説明

冷凍装置におけるデフロスト方法及び冷凍装置

【課題】外気と熱交換する熱交換器を蒸発器としての使用する冷凍装置のデフロスト方法において、フロスト回数を低減することにより冷凍装置の運転効率を向上させること。
【解決手段】本発明に係る冷凍装置におけるデフロスト方法は、外気と熱交換する熱交換器を蒸発器として使用するとともに、この熱交換器の熱交換面に、特定のオルガノポリシロキサン100重量部と、特定のポリアルキル水素シロキサン2〜25重量部と、を含有する組成物からなる撥水性塗膜31aを形成し、外気の露点温度が0℃以下、かつ、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲において、外気中の水分を過冷却水状態の水滴35として熱交換面に結露させる工程及び熱交換面に結露して付着した過冷却水状態の水滴35を流下させる工程を経た後にデフロスト運転を行う。これによりフロスト遅延効果を得て、フロスト回数を減らす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍装置におけるデフロスト方法及び冷凍装置に関し、特に、外気と熱交換する熱交換器を蒸発器とする冷凍装置におけるデフロスト運転に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ヒートポンプ式空気調和機における室外側熱交換器のように、外気と熱交換する熱交換器を蒸発器とする冷凍装置の場合、外気が低くなって0℃以下の蒸発温度で運転される場合には、外気中の水分が熱交換器の熱交換面に氷結する、いわゆるフロスト現象が現れる。このようなフロスト現象が生じると、熱交換器における通風抵抗が増加して通風量が低下するとともに、熱交換器の熱交換面における空気側の熱伝達性能が低下し、熱交換の能力が大幅に低下する。このために、通常は氷結が熱交換面の全面に拡大した場合にデフロスト運転を行うようにされている。しかしながら、このようにデフロスト運転を行うと、その間の冷凍運転を正常に行うことができなくなるため、デフロストの回数を減ら努力や、デフロストの運転時間を短くする努力が行われている。
【0003】
外気の露点温度が0℃以上であって、かつ、外気と熱交換する冷媒の蒸発温度及び熱交換面の温度が0℃以下の冷凍運転の場合、冷凍運転中に熱交換面に外気中の水分が結露して付着する。また、この付着した水分が、熱交換面で冷却されて霜となる。また、デフロスト完了時に熱交換面に残留する水滴は、冷凍運転の再開に伴い冷却されて再凍結される。したがって、デフロストの回数を減らすためには、このような冷凍運転時に熱交換面に付着して滞留する水滴の量と、デフロスト完了後に残留する水滴の量を減少させることが必要であり、できるだけ早く流下させることが有効である。
【0004】
また、熱交換面上の霜の除去は、霜が融解されて水となって流されて除去されるものと、霜が部分的に融解した状態で熱交換面から霜が落下して除去されるものとがある。したがって、後者による霜の除去を増加させるとデフロスト時間を短縮することができる。
【0005】
また、このようにフロスト回数の低減及びデフロスト時間の短縮のためには、熱交換面の表面に撥水性塗膜を形成することが有効であると考えられている。このような塗膜材料としては、疎水性粒子と樹脂バインダーとを含有する組成物からなるものが特許文献1、特許文献2、特許文献3などにより知られている。また、このような塗膜材料として、特定のオルガノポリシロキサンと、反応性官能基を含有する特定の構造を有するポリアルキル水素シロキサンとを特定の割合で含有する塗膜形成組成物からなるものが特許文献4、特許文献5などにより知られている。
【特許文献1】特開平3−244996号公報
【特許文献2】特開平4−45181号公報
【特許文献3】特開平7−118577号公報
【特許文献4】特開2000−119642号公報
【特許文献5】特開2002−323298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の塗膜材料から成る撥水性塗膜は、冷凍運転時に熱交換面に付着して滞留する水滴の量と、デフロスト完了後に残留する水滴の量を減らすことにより、着霜量を減らすことに有効であると考えられていた。しかしながら、本発明者が外気と熱交換する熱交換器を蒸発器として使用する場合における着霜過程を研究したところ、さらに改善しうる余地のあることが解明された。
【0007】
本発明は、このような研究の成果に基づき成されたものであって、外気と熱交換する熱交換器を蒸発器として使用する冷凍装置のデフロスト方法において、フロスト回数を低減することにより冷凍装置の運転効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る冷凍装置におけるデフロスト方法は、外気と熱交換する熱交換器を蒸発器として使用するとともに、この熱交換器の熱交換面に、(A)平均単位式(1)で表され、分子量が300以上、10,000以下の範囲にあるオルガノポリシロキサン100重量部と、(B)平均単位式(2)で表されるポリアルキル水素シロキサン2〜25重量部と、を含有する組成物からなる撥水性塗膜が施され、外気の露点温度が0℃以下であって、かつ、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲において、外気中の水分を過冷却水状態の水滴として熱交換面に結露させる工程及び熱交換面に結露して付着した過冷却水状態の水滴を流下させる工程を経た後に、デフロスト運転を開始することを特徴とする。
【0009】
【化3】

(pは1≦p<3の範囲の数であり、aは0又は正の数、bは正の数であって、0.5≦b/(a+b)≦1.0である。R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、Rは炭素数1〜5のアルコキシ基又は水酸基から選ばれる置換基、但し、Rのうち70モル%以上は炭素数1〜5のアルコキシ基である。)
【0010】
【化4】

(mは0又は正の数、nは正の数であって、〔m+n〕の値は5〜500、〔m/(m+n)〕の値は0〜0.3である。R、R、Rは独立に炭素数1〜5のアルキル基又は水素原子、RおよびRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基である。但し、m>0のとき、末端シリル基のケイ素原子に結合する水素原子は0〜2個であり、m=0のとき、末端シリル基のケイ素原子に結合する水素原子は1又は2個である。)
本発明者は、熱交換器の熱交換面に上記撥水性塗膜を形成すると、外気の露点温度が0℃以下であっても、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲においては、外気中の水分が過冷却水状態で熱交換器の熱交換面に付着することを確認した。また、本発明者は、熱交換器の熱交換面に付着した過冷却水状態の水滴は、上記撥水性塗膜が良好な滑水性能を示すことにより、水滴自身の成長による自重の増加により過冷却水状態の水滴のまま流下することを確認した。また、本発明者は、この過冷却水状態の水滴を流下させる工程を経た後にデフロスト運転を行うことによりフロスト遅延効果を得ることができ、これによりフロスト回数を低減し、冷凍装置の冷凍能力を増大し得ることを確認した。なお、本明細書において特定の温度とは、外気中の水分が過冷却水状態で前記撥水性塗膜を形成した熱交換器の熱交換面に水滴となって付着し、付着した水滴がそれ自身の成長により自重で流下することが可能な下限の外気温度をいう。この特定の温度は、冷凍装置の仕様により異なるが、0℃より数℃低い温度となることが解明されている。
【0011】
また、前記撥水性塗膜は、1.0〜1.5μmとすることが好ましいことが実験的に確認された。撥水性塗膜の厚さは、撥水性塗膜による熱伝導性の低下を抑制しつつ撥水性性能及び滑水性能を確保するという観点から、熱交換面の地肌の表面粗さによる影響を打ち消して滑らかな表面を得ることのできる程度の膜厚が好ましく、具体的には1.0〜1.5μmとすることが好ましいことが確認された。
【0012】
また、前記冷凍装置をヒートポンプ式空気調和機としたデフロスト方法の場合には、外気の露点温度が0℃以下であっても外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲においてデフロストによる能力低下が抑制されるので快適な暖房運転を行うことができる。
【0013】
前記熱交換器は、アルミニウム製のプレートフィンが鉛直方向に配置され、銅管製の熱交換チューブが水平方向に配置されたクロスフィンコイル式熱交換器とするのが好ましい。このような熱交換器とすることにより過冷却水状態の水滴を円滑に流下させることができる。
【0014】
また、本発明に係る冷凍装置は、上記のデフロスト方法を実行することを特徴とする。したがって、本発明に係る冷凍装置は、外気の露点温度が0℃以下の場合であって、かつ、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲においては、フロスト遅延効果により冷凍能力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る冷凍装置におけるデフロスト方法によれば、外気の露点温度が0℃以下であって、かつ、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲において、外気中の水分を過冷却水状態で熱交換器の熱交換面に結露させ、結露した過冷却水状態の水滴を流下させる工程を経てデフロスト運転を行うことにより、フロスト回数を低減させて冷凍能力を増大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る冷凍装置としてのヒートポンプ式空気調和機について、図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る冷凍装置としてのヒートポンプ式空気調和機の冷媒回路図であり、図2は同空気調和機に用いられる室外側熱交換器の通風側から見た正面図である。図3は、同空気調和機における制御装置の機能ブロック図である。
【0017】
本発明に係るヒートポンプ式空気調和機は、図1に示すような冷媒回路を備えて構成されている。圧縮機1の吐出口及び吸入口に対し四路切換弁2が接続され、この四路切換弁2の切換ポート間に室外側熱交換器3、膨張弁4、室内側熱交換器5が順次接続されて冷媒回路が構成されている。室外側熱交換器3は、室外ファン3aを備え、室内側熱交換器5は、室内ファン5aを備えている。また、この冷媒回路において、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲におけるデフロストを行うためのデフロスト回路として、圧縮機1の吐出管1aと室外側熱交換器3の暖房運転時における入口側との間にホットガスバイパス回路10が形成されている。また、このホットガスバイパス回路10には、デフロスト時の冷媒流を制御するホットガスバイパスバルブ11が設置されている。
【0018】
室外側熱交換器3は、図2に示すように、いわゆるクロスフィンコイル式熱交換器であり、熱交換面を形成する多数のアルミニウム製のプレートフィン31を一定の間隔をあけて空気流の流通方向に直交する方向に並べられている。また、これらプレートフィン31に対して、内部を冷媒が流通する銅管製の熱交換チューブ32が貫通するように取り付けられている。なお、プレートフィン31は、フラットフィン、スリットフィン、ワッフルフィンなどの板状のフィン何れでもよい。そして、熱交換面を成すプレートフィン31の表面には撥水性塗膜31aが形成されている。
【0019】
撥水性塗膜31aは、特許文献4などにより公知のポリキシロキサン系の組成物からなる着霜抑制塗料を塗布、硬化させたものである。なお、撥水性を備えた着霜抑制塗料としてはいろいろなものが知られているが、本発明に使用できる撥水性塗膜31a形成用の組成物は、特許文献4により公知のオルガノポリシロキサンとポリアルキル水素シロキサンとを含有したものである。
【0020】
オルガノポリシロキサンは、加水分解縮合生成物であり、レジンないしはレジン状の構造をとるものであり、RSiO3/2単位及びR SiO(3−p)/2単位を繰り返し単位とする前記平均単位式(1)によって示されるものである。平均単位式(1)において、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を示し、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基などが挙げられ、特にメチル基が好ましい。また、平均単位式(1)におけるRは、水酸基とアルコキシ基との合計に対するアルコキシ基の割合が70〜100モル%となる、水酸基又は炭素数1〜5のアルコキシ基を示す。ここで、水酸基とアルコキシ基との合計に対するアルコキシ基のモル数の割合が過小であると、得られる硬化塗膜の撥水性能の耐久性が低下するので好ましくない。なお、オルガノポリシロキサンは、置換基であるR〜Rが上記以外の官能基を有する単位や、1官能基性単位〔RSiO1/2〕、2官能基性単位〔RSiO2/2〕(R及びRは、有機基である)、4官能基性単位〔SiO4/2〕などを、撥水性能を阻害しない範囲で含有していてもよい。
【0021】
また、平均単位式(1)において、pは1≦p<3の範囲の数であり、aは0又は正の数、bは正の数を示し、かつ0.5≦b/(a+b)≦1.0である。この値が過小であると、得られる硬化塗膜の撥水性が低下したものとなる。
【0022】
オルガノポリシロキサンよりなる(A)の重量平均分子量(Mw)は300以上で10,000以下の範囲であり、特により望ましい塗膜強度と撥水性とを得るためには300以上で5,000以下の範囲であることが好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)が過小である場合には、得られる撥水性塗膜31aの強度が低下し、一方、重量平均分子量(Mw)が過大である場合には、上記の〔b/(a+b)〕の条件を満たすオルガノポリシロキサンは、その合成が容易でないものとなる。
【0023】
ポリアルキル水素シロキサンは、実質的に平均構造が、RSiHO2/2単位及びRSiO2/2単位を含有する前記平均単位式(2)によって示され、平均単位式(2)中のR、R及びRは独立に炭素数1〜5のアルキル基又は水素原子を示し、RとRは、それぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基を示す。このポリアルキル水素シロキサンは、置換基であるR、R、R、R、Rが上記以外の官能基を有する単位や、3官能基性単位〔RSiO3/2〕(Rは、有機基である。)などを、撥水性能を阻害しない範囲で含有していてもよい。mは0又は正の数、nは正の数を示し、〔m+n〕の値が5〜500であり、特に10〜350であることが好ましく、かつ〔m/(m+n)〕の値が0〜0.3である。さらに、mが0を超える場合には、末端シリル基のケイ素原子に結合する水素原子が0〜2個であり、mが0の場合には、末端シリル基のケイ素原子に結合する水素原子が1又は2個であることが必要である。ここで、〔m+n〕の値が過小であると、得られる硬化塗膜に良好な撥水効果が得られず、一方、〔m+n〕の値が過大であると得られる硬化塗膜の塗膜強度が低下したものとなる傾向にある。また〔m/(m+n)〕の値が過大であると、残留する水素原子が多量になるために、得られる硬化塗膜の撥水性が低下したものとなる傾向にある。
【0024】
また、オルガノポリシロキサンとポリアルキル水素シロキサンとの含有割合は、オルガノポリシロキサン100重量部に対して、ポリアルキル水素シロキサンが2〜25重量部であり、特に5〜20重量部であることが好ましい。ここで、ポリアルキル水素シロキサンの含有割合が過小になると、得られる硬化塗膜に良好な撥水効果が得られなくなり、一方、その含有割合が過大になると、得られる硬化塗膜の機械的な性状が低下する可能性がある。
【0025】
また、この発明に用いられる撥水性塗膜31a形成用の組成物は、必要に応じて硬化触媒と適宜の希釈溶剤を添加して、液状組成物を調製し、この液状組成物をプレートフィン31上に適宜の手段により塗布又は含浸させて、それを加熱硬化させることにより、目的とする撥水性塗膜31aがプレートフィン31の表面に形成される。また、この発明に用いられる撥水性塗膜31a形成用の組成物は、加熱のみによって硬化させることも可能であるが、液状組成物に硬化触媒を添加して用いることもできる。
【0026】
また、液状組成物を適用する手段としては、浸漬塗布、含浸法、ロールコーティング、フローコーティング、刷毛塗り法、スプレー法などを利用することができる。
次に、室外側熱交換器3のプレートフィン31の熱交換面に形成する撥水性塗膜31aの厚さは、プレートフィン31のアルミニウム製素地の表面粗さに左右されない滑らかな表面を得ることと、熱伝導性の低下を考慮して、1〜1.5μmが最適であることが実験的に確認された。
【0027】
また、室外側熱交換器3におけるプレートフィン31の熱交換面に形成する撥水性塗膜31a中には、撥水効果を妨げない程度に任意の添加物が含まれていてもよい。ここに添加物の具体例としては、顔料、染料、UVインジケータ、防黴剤、防腐剤、老化防止剤、防食剤、防錆剤、帯電防止剤、難燃剤、防汚剤などを挙げることができる。
【0028】
また、室外側熱交換器3の下方には、室外側熱交換器3から流下するドレンを受け、これを円滑に排出するために、一方向に傾斜させたドレンパン33が配置されている。また、このドレンパン33の上面にも、滴下したドレンの排出を良好にするために、前述の撥水性塗膜31aが施されている。
【0029】
上記構成の空気調和機は、図3に示すような制御装置を備えている。圧縮機1は、圧縮機1を発停及び回転数制御する圧縮機駆動部21により運転され、室内ファン5a及び室外ファン3aは、室内ファン5a及び室外ファン3aの発停及び回転数制御を行う室外ファン駆動部22及び室内ファン駆動部23により運転される。また、これら圧縮機1、室外ファン3a,及び室内ファン5aの運転モードや、四路切換弁2、膨張弁4、及びホットガスバイパスバルブ11の切換制御、開度制御又は開閉制御は、操作部24からの操作指令及びフロスト検知部25などからの検知信号が制御部20に送信され、制御部20がこれら指令及び信号に基づき制御している。フロスト検知部25には、外気サーモ26で検知された外気温度、室外側熱交換器3における空気出入口間の差圧を検知する差圧センサ27により検知された室外側熱交換器3の通風抵抗値が送信される。
【0030】
また、フロスト検知部25にはメモリー28が付設されている。このメモリー28には、予め設定された外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲において、室外側熱交換器3のデフロスト開始時期を決定する第1通風抵抗値と、外気の乾球温度が特定の温度以下の範囲において、室外側熱交換器3のデフロスト開始時期を決定する第2通風抵抗値とが格納されている。そして、フロスト検知部25は、外気温度が特定の温度を超える範囲においては、差圧センサ27から送信される通風抵抗値が第1通風抵抗値まで上昇したときに高温用のデフロストロス開始信号を制御部20に送信する。また、フロスト検知部25は、外気温度が特定の温度以下の範囲においては、差圧センサ27から送信される通風抵抗値が第2通風抵抗値まで上昇したときに低温用のデフロストロス開始信号を制御部に送信する。このように、本発明においては、外気温度が特定の温度を超えているか以下であるかにより、デフロスト開始時期の検知方法を変えるとともに、デフロスト運転方法を変えることができるように構成されている。
【0031】
上記ヒートポンプ式空気調和機は、次のように運転される。
冷房運転時には、操作部からの冷房運転指令に基づき、四路切換弁2を図1に示す実線側に切り換え、圧縮機1、室外ファン3a及び室内ファン5aが運転される。圧縮機1が駆動されることにより、圧縮機1から吐出された吐出ガスが四路切換弁2、室外側熱交換器3、膨張弁4、室内側熱交換器5、四路切換弁2の順に循環して圧縮機1に吸入される。このような冷媒の循環によって、室外側熱交換器3は凝縮器として動作し、室内側熱交換器5は蒸発器として動作する。凝縮器として動作する室外側熱交換器3では、高圧のガス冷媒が外気と熱交換を行って凝縮する。これによって高圧の冷媒から外気に対して熱が放出される。蒸発器として動作する室内側熱交換器5では、膨張弁4により減圧された低圧の液冷媒が室内空気と熱交換を行って蒸発する。これによって室内空気が低圧の冷媒によって吸熱されて冷却される。
【0032】
一方、暖房運転時には、四路切換弁2を図1に示す破線側に切り換え、圧縮機1、室外ファン3a及び室内ファン5aが運転される。圧縮機1が駆動されることにより、圧縮機1から吐出された吐出ガスが四路切換弁2、室内側熱交換器5、膨張弁4、室外側熱交換器3、四路切換弁2の順に循環して圧縮機1に吸入される。このような冷媒の循環によって、室内側熱交換器5が凝縮器として動作し、室外側熱交換器3が蒸発器として動作する。凝縮器として動作する室内側熱交換器5では、高圧のガス冷媒が室内空気と熱交換を行って凝縮する。これによって室内空気が高圧冷媒からの放熱によって加熱される。一方、蒸発器として動作する室外側熱交換器3では、膨張弁4で減圧された低圧の液冷媒が外気と熱交換を行って蒸発する。これによって外気の熱が低圧の冷媒によって吸熱される。
【0033】
この暖房運転時において、外気温度が低くなるときには、室外側熱交換器3における冷媒の蒸発温度も外気より数℃から10数℃低い温度となり、室外側熱交換器3で冷却された外気中の水分が熱交換面に霜となってプレートフィンに付着する。また、この霜の成長を放置すると、霜が室外側熱交換器3の熱交換面全体に広がり室外側熱交換器3の熱交換器能力が著しく低下する。そこで、一般に、ヒートポンプ式空気調和機においては、室外側熱交換器の熱交換面に霜が付着し、室外側熱交換器の熱交換能力が低下した場合にデフロスト運転が行われている。以下、この発明の特徴を成すデフロスト運転について説明する。
【0034】
外気の露点温度が0℃以上であって、室外側熱交換器3の熱交換面が0℃以下となる程度に蒸発温度が低い場合は、外気中の水分が室外側熱交換器3の熱交換面に結露して付着し、暖房運転が長時間行われることにより結露水が霜になることがある。しかし、この場合は、室外側熱交換器3のプレートフィン31に前述の撥水性塗膜31aが形成されているため、熱交換面に付着している結露水が少なくなり、着霜時間が遅延されデフロスト回数が減少される。この点については、適宜の撥水性塗膜31aが熱交換面に形成された従来のものも略同様である。また、この場合の室外側熱交換器3の着霜状況は、室外側熱交換器出入口間の通風抵抗値により検知され、正サイクルデフロスト等のデフロスト運転が行われている。
【0035】
正サイクルデフロスト運転は、前述の暖房運転サイクルで冷媒を循環させながら、ホットガスバイパスバルブ11を開放し、ホットガスバイパス回路10を通じ室外側熱交換器3の入口側に圧縮機1の吐出ガスを減圧してバイパスするものである。このホットガスバイパスが行われることにより、室外側熱交換器3の温度が上昇されて霜が融解される。
【0036】
次に、図4に、適宜の撥水性塗膜31aが熱交換器表面に施された従来のヒートポンプ式空気調和機において、外気の露点温度が0℃以下であって、かつ、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲における従来のデフロスト運転に至る工程を示す。この図に示すように、従来のヒートポンプ式空気調和機では、室外側熱交換器3に外気中の水分が霜38となってプレートフィン31の熱交換面に付着する工程(図4(a))、熱交換面に付着した霜38が大きく成長する工程(図4(b))、霜38がさらに成長して熱交換面全体に広がりプレートフィン31間を埋めるように成長する工程(図4(c))を経て、デフロスト運転が開始されていた。このデフロスト運転は、一般的には逆サイクルデフロストが行われていた。
【0037】
これに対し、本発明においては室外側熱交換器3に前述の特定の組成物からなる撥水性塗膜31aが形成されているため、外気の露点温度が0℃以下であって、かつ、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲において、図5に示すような工程を経てデフロスト運転が行われる。図5に示すように、本発明では、外気中の水分が過冷却水状態の水滴35となってプレートフィン31の熱交換面に付着する工程(図5(a))、過冷却水状態の水滴35が大きく成長する工程(図5(b))、過冷却水状態の水滴35が自重により流下する工程(図5(c))、水滴35が氷結し霜38となる工程(図5(d))を経てデフロスト運転が行われる。なお、図5(d)の状態でデフロスト運転が行われない場合は、図4(c)のように、霜38が熱交換面全体に広がる状態となるが、本発明ではその前にデフロスト運転を行っている。この場合のデフロスト運転は、従来のものと比較して、熱交換面に霜の付着している量が少ない状態でデフロスト運転が行われることから、冷凍装置の通常の運転に大きな影響を与えない正サイクルデフロスト運転が行われる。
【0038】
また、本発明において、外気の露点温度が0℃以下であって、外気の乾球温度が特定の温度以下の範囲では、前述の従来のヒートポンプ式の場合と同様の工程を経てデフロスト運転が行われる。すなわち、外気中の水分が霜38となってプレートフィン31の熱交換面に付着する工程、運転時間の経過とともに熱交換面に付着していた霜38が大きく成長する工程、霜38がさらに成長して熱交換面全体に広がりプレートフィン31間を埋めるように成長する工程を経て、デフロスト運転が開始される。また、この場合のデフロスト運転は、霜の融解に必要な熱量が大きくなるので逆サイクルデフロストが行われる。
【0039】
フロスト検知部25は、外気の露点温度が0℃以下であって、外気サーモ26が検出する外気の乾球温度が特定の温度を超える場合は、室外側熱交換器3が図5(d)の状態になるときの第1通風抵抗値を差圧センサ27が検出することにより、高温用のデフロスト開始信号を送信するように構成されている。また、フロスト検知部25は、外気サーモ26が検出する外気の乾球温度が特定の温度以下の場合は、室外側熱交換器3が図5(c)の状態になるときの第2通風抵抗値を差圧センサ27が検出することにより、低温用のデフロスト開始信号を送信するように構成されている。
【0040】
本実施の形態に係る冷凍装置におけるデフロスト方法によれば、以上のように構成されており、次のような効果を奏することができる。
(1)蒸発器として作用する室外側熱交換器3の熱交換面に、(A)平均単位式(1)で表され、分子量が300以上、10,000以下の範囲にあるオルガノポリシロキサン100重量部と、(B)平均単位式(2)で表されるポリアルキル水素シロキサン2〜25重量部と、を含有する組成物からなる撥水性塗膜31aがを形成されている。また、外気の露点温度が0℃以下であって、外気温度が特定の温度を超える範囲において、外気中の水分を過冷却水状態の水滴35として熱交換面に結露させる工程及び熱交換面に結露して付着した過冷却水状態の水滴35を流下させる工程を経た後に、デフロスト運転を開始している。これにより、フロスト遅延効果を得ることができ、その結果、フロスト回数を低減して、冷凍能力を増大することができる。
【0041】
(2)また、撥水性塗膜31aの膜厚を1.0〜1.5μmとすることにより、熱伝導性の低下を抑制しつつ、アルミニウム製のプレートフィンの表面粗さに影響されない滑らかな表面を得ることができ、特定の外気温度を超える範囲において過冷却水状態の水滴35を円滑に流下させることができる。
【0042】
(3)冷凍装置をヒートポンプ式空気調和機としたデフロスト方法の場合には、外気の露点温度が0℃以下であっても外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲においてデフロストによる能力低下が抑制されるので快適な暖房運転を行うことができる。
【0043】
(4)また、熱交換器を、アルミニウム製のプレートフィン31が鉛直方向に配置され、銅管製の熱交換チューブ32が水平方向に配置されたクロスフィンコイル式熱交換器とすることにより、特定の外気温度を超える範囲において、過冷却水状態の水滴35を円滑に流下させることができ、フロスト回数を効率よく減少させることができる。
【0044】
(5)また、本実施の形態に係る冷凍装置は、前述のデフロスト方法を実行することにより、外気の露点温度が0℃以下の場合であって、かつ、外気の乾球温度が特定の温度を越える外気条件において、フロスト遅延効果により冷凍能力を向上させることができる。
【0045】
(変形例)
上記実施の形態において以下のように変更することもできる。
・本実施の形態においては、室外側熱交換器3の着霜過程に対応して室外側熱交換器3の出口の冷媒温度が変化するとともに、その変化率が変化する。したがって、室外側熱交換器3の通風抵抗値の変化によりフロスト状態を検出する代わりに、室外側熱交換器3の出口冷媒温度の一定時間当たりの変化を検知するセンサを設け、このセンサにより検知される室外側熱交換器3の出口冷媒温度の一定時間当たりの変化量を測定することにより、デフロスト開始状態を検出するようにしてもよい。
【0046】
・デフロスト運転として、外気の乾球温度が特定の温度を越える範囲においては正サイクルデフロスト運転が行われ、外気の乾球温度が特定の温度以下の範囲においては、逆サイクルデフロスト運転を行うように形成されているが、これらデフロスト運転は、他の公知のデフロスト運転に変更することは可能である。他の公知のデフロストロス運転としては、例えば、単純ホットガスバイパス、電気ヒータ方式などがある。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施の形態に係る冷凍装置としてのヒートポンプ式空気調和機の冷媒回路図である。
【図2】同空気調和機に用いられる室外側熱交換器の通風側から見た正面図である。
【図3】同空気調和機における制御装置の機能ブロック図である。
【図4】外気の露点温度が0℃以下であって、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲における従来のデフロスト運転の工程説明図であり、(a)は霜が付着する工程図、(b)は霜が成長する工程図、(c)は霜がさらに成長して熱交換器全面を埋めるように成長する工程図である。
【図5】外気の露点温度が0℃以下であって、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲における本発明のデフロスト運転の工程説明図であり、(a)は熱交換面に過冷却水状態の水滴が付着する工程図、(b)は過冷却水状態の水滴が成長する工程図、(c)は過冷却水状態の水滴が流下する工程図、(d)は水滴が過冷却水状態を解消し凍結し始める工程図である。
【符号の説明】
【0048】
3…(室外側)熱交換器、31…プレートフィン、31a…撥水性塗膜、32…熱交換チュ-ブ、35…水滴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外気と熱交換する熱交換器を蒸発器として使用するとともに、この熱交換器の熱交換面に、(A)平均単位式(1)で表され、分子量が300以上、10,000以下の範囲にあるオルガノポリシロキサン100重量部と、(B)平均単位式(2)で表されるポリアルキル水素シロキサン2〜25重量部と、を含有する組成物からなる撥水性塗膜が施され、
外気の露点温度が0℃以下、かつ、外気の乾球温度が特定の温度を超える範囲において、外気中の水分を過冷却水状態の水滴として熱交換面に結露させる工程及び熱交換面に結露して付着した過冷却水状態の水滴を流下させる工程を経た後にデフロスト運転を開始する
ことを特徴とする冷凍装置におけるデフロスト方法。
【化1】

(pは1≦p<3の範囲の数であり、aは0又は正の数、bは正の数であって、0.5≦b/(a+b)≦1.0である。R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基、Rは炭素数1〜5のアルコキシ基又は水酸基から選ばれる置換基、但し、Rのうち70モル%以上は炭素数1〜5のアルコキシ基である。)
【化2】

(mは0又は正の数、nは正の数であって、〔m+n〕の値は5〜500、〔m/(m+n)〕の値は0〜0.3である。R、R、Rは独立に炭素数1〜5のアルキル基又は水素原子、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基である。但し、m>0のとき、末端シリル基のケイ素原子に結合する水素原子は0〜2個であり、m=0のとき、末端シリル基のケイ素原子に結合する水素原子は1又は2個である。)
【請求項2】
前記撥水性塗膜を1.0〜1.5μmとしたことを特徴とする請求項1記載の冷凍装置におけるデフロスト方法。
【請求項3】
前記冷凍装置がヒートポンプ式空気調和機であることを特徴とする請求項1又は2記載の冷凍装置におけるデフロスト方法。
【請求項4】
前記熱交換器は、アルミニウム製のプレートフィンが鉛直方向に配置され、銅管製の熱交換チューブが水平方向に配置されたクロスフィンコイル式熱交換器であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の冷凍装置におけるデフロスト方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の冷凍装置におけるデフロスト方法を実施することを特徴とする冷凍装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−60162(P2010−60162A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223934(P2008−223934)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】