説明

冷却装置

【課題】各放熱フィンを通過する風量の格差を少なくして電子機器等の発熱体を均等に冷却することができる冷却装置を提供する。
【解決手段】冷却用空気を送りこむ送風口と、冷却用空気を排出する排気口と、送風口から排気口に冷却用空気が循環する冷却空洞部と、冷却用空洞部内にその一部が収納された、複数の放熱フィンからなるフィン列を備えて並列配置された複数の熱導体と、送風口からの冷却用空気の流れを規制する空気流規制部材とを備えた冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載された多列に配置された複数個の電子機器等の冷却を行うための冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器装置においては、各種制御を行う各種のエレクトロニクス機器が搭載されており、エレクトロニクス機器は、マイクロプロセッサ等の高出力、高集積の部品を内蔵している。マイクロプロセッサは、集積度が極めて高くなり、高速で情報の演算、制御等の処理を行うので、多量の熱を放出する。これらの高出力かつ高集積の部品であるチップ等を冷却するために、各種の冷却システムが提案されてきた。
【0003】
更に、自動車においては、その他に、電気自動車に搭載された二次電池等の充電放電時に発熱する装置を冷却するために、各種の冷却システムが提案されてきた。その代表的な冷却システムの1つとして、金属製の熱導体による熱移動およびヒートパイプによる熱移動がある。
金属製の熱導体は例えば熱伝導性に優れた銅板、アルミニウム板等が用いられる。発熱体からの熱を銅板、アルミニウム板によって熱移動し、熱的に接続された放熱フィンによって、所定の場所に放熱される。
ヒートパイプには、その形状において、丸パイプ形状のヒートパイプ、平面形状の板状ヒートパイプがある。複数個のセルを備えた二次電池等の被冷却部品の冷却用としては、個々のセルの発生する熱を放熱するために、広い接触面が得られることから、板状ヒートパイプが好んで用いられる。
【0004】
更に、ヒートパイプは、被冷却部品の取り付け位置において、被冷却部品が上部に位置するトップヒートモードと被冷却部品が下部に位置するボトムヒートモードに区分される。ボトムヒートモードの場合、重力により液が還流するが、トップヒートモードの場合、重力に逆らって液を還流させなければならず、通常はウイックによる毛管現象を利用する。
ヒートパイプの内部には作動流体の流路となる空間が設けられ、その空間に収容された作動流体が、蒸発、凝縮等の相変化や移動をすることによって、熱の移動が行われる。
【0005】
密封された空洞部を備え、その空洞部に収容された作動流体の相変態と移動により熱の移動が行われるヒートパイプの詳細は次の通りである。
ヒートパイプの吸熱側において、ヒートパイプを構成する容器の材質中を熱伝導して伝わってきた被冷却部品が発する熱を潜熱として吸収して、作動流体が蒸発し、その蒸気がヒートパイプの放熱側に移動する。放熱側においては、作動流体の蒸気は凝縮して潜熱を放出するとともに、再び液相状態に戻る。このように液相状態に戻った作動流体は再び吸熱側に移動(還流)する。このような作動流体の相変態や移動によって熱の移動が行われる。
重力式のヒートパイプにおいては、相変態によって液相状態になった作動流体は、重力によって、吸熱側に移動(還流)する。
【0006】
図9は、従来の冷却装置を示す概念図(部分斜視図)である。図示しないが収容部103内には、複数の概ね矩形の板状ヒートパイプが、その短軸が垂直方向に沿って位置するように並列して配置されている。板状ヒートパイプの長軸方向の一方の端部には、図2に示すように、放熱部101が位置し、図示しない他方の端部には吸熱部が連接して設けられている。この吸熱部には例えば電子機器等の複数個の発熱体が取り付けられて、収容部103内に収容されている。
【0007】
放熱部が位置する部分と、収容部は例えば隔壁によって分離されている。各々の板状ヒートパイプの放熱部101の両面には、多数の冷却フィン101aが取り付けられている。上述したように、これら放熱部全体は、図示のように整列されて冷却空洞部102内部に収容されている。
冷却空洞部102は、空気が送り込まれる送風口2a及び冷却空洞部内を通過した空気が排出される排気口2bを備えており、これらの開口部がある部分以外は、閉鎖された空洞からなっている。
【0008】
冷却風は矢印aに示す様に、送風口2aから冷却空洞部102の内部に送り込まれ、矢印bに示す様に各毎にほぼ直角に向きを変えて各冷却フイン101aを吹き抜けて冷却した後に、矢印cに示す様に再びほぼ直角に向きを変えて最終的に排気口2bから冷却空洞部102の外部に排出される。
【0009】
以上の様に、平面型ヒートパイプの放熱部101の各々に冷却風が送りこまれて、これらを冷却し、結果的には、板状ヒートパイプの放熱部101に連接された吸熱部に取り付けられた例えば電子機器等の発熱体を冷却する。なお、板型ヒートパイプを備えた冷却装置が特開平5−275584号公報に開示されている。
【特許文献1】特開平5−275584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図9において、各冷却フィン101aを吹き抜ける冷却風(矢印b)は、送風口2aに近い側の冷却フィン101aでは強く吹き抜けるが、送風口2aから遠い側の冷却フィン101aではきわめて弱くなる。
この理由は、冷却風に対する抵抗(風損)が、送風口2aから排気口2bまでの冷却風が通り抜ける距離の大きさに従うためで、当然ながら送風口2aに近い(=排気口2b)に近い側では風損が小さく、遠い側では風損が大きくなるためである。
【0011】
この結果として、送風口2aに近い(=排気口2bに近い)側の冷却フィン101aの冷却効率は大きく、遠い側の冷却フィン101aの冷却効率は小さくなり、状況により、その差異が10倍以上に及ぶことがある。従って、複数の発熱体の全てを効率よく冷却することができないという致命的な問題がある。
【0012】
従って、この発明の目的は、各放熱フィンを通過する風量の格差を少なくして電子機器等の発熱体を均等に冷却することができる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述した従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、送風口からの冷却用空気の流れを規制する空気流規制部材、例えば、送風口からの冷却用空気の一部を並列配置された前記熱導体の送風口から離れた所定位置のフィン列に移動させる筒状の補助ダクトを使用することによって、冷却用空気の一部を送風口から離れた位置のフィン列に送り込むので、送風口の近くのフィン列を通過する冷却用空気の量を減少し、送風口から遠い位置のフィン列を通過する冷却用空気の量を増加させることができ、各放熱フィンを通過する風量の格差を少なくして発熱体を均等に冷却することができることが判明した。
【0014】
更に、空気流規制部材として、熱導体の上端部に配置されて、冷却用空気の各フィン列への流入を規制する板部材を使用することによって、送風口の近くのフィン列を通過する冷却用空気の量を減少し、送風口から遠い位置のフィン列を通過する冷却用空気の量を増加させることができ、各放熱フィンを通過する風量の格差を少なくして発熱体を均等に冷却することができることが判明した。
【0015】
この発明は、上記研究結果に基づいてなされたものであって、この発明の冷却装置の第1の態様は、冷却用空気を送りこむ送風口と、前記冷却用空気を排出する排気口と、前記送風口から前記排気口に冷却用空気が循環する冷却空洞部と、前記冷却用空洞部内にその一部が収納された、複数の放熱フィンからなるフィン列を備えて並列配置された複数の熱導体と、前記送風口からの冷却用空気の流れを規制する空気流規制部材とを備えた冷却装置である。
【0016】
この発明の冷却装置の第2の態様は、前記冷却用空洞部は、前記熱導体の前記その一部と少なくとも1つの発熱体が熱的に接続された他の部分との間が仕切り部材によって仕切られて形成されており、前記フィン列は、複数の前記放熱フィンが前記熱導体の短軸方向に沿って並列配置されて形成されており、前記フィン列の先端部が隣接する他の熱導体のフィン列の先端部と概ね接するように前記熱導体が並列に配置されており、前記送風口からの前記冷却用空気が前記放熱フィンの長軸方向に沿って循環する、冷却装置である。
【0017】
この発明の冷却装置の第3の態様は、前記空気流規制部材が前記送風口からの冷却用空気の一部を並列配置された前記熱導体の送風口から離れた所定位置のフィン列に移動させる補助ダクトからなっている、冷却装置である。
【0018】
この発明の冷却装置の第4の態様は、前記補助ダクトによって移動された冷却用空気によって送風口から離れた所定位置のフィン列から最遠端のフィン列の間を循環させ、前記補助ダクトを通らない前記送風口からの冷却用空気の一部によって前記補助ダクトの遠端部までのフィン列の間を循環させる、冷却装置である。
【0019】
この発明の冷却装置の第5の態様は、前記送風口の開口面積をαとするとき、前記補助ダクトの開口面積が0.3α〜0.7αの範囲内である、冷却装置である。
【0020】
この発明の冷却装置の第6の態様は、前記冷却用空洞部の全長をLとするとき、前記補助ダクトの長さが0.4L〜0.6Lの範囲内である、冷却装置である。
【0021】
この発明の冷却装置の第7の態様は、前記空気流規制部材が、前記熱導体の上端部に配置されて、冷却用空気の各フィン列への流入を規制する板部材からなっている、冷却装置である。
【0022】
この発明の冷却装置の第8の態様は、前記冷却用空気が前記板部材の表面に沿って流れ、前記板部材によって規制された量の冷却用空気が対応するフィン列を流れる、冷却装置である。
【0023】
この発明の冷却装置の第9の態様は、前記板部材がスリットを備えた1つの板部材からなっている、冷却装置である。
【0024】
この発明の冷却装置の第10の態様は、前記スリットの幅が送風口から最遠端のフィン列まで同一大きさである、冷却装置である。
【0025】
この発明の冷却装置の第11の態様は、前記スリットの幅が排気口から遠ざかるに従って順次大きくなっている、冷却装置である。
【0026】
この発明の冷却装置の第12の態様は、前記板部材が各熱導体の上端部に設けられた別個の板材からなっている、冷却装置である。
【0027】
この発明の冷却装置の第13の態様は、前記別個の板材の間の間隔が送風口から最遠端のフィン列まで同一大きさである、冷却装置である。
【0028】
この発明の冷却装置の第14の態様は、前記別個の板材の間の間隔が排気口から遠ざかるに従って順次大きくなっている、冷却装置である。
【0029】
この発明の冷却装置の第15の態様は、前記熱導体が板状ヒートパイプからなっている、冷却装置である。
【発明の効果】
【0030】
この発明によると、送風口の近くのフィン列を通過する冷却用空気の量を減少し、送風口から遠い位置のフィン列を通過する冷却用空気の量を増加させることができ、各放熱フィンを通過する風量の格差を少なくして発熱体を均等に冷却することができる冷却装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
この発明の冷却装置および冷却方法を図面を参照しながら詳細に説明する。
この発明の冷却装置の1つの態様は、冷却用空気を送りこむ送風口と、冷却用空気を排出する排気口と、送風口から排気口に冷却用空気が循環する冷却空洞部と、冷却用空洞部内にその一部が収納された、複数の放熱フィンからなるフィン列を備えて並列配置された複数の熱導体と、送風口からの冷却用空気の流れを規制する空気流規制部材とを備えた冷却装置である。
空気流規制部材は、例えば、記送風口からの冷却用空気の一部を並列配置された熱導体の送風口から離れた所定位置のフィン列に移動させる補助ダクトからなっている。空気流規制部材は、例えば、熱導体の上端部に配置されて、冷却用空気の各フィン列への流入を規制する板部材からなっていてもよい。熱導体は、ヒートパイプからなっていてもよい。
【0032】
自動車に搭載される冷却装置は、灼熱・極寒の地で過酷な条件下において使用される場合においても、その機能を停止することは許されず、極めて高い信頼性が要求される。特に、二次電池等の冷却においては、その作動環境における温度条件は厳しく制限され、冷却の不具合が発生すると、被冷却部品である二次電池のセルを損傷してしまうという重大な問題を生じる。この発明の冷却装置は、このような過酷な条件下においても高い信頼性を備えることが要求される。
【0033】
図1は、この発明の冷却装置の1つの態様を示す概念図(部分斜視図)である。
図示しないが収容部3内には、複数の概ね矩形の熱導体、例えば板状ヒートパイプが、その短軸が垂直方向に沿って位置するように並列して配置されている。板状ヒートパイプの長軸方向の一方の端部には、図1に示すように、放熱部1が位置し、図示しない他方の端部には吸熱部が連接して設けられている。この吸熱部には例えば電子機器等の複数個の発熱体が取り付けられて、収容部3内に収容されている。
【0034】
放熱部1が位置する部分2と、収容部3は例えば隔壁によって分離されている。各々の板状ヒートパイプの放熱部1の両面には、多数の冷却フィン1aが取り付けられてフィン列を形成している。上述したように、これら放熱部全体は、図示のように整列されて冷却空洞部2内部に収容されている。
冷却空洞部2は、空気が送り込まれる送風口2a及び冷却空洞部内のフィン列の間を通過した空気が排出される排気口2bを備えており、これらの開口部がある部分以外は、閉鎖された空洞からなっている。
【0035】
この発明の冷却装置は、更に、送風口からの冷却用空気の一部を並列配置された熱導体の送風口から離れた所定位置のフィン列に移動させる筒状の補助ダクト4を備えている。
冷却風は矢印aに示す様に、送風口2aから冷却空洞部2の内部に送り込まれる。冷却風の一部は、補助ダクト4内を矢印a−1に示すように進み、送風口から遠くに位置する熱導体に取り付けられたフィン列に送り込まれる。フィン列に送り込まれた冷却風は、ほぼ直角に向きを変えて各冷却フイン1aを吹き抜けて冷却した後に、矢印c−1に示す様に再びほぼ直角に向きを変えて最終的に排気口2bから冷却空洞部の外部に排出される。
冷却風の残りは、補助ダクトの外側を矢印a−2に示すように進み、送風口の近くに位置する熱導体に取り付けられたフィン列に送り込まれる。フィン列に送り込まれた冷却風は、ほぼ直角に向きを変えて各冷却フイン1aを吹き抜けて冷却した後に、矢印c−2に示す様に再びほぼ直角に向きを変えて、送風口から遠くに位置するフィン列を吹きぬけた冷却風と共に最終的に排気口2bから冷却空洞部の外部に排出される。
【0036】
上述したように、送風口から吹き込まれる冷却風は、その一部が送風口から遠くに位置するフィン列に補助ダクトによって送り込まれ、残りの部分が送風口の近くに位置するフィン列に送りこまれるので、送風口の近くのフィン列を通過する冷却用空気の量を相対的に減少し、送風口から遠い位置のフィン列を通過する冷却用空気の量を相対的に増加させることができ、各放熱フィンを通過する風量の格差を少なくして発熱体を均等に冷却することができる。
即ち、送風ダクトを改良して、各放熱フィンを吹き抜ける冷却風を、送風口に近い側と遠い側とで均一にして、それぞれの放熱フィンの冷却効率を均一にする。
以上の様に、平面型ヒートパイプの放熱部1の各々に冷却風が送りこまれて、これらを冷却し、結果的には、板状ヒートパイプの放熱部1に連接された吸熱部に取り付けられた例えば電子機器等の発熱体を冷却する。
【0037】
上述したように、各放熱フィンを吹き抜ける冷却風を、送風口に近い側と遠い側とで均一にする、即ち、補助ダクトによって移動された冷却用空気によって送風口から離れた所定位置のフィン列から最遠端のフィン列の間を循環させ、補助ダクトを通らない送風口からの冷却用空気の一部によって補助ダクトの遠端部までのフィン列の間を循環させるためには、冷却用空洞部の全長をLとするとき、補助ダクトの長さが0.4L〜0.6Lの範囲内であることが必要である。
【0038】
補助ダクトの長さが0.4L未満では、送風口から遠く位置するフィン列の間に冷却用空気を充分に送り込むことができず、風損の均一化による熱導体の均一な冷却が困難になる。更に、補助ダクトの長さが0.6Lを超えると、送風口から近くに位置するフィン列の間を通過させる冷却用空気の量が不十分になり、風損の均一化による熱導体の均一な冷却が困難になる。
【0039】
更に、上述した均一な冷却を行うためには、送風口の開口面積をαとするとき、補助ダクトの開口面積が0.3α〜0.7αの範囲内であることが必要である。
補助ダクトの開口面積が0.3α未満の場合には、送風口から遠く位置するフィン列の間に冷却用空気を充分に送り込むことができず、風損の均一化による熱導体の均一な冷却が困難になる。補助ダクトの開口面積が0.7αを超えると、送風口から近くに位置するフィン列の間を通過させる冷却用空気の量が不十分になり、風損の均一化による熱導体の均一な冷却が困難になる。
【0040】
この発明の冷却装置の他の態様は、空気流規制部材が、熱導体の上端部に配置されて、冷却用空気の各フィン列への流入を規制する板部材からなっている、冷却装置である。即ち、冷却用空気が板部材の表面に沿って流れ、板部材によって規制された量の冷却用空気が対応するフィン列を流れる、冷却装置である
図2は、この発明の冷却装置の他の1つの態様を示す概念図(部分斜視図)である。図2に示すように、複数の概ね矩形の熱導体が、その短軸が垂直方向に沿って位置するように並列して配置されている。熱導体の長軸方向の一方の端部には、放熱部1が位置し、図示しない他方の端部には吸熱部が連接して設けられている。この吸熱部には例えば電子機器等の複数個の発熱体が取り付けられて、収容部3内に収容されている。
【0041】
他の態様に関して説明したように、放熱部1が位置する部分2と、収容部3は例えば隔壁によって分離されている。各々の熱導体の放熱部1の両面には、多数の冷却フィン1aが取り付けられてフィン列を形成している。これら放熱部全体は、図に示すように整列されて冷却空洞部2内部に収容されている。
冷却空洞部2は、空気が送り込まれる送風口2a及び冷却空洞部内のフィン列の間を通過した空気が排出される排気口2bを備えており、これらの開口部がある部分以外は、閉鎖された空洞からなっている。
【0042】
この態様の冷却装置は、更に空気流規制部材を備えており、空気流規制部材が熱導体の上端部に配置されて、冷却用空気の各フィン列への流入を規制する板部材からなっている。即ち、熱導体1の上端部には、概ね同一大きさの板部材5が配置されている。隣接する板部材間には所定の間隙が設けられており、送風口から吹き込まれた冷却用空気が板部材の表面に沿って進み、各間隙6を通ってフィン列を通過する。
即ち、冷却風は矢印aに示す様に、送風口2aから冷却空洞部2の内部に送り込まれる。冷却風は矢印a−1に示すように板部材5の表面に沿って進み、一部が矢印b−1に示すようにほぼ直角に向きを変えて第1の板部材と隣接する第2の板部材の間の間隙を通って垂直方向に各冷却フイン1aを吹き抜けて冷却した後に、更に、矢印c−1に示すように直角方向に向きを変えて最終的に排気口2bから冷却空洞部の外部に排出される。
【0043】
冷却風の残りは、更に板部材5の表面に沿って進み、上述したと同様にその一部がほぼ直角に向きを変えて第1の板部材と隣接する第2の板部材の間の間隙を通って垂直方向に各冷却フイン1aを吹き抜けて冷却した後に、更に、直角方向に向きを変えて排気口2bから冷却空洞部の外部に排出される。
このように空気の流れが、板部材およびその間に設けられた間隙によって規制されているので、送風口の近くのフィン列を通過する冷却用空気の量を相対的に減少し、送風口から遠い位置のフィン列を通過する冷却用空気の量を相対的に増加させることができ、各放熱フィンを通過する風量の格差を少なくして発熱体を均等に冷却することができる。
【0044】
図3は、この発明の冷却装置の他の1つの態様を示す概念図(部分斜視図)である。他の態様において説明したと同様に、複数の概ね矩形の熱導体が、その短軸が垂直方向に沿って位置するように並列して配置されている。熱導体の長軸方向の一方の端部には、放熱部1が位置し、図示しない他方の端部には吸熱部が連接して設けられている。この吸熱部には例えば電子機器等の複数個の発熱体が取り付けられて、収容部3内に収容されている。
【0045】
放熱部1各々の熱導体の放熱部1の両面取り付けられた多数の冷却フィン1aからなるフィン列、空気が送り込まれる送風口2a及び冷却空洞部内のフィン列の間を通過した空気が排出される排気口2bを備える冷却空洞部2は、上述した態様と同じである。
【0046】
この態様の冷却装置においては、上述した空気流規制部材としての板部材がスリットを備えた1つの板部材からなっている。即ち、熱導体1の上端部には、概ね同一大きさの複数のスリット8を備えた1つの板部材7が配置されている。送風口から吹き込まれた冷却用空気が板部材の表面に沿って進み、各スリット8を通ってフィン列1aを通過する。
即ち、冷却風は矢印aに示す様に、送風口2aから冷却空洞部2の内部に送り込まれる。冷却風は矢印a−1に示すように板部材7の表面に沿って進み、一部が矢印b−1に示すようにほぼ直角に向きを変えて第1のスリットを通って垂直方向に各冷却フイン1aを吹き抜けて冷却した後に、更に、矢印c−1に示すように直角方向に向きを変えて排気口2bから冷却空洞部の外部に排出される。
【0047】
冷却風の残りは、更に板部材7の表面に沿って進み、上述したと同様にその一部がほぼ直角に向きを変えて第2のスリット8を通って垂直方向に各冷却フイン1aを吹き抜けて冷却した後に、更に、直角方向に向きを変えて排気口2bから冷却空洞部の外部に排出される。
このように空気の流れが、板部材およびそれに設けられた複数のスリットによって規制されているので、送風口の近くのフィン列を通過する冷却用空気の量を相対的に減少し、送風口から遠い位置のフィン列を通過する冷却用空気の量を相対的に増加させることができ、各放熱フィンを通過する風量の格差を少なくして発熱体を均等に冷却することができる。
【0048】
図4は、この発明の冷却装置の他の1つの態様を示す概念図(部分斜視図)である。他の態様において説明したと同様に、複数の概ね矩形の熱導体が、その短軸が垂直方向に沿って位置するように並列して配置されている。熱導体の長軸方向の一方の端部には、放熱部1が位置し、図示しない他方の端部には吸熱部が連接して設けられている。この吸熱部には例えば電子機器等の複数個の発熱体が取り付けられて、収容部3内に収容されている。
【0049】
放熱部1各々の熱導体の放熱部1の両面取り付けられた多数の冷却フィン1aからなるフィン列、空気が送り込まれる送風口2a及び冷却空洞部内のフィン列の間を通過した空気が排出される排気口2bを備える冷却空洞部2は、上述した態様と同じである。
【0050】
この態様の冷却装置においては、上述した空気流規制部材としての板部材が大きさ(幅)の異なるスリットを備えた1つの板部材からなっている。即ち、熱導体1の上端部には、送風口から遠ざかるに従って順次その幅が大きくなる複数のスリット11備えた1つの板部材10が配置されている。送風口から吹き込まれた冷却用空気が板部材の表面に沿って進み、各スリット11を通ってフィン列1aを通過する。
即ち、冷却風は矢印aに示す様に、送風口2aから冷却空洞部2の内部に送り込まれる。冷却風は矢印a−1に示すように板部材10の表面に沿って進み、一部が矢印b−1に示すようにほぼ直角に向きを変えて第1のスリットを通って垂直方向に各冷却フイン1aを吹き抜けて冷却した後に、更に、矢印c−1に示すように直角方向に向きを変えて排気口2bから冷却空洞部の外部に排出される。
【0051】
冷却風の残りは、更に板部材10の表面に沿って進み、上述したと同様にその一部がほぼ直角に向きを変えて第2のスリット11を通って垂直方向に各冷却フイン1aを吹き抜けて冷却した後に、更に、直角方向に向きを変えて排気口2bから冷却空洞部の外部に排出される。
このように空気の流れが、板部材およびそれに設けられた送風口から遠ざかるに従って順次その幅が大きくなる複数のスリットによって規制されているので、送風口の近くのフィン列を通過する冷却用空気の量を相対的に減少し、送風口から遠い位置のフィン列を通過する冷却用空気の量を相対的に増加させることができ、各放熱フィンを通過する風量の格差を少なくして発熱体を均等に冷却することができる。
【0052】
図5は、熱導体とその上端部に設けられる板部材(仕切板)の間隙またはスリットを示す模式的断面図である。図5(a)は、熱導体と隣接する熱導体の間に1つの間隙またはスリットを設けた状態を説明する図である。図5(a)に示すように、両面に複数の放熱フィンが並列配置された熱導体と隣接する熱導体との間に仕切板によって作成された間隙またはスリットは1つの風の通路を形成している。図5(a)に示された態様においては、風の通路は同一幅となるように形成されている。
【0053】
図5(b)は、熱導体と隣接する熱導体の間に複数の間隙またはスリットを設けた状態を説明する図である。図5(b)に示すように、両面に複数の放熱フィンが並列配置された熱導体と隣接する熱導体との間に仕切板によって作成された間隙またはスリットは複数の風の通路を形成している(この場合は、熱導体間にそれぞれ4つの風の通路を形成している)。図5(b)に示された態様においても、風の通路は同一幅となるように形成されている。なお、風の通路のサイズ、通路の数によって、最適な風の通路の幅は変化する。図5(c)は、熱導体と隣接する熱導体の間に幅の異なる間隙またはスリットを設けた状態を説明する図である。図5(c)において、送風口は図の右側にあり、矢印の方向に冷却用空気が進む。送風口に最も近い熱導体とそれに隣接する熱導体の間の風の通路の幅が最も小さく、送風口から遠ざかるに従って、順次、風の通路の幅が大きくなるように間隙またはスリットが設けられる。即ち、送風口に近い風の通路は狭く、遠くなるほど広くなるように設置される。
【0054】
図6は、送風口および排気口の位置を示す図である。図6(a)に示すように、一方の端部に送風口および排気口を共に設けてもよい。図6(b)に示すように、一方の端部に送風口、他方の端部に排気口を設けてもよい。
図6(b)に示すように、一方の端部に送風口、他方の端部に排気口を設ける場合には、スリットは、図5(d)に示すように設ける。即ち、図5(d)に示すように、送風口から排気口に向かって冷却用空気が流れる。その際、送風口から排気口に向かって風の通路の幅が次第に狭くなっている。この態様においては、送風口から排気口への直進通路を通る風が量的に多くなりがちとなるので、送風口近傍のスリット(風の通路)の幅を大きくして、流入空気の源で風量の分散化を図っている。その結果、冷却用空気の大部分が送風口から排気口への直進通路を通過するのではなく、設定された風の通路を必要な量の風が流れ、冷却効率を高めることができる。
熱導体は、板状ヒートパイプであってもよい。板状ヒートパイプは、例えば、2枚の銅板によって形成された密閉された空洞部を備える銅製コンテナからなっている。銅製コンテナの内部には、ウイックおよび作動液としての水が、脱ガス処理後に封入されている。2枚の銅板の四周を囲む周辺部は、シーム溶接によって水密に接合されている。一方の板材で他方の板材の周辺部を挟み込んでカシメ等によって機械的に接合してもよい。
【0055】
ウイックは、例えば、コルゲート状のウイックからなっている。コルゲート状のウイックの上端部および下端部には、切り込み部が形成されている。ウイックの形状はこの形状に限定されることはない。即ち、ウイックは、2枚の銅薄板によって形成されたコンテナ内の作動液の移動を容易にするために、毛管力を高める働きをする、銅板と鋭角を形成する部分が存在する形状が好ましい。更に、コンテナ内の作動液の相変化に伴う圧力変化に対してコンテナの形状を維持できるような、所望の強さを備えていることが好ましい。ウイックは、コンテナの長軸方向および短軸方向の何れの方向に沿った移動ができることが好ましく。ウイックの形状の設定に当たっては、作動液の移動方向の自由を考慮する。
【0056】
更に、密閉された空洞部を備える内層としての銅薄板材および外層としての別の金属板材の2重構造からなるコンテナと、その内部に収納されるウイックおよび作動液としての水とを備えていてもよい。例えば、銅およびアルミニウムのクラッドを用い、銅が内層に、アルミニウムが外層になるように、2枚のクラッド材を使用して、コンテナ部分を形成する中央部を凸形状に突出させ、平らな周辺部をあわせて、空洞部を形成し、周辺部を水密に接合する。クラッド材でなくても、別々に対応する形状の板材を準備し、銅が内層に、アルミニウムが外層になるように接着材等によって接合して使用してもよい。
【0057】
なお、放熱フィンは、銅薄板またはアルミニウム薄板で形成されている。その他の熱伝導性に優れた金属製板材で形成されてもよい。必要な放熱面積を得るために放熱フィンを多段、例えば4層に配置してもよい。

【実施例】
【0058】
図2に示す態様の冷却装置、図4に示す態様の冷却装置および図9に示す従来の冷却装置について、送風口からの距離と各板状ヒートパイプの間の風量の変化を調べた。即ち、図2に示す態様においては、板状ヒートパイプの上端部には、概ね同一大きさの仕切板が複数枚配置されている。隣接する仕切板間には同一のの間隙が設けられており、送風口から吹き込まれた冷却用空気が仕切板の表面に沿って進み、各間隙を通ってフィン列を通過する。図4に示す態様においては、板状ヒートパイプの上端部には、送風口から遠ざかるに従って順次その幅が大きくなる複数のスリットを備えた1つの板部材が配置されている。送風口から吹き込まれた冷却用空気が板部材の表面に沿って進み、各スリットを通ってフィン列を通過する。従来の冷却装置においては、上述した空気流規制部材を備えていない。
その結果を図7に示す。図7において、縦軸は風量を、横軸は送風口からの距離をそれぞれ示す。従来の冷却装置においては、送風口の近くでは風量が著しく多く、送風口から概ね1/3のところまで急激に風量が低下し、空洞部の概ね半分の距離で殆ど風量がなくなっている。即ち、送風口から遠い位置の板状ヒートパイプには、吹き込まれた冷却用空気が殆ど到達しないことがわかる。これに対して、図2に示す態様のこの発明の冷却装置および図4に示す態様のこの発明の冷却装置においては、送風口の近くの板状ヒートパイプにも、送風口から遠くに位置する板状ヒートパイプにも概ね同一風量が確保されていることがわかる。
【0059】
次に、図2に示す態様の冷却装置、図4に示す態様の冷却装置および図9に示す従来の冷却装置について、仕切板の開口率と各板状ヒートパイプ間の風量の差を調べた。その結果を図8に示す。仕切板の開口率は、従来の冷却装置における、冷却用空気が通過することができるフィンの間の風の通路の断面積を100%とするときの、それぞれの態様における風の通路の断面積の割合をいう。各板状ヒートパイプ間の風量の差は、図7に示した最大値と最小値の差をいう。図8に示すように、従来の冷却装置においては、各板状ヒートパイプ間の風量の差が極めて大きいことがわかる。これに対して、図2に示す態様のこの発明の冷却装置および図4に示す態様のこの発明の冷却装置においては、各板状ヒートパイプ間の風量の差が非常に小さいことがわかる。更に、図4に示す態様のこの発明の冷却装置においては、開口率が大きいままで、風量の均一化が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明によると、各放熱フィンを通過する風量の格差を少なくして電子機器等の発熱体を均等に冷却することができる冷却装置を提供することができ、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図1は、この発明の冷却装置の1つの態様を示す概念図(部分斜視図)である。
【図2】図2は、この発明の冷却装置の他の1つの態様を示す概念図(部分斜視図)である。
【図3】図3は、この発明の冷却装置の他の1つの態様を示す概念図(部分斜視図)である。
【図4】図4は、この発明の冷却装置の他の1つの態様を示す概念図(部分斜視図)である。
【図5】図5は、熱導体とその上端部に設けられる板部材(仕切板)の間隙またはスリットを示す模式的断面図である。
【図6】図6は、送風口および排気口の位置を示す図である。
【図7】図7は、送風口からの距離と各板状ヒートパイプの間の風量の変化を示すグラフである。
【図8】図8は、仕切板の開口率と各板状ヒートパイプ間の風量の差を示すグラフである。
【図9】図9は、従来の冷却装置を示す概念図(部分斜視図)である。
【符号の説明】
【0062】
・ 熱導体(板状ヒートパイプ)
1a.放熱フィン
・ 空洞部
2a.送風口
2b.排気口
・ 収容部
・ 補助ダクト
5.板部材(仕切板)
・ 間隙
7、10.板部材
8、11.スリット
101.熱導板(板状ヒートパイプ)
101a.冷却フィン
102.冷却空洞部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却用空気を送りこむ送風口と、前記冷却用空気を排出する排気口と、前記送風口から前記排気口に冷却用空気が循環する冷却空洞部と、前記冷却用空洞部内にその一部が収納された、複数の放熱フィンからなるフィン列を備えて並列配置された複数の熱導体と、前記送風口からの冷却用空気の流れを規制する空気流規制部材とを備えた冷却装置。
【請求項2】
前記冷却用空洞部は、前記熱導体の前記その一部と少なくとも1つの発熱体が熱的に接続された他の部分との間が仕切り部材によって仕切られて形成されており、前記フィン列は、複数の前記放熱フィンが前記熱導体の短軸方向に沿って並列配置されて形成されており、前記フィン列の先端部が隣接する他の熱導体のフィン列の先端部と概ね接するように前記熱導体が並列に配置されており、前記送風口からの前記冷却用空気が前記放熱フィンの長軸方向に沿って循環する、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記空気流規制部材が前記送風口からの冷却用空気の一部を並列配置された前記熱導体の送風口から離れた所定位置のフィン列に移動させる補助ダクトからなっている、請求項2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記補助ダクトによって移動された冷却用空気によって送風口から離れた所定位置のフィン列から最遠端のフィン列の間を循環させ、前記補助ダクトを通らない前記送風口からの冷却用空気の一部によって前記補助ダクトの遠端部までのフィン列の間を循環させる、請求項3に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記送風口の開口面積をαとするとき、前記補助ダクトの開口面積が0.3α〜0.7αの範囲内である、請求項4に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記冷却用空洞部の全長をLとするとき、前記補助ダクトの長さが0.4L〜0.6Lの範囲内である、請求項4または5に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記空気流規制部材が、前記熱導体の上端部に配置されて、冷却用空気の各フィン列への流入を規制する板部材からなっている、請求項1または2に記載の冷却装置。
【請求項8】
前記冷却用空気が前記板部材の表面に沿って流れ、前記板部材によって規制された量の冷却用空気が対応するフィン列を流れる、請求項7に記載の冷却装置。
【請求項9】
前記板部材がスリットを備えた1つの板部材からなっている、請求項8に記載の冷却装置。
【請求項10】
前記スリットの幅が送風口から最遠端のフィン列まで同一大きさである、請求項9に記載の冷却装置。
【請求項11】
前記スリットの幅が排気口から遠ざかるに従って順次大きくなっている、請求項9に記載の冷却装置。
【請求項12】
前記板部材が各熱導体の上端部に設けられた別個の板材からなっている、請求項8に記載の冷却装置。
【請求項13】
前記別個の板材の間の間隔が送風口から最遠端のフィン列まで同一大きさである、請求項12に記載の冷却装置。
【請求項14】
前記別個の板材の間の間隔が排気口から遠ざかるに従って順次大きくなっている、請求項12に記載の冷却装置。
【請求項15】
前記熱導体が板状ヒートパイプからなっている、請求項1から14の何れか1項に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−32475(P2006−32475A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−205983(P2004−205983)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【復代理人】
【識別番号】100092989
【弁理士】
【氏名又は名称】片伯部 敏
【Fターム(参考)】