装置2aの構成を示すブロック図である。
スレーブ装置2aは変復調手段51と、ブリッジ52と、ブリッジバッファ53と、周波数帯域変更手段56と、プリアンブルパタン変更手段57と、通信断検出手段58と、CPU60とから構成されている。
そして、スレーブ装置2aの変復調手段51は、外部にあってこのスレーブ装置2aを制御下に置くマスター装置1aと伝送路4で接続されている。
また、変復調手段51はブリッジ52を介してマスター装置1aから受け取ったデータを処理するPC7に接続されている。
【0014】
変復調手段51は、送信・受信での変復調手段を有するモデムであり、受信したアナログ信号をディジタル信号に変換し、送信するときはその逆の処理をする。
構成としては受信信号タイミングを検出する同期回路、送信側で変調した信号を復調する復調回路、誤り訂正機能等を有するがここでは詳細は省略する。
図5に示すように、変復調手段51の受信側はマスター装置1aからの信号を伝送路4を通して受信し、予め定められた方式で復調してブリッジ52を介してPC7へイーサネット(登録商標)形式のデータとして受け渡す。反対に、送信側は、PC7からブリッジ52を介して受け取ったイーサネット(登録商標)形式データを予め定めた方式で変調して伝送路4を通してマスター装置1aへ送信する。
【0015】
次に、変復調手段51に接続されている各手段の機能について説明する。
変復調手段51の主たる機能は前述の通りであるが、スレーブ装置2aは、万一、このスレーブ装置2aが接続するマスター装置1aに故障が発生し、データ通信が途絶えた場合に備えて、他のマスター装置に自ら接続するための各種の手段を備えている。
通信断検出手段58は、このスレーブ装置2aが接続するマスター装置1aとの通信プロトコルを監視する。そして、例えば一定時間受信がない場合、ACK等の応答が返らない場合、或いは、ヘルスチェック機能等を設け、その応答が返らない等の条件設定により通信断を検出する。
その他、通信断を検出する要因としては、例えばマスター装置の故障や、伝送路が減衰のみではなくレベルの大きなノイズ等も想定される。
スレーブ装置2aが、通信断検出手段58により通信断を検出した場合、内部タイマー等により一定時間経過後、通信断が発生したマスター装置との接続をスレーブ装置2a側からも切断する。
このような場合でも継続して安定した通信の確保を行うため、スレーブ装置2aは新たに接続すべきマスター装置を選択することで冗長化構成を実現する。
【0016】
通信断検出手段58がマスター装置1aとの通信の遮断を検出すると、スレーブ装置2aは、新たなマスター装置と接続するためにプリアンブルパタン変更手段57によって、プリアンブルパタンを変更して接続可能なマスター装置の探索を行う。
【0017】
図6に示すように、それぞれのマスター装置への送信データは、複数のマスター装置間の信号干渉による誤接続防止を目的として、フレーム先頭部分に異なるプリアンブルパタンを有する。この場合、スレーブ装置2aが新たなマスター装置と接続するためには、このプリアンブルパタンが合致する必要がある。
スレーブ装置2aが新たなマスターを探索するにあたり、プリアンブルパタン変更手段57は、以後送出するデータのプリアンブルパタンを、予め当該手段に登録しておいた他のマスター装置のプリアンブルパタンに変更する要求を変復調手段51に通知して新たなマスター装置の探索を行う。
【0018】
新たなマスター装置から応答があり、通信が完了した場合、当該マスター装置は、スレーブ装置2aの参入処理を行う。もし、新たなマスター装置が探索されず通信が確立しなかった場合は、プリアンブルパタン変更手段57はさらに新たなプリアンブルパタンを変復調手段51へ設定する。
【0019】
プリアンブルパタン変更手段57によって新たなマスター装置を探査した結果、新たなマスター装置を発見することができなかった場合は、周波数帯域変更手段56へ処理を移行する。
【0020】
周波数帯域変更手段56は、変復調手段51が通信する際に使用可能な周波数帯域を複数有する場合、それらの周波数帯域から1つの周波数帯域を選択し、変復調手段51に設定する。
周波数帯域変更手段56は、図7に示すような周波数帯域の一覧を保持している。予め設定されたこれらの周波数帯域の中から現在使用する周波数と異なる周波数帯域を変復調手段51へ設定する。
変復調手段51は、設定された周波数帯域を送信部及び受信部へ設定し新たに接続すべきマスター装置の探索を開始する。新たなマスター装置との通信が完了した場合は、当該マスター装置は、スレーブ装置2aの参入処理を行う。もし、新たなマスター装置が探索されず通信が確立しなかった場合は、周波数帯域変更手段56はさらに新たな周波数帯域を変復調手段51へ設定する。
【0021】
以上のように、故障したスレーブ装置は、送出するデータのプリアンブルパタンを変更することや、通信に使用する周波数帯域を変更することによって、最適なマスター装置を自ら探索し、当該マスター装置に自動的に接続されるため、障害が発生しても通信装置全体の運用を継続でき、通信品質を確保できる。
また、装置二重化の必要がなく二重化のための装置コストや、設置スペースが不要となる。
【0022】
実施の形態2.
この発明に係る冗長化通信装置の実施の形態2を図8を用いて、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
図8は、冗長化通信装置200(以下装置200という)で使用するスレーブ装置202aの構成を示すブロック図である。
図9は、この実施の形態で使用するマスター選択リスト55に記載するデータの1例を示す図である。
【0023】
この実施の形態の装置200は、周波数帯域変更手段56によって新たなマスター装置を探査した結果、接続可能な新たなマスター装置を発見することができなかった場合に、更にマスター装置を探索する手段を備えている。
スレーブ装置202aのマスター選択手段54は、マスター選択リスト55を元に、次にスレーブ装置202aが接続すべきマスター装置を選択する。
マスター選択リスト55には、予め、スレーブ装置202aが接続可能なマスター装置の諸情報を記載している。
【0024】
例えば、「マスター番号欄」には、MACアドレスなど、マスター装置を一意に特定できるデータを記載する。「受信電力」の欄には、スレーブ装置2aからそれぞれのマスター装置までの距離などを元にした計算上の各マスター装置からの信号の標準受信電力を記載する。「優先順位」の欄は、接続するマスター装置の優先順位を記載する。
「排他」の欄には、このスレーブ装置202aからの接続を禁止するマスター装置がある場合には、その装置にマークを記載する。
【0025】
マスター選択手段54は、マスター選択リスト55に格納されたデータを元に、次に接続すべきマスター装置との通信に必要なデータを変復調手段251に設定する。
マスター選択手段54が使用するマスター選択リストのデータ欄は、1つのみを使用しても良いし、複数の欄を使用して条件を組み合わせても良い。組合せによってマスター装置を選択するための複数のルールを設定できる。
これらのルールのアルゴリズムについては外部接続したPC等により変更可能であり、マスター選択リストの編集も可能である。
例えば、「優先順位」と「排他」欄を使用する場合は、優先順位に従い、「排他」に該当しないマスター装置に接続するルール等を使用する。
尚、マスター装置の識別には、図10に示すようにフレームのヘッダ部の一部にMACアドレスや識別コードを設ければよい。
【0026】
また、運用中に、あるマスター装置に障害が発生した場合、全てのスレーブ装置のマスター選択リスト55に記載されている当該マスター装置の「排他」欄に、接続不可である旨を示すフラグを立てることにより、スレーブ装置が障害発生中のマスター装置に接続しようとする無駄を省き、早期に新たなマスター装置との通信を開始することができる。
【0027】
このように、マスター選択手段54及びマスター選択リスト55を設けることにより、実際の装置200のマスター装置及びスレーブ装置の構成に合わせてフレキシブルな冗長化通信手段を確保できる。
また、それぞれのスレーブ装置が最適なマスター装置を選択することが可能であり、トラフィック容量や伝送路特性が既知である場合には事前のネットワーク設計に従って任意にマスター選択リストを作成できる利点がある。
【0028】
実施の形態3.
この発明に係る冗長化通信装置の実施の形態3を図11を用いて、実施の形態2と異なる部分を中心に説明する。
図11は、冗長化通信装置300(以下装置300という)で使用するスレーブ装置302aの構成を示すブロック図である。
図12はこの実施の形態で追加された手段のブロック図である。
実施の形態2で説明した各手段の他に、この実施の形態におけるスレーブ装置302aの変復調手段351は、このスレーブ装置302aが接続しているマスター装置301aからの信号の受信電力を測定する受信電力測定手段59を備えている。信号の受信電力の測定は、例えばフレームの先頭のプリアンブルでの受信電力を測定する。
また、図12に示すマスター装置301aは、各スレーブ装置に送信する信号の送信電力を増幅する電力増幅手段9を備えている。
【0029】
この実施の形態による装置300は、マスター装置とスレーブ装置との通信が遮断しないまでも、送信電力の低下から通信が不安定な場合や、スレーブ装置が新たなマスター装置に接続した場合において受信電力が小さく通信品質を確保できないような場合の対策を備えている。
以下、後者の場合を例に説明する。
スレーブ装置302aと旧マスター装置との間の通信が遮断され、スレーブ装置302aが新たなマスター装置301aの制御下に入ったが、受信電力が小さすぎて通信状態が不安定になる場合がある。
このような場合、スレーブ装置302aはマスター装置301aに対し、送信電力の増幅を要請する必要がある。
【0030】
スレーブ装置302aがマスター装置301aの制御下に入り、マスター装置301aとの通信が開始されると、受信電力測定手段59は、マスター装置301aから送信されるフレームの先頭のプリアンブルでの受信電力レベルを測定し計算する。
【0031】
次に、受信電力測定手段59は、この受信電力とマスター選択リスト55に記載されているマスター装置301aからの信号の標準受信電力の値、あるいはその値から計算される受信電力期待値より実際の受信電力が低下した場合には、受信電力低下であること及び受信電力値をCPU60へ通知する。
受信電力期待値は、例えば復調動作が可能な最低の電力値を設定する。受信電力が期待値より低下する要因としては、例えばマスター装置の故障による送信電力低下や、伝送路減衰が大きく十分な受信電力が得られない場合を想定する。
【0032】
さて、受信電力低下の通知を受けたCPU60は、受信電力通知手段8に対し、マスター装置301aに対して送信電力の増幅要請を出すよう指令する。
指令を受けた受信電力通知手段8は専用プロトコルにてマスター装置301aに対し送信電力を上げるよう、現在の受信電力の値を添付して通知する。
【0033】
スレーブ装置302aから送信電力の増幅要請を受けたマスター装置301aの電力増幅手段9は、実際にマスター装置301aが送信している送信電力と、スレーブ装置302aが受信している受信電力との差から、最適な送信電力を計算して送信電力を制御する。
この実施の形態によれば、例えば移動体通信において、移動局は、受信電力の測定結果で通信品質に問題がある場合には、送信電力を大きくするよう基地局に要求し、基地局は当該要求に基づき移動局に向けた信号の送信電力を制御することにより、移動局における基地局からの信号受信品質をほぼ一定に保てるという効果がある。
【0034】
実施の形態4.
この発明に係る冗長化通信装置の実施の形態4を図13を用いて、実施の形態4と異なる部分を中心に説明する。
図13は、冗長化通信装置400(以下装置400という)で使用するスレーブ装置402aの構成を示すブロック図である。
外見上の構成は実施の形態3のスレーブ装置302aと同じである。
異なる部分は、マスター選択手段454の機能及びマスター選択リスト455が、図示しない「測定受信電力」欄を有する点である。
【0035】
スレーブ装置402aのマスター選択手段454は周期的にマスター選択リスト455に登録されている全てのマスター装置に接続テストを行い、その応答フレームのプリアンブル部の受信電力を受信電力測定手段59で測定する。
そしてそれぞれのマスター装置からの信号の受信電力を対応するマスター選択リスト455の「測定受信電力」欄に記載する。
【0036】
スレーブ装置402aは、現在通信に常用しているマスター装置の異常を検知したときは、まず旧マスター装置との接続を遮断する。
次に、マスター選択手段454は、マスター選択リスト455に記載した測定受信電力を元に、十分な受信電力を期待できるマスター装置に接続するよう各種データを変復調手段451に設定する。
これにより、スレーブ装置402aは、新たなマスター装置に接続後、直ちに最適な通信を開始でき、接続当初から通信の品質を確保することができる。
【0037】
実施の形態5.
この発明に係る冗長化通信装置の実施の形態5を図14を用いて、実施の形態4と異なる部分を中心に説明する。
図14は、冗長化通信装置500(以下装置500という)で使用するスレーブ装置502aの構成を示すブロック図である。
実施の形態4のスレーブ装置402aの構成に加えて、通信量監視手段50を設けている。
通信量監視手段50は、ブリッジバッファ53のバッファ容量及びバッファあふれを監視する。
図14は、スレーブ装置502aに備えたブリッジ52及びブリッジバッファ53を示しているが、マスター装置側にも同様のブリッジ及びバッファを備えている。
図15は、装置500に接続された、あるマスター装置501xのブリッジ92とその周辺の要部ブロック図である。
【0038】
マスター装置501xが制御する各スレーブ装置からのデータは、変復調手段591で予め定められた方式で復調してブリッジ92を介してPC507へイーサネット(登録商標)形式のデータとして受け渡される。反対に、送信時は、PC507からブリッジ92が受け取ったイーサネット(登録商標)形式データは、ブリッジ92を介して変復調手段591で予め定めた方式で変調して伝送路4を通して各スレーブ装置へ送信される。
【0039】
ブリッジ92にはブリッジバッファ93を接続している。
ブリッジバッファ93は、PC等の端末とブリッジ92間のデータの通信速度と、マスター装置501xと、これに接続している各スレーブ装置間の通信速度差によって発生する通信データ量の差を吸収するための装置であってデータの差分を一時的に保存するデータメモリ領域を有する。
ブリッジバッファ93は、例えば、FIFO(FIRST IN FIRST OUT)のようなメモリ機能である。
ここで、例えば、図15において、マスター装置501xがPC等のデータ端末からデータを受信する場合、マスター装置501xと各スレーブ装置間の伝送路4の帯域が十分でなければ、ブリッジバッファ93の送信バッファは伝送路4へデータをスムーズに送信できなくなる。
すると、バッファ残量が次第に小さくなり、バッファあふれが発生する場合がある。
また、マスター装置501xが複数のスレーブ装置からデータを受信する場合、スレーブ装置の数が多く、総合データ量が大きい場合は、データ端末側へデータを十分に送り出せず、バッファ残量が小さくなってバッファあふれが発生する。
【0040】
マスター装置501xも、ブリッジバッファ93からのバッファ残量やバッファあふれ情報を受信する通信量監視手段90を有する。
通信量監視手段90がバッファ異常を検出すると、マスター装置501xは、装置500の全てのスレーブ装置に割り込んで接続し、注意情報を送信する。
マスター装置501xから注意情報を受信した各スレーブ装置は、以後マスター装置501xには接続しないようにするために次の処理をする。
【0041】
図14において、注意情報を受信したスレーブ装置502aのCPU60は、マスター選択手段554を介して、マスター選択リストの「排他」欄に当該マスター装置501xを接続不可とするフラグを記載する。
【0042】
本機能により、後にスレーブ装置502aが、新たなマスター装置を選択して接続しようとした場合、トラフィック処理能力の限界に近いマスター装置501xへの接続を回避し、ネットワークの破綻(オーバーフロー)を発生させる心配のない新たなマスター装置を選択することが可能となり、通信の品質を保持できる。
【符号の説明】
【0043】
1a,1b,1c,301a,501x マスター装置、101,102 グループ、2a〜2z,21a〜21z,22a〜22z,202a,402a,302a,502a スレーブ装置,
3 サーバ、4 伝送路、50 通信量監視手段、
51,251,351,451 変復調手段、52,92 ブリッジ、
53,93 ブリッジバッファ、54,454,554 マスター選択手段、
55 マスター選択リスト、56 周波数帯域変更手段、
57 プリアンブルパタン変更手段、通信断検出手段、59 受信電力測定手段、
60,7 CPU、8 受信電力通知手段、9 電力増幅手段、90 通信量監視手段、100,200,300,400,500 冗長化通信装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがスレーブ装置を制御する複数のマスター装置と、
前記各マスター装置にデータを配信するサーバとがバス型伝送路で接続された冗長化通信装置であって、
前記スレーブ装置は、
前記バス型通信路の通信断を検出する通信断検出手段を備え、
前記スレーブ装置は、接続しているマスター装置との間の通信異常を検出したときは、次に前記スレーブ装置が接続すべきマスター装置を自ら選択して接続することを特徴とする冗長化通信装置。
【請求項2】
前記スレーブ装置は、前記バス型通信路に接続されている所定のマスター装置のプリアンブルパタンを有し、
前記スレーブ装置から送信する送信データのプリアンブルパタンを変更するプリアンブルパタン変更手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の冗長化通信装置。
【請求項3】
前記スレーブ装置は、前記スレーブ装置が接続するそれぞれのマスター装置が通信に使用する周波数に合わせて、前記スレーブ装置が送受信のために使用する周波数を変更する周波数帯域変更手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冗長化通信装置。
【請求項4】
前記スレーブ装置には、前記スレーブ装置が接続可能なマスター装置のマスター番号を記載したマスター接続リストと、
前記マスター接続リストから前記スレーブ装置が接続すべきマスター装置を選択するマスター選択手段とを備え、
前記マスター接続リストには、前記スレーブ装置が接続可能なマスター装置の優先順位を記載し、前記マスター選択手段は、前記優先順位に従って接続すべきマスター装置を選択することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の冗長化通信装置。
【請求項5】
前記マスター接続リストには、前記スレーブ装置の接続を禁止するマスター装置を記載し、前記マスター選択手段は、前記マスター装置を除外して接続すべきマスター装置を選択することを特徴とする請求項4に記載の冗長化通信装置。
【請求項6】
前記マスター接続リストは、前記スレーブ装置が接続可能な各マスター装置から受信する信号の標準受信電力の値を有し、
前記スレーブ装置は、接続しているマスター装置からの信号の受信電力を計測する受信電力測定手段を備え、
前記受信電力測定手段が、前記標準受信電力の値から前記マスター装置の異常を検知したときは、前記マスター装置との接続を切断し、次に接続すべきマスター装置に接続することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の冗長化通信装置。
【請求項7】
前記スレーブ装置は、接続している所定のマスター装置からの信号の受信電力を周期的に測定する受信電力測定手段を備え、
前記マスター接続リストは前記受信電力の値を有し、
前記マスター選択手段は、前記マスター接続リストに記載した受信電力の値を比較して次に接続すべきマスター装置を選択することを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれか1項に記載の冗長化通信装置。
【請求項8】
前記スレーブ装置は、前記マスター装置からの信号の受信電力が期待値より低い場合に、前記マスター装置に対し、現在の前記マスター装置からの信号の受信電力を通知する受信電力通知手段を有し、
前記マスター装置は、受け取った前記受信電力の値と、現在の前記スレーブ装置への信号の送信電力の値を元に、前記送信電力を増幅する電力増幅手段を有し、
前記スレーブ装置は、新たなマスター装置と接続する前に、現在接続中のマスター装置に対して送信電力の増幅を要求することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の冗長化通信装置。
【請求項9】
前記マスター装置は、接続しているスレーブ装置との通信量を調整するブリッジバッファ及び前記通信量の異常を監視し、前記異常を冗長化通信装置内の所定のスレーブ装置に通知する通信量監視手段を備え、
前記通知を受けた各スレーブ装置は、前記マスター接続リストに前記マスター装置を、接続を禁止するマスター装置として記載することを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれか1項に記載の冗長化通信装置。
【請求項1】
それぞれがスレーブ装置を制御する複数のマスター装置と、
前記各マスター装置にデータを配信するサーバとがバス型伝送路で接続された冗長化通信装置であって、
前記スレーブ装置は、
前記バス型通信路の通信断を検出する通信断検出手段を備え、
前記スレーブ装置は、接続しているマスター装置との間の通信異常を検出したときは、次に前記スレーブ装置が接続すべきマスター装置を自ら選択して接続することを特徴とする冗長化通信装置。
【請求項2】
前記スレーブ装置は、前記バス型通信路に接続されている所定のマスター装置のプリアンブルパタンを有し、
前記スレーブ装置から送信する送信データのプリアンブルパタンを変更するプリアンブルパタン変更手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の冗長化通信装置。
【請求項3】
前記スレーブ装置は、前記スレーブ装置が接続するそれぞれのマスター装置が通信に使用する周波数に合わせて、前記スレーブ装置が送受信のために使用する周波数を変更する周波数帯域変更手段を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の冗長化通信装置。
【請求項4】
前記スレーブ装置には、前記スレーブ装置が接続可能なマスター装置のマスター番号を記載したマスター接続リストと、
前記マスター接続リストから前記スレーブ装置が接続すべきマスター装置を選択するマスター選択手段とを備え、
前記マスター接続リストには、前記スレーブ装置が接続可能なマスター装置の優先順位を記載し、前記マスター選択手段は、前記優先順位に従って接続すべきマスター装置を選択することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の冗長化通信装置。
【請求項5】
前記マスター接続リストには、前記スレーブ装置の接続を禁止するマスター装置を記載し、前記マスター選択手段は、前記マスター装置を除外して接続すべきマスター装置を選択することを特徴とする請求項4に記載の冗長化通信装置。
【請求項6】
前記マスター接続リストは、前記スレーブ装置が接続可能な各マスター装置から受信する信号の標準受信電力の値を有し、
前記スレーブ装置は、接続しているマスター装置からの信号の受信電力を計測する受信電力測定手段を備え、
前記受信電力測定手段が、前記標準受信電力の値から前記マスター装置の異常を検知したときは、前記マスター装置との接続を切断し、次に接続すべきマスター装置に接続することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の冗長化通信装置。
【請求項7】
前記スレーブ装置は、接続している所定のマスター装置からの信号の受信電力を周期的に測定する受信電力測定手段を備え、
前記マスター接続リストは前記受信電力の値を有し、
前記マスター選択手段は、前記マスター接続リストに記載した受信電力の値を比較して次に接続すべきマスター装置を選択することを特徴とする請求項4又は請求項5のいずれか1項に記載の冗長化通信装置。
【請求項8】
前記スレーブ装置は、前記マスター装置からの信号の受信電力が期待値より低い場合に、前記マスター装置に対し、現在の前記マスター装置からの信号の受信電力を通知する受信電力通知手段を有し、
前記マスター装置は、受け取った前記受信電力の値と、現在の前記スレーブ装置への信号の送信電力の値を元に、前記送信電力を増幅する電力増幅手段を有し、
前記スレーブ装置は、新たなマスター装置と接続する前に、現在接続中のマスター装置に対して送信電力の増幅を要求することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の冗長化通信装置。
【請求項9】
前記マスター装置は、接続しているスレーブ装置との通信量を調整するブリッジバッファ及び前記通信量の異常を監視し、前記異常を冗長化通信装置内の所定のスレーブ装置に通知する通信量監視手段を備え、
前記通知を受けた各スレーブ装置は、前記マスター接続リストに前記マスター装置を、接続を禁止するマスター装置として記載することを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれか1項に記載の冗長化通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−130307(P2011−130307A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288579(P2009−288579)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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