説明

冷却ファン

【課題】射出成型時のソリを抑えることができる繊維強化樹脂製の冷却ファンを得ること。
【解決手段】繊維強化樹脂により射出成型され、回転軸に嵌合するボス部13と、前記ボス部13に接続する主板14と、前記主板14上に設けられた複数の羽根15と、前記主板14に形成された抜き孔16と、を備える冷却ファン10において、前記抜き孔16を三角形又は五角形に形成し、一つの頂点を径方向外側に配置し、前記頂点の対辺を径方向内側に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等により駆動される繊維強化樹脂製の冷却ファンに関する。
【背景技術】
【0002】
冷却ファンは、モータの回転軸に取付けられるが、モータの軸受交換等の分解点検時には、冷却ファンを回転軸から取外す必要がある。従来、冷却ファンは、樹脂製が多く、羽根外径の7〜8割の径の主板を有しており、主板には、冷却ファンを回転軸から取外すときに抜き具を掛けるための略矩形の抜き孔が、軸対称に2箇所設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実願昭63−130627号(実開平2−53258号)のマイクロフィルム(第4、5頁、第1〜第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の冷却ファンは、起動・停止時や、運転中の遠心力に対する強度を確保するために、素材として、ガラス繊維を混合させた繊維強化樹脂を用いると、射出成型時にソリ(反り)が発生する、という問題があった。
【0005】
冷却ファンは、金型の中央ボス部より、ガラス繊維を混合させた樹脂が注入されて射出成型される。この樹脂が金型内で放射方向(半径方向)に流れ、主板におけるガラス繊維は、抜き孔のないところでは放射方向に配向されるのに対し、抜き孔のあるところでは、抜き孔を迂回するため、矩形の抜き孔の外側では、放射方向に対して略直角な周方向に配向される。そのため、主板のガラス繊維の配向が乱れ、冷却ファンのソリが増大する。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、射出成型時のソリを抑えることができる繊維強化樹脂製の冷却ファンを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、繊維強化樹脂により射出成型され、回転軸に嵌合するボス部と、前記ボス部に接続する主板と、前記主板上に設けられた複数の羽根と、前記主板に形成された抜き孔と、を備える冷却ファンにおいて、前記抜き孔を三角形又は五角形に形成し、一つの頂点を径方向外側に配置し、前記頂点の対辺を径方向内側に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、繊維強化樹脂製の冷却ファンの射出成型時のソリを抑えることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明にかかる繊維強化樹脂製の冷却ファンの実施の形態1を示す正面図である。
【図2】図2は、図1の抜き孔付近の部分拡大図である。
【図3】図3は、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図4は、本発明にかかる繊維強化樹脂製の冷却ファンの実施の形態2を示す正面図である。
【図5】図5は、図4の抜き孔付近の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる繊維強化樹脂製の冷却ファンの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本発明にかかる繊維強化樹脂製の冷却ファンの実施の形態1を示す正面図であり、図2は、図1の抜き孔付近の部分拡大図であり、図3は、図1のA−A線に沿う断面図である。
【0012】
図1〜図3に示すように、実施の形態1の繊維強化樹脂製の冷却ファン10は、図示しないモータ等の回転軸と嵌合する軸孔11及びキー溝12を有するボス部13と、ボス部13に接続され外周側に円錐状の傾斜面を有する円形の主板14と、主板14上に放射状に設けられた11枚の羽根15と、を備えている。
【0013】
主板14の外径は、冷却ファン10の外径の7〜8割となっている。主板14の内周側には、冷却ファン10を回転軸から取外すときに抜き具を掛けるための三角形の抜き孔16が、軸対称に2箇所設けられている。三角形の抜き孔16は、一つの頂点を径方向外側に配置し、頂点の対辺を径方向内側に配置している。頂点の内角αは、約60°であり、三角形の頂点と冷却ファンの中心とを通る線に対する左右の辺の傾きは約30°である。
【0014】
上記の形状の金型のボス部13のゲートより、ガラス繊維を混合した樹脂を注入すると、この樹脂が金型内で放射方向(半径方向)に流れ、主板14の抜き孔16のないところでは、ガラス繊維の配向31は放射状になり、三角形の抜き孔16の側部でのガラス繊維の配向32及び抜き孔16の頂点付近でのガラス繊維の配向33も略放射状になり、主板14全体のガラス繊維の配向差を小さくし、冷却ファン10の成型ソリを抑えることができる。
【0015】
実施の形態2.
図4は、本発明にかかる繊維強化樹脂製の冷却ファンの実施の形態2を示す正面図であり、図5は、図4の抜き孔近傍の部分拡大図である。
【0016】
実施の形態2の冷却ファン20が実施の形態1の冷却ファン10と異なるところは、抜き孔26の形状のみであり、他の部分は異なるところはない。抜き孔26の形状について説明し、他の部分の説明は省略する。
【0017】
図4及び図5に示すように、主板14の内周側には、実施の形態2の冷却ファン20を回転軸から取外すときに抜き具を掛けるための五角形の抜き孔26が、軸対称に2箇所設けられている。五角形の抜き孔26は、一つの頂点を径方向外側に配置し、頂点の対辺を径方向内側に配置している。頂点の内角βは、110°であり、五角形の頂点と冷却ファンの中心とを通る線に対する左右の辺の傾きは55°である。
【0018】
上記の形状の金型のボス部13のゲートより、ガラス繊維を混合した樹脂を注入すると、この樹脂が金型内で放射方向(半径方向)に流れ、主板14の抜き孔26のないところでは、ガラス繊維の配向31は放射状になり、五角形の抜き孔26の側部でのガラス繊維の配向32及び抜き孔26の頂点付近でのガラス繊維の配向33も略放射状になり、主板14全体のガラス繊維の配向差を小さくし、冷却ファン20の成型ソリを抑えることができる。
【0019】
なお、実施の形態1の冷却ファン10においては、三角形の抜き孔16の頂点の内角を約60°とし、実施の形態2の冷却ファン20においては、五角形の抜き孔26の頂点の内角を110°としたが、いずれの場合においても、ガラス繊維の配向差を小さくするために、頂点の内角を110°以下にするのが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように、本発明にかかる冷却ファンは、繊維強化樹脂材料で製作する冷却ファンに適している。
【符号の説明】
【0021】
10、20 冷却ファン
11 軸孔
12 キー溝
13 ボス部
14 主板
15 羽根
16、26 抜き孔
31、32、33 ガラス繊維の配向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維強化樹脂により射出成型され、回転軸に嵌合するボス部と、前記ボス部に接続する主板と、前記主板上に設けられた複数の羽根と、前記主板に形成された抜き孔と、を備える冷却ファンにおいて、
前記抜き孔を三角形又は五角形に形成し、一つの頂点を径方向外側に配置し、前記頂点の対辺を径方向内側に配置したことを特徴とする冷却ファン。
【請求項2】
前記頂点の内角は、110°以下であることを特徴とする請求項1に記載の冷却ファン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−38459(P2011−38459A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185807(P2009−185807)
【出願日】平成21年8月10日(2009.8.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】