説明

冷凍回路及びその改良法

【課題】圧縮機としてスクロール圧縮機を使用し、冷媒として不飽和フッ化炭化水素冷媒を使用し、且つ冷凍機油としてポリアルキレングリコールなどエーテル系潤滑油を使用する冷凍回路において、冷凍回路の詰まりや冷凍性能の低下を引きき起こすワックス状の固形物が冷凍回路内に生成するのを防止する。
【解決手段】ポリアルキレングリコールなどのエーテル系潤滑油に対し、重合禁止剤を添加するとともに、エステル系潤滑油、アルコール系摩擦低減剤、オレフィン系摩擦低減剤、ポリオレフィン系潤滑油、アルキル芳香族系潤滑油、シリコーン系潤滑油などのポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分、又はベンゾトリアゾールなどの金属不活性化剤を添加して、ワックス状の固形物が冷凍回路内に生成するのを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒の全部又は1部としてHFO1234yfに代表される不飽和フッ化炭化水素冷媒を含む冷媒が使用される冷凍回路及びその改良法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置などに用いられる冷凍回路には現状では代表的な冷媒としてフルオロカーボンの一種であるHFC134aが使用されるとともに、代表的な冷凍機油としてポリアルキレングリコール(PAG)が使用されている。
【0003】
現在、世界規模で地球温暖化を防止する取り組みが盛んである。特にEU諸国においてはFガス規制において、自動車用の代表的な冷媒HFC134aの高い地球温暖化係数(GWP1430)に対する規制を進め、2012年以降の新型車へのこの冷媒の使用禁止を、また2017年以降には全ての車両に対してこの冷媒の使用禁止を決定された。これを受け、世界各地域に同様の規制が波及している。この動向に対して冷媒メーカー、冷凍機油メーカー及び空調機器メーカーは、安全でありながら地球温暖化係数(GWP)などのさらなる低減と改善を目指して、新冷媒及び新冷媒用冷凍機油の研究・開発が行われている。このような改善を目指した新冷媒として現在、低GWP化を求めて分子内部に不飽和結合を導入し、蒸発温度が−50℃から−10℃の範囲にあるさまざまな不飽和フッ化炭化水素冷媒が次世代冷媒として開発されている。特に、HFO1234yfやHFO1234zeなどの不飽和フッ化炭化水素冷媒が世界的に採用される見込みが有力である。これらの物質を車両用空調装置などの冷凍回路へ適用できるよう改良を目指した試験研究が盛んになってきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、不飽和フッ化炭化水素冷媒は低GWP値を特長のひとつとする反面、分子内に不飽和結合を有するためHFC134aをはじめとする従来の飽和フッ化炭化水素系冷媒と比較して反応性が高く熱・化学的安定性に乏しい。そこで、本発明者らは、不飽和フッ化炭化水素冷媒の代表例であるHFO1234yfについて、この冷媒を実際の冷凍回路に使用した場合の熱・化学的安定性を確認する実験を行ったところ、圧縮機としてスクロール圧縮機を使用し、冷媒としてHFO1234yfを使用し、且つ冷凍機油として代表的なポリアルキレングリコールを使用した実験系の冷凍回路では、特に高速高負荷条件下において、圧縮機内にワックス状の固形物が生成するのに対し、この実験系の冷凍回路においてスクロール圧縮機をレシプロ圧縮機に置換えた実験系の冷凍回路では、高速高負荷条件下においても、ワックス状の固形物は生成しないという事実を確認した。このワックス状の固形物は、冷凍回路の詰まりや冷凍性能の低下を引き起こすため、冷凍回路の著しい性能低下や故障などの致命的な欠陥になり得る。ワックス状の固形物の生成はHFO1234yfに限られず分子内に同様の不飽和結合を有する他の不飽和フッ化炭化水素冷媒においても生成するものと考えられる。従って、冷凍回路において不飽和フッ化炭化水素冷媒を使用する場合、特に高速高負荷条件下においてもかかるワックス状の固形物が圧縮機内や冷凍回路内に生成するのを防止する必要がある。
【0005】
従って、本発明が解決しようとする課題は、圧縮機としてスクロール圧縮機を使用し、冷媒として不飽和フッ化炭化水素冷媒を使用し、且つ冷凍機油としてポリアルキレングリコールなどのエーテル系潤滑油を使用する冷凍回路において、冷凍回路の詰まりや冷凍性能の低下の原因となるワックス状の固形物が冷凍回路内に生成するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らはワックス状の固形物の化学分析を行い、この固形物は融点が約50℃〜72℃の低分子量の重合パラフィンであることを確認した。本発明者らはこの分析結果に基づきワックス状の固形物の生成メカニズムを次のように推定している。すなわち、スクロール圧縮機では旋回スクロールの旋回運動に伴って旋回スクロールの渦巻体と固定スクロールの渦巻体とが高温高圧の冷媒ガスの作用に対抗するために相互に強く押圧された状態で摺動するため、使用する冷凍機油には高度の潤滑性能が要求されるところ、HFO1234yfなどの不飽和結合を有する冷媒に対するポリアルキレングリコールなどのエーテル系潤滑油の潤滑性能はスクロール圧縮機にとって必ずしも充分ではない。このため、高温高負荷条件下において、旋回スクロールの旋回運動に伴い圧縮機構部の摺動表面に局部的に金属活性表面が露出し易くなる。一方、不飽和フッ化炭化水素冷媒は反応性が高く熱・化学的安定性に乏しい。その結果、露出した金属活性表面が反応触媒として作用して、スクロール圧縮機の圧縮機構部内において高温高圧の冷媒ガス雰囲気下で不飽和フッ化炭化水素冷媒とエーテル系潤滑油のポリオキシアルキレン構造との反応を誘起し、その結果不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解と分解物たる重合性オレフィンの生成が起こり、更にこの重合性オレフィンが圧縮機内部の圧力および熱のもとで金属活性表面の重合触媒作用を受けて重合して重合パラフィンを生成するものと推定される。従って、ワックス状の固形物の生成を防止するためには、重合禁止剤により分解物たる重合性オレフィンの重合を禁止することが有効な手段となり得る。更に、重合禁止剤を使用するとともに、エーテル系潤滑油の潤滑性能の不足をポリオキシアルキレン構造を有しない他の潤滑油性成分の併用により補うことが有効な手段となり得る。また、重合禁止剤を使用するとともに、露出した金属活性表面を金属不活性化剤で直ちに不活性化してエーテル系潤滑油と不飽和フッ化炭化水素冷媒とがこの金属活性表面に接触することを防止することも有効な手段となり得る。なお、前記エーテル系潤滑油の化学構造は未変性処理のポリエーテル構造でも、一方または双方の末端構造がエーテル基やエステル基等で変性処理されているポリエーテル構造のものでもよい。本発明はかかる技術的知見と着想に基づいて完成されたものである。
【0007】
すなわち、本発明の冷凍回路は、冷媒を圧縮するスクロール圧縮機を備える冷凍回路において、前記冷媒がその一部又は全部として不飽和フッ化炭化水素冷媒を含有し、冷凍機油がポリオキシアルキレン構造を有するエーテル系潤滑油からなり、前記エーテル系潤滑油が、重合禁止剤を含有することを特徴としている。この発明によれば、重合禁止剤は、圧縮機の運転に伴い引き起される不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解により生成する重合性分解物の重合に起因する重合パラフィンの生成を防止する重合パラフィン防止剤として機能する。
【0008】
本発明の他の冷凍回路は、冷媒を圧縮する圧縮機としてスクロール圧縮機を備える冷凍回路において、前記冷媒がその一部又は全部として不飽和フッ化炭化水素冷媒を含有し、冷凍機油がポリオキシアルキレン構造を有するエーテル系潤滑油からなり、前記エーテル系潤滑油が、重合禁止剤と、ポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分及び金属不活性化剤から選ばれる1種又は2種以上とを含有することを特徴としている。この発明によれば、重合禁止剤と、ポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分及び金属不活性化剤から選ばれる1種又は2種以上とは、圧縮機の運転に伴い引き起される不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解を防止するとともに、重合性分解物の重合による重合パラフィンの生成を防止す重合パラフィン防止剤として機能する。
【0009】
本発明の冷凍回路の改良法は、冷媒を圧縮する圧縮機としてスクロール圧縮機を備える冷凍回路の改良法において、前記冷媒がその一部又は全部として不飽和フッ化炭化水素冷媒を含有し、冷凍機油がポリオキシアルキレン構造を有するエーテル系潤滑油からなり、前記エーテル系潤滑油が重合禁止剤を含有することにより、前記圧縮機の運転に伴い引き起される前記不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解により生成する重合性分解物の重合に起因する重合パラフィンの生成を防止することを特徴としている。
【0010】
本発明の他の冷凍回路の改良法は、冷媒を圧縮する圧縮機としてスクロール圧縮機を備える冷凍回路の改良法において、前記冷媒がその一部又は全部として不飽和フッ化炭化水素冷媒を含有し、冷凍機油がポリオキシアルキレン構造を有するエーテル系潤滑油からなり、前記エーテル系潤滑油が、重合禁止剤と、ポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分及び金属不活性化剤から選ばれる1種又は2種以上とを含有することにより、前記圧縮機の運転に伴い引き起される前記不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解と重合性分解物の重合に起因する重合パラフィンの生成とを防止することを特徴としている。
【0011】
上記構成において熱・化学的安定性が特に低い分子末端にCH2=CH−又はCH2=CF−の基を有する不飽和フッ化炭化水素冷媒が用いられる場合にも、重合パラフィンの生成を効果的に防止できる。また、上記構成において不飽和フッ化炭化水素冷媒として代表的なHFO1234yf及びHFO1234zeが用いられる場合にも、重合パラフィンの生成を効果的に防止できる。ポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分としては、ポリオールエステルなどのエステル系潤滑油、炭素原子数2〜25の脂肪族多価アルコールなどのアルコール系摩擦低減剤、炭素原子数10〜18のオレフィンなどのオレフィン系摩擦低減剤、ポリα−オレフィンからなるポリオレフィン系潤滑油、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどのアルキル芳香族系潤滑油、及びシリコーン系潤滑油が好適である。金属不活性化剤としてはベンゾトリアゾール系化合物が好適である。更に、上記構成において、不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解により生成するフッ化水素を捕捉する酸捕捉剤を併用する場合には、重合パラフィンの生成を更に一層効果的に防止できる。酸捕捉剤としては炭素原子数8〜25のエポキシアルカンが好適である。
【0012】
本発明の冷凍回路及びその改良法は、家電、住宅空調、流通分野などに利用されるあらゆる冷凍回路に適用可能であり、特に車両空調装置用冷凍回路として好適である。車両空調装置用冷凍回路において本発明を適用することにより、HFO1234yfなどの不飽和フッ化炭化水素冷媒を使用して環境負荷を低減し且つ従来と同様の動作安定性を達成した冷凍回路を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、圧縮機としてスクロール圧縮機を使用し、冷媒として不飽和フッ化炭化水素冷媒を使用し、且つ冷凍機油としてポリオキシアルキレン構造を有するエーテル系潤滑油を使用する冷凍回路において、エーテル系潤滑油の潤滑性能の不足をポリオキシアルキレン構造を有しない他の潤滑油性成分の併用により補うことにより、圧縮機構部の摺動に伴う金属活性表面の露出を防止して、これにより圧縮機構部内において高温高圧の冷媒ガス雰囲気下で不飽和フッ化炭化水素冷媒とエーテル系潤滑油のポリオキシアルキレン構造とが露出した金属活性表面の触媒作用を受けて反応することを防止でき、その結果冷凍回路の詰まりや冷凍性能の低下の原因となる重合パラフィンの生成を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明が対象とする冷凍回路の基本的な機器配置例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は車両用空調装置などに用いられる冷凍回路の基本的な構成を示している。図1において、冷凍回路1は、冷媒を圧縮する圧縮機2と、圧縮した冷媒を凝縮する凝縮器3と、凝縮した冷媒を減圧・膨張させる減圧・膨張手段としての膨張弁4と、減圧・膨張した冷媒を蒸発させる蒸発器5とを備えており、この冷凍回路1中を冷媒がその状態を変化させながら循環される。
【0016】
本発明で使用するスクロール圧縮機には特に制限はない。圧縮機の構成材料として鉄系材料のほか、アルミニウム、マグネシウム又はその合金などの軽金属系材料が使用可能である。圧縮機構部において可動側のスクロールは慣性力を低減させるために鉄系材料よりも比重が小さなアルミニウム、マグネシウム又はその合金などの軽金属系材料が使用される場合が多い。これらの鉄系材料や軽金属系材料はいずれも純粋の金属素材の状態では高い反応性に富んでいるが、通常はその表面は酸化被膜で覆われているほか、潤滑性向上や保護を目的とした表面処理を施すことによって、金属素材の活性が抑えられた状態にある。しかし、冷凍機油の潤滑性能が不充分であると、酸化被膜が旋回スクロールの旋回運動に伴う摩擦などにより失われて金属活性表面が露出する。金属活性表面が露出すると、その金属素材の高い反応性のために、この金属活性表面は極めて高い触媒作用を呈する。従って、高温高圧状態の冷媒雰囲気下でエーテル系潤滑油と不飽和フッ化炭化水素冷媒とがこの金属活性表面に接触すると、この金属活性表面の触媒作用を受けてエーテル系潤滑油のポリオキシアルキレン構造と不飽和フッ化炭化水素冷媒が反応する。この反応により不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解と分解物たる重合性オレフィンの生成が起こり、更にこの重合性オレフィンが金属活性表面の重合触媒作用を受けて高温高圧の冷媒ガス雰囲気下で重合して重合パラフィンを生成することになる。しかしながら、本発明によれば、エーテル系潤滑油はポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分を含有し、この潤滑油性成分は高温高圧の冷媒ガス雰囲気下でも不飽和フッ化炭化水素冷媒と反応することはないので、エーテル系潤滑油の潤滑性能の不足を補って金属活性表面の露出を防止し、これにより不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解と分解物たる重合性オレフィンの生成を防止するとともに、重合性オレフィンの重合による重合パラフィンの生成を防止する。
【0017】
本発明で使用される重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、メチルハイドロキノン、トリメチルハイドロキノン、ターシャリブチルハイドロキノンなどのハイドロキノン系重合禁止剤;メトキノン、トルキノン、1,4−ナフトキノンなどのキノン系重合禁止剤;リモネン、ピネン、カンフェン、シメン、テルピネンなどのテンペン系重合禁止剤;シトロネロール、チルピネオール、ボルネオールなどのテルペンアルコール系重合禁止剤;α−テレピネン、γ−テレピネンなどのシクロヘキサジエン系重合禁止剤が挙げられる。重合禁止剤は封入冷媒量に対し通常500〜5000ppm使用される。
【0018】
本発明で使用される不飽和フッ化炭化水素冷媒としては、例えば1,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFC−1234ye);1,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFC−1234ze);2,3,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFC−1234yf);1,1,2,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFC−1234yc);1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(HFC−1234zc);2,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFC−1243yf);3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFC−1243zf);1,1,2−トリフルオロ−1−プロペン(HFC−1243yc);1,1,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFC−1243zc);1,2,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFC−1243ye);1,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(HFC−1243ze);3,3,3−トリフルオロプロペン(HFC−1243zf)などのハイドロフルオロプロペン:2,3,3,4,4,4−ヘキサフルオロ−1−ブテン(CF3CF2CF=CH2);3,3,3−トリフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−プロペン(CH2=C(CF3)2);1,1,1,3,4−ペンタフルオロ−2−ブテン(CF3CH=CFCH2F);3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン(CF3CF2CH=CH2);2,3,3,4,4−ペンタフルオロ−1−ブテン(CH2=CFCF2CHF2);3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン(CH2=CHCF2CHF2);3,3−ジフルオロ−2−(ジフルオロメチル)−1−プロペン(CH2=C(CHF2)2);3,3,4,4,4−ペンタフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−1−ブテン(CH2=C(CF3)CF2CF3);3,4,4,4−テトラフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン((CF3)2CFCH=CH2);2,4,4,4−テトラフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン(CH2=CFCH(CF3)2);4,4,4−トリフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン(CH2=C(CF3)CH2CF3)などのハイドロフルオロブテン:3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CF3CF2CF2CH=CH2);2,3,3,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−1−ペンテン(CH2=CFCF2CF2CHF2);3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−1−ペンテン(CH2=CHCF2CHFCF3);4,5,5,5−テトラフルオロ−4−(トリフルオロメチル)−1−ペンテン(CH2=CHCH2CF(CF3)2)などのハイドロフルオロペンテン: 3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキセン(CF3CF2CF2CF2CH=CH2);4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロ−1−ヘキセン(CH2=CHCH2CF2CF2CF5)などのハイドロフルオロヘキセンが挙げられる。不飽和フッ化炭化水素冷媒の中でも特に分子末端にCH2=CH−又はCH2=CF−の基を有するものはポリオキシアルキレン構造を有するエーテル系潤滑油とスクロール圧縮機内で反応して重合パラフィンを生成させる程度が分子末端にこれらの基を有しないものよりも顕著である。従って、これらの基を有する不飽和フッ化炭化水素冷媒を使用する冷凍回路に対し本発明の適用は特に有効である。
【0019】
上記化合物は単独又は2種以上の混合物として使用される。また、上記化合物とともには飽和ハロゲン化炭化水素冷媒又は炭化水素冷媒を併用することも可能である。代表的な飽和フッ化炭化水素冷媒としては、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R134a)、1,1−ジフルオロエタン(R152a)、ジフルオロメタン(R32)、ペンタフルオロエタン(R125)、1,1,1−トリフルオロエタン(R143a)、1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(R227ea)、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロペンタン(R43−10mee)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(R365mfc)、2,2,−ジクロロ−1,1,1−トリフルオロエタン(R123)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(R245fa)、1,2−ジクロロ−1,1,2,2−テトラフルオロエタン(R124)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(R236fa)、ジクロロジフルオロメタン(R12)が挙げられる。代表的な炭化水素冷媒としては、例えばプロパン、プロピレン、シクロプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、2−メチルブタン(イソペンタン)、シクロブタン、シクロペンタン、2,2−ジメチルプロパン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、2,3−ジメチルペンタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2−メチルペンタン、3−エチルペンタン、3−メチルペンタン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、メチルシクロペンタン、およびn−ヘキサンが挙げられる。
【0020】
本発明で重合パラフィン防止剤として使用されるポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分としては、例えばアルコール系摩擦低減剤;オレフィン系摩擦低減剤;ジエステル、ポリオールエステルなどのエステル系潤滑油;ポリ−α−オレフィンなどのポリオレフィン系潤滑油;アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどのアルキル芳香族系潤滑油;シリコーン系潤滑油が挙げられ、中でもアルコール系摩擦低減剤、オレフィン系摩擦低減剤、及びエステル系潤滑油は重合パラフィン防止効果が大きく好ましい。エステル系潤滑油は特に好ましい。
【0021】
本発明で重合パラフィン防止剤として使用されるアルコール系摩擦低減剤としては、例えばオクチルアルコール、デシルアルコール、ミスチリルアルコール、ラウリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、ドデシルアルコール、セチルアルコール、パルチミルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、リノリルアルコールなどの炭素原子数6〜20の高級アルコール:エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,15−ヘプタデカンジオール、1.16−ヘキサデカンジオール、1,17−ヘプタデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,19−ノナデカンジオール、1,20−イコサデカンジオールなどの炭素原子数2〜25の2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどの3価アルコール;これらの2量体及び3量体などの炭素原子数3〜20の3価以上の多価アルコールが挙げられる。上記化合物の中でも炭素原子数2〜25の脂肪族多価アルコールが好ましい。アルコール系摩擦低減剤のエーテル系潤滑油に対する添加量は0.1〜10重量%が好ましく、封入冷媒量に対する添加量は0.02〜2重量%が好ましい。
【0022】
本発明で重合パラフィン防止剤として使用されるオレフィン系摩擦低減剤としては、例えば1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、直鎖状α−オレフィン;4−メチル−1−ペンテン、8−メチル−1−ノネン、7−メチル−1−デセン、6−メチル−1−ウンデセン、6,8−ジメチル−1−デセンなどの分岐鎖状α−オレフィンが挙げられ、これらの化合物の中でも炭素原子数10〜16の直鎖状α−オレフィンが好ましい。オレフィン系摩擦低減剤のエーテル系潤滑油に対する添加量は0.5〜10重量が好ましく、封入冷媒量に対する添加量は0.1〜2重量%が好ましい。
【0023】
本発明で重合パラフィン防止剤として使用されるエステル系潤滑油としては、例えば脂肪族二塩基酸と1価アルコールから誘導されるジエステル、3価以上の多価アルコールと1価脂肪酸から誘導されるポリオールエステルが挙げられる。ジエステルの原料となる脂肪族二塩基酸としては、例えばグルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸などの炭素数5〜10の脂肪族二塩基酸が挙げられ、1価アルコールとしては、例えばブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノールなどの炭素数4〜18の1価アルコールが挙げられる。ポリオールエステル原料となる多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、2ーメチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどの炭素原子数2〜15の2価アルコール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、グリセリンなどの炭素原子数3〜8の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ジグリセリン、ソルビトール、キシリトールなどの3価以上の多価アルコールが挙げられ、中でもネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトールなどのヒンダードアルコールが好ましい。ポリオールエステル原料となる脂肪酸としては、例えばペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、オレイン酸などの炭素原子数5〜18の脂肪酸が挙げられる。ポリオールエステルは、2個以上のエステル基を有していればよく、多価アルコールの水酸基のうちの一部がエステル化されずに残っている部分エステルであってもよく、また全ての水酸基がエステル化された完全エステルであってもよい。エステル系潤滑油のエーテル系潤滑油に対する含有量はエーテル系潤滑油に対し1〜99重量%が好ましい。エステル系潤滑油の封入冷媒量に対する添加量は0.2〜20重量%が好ましい。
【0024】
本発明で重合パラフィン防止剤として使用されるポリオレフィン系潤滑油としては、例えばオクテンオリゴマー、デセンオリゴマー、エチレン−プロピレンコオリゴマーなどの炭素原子数6〜16のα−オレフィンのオリゴマー又はコオリゴマーが挙げられる。オレフィン系潤滑油のエーテル系潤滑油に対する添加量は0.1〜3重量が好ましく、封入冷媒量に対する添加量は0.02〜0.6重量%が好ましい。
【0025】
本発明で重合パラフィン防止剤として使用されるアルキル芳香族系潤滑油としては、例えば炭素原子数1〜15のアルキル基を1〜4個有し且つそのアルキル基の合計炭素原子数が9〜15であるアルキルベンゼンが挙げられる。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基)、オクタデシル基、ノナデシル基などが挙げられる。アルキル芳香族系潤滑油として、更に、例えば(n−プロピル)ナフタレン、イソプロピルナフタレン、ブチルナフタレン、ペンチルナフタレン、エチルプロピルナフタレン、メチルペンチルナフタレン、エチルブチルナフタレン、ジメチルブチルナフタレン、メチルヘキシルナフタレン、エチルペンチルナフタレン、プロピルブチルナフタレン、ジメチルペンチルナフタレン、メチルヘプチルナフタレン、エチルヘキシルナフタレン、プロピルペンチルナフタレン、ジメチルヘキシルナフタレン、エチルメチルナフタレン、ジエチルナフタレン、メチルプロピルナフタレン、メチルイソプロピルナフタレン、ジプロピルナフタレン、ブチルメチルナフタレン、ジブチルナフタレン、トリメチルナフタレン、トリエチルナフタレン、エチルジメチルナフタレン、ジエチルメチルナフタレン、ジメチルプロピルナフタレン、メチルジプロピルナフタレン、ブチルジメチルナフタレンなどのアルキルナフタレンが挙げられる。アルキル芳香族系潤滑油のエーテル系潤滑油に対する添加量は0.5〜10重量が好ましく、封入冷媒量に対する添加量は0.1〜2重量%が好ましい。
【0026】
本発明で重合パラフィン防止剤として使用される金属不活性化剤としては、例えばトリアゾール及びN,N−ジアルキル−トリアゾール−アルキルアミンの如きトリアゾール誘導体;ベンゾトリアゾール及びN,N−ジアルキル−ベンゾトリアゾール−メチルアミンの如きベンゾトリアゾール誘導体;チアジアゾール及びベンゾトリアゾールチアジアゾール、2,5−ジアルキルメルカプト−1,3,4-チアジアゾールの如きチアジアゾール誘導体;ベンゾイミダゾール及び2−アルキルジチオ−ベンゾイミダゾールの如きベンゾイミダゾール誘導体が挙げられる。これらの化合物の中でもベンゾトリアゾール及びその誘導体が好適である。金属不活性化剤のエーテル系潤滑油に対する添加量は0.5〜10重量が好ましく、封入冷媒量に対する添加量は0.1〜2重量%が好ましい。
【0027】
エーテル系潤滑油がポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分を含有することによって冷凍回路内での重合パラフィンの生成が防止されたとしても、冷凍回路内に不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解に起因してフッ化水素が生成するおそれがある。フッ化水素が生成するとこれが不飽和フッ化炭化水素冷媒の更なる分解を助長するおそれがある。このため、冷凍回路には、重合パラフィン防止剤としての潤滑油性成分に加え、酸捕捉剤が適量添加されていることが好ましい。この酸捕捉剤は、冷媒や冷凍機油と分けて個別に冷凍回路に添加する方法でもよいし、冷媒との予備混合あるいは冷凍機油に通常含まれる酸化防止剤、極圧剤などの各種添加剤ととともに適量が添加されていてもよい。酸捕捉剤は圧縮機や冷凍回路配管の腐食劣化防止にも寄与することができる。酸捕捉剤としては、例えば、エポキシドアルカン、グリシジル脂肪酸エステル、芳香族カルボン酸グリシジルエステルなどのエポキシ化合物;オルトエステル;オキシラン化合物;アセタール類;カルボジイミドなどが挙げられる。これらの化合物の中でも、例えば2−エチルヘキサン酸グリシジルエステル、3,5,5−トリメチルヘキサン酸グリシジルエステル、カプリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、バーサチック酸グリシジルエステル、ミリスチン酸グリシジルエステルなどの炭素原子数6〜16の脂肪族モノカルボン酸のグリシジルエステルが好ましく;1,2−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシペンタデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシヘプタデカン、1,2−エポキシオクタデカン、1,2−エポキシノナデカンなどの炭素原子数8〜25のエポキシアルカンが特に好ましい。酸捕捉剤のエーテル系潤滑剤に対する添加量は0.5〜15重量が好ましく、封入冷媒量に対する添加量は0.1〜3重量%が好ましい。
【実施例】
【0028】
本発明による重合パラフィンの生成防止効果は以下の実施例及び比較例により確認することができる。実施例及び比較例において図1に示される冷凍回路が用いられる。冷凍回路のスクロール圧縮機はアルミニウム製の固定スクロールとアルミニウム合金にアルマイト処理された旋回スクロールとを備えている。冷凍回路内にHFO1234yf冷媒を所定量充填し、スクロール圧縮機内に表1に記載の処方の混合物を所定量充填する。実施例及び比較例のエーテル系潤滑油には極圧剤としてリン酸トリクレシルを潤滑油に対し1.0%添加する。スクロール圧縮機の回転数を6000rpmに設定し、この回転速度で400時間に亘って冷凍回路を連続運転する。運転終了後に圧縮機内及び冷凍回路の配管内を点検してワックス状の固形物(重合パラフィン)の生成の有無を確認する。この確認実験により表1に記載の結果が得られる。表1の効果の欄における判定基準は次の通りである。
○:目視で確認できる固形物は存在しない。
×:目視で確認できる固形物が存在する。
【0029】
【表1】


上表において、PPGはポリプロピレングリコールを主構造として分子末端をエーテル変性処理したポリアルキレングリコールを表し、%は封入冷媒量に対する重量%を表す。
【0030】
表1に示すように、実施例1〜8のようにエーテル系潤滑油(PAG)に重合禁止剤を添加するとともに、重合パラフィン防止剤としてポリオキシアルキレン構造を有しない各種潤滑油性成分又は金属不活性化剤を添加する場合には、回転数6000rpm、連続運転時間400時間の高温高負荷条件下においても、重合パラフィンは発生しないのに対し、比較例にようにポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分を添加しない場合には、同条件下において、重合パラフィンが発生する。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は家電、住宅空調、流通分野などに利用されるあらゆる冷凍回路に適用可能であり、特に車両空調装置用冷凍回路において、HFO1234yfなどの不飽和フッ化炭化水素冷媒を使用して環境負荷を低減し且つ従来と同様の動作安定性を達成した冷凍回路を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 冷凍回路
2 圧縮機
3 凝縮器
4 減圧・膨張手段としての膨張弁
5 蒸発器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機としてスクロール圧縮機を備える冷凍回路において、前記冷媒がその一部又は全部として不飽和フッ化炭化水素冷媒を含有し、冷凍機油がポリオキシアルキレン構造を有するエーテル系潤滑油からなり、前記エーテル系潤滑油が、重合禁止剤を含有することを特徴とする冷凍回路。
【請求項2】
冷媒を圧縮する圧縮機としてスクロール圧縮機を備える冷凍回路において、前記冷媒がその一部又は全部として不飽和フッ化炭化水素冷媒を含有し、冷凍機油がポリオキシアルキレン構造を有するエーテル系潤滑油からなり、前記エーテル系潤滑油が、重合禁止剤と、ポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分及び金属不活性化剤から選ばれる1種又は2種以上とを含有することを特徴とする冷凍回路。
【請求項3】
冷媒を圧縮する圧縮機としてスクロール圧縮機を備える冷凍回路の改良法において、前記冷媒がその一部又は全部として不飽和フッ化炭化水素冷媒を含有し、冷凍機油がポリオキシアルキレン構造を有するエーテル系潤滑油からなり、前記エーテル系潤滑油が重合禁止剤を含有することにより、前記圧縮機の運転に伴い引き起される前記不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解により生成する重合性分解物の重合に起因する重合パラフィンの生成を防止することを特徴とする冷凍回路の改良法。
【請求項4】
冷媒を圧縮する圧縮機としてスクロール圧縮機を備える冷凍回路の改良法において、前記冷媒がその一部又は全部として不飽和フッ化炭化水素冷媒を含有し、冷凍機油がポリオキシアルキレン構造を有するエーテル系潤滑油からなり、前記エーテル系潤滑油が、重合禁止剤と、ポリオキシアルキレン構造を有しない潤滑油性成分及び金属不活性化剤から選ばれる1種又は2種以上とを含有することにより、前記圧縮機の運転に伴い引き起される前記不飽和フッ化炭化水素冷媒の分解と重合性分解物の重合に起因する重合パラフィンの生成とを防止することを特徴とする冷凍回路の改良法。
【請求項5】
前記不飽和フッ化炭化水素冷媒が分子末端にCH2=CH−又はCH2=CF−の基を有する不飽和フッ化炭化水素冷媒である請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項6】
前記不飽和フッ化炭化水素冷媒がHFO1234yf及びHFO1234zeの少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項7】
前記重合禁止剤がハイドロキノン系重合禁止剤である請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項8】
前記潤滑油性成分がエステル系潤滑油である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項9】
前記潤滑油性成分が多価アルコールと1価脂肪酸とから誘導されるポリオールエステルからなるエステル系潤滑油である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項10】
前記潤滑油性成分がアルコール系摩擦低減剤である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項11】
前記潤滑油性成分が炭素原子数2〜25の脂肪族多価アルコールからなるアルコール系摩擦低減剤である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項12】
前記潤滑油性成分がオレフィン系摩擦低減剤である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項13】
前記潤滑油性成分が炭素原子数10〜18のオレフィンからなるオレフィン系摩擦低減剤である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項14】
前記潤滑油性成分がポリα−オレフィンからなるポリオレフィン系潤滑油である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項15】
前記潤滑油性成分がアルキル芳香族系潤滑油である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項16】
前記潤滑油性成分がアルキルベンゼン及びアルキルナフタレンから選ばれるアルキル芳香族系潤滑油である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項17】
前記潤滑油性成分がシリコーン系潤滑油である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項18】
前記金属不活性化剤がベンゾトリアゾール系化合物である請求項2、4〜7のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項19】
前記エーテル系潤滑油が酸捕捉剤を含有する請求項1〜18のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。
【請求項20】
前記エーテル系潤滑油が酸捕捉剤として炭素原子数8〜25のエポキシアルカンを含有する請求項1〜18のいずれか1項に記載の冷凍回路又は冷凍回路の改良法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−57885(P2011−57885A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210259(P2009−210259)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】