説明

冷却剤及び離型剤又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物、並びにこのような冷却剤及び離型剤並びに冷却剤及び潤滑剤

公知の冷却剤及び離型剤又は潤滑剤は生物分解可能ではなく、且つ何度も塗られると不所望な層形成が鋳型で起こりやすくなる。それゆえ提案されるのは、再利用可能な鋳型、殊に鋳鋼型用の冷却剤及び離型剤を製造するための濃縮物、殊に、水に溶解した活性物質による機械加工用の、冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物であって、本発明によりタンパク質を10〜50%の質量割合で有する濃縮物を使用することである。このような冷却剤及び離型剤又は潤滑剤を用いて、鋳型からの鋳造片の良好な取り出し性及び鋳型への良好な冷却作用が達成される。さらに、この薬剤は生物分解可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤を製造するための濃縮物、又は、殊に、水に溶解した活性物質による機械加工用の、冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物、並びに再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、並びに殊に機械加工用の、冷却剤及び潤滑剤に関する。
【0002】
再利用可能な鋳型の冷却剤及び離型剤としての使用に際しては、殊に、ダイカスト用の鋳鋼型又は熱間加工用の成形工具に関心が持たれる一方で、冷却剤及び潤滑剤としての使用は、合金鋳鉄、合金鋼、ニッケル基合金、コバルト基合金、非鉄金属及びプラスチックの機械加工、殊にドリル加工、フライス加工、研削加工、切削加工、旋削加工、ソーイング加工又はねじ切り加工並びに冷間加工に向けられている。
【0003】
このような冷却剤及び離型剤又は冷却剤及び潤滑剤は、先行技術から公知である。それらは、使用された鋳型及び機械加工された構成部材の冷却に用いられる。離型剤として使用される場合、型からの鋳造品の取り出し性を改善することになる層が同時に施与され、他方で、潤滑剤が使用される場合、構成部材及び工具の付加的な潤滑が行われ、それらの耐久性が高められる。
【0004】
そのようにして、例えば、アルミニウム、マグネシウム及び亜鉛若しくはこれらの金属の合金を基礎とするワークピースがダイカスト法又は溶湯鍛造法において鋳造される場合、水エマルジョンポリマー、たいていはワックス、シリコーン又は変性ポリシロキサンが冷却剤/離型剤として使用される。ダイカスト工具での使用前に、濃縮物として供給されたエマルジョンは、十分な作用のために必要とされる作業濃度に希釈される。その際、通常は、乾燥物質0.12質量%〜2.5質量%を冷却剤及び離型剤中で含有する希釈液が利用される。
【0005】
鋳型に、例えば、加圧下で560〜740℃の熱さの合金溶融物が圧し込まれる。溶融物の凝固後に、鋳造部材が、約450〜580℃の熱さの鋳型から取り出され、且つ冷却剤及び離型剤の噴霧によって、約120〜350℃の温度に下げられ、必要とされる場合にはクリーニングされ、且つ新たに溶融物が圧し込まれる。冷却剤及び離型剤中に含有された水は、型の冷却に用いられ、並びに、取り出し後に冷却剤及び離型剤の使用によって型上に留まる、場合により存在する残留物の型からのクリーニングに用いられる。離型剤は、鋳造されるべき金属が型に充填される際にポリマー自身が熱分解し、且つ引き続き圧密化することによって、温度状態に依存して離型層を形成するという働きがある。
【0006】
公知の冷却剤及び離型剤の使用は満足のいく結果につながるが、しかしながら、幾つかの欠点を有する。
【0007】
そうした欠点として、冷却剤及び離型剤は、型の領域中で、例えば、鋳造されるべき金属が圧し込まれない型枠及び型割線、並びに殆ど高温に曝されない輪郭線で頻繁に沈降することがあり、それというのも、これらの箇所の温度は、冷却剤及び離型剤を熱分解するには十分ではないからである。その代わりに、冷却剤及び離型剤は、それでいて存在する熱に基づき乾燥し、且つもはや完全には水に乳化し得ない。噴霧操作が繰り返された場合、鋳造片の寸法精度の問題及び型の気密性の問題を結果もたらす層が形成されることにつながり、そのため、鋳造品質は下がる。キャビティの領域中でも、離型剤の不十分な熱分解によって、鋳造品質を悪化させる沈着物が生じる可能性がある。そのうえ、特に乱流域中では残留物が鋳造部材表面に堆積する可能性がある。
【0008】
さらに、これらのエマルジョンの安定性及び廃棄性は問題をともなう。頻繁に、乳化後の比較的長い休止時間によって、エマルジョン中の活性物質の不均一な分布が生じ、そのことによって、これらの冷却剤及び離型剤による表面の湿潤は不均一となる。
【0009】
さらに、公知の冷却剤及び離型剤の洗浄された残分は、別の排水処理に供給されなければならず、それというのも、該残分は、容易に生物分解可能ではないからである。そのうえまた、適用中の熱分解に際して形成される、それらのガス状の残留物は、ヒトと環境を脅かすものであり得る。
【0010】
鋳造片の表面上には、取り除くことが困難であるワックス−又はシリコン含有の残留物が頻繁に留まることから、クリーニングに費やされる労力が高まる。それゆえ、これらの撥水性の残留物を取り除くために、強酸/強アルカリ又は他の溶剤が使用されなければならない。
【0011】
機械加工用の公知の冷却/潤滑剤の場合、チップを掃出す圧力によって、切削工具に構成刃先が時に発生し、且つワークピースの加工領域において薄青の変色が度々発生する。構成刃先は、切削工具の寿命を減らす。構成刃先の溶接によって、例えば、構成刃先の部分が剥がれ、且つワークピース表面に押し入れられる場合、ワークピース品質も悪化し得る。そのうえまた、冷却−潤滑剤は、ワークピース合金の合金元素を損傷する可能性がある添加剤としての腐食液を時折含有する。冷却潤滑剤を循環処理に送ることができるように、機械加工に際して生ずるチップから、何度も煩雑な多段工程によって、例えば濾過及び洗浄によって、付着している冷却/潤滑剤を取り除かなければならない。チップ自身は、それらの調製を、付着している冷却潤滑剤に基づきしようがないから、特殊廃棄物として度々廃棄されなければならない。
【0012】
それゆえ、上記の問題を回避する、冷却剤及び離型剤用の濃縮物並びに冷却剤及び潤滑剤用の濃縮物、若しくは冷却剤及び離型剤並びに冷却剤及び潤滑剤を提供するという課題が生まれる。殊に、この濃縮物は生物分解可能であるべきであり、鋳造プロセス及び成形プロセスにおけるサイクル時間は減らされるべきであり、且つ冷却剤及び離型剤として使用される場合、型上及び鋳造片上の残留物は可能な限り回避されるべきである。冷却剤及び潤滑剤として使用される場合、機械加工による成形に必要な力は減らされるべきであり、且つ冷却作用は高められるべきである。構成刃先が形成する傾向は、明らかに減らされるべきであり、且つワークピース合金の合金元素は、場合によっては存在し得る添加剤としての腐食液によって損傷されるべきではない。さらに、コスト削減のために、冷却剤及び離型剤中の若しくは冷却剤及び潤滑剤中の乾燥物質の割合を減らすことが望ましい。殊にコストは、機械加工に際して生ずるチップが、単純な溶かし込みによって、その際、冷却潤滑剤が、該チップの溶かし込みに際して、酸素還元雰囲気を生み出しながら熱分解し得ることで、再利用され得ることによっても下げられることができるべきである。
【0013】
この課題は、タンパク質を10%〜50%の質量割合で含む濃縮物によって、並びに、この濃縮物が水に1:100〜1:1200の比で、有利には1:500〜1:1000の比で希釈されている冷却剤及び離型剤及びこの濃縮物が水に1:20〜1:500の比で希釈されている冷却剤及び潤滑剤によって解決される。意想外にも、タンパク質、有利にはゼラチン、加水分解物、カゼインのようなタンパク質又は大豆タンパク質若しくは乳タンパク質を有する、このような冷却剤及び離型剤が、噴霧に際して、鋳型の表面の均一な湿潤を保証し、且つ噴霧操作中に、良好に付着する一様な離型膜を形成することが見出された。そのつどの鋳造プロセス後に噴霧操作が繰り返された場合、新しく塗られた薬剤並びに過剰の離型剤の剥離との間で平衡状態が生じる。分解挙動は、公知の離型剤と比較してより良好であり、そのことによって、乾燥している過剰の離型剤による堆積物の形成が、キャビディの領域中のみならず型枠の領域中でも著しく減少される。離型膜は、鋳造操作に際し、そこで支配的な温度条件下で熱分解によって、ダイカスト操作中に、離型作用の役割を果たす炭素リッチ層が作り出される仕方で分解される。鋳型へのアルミニウムの拡散が、同時に防止される。そのうえまた、熱分解は還元雰囲気の形成につながり、このことは、酸化物形成の軽減ゆえに、鋳造部材の品質にプラスの効果を及ぼす。この離型剤の残留物は、鋳造前及び鋳造後に、ワックス−又はシロキサンを基礎とする慣例の離型剤の場合より簡単に洗浄されることができる。それによって、一連の鋳造プロセスの間、より低温の型領域中で離型剤残留物が連続的に形成されることが防止され、このことは、鋳造プロセスに際してのより良好な寸法精度につながり、且つ信頼できる工具の開き−及び閉じ機能を保証する。製造された鋳造片は、水による洗浄及び引き続く乾燥後に、更なる表面処理なしに塗装されることができ、その結果、時間を浪費するクリーニング工程が回避される。サイクル時間は、明らかに改善された冷却作用によって短縮される。該薬剤は、内部−若しくは外部混合ノズルを用いた圧力式噴霧又は圧縮空気式噴霧のような通常の塗布法に適している。冷却剤及び離型剤中の水割合が高められることによって、工具の表面はより良好にぬらされ、且つより効果的に冷却される。殊に、いわゆるライデンフロストの現象が、タンパク質の水と結合する特性によって、公知のシリコーン油−又はワックスを基礎とする薬剤とは対照的に減少され、このことは、冷却作業に際しての上昇する蒸気量の明らかに識別可能な軽減によりわかる。
【0014】
このような冷却剤及び潤滑剤にとって、耐剪断システム及び耐圧システムが重要であり、並びに機械加工に際して均一な且つ長いチップ形成が発生することが確認された。チップの破断傾向は明らかに減少された。加工された構成部材の小さいバリで工具が僅かに傾くことが大幅に回避されることから、必要な切削力及び熱の発生が下がり、且つ構成刃先の形成のリスクが減少される。同時に冷却作用が改善され、且つ表面の存在する潤滑によって、必要なエネルギー消費が減らされる。加工に際して生ずるチップは、妨げとなる付着物を含んでおらず、且つ単純な溶かし込みによって原料の循環処理に供給されることができる。そのうえまた、冷却/潤滑剤は防食作用する。
【0015】
好ましくは、使用されるタンパク質は、1,000〜600,000ダルトンの分子量及び16〜19%の窒素含有率を有し、殊にヒドロキシプロリン含有率は10〜15%である。これらのタンパク質により、表面品質に関して特に良好な結果が達成される。
【0016】
好ましい実施態様では、濃縮物は、親水コロイドを0.1〜10%の質量割合で含有する。好ましくは、親水コロイドは、寒天、イナゴマメ穀粉、ペクチン、アラビアゴム又はデンプン又はコーンスターチの少なくとも1種以上の物質から選択される。これらは、離型添加剤として、潤滑作用、離型作用、皮膜形成及び湿潤挙動の付加的な改善のために用いられる。同様に、ポリエチレングリコール又はポリビニルアルコールのようなポリマーが、このために0.1〜10%の質量割合で混ぜられる。
【0017】
好ましくは、濃縮物は、防腐剤を0.1〜5%の質量割合で含有する。有利には、この防腐剤は、濃縮物の耐久性を改善するためのソルビン酸カリウム又はアスコルビン酸である。
【0018】
濃縮物がイオン性界面活性剤を0.1〜5%の質量割合で含有する場合も好ましい。この場合、好ましくは、ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウムが使用される。代替的に又は付加的に、好ましくは、有機酸又は無機酸が0.1〜5%の質量割合で添加されることができる。これらは、好ましくは、クエン酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、リン酸又はp−トルエンスルホン酸の群から選択されることができる。これらの添加剤は、冷却剤及び離型剤又は潤滑剤の湿潤挙動及び洗浄挙動を改善し、且つ該薬剤のクリーニング特性を改善する。
【0019】
濃縮物はまた、好ましい混合物の形で、非イオン性界面活性剤を0.1〜5%の質量割合で含有してよい。有利には、この場合、長鎖脂肪酸、殊にパーム油、アマニ油若しくは骨脂を基礎とするか又は、例えばリモネンのようなテルペンを基礎とする非イオン性界面活性剤が使用される。これらの物質は、塗られた薬剤の潤滑特性及び離型特性を改善する。
【0020】
さらに、濃縮物は、可塑剤を1〜10%の質量割合で含有し、該可塑剤は、ポリオール、殊にグリセリン又はソルビトールである。これらは、冷却剤及び離型剤又は潤滑剤の皮膜形成及び洗浄性にプラスに影響を及ぼす。
【0021】
好ましくは、融剤も0.1〜1%の質量割合で濃縮物に混ぜられることができる。これによって、適用における付加的な酸化防止が実現されることができる。好ましくは、この融剤は、ホウ酸ナトリウム又はフッ化リチウム、塩化リチウム又は炭酸リチウムである。
【0022】
更に進展する実施態様では、濃縮物は、触媒を100〜500ppmの質量割合で含有し、該触媒は、殊に酸化鉄又はピロリン酸第二鉄又はバナジウム若しくはその酸化物又はクロム若しくはその酸化物であってよい。この添加によって、熱分解がより低い温度で促進される。
【0023】
特別な実施態様ではまた、殺菌剤及び殺カビ剤が、好ましくは0.01ppm〜1ppmの質量割合で添加されることができる。特に適しているのは、殺菌剤としての銀塩、亜鉛塩又は銅塩、殊に酢酸銀、硝酸銀又は塩化銀である。
【0024】
特別な実施態様では、二硫化モリブデン又は窒化ホウ素のような固体滑剤が0.1〜1%の質量割合で添加されることができる。
【0025】
それをもって、公知の薬剤と比較して改善された冷却挙動を有しつつ、同時に改善された離型作用を、再現可能な熱伝達挙動若しくは改善された潤滑作用とともに有する濃縮物又は冷却剤及び離型剤若しくは潤滑剤が作り出される。そのようにして、鋳造作業に際しての欠点が回避されることができ、且つ鋳造部材の寸法精度が多数のサイクルを経ても保持されることができる。機械加工プロセスにおいて潤滑剤として使用される場合に必要とされる切削力は減らされる。
【0026】
この冷却剤及び離型剤の好ましい作用は、下に記載する試験において証明された。
【0027】
最初の試験では、本発明による冷却剤及び離型剤について、熱分解が、模擬実施した鋳造部材で残留物の付着を示さない濃度を測定した。濃縮物として、タンパク質として1,000〜7,000ダルトンの分子量及び16〜19%の窒素含有率を有するゼラチン50質量%、クエン酸1質量%、殺菌剤として酢酸銀0.1ppm、防腐剤としてソルビン酸カリウム0.1質量%及び残分の水を有する溶液を用いた。
【0028】
その際、材料1.2343から成る鋼板をまず、主成分のリン酸マンガン及び二硫化モリブデンを有する不動態化層で被覆した。この鋼板を、引き続き約250℃で、0.25%の乾燥物質含有率を有する溶液(これは、1:200の濃縮物の希釈比に相当する)に10秒間浸漬した。被覆した鋼板上に、材料AlSi9Cu3から成るアルミニウム片を施与した。皮膜の乾燥後、アルミニウム片の付着を確認することができた。アルミニウム片が備え付けられた鋼板を、その後に1分間、750℃に調温したオーブン中で貯蔵して、鋳造プロセスに際しての温度負荷を模擬実験した。この薄板を取り出した後、アルミニウム片は非常に容易に動かすことができた。残灰物を確認することができた。それをもって、生物分解可能な離型剤を用いると、離型剤残留物の粘着傾向が、模擬実施した鋳造部材に存在しないことを示すことができた。
【0029】
ダイカスト工具での更なる試験では、濃度を実際の条件に更に合わせた。0.125%の乾燥物質含有率(これは、ほぼ1:400の濃縮物の希釈比に相当する)の場合、満足のいく取り出しを確認することができ、且つ型の周縁領域中での若しくはキャビティ中での冷却剤及び離型剤の著しい形成は確認され得なかった。鋳造温度に依存して、完全な熱分解は、いかなる場合にも百パーセント行われているというわけではなかった。
【0030】
0.0625%の乾燥物質含有率(これは、1:800の濃縮物の希釈比に相当する)の場合、最適な冷却作用及び離型作用がダイカスト工具で達成される。先行技術から公知の冷却剤及び離型剤と比較して、50%まで減少された乾燥物質の量比の場合、少なくとも同等の冷却作用が達成される。その際に観察された離型作用は非常に良好であった。表面の光学的特性は、公知の冷却剤及び離型剤と比較して明らかに改善された。この特性の主要因は、表面の一様な湿潤であり、それというのも、冷却剤及び離型剤は完全な溶液として存在し、且つ単にエマルジョンとして存在するだけではないからである。
【0031】
0.0625%の乾燥物質含有率を有する冷却剤/離型剤を、続く試験において、先行技術に従った冷却剤及び離型剤と比較した。比較の冷却剤及び離型剤として、ポリシロキサンと合成ポリマーとから成る、0.15%の乾燥物質含有率を有するエマルジョンを用いた。
【0032】
双方の生成物を、材料1.2343の鋼板上で使用した。圧力式噴霧により作動するノズルチップを用いた該プレートの湿潤に際しての噴霧圧力は、およそ1.5barであった。
【0033】
まず、双方の冷却剤及び離型剤の洗浄挙動を試験した。その際、双方の生成物を、200℃に加熱された鋼板に、上述の方法に従って噴霧した。それぞれ、50mlの量を施した。冷却後、形成された皮膜を、それぞれ、相応する冷却離型剤で湿らせた布で拭き取った。クリーニングの度合いは、水を滴加し、且つ湿潤挙動を評価することによって調べた。その際、冷却剤及び離型剤で処理した双方のプレートを比較した。
【0034】
本発明による冷却剤及び離型剤で処理したプレートの場合、公知の冷却剤及び離型剤で処理したプレートの単に中程度の湿潤と比較して、品質の点で良好な湿潤が、ほとんど欠陥なしに現れた。
【0035】
同時に、ほぼ同程度に改善された洗浄挙動も達成され、該洗浄挙動は、それをもって、湿潤挙動と直接関連している。
鋼表面が公知の薬剤で処理される場合、面は中程度にしか塗らされず、このことは、例えばワックス又はシリコーンのような、低い表面張力を有する洗浄されなかった堆積の存在に帰せられる。本発明による冷却剤及び離型剤が使用される場合、表面の良好な湿潤が生じ、このことは、本発明による生成物の完全な水溶性に帰せられる
さらに、双方の冷却剤及び離型剤の分解挙動を、材料1.2343の鋼板上で、その際、鋼板をまず、500℃の熱さのオーブン中でおよそ5分加熱し、且つ各々のプレートを、双方の生成物の1つで上記の方法に従って圧し込んだ。この作業を3回繰り返した。その際、作業1回につき、冷却剤及び離型剤150mlを使用した。
【0036】
留まっている残留物を調べるために、鋼板を最終的な冷却後に白い布で拭き取った。本発明による薬剤で噴霧したプレートの場合、公知の薬剤で噴霧したプレートと比較して、調べた残留物が明らかに軽減していることがわかった。
【0037】
実施した試験によって、本発明による冷却剤及び離型剤の使用によって、湿潤性のみならず洗浄性における改善が達成されることを示すことができた。この結果、より良好な鋳造品質が、改善された分解挙動及びそこからもたらされる不所望な層形成の防止によって達成することができることになる。
【0038】
更なる試験では、濃縮物を、冷却剤及び潤滑剤としての使用のために水と1:50の比で混合した。冷却剤及び潤滑剤を、直径7.5mmを有するHSSドリルビットの冷却のために使用した。このドリルビットで、850rpmにて熱間加工鋼1.2343に穴を開けた。その際、通常用いられる潤滑剤と比較して、エネルギー消費、すなわち、ドリルを駆動する消費電流が下がることを確認した。改善された冷却作用によって、以前は存在していた強いスモーク発生も、鋼部材及び生ずるチップの薄青の変色と同様に完全に回避することができた。形成されたチップは、長く且つ一様であった。構成刃先は、もはや確認することはできなかった。
【0039】
それをもって、記載した冷却剤及び潤滑剤によって、温度に依存して、耐剪断システムが表される。出力の上昇とともに、冷却性能は、他の物質と比較して改善されることができ、それというのも、耐圧性の冷却剤及び潤滑剤は、改善された離型作用を有するからである。
【0040】
本発明は実施例に限定されるのではなく、当業者であれば様々な変形例を主請求項の保護範囲内で想定できることは自明であるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再利用可能な鋳型、殊に鋼鋳型用の冷却剤及び離型剤を製造するための濃縮物、又は、殊に、水に溶解した活性物質による機械加工用の、冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、該濃縮物が、タンパク質を10%〜50%の質量割合で含むことを特徴とする濃縮物。
【請求項2】
請求項1記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記タンパク質が、ゼラチン、加水分解物、カゼイン、大豆タンパク質又は乳タンパク質であることを特徴とする濃縮物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記タンパク質が、1,000〜600,000ダルトンの分子量及び16〜19%の窒素含有率を有することを特徴とする濃縮物。
【請求項4】
請求項3記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、ヒドロキシプロリン含有率が10〜15%であることを特徴とする濃縮物。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記濃縮物が、親水コロイドを0.1〜10%の質量割合で含有するか、又はポリマーを0.1〜10%の質量割合で含有することを特徴とする濃縮物。
【請求項6】
請求項5記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記親水コロイドが、寒天、イナゴマメ穀粉、ペクチン、アラビアゴム又はデンプン又はコーンスターチの少なくとも1種以上の物質から選択されており、又は前記ポリマーが、ポリエチレングリコール又はポリビニルアルコールであることを特徴とする濃縮物。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか1項記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記濃縮物が、防腐剤を0.1〜5%の質量割合で含有することを特徴とする濃縮物。
【請求項8】
請求項7記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記防腐剤が、ソルビン酸カリウム又はアスコルビン酸であることを特徴とする濃縮物。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記濃縮物が、イオン性界面活性剤を0.1〜5%の質量割合で含有することを特徴とする濃縮物。
【請求項10】
請求項9記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記イオン性界面活性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム又はラウリル硫酸ナトリウムであることを特徴とする濃縮物。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記濃縮物が、有機酸又は無機酸を0.1〜5%の質量割合で含有することを特徴とする濃縮物。
【請求項12】
請求項11記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記有機酸又は無機酸が、クエン酸、乳酸、ギ酸、シュウ酸、リン酸又はp−トルエンスルホン酸の群から選択されていることを特徴とする濃縮物。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記濃縮物が、非イオン性界面活性剤を0.1〜5%の質量割合で含有することを特徴とする濃縮物。
【請求項14】
請求項13記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記非イオン性界面活性剤が、長鎖脂肪酸又はテルペンを基礎として製造されていることを特徴とする濃縮物。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記濃縮物が、可塑剤を1〜10%の質量割合で含有することを特徴とする濃縮物。
【請求項16】
請求項15記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記可塑剤が、ポリオール、殊にグリセリン又はソルビトールであることを特徴とする濃縮物。
【請求項17】
請求項1から16までのいずれか1項記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記濃縮物が、融剤を0.1〜1%の質量割合で含有することを特徴とする濃縮物。
【請求項18】
請求項17記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記融剤が、ホウ酸ナトリウム又はフッ化リチウム又は塩化リチウム又は炭酸リチウムであることを特徴とする濃縮物。
【請求項19】
請求項1から18までのいずれか1項記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記濃縮物が、触媒を100〜500ppmで含有することを特徴とする濃縮物。
【請求項20】
請求項19記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記触媒が、酸化鉄又はピロリン酸第二鉄であるか、又はバナジウム又はその酸化物又はクロム又はその酸化物であることを特徴とする濃縮物。
【請求項21】
請求項1から20までのいずれか1項記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記濃縮物が、殺菌剤及び殺カビ剤を0.01ppm〜1ppmの質量割合で含有することを特徴とする濃縮物。
【請求項22】
請求項21記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記殺菌剤及び殺カビ剤が、銀塩、亜鉛塩又は銅塩であることを特徴とする濃縮物。
【請求項23】
請求項1から22までのいずれか1項記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記濃縮物が、固体滑剤を0.1〜1%の質量割合で含有することを特徴とする濃縮物。
【請求項24】
請求項23記載の、再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤、又は冷却剤及び潤滑剤を製造するための濃縮物において、前記固体の滑剤が、二硫化モリブデン又は窒化ホウ素であることを特徴とする濃縮物。
【請求項25】
再利用可能な鋳型、殊にダイカスト型用の冷却剤及び離型剤において、冷却剤及び離型剤が、請求項1から24までのいずれか1項記載の濃縮物を含有し、該濃縮物は水に1:100〜1:1200の比で希釈されていることを特徴とする冷却剤及び離型剤。
【請求項26】
請求項25記載の再利用可能な鋳型用の冷却剤及び離型剤において、前記濃縮物が、水に1:500〜1:1000の比で希釈されていることを特徴とする冷却剤及び離型剤。
【請求項27】
殊に機械加工用の、冷却剤及び潤滑剤において、冷却剤及び潤滑剤が、請求項1から24までのいずれか1項記載の濃縮物を含有し、該濃縮物が、1:20〜1:500の比で希釈されていることを特徴とする冷却剤及び潤滑剤。

【公表番号】特表2012−532973(P2012−532973A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519966(P2012−519966)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059459
【国際公開番号】WO2011/006777
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(509131775)カーエス アルミニウム−テヒノロギー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【氏名又は名称原語表記】KS Aluminium−Technologie GmbH
【住所又は居所原語表記】Hafenstrasse 25, D−74172 Neckarsulm, Germany
【出願人】(512011174)ゲリータ アクチエンゲゼルシャフト (1)
【氏名又は名称原語表記】GELITA AG
【住所又は居所原語表記】Uferstr. 7, D−69412 Eberbach, Germany
【Fターム(参考)】