説明

冷媒回路の冷媒ラインを接続するための連結部

本発明は、特に車両の駆動モジュールを冷却するための、冷媒回路(10)の冷媒ライン(11)を接続する連結部(16)に関し、この連結部は、膨張弁(20)を収容しており、この膨張弁(20)は、冷媒回路(10)を第1および第2のサブエリア(30、32)に分離し、連結部(16)は、蒸発器(26)のための冷媒供給ラインおよび冷媒循環ラインに直接接続され、連結部(16)は、冷媒供給ラインおよび冷媒循環ラインの連結接続部(36、38)をそれぞれ備え、これらの連結接続部は、共通締結装置(44)によって膨張弁(20)に取り外し可能に取り付けられ、ここで、この共通締結装置(44)は、連結接続部(36、38)から見て膨張弁(20)の反対側から取り付けおよび取り外しのためにアクセスできるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒回路の冷媒ラインを接続するための連結部に関し、特に車両の駆動モジュールを冷却するための、冷媒回路の冷媒ラインを接続するための連結部に関する。
【背景技術】
【0002】
冷媒回路においては、種々の構成部品が冷媒ラインで接続されている。冷却対象に対する冷媒回路の配置によって、例えば、冷媒回路の構成部品を交換するために、冷媒ラインを接続したり、切り離したりすることが難しいことがある。
【0003】
さらに、冷媒回路は、絞り部において、冷媒をいくつかのサブラインに分配させることが知られている。すべてのサブラインの冷却容量を同じにするためには、冷媒の気液混合を、確実に均一に分布するようにしなければならない。これは、例えば、電気自動車またはハイブリッド車において電池を冷却するなどのために、冷媒回路が車両に設置されるとき、特にその解決が難しい。その理由は、加速力が発生すること、および例えば車両が坂道を登ったり下ったりするときに、車両の位置が変化することのためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、冷媒ラインを、簡単に接続および切り離しすることができる、冷媒回路の冷媒ラインを接続する連結部を提供することである。連結部に関する別の目的は、冷媒回路の空間位置、または外部から働く力に関係なく、種々のサブラインに、冷媒を均等に分配できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の本目的は、車両の駆動モジュールを冷却するための、冷媒回路の冷媒ラインを接続する、本発明による連結部を用いることにより達成される。この連結部は、膨張弁を収容しており、この膨張弁は、冷媒回路を第1のサブエリアと第2のサブエリアに分離している。連結部は、蒸発器に対する冷媒供給ラインおよび冷媒循環ラインに直接接続されている。この連結部は、それぞれ冷媒供給ライン用の連結接続部および冷媒循環ライン用の連結接続部を備え、これらの連結接続部は、共通締結装置によって膨張弁に取り外し可能に取り付けられている。共通締結装置は、連結接続部から見て膨張弁の反対側から、取り付け、および取り外しのためにアクセスできる、少なくとも1つの締付素子を有する。従って、連結接続部から見て、膨張弁の反対側にアクセスできないとき、冷媒ラインを、簡単に、膨張弁から切り離し、また膨張弁に接続することができる。冷媒回路のアセンブリは、簡易化され、膨張弁の交換は、容易になる。
【0006】
例えば、膨張弁は、連結部の壁、特に連結接続部が貫通するハウジングの壁に取り付けられている。
【0007】
共通締結装置は、壁と膨張弁を一緒に締めることが好ましい。これにより、共通締結装置を用いて、壁と、冷媒供給ラインの連結接続部、および冷媒循環ラインの連結接続部との両方を、膨張弁とともに締めることができる。
【0008】
連結接続部が貫通する壁の位置を密閉するために、壁と膨張弁との間にシールを設けるのがよい。
【0009】
シールの圧縮を最適にすることは、壁の溝の中にシールを配置し、その溝の深さにより、シールの最大圧縮を決定することで達成することができる。
【0010】
2コンポーネント射出成型を使用して、シールを壁と一体に形成することができる。
【0011】
一実施形態においては、膨張弁、冷媒供給ライン、および冷媒循環ラインは、互いに連結され、連結部の壁に移動可能に支持されるユニットを形成している。そのため、誤差および熱膨張を補償することができる。具体的には、壁は、冷媒供給ライン、冷媒循環ラインおよび膨張弁を囲み、ユニットは、ある種のハウジングの中に移動可能に受け入れられている。
【0012】
壁と冷媒供給ラインとの間、および壁と冷媒循環ラインとの間に、シールを設けるのがよい。これにより、冷媒ラインが貫通する壁の位置を、膨張弁とは無関係に密閉することができる。
【0013】
壁は、冷媒供給ライン、および冷媒循環ラインの方向に延びる円筒状の壁の部分を有するのが好ましく、冷媒供給ライン、冷媒循環ラインおよび壁の円筒状部を受け持つこのシールは、壁の円筒状部および/または冷媒供給ライン、冷媒循環ラインに対して移動可能なことが好ましい。このようにして、シールの接触面が増加し、壁に対するシールの位置の誤差が補償される。
【0014】
シールの相対的移動により、若干の遊びが生じるが、この遊びは、例えば壁止め具などを用いて制限することができる。
【0015】
一実施形態においては、シールは、十分に堅い材料で作るのが好ましいシーリングボディを備え、この剛質の材料の上に、シーリングボディと冷媒供給ラインとの間、およびシーリングボディと冷媒循環ラインとの間を密閉する内側シーリング要素と、シーリングボディと壁との間を密閉する外側シーリング要素とが設けられ、内側シーリング要素および/または外側シーリング要素は、具体的には、2コンポーネント射出成形により、シーリングボディと一体成形されるのが好ましい。このタイプのシーリングボディを使用することにより、冷媒供給ラインおよび冷媒循環ラインと壁の凹部の幾何学的形状が一致しない場合に、それらのラインを、壁の共通凹部において密閉することができる。
【0016】
シーリングボディは、例えば2つの部品である、複数の部品から構成されることが好ましく、シーリングボディの複数の部品は、互いに取り外し可能に連結されているのが好ましい。これにより、シーリングボディの部品を、冷媒供給ラインおよび冷媒循環ラインに半径方向に取り付け、2つのラインへのシーリングボディの簡単な組み立てと簡単な交換が可能になる。
【0017】
シーリングボディは、冷媒供給ライン、および/または冷媒循環ラインの中央を通過する面に沿って分割されている。
【0018】
連結部で冷媒回路を密閉するために、冷媒循環ラインの連結接続部と膨張弁との間、および冷媒供給ラインの連結接続部と膨張弁との間に、それぞれシールを設けるのがよい。
【0019】
好ましくは、冷媒供給ラインおよび/または冷媒循環ラインの少なくとも1つの連結接続部は、共通締結装置の圧締部と膨張弁との間に位置する、横方向の凸部を有している。連結接続部の横方向の凸部は、膨張弁への連結接続部の軸方向における、簡単で実用的な固定を可能にする。このような凸部の一例は、環状フランジである。
【0020】
冷媒供給ライン、および/または冷媒循環ラインの少なくとも1つの連結接続部は、横方向凹部を有し、その凹部に、共通の圧締部が係合し、連結接続部を軸方向に固定することができる。このようにして、圧締部と冷媒供給ライン、および/または冷媒循環ラインの連結接続部との間の、簡単で実用的な接続が可能になる。
【0021】
圧締部は、連結接続部に横方向に押し付けることができる櫛状プレートであってもよい。
【0022】
さらに、本発明は、連結部の中、好ましくは膨張弁の中に収容されている絞り部と、この絞り部の下流に配置されている冷媒回路の少なくとも1つの冷媒ラインとを有する、車両の駆動モジュールを冷却するための、冷媒回路の冷媒ラインを接続する連結部に関する。連結部は、少なくとも2つのサブラインが集まる冷媒分配器を備え、この冷媒分配器は、冷媒ラインの連結接続部であり、連結部の一部を形成し、冷媒ラインがそれに接続されている。冷媒分配器および絞り部は、ともに連結部と一体化されるので、絞り部の後にある冷媒分配器における冷媒の液相と気相の分離は、全くないか、または少しだけしかない。従って、冷媒分配器における、冷媒の液相での種々のサブラインへの均一な分配が行なわれる。この変形形態は、(連結接続部の反対側から)アセンブリに向けられている前述の形態と、状況に応じて組み合わせてもよい。
【0023】
好ましい実施形態においては、冷媒ラインの水理上の断面は、絞り部から冷媒分配器まで一定である。
【0024】
水理上の断面は、3〜8mmが好ましい。
【0025】
絞り部と冷媒分配器との間の冷媒ラインの長さは、冷媒ラインの水理上の断面の、例えば2〜10倍になることが分かっている。
【0026】
連結接続部は、冷媒循環ライン、および/または冷媒供給ラインを成型することにより直接作ることができる。これにより、連結接続部と対応する冷媒ラインとの簡単な一体構成が可能になる。
【0027】
あるいは、連結接続部は、個別に作成される構成部品でもよく、その場合、旋盤加工または切削加工で、1つの部品として作成するのが好ましい。こうすることにより、連結接続部は、複雑な幾何形状を有することが可能になる。
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付図面を参照して、以下に挙げる説明を読むことにより、明らかになると思う。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による連結部を有する冷媒回路の概略図である。
【図2】本発明による連結部の横断面図である。
【図3】図2の線III−IIIにおける連結部の断面図である。
【図4】本発明による連結部の詳細断面図である。
【図5】図2の冷媒分配器の横断面図である。
【図6】図5の線VI−VIにおける冷媒分配器の断面図である。
【図7】本発明による連結部を有する、車両の推進電池用の冷却装置の図である。
【図8】本発明の別の実施形態による連結部の横断面図である。
【図9】図8の線IX−IXにおける連結部の断面図である。
【図10】図8の線X−Xにおける連結部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、冷媒回路10の概略を示している。冷媒回路10は、冷媒ライン11を有し、この冷媒ラインを通って、矢印の方向に流体が流れる。
【0031】
冷媒回路10は、冷媒を圧縮する圧縮機12と、冷媒を冷却して液化するコンデンサ14とを備えている。
【0032】
連結部16は、膨張弁20として形成されている絞り部18と、冷媒ライン11をいくつかのサブライン24に分割する冷媒分配器22とを有する。各サブライン24に蒸発器26が設けられており、これらのサブラインは、例えば全面的に電池駆動の車両またはハイブリッド車の車両推進電池などの、車両の駆動モジュールを冷却するように配置されている。
【0033】
冷媒は、蒸発器26から共通の冷媒ライン11を介して元に戻され、この共通の冷媒ライン11は、連結部16を通って圧縮機12に通じており、冷媒回路10を完結している。
【0034】
連結部16は、壁28の中に設けられており、この壁28は、冷媒回路10を、圧縮機12およびコンデンサ14を有する第1のサブエリア30と、蒸発器26を有する第2のサブエリア32とに分けている。
【0035】
壁28は、例えば、冷却すべき構成部品がその中に設置されるハウジングであってもよい。すなわち、例えば電池のハウジングでもよい。この場合、圧縮機12およびコンデンサ14は、ハウジング外に配置されるのに対して、蒸発器26は、ハウジング内に配置される。
【0036】
図2は、連結部16の横断面を示している。膨張弁20は、壁28の右側に取り付けられており、冷媒回路10の第1のサブエリア30内にある。
【0037】
膨張弁20は、2つの接続部34を有する。これらの接続部34については、詳細には説明しないが、これらを用いて、膨張弁20は、圧縮機12およびコンデンサ14に通じる冷媒ライン11に接続している。
【0038】
膨張弁20の左側には、蒸発器26への冷媒供給ライン25と関係している第1の連結接続部36と、蒸発器26からの冷媒循環ライン27に関係している第2の連結接続部38とがある。
【0039】
2つの連結接続部36、38のそれぞれは、壁28を貫通し、膨張弁20の中に突き出している。第1の連結接続部36と膨張弁20との間、および第2の連結接続部38と膨張弁20との間に、それぞれ環状シール40が設けられており、図2に示す実施形態では、環状シール40は、それぞれ第1および第2の連結接続部36、38の溝の中に配置されている。
【0040】
壁28と膨張弁20との間に、別のシール42が設けられており、このシール42は、冷媒回路10の第1のサブエリア30と第2のサブエリア32との遷移部を密閉している。
【0041】
例えば、一種の管接続スリーブなどを形成する2つの連結接続部36、38は、共通締結装置44を用いて、膨張弁20および壁28に締め付けられている。共通締結装置44は、共通の圧締部46と、連結接続部36、38から見て膨張弁20の反対側から、共通締結装置44を取り付けおよび取り外しするためにアクセスできる、締付素子48とを備えている。
【0042】
図示の実施形態において、圧締部46は、第1および第2の連結接続部36、38の横方向凹部50に凸状に係合し、冷媒回路10の第1のサブエリア30に関係している、膨張弁20の側から、ねじの形態の締付素子48によって、膨張弁20の方向に引き寄せられている。それにより、連結接続部36、38と壁28は、膨張弁20に押し付けられる。圧締部46は、第1および第2の連結接続部36、38の横方向凸部52によってそれぞれ形成されている接触面に押し付けられ、さらに、壁28に(図2の上部および下部で)支持されている。
【0043】
図示の実施形態において、横方向凹部50および横方向凸部52は、それぞれ対称的な環状に形成されている。横方向凹部50または横方向凸部52は、第1および/または第2の連結接続部36、38の周囲のサブエリアだけに限定することも可能である。こうすることにより、例えば、膨張弁20および/または壁28の円周方向において、連結接続部36、38の追加の締付が可能になる。
【0044】
連結接続部36、38は、圧締部46によって、横方向凹部50および横方向凸部52で、軸方向に固定されている。
【0045】
軸方向とは、それぞれの場合において、対応する冷媒ライン11の方向である。
【0046】
第1の連結接続部36は、冷媒分配器22とされている。これにより、冷媒分配器22が、膨張弁20の絞り部18の非常に近くになるので、絞り部18の後の冷媒分配器22までの冷媒の気液混合が分離するのは、わずかになる。従って、冷媒は、冷媒分配器22に接続されている複数のサブライン24に、均一に分配される。この分配は、冷媒分配器22の空間配置、または例えば車両の加速力などの外力に、本質的に依存する。
【0047】
図2に示す冷媒分配器22の実施形態において、冷媒ライン11は、絞り部18の直ぐ下流において、第1の水理上の直径を有するが、この直径は、サブライン24の分岐点の少し前で、第2の水理上の直径に減少する。水理上の直径が減少しているエリアにおいて、冷媒の流速は、ベンチュリー効果によって増加する。
【0048】
絞り部18は、冷媒ライン11が絞り部18における流れの方向に対して90°の角度で延びるように、膨張弁20に設けられている。高速で絞り部18を貫流する冷媒は、冷媒ライン11の壁に垂直に衝突し、冷媒は激しく混合する。
【0049】
図3は、図2に示す断面III−IIIおける連結部16の平面図であり、連結部16を、図2の立位置ではなく、横位置で示している。壁28の背後にある膨張弁20は、破線で示されている。壁28には、2つの円形の凹部54が設けられており、それらの凹部を通して、連結接続部36、38が突き出している。
【0050】
この図から容易に分かるように、圧締部46は、連結接続部36、38に横方向から押し付けることができる櫛状プレートとして形成されている。
【0051】
圧締部46は、連結接続部36、38の横方向凸部52および壁28に圧力をかけている。
【0052】
圧締部46において、ねじとされている2つの締付素子48用の2つのねじ孔56が設けられており、これにより、圧締部46を壁28および連結接続部36、38に対して軸方向に締め付けることができる。
【0053】
図4は、締結手段と、連結部16のシールとの詳細図を示している。第1または第2の連結接続部36、38は、横方向凸部52および横方向凹部50を有する。圧締部46は、連結接続部36、38の横方向凹部50に凸状に突き出しており、そのため、圧締部46は、連結接続部36、38に対して軸方向に固定されている。
【0054】
圧締部46は、横方向凸部52と壁28の両方に圧力をかけ、膨張弁20、壁28、および連結接続部36、38を互いに対して固定している。第1のシール40は、連結接続部36、38と膨張弁20との間に設けられている。図4に示す実施形態では、シール40は、膨張弁20のハウジングの凹部に配置されている。
【0055】
壁28と膨張弁20との間に、第2のシール42が設けられている。シール42は、壁28の溝の中に配置されており、この溝の深さは、シール42の最大圧縮を決定する。こうして、シール42の密閉機能が確実に最適になる。
【0056】
シール42は、シールが膨張弁20の縁の両方の面に配置され、膨張弁20の縁を囲み、こうして密閉機能を高めている。
【0057】
シール42は、壁28の溝の中に挿入される個別の構成部品でもよいし、また壁28と一体に成形してもよい。シール42を有する壁28は、例えば、2コンポーネント射出成型プロセスで作成してもよい。
【0058】
図示の実施形態において、第1および第2の連結接続部36、38の両方とも、旋盤加工または切削加工により、個別に作られる1つの部品として形成され、この構成部品は、冷媒ライン11またはサブライン24に接続されている。
【0059】
あるいは、冷媒循環ライン、および/または冷媒供給ラインを成形することにより、第1および第2の連結接続部36、38を作ることもできる。
【0060】
図5は、別の実施形態による冷媒分配器22の詳細図である。冷媒分配器は、連結接続部36との一緒の構成部品として形成されている。
【0061】
冷媒分配器22の右側に、水理上の断面が一定の冷媒ライン11が形成されている。冷媒分配器22の外側には、第1のシール40が配置されている溝と、連結部16の圧締部46を用いて冷媒分配器22を軸方向に固定するための、横方向凸部52および横方向凹部50とが設けられている。
【0062】
冷媒ライン11のいくつかのサブライン24への分割は、冷媒分配器の尖点部58で行われている。
【0063】
絞り部18から冷媒分配器22の尖点部までの冷媒ライン11の水理上の断面は、3〜8mmである。
【0064】
膨張弁20の絞り部18と冷媒分配器22の尖点部58との間の冷媒ライン11の長さは、冷媒ライン11の水理上の断面の2〜10倍になる。
【0065】
図6から分かるように、冷媒分配器22は、冷媒ライン11を4つのサブライン24に分割している。冷媒分配器22は、2つのサブライン24が、それぞれ同じレベル60に位置するように、膨張弁に取り付けられることが好ましい。またこれに関して、このシステムを車両に設置するとき、車両が上下動する場合でさえも、2つのサブライン24は、やはり同じレベル60にあると見なすことができる。
【0066】
図5および図6に示す冷媒分配器22は、全てのサブライン24において、冷媒液体流量が同じになるように形成されている。代替として、例えば、種々のサブライン24の断面を違えてもよく、そのようにすることにより、様々なサブラインの冷媒液体流量の比率に合わせて調整することができる。
【0067】
図7は、合計4つの冷媒サブライン24が並列接続されている、複数の冷却基盤64を有する車両の推進電池用の冷却装置62を示している。連結部16は、電池ハウジング内への冷却装置62の一体化を可能にし、これらの冷却基盤64は、それぞれが冷媒回路10の蒸発器26に相当し、これらの冷却基盤64は、連結部16の壁28を形成する電池ハウジング内に配置されている。共通締結装置44の締付素子48に、連結接続部36、38から見て膨張弁20の反対側からアクセスできるので、電池ハウジングの外側から、共通締結装置44を取り付けおよび取り外しすることができるようになっている。このようにして、電池ハウジングを開ける必要なしに、膨張弁20を交換することができる。
【0068】
図8は、連結部16の別の実施形態を示している。この実施形態は、締付素子48および圧締部46を含む共通締結装置44が、連結接続部36、38および膨張弁20だけを一緒に締めている点において、図2に示す実施形態とは異なっている。従って、壁28は、共通締結装置44によって膨張弁20に連結されていない。
【0069】
締付素子48は、膨張弁を通って突き出ており、圧締部46、従って横方向凸部52を膨張弁20の方向に引き寄せ、これらの部品を一緒に締めて一体にしている。
【0070】
膨張弁20と壁28との間のシール42の代わりに(図2と比較)、ここではシール66は、壁28と冷媒供給ライン25との間、および壁28と冷媒循環ライン27との間に設けられている。シール66は、十分に堅い材料で作られているシーリングボディ68と、シーリングボディ68の縁の上に取り付けられている複数のシーリング要素70、72とを備えている。
【0071】
2つの内側環状シーリング要素70は、冷媒供給ライン25および冷媒循環ライン27を囲み、こうして、シーリングボディ68と、それぞれ冷媒供給ライン25および冷媒循環ライン27との間を密閉している。
【0072】
外側の環状シーリング要素72は、シーリングボディ68の外側の周辺部に配置され、シーリングボディ68と壁28との間を密閉している。外側シーリング要素72は、ここでは、壁28の円筒状部74の内側を受け持っている。
【0073】
シーリング要素70、72は、2コンポーネント射出成型を用いて、シーリングボディ68上に一体成形されるのが好ましい。
【0074】
内側シーリング要素70および外側シーリング要素72は、複数の数珠玉状のものから作られており、これらの数珠玉状のものは、互いに隣接して軸方向に配置され、かつ弾性的に変形可能な材料から作られている。
【0075】
また代替として、例えばシーリングボディ68に実用的に固定される、個別のシーリング要素70、72を設けてもよい。
【0076】
シール66は、膨張弁20にも壁28にも連結されていないので、円筒状壁部74および/または冷媒供給ライン25および冷媒循環ライン27に対して移動することができる。シール66は、圧締部46によって膨張弁20の側の移動が限定され、壁止め部76によって壁28の側の移動が限定されている。このようにして、3つの構成部品の間、すなわち壁28と、シール66と、(冷媒供給ライン25および冷媒循環ライン27を含む)膨張弁22との間の、軸方向の遊びが可能になるのと同時に、冷媒ライン11と壁28との間は、良好に確実に密閉される。
【0077】
壁28は、膨張弁20を収容するつぼ状のハウジングを形成している。つぼ状ハウジングの直ぐ後には、例えば車両の電池のハウジングなどを形成する別の壁78が続いている。
【0078】
図9と図10の両方から容易に分かるように、外側シーリング要素72は、シーリングボディ68の外周を囲んでいる。2つの内側シーリング要素70は、冷媒供給ライン25および冷媒循環ライン27の2つの管を囲んでいる。シール66の膨張弁20に面する側(図9)では、櫛状の圧締部46が、冷媒供給ライン25および冷媒循環ライン27に接している。
【0079】
シーリングボディ68は、2つの部品から形成され、冷媒供給ライン25および冷媒循環ライン27の中央を通過する面に沿って分離されている。こうすることにより、シーリングボディ68を、冷媒ライン11に簡単に取り付けることができる。シール66の膨張弁20から見て反対側(図10)では、シーリングボディ68の2つの部品(80、82)は、ねじ接続84で、互いに接続されている。ねじ接続84により、例えばシール66を交換するために、シーリングボディ68の2つの構成部品80、82を簡単に分離することができる。
【0080】
もちろん、シーリングボディ68の2つの部品80、82を、別の様式で接続してもよい。
【0081】
シーリングボディ68を、もっと多くの部品に分割することもできる。例えば3つの部品に分割し、中央の部品を冷媒供給ライン25と冷媒循環ライン27との間に配置し、他の2つの部品を、冷媒供給ライン25および冷媒循環ライン27のそれぞれ反対側に配置することができる。
【符号の説明】
【0082】
10 冷媒回路
11 冷媒ライン
12 圧縮機
14 コンデンサ
16 連結部
18 絞り部
20 膨張弁
22 冷媒分配器
24 サブライン
25 冷媒供給ライン
26 蒸発器
27 冷媒循環ライン
28 壁
30 第1のサブエリア
32 第2のサブエリア
34 接続部
36 第1の連結接続部
38 第2の連結接続部
40 環状シール、第1のシール
42 シール、第2のシール
44 共通締結装置
46 圧締部
48 締付素子
50 横方向凹部
52 横方向凸部
54 凹部
56 ねじ孔
58 尖点部
60 レベル
62 冷却装置
64 冷却基盤
66 シール
68 シーリングボディ
70 内側シーリング要素
72 外側シーリング要素
74 円筒状壁部
76 壁止め部
78 別の壁
80、82 シーリングボディの部品
84 ねじ接続

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路(10)の冷媒ライン(11)を接続するための連結部(16)であって、主として車両の駆動モジュールを冷却するためのものであり、前記連結部は、前記連結部(16)内に膨張弁(20)を収容しており、前記膨張弁(20)は、前記冷媒回路(10)を第1および第2のサブエリア(30、32)に分離し、前記連結部(16)は、蒸発器(26)の冷媒供給ライン(25)および冷媒循環ライン(27)に直接接続されており、前記連結部(16)は、共通締結装置(44)によって、前記膨張弁(20)に取り外し可能に接続されている、前記冷媒供給ライン(25)および前記冷媒循環ライン(27)の連結接続部(36、38)をそれぞれ備え、前記共通締結装置(44)は、前記連結接続部(36、38)から見て、前記膨張弁(20)の反対側から、取り付けおよび取り外しするためにアクセスできる少なくとも1つの締付素子(48)を有することを特徴とする連結部(16)。
【請求項2】
前記膨張弁(20)は、前記連結部(16)の壁(28)、具体的には前記連結接続部(36、38)が貫通しているハウジングの壁に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の連結部(16)。
【請求項3】
前記共通締結装置(44)は、前記壁(28)と前記膨張弁(20)を一緒に締めるようになっていることを特徴とする請求項2に記載の連結部(16)。
【請求項4】
前記壁(28)と前記膨張弁(20)との間にシール(42)が設けられていることを特徴とする請求項2または3に記載の連結部(16)。
【請求項5】
前記シール(42)は、前記壁(28)の溝の中に配置され、前記溝の深さは、前記シール(42)の最大圧縮を決定するようになっていることを特徴とする請求項4に記載の連結部(16)。
【請求項6】
前記シール(42)は、2コンポーネント射出成形によって、前記壁(28)と一体成形されていることを特徴とする請求項4または5に記載の連結部(16)。
【請求項7】
前記膨張弁(20)、前記冷媒供給ライン(25)、および前記冷媒循環ライン(27)は、前記締結装置(44)によって互いに連結され、前記連結部(16)の前記壁(28)に移動可能に支持されるユニットを形成していることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の連結部(16)。
【請求項8】
前記壁(28)と前記冷媒供給ライン(25)との間、および前記壁(28)と前記冷媒循環ライン(27)との間に、シール(66)が設けられていることを特徴とする請求項2〜7のいずれか1項に記載の連結部(16)。
【請求項9】
前記壁(28)は、前記冷媒供給ライン(25)および前記冷媒循環ライン(27)の方向に延びる円筒状壁部(74)を有し、前記シール(68)は、前記冷媒供給ライン(25)、前記冷媒循環ライン(27)、および前記円筒状壁部(74)を受け持ち、好ましくは、前記円筒状壁部(74)および/または前記冷媒供給ライン(25)、および前記冷媒循環ライン(27)に対して移動可能であることを特徴とする請求項8に記載の連結部(16)。
【請求項10】
前記シール(66)は、シーリングボディ(68)を備え、前記シーリングボディ(68)は、十分に堅い材料で作られており、前記シーリングボディ(68)に内側シーリング素子(70)が設けられており、前記シーリングボディと前記冷媒供給ライン(25)との間、および前記シーリングボディと前記冷媒循環ライン(27)との間を密閉し、かつ前記シーリングボディ(68)上に外側シーリング素子(72)が設けられていて、前記シーリングボディ(68)と前記壁(28)との間を密閉し、前記内側シーリング素子(70)、および/または前記外側シーリング素子(72)は、2コンポーネント射出成型によって、前記シーリングボディ(68)と一体成形されていることを特徴とする請求項8または9に記載の連結部(16)。
【請求項11】
前記シーリングボディ(68)は、複数の部品から成り、前記シーリングボディ(68)の前記部品(80、82)は、互いに取り外し可能に連結されていることを特徴とする請求項10に記載の連結部(16)。
【請求項12】
前記冷媒循環ライン(27)の前記連結接続部(38)と前記膨張弁(20)との間、および前記冷媒供給ライン(25)の前記連結接続部(36)と前記膨張弁(20)との間に、シール(40)がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の連結部(16)。
【請求項13】
前記冷媒供給ライン(25)および/または前記冷媒循環ライン(27)の少なくとも1つの連結接続部(36、38)は、前記共通締結装置(44)の圧締部(46)と前記膨張弁(20)との間に位置し、固定されている横方向凸部(52)を有することを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の連結部(16)。
【請求項14】
前記冷媒供給ライン(25)および/または前記冷媒循環ライン(27)の少なくとも1つの連結接続部(36、38)は、横方向凹部(50)を有し、この横方向凹部(50)に、共通の圧締部(46)が係合し、前記連結接続部(36、38)を軸方向(A)に固定するようになっていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の連結部(16)。
【請求項15】
前記圧締部(46)は、前記連結接続部(36、38)に横方向に押し付けることができる櫛状プレートであることを特徴とする請求項13または14に記載の連結部(16)。
【請求項16】
車両の駆動モジュールを冷却するためのものであり、かつ請求項1〜15のいずれか1項に記載されている、冷媒回路(10)の冷媒ライン(11)を接続するための連結部(16)であって、前記連結部(16)の中、好ましくは膨張弁の中に設けられている絞り部(18)、および前記絞り部(18)の下流の前記冷媒回路(10)に配置されている少なくとも1つの冷媒ライン(11)を有し、
前記連結部(16)は、少なくとも2つのサブライン(24)を結び付けている冷媒分配器(22)を備え、前記冷媒分配器(22)は、前記連結部(16)の一部である、前記冷媒ライン(11)の連結接続部(36)であり、かつ前記連結接続部(36)には、前記冷媒ライン(11)が取り付けられていることを特徴とする連結部(16)。
【請求項17】
前記冷媒ライン(11)の水理上の断面は、前記絞り部(18)から前記冷媒分配器(22)まで一定であり、3〜8mmの間にあることを特徴とする請求項16に記載の連結部(16)。
【請求項18】
前記絞り部(18)と前記冷媒分配器(22)との間の前記冷媒ライン(11)の長さは、前記冷媒ライン(11)の水理上の断面の2〜10倍であることを特徴とする請求項16または17に記載の連結部(16)。
【請求項19】
前記連結接続部(36、38)は、前記冷媒循環ライン(27)および/または前記冷媒供給ライン(25)を成形することにより直接作成されていることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の連結部(16)。
【請求項20】
前記連結接続部(36、38)は、旋盤加工または切削加工により作られている構成部品であることを特徴とする請求項1〜19のいずれか1項に記載の連結部(16)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−516353(P2013−516353A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547508(P2012−547508)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050110
【国際公開番号】WO2011/083129
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(599120831)ヴァレオ クリマシステメ ゲーエムベーハー (5)
【Fターム(参考)】