説明

冷却処理装置及び冷却処理方法

【課題】 高温のウェハをより高速に冷却し,ウェハの温度をより早く安定させる。
【解決手段】 クーリング装置43内に,ウェハWを載置し冷却する冷却板60と,冷却板60と共に処理室Sを形成する蓋体66を設ける。蓋体66の内部には,恒温水が流通する管路68を設け,蓋体66を低温度に調節できるようにする。蓋体66を昇降機構67によって支持し,上下に移動可能にする。蓋体66の内周は冷却板60の外周よりも大きい。ウェハWが冷却板60上に載置され,冷却される際に,蓋体66を下降させて,処理室Sを形成すると共に,低温の蓋体60をウェハWに近づけて,ウェハWの冷却を促進させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,基板の冷却処理装置及び冷却処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体デバイスの製造におけるフォトリソグラフィー工程では,ウェハ上に塗布されたレジスト液内の溶剤を蒸発させる加熱処理(プリベーキング),パターンの露光を行った後に行われる加熱処理(ポストエクスポージャーベーキング),現像処理後に行われる加熱処理(ポストベーキング)等の種々の加熱処理が行われており,当該各加熱処理の後には,ウェハを所定の温度,例えば常温まで冷却させる冷却処理が行われている。
【0003】これらの冷却処理は,通常冷却処理装置において行われており,冷却処理装置は,例えばウェハを載置して冷却する冷却板と,冷却板を覆い,処理室を形成する蓋体とを有している。そして,ウェハの冷却処理は,当該処理室内において,所定温度に維持された冷却板上にウェハを載置し,所定時間冷却することによって行われている。
【0004】ところで,ウェハの冷却処理は,ウェハの塗布膜内で起こっている化学的な反応を停止させたり,ウェハの熱履歴を制御するためのものであるため,できる限り早くウェハを所定温度に冷却し,安定させることが必要となる。しかしながら,実際には,冷却前の高温のウェハから放射される輻射熱等によって,ウェハの周辺雰囲気やウェハの周辺部材の温度が上昇されてしまい,当該周辺雰囲気の温度等によって,ウェハの冷却速度が遅くなっていた。このため,ウェハが所定の温度に冷却され,安定されるまでには,相当な時間を要していた。かかる弊害を緩和するものとして,特開平6―244095号公報では,冷却板の上方となる箇所に副冷却手段を設けて,ウェハの冷却・安定を促進させる基板冷却装置が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら,近年の技術進歩,高度化に伴い,ウェハパターンの微細化,高精度化が進み,冷却処理においてもより高精度な温度制御が必要になってきている。このため,冷却処理においてウェハをより高速に冷却し,より早く冷却温度に安定させることが必要となるが,上述の公開された基板冷却装置だけでは,もはやその要請に十分に答えることはできなくなっている。
【0006】本発明は,かかる点に鑑みてなされたものであり,ウェハ等の基板をより高速に冷却し,基板温度をより早く安定させることのできる冷却処理装置と当該冷却処理装置を用いた冷却処理方法を提供することをその目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明によれば,基板を冷却する冷却処理装置であって,基板を載置して冷却する冷却板と,前記冷却板上の基板を覆い,処理室を形成する下面側が開口した蓋体と,前記蓋体を所定温度に冷却するための蓋体冷却部材と,前記蓋体を昇降可能とする昇降機構とを有することを特徴とする冷却処理装置が提供される。
【0008】請求項1によれば,蓋体冷却部材によって蓋体を所定の温度に冷却し,基板が冷却板上に載置された際に,昇降機構によって当該蓋体を下降させることができる。これによって,低温の蓋体を基板に近づけることができるので,基板の冷却が促進され,より早く基板を安定させることができる。
【0009】かかる請求項1において,請求項2のように前記蓋体の内周が,前記冷却板の外周よりも大きい形態を有するようにしてもよい。このように,蓋体の内周を冷却板の外周よりも大きくすることによって,蓋体を下降させて,処理室内の容積を減少させることができる。これによって,基板温度に影響を与える処理室内の雰囲気をより迅速に冷却し,基板をより早く冷却することができる。
【0010】請求項3の発明によれば,基板を冷却する冷却処理装置であって,基板を載置して冷却する冷却板と,前記冷却板上の基板の側方及び上方を覆い,処理室を形成する蓋体と,前記蓋体を所定温度に冷却するための蓋体冷却部材とを有し,前記蓋体の側面には,基板を前記処理室に搬入出するための搬送口が一箇所に設けられていることを特徴とする冷却処理装置が提供される。
【0011】請求項3の冷却処理装置にあっては,一の搬送口以外の部分が仕切られた蓋体によって処理室が形成され,当該処理室内で基板の冷却処理が行われるので,温度の異なる気流が処理室内に進入し,冷却時の基板に接触することが抑制できる。したがって,基板が処理室外の雰囲気温度に影響されず,より迅速に基板を冷却し,安定させることができる。
【0012】請求項4の発明によれば,基板を冷却する冷却処理装置であって,基板を載置して冷却する冷却板と,前記冷却板上の基板を覆い,処理室を形成する蓋体と,前記蓋体を所定温度に冷却するための蓋体冷却部材とを有し,少なくとも前記蓋体の内側は,熱吸収効率の良好な色を有する物体を有することを特徴とする冷却処理装置が提供される。なお,熱吸収効率の良好な色としては,黒色をはじめとして例えば濃茶,濃灰色,濃藍色,濃緑色,濃赤色等のいわゆる暗色が挙げられる。
【0013】請求項4によれば,少なくとも蓋体の内側に熱吸収効率の良好な色を有する物体を設けるようにしたので,冷却前の基板等からの輻射熱を効果的に吸収することができる。また,当該吸収した輻射熱は,結果的に蓋体冷却部材によって排熱されることになる。したがって,冷却前の高温の基板等からの輻射熱が蓋体に蓄熱され,当該輻射熱によって基板の冷却を妨げることが無くなり,基板をより高速に冷却し,基板をより早く所定温度に安定させることができる。なお,熱吸収効率の良好な熱吸収効率が良好な色については,前記物体に塗料等で着色したり,メッキしてもよく,その他物体自体をかかる色の材料で構成したり,さらにはかかる色を有するプレートや膜を物体の表面に取り付けたものであってもよい。また物体自体は,好ましくは熱伝導率の良好な材質,例えば金属で構成するとよい。また,前記物体は,蓋体の内側だけでなく,蓋体の外側や蓋体全体にも設けるようにしてもよい。
【0014】かかる前記熱吸収効率の良好な色は,例えば請求項5のように実質的にJIS明度0〜4Vの明度を有する色が提案できる。この範囲の明度を有する色は,熱の吸収効率が良好である。もちろん色の種類は問わない。すなわち黒色のみならず,有彩色の濃い茶,赤,青,緑等の色でもよい。
【0015】請求項6の発明によれば,基板を冷却する冷却処理装置であって,基板を載置して冷却する冷却板と,前記冷却板上の基板を覆い,処理室を形成する蓋体と,前記蓋体を所定温度に冷却するための蓋体冷却部材とを有し,少なくとも前記蓋体の内側は,粗面に形成されていることを特徴とする冷却処理装置が提供される。
【0016】請求項6によれば,少なくとも蓋体の内側が粗面に形成されるので,冷却前の基板等からの輻射熱の反射を抑えて,熱の吸収効率を向上させることができる。このため,処理室内の熱をより多く吸収し,蓋体冷却部材によって廃熱することができるので,基板の冷却がより促進され,基板をより早く安定させることができる。なお,蓋体の内側に加え,蓋体の外側も粗面に形成するようにしてもよい。
【0017】上述した請求項1〜3の各冷却処理装置において,請求項7のように少なくとも前記蓋体の内側が,熱吸収効率の良好な色を有する物体を有するようにしてもよい。このように,上述した請求項1〜3のの各冷却処理装置の構成に加え,蓋体に熱吸収効率の良好な色を有する物体を設けることによって,請求項4で記載したように基板の冷却を遅延させる処理室内の熱を蓋体がより多く吸収し,基板の冷却がさらに促進され,基板温度をより早く安定させることができる。
【0018】また,かかる請求項7の熱吸収効率の良好な色は,請求項8のように実質的にJIS明度0〜4Vの明度を有する色であることが好ましい。この範囲の明度を有する色は,熱の吸収効率が良好である。
【0019】かかる請求項1,2,3,7又は8の冷却処理装置において,請求項9のように少なくとも前記蓋体の内側が,粗面に形成されていてもよい。請求項1,2,3,7又は8に記載した各冷却処理装置の構成に加え,蓋体の内側を粗面に形成するようにしたので,請求項6で記載したように蓋体の熱吸収効率が向上し,基板の冷却がさらに促進され,より早く基板温度を安定させることができる。
【0020】以上で記載した請求項1〜9の各冷却処理装置において,請求項10のように前記蓋体冷却部材が,前記蓋体内部に設けられ,温度調節された流体を流通させる管路を有するようにしてもよい。また,請求項1〜10の各冷却処理装置において,請求項11のように前記蓋体冷却部材が,電子冷熱素子を有するようにしてもよい。これらの蓋体冷却部材によって,蓋体が適切な温度に冷却され,基板の冷却を促進し,基板温度をより早く安定させることが可能となる。なお前記管路に流通させる流体は,気体であってもよいし,液体であってもよい。
【0021】請求項12の発明によれば,請求項1に記載の冷却処理装置を用いた冷却処理方法であって,前記蓋体を所定温度に冷却する工程と,当該蓋体を下降させて,前記基板に近づける工程とを有することを特徴とする冷却処理方法が提供される。このように,所定の低温度に冷却された蓋体を基板に近づけることによって,基板の冷却が促進され,基板温度が安定するまでの時間を短縮することができる。なお,前記蓋体の所定温度は,基板の冷却処理温度であってもよいし,前記冷却処理温度よりも低い温度であってもよい。
【0022】
【発明の実施の形態】以下,本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は,本発明にかかる冷却処理装置を有する塗布現像処理システム1の平面図であり,図2は,塗布現像処理システム1の正面図であり,図3は,塗布現像処理システム1の背面図である。
【0023】塗布現像処理システム1は,図1に示すように,例えば25枚のウェハWをカセット単位で外部から塗布現像処理システム1に対して搬入出したり,カセットCに対してウェハWを搬入出したりするカセットステーション2と,塗布現像処理工程の中で枚葉式に所定の処理を施す各種処理装置を多段配置してなる処理ステーション3と,この処理ステーション3に隣接して設けられている図示しない露光装置との間でウェハWの受け渡しをするインターフェイス部4とを一体に接続した構成を有している。
【0024】カセットステーション2では,載置部となるカセット載置台5上の所定の位置に,複数のカセットCをX方向(図1中の上下方向)に一列に載置自在となっている。そして,このカセット配列方向(X方向)とカセットCに収容されたウェハWのウェハ配列方向(Z方向;鉛直方向)に対して移送可能なウェハ搬送体7が搬送路8に沿って移動自在に設けられており,各カセットCに対して選択的にアクセスできるようになっている。
【0025】ウェハ搬送体7は,ウェハWの位置合わせを行うアライメント機能を備えている。このウェハ搬送体7は後述するように処理ステーション3側の第3の処理装置群G3に属するエクステンション装置32に対してもアクセスできるように構成されている。
【0026】処理ステーション3では,その中心部に主搬送装置13が設けられており,この主搬送装置13の周辺には各種処理装置が多段に配置されて処理装置群を構成している。該塗布現像処理システム1においては,4つの処理装置群G1,G2,G3,G4が配置されており,第1及び第2の処理装置群G1,G2は塗布現像処理システム1の正面側に配置され,第3の処理装置群G3は,カセットステーション2に隣接して配置され,第4の処理装置群G4は,インターフェイス部4に隣接して配置されている。さらにオプションとして破線で示した第5の処理装置群G5を背面側に別途配置可能となっている。前記主搬送装置13は,これらの処理装置群G1,G2,G3,G4,G5に配置されている後述する各種処理装置に対して,ウェハWを搬入出可能である。なお,処理装置群の数や配置は,ウェハWに施される処理の種類によって異なり,処理装置群の数は,1以上であれば任意に選択可能である。
【0027】第1の処理装置群G1では,例えば図2に示すように,ウェハWにレジスト液を塗布するレジスト塗布装置17と,露光後のウェハWを現像処理する現像処理装置18とが下から順に2段に配置されている。処理装置群G2の場合も同様に,レジスト塗布装置19と,現像処理装置20とが下から順に2段に積み重ねられている。
【0028】第3の処理装置群G3は,図3に示すように略直方体形状のケーシング25を有しており,ケーシング25内には,複数の処理装置を多段に配置できるようになっている。当該ケーシング25内には,例えばウェハWを所定温度に冷却するクーリング装置30,レジスト液とウェハWとの定着性を高めるためのアドヒージョン装置31,ウェハWを待機させるエクステンション装置32,レジスト液中の溶剤を乾燥させるプリベーキング装置33,34及び現像処理後の加熱処理を施すポストベーキング装置35,36等が下から順に例えば7段に重ねられている。
【0029】第4の処理装置群G4は,第3の処理装置群G3と同様に略直方体形状のケーシング38を有しており,ケーシング38内には,例えばクーリング装置40,載置したウェハWを自然冷却させるエクステンション・クーリング装置41,エクステンション装置42,本実施の形態にかかる冷却処理装置としてのクーリング装置43,露光後のウェハWを加熱処理するポストエクスポージャーベーキング装置44,45,ポストベーキング装置46,47等が下から順に例えば8段に積み重ねられている。
【0030】インターフェイス部4の中央部にはウェハ搬送体50が設けられている。このウェハ搬送体50はX方向(図1中の上下方向),Z方向(垂直方向)の移動とθ方向(Z軸を中心とする回転方向)の回転が自在にできるように構成されており,第4の処理装置群G4に属するエクステンション・クーリング装置41,エクステンション装置42,周辺露光装置51及び図示しない露光装置に対してアクセスして,各々に対してウェハWを搬送できるように構成されている。
【0031】次に上述したクーリング装置43の構成について説明する。図4に示すように,クーリング装置43は,後述するクーリング装置43の各構成部材を収容するケース43aを有している。ケース43aの中央部には,厚みのある円盤状に形成された冷却板60が設けられており,この冷却板60上にウェハWを載置して,冷却できるようになっている。冷却板60の材質には,熱伝導性の優れたセラミックである例えば炭化ケイ素や窒化アルミニウムが用いられている。冷却板60には,冷却板60を所定温度に冷却するための冷却熱源となる,例えばペルチェ素子61が内蔵されており,ペルチェ素子61は,温度制御装置62によって制御されている。例えば,冷却板60の温度は,温度制御装置62によってペルチェ素子61にかかる電圧を制御することによって,所定の温度に維持できるようになっている。
【0032】冷却板60の下方には,ウェハWを搬入出する際にウェハWを支持し,昇降させるための昇降ピン63が設けられている。昇降ピン63には,例えばモータやシリンダ等を有する駆動機構64が取り付けられており,昇降ピン63を所定のタイミングで上下方向に移動できるようになっている。また,冷却板60の中央付近には,冷却板60を鉛直方向に貫通する孔65が設けられており,昇降ピン63がこの孔65内を上下方向に移動して,冷却板60上方に突出できるようになっている。
【0033】冷却板60の上方には,冷却板60と共に処理室Sを形成する蓋体66が設けられている。蓋体66は,下面側が開口した略筒状に形成されており,蓋体66の内周が冷却板60の外周よりも大きくなるように形成されている。また,蓋体66は,モータやシリンダ等を有する昇降機構67によって上下に移動自在に構成されている。これによって,蓋体66が下降し,蓋体66が冷却板60の外周を包囲することによって処理室Sが形成され,蓋体66をさらに下降させることによって,蓋体66をウェハWに近づけることができるようになっている。
【0034】蓋体66の上部66aは,閉口しており,厚みのある円盤状に形成されている。当該上部66aには,所定温度に制御された,例えば恒温水を流通させる蓋体冷却部材としての管路68が設けられている。管路68は,図5に示すように上部66aの一端から上部66a内に入り,上部66a内を蛇行しながら進んで,上部66aの他端から抜けるように設けられており,この管路68内を流通する流体,例えば恒温水によって蓋体66全体を均一に冷却することができるようになっている。また,管路68は,例えば外部に設置された恒温水供給源69を経由する循環経路を形成している。恒温水供給源69は,恒温水の温度を調節する温度調節機能を有している。これによって,当該恒温水供給源69で所定の温度に温調された恒温水は,蓋体66内に供給され,蓋体66を通過した恒温水は,恒温水供給源69に戻され,温調された後,再び蓋体66内に供給できるようになっている。
【0035】また,蓋体66の内側表面には,図6に示すように黒色の塗料が塗装されており,処理室S内の輻射熱に対する熱吸収効率が向上されている。
【0036】ケース43aには,ケース43aの上面を覆う環状のケースカバー70が設けられている。ケースカバー70の開口部70aには,当該ケースカバー70と冷却板60とが同じ高さになるように設けられている。ケースカバー70と冷却板60との間には,隙間が設けられており,当該隙間を蓋体66が通過できるようになっている。ケースカバー70によって,冷却板60下方に位置する昇降ピン63,駆動機構64及び昇降機構67と,冷却板60上方に位置する処理室Sとが仕切られ,昇降ピン63等から発生する塵埃等の不純物が処理室S内に進入しないようになっている。
【0037】また,冷却板60の下方であって,ケース43aの側面には,排気口71が設けられており,冷却処理中にケース43a内の雰囲気を排気し,昇降ピン63等から発生した不純物を排気できるようになっている。
【0038】次に,以上のように構成されているクーリング装置43の作用について,塗布現像処理システム1で行われるフォトリソグラフィー工程のプロセスと共に説明する。
【0039】先ず,ウェハ搬送体7がカセットCから未処理のウェハWを1枚取りだし,第3の処理装置群G3に属するアドヒージョン装置31に搬入する。このアドヒージョン装置31において,レジスト液との密着性を向上させるHMDSなどの密着強化剤を塗布されたウェハWは,主搬送装置13によって,クーリング装置30に搬送され,所定の温度に冷却される。その後,ウェハWはレジスト塗布装置17又19に搬送され,ウェハW上にレジスト液が塗布される。そして,表面にレジスト膜が形成されたウェハWは,プリベーキング装置33又は34に搬送されて,加熱処理され,次にエクステンション・クーリング装置41に搬送されて,冷却処理される。
【0040】次いでウェハWはエクステンション・クーリング装置41からウェハ搬送体50によって取り出され,その後,周辺露光装置51を経て露光装置(図示せず)に搬送され,ウェハW上に所定のパターンが露光される。露光処理の終了したウェハWは,ウェハ搬送体50によりエクステンション装置42に搬送され,その後,主搬送装置13によってポストエクスポージャーベーキング装置44又は45に搬送される。
【0041】このポストエクスポージャーベーキング装置44又は45では,ウェハWが加熱され,例えば露光によってレジスト膜内に発生した触媒としての酸が活性化され,レジスト膜を現像液に対して可溶にする化学反応が促進される。そして,当該加熱処理が終了したウェハは,直ちにクーリング装置43に搬送されて,前記酸の触媒作用を停止させるための冷却処理が行われる。
【0042】その後,冷却処理が終了したウェハWは,主搬送装置13によって現像処理装置18又は20,ポストベーキング装置35,36,46又は47,クーリング装置30と順次搬送され,各装置において所定の処理が施される。その後,ウェハWは,エクステンション装置32を介して,ウェハ搬送体7によってカセットCに戻され,一連の所定の塗布現像処理が終了する。
【0043】次に上述したクーリング装置43の作用について詳しく説明する。クーリング装置43内では,所定温度,例えばウェハWの冷却温度と同じ23℃に温度調節された恒温水が恒温水供給源79から上部66a内に供給され,蓋体66の温度が23℃に維持される。また,冷却板60は,温度制御装置62によって,ウェハWの冷却温度,例えば23℃に維持される。さらに,排気口71からの排気が開始され,ケース43a内がパージされる。
【0044】そして,前工程である露光後の加熱処理が終了すると,当該加熱処理で例えば100℃に加熱されたウェハWが,主搬送装置13によってクーリング装置43内に搬入される。そして,ウェハWは主搬送装置13によって冷却板60上方まで搬送され,予め上昇して待機していた昇降ピン63に受け渡される。
【0045】次いで,ウェハWは駆動機構64によって昇降ピン63と共に下降され,冷却板60上に載置されて,ウェハWの冷却処理が開始される。このとき,蓋体66も昇降機構67によって,例えば昇降ピン63の下降に同期して下降される。このとき,例えば昇降ピン63に支持されたウェハWに非接触な近傍まで蓋体66を一旦下降させ,蓋体66の内側上面である冷却面による冷却効果を与えつつ,その後に同期させて下降させてもよい。そして,図7に示すように蓋体66が冷却板60の外周を包囲して,処理室Sが形成されると共に,低温の蓋体66がウェハWに近づけられる。例えばウェハW表面と蓋体66裏面との離隔距離は,接触しなければよい距離である。かかる状態で,ウェハWが高速で冷却され,ウェハWの温度が23℃に安定される。
【0046】そして,ウェハWが23℃に冷却されると,蓋体66が再び上昇されて,処理室Sが開放される。次いで,昇降ピン63によってウェハWが上昇され,クーリング装置43内に進入した主搬送装置13にウェハWが受け渡される。そして,ウェハWがクーリング装置43外に搬出されて一連の冷却処理が終了する。
【0047】以上の実施の形態では,蓋体66の内周を冷却板60の外周よりも大きく形成し,所定温度に冷却可能な蓋体66を上下に移動可能にしたため,ウェハWの冷却時に低温の上部66aをウェハWに近づけることができる。これによって,加熱処理されたウェハWから発生する熱雰囲気によるクーリング装置43内の熱対流を,処理室Sの容積を小さくすることで抑制し,さらに蓋体66の上部66aの冷却面により熱雰囲気が冷却されることで,ウェハWの例えば100℃から23℃への冷却がより高速で行われる。また,処理室Sの容積が小さくなり,かつウェハWの全周囲を冷却できるので,他からの熱の影響を受けず,ウェハW温度がより早く23℃に安定する。
【0048】また,恒温水の流通された蓋体66の内側に黒色の塗料と塗装したため,蓋体66がウェハWからの輻射熱の吸収効率が良く,当該輻射熱を恒温水によって廃熱することができる。したがって,ウェハWの冷却が促進され,より早くウェハW温度を安定させることができる。
【0049】以上の実施の形態では,蓋体66内部に恒温水が流通する管路68を設けて,蓋体を冷却するようにしていたが,管路68の代わりに又はそれに加えて電子冷熱素子としてのペルチェ素子を設けるようにしてもよい。このような場合,例えば図8に示すように上部66a内に複数のペルチェ素子80を偏り無く配置することが好ましい。こうすることによって,蓋体66全体を均一な温度に冷却することができる。
【0050】また,前記実施の形態では,蓋体66の内側に熱吸収効率の高い黒色の塗料を塗装したが,その代わりに又はそれに加えて蓋体66の内側表面を粗面に形成するようにしてもよい。例えば,図9に示すように蓋体66の内側に凹凸を形成する。これによって,蓋体66の表面積が増大されるため,ウェハW等からの輻射熱の吸収率が向上し,処理室S内の熱がより多く吸収され,ウェハWの冷却が促進される。また,蓋体66の冷却面の表面積も増えるので冷却効果が一層高まる。
【0051】なお,前記実施の形態で蓋体66の内側に塗装した色は黒色であったが,これに限らず,例えばJIS明度0〜4Vの明度を有する暗色として,濃い茶色,緑,青等の各種の色を使用してもよい。
【0052】以上の実施の形態では,上下動可能な蓋体66を用いていたが,ウェハWの搬送口を有し,上下動しない固定型の蓋体を用いるようにしてもよい。このような場合,例えば図10に示すように冷却板60上に載置されたウェハWの側方及び上方を覆う略筒状の蓋体90を冷却板60に固定して設ける。蓋体90の主搬送装置13側の側面には,ウェハWを搬送するための搬送口91を設ける。搬送口91には,当該搬送口91を開閉自在とするシャッタ92を設け,処理室S内の雰囲気と処理室S外の雰囲気を遮断できるようになっている。また,蓋体90は,上述した蓋体66と同様に,例えば恒温水が流れる管路68を有しており,蓋体90の内側は,黒色に塗装されている。
【0053】ウェハWが処理される際には,先ず,シャッタ92が開放され,ウェハWが処理室S内に搬入され,冷却板60上に載置される。ウェハWが処理室S内に搬送され終わると,シャッタ92が閉鎖される。そして,上述した実施の形態と同様に冷却板60によって,ウェハWが冷却され,蓋体90によってウェハWの冷却が促進される。その後,ウェハWが所定の温度に達し,冷却が終了すると,再びシャッタ92が開放され,ウェハWが処理室S内から搬出される。このクーリング装置43によれば,処理室S内に,例えば処理ステーション3内の気流が流入することが抑制され,それに伴う熱の流入も抑制できる。このため,処理室S内のウェハWが他からの熱の影響を受けず,より迅速に冷却され,より早く安定される。また,蓋体90が冷却板60に固定されるため,蓋体90と冷却板60との間の温度勾配が抑制され,処理室S内全体を安定した温度に維持することができる。
【0054】なお,蓋体90の内周を冷却板60の外周よりも大きく形成し,蓋体90をケースカバー70やケース43aに固定して設けるようにしてもよい。
【0055】前記実施の形態では,蓋体66の温度をウェハWの冷却処理温度と同じ23℃に維持していたが,冷却処理温度より低い温度に維持して,ウェハWの冷却をより促進させるようにしてもよい。
【0056】以上の実施の形態にかかる冷却処理装置は,クーリング装置43に適用した例であったが,他の冷却処理装置,例えばクーリング装置30,40,エクステンション・クーリング装置41においても応用できる。
【0057】また,以上で説明した実施の形態は,半導体ウェハデバイス製造プロセスのフォトリソグラフィー工程におけるウェハの冷却処理装置に適用した例であったが,本発明は半導体ウェハ以外の基板,例えばLCDの冷却処理装置においても応用できる。
【0058】
【発明の効果】本発明によれば,基板の冷却の高速化が図られ,基板をより早く所定の温度にまで冷却して安定させることができるので,より高精度の冷却処理が可能となり,歩留まりの向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態にかかるクーリング装置を有する塗布現像処理システムの構成の概略を示す平面図である。
【図2】図1の塗布現像処理システムの正面図である。
【図3】図1の塗布現像処理システムの背面図である。
【図4】本実施の形態にかかるクーリング装置の縦断面の説明図である。
【図5】管路の配置例を示す蓋体の平面からの説明図である。
【図6】蓋体を斜め下から見た斜視図である。
【図7】蓋体が下降した状態を示すクーリング装置の縦断面の説明図である。
【図8】ペルチェ素子の配置例を示す蓋体の平面からの説明図である。
【図9】蓋体内側に凹凸を設けた場合の蓋体の縦断面の説明図である。
【図10】構成の異なる蓋体を有するクーリング装置の縦断面の説明図である。
【符号の説明】
1 塗布現像処理システム
43 クーリング装置
60 冷却板
66 蓋体
66a 上部
67 昇降機構
68 管路
S 処理室
W ウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板を冷却する冷却処理装置であって,基板を載置して冷却する冷却板と,前記冷却板上の基板を覆い処理室を形成する下面側が開口した蓋体と,前記蓋体を所定温度に冷却するための蓋体冷却部材と,前記蓋体を昇降可能とする昇降機構とを有することを特徴とする,冷却処理装置。
【請求項2】 前記蓋体の内周は,前記冷却板の外周よりも大きい形態を有していることを特徴とする,請求項1に記載の冷却処理装置。
【請求項3】 基板を冷却する冷却処理装置であって,基板を載置して冷却する冷却板と,前記冷却板上の基板の側方及び上方を覆い,処理室を形成する蓋体と,前記蓋体を所定温度に冷却するための蓋体冷却部材とを有し,前記蓋体の側面には,基板を前記処理室に搬入出するための搬送口が一箇所に設けられていることを特徴とする,冷却処理装置。
【請求項4】 基板を冷却する冷却処理装置であって,基板を載置して冷却する冷却板と,前記冷却板上の基板を覆い,処理室を形成する蓋体と,前記蓋体を所定温度に冷却するための蓋体冷却部材とを有し,少なくとも前記蓋体の内側は,熱吸収効率の良好な色を有する物体を有することを特徴とする,冷却処理装置。
【請求項5】 前記熱吸収効率の良好な色は,実質的にJIS明度0〜4Vの明度を有する色であることを特徴とする,請求項4に記載の冷却処理装置。
【請求項6】 基板を冷却する冷却処理装置であって,基板を載置して冷却する冷却板と,前記冷却板上の基板を覆い,処理室を形成する蓋体と,前記蓋体を所定温度に冷却するための蓋体冷却部材とを有し,少なくとも前記蓋体の内側は,粗面に形成されていることを特徴とする,冷却処理装置。
【請求項7】 少なくとも前記蓋体の内側は,熱吸収効率の良好な色を有する物体を有することを特徴とする,請求項1,2又は3のいずれかに記載の冷却処理装置。
【請求項8】 前記熱吸収効率の良好な色は,実質的にJIS明度0〜4Vの明度を有する色であることを特徴とする,請求項7に記載の冷却処理装置。
【請求項9】 少なくとも前記蓋体の内側は,粗面に形成されていることを特徴とする,請求項1,2,3,7又は8のいずれかに記載の冷却処理装置。
【請求項10】 前記蓋体冷却部材は,前記蓋体内部に設けられ,温度調節された流体を流通させる管路を有することを特徴とする,請求項1,2,3,4,5,6,7,8又は9のいずれかに記載の冷却処理装置。
【請求項11】 前記蓋体冷却部材は,電子冷熱素子を有することを特徴とする,請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9又は10のいずれかに記載の冷却処理装置。
【請求項12】 請求項1に記載の冷却処理装置を用いた冷却処理方法であって,前記蓋体を所定温度に冷却する工程と,当該蓋体を下降させて,前記基板に近づける工程とを有することを特徴とする,冷却処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図8】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2002−270484(P2002−270484A)
【公開日】平成14年9月20日(2002.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−63613(P2001−63613)
【出願日】平成13年3月7日(2001.3.7)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】