説明

写真プリント装置

【課題】湿気条件を満たしていないプリント媒体のプリント不適部分を適切に除去する写真プリント装置を提供する。
【解決手段】長尺のプリント媒体をロール体として収納している収納部においてプリント媒体はその先端がロール体から先端待機位置までの待機引き出し距離だけ引き出された状態で待機し、プリント媒体にプリントサイズに合わせて写真画像を形成するプリントヘッドを有するプリント部においてプリント媒体の先端が待機引き出し距離にロール体の少なくとも1周の外周距離を加算したプリント不適長さ分だけプリントヘッドを通過した後にプリントヘッドによってプリント媒体に対する写真画像の形成が開始される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺のプリント媒体をロール体として収納している収納部と、前記プリント媒体にプリントサイズに合わせて写真画像を形成するプリントヘッドを有するプリント部と、前記ロール体から引き出した前記プリント媒体を前記プリント部に搬送する供給搬送部と、前記プリント部から送り出された前記プリント媒体を前記プリントサイズに合わせてカットするカッターユニットとを備えた写真プリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
写真プリントのように、高品質の写真画像形成が要求される写真プリント装置では、特別な高画質用プリント媒体が使用されるが、そのような特殊なプリント媒体は高画質が期待できるものの環境条件に対してセンシティブであり、低すぎる湿度又は高すぎる湿度を嫌う傾向がある。このため、プリント媒体を収納している写真プリント装置の環境湿度を所定範囲に維持する必要があるが、プリント媒体をロール状に巻き込んでロール体の形態で収納している場合、ロール体の最外周部分やロール体から引き出された部分は、ロール体の内周部分とは環境に曝される条件が異なることから、プリント媒体全体を同じ湿度環境下とすることは困難である。
【0003】
上記問題を解消するため、給紙ユニット内のロール紙を所定のカッターでカットして給紙して、ここに画像を形成する画像形成装置において、給紙待機時に給紙ユニット内で水分を吸収したロール紙の先端部、つまり各ロール紙の外気に触れている部分である、巻かれていない部分と外周1周分を前記カッターにて切断し機外に排出することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この画像形成装置では、湿気を帯びた用紙で画像形成を行うことによる白抜けやしわの発生を防止するため、ロール紙の先端部の吸水状態を求める吸水状態計測手段による計測の結果、当該ロール紙が所定の吸水状態を上回っていたとき、ロール紙の先端部がプリント部としてのドラムユニットに入る前にカッターによって切断される。しかしながら、給紙ユニットとプリント部との間の搬送区間は無用な用紙の搬送を避けるためできるだけ短く設定されるのが好ましいので、この区間にカッターを配置してこのカッターによって除去された湿った用紙部分を取り出す空間を設けるのはスペース的に不利益となる。さらに、用紙の無駄をできるだけ少なくするため、許容範囲ぎりぎりの湿気を含んだ用紙部分でカットして、そのカットされた先端から画像を形成することになるが、やや湿り気を帯びた先端は切り揃わない(微妙に波をうつ)傾向があり、その先端の画像形成が、特にインクジェット方式のプリントの場合、スムーズに行われない可能性が生じる。
【0004】
【特許文献1】特開2006−62093号公報(段落番号0004−0006、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高画質用のプリント媒体を使用する場合、湿気が多すぎても、少なすぎても画像形成に適さなくなるので、プリント媒体の乾燥しすぎや湿りすぎの部分はプリント不適部分として扱わなくてはならない。
上記実状に鑑み、本発明の課題は、この湿気条件を満たしていないプリント媒体のプリント不適部分を適切に除去する写真プリント装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明による写真プリント装置では、長尺のプリント媒体をロール体として収納している収納部と、前記プリント媒体にプリントサイズに合わせて写真画像を形成するプリントヘッドを有するプリント部と、前記ロール体から引き出した前記プリント媒体を前記プリント部に搬送する供給搬送部と、前記プリント部から送り出された前記プリント媒体を前記プリントサイズに合わせてカットするカッターユニットとを備え、前記収納部において前記プリント媒体はその先端が前記ロール体から先端待機位置までの待機引き出し距離だけ引き出された状態で待機し、前記プリント部において前記プリント媒体の先端が前記待機引き出し距離に前記ロール体の少なくとも1周の外周距離を加算したプリント不適長さ分だけ前記プリントヘッドを通過した後に前記プリントヘッドによって前記プリント媒体に対する写真画像の形成が開始される。
【0007】
この構成では、収納部領域における不良な湿度環境下でのプリント待機のために生じた、プリントに不適合なプリント媒体部分は、プリント開始時に前記不適合なプリント媒体部分となるプリント媒体の先端からプリント不適長さ分だけプリントヘッドの前を通過させ、その後に初めてプリントヘッドを駆動してプリント媒体に写真画像を形成し始める。つまり、プリントに不適合なプリント媒体部分とみなされた先頭部分は余白として扱われる。このプリント不適長さは、通常、直接外気に曝される待機引き出し部分の距離にその時点のロール体の1周の外周距離(周長さ)を加算した値となるが、外気に曝される時間が長い場合外気湿度の影響がさらに内側の周にも及ぼすことになり、複数周分の周長さを加算する必要が出てくる。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、収納部の湿度と待機時間に応じて前記プリント不適長さのために前記待機引き出し距離に加算される外周距離の周回数が決定される。
【0008】
なお、外気湿度が低すぎる場合はプリント媒体の過剰乾燥がプリント不適を引き起こし、外気湿度が高すぎる場合はプリント媒体の過剰湿気帯びがプリント不適を引き起こすことになるが、一般的にはトナー画像形成方式ではプリント媒体の過剰湿気帯びが問題となりやすく、インクジェット方式では、過剰乾燥が問題となりやすい。
【0009】
プリント不適部分としての余白の取り扱いに関して、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記カッターユニットにおいて前記プリント不適長さ分がカットされることで、余白が正規のプリントから除去される。
【0010】
写真プリント出力のように、プリント時には、複数の写真プリントが連続して出力されるような形態では、この余白を有効利用するため、以後に続く写真プリントに関する情報、つまりプリントオーダ情報をプリントヘッドによって形成する構成を採用してもよい。つまり、この余白部分は写真画像といった高画質な画像を形成するには不適であるので使用されないが、文字情報などをプリントするには問題ないので、特別な目的のために有効利用するのである。
【0011】
前記ロール体の外周長さは、使用に従って減少する直径によって大きく異なることになる。従って、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記ロール体におけるプリント媒体の残量を判定する残量判定部が備えられており、前記外周距離は前記残量判定部で判定されたプリント媒体残量に基づいて決定される。これにより、正確にプリント不適長さが得られるので、良好なプリント媒体を無駄にすることが回避される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔全体構成〕
図1及び図2に示すように筐体10の下部にマガジン収容部Aを配置し、筐体10の上部にインクの吹き付けによってプリントを行うインクジェット型のプリント部Bを配置し、筐体10の側部にインク貯留部Cを配置し、更に、筐体10の上面部に写真プリントつまり写真画像形成したペーパーP(プリント媒体の一例)を横送りベルト16で送り出す仕分け部17とを配置してインクジェット形の写真プリント装置が構成されている。
【0013】
前記マガジン収容部Aは、前壁体10Aと一体的なスライド作動によって開閉自在なドロワー20を備え、このドロワー20にマガジン21をセットできるよう構成されている。図3に示すように、このマガジン21は、巻芯等に巻回したロール状のペーパーPであるロール体U1を装填する構造を有している。前記プリント部Bは、マガジン収容部Aのロール体から引き出されるペーパーPに対してプリントヘッドHでのインクの吹き付けによって写真画像のプリントを行うよう構成され、このプリント部Bの前面部には透明な樹脂板製の窓部22を形成した壁体10Bを開閉自在に備えている。
【0014】
前記インク貯留部Cは、縦向き姿勢の軸芯周りで揺動開閉自在な壁体10Cの内部に異なる色相の複数のインクカートリッジ23を交換自在に配置している。尚、夫々のインクカートリッジ23は、ブラック(BK)、ライトブラック(LK)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ライトシアン(LC)、ライトマゼンタ(LM)、イエロー(Y)のインクを封入した7色のものが使用される。図面には示していないが、このインクジェット型の写真プリント装置は、前記インクカートリッジ23に封入されたインクを空気圧によって送り出し、サブタンク(図示せず)に一時的に貯留した後、前記プリントヘッドHに供給するインクの供給系を備えている。
【0015】
〔搬送系の構成〕
図3、図4に示すように、この写真プリント装置は、前記マガジン収容部Aに装填されたロール体U1から引き出されたペーパーPをプリント搬送ユニットU2で搬送しながらプリント部Bでプリント処理を実行し、このプリントの後には、カッターユニットU3でプリントサイズに切断し、この後に、スイッチバックユニットU4から排出ユニットU5に搬送して送り出す搬送系を備えている。
【0016】
前記マガジン収容部Aにおいてロール体U1は支持ローラ25の上に巻き戻し回転可能に装填されており、ロール体U1から引き出されたペーパーPは供給ローラ26とガイドプレート27に案内され、ペーパーPの先端が先端待機位置SBに達した時に供給ローラ26を停止させ、プリント処理に備える。ペーパーPの先端を先端待機位置SBに停止させる目的で、第1先端検出センサ3aが先端待機位置SBの近傍に設けられている。プリント処理が開始すると、供給ローラ26が再び駆動し、ペーパーPの先端は前記プリント搬送ユニットU2に引き渡される。先端待機位置SBは図3に示すようにガイドプレート27の出口とプリント搬送ユニットU2の間に配置しているが、これに代えて、ガイドプレート27の入口とマガジン21の間に配置してもよい。
【0017】
前記プリント搬送ユニットU2は、前記プリントヘッドHの上流側に配置された圧着型の第1搬送ローラ31と、プリントヘッドHの下流側に配置された圧着型の第2搬送ローラ32とを備えると共に、この第1、第2搬送ローラ31、32の中間位置においてペーパーPの裏面側を案内する案内プレート33とを備えている。この案内プレート33の下方位置には、この案内プレート33に形成された多数の貫通孔を介してペーパーPに負圧を作用させる筐体34と、筐体34の内部の空気を排出して負圧を発生させるファン35とを備えている。
【0018】
前記第1搬送ローラ31は、ペーパーPを圧着搬送するための従動ローラ31Aを備え、この第1搬送ローラ31の駆動軸31Sには副走査用のサーボモータM31の動力がギヤ式減速機構(図示せず)で減速して伝えられる。前記第2搬送ローラ32は、ペーパーPを圧着搬送するための従動ローラ32Aを備え、この第2搬送ローラ32の駆動軸32Sと前記第1搬送ローラ31の駆動軸31Sとを同期して作動させるように、夫々の駆動軸31S、32Sに備えたスプロケット36S、36Sに無端ベルト36を巻き掛けたベルト連動機構を備えている。このサーボモータM31は直流型(DC型)に構成され、このサーボモータM31の端部には前記出力軸の回転量をフィードバックするためのエンコーダE31を備えている。
【0019】
この写真プリント装置では、前記エンコーダE31として、サーボモータM31の出力軸が1回転する際に1パルスの信号を出力するものを想定しているが、サーボモータM31の出力軸が1回転する際に複数のパルスを出力するものを用いても良い。また、サーボモータM31として交流型(AC型)のものを用いても良い。
【0020】
図4に示すように、主走査方向(ペーパーPの幅方向)に沿う姿勢で配置されたガイドレール37でガイドされるスライダー38にキャリッジ39を支持し、このキャリッジ39の下面側に前記プリントヘッドHを支持している。前記ガイドレール37の両端部の近傍位置に配置した一対のプーリ40にタイミングベルト型の駆動ベルト41を巻回し、一方のプーリ40を駆動する主走査用のサーボモータM40を備え、駆動ベルト41にキャリッジ39を固定することにより、プーリ40の回転駆動力でキャリッジ39と一体的にプリントヘッドHを往復作動させるよう構成している。
【0021】
この主走査用のサーボモータM40は、前記サーボモータM31と同様に、直流型(DC型)に構成され、このサーボモータM40の出力軸には回転量をフィードバックするためのエンコーダE40を備えている。さらに、前記第1搬送ローラ31とプリント位置との間に第2先端検出センサ3bが設けられており、この第2先端検出センサ3bによってペーパーPの先端が検出された時点を基準として、ペーパーPの先端位置をリアルタイムで求め、ペーパーPの適切な位置に写真画像をプリントヘッドHによって形成できるように構成されている。
【0022】
このような構成から、ペーパーPに写真画像をプリントする際には、第1、第2搬送ローラ31、32をサーボモータM31で同期駆動してペーパーPをプリント位置に供給し、案内プレート33から負圧を作用させることにより、案内プレート33にペーパーPを吸着させてペーパーPの平面精度を高めた状態で、キャリッジ39を主走査方向に沿う一方の方向に作動させ乍ら(主走査方向への作動に伴い)、この作動と連係してプリントヘッドHからペーパーPにインクを噴射することにより設定されたプリント幅で写真画像のプリントを行う。
【0023】
このようにプリントを開始することによって、キャリッジ39が作動端に達した後には、サーボモータM31で前記第1、第2搬送ロー31、32をサーボモータM31で同期駆動することにより前記プリント幅に対応した単位搬送量だけペーパーPを搬送し、この後、キャリッジ39を主走査方向に沿う他方(逆方向)に作動させ乍ら、この作動と連係してプリント幅でのプリント作動を行う。このプリント作動を反復することによりペーパーPに写真画像のプリントが行われるものとなり、このようにプリントを行う際には、副走査用のサーボモータM31によって前述したプリント幅だけペーパーPを搬送する制御が行われる。
【0024】
前記カッターユニットU3は、図3、図4に示すように、フレーム(図示せず)に固定された固定刃45と、可動刃46と、この可動刃46を駆動するカッターモータM46と、このカッターモータM46からの回転駆動力を往復作動力に変換するクランク式の駆動機構47とを備えると共に、このカッターユニットU3の切断位置を通過したペーパーPを搬送する圧着型の排出ローラ48を備え、この排出ローラ48を駆動する排出モータM48を備えている。
【0025】
前記スイッチバックユニットU4は、駆動ローラ50と、これに圧着する位置に配置された遊転型の反転ローラ51と、図面には示していないが、駆動ローラ50を回転駆動する駆動モータと、反転ローラ51を駆動ローラ50の軸芯周りで正逆両方向に90度作動させる反転機構とを備えている。このスイッチバックユニットU4では、前記排出ローラ48で搬送されることにより先端側から送り込まれるペーパーPを駆動ローラ50と反転ローラ51とで圧着した状態で更に搬送した後、図3に矢印で示すように、反転ローラ51を前記駆動ローラ50の軸芯周りで90度回転させた後、駆動ローラ50を逆転させることにより、ペーパーPを後端側から排出ユニットU5に送り出す作動を行う結果、ペーパーPの表裏を反転させるよう構成されている。前記排出ユニットU5は、ペーパーPを搬送する複数の圧着ローラ55と、この搬送ローラ51で搬送されるペーパーPを筐体上部の仕分け部17に送り出す横送りベルト16を備えている。
【0026】
〔制御系の構成〕
この写真プリント装置では、プリントを管理する制御ユニット60を備えており、この制御ユニット60において、ペーパーPを副走査搬送しながら主走査方向の部分画像形成を繰り返すことで写真画像形成を行って写真プリントを出力するプリント処理に関する制御系の概要を図5のように示すことが可能である。
【0027】
つまり、制御ユニット60は、ドライバDを介して副走査用のサーボモータM31に電力を供給し、このサーボモータM31のエンコーダE31からの信号で回転量を取得する。ドライバDを介して主走査用のサーボモータM40に電力を供給し、このサーボモータM40のエンコーダE40からの信号で回転量を取得する。これと同様に、制御ユニット60はドライバDを介してカッターモータM46に電力を供給し、ドライバDを介して排出モータM48に電力を供給する。さらに、図示されていない画像処理ユニットから送られてくる写真プリントのためのプリントデータに基づきドライバDを介してプリントヘッドHを制御する。さらに、この制御ユニット60には、湿度センサSによって測定される環境湿度とプリント待機時間とに基づいて、乾燥しすぎと判定されたペーパーP部分にプリント不適部分としてプリントヘッドHによる写真画像を形成させない機能も備えられている。
【0028】
これらの機能を実現するため、制御ユニット60には、図6で示すように、プリント搬送ユニットU2やスイッチバックユニットU4や排出ユニットU5に属するモータなどの動作機器を駆動制御する搬送制御部61と、主走査用のサーボモータM40やプリントヘッドHの動作を制御して間欠搬送されるペーパーPに順次写真画像を形成していくプリント制御部62と、カッターユニットU3の動作を制御することでペーパーPをプリントサイズにカットするカッター制御部63と、環境湿度とプリント待機時間とに基づいてペーパーPのプリント不適長さを決定するプリント不適部決定手段65と、画像処理ユニットから送られてくる写真プリントのためのプリントデータを含むプリント実行命令に基づいて搬送制御部61、プリント制御部62、カッター制御部63、プリント不適部決定手段65などの動作を管理するプリント管理部64が構築されている。
【0029】
プリント不適部決定手段65の機能は、前記収納部Aに収納されたロール体U1から先端待機位置SBまでの待機引き出し距離だけ引き出された状態で待機しているペーパーPに対して、収納部Aの湿度とプリント待機時間によるプリント不適判定基準が満たされた場合、前記待機引き出し距離に前記ロール体の少なくとも1周の外周距離を加算した長さをプリント不適長さと判定することである。プリント不適部決定手段65によって決定されたプリント不適長さがプリント管理部64に与えられると、プリント管理部64は、そのプリント不適長さ分だけプリントヘッドHを通過した後にプリントヘッドHによるペーパーPへの写真画像の形成を開始させてプリント不適部を余白部として先送りするように搬送制御部61やプリント制御部62に命令する。さらに、その余白部はカッターユニットU3によってカットされ、写真プリント領域から切り離される。
【0030】
前述したプリント不適長さについて図7を用いて説明する。この写真プリント装置は、写真プリントショップなどに設置されるものであり、写真受付機と呼ばれている、写真画像入力端末と接続されている。写真受付機は、顧客又は店員によって写真画像データを記録した各種記録メディアから読み込まれた写真画像に対してプリントサイズやプリント枚数を設定する機能を有し、そのような入力設定情報、つまり写真プリントオーダ情報とプリントデータとしての写真画像データを写真プリント装置の制御ユニット60に転送する。従って、顧客による写真プリントの注文がない時には、写真プリント装置において、ペーパーPはロール体U1から引き出され、その先端が先端待機位置SBに達する位置で待機することになる。ロール体U1は、実質的には写真プリント装置の湿度環境下にあり、写真プリント装置が乾燥地域に設置された場合、もともとペーパーPに含まれている湿気が蒸発し、表面層がひび割れしやすくなる。特に、ロール体U1の最外周面やロール体U1から引き出された部分は乾燥の影響を大きく受けるので、例えば低湿度10%以下で1時間程度外気に曝されさらされた場合、ロール体U1の引き出しポイントから先端待機位置SBの距離L1とロール体U1の最外周の1周分の長さL2を加算した長さ:Lをプリント不適長さとする。L1は固定値と考えて差し支えないが、L2はその都度のロール体U1の直径Dによって異なり、この直径Dは、新品のロール体U1を使用していくにつれ減少するペーパー残量:zに応じて変化する。このことから、ペーパー残量:zからその時点の1周分の長さL2を求めることができる。つまり、L2=f(z)の関数をテーブル化しておけば、ペーパー残量:zから即座に1周分の長さL2が得られる。このペーパー残量:zを求める機能は、写真プリント装置にとってペーパーPの交換時期を知らせる目的から重要であり一般的に備えられているので、これを利用することができる。また、低湿度10%以下で数時間程度外気に曝されされた場合、ロール体U1の最外周の1周分を超える長さ(例えば2周分)をプリント不適部分として追加することもある。このようなプリント不適部の決定は予め、実験等を通じて使用ペーパー毎に決めておくとよい。
【0031】
プリント不適長さを上述のようにして決定する場合、そのプリント不適部決定手段65には、ペーパー先端を先端待機位置SBまで引き出してプリント処理のためにペーパーPを待機させている時間を内部タイマを用いて計測する待機時間計測部65aと、新品のロール体U1の全長からプリント使用量を減算してペーパーPの残量を求める残量判定部65b、湿度センサSからの湿度計測信号と待機時間計測部65aからの待機時間を予め設定されているプリント不適判定条件に照らし合わせてプリント不適部の発生・非発生を判断するとともにプリント不適部が発生した場合のプリント不適長さ:L=L1+L2を残量判定部65bからのペーパー残量:zとテーブル化された関数:L2=f(z)から演算するプリント不適長さ演算部65cが備えられている。
【0032】
プリント処理の開始時に、プリント不適部決定手段65によってプリント不適長さ:Lが決定されていると、プリント管理部64は、搬送制御部61とプリント制御部62にプリント不適長さ:Lの余白形成の命令を与える。これにより、プリント制御部62は、ペーパーPの先端がプリントヘッドHによるプリントポイントを正確にプリント不適長さ分だけ通過した時点で、写真画像形成のためのプリントヘッドHの駆動(主走査)を開始する。また、このプリント不適長さ:Lはカッター制御部63にも与えられており、カッターユニットU3は余白と写真画像の境界線でペーパーPをカットする。
【0033】
カッターユニットU3でカットされた余白部はスイッチバックユニットU4のところでスイッチバックされずにそのまま通過してゴミ箱TBに破棄させてもよいが、写真画像が掲載された写真プリントとともにスイッチバックされ、仕分け部17に送り出されるようにしてもよい。この写真プリント装置では、仕分け部17に送り出される余白部(プリント不適部)の有効利用として、この余白部に、オーダ名やプリントサイズやプリント枚数などの写真プリントオーダ情報をプリントするモードが備えられている。写真プリントオーダ情報のプリントは、文字が主であり、写真画像とは異なり、画質はほとんど問われない。このため、写真画像のプリントに不適な、乾燥し過ぎたり湿気を含みすぎたりしているペーパー部分を写真プリントオーダ情報のプリントに用いても不都合はない。このため、写真受付機などの写真プリント装置の管理装置から送られてくる写真プリントオーダ情報とプリントデータとしての写真画像データはプリント管理部64で受け取られた後、写真プリントオーダ情報は1枚目の写真プリントの画像としてイメージ化され、写真画像データに先だってプリント制御部62に送られる。
【0034】
上述した実施の形態では、インクジェット式のプリントヘッドHを用いてペーパーPに写真画像を形成する写真プリント装置で、低湿度の環境下でのペーパーPの乾きを主な問題としていたが、これは、インクジェットを用いた高画質写真プリントに最適な用紙が光沢を有する硬質な表面をもつペーパーであり、低湿度の環境では表面に微細な割れを生ずるからである。特に、この割れは、湿気の少ない状態で表面に張力を作用させる方向にペーパーが湾曲しながら搬送される場合に生じやすく、このように表面に割れを生じると、表面の光沢が損なわれるばかりでなく、吹き付けられたインクの吸収が不均一となることで滲みを生じ、画質低下を引き起こす。もちろん、湿気を必要以上に含みすぎた場合も、インクの吸収が不充分となることで滲みが生じやすくなって画質低下を引き起こす。このため、写真プリント装置の設置場所に応じて乾燥し過ぎや湿気の含みすぎのいずれか又は両方をプリント不適判定条件に組み込み必要がある。また、プリント媒体の湿気状態における不都合は、インクジェットプリント方式のみならず、他のプリント方式、例えば、レーザ露光方式や、感光ドラム転写方式、熱転写方式など、においても考慮しなければならない問題であることから、本発明は、プリント方式を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】写真プリント装置の斜視図
【図2】筐体の一部を開放した写真プリント装置の斜視図
【図3】ペーパーの搬送経路の概要を示す図
【図4】プリント搬送ユニットのペーパーの搬送構造を示す斜視図
【図5】制御構成を示すブロック回路図
【図6】制御ユニットに構築された各機能を示す機能ブロック図
【図7】プリント不適長さを説明するための説明図
【符号の説明】
【0036】
30:制御ユニット
31:搬送制御部
32:プリント制御部
33:カッター制御部
34:プリント管理部
65:プリント不適部決定手段
65a:待機時間計測部
65b:残量判定部
65c:プリント不適長さ演算部
A :収納部
SB:先端待機位置
S :湿度センサ
P :プリント媒体(ペーパー)
U1:ロール体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺のプリント媒体をロール体として収納している収納部と、前記プリント媒体にプリントサイズに合わせて写真画像を形成するプリントヘッドを有するプリント部と、前記ロール体から引き出した前記プリント媒体を前記プリント部に搬送する供給搬送部と、前記プリント部から送り出された前記プリント媒体を前記プリントサイズに合わせてカットするカッターユニットとを備えた写真プリント装置において、
前記収納部において前記プリント媒体はその先端が前記ロール体から先端待機位置までの待機引き出し距離だけ引き出された状態で待機し、前記プリント部において前記プリント媒体の先端が前記待機引き出し距離に前記ロール体の少なくとも1周の外周距離を加算したプリント不適長さ分だけ前記プリントヘッドを通過した後に前記プリントヘッドによって前記プリント媒体に対する写真画像の形成が開始されることを特徴とする写真プリント装置。
【請求項2】
前記収納部の湿度と待機時間に応じて前記プリント不適長さのために前記待機引き出し距離に加算される外周距離の周回数が決定されることを特徴とする請求項1に記載の写真プリント装置。
【請求項3】
前記カッターユニットにおいて前記プリント不適長さ分がカットされることを特徴とする請求項1又は2に記載の写真プリント装置。
【請求項4】
前記プリント不適長さ分のプリント媒体にプリントオーダ情報が前記プリントヘッドによって形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の写真プリント装置。
【請求項5】
前記ロール体におけるプリント媒体の残量を判定する残量判定部が備えられており、前記外周距離は前記残量判定部で判定されたプリント媒体残量に基づいて決定されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の写真プリント装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−18539(P2008−18539A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189540(P2006−189540)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】