説明

冷凍粉砕装置

【課題】発電システムによる供給冷熱量と冷凍粉砕装置における需要冷熱量とが一致しない場合でも、需要電力量を充分に満たすだけの発電量が得られるうえに、常に均一な温度の冷空気を冷凍機に供給することができ、均一な粉度及び品質を有する粉砕物を得ることができる冷凍粉砕装置を提供すること。
【解決手段】空気を冷却することが可能な冷熱を蓄えた蓄冷材を有する蓄冷器30と、空気通路20から分岐し、蓄冷器30を通過した後、再び空気通路20に合流する空気分岐路24と、冷凍機32に導入される冷空気の温度を測定する温度測定手段34と、温度測定手段34により測定された温度が原料物質の種類及び/又は量に応じて規定された冷空気温度の上限値を上回る場合に、空気供給手段22により供給された空気の少なくとも一部を空気分岐路24に導入する制御手段26、28、40を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化天然ガス(以下、「LNG」と表す。)を燃料として発電を行う発電システムに併設され、LNGを燃料ガスに変換する際に得られる冷熱を利用し空気を冷却してその冷空気により原料物質を冷凍粉砕する冷凍粉砕装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプラスチックやゴム等の展延性物質は、低温脆性を呈することから、これらの原料物質を液体窒素などの冷却媒体を用いて超低温まで冷却し、冷却後の原料物質を回転するブレードを備えた粉砕機に送って衝撃粉砕する冷凍粉砕が広範に行われている。また、近年、このような冷凍粉砕技術の小麦、玄米、大豆等の食品加工への応用が注目されている。
【0003】
一方、従来から発電システムにおける発電機の燃料としてLNGが利用されている。LNGは約−160℃に冷却して貯蔵され、気化させて約16℃の燃料ガスとして利用される。ここで、LNGを熱交換器によって気化させて燃料ガスとして利用する際に発生するLNG冷熱によって冷凍粉砕装置に供給する冷却媒体の温度を低下させる、LNG冷熱利用の冷凍粉砕装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。冷却媒体としては、空気が一般に利用される。このような冷凍粉砕装置により、環境負担の低減と省エネルギが実現できる。
【0004】
ところで、このような冷凍粉砕装置において、原料物質を粉砕した後の粉砕物の粉度及び粉砕物の品質は、冷凍機に供給される冷空気の温度に大きく依存する。冷凍機に供給される冷空気の温度がばらつくと、原料物質の冷凍が良好に行われず、粉砕物の粉度が大きくばらつく上に、原料物質が食品の場合には、栄養価の欠損や腐敗といった深刻な弊害をもたらすこともある。
【0005】
この問題点に対し、特許文献1は、冷空気の温度と粉砕物の粉度との相関関係を予め求めておき、要求される粉度が得られるように上記相関関係に基づいて冷空気の温度を制御することを開示している。この文献では、上記熱交換器に供給するLNGの量を調整することにより、LNGと空気との熱交換により得られる冷空気の温度を制御している。
【0006】
一方、発電システムにおけるLNGの消費量は発電量の変化に伴って変化し、この発電量は需要電力量によって変化する。そして、需要電力量は時間によって大きく変動するため、発電システムにおけるLNGの必要量と、LNG冷熱利用の冷凍粉砕装置におけるLNGの必要量とは必ずしも一致しない。発電システムにおけるLNGの必要量が冷凍粉砕装置におけるLNGの必要量を上回る時間帯では、余剰のLNG冷熱が発生し、発電システムにおけるLNGの必要量が冷凍粉砕装置におけるLNGの必要量を下回る時間帯では、冷空気の温度が上昇し、粉砕物の粉度がばらついてしまう。
【0007】
時間帯における供給冷熱量と需要冷熱量の不一致の問題を解消することに関しては、供給冷熱量が需要冷熱量より多い場合には余剰冷熱を蓄冷材に蓄熱し、供給冷熱量が需要冷熱量より少ない場合には蓄冷材に蓄熱した冷熱を補う一般的な技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2006−110471号公報
【特許文献2】特開平2−57800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示された技術では、熱交換器に供給するLNGの量を調整することにより冷空気の温度を制御するため、需要電力量を充分に満たすだけの発電量が得られず、冷凍粉砕装置の粉砕機の動作等が少ない発電量により影響を受け、結果的に均一な粉度を有する粉砕物が得られない場合がある。
【0010】
また、特許文献2は、蓄冷材の一般的利用を開示しているに過ぎず、発電システムに併設された冷凍粉砕装置に関する技術についてはなんら言及していない。一方、発電システムに併設された冷凍粉砕装置の場合は、常に均一な温度の冷空気が冷凍機に供給されなければ粉砕物の粉度及び粉砕物の品質が変化し、粉砕物を廃棄せざるを得なくなる場合がある。
【0011】
そこで、本発明の目的は、発電システムに併設された冷凍粉砕装置において、発電システムにおけるLNGの必要量と冷凍粉砕装置におけるLNGの必要量とが一致しない場合でも、需要電力量を充分に満たすだけの発電量が得られるうえに、常に均一な温度の冷空気を冷凍機に供給することができ、均一な粉度及び品質を有する粉砕物を得ることができる冷凍粉砕装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1に記載の冷凍粉砕装置の発明は、液化天然ガスを液化天然ガス供給源と発電機とを熱交換器を介して接続する燃料通路に導入し、液化天然ガスを上記熱交換器において燃料ガスに変換して発電機に導入する発電システムに併設され、空気を空気供給手段と冷凍機とを上記熱交換器を介して接続する空気通路に導入し、上記熱交換器において空気と液化天然ガスとの熱交換により冷空気を生成し、該冷空気を上記冷凍機に導入して該冷凍機に投入された原料物質を冷凍し、冷凍後の原料物質を粉砕機で衝撃粉砕する冷凍粉砕装置であって、空気を冷却することが可能な冷熱を蓄えた蓄冷材を有する蓄冷器と、上記空気通路から分岐し、上記蓄冷器を通過した後、再び上記空気通路に合流する空気分岐路と、上記冷凍機に導入される冷空気の温度を測定する温度測定手段と、該温度測定手段により測定された温度が上記原料物質の種類及び/又は量に応じて規定された冷空気温度の上限値を上回る場合に、上記空気供給手段により供給された空気の少なくとも一部を上記空気分岐路に導入する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
冷空気温度の上限値は、所望の性質(例えば粉度等)を有する粉砕物が得られるように予め定められた冷空気温度の最高値である。上記蓄冷器を通過する空気分岐路の空気通路との分岐点及び合流点は、熱交換器の上流側と下流側とに分かれて存在してもよく、分岐点と合流点の両方が熱交換器の上流側に存在しても良く、分岐点と合流点の両方が熱交換器の下流側に存在しても良い。この発明によると、発電システムにおける液化天然ガスの必要量が比較的少なく、冷凍粉砕装置における液化天然ガスの必要量を下回ってしまう場合、すなわち、需要冷熱量が供給冷熱量を上回っている場合に、冷熱の不足分を蓄冷器が有する蓄冷材の冷熱によって補うことができる。従って、熱交換器に供給するLNGの量を調節することなく、供給冷熱量の不足を補填して冷空気の温度上昇を防止して、均一な温度の冷空気を冷凍機に供給することができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の冷凍粉砕装置において、上記燃料通路から分岐し、上記蓄冷器を通過した後、再び上記燃料通路に合流する燃料分岐路を備え、上記制御手段が、上記温度測定手段により測定された温度が上記原料物質の種類及び/又は量に応じて規定された冷空気温度の下限値を下回る場合に、上記液化天然ガス供給源から供給された液化天然ガスの少なくとも一部を上記燃料分岐路に導入することを特徴とする。
【0015】
上記冷空気温度の下限値は、所望の性質(例えば粉度等)を有する粉砕物が得られるとともに、過剰な冷熱を有する冷空気の供給によって冷熱が無駄にならないように予め定められた冷空気温度の最低値である。上記蓄冷器を通過する燃料分岐路の燃料通路との分岐点及び合流点は、熱交換器の上流側と下流側とに分かれて存在してもよく、分岐点と合流点の両方が熱交換器の上流側に存在しても良く、分岐点と合流点の両方が熱交換器の下流側に存在しても良い。この発明によると、発電システムにおける液化天然ガスの必要量が比較的多く、冷凍粉砕装置における液化天然ガス必要量を上回ってしまう場合、すなわち、供給冷熱量が需要冷熱量を上回っている場合、余剰分の冷熱を蓄冷器が有する蓄冷材に蓄えることができる。従って、過剰な供給冷熱量による冷空気の温度低下を防止することができ、より均一な温度の冷空気を冷凍機に供給することができる。また、このようにして蓄えられた蓄冷材の冷熱を用いて、後に供給冷熱量が低下する時間帯の不足分の冷熱を補うことができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の冷凍粉砕装置において、上記制御手段が、上記空気供給手段が停止している場合に、上記液化天然ガス供給源から供給された液化天然ガスの全てを上記燃料分岐路に導入することを特徴とする。
【0017】
これにより、空気供給手段が停止している場合、すなわち、冷凍粉砕が行われていない場合には、熱交換器へのLNGの供給を停止して、LNG冷熱を有効に利用することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の冷凍粉砕装置において、上記蓄冷材が、−110℃〜−90℃の融点を示す潜熱蓄冷材であることを特徴とする。
【0019】
原料物質が食品の場合には、粉砕物の腐敗の進行を停止させる等の目的で、約−100℃の冷凍温度が採用される。従って、−110℃〜−90℃の融点を示す潜熱蓄冷材を採用すると、空気の流通経路を切り替えたときのヒートショックが緩和され、冷凍粉砕装置の安定動作が確保される。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかる冷凍粉砕装置によれば、発電システムにおける液化天然ガスの必要量が比較的少なく、冷凍粉砕装置における液化天然ガスの必要量を下回ってしまう場合、すなわち、需要冷熱量が供給冷熱量を上回っている場合に、冷熱の不足分を蓄冷器が有する蓄冷材の冷熱によって補うことができる。従って、熱交換器に供給するLNGの量を調節することなく、供給冷熱量の不足を補填して冷空気の温度上昇を防止することができる。
【0021】
従って、発電システムにおけるLNGの必要量と冷凍粉砕装置におけるLNGの必要量とが一致しない場合でも、需要電力量を充分に満たすだけの発電量が得られるうえに、常に均一な温度の冷空気を冷凍機に供給することができ、均一な粉度及び品質を有する粉砕物を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
図1は、本実施の形態の発電システムに併設される冷凍粉砕装置の概要を示す説明図である。
【0023】
冷凍粉砕装置10を併設する発電システム12は、約−160℃に冷却されて液化されたLNGを燃料通路18に供給する液化天然ガス供給源としてのLNGタンク14、LNGを気化させた燃料ガスを燃料として発電する発電機16、及びLNGタンク14と発電機16とを熱交換器15を介して接続する燃料通路18を主要な構成要素として備えている。
【0024】
発電機16は、冷凍粉砕装置10の作動電力に加えて、他の種々の設備の電力をも生成する装置である。LNGタンク14から燃料通路18に供給されるLNGは、冷凍粉砕装置10及び他の設備の作動のために想定される需用電力量の変移に基づく運転パターンに従って供給量が制御され、熱交換器15において空気との熱交換により気化され、発電機16に供給される。
【0025】
冷凍粉砕装置10は、冷却媒体として使用される空気を供給するための空気供給手段22と、空気供給手段22から供給された空気を熱交換器15により冷却して冷凍機に供給するための空気通路20を備えている。
【0026】
空気供給手段22により空気通路20に供給された空気は、ゼオライトやアルミナゲル等の吸着剤が充填された吸着塔19によって、水分や炭酸ガスが吸着、除去される。
【0027】
また、空気通路20には、吸着塔19と熱交換器15の間の分岐点Aにおいて、空気通路20から分岐する空気分岐路24が接続されている。空気通路20上の分岐点Aより下流側には、信号により開度の調節が可能な第1空気量調節バルブ26が設けられている。一方、空気分岐路24には、第1空気量調節バルブ26と同様に信号による開度調整が可能な第2空気量調節バルブ28と、蓄冷器30が順に設けられており、この空気分岐路24は熱交換器15の下流側の合流点Bで再び空気通路20に合流する。なお、第1空気量調節バルブ26と第2空気量調節バルブ28については、後に詳細に説明する。
【0028】
空気通路20を通して熱交換器15に導入される空気は、燃料通路18を通して熱交換器15に導入されるLNGとの熱交換により冷却され、冷空気となる。一方、空気通路20の分岐Aにおいて空気分岐路24側に流れる空気は、蓄冷器30に導入される。
【0029】
蓄冷器30は、約−110℃〜約−90℃の範囲の融点を示す潜熱蓄冷材を有しており、この蓄冷材は空気を冷却することが可能な冷熱を予め蓄えている。約−110℃〜約−90℃の範囲の融点を示す潜熱蓄冷材としては、例えば、メタノールと水の混合物、1−プロパノールと水の混合物、2−プロパノールと水の混合物、アセトンと水の混合物、1−プロパノールとノルマルヘキサンの混合物、2−プロパノールとノルマルペンタンの混合物、2−プロパノールとノルマルヘキサンの混合物、ジクロロメタン、メチルパーフルオロプロピルエーテルが適用でき、冷熱を予め蓄えた蓄冷材は、LNG基地や発電所から搬送されたものを使用してもよく、また、以下の第2の実施の形態に示すように、発電システム12の運転の過程で蓄冷材に冷熱を蓄えたものを使用しても良い。これにより、蓄冷器30に導入された空気は、蓄冷材に蓄えられた冷熱によって冷却され冷空気となる。そして、合流点Bにおいて、熱交換器15における熱交換で生成した冷空気と合流する。
【0030】
冷凍粉砕装置10にはさらに、食品のような原料物質を収容しており、生成された冷空気を用いて原料物質の冷凍を行う冷凍機32と、この冷凍機32で冷凍された冷凍原料物質を衝撃粉砕する回転ブレードを有する粉砕機36と、粉砕機36により粉砕された原料物質粉が収容される製品収集ボックス38を有している。
【0031】
更に、冷凍粉砕装置10には、生成された冷空気を冷凍機32に供給する直前に冷空気の温度を測定する温度測定手段としての冷空気温度センサ34と、冷空気温度センサ34の測定値に応じて熱交換器15及び蓄冷器30に導入される空気の量を調節するために上述の第1空気量調節バルブ26及び第2空気量調節バルブ28の開度を制御する制御部40が設けられている。
【0032】
図2は、制御部40を用いた空気量制御システム41を説明するブロック図である。図示のように、空気量制御システム41は、冷空気温度センサ34、制御部40、第1空気量調節バルブ26及び第2空気量調節バルブ28を有している。制御部40は、冷空気温度センサ34の測定値を受信するデータ受信部42と、その測定値をデータ受信部42から受け取り、その測定値と粉砕される原料物質の種類及び/又は量に応じて第1空気量調節バルブ26及び第2空気量調節バルブ28の開度を調整するデータを記憶している空気バルブ開度データ記憶部44と、上記測定値に応じた適当な開度データを空気バルブ開度データ記憶部44から抽出し、第1空気量調節バルブ26及び第2空気量調節バルブ28を適当な開度に調整する信号を各バルブに送信するデータ送信部46を有している。そして、この第1空気量調節バルブ26及び第2空気量調節バルブ28は、上記信号を受信すると、その信号に基づく開度で開閉される。なお、本実施の形態では、上述の第1空気量調節バルブ26、第2空気量調節バルブ28及び制御部40が制御手段として機能している。
【0033】
空気バルブ開度データ記憶部44には、まず、原料物質の種類及び/又は冷凍機32への投入量に応じて予め規定される冷空気温度センサ34の測定値の上限値が記憶されている。例えば、原料物質が玄米の場合には、上限値は−90℃程度である。さらに、空気バルブ開度データ記憶部44には、冷空気温度センサ34の測定値と第1空気量調節バルブ26及び第2空気量調節バルブ28の開度の関係が記憶されている。具体的には、冷空気温度センサ34の測定値が原料物質の種類及び/又は冷凍機32への投入量に応じて予め規定される冷空気温度の上限値を下回る場合に常に第1空気量調節バルブ26を全開状態とし、第2空気量調節バルブ28を全閉状態とするようなデータが記憶されている。また、冷空気温度センサ34が上記上限値を超える場合には、空気供給手段22から空気通路20に供給された空気の少なくとも一部が蓄冷器30に導入されるように第1空気量調節バルブ26と第2空気量調節バルブ28の開度を調節するデータが記憶されており、上記上限値と測定値との温度差が大きいほど、第1空気量調節バルブ26の開度が小さくなり、第2空気量調節バルブ28の開度が大きくなるように調節されるようになっている。
【0034】
以下、本実施の形態の発電システム12に併設された冷凍粉砕装置10の動作について図1〜図3を参照して詳細に説明する。本実施の形態においては、上述のように冷凍粉砕が行われる原料物質が玄米を用いた例を説明し、この玄米を約−100℃の冷空気により好適に冷凍できるように、原料物質の冷凍機32への投入量、冷空気の供給量及び供給時間、更には粉砕機36の回転ブレードの回転数が規定されている。また、上述の冷空気温度センサ34により測定される冷空気の温度の上限値を−90℃と規定する。
【0035】
図3は、LNGタンク14から燃料通路18に供給されるLNGから得られる冷熱の量、すなわち、熱交換器15における熱交換でLNGを燃料ガスに変換して得られる冷熱の量(以下、供給冷熱量と表す)と、空気供給手段22から空気通路20に供給される空気を冷却して冷空気とするために必要な冷熱の量(以下、需要冷熱量と表す)と時間との相関関係を示すグラフである。なお、供給冷熱量を線グラフで示し、需要冷熱量を棒グラフで示す。
【0036】
発電システム12は、冷凍粉砕装置10及びその他の設備の駆動のために想定される需用電力量の変移に基づく運転パターンに従って運転され、夜間は需用電力量が比較的少ないのでLNGの燃料通路18への供給量が少ない低稼働で運転され、昼間は需用電力量の増加に伴ってLNGの燃料通路18への供給量が増加した中間稼働から高稼働で運転される。一方、冷凍粉砕装置10は、一時間毎のバッチ運転で駆動され、夜間は少量の玄米を粉砕し、昼間は多量の玄米を粉砕するように駆動される。
【0037】
そして、図に示される区間Aは、供給冷熱量が少なく、需要冷熱量に対して不足する区間を示している。本実施の形態では、区間A以外では、供給冷熱量が需要冷熱量に対して不足していないので、従来の冷凍粉砕装置と同様に、LNGとの熱交換によってのみ空気を冷却して約−100℃の冷空気を生成することができる。従って、この場合、冷空気温度センサ34における測定値が−100℃の近傍となるので、上述のように、制御部40により常に第1空気量調節バルブ26を全開状態、第2空気量調節バルブ28を全閉状態とするように開度の制御が行われる。
【0038】
本発明の特徴的な効果が現れる区間Aでは、供給冷熱量が需要冷熱量に対して不足している。この区間では、冷空気温度センサ34で測定される冷空気の温度が−100℃より上昇する。そして、冷空気温度センサ34の測定値が上限値である−90℃を上回ると、制御部40により第1空気量調節バルブ26及び第2空気量調節バルブ28の開度が適当に調節され、空気供給手段22により空気通路20に供給された空気の一部が、空気分岐路24に分岐し蓄冷器30に導入される。
【0039】
これによって、熱交換器15だけでなく一部の空気が蓄冷器30に導入されることとなる。熱交換器15に導入された空気は、従来と同様に、燃料通路18によってLNGタンク14から導入されるLNGと熱交換され、蓄冷器30に導入された空気は、その蓄冷器30の内部の蓄冷材に蓄えられている冷熱によって冷却され冷空気となり、再び空気分岐路24を通り合流点Bにおいて熱交換器15で冷却されて生成した冷空気と合流して、冷凍機32に供給される。
【0040】
本実施の形態の冷凍粉砕装置10によれば、供給冷熱量が需要冷熱量に対して不足することによって冷凍機32に供給される冷空気の温度が上限値を上回って上昇した場合であっても、蓄冷器30に蓄えられた冷熱によって不足分の冷熱を補い、冷空気の温度を下降させることができる。従って、発電機16に燃料として確実に燃料ガスを供給しつつ、冷凍機32に供給される冷空気の温度を一定の範囲に保つことができ、均一な粉度及び品質を有する玄米粉を得ることができる。
【0041】
(第2の実施の形態)
図4は、第2の実施の形態の発電システムの概要を示す説明図である。なお、第1の実施の形態と同様の要素には、同一の符号を付し、その説明を省略し、以下異なる点についてのみ説明する。
【0042】
本実施の形態では、燃料通路18に、LNGタンク14と熱交換器15の間の分岐点Cにおいて燃料通路18から分岐し、蓄冷器30を介して、熱交換器15の下流側の合流点Dにおいて再び燃料通路18に合流する燃料分岐路48が設けられている。
【0043】
そして、燃料通路18の分岐点Cの下流側で熱交換器15の上流側には、熱交換器15に導入するLNGの量を調節する第1LNG量調節バルブ50が設けられている。一方、燃料分岐路48の蓄冷器30の上流側には、蓄冷器30に導入するLNGの量を調節する第2LNG量調節バルブ52が設けられている。
【0044】
本実施の形態では、蓄冷器30に導入されるLNGの冷熱は、蓄冷器30が有する蓄冷材に蓄えられる。また、LNGは、冷熱を蓄冷材に与えた後、気化器54によって気化されて燃料ガスに変換され、燃料通路18を通る熱交換器15からの燃料ガスと合流点Dで合流して発電機16に供給される。
【0045】
図5は、本実施の形態における制御部40Aを用いた空気量制御システム41Aを説明するブロック図である。制御部40Aは、LNGバルブ開度データ記憶部56を有している。なお、本実施の形態では、第1空気量調節バルブ26、第2空気量調節バルブ28、第1LNG量調節バルブ50、第2LNG量調節バルブ52、及び制御部40Aが制御手段として機能している。
【0046】
LNGバルブ開度データ記憶部56には、まず、原料物質の種類及び/又は冷凍機32への投入量に応じて予め規定される冷空気温度センサ34の測定値の下限値が記憶されている。例えば、原料物質が玄米の場合には、下限値は−110℃程度である。さらに、LNGバルブ開度データ記憶部56には、冷空気温度センサ34の測定値と第1LNG量調節バルブ50及び第2LNG量調節バルブ52の開度の関係が記憶されている。具体的には、冷空気温度センサ34の測定値が原料物質の種類及び/又は冷凍機32への投入量に応じて予め規定される冷空気温度の下限値を上回る場合に常に第1LNG量調節バルブ50を全開状態とし、第2LNG量調節バルブ52を全閉状態とするようなデータが記憶されている。また、冷空気温度センサ34が上記下限値を下回る場合には、LNGタンク14から燃料通路18に供給されたLNGの少なくとも一部が蓄冷器30に導入されるように第1LNG量調節バルブ50と第2LNG量調節バルブ52の開度を調節するデータが記憶されており、上記下限値と測定値との温度差が大きいほど、第1LNG量調節バルブ50の開度が小さくなり、第2LNG量調節バルブ28の開度が大きくなるように調節されるようになっている。
【0047】
以下、本実施の形態の冷凍粉砕装置10の動作について図4〜図6を参照して詳細に説明する。なお、本実施の形態においては、上述のように冷凍粉砕が行われる原料物質が玄米を用いた例を説明し、この玄米を約−100℃の冷空気により好適に冷凍できるように、原料物質の冷凍機32への投入量及び空気供給量が規定されている。また、上述の冷空気温度センサ34により測定される冷空気の温度の上限値を−90℃と規定し、下限値を−110℃と規定する。
【0048】
図6は、LNGタンク14から燃料通路18に供給されるLNGから得られる冷熱の量、すなわち、熱交換器15における熱交換でLNGを燃料ガスに変換して得られる冷熱の量(以下、供給冷熱量と表す)と、空気供給手段22から空気通路20に供給される空気を冷却して冷空気とするために必要な冷熱の量(以下、需要冷熱量と表す)と時間との相関関係を示すグラフである。なお、供給冷熱量を線グラフで示し、需要冷熱量を棒グラフで示す。
【0049】
発電システム12は、冷凍粉砕装置10及びその他の設備の駆動のために想定される需用電力量の変移に基づく運転パターンに従って運転され、夜間は需用電力量が比較的少ないのでLNGの燃料通路18への供給量が少ない低稼働で運転され、昼間は需用電力量の増加に伴ってLNGの燃料通路18への供給量が増加した中間稼働から高稼働で運転される。一方、冷凍粉砕装置10は、一時間毎のバッチ運転で駆動され、夜間は少量の玄米を粉砕し、昼間は多量の玄米を粉砕するように駆動される。
【0050】
そして、図に示される区間Aは、供給冷熱量が少なく、需要冷熱量に対して不足する区間を示しており、区間Bは、供給冷熱量が多く、需要冷熱量に対して過剰になる区間を示している。本実施の形態では、区間A以外では、供給冷熱量が需要冷熱量に対して不足していないので、従来の冷凍粉砕装置と同様に、LNGとの熱交換によってのみ空気を冷却して約−100℃以下の冷空気を生成することができる。従って、この場合、冷空気温度センサ34における測定値が−100℃以下となるので、上述のように、制御部40Aにより常に第1空気量調節バルブ26を全開状態、第2空気量調節バルブ28を全閉状態とするように開度の制御が行われる。
【0051】
本発明の特徴的な効果が現れる区間Aでは、供給冷熱量が需要冷熱量に対して不足している。この区間では、冷空気温度センサ34で測定される冷空気の温度が−100℃より上昇する。そして、冷空気温度センサ34の測定値が上限値である−90℃を上回ると、制御部40により第1空気量調節バルブ26及び第2空気量調節バルブ28の開度が適当に調節され、空気供給手段22により空気通路20に供給された空気の一部が、空気分岐路24に分岐し蓄冷器30に導入される。
【0052】
これによって、熱交換器15だけでなく一部の空気が蓄冷器30に導入されることとなる。熱交換器15に導入された空気は、従来と同様に、燃料通路18によってLNGタンク14から導入されるLNGと熱交換され、蓄冷器30に導入された空気は、その蓄冷器30の内部の蓄冷材に蓄えられている冷熱によって冷却され冷空気となり、再び空気分岐路24を通り合流点Bにおいて熱交換器15で冷却されて生成した冷空気と合流して、冷凍機32に供給される。
【0053】
一方、区間Bでは、発電機16が高稼働であるために、供給冷熱量が需要冷熱量を上回る。従って、熱交換器15におけるLNGと空気との熱交換によって空気が過剰な冷熱を受け、生成される冷空気の温度が低くなる。このような冷空気の温度の低下により、冷空気温度センサ34における温度の測定値が−110℃を下回ると、空気量制御システム41Aによって第1LNG量調節バルブ50、第2LNG量調節バルブ52の開度が適当に調節され、LNGタンク14により燃料通路18に供給されたLNGの一部が、燃料分岐路48に分岐し蓄冷器30に導入される。
【0054】
これによって、LNGが熱交換器15だけでなく一部が蓄冷器30に導入されることとなる。熱交換器15に導入されたLNGは、従来と同様に、空気通路20によって空気供給手段22から熱交換器15に導入される空気と熱交換され、蓄冷器30に導入されたLNGは、その蓄冷器30の内部の蓄冷材に冷熱を蓄える。そして、蓄冷材に冷熱を蓄えたLNGは、気化器54において完全に気化されて燃料ガスとなり、燃料分岐路48を通り合流点Dにおいて熱交換器15から来た燃料通路18の燃料ガスと合流し、発電機16に供給される。
【0055】
従って、発電システム12におけるLNGの必要量が比較的多く、冷凍粉砕装置10におけるLNG必要量を上回ってしまう場合、すなわち、供給冷熱量が需要冷熱量を上回っている場合、余剰分の冷熱を蓄冷器30が有する蓄冷材に蓄えることができる。これにより、供給冷熱量が過剰であることによる冷空気の温度低下を防止することができるので、より均一な温度の冷空気を冷凍機に供給することができる。また、このようにして蓄えられた蓄冷材の冷熱を用いて、後の供給冷熱量が低下する区間Aのような時間帯の不足分の冷熱を補うことができる。
【0056】
なお、空気供給手段22による空気通路への空気の供給が停止している場合、すなわち、冷凍機32や粉砕機36の稼働が停止しており、冷凍粉砕が行われていない場合であっても、第1LNG量調節バルブ50を全閉状態とし、第2LNG量調節バルブ52を全開状態として、LNGタンク14から燃料通路18に供給されるLNGを全てを燃料分岐路48、すなわち、蓄冷器30に導入することにより、LNGの冷熱を蓄冷器30の蓄冷材に蓄えつつ、そのLNGを燃料ガスに変換して発電機16に供給することができる。
【0057】
本発明は上記第1及び第2の実施の形態に限られるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上記蓄冷器30を通過する空気分岐路24の空気通路20との分岐点A及び合流点Bは、上記第1及び第2の実施の形態におけるように、熱交換器15の上流側と下流側とに存在する必要はなく、分岐点Aと合流点Bの両方が熱交換器15の上流側に存在しても良く、分岐点Aと合流点Bの両方が熱交換器15の下流側に存在しても良い。また、上記蓄冷器30を通過する燃料分岐路48の燃料通路18との分岐点C及び合流点Dは、上記第1及び第2の実施の形態におけるように、熱交換器15の上流側と下流側とに存在する必要はなく、分岐点Cと合流点Dの両方が熱交換器15の上流側に存在しても良く、分岐点Cと合流点Dの両方が熱交換器15の下流側に存在しても良い。変形例を図7及び8に示す。図7の形態では、空気量調節バルブ60,62を図示しない制御部によって制御することで、第1の実施の形態の冷凍粉砕装置10とほぼ同様に作動する。図8の形態では、空気量調節バルブ64,66及びLNG量調節バルブ68,70,72,74を図示しない制御部によって制御することにより、第2の実施の形態の冷凍粉砕装置10とほぼ同様に作動する。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】第1の実施の形態の構成を概略的に説明する図である。
【図2】第1の実施の形態の空気量制御システムの概要を示すブロック図である。
【図3】第1の実施の形態における供給冷熱量、需要冷熱量及び時間の関係を示すグラフである。
【図4】第2の実施の形態の構成を概略的に説明する図である。
【図5】第2の実施の形態の空気量制御システムの概要を示すブロック図である。
【図6】第2の実施の形態における供給冷熱量、需要冷熱量及び時間の関係を示す図である。
【図7】本発明にかかる発電システムの別の構成例を示す図である。
【図8】本発明にかかる発電システムのさらに別の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
10 冷凍粉砕装置
12 発電システム
14 LNGタンク(液化天然ガス供給源)
15 熱交換器
16 発電機
18 燃料通路
20 空気通路
22 空気供給手段
24 空気分岐路
26 第1空気量調節バルブ(制御手段)
28 第2空気量調節バルブ(制御手段)
30 蓄冷器
32 冷凍機
34 冷空気温度センサ(温度測定手段)
36 粉砕機
40 制御部(制御手段)
48 燃料分岐路
50 第1LNG量調節バルブ(制御手段)
52 第2LNG量調節バルブ(制御手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液化天然ガスを液化天然ガス供給源と発電機とを熱交換器を介して接続する燃料通路に導入し、液化天然ガスを前記熱交換器において燃料ガスに変換して発電機に導入する発電システムに併設され、空気を空気供給手段と冷凍機とを前記熱交換器を介して接続する空気通路に導入し、前記熱交換器において空気と液化天然ガスとの熱交換により冷空気を生成し、該冷空気を前記冷凍機に導入して該冷凍機に投入された原料物質を冷凍し、冷凍後の原料物質を粉砕機で衝撃粉砕する冷凍粉砕装置であって、
空気を冷却することが可能な冷熱を蓄えた蓄冷材を有する蓄冷器と、
前記空気通路から分岐し、前記蓄冷器を通過した後、再び前記空気通路に合流する空気分岐路と、
前記冷凍機に導入される冷空気の温度を測定する温度測定手段と、
該温度測定手段により測定された温度が前記原料物質の種類及び/又は量に応じて規定された冷空気温度の上限値を上回る場合に、前記空気供給手段により供給された空気の少なくとも一部を前記空気分岐路に導入する制御手段と、
を備えたことを特徴とする冷凍粉砕装置。
【請求項2】
前記燃料通路から分岐し、前記蓄冷器を通過した後、再び前記燃料通路に合流する燃料分岐路を備え、
前記制御手段が、前記温度測定手段により測定された温度が前記原料物質の種類及び/又は量に応じて規定された冷空気温度の下限値を下回る場合に、前記液化天然ガス供給源から供給された液化天然ガスの少なくとも一部を前記燃料分岐路に導入することを特徴とする請求項1に記載の冷凍粉砕装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記空気供給手段による空気通路への空気の供給が停止している場合に、前記液化天然ガス供給源から供給された液化天然ガスの全てを前記燃料分岐路に導入することを特徴とする請求項2に記載の冷凍粉砕装置。
【請求項4】
前記蓄冷材が、−110℃〜−90℃の融点を示す潜熱蓄冷材であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷凍粉砕装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−161852(P2008−161852A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−485(P2007−485)
【出願日】平成19年1月5日(2007.1.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】