冷却装置およびこれを備えた建設機械又は作業機械
【課題】冷却ファンからの空気の流量を十分に多くできる冷却装置およびこれを備えた建設機械を提供する。
【解決手段】冷却装置20は、冷却ファン21と、冷却ファン21の外周側に設けられたシュラウド40と、シュラウド40に設けられ、冷却ファン21の外周部に近接して配置された内周壁部、及び、内周壁部を囲むように設けられ、空気流れ方向下流側端が、内周壁部の空気流れ方向下流側端よりも、空気流れ方向下流側に位置する外周壁部を有するリング部51とを備え、冷却ファン21の外周縁の空気流れ方向下流側端は、内周壁部の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置している。
【解決手段】冷却装置20は、冷却ファン21と、冷却ファン21の外周側に設けられたシュラウド40と、シュラウド40に設けられ、冷却ファン21の外周部に近接して配置された内周壁部、及び、内周壁部を囲むように設けられ、空気流れ方向下流側端が、内周壁部の空気流れ方向下流側端よりも、空気流れ方向下流側に位置する外周壁部を有するリング部51とを備え、冷却ファン21の外周縁の空気流れ方向下流側端は、内周壁部の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置およびこれを備えた建設機械又は作業機械、特に、冷却ファンとそれを囲むシュラウドを有する冷却装置およびこれを備えた建設機械又は作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建設機械に搭載されるエンジンの冷却システムは、主に、ラジエータおよび冷却ファンから構成されている。ラジエータは、エンジンとの間で冷却媒体を循環させて、冷却媒体を外気で冷却する。冷却ファンは、ラジエータの周りに空気の流れを形成して、ラジエータの熱交換を補助する。さらに、ラジエータと冷却ファンの間には、両者を囲んでラジエータから冷却ファンへの空気の流れを確保するためのシュラウドが設けられている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
近年はエンジンの総熱量の増大により、ラジエータの水温が上昇することが大きな問題になっている。その問題を解決するためには、例えば冷却ファンの回転速度を高くすることで、冷却ファンによる空気の流量(つまり、ラジエータの周囲を通過する空気の流量)を多くすることが考えられる。しかし、冷却ファンの回転速度を高めると、騒音が大きくなるという問題が生じる。
【0004】
そこで、エンジンの冷却システムの冷却能力を向上させるとしても、冷却ファンの回転速度を高めることなく、冷却ファンによる空気の流量を多くすることが必要である。そのため、シュラウドの形状や位置が様々に工夫された技術が開発されている。例えば、冷却ファンから流れ出た空気の逆流(エンジン側の空気が回転ファンを通ってラジエータ側に戻ること)を防ぐために、シュラウドの先端に2つの筒状部を設けた構造が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−118141号公報(平成9年5月6日公開)
【特許文献2】特開2006−132380号公報(平成18年5月25日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のエンジンの冷却システムの構成では、冷却ファンがシュラウド内に完全に収容されているため、冷却ファンから排出される空気の流量が十分に多くならない。
また、特許文献2に記載のエンジンの冷却システムの構成では、冷却ファン全体がシュラウド外に配置されているため、シュラウドの円筒部が冷却ファンによる空気の流量に影響を与えることが少ない。したがって、冷却ファンから排出される空気の流量が十分に多くならない。
【0007】
本発明の課題は、冷却ファンの回転速度を高めることなく、冷却ファンからの空気の流量を十分に多くできる冷却装置およびこれを備えた建設機械又は作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明にかかる冷却装置は、冷却ファンと、前記冷却ファンの外周側に設けられたシュラウドと、前記シュラウドに設けられ、前記冷却ファンの外周部に近接して配置された内周壁部と、前記内周壁部を囲むように設けられ、空気流れ方向下流側端が、前記内周壁部の空気流れ方向下流側端よりも、空気流れ方向下流側に位置する外周壁部とを備え、前記冷却ファンの外周縁の空気流れ方向下流側端は、前記内周壁部の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置している、ことを特徴とする。
また、内周壁部及び外周壁部は、冷却ファンの回転軸回りに複数の部材を配置して形成してもよいが、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかは、冷却ファンの回転軸回りに連続するリング部とするのが好ましい(第2の発明)。
【0009】
この冷却装置では、冷却ファンが回転して空気が流れると、リング部の内周壁部と外周壁部との間に形成される空間に、負圧が発生して空気が吸い込まれたり、吸い込まれた空気が掻き出されたりすることで、冷却ファンからの空気の流量が増大する。したがって、冷却ファンの回転速度が従来と同じでも冷却能力が向上し、または冷却ファンの回転速度を下げても従来と同じ冷却能力を得ることができる。
【0010】
第3の発明にかかる冷却装置では、第1又は第2の発明において、冷却ファン外周縁における、シュラウドおよび内周壁部によって覆われた部分の空気流れ方向長さと、冷却ファンの空気流れ方向最大長さとの比(百分率)を内側かぶせ率とすると、内側かぶせ率が45%から85%の範囲にあるのが好ましく、さらに好ましくは、内側かぶせ率が60%から70%の範囲にあるのがよい(第4の発明)。
この冷却装置では、内側かぶせ率が45%から85%の範囲に設定されているため、冷却ファンによる空気の流量が十分に多い。したがって、冷却ファンの回転速度が従来と同じでも冷却能力が向上し、または冷却ファンの回転速度を下げても従来と同じ冷却能力を得ることができ、さらに内側かぶせ率を60%から70%とすることにより、一層冷却能力が向上する。
【0011】
第5の発明にかかる冷却装置では、第1から4の発明において、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかをシュラウドと一体に形成してもよい。
ここで、シュラウドと内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかを一体形成する方法としては、シュラウド及び内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかを樹脂製とし、射出成形等により一体に形成してもよい。
この冷却装置では、シュラウドと内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかが一体形成されることで、冷却装置の部品点数の軽減を図ることができ、冷却装置の組立作業の軽減を図ることができる。
【0012】
第6の発明にかかる冷却装置では、第1から4の発明において、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかをシュラウドとは別の部材で形成してもよい。
この冷却装置では、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかはシュラウドに対して装着可能であるため、シュラウドや冷却ファンの構造に合わせて適切な内周壁部及び外周壁部を選択可能である。
【0013】
第7の発明にかかる冷却装置では、第6の発明において、内周壁部と外周壁部を連結する環状の底部を有するのが好ましい。
この冷却装置では、内周壁部と外周壁部と底部とからなる一体の部材で形成できるため、製造・管理が容易である。
【0014】
第8の発明にかかる冷却装置では、第1から7の発明のいずれかにおいて、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかは、空気流れ方向に平行に延びる筒部を有しているのが好ましい。
この冷却装置では、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかが空気流れ方向に平行に延びる筒部を有しているため、容易に製作できる。
【0015】
第9の発明にかかる冷却装置では、第1から7の発明のいずれかにおいて、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかは、空気流れ方向下流側にいくにしたがって内径が大きくなる拡径部を有しているのが好ましい。
この冷却装置では、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかが拡径部を有しているため、冷却ファンによる空気の流量は十分に多くなる。
【0016】
第10の発明にかかる建設機械又は作業機械は、第1から9の発明のいずれかの冷却装置を備えている。
この建設機械又は作業機械では、前述した冷却効率が向上した冷却装置を備えることにより、冷却ファンによる騒音を低減した静粛性の高い建設機械又は作業機械とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る冷却装置によれば、冷却ファンの回転速度を高めることなく、冷却ファンからの空気の流量を十分に多くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態として、本発明の冷却装置となる冷却ユニット20を搭載した油圧ショベル(建設機械)1について、図を用いて説明すれば以下の通りである。
[第1実施形態]
[油圧ショベル1全体の構成]
本実施形態に係る油圧ショベル1は、図1に示すように、下部走行体2と、旋回台3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジンルーム6と、機器室9と、キャブ10と、冷却ユニット20(図3等参照)と、を備えている。
【0019】
下部走行体2は、進行方向における左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル1を前進、後進させるとともに、上面側に旋回台3を旋回可能な状態で搭載している。
旋回台3は、下部走行体2上において、任意の方向に旋回可能であって、上面に作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジンルーム6と、キャブ10とを搭載している。
【0020】
作業機4は、ブーム11と、ブーム11の先端に取り付けられたアーム12と、アーム12の先端に取り付けられたバケット13とを含むように構成されている。そして、作業機4は、図示しない油圧回路に含まれる各油圧シリンダ11a,12a,13a等によって、ブーム11やアーム12、バケット13等を上下に移動させながら、土砂や砂礫等の掘削を行う土木工事の現場において作業を行う。
【0021】
カウンタウェイト5は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回台3上におけるエンジンルーム6の後方に設けられている。
エンジンルーム6は、図2および図3に示すように、カウンタウェイト5に隣接する位置に配置されており、取っ手14aを持って開閉可能なエンジンフード14によって覆われた点検用の上部開口を有している。そして、エンジンルーム6は、下部走行体2や作業機4を駆動するための動力源であるエンジン6aおよびクーリングコア30等を含む冷却ユニット20(図3参照)を内部に収容している。
【0022】
機器室9は、作業機4の後方に配置されており、図示しない燃料タンク、作動油タンクおよび操作弁等を収容する。
キャブ10は、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であって、作業機4の先端部を見通せるように、旋回台3上における作業機4の側方となる左側前部に配置されている。
【0023】
冷却ユニット20は、図4に示すように、エンジンルーム6内におけるエンジン6aに隣接する位置に配置されており、エンジン6aに流れる冷却水や作動油等を冷却する。なお、この冷却ユニット20の構成については、後段にて詳述する。
[冷却ユニット20]
冷却ユニット20は、図3及び図4に示すように、冷却ファン21と、クーリングコア30と、を有している。また、冷却ユニット20は、後述するシュラウド40(図6等参照)を有しており、クーリングコア30に対して大量の空気を送り込みながら効率よく冷却を行う。
【0024】
冷却ファン21は、図6に示すように、エンジン6aに直結されており、エンジン6aによって直接的に羽根部材21a(図6等参照)が回転駆動される。さらに、本実施形態では、冷却ファン21を駆動すると、図4、図7及び図8の矢印Fに示すように、冷却ファン21に対して吸引する方向への空気の流れが形成される。つまり、冷却ファン21によって生成される空気の流れの中においては、クーリングコア30の下流側に冷却ファン21が配置される。なお、冷却ファン21の構成については、さらに後段にて詳述する。なお、以下、図4、図7及び図8の矢印F方向を空気流れ方向として、図左側を上流側として、図右側を下流側とする。
【0025】
クーリングコア30は、空気との熱交換によって冷却媒体を冷却するユニットであって、図5に示すように、ラジエータ31、オイルクーラ32、アフタークーラ33等を含むように構成されている。
ラジエータ31は、エンジン6aに流れる冷却水と、冷却ファン21によって生成される空気との間において熱交換を行わせることで、冷却水の温度を低下させる。
【0026】
オイルクーラ32は、作動油タンクから油圧回路に供給されて温度が上昇したオイルと、冷却ファン21によって生成される空気との間において熱交換を行わせることで、各油圧シリンダ11a,12a,13a等へと送られるオイルの温度を低下させる。
アフタークーラ33は、エンジン6aのターボチャージャ(図示せず)がエアクリーナ35から吸入して排出したエアと、冷却ファン21によって生成される空気との間において熱交換を行わせて、温度が上昇したエアを冷却した後、エンジン6aの吸気マニホールド(図示せず)へと送る。
【0027】
(冷却ファン21)
冷却ファン21は、エンジン6aを駆動源とする回転軸回りに回転自在に設けられる複数の羽根部材21aを有する軸流ファンである。羽根部材21aの枚数は、冷却ファン21の送風量、大きさによって異なるが、一般的には、6枚から11枚程度とされている。
羽根部材21aはエンジン6aによって回転駆動される。そして、複数の羽根部材21aを回転駆動させることで、回転軸から径方向外側へと広がる空気の流れが生成される。
【0028】
シュラウド40は、図6乃至図8に示すように、冷却ファン21の羽根部材21aの外周部分を覆うように取り付けられており、ケース部41を有している。ケース部41は、羽根部材21aの外周部分に沿って形成された円形の開口を有するプレート状の部材である。
ケース部41の内周縁には、リング部51が固定されている。リング部51は、冷却ファン21による空気の流量を多くするための部材であり、板金または樹脂製である。
リング部51は、図8に示すように、本発明における内周壁部としての内周壁部52と、本発明における外周壁部としての外周壁部53と底部54とを有している。
内周壁部52は、ケース部41の開口の縁に位置しており、冷却ファン21(の羽根部材21a)の外周縁に近接している。内周壁部52の径は冷却ファン21の外径より大きく、両者の間の隙間Gは例えば15mmである。
外周壁部53は、内周壁部52より半径方向外側に、内周壁部52を囲むように配置されており、両者の間には環状の空間55が確保されている。内周壁部52と外周壁部53は同心に配置された円筒状部材であり、それぞれが空気流れ方向にストレートに(平行に)延びている。
本実施形態では、内周壁部52および外周壁部53には穴が形成されていない。内周壁部52の空気流れ方向長さh1は外周壁部53の空気流れ方向長さh2より小さい。言い換えると、外周壁部53の空気流れ方向下流側端は、内周壁部52の空気流れ方向下流側端より、空気流れ方向下流側に位置している。
底部54は環状の平坦な部材であり、外周壁部53と内周壁部52とを連結している。以上に述べたように、リング部51は単独の部材であり、ケース部41に装着可能である。リング部51は、図示しない固定部を有していてもよい。例えば、固定部は円周方向複数箇所において底部から半径方向外側に延びる突起であってもよい。リング部51をケース部41に固定する手段は溶接や接着その他固定部材によるものでもよい。
【0029】
なお、本実施形態では、内周壁部52の空気流れ方向長さh1は20mm、外周壁部53の空気流れ方向長さh2は30mm、底部54の幅Wは30mmである。ただし、本発明はこれらの数値に限定されない。
次に、冷却ファン21とリング部51の位置関係について説明する。図8に示すように、冷却ファン21の外周縁部は、リング部51の内周壁部52より空気流れ方向下流側に位置している。
より詳細に限定すれば、冷却ファン21の外周縁部の空気流れ方向下流側端は、内周壁部52の空気流れ方向下流側端より、空気流れ方向下流側に位置している。
冷却ファン21の空気流れ方向長さをh3として、冷却ファン21において内周壁部52の先端より空気流れ方向上流側部分の空気流れ方向長さをh4とする。
そして、(h4/h3)の百分率を「内側かぶせ率(%)」と定義する。本実施形態では、例えば、内側かぶせ率は62.5%である。
【0030】
[冷却動作]
冷却ファン21がエンジン6aによって駆動されると、クーリングコア30側の空気が冷却ファン21に吸い込まれていく。この空気の流れによって、クーリングコア30のラジエータ31等が冷却される。
図9(A)に示すように、空間55内の位置P1(図9における観測点)を冷却ファン21の羽根部材21aが通過する際には羽根部材21aからの空気流れがP1にある空気を掻き出し、P1に負圧を発生させる。次に、図9(B)に示すように、空間55内のある位置P1(図9の観測点)が冷却ファン21の羽根部材21a同士の間に位置すると、前記位置P1に発生している負圧により空気を吸い込む。このような現象によって冷却ファン21による空気の流量は従来に比べて大幅に多くなる。
この結果、クーリングコア30に対して供給される空気の量を増やして冷却効率を向上させることができる。
【0031】
特に、本実施形態では、冷却ファン21の外周縁下流側端がリング部51の内周壁部52より空気流れ方向下流側に位置しているため、前述の現象における空気の流量増大に貢献する。これは、前述の構造によって、羽根部材21aの通過時に空間55内の空気を掻き出す効果が大きいためであると考えられる。
【0032】
[内側かぶせ率と風量の関係]
まず、同一回転数の冷却ファン21において、内周壁部52の内側かぶせ率を変化させて、冷却ファン21による空気の流量の変化を測定したところ、図10に示されるように、内側かぶせ率100%では風量が少なかった。内側かぶせ率を下げていくと、風量は徐々に多くなっていった。内側かぶせ率60%から70%程度でピークとなり、さらに内側かぶせ率を下げていくと、風量は少なくなっていき、45%未満、85%を超える内側かぶせ率では、内側かぶせ率が100%の場合とほとんど差が出なくなった。尚、図10において、グラフの縦軸の目盛りのレンジは、10m3/minである。
以上より、内側かぶせ率が45%から85%の範囲で十分な風量を得られることが分かった。
【0033】
[冷却ユニット20の特徴]
(1)
建設機械用冷却ユニット20は、油圧ショベル1に用いられる冷却装置であって、冷却ファン21と、冷却ファン21の外周側に設けられたシュラウド40と、シュラウド40に設けられ冷却ファン21の外周部に近接して配置された内周壁部52を有する空間55とを備えている。空間55は、冷却ファン21から排出される空気によって負圧を発生することで冷却ファン21による空気の流量を増大させる。冷却ファン21の外周縁の空気流れ方向下流側端は、内周壁部52の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置している。
【0034】
この冷却ユニット20では、冷却ファン21が回転して空気が流れると、空間55が負圧を発生させることで、冷却ファン21による空気の流量が増大する。具体的には、空間55内のある点が羽根部材21a間に位置するとそこで発生した負圧によって空気が吸い込まれ、次にその空気が羽根部材21aによって掻き出されるような現象が生じていると考えられる。ここで、冷却ファン21の外周縁の空気流れ方向下流側端が内周壁部52の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置しているため、十分な量の空気が空間55側に供給され、その空気と空間55での負圧との相乗効果によって冷却ファン21による空気の流量が増大する。その結果、クーリングコア30の周囲に流れる空気の流量が多くなって、クーリングコア30のラジエータ31等のエンジン冷却性能が向上する。
(2)
冷却ファン21の外周縁においてシュラウド40および内周壁部52によって覆われた部分の空気流れ方向長さと冷却ファン21の全体の空気流れ方向長さとの比(百分率)を内側かぶせ率とすると、内側かぶせ率が45から85%の範囲にある。内側かぶせ率が適切な範囲に設定されているため、冷却ファン21による空気の流量が十分に多くなる。したがって、冷却ファン21の回転速度が従来と同じでも冷却能力が向上し、または冷却ファン21の回転速度を下げても従来と同じ冷却能力を得ることができる。
(3)
空間55は、具体的には、リング部51によって構成されている。リング部51は、冷却ファン21の外周部に近接して配置された内周壁部52と、内周壁部52より空気流れ方向下流側に長く延びる外周壁部53とを有する。冷却ファン21の外周縁の空気流れ方向下流側端は、内周壁部52の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置している。冷却ファン21が回転して空気が流れると、リング部51の内周壁部52と外周壁部53との間の空間55に負圧が発生することで、上述したように、冷却ファン21からの空気の流量が増大する。
(4)
リング部51はシュラウド40とは別の部材からなる。リング部51はシュラウド40に対して装着可能であるため、シュラウド40や冷却ファン21の構造に合わせて適切なリング部51を選択可能である。
(5)
リング部51は、内周壁部52と外周壁部53を連結する環状の底部54を有する。リング部51が内周壁部52と外周壁部53と底部54とからなる一体の部材であるため、リング部51の製造・管理が容易である。
(6)
内周壁部52および外周壁部53は、空気流れ方向に平行に延びる筒状部分である。そのため、リング部51の製作が容易である。
(7)
油圧ショベル等の建設機械に搭載されているエンジン6aによって、冷却ファン21を回転駆動する。このようにエンジン6aの回転を冷却ファン21の回転駆動に用いることができるため、構成を簡素化することができる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
前記実施形態では、内周壁部及び外周壁部を冷却ファン21を囲む連続するリング部51として構成していた。
これに対して第2実施形態に係る冷却装置では、図11に示すように、前記連続するリング部51を複数の壁部構成部材112で形成した。具体的には、壁部構成部材112を冷却ファン21の回転軸回りに、該冷却ファン21を囲むように組み合わせている点が相違する。
各壁部構成部材112は、第1実施形態の図8と同様に、内周壁部52及び外周壁部53が形成されており、冷却ファン21の空気流れ方向下流側端は、内周壁部52の空気流れ方向下流側端よりも空気流れ方向下流側に位置している。
内側かぶせ率は、第1実施形態と同様に、45%から85%とされており、より好ましくは、60%から70%とするのがよい。
【0036】
このような壁部構成部材112を、シュラウドのケース部41の外面において、冷却ファン21の回転軸回りに配列し、ボルトや接着剤または溶接等により固定することで形成することができる。
尚、隣接する壁部構成部材112の間には、わずかな隙間が形成されるが、各壁部構成部材112の内周壁部52及び外周壁部53が冷却ファン21の外周部の略全部を囲むこととなるため、冷却効率の向上、という第1実施形態で述べた効果が損なわれることは殆どない。また、より確実に効果を享受しようとするのであれば、壁部構成部材112のケース部41の固定後、隣接する壁部構成部材112の間に形成された隙間をジョイント部材やパテ、溶接等で埋めてしまえばよい。
さらに、リング部の分割数も図11の場合には、4つであったが、これに限らず、2つ乃至6つの壁部構成部材で形成しても構わない。
このような第2実施形態によれば、大型の建設機械等で用いられる大型の冷却ファン21を備えた冷却装置であっても、冷却ファン21の周囲に略全周に亘って内周壁部52及び外周壁部53を形成することができる。
【0037】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
前記第1実施形態では、リング部51は環状の単独の部材として構成されていたが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、複数の部材を組み合わせることにより、内周壁部と外周壁部とが環状に連続するリング部を形成してもよい。例えば、図12に示すように、内周壁部52と外周壁部53とを有する2つの半環状部材113の端部同士を組み合わせることにより、連続するリング部を形成することもできる。
(B)
上記実施形態では、内周壁部と外周壁部は空気流れ方向に平行に延びる部分であるとして説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0038】
例えば、図13に示すリング部61は、内周壁部62と外周壁部63と底部64とを有している。内周壁部62は、ケース部41の開口の縁に位置している。外周壁部63は内周壁部62より半径方向外側に配置されており、両者の間には環状の空間65が確保されている。内周壁部62と外周壁部63は同心に配置されており、それぞれが空気流れ方向下流側にいくにしたがって径が大きくなるラッパ形状(すそ広がり形状)を有している。なお、内周壁部および外周壁部の一方のみがラッパ形状であっても良い。
【0039】
この実施形態でも、前記実施形態と同様の効果が得られる。
(C)
例えば、図14に示すリング部71は、内周壁部72と外周壁部73と底部74とを有している。内周壁部72は、ケース部41の開口の縁に位置している。外周壁部73は内周壁部72より半径方向外側に配置されており、両者の間には環状の空間75が確保されている。内周壁部72と外周壁部73は同心に配置されており、それぞれが空気流れ方向にストレートに(平行に)延びている。より詳細には、内周壁部72の先端には、テーパー部72aが形成されている。外周壁部73の先端には、テーパー部73aが形成されている。テーパー部72a,73aは空気流れ方向下流側にいくにしたがって径が大きくなっていく。なお、内周壁部および外周壁部の一方のみがテーパー部を有していても良い。
【0040】
この実施形態でも、前記実施形態と同様の効果が得られる。
(D)
上記実施形態では、内周側壁部と外周壁部は一体の部材であるとして説明した。
しかし、本発明はこれに限定されない。
【0041】
例えば、図15に示すリング部81は、内周壁部82と外周壁部83との2つの部材から構成されている。内周壁部82と外周壁部83との間には、環状の空間85が確保されている。内周壁部82は、筒状部82aと固定部82bとから構成されている。固定部82bは、ボルトや溶接等の手段によってケース部41に固定されている。外周壁部83は、筒状部83aと固定部83bとから構成されている。固定部83bは、ボルトや溶接等の手段によってシュラウド40のケース部41に固定されている。
【0042】
この実施形態でも、前記実施形態と同様の効果が得られる。
(E)
上記実施形態では、内周壁部と外周壁部はシュラウドとは別の部材であると説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。
例えば、図16に示すリング部91は、ケース部41の内周縁を折り曲げて形成した内周壁部92と、外周壁部93とから構成されている。内周壁部92と外周壁部93との間には、環状の空間95が確保されている。外周壁部93は、筒状部93aと固定部93bとから構成されている。固定部93bは、ボルトや溶接等の手段によってシュラウド40のケース部41に固定されている。
【0043】
この実施形態でも、前記実施形態と同様の効果が得られる。
(F)
さらに、本発明では、リング部をシュラウドに一体形成することも可能である。すなわち、図17に示すように、リング部101はシュラウドのケース部41に一体形成されており、ケース部41の内周縁には、内周壁部102が形成され、ケース部41の外面には、外周壁部103が形成され、内周壁部102及び外周壁部103の間には、負圧を発生させる空間105が形成される。
このような実施形態は、シュラウドのケース部41及びリング部101を樹脂製とし、射出成形等により形成することができる。このようなシュラウドは、ある程度の耐久性が確保できればよい、小型の建設機械に好適に採用することができる。
このような実施形態では、前記実施形態と同様の効果がある上、部品点数の低減による組立作業の負荷軽減、建設機械の軽量化を図ることができる。
【0044】
(G)
上記実施形態では、図4に示すように、エンジン6a直結によって冷却ファン21を回転駆動させる構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
例えば、ラジエータ等のクーリングコアの近傍に配置された油圧駆動モータによって冷却ファンが回転駆動される構成であってもよい。
この場合には、エンジン直結で回転駆動される冷却ファンと比較して、エンジンの振動による影響をほとんど無視して設計することができるため、冷却ファン21とシュラウド40に設けられたリング部51の内周壁部52との間の隙間Gを最小限とすることができる。この結果、シュラウド40付近における空気の流れがよりスムーズになって、クーリングコアの冷却効率の向上等の効果を得ることができる。
【0046】
また、電動モータによって冷却ファンが回転駆動される構成であっても良い。
(H)
上記実施形態では、図4に示すように、空気の流れる方向において、クーリングコア30の下流側に冷却ファン21を配置した、いわゆる吸気型の冷却ユニット20を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
例えば、図18に示すように、ラジエータ等のクーリングコア30に対して冷却ファン21でエンジン6a側から空気を送り込む、いわゆる吹き出し型の冷却ユニット20に対して、本発明を適用することも可能である。
すなわち、吹き出し型の冷却ユニット20であっても、シュラウド40の内部にリング部51を形成することにより、前述した第1実施形態と同様の作用によって風量が増加し、クーリングコア30を効率的に冷却することが可能となる。
(I)
上記実施形態では、図6等に示すように、冷却ファン21として、軸流ファンを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
例えば、シロッコファン、斜軸流ファン等の他種類の送風ファンを用いて冷却ユニットを構成してもよい。
(J)
上記実施形態では、クーリングコア30を構成する熱交換器として、ラジエータ31、オイルクーラ32およびアフタークーラ33を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
例えば、本発明に係る冷却ファンに対向配置されるクーリングコアとしては、ラジエータだけであってもよいし、他の熱交換器やこれらの組み合わせであってもよい。
(K)
上記実施形態では、図1に示すように、本発明の冷却ファン21のシュラウド40が適用される建設機械として、油圧ショベル1を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
例えば、油圧ショベル以外にも、ホイルローダ等の他の建設機械や、フォークリフト等の作業機械に対しても同様に適用は可能である。
(L)
上述の実施形態は単独で採用しても良いし、組み合わせて採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明にかかる冷却装置およびこれを備えた建設機械又は作業機械は、冷却ファンの回転速度を高めることなく、冷却ファンからの空気の流量を十分に多くできるという効果を奏することから、冷却ファンを搭載した各種作業機械に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷却ファンのシュラウド構造を搭載した油圧ショベルの構成を示す全体図。
【図2】図1の油圧ショベルの後方に搭載されたエンジンルームおよびカウンタウェイト周辺の構成を示す斜視図。
【図3】図2のエンジンルームの上面に取り付けられたエンジンフードを開けた状態を示す斜視図。
【図4】図3のエンジンフード内の構成を示す平面図。
【図5】図4の部分拡大図。
【図6】冷却ユニットの構造を示す斜視図。
【図7】エンジンと冷却ユニットの関係を示す模式図。
【図8】リング部と冷却ファン外周縁との位置関係を示す断面図。
【図9】リング部による風量増大効果を説明するための模式図。
【図10】内側かぶせ率と風量との関係を示すグラフ。
【図11】本発明の第2実施形態に係る冷却ファンの内周壁部及び外周壁部の構造を表す正面図。
【図12】他の実施形態におけるリング部の構造を示す正面図。
【図13】他の実施形態におけるリング部の構造を示す断面図。
【図14】他の実施形態におけるリング部の構造を示す断面図。
【図15】他の実施形態におけるリング部の構造を示す断面図。
【図16】他の実施形態におけるリング部の構造を示す断面図。
【図17】他の実施形態におけるリング部の構造を示す断面図。
【図18】吹き出し型の冷却ユニットに本発明を採用した場合のエンジンと冷却ユニットの関係を示す模式図。
【符号の説明】
【0053】
1…油圧ショベル、2…下部走行体、3…旋回台、4…作業機、5…カウンタウェイト、6…エンジンルーム、6a…エンジン、9…機器室、10…キャブ、11…ブーム、11a,12a,13a…油圧シリンダ、12…アーム、13…バケット、14…エンジンフード、14a…取っ手、20…冷却ユニット、21…冷却ファン、21a…羽根部材、30…クーリングコア、31…ラジエータ、32…オイルクーラ、33…アフタークーラ、35…エアクリーナ、40…シュラウド、41…ケース部、51…リング部、52…内周壁部、53…外周壁部、54…底部、55…空間、61…リング部、62…内周壁部、63…外周壁部、64…底部、65…空間、71…リング部、72a,73a…テーパー部、72…内周壁部、73…外周壁部、74…底部、75…空間、81…リング部、82…内周壁部、82a…筒状部、82b…固定部、83…外周壁部、83a…筒状部、83b…固定部、85…空間、91…リング部、92…内周壁部、93…外周壁部、93a…筒状部、93b…固定部、95…空間、101…リング部、102…内周壁部、103…外周壁部、105…空間、P…履帯、112…壁部構成部材、113…半環状部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置およびこれを備えた建設機械又は作業機械、特に、冷却ファンとそれを囲むシュラウドを有する冷却装置およびこれを備えた建設機械又は作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建設機械に搭載されるエンジンの冷却システムは、主に、ラジエータおよび冷却ファンから構成されている。ラジエータは、エンジンとの間で冷却媒体を循環させて、冷却媒体を外気で冷却する。冷却ファンは、ラジエータの周りに空気の流れを形成して、ラジエータの熱交換を補助する。さらに、ラジエータと冷却ファンの間には、両者を囲んでラジエータから冷却ファンへの空気の流れを確保するためのシュラウドが設けられている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
近年はエンジンの総熱量の増大により、ラジエータの水温が上昇することが大きな問題になっている。その問題を解決するためには、例えば冷却ファンの回転速度を高くすることで、冷却ファンによる空気の流量(つまり、ラジエータの周囲を通過する空気の流量)を多くすることが考えられる。しかし、冷却ファンの回転速度を高めると、騒音が大きくなるという問題が生じる。
【0004】
そこで、エンジンの冷却システムの冷却能力を向上させるとしても、冷却ファンの回転速度を高めることなく、冷却ファンによる空気の流量を多くすることが必要である。そのため、シュラウドの形状や位置が様々に工夫された技術が開発されている。例えば、冷却ファンから流れ出た空気の逆流(エンジン側の空気が回転ファンを通ってラジエータ側に戻ること)を防ぐために、シュラウドの先端に2つの筒状部を設けた構造が知られている(例えば、特許文献2を参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平9−118141号公報(平成9年5月6日公開)
【特許文献2】特開2006−132380号公報(平成18年5月25日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のエンジンの冷却システムの構成では、冷却ファンがシュラウド内に完全に収容されているため、冷却ファンから排出される空気の流量が十分に多くならない。
また、特許文献2に記載のエンジンの冷却システムの構成では、冷却ファン全体がシュラウド外に配置されているため、シュラウドの円筒部が冷却ファンによる空気の流量に影響を与えることが少ない。したがって、冷却ファンから排出される空気の流量が十分に多くならない。
【0007】
本発明の課題は、冷却ファンの回転速度を高めることなく、冷却ファンからの空気の流量を十分に多くできる冷却装置およびこれを備えた建設機械又は作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明にかかる冷却装置は、冷却ファンと、前記冷却ファンの外周側に設けられたシュラウドと、前記シュラウドに設けられ、前記冷却ファンの外周部に近接して配置された内周壁部と、前記内周壁部を囲むように設けられ、空気流れ方向下流側端が、前記内周壁部の空気流れ方向下流側端よりも、空気流れ方向下流側に位置する外周壁部とを備え、前記冷却ファンの外周縁の空気流れ方向下流側端は、前記内周壁部の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置している、ことを特徴とする。
また、内周壁部及び外周壁部は、冷却ファンの回転軸回りに複数の部材を配置して形成してもよいが、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかは、冷却ファンの回転軸回りに連続するリング部とするのが好ましい(第2の発明)。
【0009】
この冷却装置では、冷却ファンが回転して空気が流れると、リング部の内周壁部と外周壁部との間に形成される空間に、負圧が発生して空気が吸い込まれたり、吸い込まれた空気が掻き出されたりすることで、冷却ファンからの空気の流量が増大する。したがって、冷却ファンの回転速度が従来と同じでも冷却能力が向上し、または冷却ファンの回転速度を下げても従来と同じ冷却能力を得ることができる。
【0010】
第3の発明にかかる冷却装置では、第1又は第2の発明において、冷却ファン外周縁における、シュラウドおよび内周壁部によって覆われた部分の空気流れ方向長さと、冷却ファンの空気流れ方向最大長さとの比(百分率)を内側かぶせ率とすると、内側かぶせ率が45%から85%の範囲にあるのが好ましく、さらに好ましくは、内側かぶせ率が60%から70%の範囲にあるのがよい(第4の発明)。
この冷却装置では、内側かぶせ率が45%から85%の範囲に設定されているため、冷却ファンによる空気の流量が十分に多い。したがって、冷却ファンの回転速度が従来と同じでも冷却能力が向上し、または冷却ファンの回転速度を下げても従来と同じ冷却能力を得ることができ、さらに内側かぶせ率を60%から70%とすることにより、一層冷却能力が向上する。
【0011】
第5の発明にかかる冷却装置では、第1から4の発明において、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかをシュラウドと一体に形成してもよい。
ここで、シュラウドと内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかを一体形成する方法としては、シュラウド及び内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかを樹脂製とし、射出成形等により一体に形成してもよい。
この冷却装置では、シュラウドと内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかが一体形成されることで、冷却装置の部品点数の軽減を図ることができ、冷却装置の組立作業の軽減を図ることができる。
【0012】
第6の発明にかかる冷却装置では、第1から4の発明において、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかをシュラウドとは別の部材で形成してもよい。
この冷却装置では、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかはシュラウドに対して装着可能であるため、シュラウドや冷却ファンの構造に合わせて適切な内周壁部及び外周壁部を選択可能である。
【0013】
第7の発明にかかる冷却装置では、第6の発明において、内周壁部と外周壁部を連結する環状の底部を有するのが好ましい。
この冷却装置では、内周壁部と外周壁部と底部とからなる一体の部材で形成できるため、製造・管理が容易である。
【0014】
第8の発明にかかる冷却装置では、第1から7の発明のいずれかにおいて、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかは、空気流れ方向に平行に延びる筒部を有しているのが好ましい。
この冷却装置では、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかが空気流れ方向に平行に延びる筒部を有しているため、容易に製作できる。
【0015】
第9の発明にかかる冷却装置では、第1から7の発明のいずれかにおいて、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかは、空気流れ方向下流側にいくにしたがって内径が大きくなる拡径部を有しているのが好ましい。
この冷却装置では、内周壁部及び外周壁部の少なくともいずれかが拡径部を有しているため、冷却ファンによる空気の流量は十分に多くなる。
【0016】
第10の発明にかかる建設機械又は作業機械は、第1から9の発明のいずれかの冷却装置を備えている。
この建設機械又は作業機械では、前述した冷却効率が向上した冷却装置を備えることにより、冷却ファンによる騒音を低減した静粛性の高い建設機械又は作業機械とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る冷却装置によれば、冷却ファンの回転速度を高めることなく、冷却ファンからの空気の流量を十分に多くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態として、本発明の冷却装置となる冷却ユニット20を搭載した油圧ショベル(建設機械)1について、図を用いて説明すれば以下の通りである。
[第1実施形態]
[油圧ショベル1全体の構成]
本実施形態に係る油圧ショベル1は、図1に示すように、下部走行体2と、旋回台3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジンルーム6と、機器室9と、キャブ10と、冷却ユニット20(図3等参照)と、を備えている。
【0019】
下部走行体2は、進行方向における左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル1を前進、後進させるとともに、上面側に旋回台3を旋回可能な状態で搭載している。
旋回台3は、下部走行体2上において、任意の方向に旋回可能であって、上面に作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジンルーム6と、キャブ10とを搭載している。
【0020】
作業機4は、ブーム11と、ブーム11の先端に取り付けられたアーム12と、アーム12の先端に取り付けられたバケット13とを含むように構成されている。そして、作業機4は、図示しない油圧回路に含まれる各油圧シリンダ11a,12a,13a等によって、ブーム11やアーム12、バケット13等を上下に移動させながら、土砂や砂礫等の掘削を行う土木工事の現場において作業を行う。
【0021】
カウンタウェイト5は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回台3上におけるエンジンルーム6の後方に設けられている。
エンジンルーム6は、図2および図3に示すように、カウンタウェイト5に隣接する位置に配置されており、取っ手14aを持って開閉可能なエンジンフード14によって覆われた点検用の上部開口を有している。そして、エンジンルーム6は、下部走行体2や作業機4を駆動するための動力源であるエンジン6aおよびクーリングコア30等を含む冷却ユニット20(図3参照)を内部に収容している。
【0022】
機器室9は、作業機4の後方に配置されており、図示しない燃料タンク、作動油タンクおよび操作弁等を収容する。
キャブ10は、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であって、作業機4の先端部を見通せるように、旋回台3上における作業機4の側方となる左側前部に配置されている。
【0023】
冷却ユニット20は、図4に示すように、エンジンルーム6内におけるエンジン6aに隣接する位置に配置されており、エンジン6aに流れる冷却水や作動油等を冷却する。なお、この冷却ユニット20の構成については、後段にて詳述する。
[冷却ユニット20]
冷却ユニット20は、図3及び図4に示すように、冷却ファン21と、クーリングコア30と、を有している。また、冷却ユニット20は、後述するシュラウド40(図6等参照)を有しており、クーリングコア30に対して大量の空気を送り込みながら効率よく冷却を行う。
【0024】
冷却ファン21は、図6に示すように、エンジン6aに直結されており、エンジン6aによって直接的に羽根部材21a(図6等参照)が回転駆動される。さらに、本実施形態では、冷却ファン21を駆動すると、図4、図7及び図8の矢印Fに示すように、冷却ファン21に対して吸引する方向への空気の流れが形成される。つまり、冷却ファン21によって生成される空気の流れの中においては、クーリングコア30の下流側に冷却ファン21が配置される。なお、冷却ファン21の構成については、さらに後段にて詳述する。なお、以下、図4、図7及び図8の矢印F方向を空気流れ方向として、図左側を上流側として、図右側を下流側とする。
【0025】
クーリングコア30は、空気との熱交換によって冷却媒体を冷却するユニットであって、図5に示すように、ラジエータ31、オイルクーラ32、アフタークーラ33等を含むように構成されている。
ラジエータ31は、エンジン6aに流れる冷却水と、冷却ファン21によって生成される空気との間において熱交換を行わせることで、冷却水の温度を低下させる。
【0026】
オイルクーラ32は、作動油タンクから油圧回路に供給されて温度が上昇したオイルと、冷却ファン21によって生成される空気との間において熱交換を行わせることで、各油圧シリンダ11a,12a,13a等へと送られるオイルの温度を低下させる。
アフタークーラ33は、エンジン6aのターボチャージャ(図示せず)がエアクリーナ35から吸入して排出したエアと、冷却ファン21によって生成される空気との間において熱交換を行わせて、温度が上昇したエアを冷却した後、エンジン6aの吸気マニホールド(図示せず)へと送る。
【0027】
(冷却ファン21)
冷却ファン21は、エンジン6aを駆動源とする回転軸回りに回転自在に設けられる複数の羽根部材21aを有する軸流ファンである。羽根部材21aの枚数は、冷却ファン21の送風量、大きさによって異なるが、一般的には、6枚から11枚程度とされている。
羽根部材21aはエンジン6aによって回転駆動される。そして、複数の羽根部材21aを回転駆動させることで、回転軸から径方向外側へと広がる空気の流れが生成される。
【0028】
シュラウド40は、図6乃至図8に示すように、冷却ファン21の羽根部材21aの外周部分を覆うように取り付けられており、ケース部41を有している。ケース部41は、羽根部材21aの外周部分に沿って形成された円形の開口を有するプレート状の部材である。
ケース部41の内周縁には、リング部51が固定されている。リング部51は、冷却ファン21による空気の流量を多くするための部材であり、板金または樹脂製である。
リング部51は、図8に示すように、本発明における内周壁部としての内周壁部52と、本発明における外周壁部としての外周壁部53と底部54とを有している。
内周壁部52は、ケース部41の開口の縁に位置しており、冷却ファン21(の羽根部材21a)の外周縁に近接している。内周壁部52の径は冷却ファン21の外径より大きく、両者の間の隙間Gは例えば15mmである。
外周壁部53は、内周壁部52より半径方向外側に、内周壁部52を囲むように配置されており、両者の間には環状の空間55が確保されている。内周壁部52と外周壁部53は同心に配置された円筒状部材であり、それぞれが空気流れ方向にストレートに(平行に)延びている。
本実施形態では、内周壁部52および外周壁部53には穴が形成されていない。内周壁部52の空気流れ方向長さh1は外周壁部53の空気流れ方向長さh2より小さい。言い換えると、外周壁部53の空気流れ方向下流側端は、内周壁部52の空気流れ方向下流側端より、空気流れ方向下流側に位置している。
底部54は環状の平坦な部材であり、外周壁部53と内周壁部52とを連結している。以上に述べたように、リング部51は単独の部材であり、ケース部41に装着可能である。リング部51は、図示しない固定部を有していてもよい。例えば、固定部は円周方向複数箇所において底部から半径方向外側に延びる突起であってもよい。リング部51をケース部41に固定する手段は溶接や接着その他固定部材によるものでもよい。
【0029】
なお、本実施形態では、内周壁部52の空気流れ方向長さh1は20mm、外周壁部53の空気流れ方向長さh2は30mm、底部54の幅Wは30mmである。ただし、本発明はこれらの数値に限定されない。
次に、冷却ファン21とリング部51の位置関係について説明する。図8に示すように、冷却ファン21の外周縁部は、リング部51の内周壁部52より空気流れ方向下流側に位置している。
より詳細に限定すれば、冷却ファン21の外周縁部の空気流れ方向下流側端は、内周壁部52の空気流れ方向下流側端より、空気流れ方向下流側に位置している。
冷却ファン21の空気流れ方向長さをh3として、冷却ファン21において内周壁部52の先端より空気流れ方向上流側部分の空気流れ方向長さをh4とする。
そして、(h4/h3)の百分率を「内側かぶせ率(%)」と定義する。本実施形態では、例えば、内側かぶせ率は62.5%である。
【0030】
[冷却動作]
冷却ファン21がエンジン6aによって駆動されると、クーリングコア30側の空気が冷却ファン21に吸い込まれていく。この空気の流れによって、クーリングコア30のラジエータ31等が冷却される。
図9(A)に示すように、空間55内の位置P1(図9における観測点)を冷却ファン21の羽根部材21aが通過する際には羽根部材21aからの空気流れがP1にある空気を掻き出し、P1に負圧を発生させる。次に、図9(B)に示すように、空間55内のある位置P1(図9の観測点)が冷却ファン21の羽根部材21a同士の間に位置すると、前記位置P1に発生している負圧により空気を吸い込む。このような現象によって冷却ファン21による空気の流量は従来に比べて大幅に多くなる。
この結果、クーリングコア30に対して供給される空気の量を増やして冷却効率を向上させることができる。
【0031】
特に、本実施形態では、冷却ファン21の外周縁下流側端がリング部51の内周壁部52より空気流れ方向下流側に位置しているため、前述の現象における空気の流量増大に貢献する。これは、前述の構造によって、羽根部材21aの通過時に空間55内の空気を掻き出す効果が大きいためであると考えられる。
【0032】
[内側かぶせ率と風量の関係]
まず、同一回転数の冷却ファン21において、内周壁部52の内側かぶせ率を変化させて、冷却ファン21による空気の流量の変化を測定したところ、図10に示されるように、内側かぶせ率100%では風量が少なかった。内側かぶせ率を下げていくと、風量は徐々に多くなっていった。内側かぶせ率60%から70%程度でピークとなり、さらに内側かぶせ率を下げていくと、風量は少なくなっていき、45%未満、85%を超える内側かぶせ率では、内側かぶせ率が100%の場合とほとんど差が出なくなった。尚、図10において、グラフの縦軸の目盛りのレンジは、10m3/minである。
以上より、内側かぶせ率が45%から85%の範囲で十分な風量を得られることが分かった。
【0033】
[冷却ユニット20の特徴]
(1)
建設機械用冷却ユニット20は、油圧ショベル1に用いられる冷却装置であって、冷却ファン21と、冷却ファン21の外周側に設けられたシュラウド40と、シュラウド40に設けられ冷却ファン21の外周部に近接して配置された内周壁部52を有する空間55とを備えている。空間55は、冷却ファン21から排出される空気によって負圧を発生することで冷却ファン21による空気の流量を増大させる。冷却ファン21の外周縁の空気流れ方向下流側端は、内周壁部52の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置している。
【0034】
この冷却ユニット20では、冷却ファン21が回転して空気が流れると、空間55が負圧を発生させることで、冷却ファン21による空気の流量が増大する。具体的には、空間55内のある点が羽根部材21a間に位置するとそこで発生した負圧によって空気が吸い込まれ、次にその空気が羽根部材21aによって掻き出されるような現象が生じていると考えられる。ここで、冷却ファン21の外周縁の空気流れ方向下流側端が内周壁部52の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置しているため、十分な量の空気が空間55側に供給され、その空気と空間55での負圧との相乗効果によって冷却ファン21による空気の流量が増大する。その結果、クーリングコア30の周囲に流れる空気の流量が多くなって、クーリングコア30のラジエータ31等のエンジン冷却性能が向上する。
(2)
冷却ファン21の外周縁においてシュラウド40および内周壁部52によって覆われた部分の空気流れ方向長さと冷却ファン21の全体の空気流れ方向長さとの比(百分率)を内側かぶせ率とすると、内側かぶせ率が45から85%の範囲にある。内側かぶせ率が適切な範囲に設定されているため、冷却ファン21による空気の流量が十分に多くなる。したがって、冷却ファン21の回転速度が従来と同じでも冷却能力が向上し、または冷却ファン21の回転速度を下げても従来と同じ冷却能力を得ることができる。
(3)
空間55は、具体的には、リング部51によって構成されている。リング部51は、冷却ファン21の外周部に近接して配置された内周壁部52と、内周壁部52より空気流れ方向下流側に長く延びる外周壁部53とを有する。冷却ファン21の外周縁の空気流れ方向下流側端は、内周壁部52の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置している。冷却ファン21が回転して空気が流れると、リング部51の内周壁部52と外周壁部53との間の空間55に負圧が発生することで、上述したように、冷却ファン21からの空気の流量が増大する。
(4)
リング部51はシュラウド40とは別の部材からなる。リング部51はシュラウド40に対して装着可能であるため、シュラウド40や冷却ファン21の構造に合わせて適切なリング部51を選択可能である。
(5)
リング部51は、内周壁部52と外周壁部53を連結する環状の底部54を有する。リング部51が内周壁部52と外周壁部53と底部54とからなる一体の部材であるため、リング部51の製造・管理が容易である。
(6)
内周壁部52および外周壁部53は、空気流れ方向に平行に延びる筒状部分である。そのため、リング部51の製作が容易である。
(7)
油圧ショベル等の建設機械に搭載されているエンジン6aによって、冷却ファン21を回転駆動する。このようにエンジン6aの回転を冷却ファン21の回転駆動に用いることができるため、構成を簡素化することができる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。尚、以下の説明では、既に説明した部分と同一の部分については、同一符号を付してその説明を省略する。
前記実施形態では、内周壁部及び外周壁部を冷却ファン21を囲む連続するリング部51として構成していた。
これに対して第2実施形態に係る冷却装置では、図11に示すように、前記連続するリング部51を複数の壁部構成部材112で形成した。具体的には、壁部構成部材112を冷却ファン21の回転軸回りに、該冷却ファン21を囲むように組み合わせている点が相違する。
各壁部構成部材112は、第1実施形態の図8と同様に、内周壁部52及び外周壁部53が形成されており、冷却ファン21の空気流れ方向下流側端は、内周壁部52の空気流れ方向下流側端よりも空気流れ方向下流側に位置している。
内側かぶせ率は、第1実施形態と同様に、45%から85%とされており、より好ましくは、60%から70%とするのがよい。
【0036】
このような壁部構成部材112を、シュラウドのケース部41の外面において、冷却ファン21の回転軸回りに配列し、ボルトや接着剤または溶接等により固定することで形成することができる。
尚、隣接する壁部構成部材112の間には、わずかな隙間が形成されるが、各壁部構成部材112の内周壁部52及び外周壁部53が冷却ファン21の外周部の略全部を囲むこととなるため、冷却効率の向上、という第1実施形態で述べた効果が損なわれることは殆どない。また、より確実に効果を享受しようとするのであれば、壁部構成部材112のケース部41の固定後、隣接する壁部構成部材112の間に形成された隙間をジョイント部材やパテ、溶接等で埋めてしまえばよい。
さらに、リング部の分割数も図11の場合には、4つであったが、これに限らず、2つ乃至6つの壁部構成部材で形成しても構わない。
このような第2実施形態によれば、大型の建設機械等で用いられる大型の冷却ファン21を備えた冷却装置であっても、冷却ファン21の周囲に略全周に亘って内周壁部52及び外周壁部53を形成することができる。
【0037】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
前記第1実施形態では、リング部51は環状の単独の部材として構成されていたが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、複数の部材を組み合わせることにより、内周壁部と外周壁部とが環状に連続するリング部を形成してもよい。例えば、図12に示すように、内周壁部52と外周壁部53とを有する2つの半環状部材113の端部同士を組み合わせることにより、連続するリング部を形成することもできる。
(B)
上記実施形態では、内周壁部と外周壁部は空気流れ方向に平行に延びる部分であるとして説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0038】
例えば、図13に示すリング部61は、内周壁部62と外周壁部63と底部64とを有している。内周壁部62は、ケース部41の開口の縁に位置している。外周壁部63は内周壁部62より半径方向外側に配置されており、両者の間には環状の空間65が確保されている。内周壁部62と外周壁部63は同心に配置されており、それぞれが空気流れ方向下流側にいくにしたがって径が大きくなるラッパ形状(すそ広がり形状)を有している。なお、内周壁部および外周壁部の一方のみがラッパ形状であっても良い。
【0039】
この実施形態でも、前記実施形態と同様の効果が得られる。
(C)
例えば、図14に示すリング部71は、内周壁部72と外周壁部73と底部74とを有している。内周壁部72は、ケース部41の開口の縁に位置している。外周壁部73は内周壁部72より半径方向外側に配置されており、両者の間には環状の空間75が確保されている。内周壁部72と外周壁部73は同心に配置されており、それぞれが空気流れ方向にストレートに(平行に)延びている。より詳細には、内周壁部72の先端には、テーパー部72aが形成されている。外周壁部73の先端には、テーパー部73aが形成されている。テーパー部72a,73aは空気流れ方向下流側にいくにしたがって径が大きくなっていく。なお、内周壁部および外周壁部の一方のみがテーパー部を有していても良い。
【0040】
この実施形態でも、前記実施形態と同様の効果が得られる。
(D)
上記実施形態では、内周側壁部と外周壁部は一体の部材であるとして説明した。
しかし、本発明はこれに限定されない。
【0041】
例えば、図15に示すリング部81は、内周壁部82と外周壁部83との2つの部材から構成されている。内周壁部82と外周壁部83との間には、環状の空間85が確保されている。内周壁部82は、筒状部82aと固定部82bとから構成されている。固定部82bは、ボルトや溶接等の手段によってケース部41に固定されている。外周壁部83は、筒状部83aと固定部83bとから構成されている。固定部83bは、ボルトや溶接等の手段によってシュラウド40のケース部41に固定されている。
【0042】
この実施形態でも、前記実施形態と同様の効果が得られる。
(E)
上記実施形態では、内周壁部と外周壁部はシュラウドとは別の部材であると説明した。しかし、本発明はこれに限定されない。
例えば、図16に示すリング部91は、ケース部41の内周縁を折り曲げて形成した内周壁部92と、外周壁部93とから構成されている。内周壁部92と外周壁部93との間には、環状の空間95が確保されている。外周壁部93は、筒状部93aと固定部93bとから構成されている。固定部93bは、ボルトや溶接等の手段によってシュラウド40のケース部41に固定されている。
【0043】
この実施形態でも、前記実施形態と同様の効果が得られる。
(F)
さらに、本発明では、リング部をシュラウドに一体形成することも可能である。すなわち、図17に示すように、リング部101はシュラウドのケース部41に一体形成されており、ケース部41の内周縁には、内周壁部102が形成され、ケース部41の外面には、外周壁部103が形成され、内周壁部102及び外周壁部103の間には、負圧を発生させる空間105が形成される。
このような実施形態は、シュラウドのケース部41及びリング部101を樹脂製とし、射出成形等により形成することができる。このようなシュラウドは、ある程度の耐久性が確保できればよい、小型の建設機械に好適に採用することができる。
このような実施形態では、前記実施形態と同様の効果がある上、部品点数の低減による組立作業の負荷軽減、建設機械の軽量化を図ることができる。
【0044】
(G)
上記実施形態では、図4に示すように、エンジン6a直結によって冷却ファン21を回転駆動させる構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
例えば、ラジエータ等のクーリングコアの近傍に配置された油圧駆動モータによって冷却ファンが回転駆動される構成であってもよい。
この場合には、エンジン直結で回転駆動される冷却ファンと比較して、エンジンの振動による影響をほとんど無視して設計することができるため、冷却ファン21とシュラウド40に設けられたリング部51の内周壁部52との間の隙間Gを最小限とすることができる。この結果、シュラウド40付近における空気の流れがよりスムーズになって、クーリングコアの冷却効率の向上等の効果を得ることができる。
【0046】
また、電動モータによって冷却ファンが回転駆動される構成であっても良い。
(H)
上記実施形態では、図4に示すように、空気の流れる方向において、クーリングコア30の下流側に冷却ファン21を配置した、いわゆる吸気型の冷却ユニット20を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
例えば、図18に示すように、ラジエータ等のクーリングコア30に対して冷却ファン21でエンジン6a側から空気を送り込む、いわゆる吹き出し型の冷却ユニット20に対して、本発明を適用することも可能である。
すなわち、吹き出し型の冷却ユニット20であっても、シュラウド40の内部にリング部51を形成することにより、前述した第1実施形態と同様の作用によって風量が増加し、クーリングコア30を効率的に冷却することが可能となる。
(I)
上記実施形態では、図6等に示すように、冷却ファン21として、軸流ファンを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
例えば、シロッコファン、斜軸流ファン等の他種類の送風ファンを用いて冷却ユニットを構成してもよい。
(J)
上記実施形態では、クーリングコア30を構成する熱交換器として、ラジエータ31、オイルクーラ32およびアフタークーラ33を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
例えば、本発明に係る冷却ファンに対向配置されるクーリングコアとしては、ラジエータだけであってもよいし、他の熱交換器やこれらの組み合わせであってもよい。
(K)
上記実施形態では、図1に示すように、本発明の冷却ファン21のシュラウド40が適用される建設機械として、油圧ショベル1を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
例えば、油圧ショベル以外にも、ホイルローダ等の他の建設機械や、フォークリフト等の作業機械に対しても同様に適用は可能である。
(L)
上述の実施形態は単独で採用しても良いし、組み合わせて採用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明にかかる冷却装置およびこれを備えた建設機械又は作業機械は、冷却ファンの回転速度を高めることなく、冷却ファンからの空気の流量を十分に多くできるという効果を奏することから、冷却ファンを搭載した各種作業機械に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態に係る冷却ファンのシュラウド構造を搭載した油圧ショベルの構成を示す全体図。
【図2】図1の油圧ショベルの後方に搭載されたエンジンルームおよびカウンタウェイト周辺の構成を示す斜視図。
【図3】図2のエンジンルームの上面に取り付けられたエンジンフードを開けた状態を示す斜視図。
【図4】図3のエンジンフード内の構成を示す平面図。
【図5】図4の部分拡大図。
【図6】冷却ユニットの構造を示す斜視図。
【図7】エンジンと冷却ユニットの関係を示す模式図。
【図8】リング部と冷却ファン外周縁との位置関係を示す断面図。
【図9】リング部による風量増大効果を説明するための模式図。
【図10】内側かぶせ率と風量との関係を示すグラフ。
【図11】本発明の第2実施形態に係る冷却ファンの内周壁部及び外周壁部の構造を表す正面図。
【図12】他の実施形態におけるリング部の構造を示す正面図。
【図13】他の実施形態におけるリング部の構造を示す断面図。
【図14】他の実施形態におけるリング部の構造を示す断面図。
【図15】他の実施形態におけるリング部の構造を示す断面図。
【図16】他の実施形態におけるリング部の構造を示す断面図。
【図17】他の実施形態におけるリング部の構造を示す断面図。
【図18】吹き出し型の冷却ユニットに本発明を採用した場合のエンジンと冷却ユニットの関係を示す模式図。
【符号の説明】
【0053】
1…油圧ショベル、2…下部走行体、3…旋回台、4…作業機、5…カウンタウェイト、6…エンジンルーム、6a…エンジン、9…機器室、10…キャブ、11…ブーム、11a,12a,13a…油圧シリンダ、12…アーム、13…バケット、14…エンジンフード、14a…取っ手、20…冷却ユニット、21…冷却ファン、21a…羽根部材、30…クーリングコア、31…ラジエータ、32…オイルクーラ、33…アフタークーラ、35…エアクリーナ、40…シュラウド、41…ケース部、51…リング部、52…内周壁部、53…外周壁部、54…底部、55…空間、61…リング部、62…内周壁部、63…外周壁部、64…底部、65…空間、71…リング部、72a,73a…テーパー部、72…内周壁部、73…外周壁部、74…底部、75…空間、81…リング部、82…内周壁部、82a…筒状部、82b…固定部、83…外周壁部、83a…筒状部、83b…固定部、85…空間、91…リング部、92…内周壁部、93…外周壁部、93a…筒状部、93b…固定部、95…空間、101…リング部、102…内周壁部、103…外周壁部、105…空間、P…履帯、112…壁部構成部材、113…半環状部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ファンと、
前記冷却ファンの外周側に設けられたシュラウドと、
前記シュラウドに設けられ、前記冷却ファンの外周部に近接して配置された内周壁部と、
前記内周壁部を囲むように設けられ、空気流れ方向下流側端が、前記内周壁部の空気流れ方向下流側端よりも、空気流れ方向下流側に位置する外周壁部とを備え、
前記冷却ファンの外周縁の空気流れ方向下流側端は、前記内周壁部の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置している、冷却装置。
【請求項2】
前記内周壁部及び前記外周壁部の少なくともいずれかは、前記冷却ファンの回転軸回りに連続するリング部である、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却ファン外周縁における、前記シュラウドおよび前記内周壁部によって覆われた部分の空気流れ方向長さと、前記冷却ファンの空気流れ方向最大長さとの比を内側かぶせ率とすると、前記内側かぶせ率が45%から85%の範囲にある、請求項1又は請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記内側かぶせ率が60%から70%の範囲にある、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記内周壁部及び前記外周壁部の少なくともいずれかは、前記シュラウドと一体に形成される、請求項1乃至4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項6】
前記内周壁部及び前記外周壁部の少なくともいずれかは、前記シュラウドとは別の部材からなる、請求項1乃至4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記内周壁部と前記外周壁部を連結する環状の底部を有する、請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記内周壁部及び前記外周壁部の少なくともいずれかは、空気流れ方向に平行に延びる筒部を有している、請求項1乃至7のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項9】
前記内周壁部及び前記外周壁部の少なくともいずれかは、空気流れ方向下流側にいくにしたがって内径が大きくなる拡径部を有している、請求項1乃至7のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の冷却装置を備えた、建設機械又は作業機械。
【請求項1】
冷却ファンと、
前記冷却ファンの外周側に設けられたシュラウドと、
前記シュラウドに設けられ、前記冷却ファンの外周部に近接して配置された内周壁部と、
前記内周壁部を囲むように設けられ、空気流れ方向下流側端が、前記内周壁部の空気流れ方向下流側端よりも、空気流れ方向下流側に位置する外周壁部とを備え、
前記冷却ファンの外周縁の空気流れ方向下流側端は、前記内周壁部の空気流れ方向下流側端よりさらに空気流れ方向下流側に位置している、冷却装置。
【請求項2】
前記内周壁部及び前記外周壁部の少なくともいずれかは、前記冷却ファンの回転軸回りに連続するリング部である、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記冷却ファン外周縁における、前記シュラウドおよび前記内周壁部によって覆われた部分の空気流れ方向長さと、前記冷却ファンの空気流れ方向最大長さとの比を内側かぶせ率とすると、前記内側かぶせ率が45%から85%の範囲にある、請求項1又は請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記内側かぶせ率が60%から70%の範囲にある、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記内周壁部及び前記外周壁部の少なくともいずれかは、前記シュラウドと一体に形成される、請求項1乃至4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項6】
前記内周壁部及び前記外周壁部の少なくともいずれかは、前記シュラウドとは別の部材からなる、請求項1乃至4のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項7】
前記内周壁部と前記外周壁部を連結する環状の底部を有する、請求項6に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記内周壁部及び前記外周壁部の少なくともいずれかは、空気流れ方向に平行に延びる筒部を有している、請求項1乃至7のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項9】
前記内周壁部及び前記外周壁部の少なくともいずれかは、空気流れ方向下流側にいくにしたがって内径が大きくなる拡径部を有している、請求項1乃至7のいずれかに記載の冷却装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の冷却装置を備えた、建設機械又は作業機械。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2009−73468(P2009−73468A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−121697(P2008−121697)
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月7日(2008.5.7)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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