説明

冷却具に用いる保冷剤用断熱カバー

【課題】 冷却具に用いて対象物を冷却する場合に、冷却具の使用時間を長引かせることができる断熱カバーを提供する。
【解決手段】 アルミニウム層を含んで形成されてなる断熱シートで保冷剤が出し入れ可能に形成された筒または袋であって、冷却対象物に向かう面の一部に対象物を冷却するための開口部を有する、冷却具に備えて使用する保冷剤用断熱カバー、特に前記保冷剤および断熱カバーが扁平状であって、前記断熱カバーの側部の周縁部を残して冷却するための開口部が形成されてなる保冷剤用断熱カバーを用いると、冷却具の使用時間を長引かせることができると共に、対象物を冷却するための開口部の形状、大きさ、数などを変えた断熱カバーを用いれば冷却対象物の冷却温度を選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却具に用いる保冷剤用断熱カバーに関する。詳しくは冷凍した保冷剤で人体などを冷却する冷却具に用いる特定の形態の保冷剤用断熱カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、夏場の暑い時期や、風邪などで人体に発熱が生じた時に冷凍した保冷剤や含水タオルを用いて首部を保冷して人体を冷やす。冷凍した保冷剤(以下冷凍保冷剤という場合がある)はそのままでは冷えすぎるために、冷却具としてタオルなどで巻いた保冷剤入り首巻タオルを用いる。含水タオルは水の蒸発潜熱を利用して熱を除去するが、冷凍保冷剤は保冷剤の低い温度を利用して体を冷やす。冷凍保冷剤は人体に用いるため比較的小さなものであり、−5〜−30℃に冷凍した保冷剤が使用される。このような首巻タオルとしては、たとえば、首巻タオルの内側や外側に断熱シートを貼り付けたもの(特許文献1)がある。
また、シート上にモノフィラメント状物からなる多数の突起状物を林立状態に配設した基体に保冷剤を保持させた頭部冷却具がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−316394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、首巻タオルの場合には、使用中保冷剤の温度が早く上昇し首巻タオルの使用時間が十分満足できるものではないという問題がある。頭部冷却具の場合にも、冷却具を大きくすることができないため、用いる保冷剤が小さくならざるを得ず、冷却具の使用時間が短すぎるという問題がある。
本発明の目的は、冷却具に用いて対象物を冷却する場合に、冷却具の使用時間を長引かせることができる断熱カバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究の結果、冷凍保冷剤を特定の形態の断熱カバーに入れた後、冷却具に備えて使用することにより達成できることを見出し本発明に至った。
【0006】
請求項1の発明は、断熱シートで保冷剤が出し入れ可能に形成された筒または袋であって、冷却対象物に向かう面の一部に対象物を冷却するための開口部を有する、冷却具に備えて使用する保冷剤用断熱カバーである。
【0007】
請求項1の発明によれば、冷凍保冷剤を入れる断熱カバーは冷却対象物(以下単に対象物という場合がある)に向かう面の一部に対象物を冷却するための開口部を有しているので、冷気はその開口部のみから発散しやすく、その開口部以外からは冷気は出にくいので、効率的に対象物を保冷すると共に保冷剤の温度上昇が抑制でき、冷却具の使用時間を長引かせることができる。
断熱カバーが筒または袋であるので、両方または一方から保冷剤を出し入れでき、保冷剤を入れ替えることができる。
【0008】
請求項2の発明は、前記保冷剤および断熱カバーが扁平状であって、保冷剤の側部を包むようにして、前記断熱カバーの側部の周縁部を残して対象物を冷却するための開口部が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の保冷剤用断熱カバーである。
【0009】
請求項2の発明によれば、冷凍保冷剤を入れる断熱カバーは、対象物に向かう面の一部に対象物を冷却するための開口部を有し、保冷剤の側部を包むようにして、断熱カバーの側部の周縁部を残してその開口部が形成されているので、保冷剤の側部からさらに冷気が逃げにくくなり、また外気が入りにくくなり、冷気はその開口部のみから発しやすく、その開口部以外からは冷気は出にくくなるので保冷剤の温度が上昇しにくい。そのため冷却具の使用時間がさらに長くなる。
【0010】
請求項3の発明は、前記断熱シートがアルミニウム層を含んで形成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の保冷剤用断熱カバーである。
【0011】
請求項3の発明によれば、断熱シートがアルミニウム層を含んで形成されているので、アルミニウム層の外からの熱線を反射して輻射熱が保冷剤に伝わるのを防止すると共に、また内部からの冷気が外へ伝達するのを防止することができる。したがって、断熱シートの断熱性が優れており、保冷剤の温度が上昇しにくく、冷却具の使用時間をさらに長引かせることができる。
【0012】
請求項4の発明は、前記断熱シートが、アルミニウム層に弾力性のある発泡体シートが積層されたシートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の保冷剤用断熱カバーである。
【0013】
請求項4の発明によれば、断熱シートがアルミニウム層と弾力性のある発泡体シートとの積層シートであるので、アルミニウム層の外からの熱線を反射して輻射熱が保冷剤に伝わるのを防止すると共に、弾力性のある発泡体シートが、外からの熱が内部に、また、内部からの冷気が外へ伝導するのを防止することができる。したがって、断熱シートの断熱性が非常に優れており、保冷剤の温度が上昇しにくく、冷却具の使用時間をさらに長引かせることができる。
【0014】
請求項5の発明は、シート上にモノフィラメント状物からなる多数の突起状物を林立状態に配設し、保冷剤を入れるポケットを有する基体からなる頭部冷却具のポケットに入れて用いられる請求項1〜4のいずれか1項記載の保冷剤用断熱カバーである。
【0015】
請求項5の発明によれば、冷凍保冷剤の温度が上昇しにくい断熱カバーを用いるので、頭部冷却具の使用時間を長引かせることができる。
【0016】
請求項6の発明は、保冷枕、背・腰・ふくらはぎ・脇の下・脚の人体用保冷具、頭・額の冷却シート、筋肉・関節の冷却マットや保冷サポーター、冷却アイマスク、清涼座布団・布団、清涼ヘルメット、靴のクール下敷き、動物用保冷マット、生鮮物の鮮度保持具、食品の保冷具、ペットボトル・ビールの保冷ケース、血液・検体の保冷具及び葬儀用保冷具からなる群から選ばれる冷却具に保冷剤を入れた請求項1〜4のいずれか1項記載の保冷剤用断熱カバーを備えて使用する、対象物を冷却する方法である。
【0017】
請求項6の発明によれば、冷凍保冷剤の温度が上昇しにくい断熱カバーを用いるので、上記の冷却具の使用時間を長引かせることができる。
【0018】
請求項7の発明は、保冷剤を入れた請求項1〜4いずれか1項記載の保冷剤用断熱カバーを備えた、保冷枕、背・首・腰・ふくらはぎ・脇の下・脚の人体用保冷具、頭・額の冷却シート、筋肉・関節の冷却マットや保冷サポーター、冷却アイマスク、清涼座布団・布団、清涼ヘルメット、靴のクール下敷き、動物用保冷マット、生鮮物の鮮度保持具、食品の保冷具、ペットボトル・ビールの保冷ケース、血液・検体の保冷具及び葬儀用保冷具からなる群から選ばれる冷却具である。
【0019】
請求項7の発明によれば、冷凍保冷剤の温度が上昇しにくい断熱カバーを用いるので、上記の冷却具の使用時間を長引かせることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の冷却具に用いる保冷剤用断熱カバーは次の効果を奏する。
(1)保冷剤の温度が上昇しにくくなるので、冷却具の使用時間を長引かせることができる。
(2)対象物を冷却するための開口部の形状、大きさ、数などを変えた断熱カバーを用いれば冷却対象物の冷却温度を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明における断熱カバーにおいて冷却するための開口部の例(平面図)を示す。
【図2】本発明における断熱カバーと中の保冷剤の関係を示す平面図であり、(a)、(b)は異なる実施態様の例の平面図で、(c)は(b)におけるX−Y切断面の拡大断面図を示す。
【図3】本発明における一実施形態の頭部冷却具を示し、(a)は頭部冷却具の側面図、(b)は下方から見た平面図、(c)は上方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0023】
本発明の断熱カバーは、冷凍保冷剤を中に入れた後冷却具に備えて対象物を冷やすものである。
保冷剤用断熱カバーは筒状または袋状に形成されている。筒または袋の形状、大きさは用途によって決められるが、保冷剤の形状、大きさによっても影響を受ける。筒や袋を保冷剤の形状、大きさに合わせて形成すると、保冷剤と断熱カバーとの間に隙間がなくなり効率的に対象物を冷やすことができるので好ましい。通常保冷剤は平面図的には長方形状が多いので、断熱カバーも長方形状が好ましい。ここで長方形状とは略長方形状を意味し、角が丸みを帯びたもの、幅が変化しているもの、たとえば楕円形状なども含むものとする。また、用途によって丸型、厚みのあるものも使用されるが、断熱カバーはそれに合わせて形成される。
【0024】
また、保冷剤が扁平状であるとき保冷剤の形状に合わせて断熱カバーも扁平状に形成されたもののが好ましい。そうすると冷凍保冷剤を入れても断熱カバーとの間に隙間がなく、保冷剤の冷気が断熱カバー内に滞留することがなく効率的に対象物を冷やすことができる。
筒状の断熱カバーは、筒の両側または片側に開きを有し、その開きから保冷剤を出し入れできる。袋状の断熱カバーは片方の開きから保冷剤を出し入れできる。開きの大きさは保冷剤を出し入れできる大きさであれば十分である。開きがあるので温度が上昇して保冷効果がなくなった保冷剤を、冷凍した新たな保冷剤と交換して使用することができる。袋の保冷剤を出し入れする開きはマジックテープ(クラレ株式会社の登録商標)やチャックなどで開閉自在に構成されているものが好ましい。特に使用時にはこの開きは閉じているのが保冷剤の温度が上昇しにくいので好ましい。
【0025】
断熱カバーは対象物に向かう面の一部に対象物を冷却するための開口部を有し、その他の部分は断熱シートで覆われているので、開口部のみから冷気が出て対象物を冷やすことができる。
対象物を冷却するための開口部の形状は保冷剤の大きさを考慮して決められるが、たとえば、長方形状、円形状、楕円形状などが挙げられる。対象物を冷却するための開口部は1個でもよいし、複数個、たとえば2〜10個設けてもよい。好ましくは2〜5個である。2〜5個であると保冷剤が断熱カバーからはずれにくく安定して使用することができる。開口部1個の大きさは特に限定はない。大きな開口部が1個であったとしても、保冷剤が外に出ないように開口部の中間の上下を繊維で結んでもよいし、開口部にネットを設けてもよい。対象物を冷却するための開口部の合計面積は保冷温度、保冷時間との兼ね合いで決められるが、対象物に向かう面積の5〜95%が好ましく、20〜80%がより好ましい。開口部の面積が5%以上であると冷却対象物の冷却速度が良好であり、冷却具の使用時間を長引かせることができる。95%以下であると対象物が冷えすぎるということが少ない。開口部の面積によって、対象物の冷却温度が決まる。すなわち、開口部の面積が異なる断熱カバーを使用すれば冷却温度を選択することができる。開口部の面積は、それぞれの開口部の形状、大きさ、個数によって決まる。
【0026】
図1に、断熱カバーにおける冷却するための開口部の一例(平面図)を示す。ここで断熱カバー1は長方形状に記載されている。(a)〜(c)に示す断熱カバー1には1〜2個の異なった形状の大きな開口部2が形成されている。(d)の断熱カバー1には、紙面に向かって上下の周縁部3が覆われ両側が開いた開口部2が形成されている。(e)の断熱カバー1には小さな開口部2が数多く形成されている。開口部の形状、大きさ、数、位置はこれらに限定されない。
【0027】
保冷剤および断熱カバーが扁平状であって、保冷剤の側部を包むようにして、前記断熱カバーの側部の周縁部を残して対象物を冷却するための開口部が形成されてなるのが好ましい。
ここで、側部の周縁部の範囲は全側部の1/4以上が好ましく、半分以上がより好ましく、全部の周縁部が特に好ましい。保冷剤の側部を覆う断熱シートの量が多いほど保冷剤の温度が上昇しにくいが、1/4以上であればその効果が良好である。保冷剤の側部が断熱シートで覆われていると、その箇所からは冷気が出にくい。保冷剤の側部、特に上の側部から冷気が出やすいので、冷却具を使用する際少なくとも断熱カバーの周縁部を上側になるようにすれば冷気の逃げを効率的に防止することができ、保冷剤の温度上昇が抑制でき、冷却具の使用時間をさらに長引かせることができる。周縁部の幅は限定はないが、幅が大きい方が冷気がにげにくく、たとえば1〜3cmが好ましい。
【0028】
保冷剤より大き目の断熱シートを用いて、保冷剤の側部の片側や対面する両側を覆うようにして周縁部を被せるものも両端の側部は閉じてはいないが、保冷剤を保持できるようにしたものも一種の筒であり、対象物を冷却するための開口部を有するので、本発明の断熱カバーの範囲に入るものとする。
【0029】
図2に断熱カバーと保冷剤の関係を示す。図2(a)、(b)は断熱カバーに保冷剤を入れた状態の平面図を示す。図2(c)は図2(b)のX−Y軸の切断面の拡大断面図を示す。図2(a)において、断熱カバー1の開口部2は2個であり、片面の中央部に横長に形成されている。断熱カバー1は長方形であり、両側の側部の周縁部3が断熱シートで形成されている。開口部の幅よりも大きい幅をもつ保冷剤4(点線の表示)が1個入った状態を示す。紙面に向かって左側に保冷剤を出し入れする開き5(出し入れ口)がある。
【0030】
図2(b)に示す断熱カバーも、長方形状である。片面の中央に同じ大きさの楕円形状の開口部2が3個並列している。中に開口部2より幅のある保冷剤4が1個入っている。図2(c)は図2(b)のX−Y軸の切断面の拡大断面図であり、保冷剤4が断熱カバー1に入った状態を示す。断熱カバー1は扁平状であり、保冷剤4の側部の周縁部3が断熱シートで覆われており、保冷剤4と断熱カバー1との間の空間は少ない。冷気が出る開口部2が形成されている。
【0031】
本発明において用いられる断熱シートは断熱性の良好なシートであればよく、たとえば、アルミニウム層や発泡体シートが挙げられる。好ましくは、アルミニウム層を含んで形成されるシートである。
アルミニウム層は、冷却具を通して外部から入る熱線を反射して保冷剤に熱が伝わるのを防止すると共に保冷剤の冷気を外に出すことを防止する。そのため保冷剤の温度の上昇が抑制でき、冷却具の使用時間を長引かせることができる。
【0032】
アルミニウム層としては、通気しないアルミニウム層を含むものなら限定はなく、アルミシート、アルミニウム板、アルミ箔またはプラスチックに蒸着したアルミ膜などが挙げられる。アルミニウム層の厚さは特に限定はないが、好ましくは1μm〜3mmである。1μm以上であれば断熱効果が良好であり、3mm以下であれば冷却具にセットしたときの使用性が良好である。
【0033】
また、アルミニウム層にさらに弾力性のある発泡体シートを組み合わせたものが好ましい。アルミニウム層との積層体であるのが特に好ましい。弾力性のある発泡体シートは熱伝導を低下させる性質があり、外からの熱伝導を抑制すると共に保冷剤の冷気が外へ逃げるのを防止する。また弾力性があるのでこの面が保冷剤に圧接して重ねられると保冷剤の凹凸に対応して発泡体シートの表面が変形して追随する。その結果、発泡体シートが動きにくくなり、冷却具を使用中断熱シートが保冷剤から動かず安定して保冷剤の温度上昇がさらに抑制でき、冷却具の使用時間をさらに長引かせることができる。
【0034】
弾力性のある発泡体シートとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンなどのポリオレフィン、塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−メチルアクリレート共重合体、ポリエステル、ポリウレタン、シリコンエラストマーなどの発泡体シートが挙げられる。好ましいのは入手し易さからポリオレフィン系であり、より好ましくはポリプロピレン系である。また独立気泡の発泡体シートであるのが熱伝導を抑制して断熱性を高めるので好ましい。厚さは好ましくは1〜5mmであり、発泡倍率は好ましくは10〜40倍であり、見掛け密度は好ましくは0.025〜0.1g/cm3である。
【0035】
アルミニウム層と発泡体シートの積層体については、アルミニウム層と発泡体シートが接着剤などによりラミネートされるものがよく、これらの1:1の積層体または発泡体シートの両側の面がアルミニウム層で被覆されたような複数の積層体であってもよい。好ましいのは使用性、価格の点から1:1の積層体である。
【0036】
断熱カバーを積層シートで作成するときは、アルミニウム層を外側にし、発泡体を内側にして作成すれば、断熱効果を維持することができ、冷却具の使用時間をさらに長引かせることができる。また、開口部が形成される面は反対側の面と厚さが異なっていてもよく、より薄く形成してもよい。また開口部が形成される面はアルミニウム層か弾力性のある発泡体シートのみで形成してもよい。
【0037】
保冷剤としては、たとえば高吸水性樹脂、天然ゲル化物質などを含むゲル状物、氷嚢、アイスノン(登録商標)、ヒヤロン(登録商標)など各種熱媒体を用いることができるが、これらの保冷剤は通常−5〜−30℃に冷凍して使用されるが、この温度では凍結して固くなるので、保冷剤の厚さを薄くしたり、小さくしたり工夫して使用する必要がある。好ましいのは上記温度にしても柔軟性を有する保冷剤である。
【0038】
このような柔軟性を有する保冷剤としては、水不溶性吸水性ポリマー、水溶性ポリマー、水および親水性アルコールを含有するゲル状物が包装部材に充填されているものが挙げられる。
さらに、水不溶性吸水性ポリマーを水不溶性で非吸水性のポリマー被膜で表面被覆した吸水ゲル粒子を、水溶性ポリマー、水および親水性アルコールを含有する水性ゲル中に懸濁した保冷剤を使用するのが特に好ましい。この場合、吸水ゲル粒子を水不溶性で非吸水性のポリマー被膜で表面被覆したものが用いられるが、このような表面被膜を施すと、繰り返し使用回数が増すだけでなく保冷能力が向上し、保冷持続時間をさらに長くすることができる。
これらの柔軟性を有する保冷剤としては、特開平5−320627号、特開平6−122871号公報に記載されているものが使用できる。
【0039】
上記の柔軟性のある保冷剤を用いると、対象物に屈曲や湾曲があったとしても、保冷剤が屈曲や湾曲に追随して曲がることができるので、保冷剤と対象物との隙間が少なく効率的に対象物を冷却することができる。また保冷剤の冷気が隙間から逃げるのも少なくなり、保冷剤の温度上昇が抑制でき、冷却具の使用時間を長引かせることができる。
【0040】
本発明における保冷剤は包装部材中にゲル状物が充填された形態である。包装部材の形状としては、袋状、箱状、円筒状、ボール状、球状など任意の形でよいが、基体と組み合わされて使用されるので、袋状のものが好ましい。袋状の形状は矩形状、円形状、楕円状などが挙げられる。コスト面から矩形状が好ましい。また、保冷剤は1個単独で使用してもよいが、2個以上連結したものを用いてもよい。
本発明における保冷剤は、−30〜−5℃の条件で、好ましくは−20〜−15℃の条件で、1〜24時間かけて冷凍させることにより、保冷材として用いることができる。
【0041】
冷却具が首巻タオルである場合、保冷剤を入れて使用できるものであれば限定はなく、従来公知のものが使用できる。ポケットのあるものが、保冷剤を出し入れすることができるので好ましい。
【0042】
本発明における頭部冷却具の構造は、シート上にモノフィラメント状物からなる多数の突起状物を林立状態に配設した基体に保冷剤を入れるポケットを有する。
図3は、本発明における一実施形態の頭部冷却具を示す斜視図である。(a)は頭部冷却具の側面図であり、(b)は下方から見た平面図、(c)は上方から見た斜視図である。
【0043】
この頭部冷却具は、合成繊維(モノフィラメント)などから形成したシート上にモノフィラメント状物からなる多数の突起状物6を林立状態に配設した基体7のポケット8に備えられる保冷剤4とからなり、前記基体7を介して頭髪部に直接保持させるようにしたものである。
モノフィラメント状物からなる多数の突起状物6が毛髪に絡み付いて、基体7を介して簡単に保冷剤4を頭部に保持させることができる。また、この頭部冷却具は、モノフィラメント状物からなる多数の突起状物6(たとえば、面ファスナーの雄部)が毛髪に絡んで保持されるだけであり、強く固定されることがないからヘアースタイルが乱れることがない。
【0044】
突起状物6は、毛髪に絡み易い形状であれば特に限定されるものではないが、本実施例においては、先端をフック状にした、面ファスナの雄部を使用している。また、モノフィラメントは、面ファスナの雄部と使用される形状、たとえば、キノコ状、ループ状の上端を切り開いた形状など、種々の形状とすることができる。
【0045】
本発明の保冷剤用断熱カバーは、保冷枕、首・背・腰・ふくらはぎ・脇の下・脚などの人体用保冷具(消防用の防火服の内張り・炎天下作業時の作業衣や手袋・またはそれに付属の保冷具、車椅子使用時の冷却座布団と背もたれなどの人体保冷用を含む)、額の冷却シート、運動後の筋肉・関節などの冷却マットや保冷サポーター、冷却アイマスク、夏時の清涼座布団・布団、清涼ヘルメット、靴のクール下敷き、犬・猫等の動物用保冷マット・保冷タオル、肉・魚・野菜・花等の生鮮物の鮮度保持材のような冷却具、ケーキ・菓子などの食品の保冷具、ペットボトル・ビールなどの携帯用保冷ケース、血液・検体などの保冷剤及び葬儀用保冷剤からなる群から選ばれる冷却具に備えて使用する。
備えるとは、首巻タオルや頭部冷却具のように冷却具のポケットに入れることや、何らかの固定具で一時的に付着させることをいう。
【0046】
保冷剤を冷却具に供える場合は、冷凍した保冷剤を断熱カバーに入れた後冷却具に備えてもよいし、保冷剤を断熱カバーに入れたまま冷凍した後、冷却具にいれてもよい。後者の方が保冷剤を冷却具にセットする時間が短く手間が省け、より低温でセットが可能となる。
【実施例】
【0047】
製造例1(柔軟性のある保冷剤用ゲル状物)
吸水性樹脂として架橋ポリアクリル酸ナトリウム塩(三洋化成工業社製:サンウエットIM−5000)4部に水200部を加え、万能混合機で充分に混合し、これにポリビニルアルコール15部を熱水200部に溶解した溶液を加え充分に混合し白色の吸水ゲル粒子を得た(工程1)。水溶性ポリマーとしてアクリルアミド・アクリル酸ソーダ高分子量共重合体(30℃における0.3%水溶液粘度が1,800cps)(三洋化成工業社製:サンフロックAH−210P)4部に水200部を加え、万能混合機で充分に混合した。これにグリセリン150部、ジエチレングリコール6部、ポリエチレングリコール(分子量300)6部を加え、万能混合機で十分に混合し白色のゲルを得た(工程2)。工程2で得られたゲルを工程1で得られたゲルに加え、万能混合機で充分混合した(工程3)。このようにしてゲル状物Aを得た。
【0048】
(保冷剤の作製)
18cm×4.5cmの長方形のポリエチレン/ナイロン系ラミネートフィルムの袋にゲル状物Aを60g入れて保冷剤を作製した。
【0049】
(実施例1)
厚さ0.1mmのアルミシートを20cm×6cmに切り取り、長辺の片側側部を幅1cmのところで折り曲げ両端を接着剤により固定し、保冷剤を保持できるようにし、断熱カバーAを作製した。
【0050】
(実施例2)
実施例1で用いたものと同じ厚さ0.1mmのアルミシートに厚さ2mmのポリプロピレン系発泡体(独立気泡型、発泡倍率13.6倍)シートとがイソシアネート系接着剤で接着された積層シートを20cm×7.5cmに切り取り、長辺の両側の側部をそれぞれ幅1cmのところで折り曲げ両端を縫製により固定し、保冷剤を保持できるようにし、断熱カバーBを作製した。
【0051】
(実施例3)
実施例2で用いられたものと同じポリプロピレン系発泡体シートを20cm×6cmに切り取り、長辺の片側側部を幅1cmのところで折り曲げ両端を縫製により固定し、保冷剤を保持できるようにし、断熱カバーCを作製した。
【0052】
(実施例4)
実施例2で用いられたものと同じ積層シートを24cm×12cmに切り取り、二つに折り曲げて二つの重なった長辺を接着剤で結合して、両方の短辺が保冷剤を出し入れできるように開いた扁平状の筒を作成した。この筒の片面の中央に4cm×2cmの長方形の冷却するための開口部を2個形成した。2個の開口部の間隔を3cmとし、これを断熱カバーDとした。
【0053】
(実施例5)
実施例4と同様にして扁平状の筒を作成し、片方の短辺を接着剤で結合して片方のみが開いた袋を作成した。直径2cmの円形の冷却するための開口部を3個並列に形成した。3個の開口部の感覚を2cmとし、これを断熱カバーEとした。
【0054】
(比較例1)
実施例2の断熱カバーBを首巻タオルの外側片面に縫製により取り付けたものを首巻タオルFとした。
【0055】
(評価)
上記の断熱カバーを入れた首巻タオルを用いて15人の被験者に以下の首部を保冷する試験を行った。
通常の首巻タオルに上記の断熱カバーA〜Eに保冷剤を入れて首部を保冷する試験、首巻タオルF、通常の首巻タオルに保冷剤のみを入れて首部を保冷する試験を行った。
【0056】
保冷剤としては、上記の保冷剤Aを−20℃で5時間冷凍したものを用いた。条件を同じにするために20℃程度の室内で評価してもらった。首巻タオルを首部にまいた時から冷たいと感じなくなるまでの時間を分単位で報告してもらい15人の平均値を出し四捨五入した。その結果を表1に示した。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から以下のことがわかる。従来の首巻タオルに断熱カバーを付けた首巻タオルFは通常の首巻タオルに保冷剤のみを入れたものに比較して首巻タオルの使用時間は長くなっているがまだ不十分であった。断熱カバーを用いたものはさらに良好であり、断熱カバーC、A、B、D、E順に首巻タオルの使用時間は長くなった。このように本発明の断熱カバーは冷却具の使用時間を長くすることができた。
【0059】
(実施例6)(断熱カバーを頭部冷却具に用いる試験)
10cm×6cmの長方形のポリエチレン/ナイロン系ラミネートフィルムの袋を準備し、前記のゲル状物A20gを袋に入れて密封して保冷剤を作製した。
実施例2で用いられたものと同じ積層シートを12cm×14cmに切り取り、二つに折り曲げて二つの重なった短辺を接着剤で結合して、両端が保冷剤を出し入れできるように開きのある扁平状の筒を作成した。この筒の片面の中央に3cm×2cmの長方形の冷却するための開口部を2個形成した。2個の開口部の間隔を2cmとし、これを断熱カバーGとした。
また、これとは別に、図3(c)の形状の、ナイロン製の基体と保冷材を入れるポケットをあわせてヒートシールして、基体とポケットが一体化した頭部冷却具を得た。
保冷剤を冷凍室におき−20℃で5時間放置した後取り出し、断熱カバーに入れた後、頭髪冷却具のポケットに入れ頭部に付けた。冷凍保冷剤がやわらかいので頭部にフィットした。取り付けた時点で冷感があり、頭部冷却具は45分程度冷却感があった。また、比較のため断熱カバーに入れずに頭部冷却具のポケットに入れ、同様な試験を行ったところ、頭部冷却具は30分程度冷却感があった。断熱カバーの効果が認められた。外気温は24℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の冷却具に用いる保冷剤用断熱カバーは、夏場の暑い時期や、風邪などで人体に発熱が生じた時に人体を冷やす冷却具その他の冷却具に好適である。
【符号の説明】
【0061】
1 断熱カバー
2 開口部
3 周縁部
4 保冷剤
5 開き
6 突起状物
7 基体
8 ポケット




【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱シートで保冷剤が出し入れ可能に形成された筒または袋であって、冷却対象物に向かう面の一部に対象物を冷却するための開口部を有する、冷却具に備えて使用する保冷剤用断熱カバー。
【請求項2】
前記保冷剤および断熱カバーが扁平状であって、保冷剤の側部を包むようにして、前記断熱カバーの側部の周縁部を残して冷却するための開口部が形成されてなることを特徴とする請求項1記載の保冷剤用断熱カバー。
【請求項3】
前記断熱シートがアルミニウム層を含んで形成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の冷却具に用いる保冷剤用断熱カバー。
【請求項4】
前記断熱シートが、アルミニウム層に弾力性のある発泡体シートが積層されたシートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の保冷剤用断熱カバー。
【請求項5】
シート上にモノフィラメント状物からなる多数の突起状物を林立状態に配設し、保冷剤を入れるポケットを有する基体からなる頭部冷却具のポケットに入れて用いられる請求項1〜4のいずれか1項記載の保冷剤用断熱カバー。
【請求項6】
保冷枕、背・腰・ふくらはぎ・脇の下・脚の人体用保冷具、頭・額の冷却シート、筋肉・関節の冷却マットや保冷サポーター、冷却アイマスク、清涼座布団・布団、清涼ヘルメット、靴のクール下敷き、動物用保冷マット、生鮮物の鮮度保持具、食品の保冷具、ペットボトル・ビールの保冷ケース、血液・検体の保冷具及び葬儀用保冷具からなる群から選ばれる冷却具に保冷剤を入れた請求項1〜4のいずれか1項記載の保冷剤用断熱カバーを備えて使用する、対象物を冷却する方法。
【請求項7】
保冷剤を入れた請求項1〜4いずれか1項記載の保冷剤用断熱カバーを備えた、保冷枕、背・首・腰・ふくらはぎ・脇の下・脚の人体用保冷具、頭・額の冷却シート、筋肉・関節の冷却マットや保冷サポーター、冷却アイマスク、清涼座布団・布団、清涼ヘルメット、靴のクール下敷き、動物用保冷マット、生鮮物の鮮度保持具、食品の保冷具、ペットボトル・ビールの保冷ケース、血液・検体の保冷具及び葬儀用保冷具からなる群から選ばれる冷却具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−236741(P2010−236741A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84176(P2009−84176)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(507277103)株式会社アイ・イー・ジェー (32)
【Fターム(参考)】