説明

冷感組成物

【課題】塗布直後から顕著な冷感を得ることができ、かつその持続性に優れた刺激感の少ない冷感化粧料を提供すること。
【解決手段】(a)水溶性アルギン酸塩、(b)アルカリ土類金属塩、(c)水に溶解して吸熱反応を起こす冷却物質、を含有する固体状冷感組成物である。使用時に少なくとも水と混合されて用いられる前記固体状冷感組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体状冷感組成物に関し、使用時に刺激感が無く、冷感効果及びその持続性に優れた冷感組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から使用されている冷感組成物には、肌に刺激を与え、それを清涼感と感じることができるメントールやカンフル等の清涼剤を配合するものや、肌に刺激を与え、かつ揮発する際に吸熱するエタノール等の低級飽和アルコールを用いるものがある。しかしメントールやカンフルを用いた場合では清涼感自体が女性には好まれず、また使用後に肌の火照りが起こってしまったり、それだけでは十分に冷感を持続させるほどには効果を有するものではなかった。またエタノール等の低級飽和アルコールを配合したものは肌に対する冷感の付与が一時的なものであり、全て揮発してしまった時点で冷感を感じられなくなり、また時間とともに肌の温度により組成物の温度が上昇するため冷感の持続性に欠け、鎮静効果が十分ではなかった。特にエタノールを用いた場合ではアルコール過敏症や肌の弱い人には不向きである。
【0003】
このため、冷感組成物においては肌に刺激を与えずに、優れた使用時の冷感及びその持続性に関しての技術が各種検討されている。例えば、冷感効果に優れた化粧料として硫酸アルミニウムカリウム、又は硫酸アルミニウム水和物と炭酸ナトリウム10水和物とを使用時に混合して用いる方法(例えば、特許文献1参照)や、適度な清涼感を長時間に渡って付与するためにメントール誘導体を用いる方法(例えば、特許文献2参照)等が検討されている。
【0004】
一方、水溶性アルギン酸塩とアルカリ土類金属塩によるパック料は、使用後にきれいにはがせることができるという特徴があり、さらにパック料として保湿性やエモリエント性を向上させるための方法(例えば、特許文献3参照)や、塗布時に感じる冷感を抑える方法(例えば、特許文献4、5参照)等が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−191435号公報
【特許文献2】特開2002−80335号公報
【特許文献3】特開2006−232712号公報
【特許文献4】特開2002−363055号公報
【特許文献5】特開2002−255779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように硫酸アルミニウムカリウム等と炭酸ナトリウム10水和物などを使用時に混合して用いる方法では、水に溶かした際に吸熱反応を起こし、塗布時に肌から体温を奪うため使用直後の冷感は顕著に得られるものの、吸熱反応が終了すると、直ちに冷感がなくなってしまう。そのため、冷感の持続という点では、充分満足いくものではない。また特許文献2のようにメントール誘導体を用いた方法では、従来のメントールと同様に清涼感が女性に好まれない傾向があり、吸熱反応ではなく、肌に刺激を与え清涼感を付与していることから、使用後に肌が火照るという問題があった。
従って、本発明は、使用直後から刺激の無い冷感効果があり、及びその持続性にも優れる冷感組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、冷感効果及びその持続性には、冷感を生じさせる冷却物質の寄与のみならず、肌に塗布した際に膜となり、該冷却物質を膜中に閉じ込めてその冷却効果を持続的に肌に伝える媒体の性質も重要であることがわかった。この知見に基づき、種々検討した結果、次の成分(a)〜(c);
(a)水溶性アルギン酸塩
(b)アルカリ土類金属塩
(c)水に溶解して吸熱反応を起こす冷却物質
を含有する固形状冷却組成物により上記課題が解決できるとの知見が得られ、この知見に基づいてさらに検討し、本発明を完成するに至った。即ち、上記課題を解決するための手段は、上記成分(a)〜(c)を含有する固形状冷感組成物である。本発明の一態様では、冷感組成物は、使用時に少なくとも水と混合されて用いられる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、使用直後から刺激の無い冷感効果があり、及びその持続性にも優れる、冷感組成物を提供することができる。本発明の冷感組成物はメントール等の清涼剤のような刺激が無く、使用直後からの冷感及びその持続性に優れ、使用後も一定時間冷感を感じることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例で測定したサーモグラフィー写真である。
【図2】実施例で測定した他のサーモグラフィー写真である。
【図3】実施例で測定した他のサーモグラフィー写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本発明は、次の成分(a)〜(c);
(a)水溶性アルギン酸塩
(b)アルカリ土類金属塩
(c)水に溶解して吸熱反応を起こす冷却物質
を含有する固体状冷感組成物に関する。該冷感組成物は、例えば粉末、顆粒状、タブレット状等の固体形態である。本発明の冷感組成物の一態様は、使用時に、少なくとも水と混合されて使用される。本発明の固体状冷感組成物を、水と混合すると、成分(a)水溶性アルギン酸塩が溶解するとともに、成分(b)アルカリ土類金属塩の存在下でゲル化する。成分(c)冷却物質は、水に接触すると溶解して吸熱反応し、それによって、刺激性を伴わない、高い冷感効果が得られる。一方で、成分(c)は、高粘度なゲル化した成分(a)に取り囲まれているので、この吸熱反応は急激に進行するのではなく、緩慢に進行する。それによって冷感効果の持続性が改善される。また、前記ゲル化した組成物を皮膚等に塗布することによって皮膚等の表面に膜が形成され、冷却物質の吸熱反応による冷感効果は、該膜を介して、皮膚等に持続的に供給される。本発明の冷感組成物は、上記した通り、刺激性を伴わない、吸熱反応による冷却効果を利用しているので、使用後にも火照り等はなく、塗布部から該組成物を除去した後も、冷却効果がある程度持続するという特徴がある。
以下、本発明に用いられる種々の成分について詳細に説明する。
【0011】
本発明の固体状冷感組成物は、(a)水溶性アルギン酸塩を含有する。成分(a)は、後述する成分(b)とともに、水と接触することにより、不溶化し、ゲル化する。それによって、成分(c)の吸熱反応よる冷却効果を促進させ、及びその持続性を改善する。また、皮膚等の対象物に塗布されると、持続的に膜を形成して、成分(c)の吸熱反応による冷却効果を、皮膚等に持続的に伝達する媒体となる。本発明に用いられる成分(a)水溶性アルギン酸塩の塩については、上記作用を示す限り、特に限定されない。具体的には、ナトリウム塩、カリウム塩、トリエタノールアミン塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの中でも、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩が好ましく、膜形成した際の使用性が良好な点で、ナトリウム塩がより好ましい。
【0012】
本発明において、成分(a)の含有量は、特に限定されるものではないが、全量あたり5〜40質量%(以下、単に「%」と記す)が好ましい。この範囲であれば、使用性が良好で、冷感を継続的に持続させられる。成分(a)として、2種以上の水溶性アルギン酸塩を用いてもよく、2種以上用いる場合は、その合計が、上記範囲であるのが好ましい。
【0013】
本発明に用いられる成分(b)アルカリ土類金属塩としては、上記作用を示す限り、特に制限はない。具体的には、炭酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸亜鉛等が挙げられる。この中でも、冷感化粧料として使用する際の基材としては、ゲル化が良好である炭酸カルシウムが望ましい。
【0014】
本発明に用いられる成分(b)の含有量は、特に限定されるものではないが、全量あたり5〜50%が望ましい。この範囲であれば、水と混合した際に、ゲル化が良好であるため、好ましい。成分(b)として、2種以上のアルカリ土類金属塩を用いてもよく、2種以上用いる場合は、その合計が、上記範囲であるのが好ましい。
【0015】
また、膜形成性の観点では、成分(a)及び成分(b)の含有量の合計が、15〜90%であるのが好ましく、20〜70%であるのがより好ましく、40〜60%であるのがさらに好ましい。
【0016】
本発明に用いられる成分(c)は、水に溶解して吸熱反応を起こす冷却物質であり、冷感組成物の冷感効果に寄与、冷感効果を高めるために用いられるものである。なお、本明細書では、「吸熱反応」とは、化学結合を形成する吸熱化学反応のみならず、吸熱物理変化も含む意味で用いる。吸熱反応は、エネルギーを系外から熱として吸収する、つまり負の反応熱を持つ化学反応及び物理変化をいう。通常、水に物質が溶解すると、水和により発熱することが多いが、溶質の種類によっては、水分子間の水素結合によって形成されているクラスターが壊れるために、エネルギーを吸収し、これらの総和として吸熱変化となる。本発明に用いられる成分(c)水に溶解して吸熱反応を起こす冷却物質は特に限定されず、好ましくは、リン酸水素二ナトリウム12水塩、リン酸ナトリウム12水塩、リン酸水素二ナトリウム等のリン酸塩、炭酸ナトリウム10水塩、炭酸水素ナトリウム、無水炭酸ナトリウム等の炭酸塩と、例えば常温で固体状のシュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、グリコール酸、グルタミン酸、アスパラギン酸などの有機酸が用いられる。成分(c)が、炭酸塩及び/又は燐酸塩の少なくとも1種と、水溶性の有機酸の少なくとも1種とを含有することがより好ましい。成分(c)としてこの組み合わせを利用すると、それぞれ単独の物質を使用するよりも、成分(c)の溶解が促進されて、高い冷感効果が得られるので好ましい。
【0017】
本発明の冷感組成物における成分(c)の配合量は、特に限定されないが、0.5〜40%が好ましく、0.5〜20%がより好ましく、5〜15%がさらに好ましい。成分(c)をこの範囲で配合すると、水と混合した直後から顕著な冷感を感じることができ、刺激感無く、その持続性に優れる冷感組成物を得ることができる。成分(c)として、2種以上の物質を用いる場合は、その合計が、上記範囲であるのが好ましい。
【0018】
また、本発明の冷感組成物における、成分(a)及び成分(b)の合計含有量と成分(c)の含有量が、質量比で(a+b):(c)=100:1〜1:5であるのが好ましく、(a+b)>(c)であるのがより好ましく、50:1〜1:1であるのがさらに好ましく、10:1〜3:1であるのがよりさらに好ましい。この範囲であると、膜形成性を損なうことなく、高い冷感効果が得られる。なお、従来、アルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩と炭酸カルシウムとを反応させて、皮膜を形成する方法が知られている。前記従来の皮膜方法では、グルコノデルタラクトン等の酸性物質を添加して、炭酸カルシウムのイオン化を促進することがしばしば行われる。本発明に係る成分(c)の中には、水中でpH緩衝剤として作用するものも多く、pH緩衝剤として作用する成分(c)の存在下では、炭酸カルシウムのイオン化が阻害されるので、本発明の冷感組成物が水と混合された際に、従来のアルギン酸ナトリウム等のアルギン酸塩と炭酸カルシウムとの反応による皮膜形成反応が、完全に進行しているわけではない。本発明では、上記割合で(a)〜(c)を用いることで、成分(a)のゲル化によって、成分(c)による冷感作用を伝達する媒体として充分な膜形成性を確保でき、さらには成分(a)のゲル化によって成分(c)の冷感作用をより高めることができる。
【0019】
本発明の冷感組成物は、成分(d)として、成分(a)〜(c)以外の粉体を含有していてもよい。成分(d)は、化粧料一般に使用される粉体であれば形状も球状、板状、針状等特に限定することなく配合できる。例えば無機粉体としては、タルク、カオリン、マイカ、合成マイカ、セリサイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸、炭化珪素、硫酸バリウム、ベントナイト、スメクタイト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が挙げられ、有機粉体としては、ナイロン粉末、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、シリコーン粉末、メチルメタアクリレート粉末、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ウールパウダー、シルクパウダー、結晶セルロース等、又、これらの粉体を複合化したものが挙げられる。更にフッ素化合物、シリコーン系油剤、金属石鹸、ロウ、油脂、炭化水素等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施したものを用いることもできる。
【0020】
本発明の冷感組成物における成分(d)の配合量は、特に限定されないが、0.1〜95%が好ましく、20〜50%がより好ましい。成分(d)をこの範囲で配合すると、冷感を損なうことなく、水と混合した際も適度な粘度を付与することができ、使用性に優れた冷感組成物を得ることができる。
【0021】
本発明の冷感組成物は、上記成分(a)〜(c)の必須成分の他に、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲において、成分(a)〜(c)、及び所望により添加される成分(d)以外の添加剤を含有していてもよい。当該添加剤の例には、油性成分、界面活性剤、水溶性ポリマー、水性成分、油溶性樹脂、有機顔料、無機顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、植物エキス、各種薬剤等、通常化粧料に配合される添加剤が含まれる。
【0022】
本発明に使用可能な油性成分としては、通常化粧料に使用されるものであれば特に限定されず、動物油、植物油、合成油等の起源、及び、固形油、半固形油、液体油、揮発性油等の性状を問わず、炭化水素類、油脂類、ロウ類、硬化油類、エステル油類、脂肪酸類、高級アルコール類、シリコーン油類、フッ素系油類、ラノリン誘導体類、油性ゲル化剤類等が挙げられ、室温で固形状であればそのままの形状、あるいは粉砕して用いることができる。
具体的には、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、合成炭化水素ワックス、エチレンプロピレンコポリマー、マイクロクリスタリンワックス、セレシンワックス、オゾケライト、流動パラフィン、スクワラン、ワセリン等の炭化水素類、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油等の油脂類、ミツロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等のロウ類、リンゴ酸ジイソステアリル、セチルイソオクタネート、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、デカイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、ホホバ油、ロジン酸ペンタエリスリット等のエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の脂肪酸類、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン・アルキルメチルポリシロキサン・メチルポリシロキサン共重合体、アルコキシ変性ポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサン等のシリコーン類、パーフルオロデカン、パーフルオロオクタン、パーフルオロポリエーテル等のフッ素系油剤類、ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラノリンアルコール等のラノリン誘導体、デキストリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル、12−ヒドロキシステアリン酸、イソステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム等の油性ゲル化剤類等が挙げられる。
【0023】
界面活性剤としては、化粧料一般に用いられている界面活性剤であればよく、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリグリセリン脂肪酸エステルのアルキレングリコール付加物、プロピレングリコール脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビタン脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ソルビトールの脂肪酸エステル及びそのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、グリセリンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ラノリンのアルキレングリコール付加物、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレンアルキル共変性シリコーン等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、ラウリン酸のような脂肪酸及びそれらの無機及び有機塩、アルキルベンゼン硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、α−スルホン化脂肪酸塩、アシルメチルタウリン塩、N−メチル−N−アルキルタウリン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、ο−アルキル置換リンゴ酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等が挙げられる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、ポリアミン及びアルカノルアミン脂肪酸誘導体、アルキル四級アンモニウム塩、環式四級アンモニウム塩等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、アミノ酸タイプやベタインタイプのカルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型、リン酸エステル型のものがあり、人体に対して安全とされるものが使用できる。例えば、大豆リン脂質、N,N−ジメチル−N−アルキル−N−カルボキシルメチルアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキルアミノアルキレンカルボン酸、N,N,N−トリアルキル−N−スルフォアルキレンアンモニウムベタイン、N,N−ジアルキル−N,N−ビス(ポリオキシエチレン硫酸)アンモニウムベタイン、2−アルキル−1−ヒドロキシエチル−1−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0024】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノン等が挙げられ、PABA系としては、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エチル、パラアミノ安息香酸グリセリル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、パラジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、パラジヒドロキシプロピル安息香酸エチル等が挙げられ、ケイ皮酸系としては、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、4−メトキシケイ皮酸−2−エトキシエチル等が挙げられ、サリチル酸系としては、サリチル酸−2−エチルヘキシル、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル等が挙げられ、その他、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−tert−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン、オキシベンゾン等が挙げられる。
【0025】
酸化防止剤としては、例えばα−トコフェロール、アスコルビン酸等が挙げられる。保湿剤としては、例えばタンパク質、ムコ多糖、コラーゲン、エラスチン、ケラチン等が挙げられる。美容成分としては、例えばビタミン類、消炎剤、生薬等が挙げられる。防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸アルキル、フェノキシエタノール等が挙げられる。
【0026】
水溶性ポリマーとしては例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体類、カラギーナン、クインスシードガム、寒天、ゼラチン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ペクチン、ジェランガム等の天然高分子類、ポリビニルアルコール、カルボシキビニルポリマー、アルキル付加カルボシキビニルポリマー、ポリアクリル酸ソーダ、ポリメタクリル酸ソーダ、ポリアクリル酸グリセリンエステル,ポリビニルピロリドン等の合成高分子類等が挙げられる。
水性成分としては、水に可溶な成分であれば何れでもよく、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール類、アロエベラ、ウイッチヘーゼル、ハマメリス、キュウリ、レモン、ラベンダー、ローズ等の植物抽出液が挙げられる。
【0027】
本発明の冷感組成物は、固体状であり、粉末状、顆粒状、錠剤等いずれの形態であってもよい。本発明の冷感組成物の調製方法については、特に限定されない。例えば、成分(a)〜(c)、及び所望により添加される成分(d)等の他の粉体を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)等で混合分散し、必要に応じて、油剤等を添加し、粉砕する。粉砕する方法としては、特に限定されるものではないが、通常公知の微粉砕方法である機械的及び化学的粉砕方法が使用可能である。具体的には、機械的粉砕方法として、ジェットミル、ハンマーミル、ピンミル、ボールミル、ビーズミル、マイクロス(登録商標)、オングミル(登録商標)、ハイブリダイザー(登録商標)、メカノフュージョン(登録商標)等が挙げられる。また、粉砕後、必要に応じて、目的の平均粒子径を得るまで分級してもよい。
または成分(a)〜(c)、及び所望により添加される成分(d)等のその他粉体を、混合分散し、粉砕し、金皿や樹脂皿等の容器に圧縮成型する方法や、圧縮成型せず、軽質流動イソパラフィンやエタノール等の溶剤を用いて、成分(a)〜(c)を含有する組成物を容器に流し込み、前記溶剤を乾燥し、錠剤または顆粒状に成型する方法等も利用することができる。
【0028】
本発明の冷感組成物は、使用時に少なくとも水と混合される。本発明の冷感組成物は、水と混合されることにより、冷感効果を奏するとともに、ゲル化し、皮膚等に塗布されてその表面に膜を形成可能となる。
本発明の冷感組成物と使用時に混合される水を含む成分は、水単独であってもよいが、本発明の効果を損なわない範囲で、水以外にエタノール等の親水性有機溶媒等を添加してもよく、化粧水、乳液等の水性化粧料であってもよい。
【0029】
本発明の冷感組成物は、種々の用途に利用できる。パック料等の化粧料、口腔洗浄用組成物、可食性チューイングガム、冷感シート剤等が挙げられる。
パック料等の化粧料、及び口腔洗浄用組成物の態様では、例えば、使用時に、1回分の使用量が取り分けられ、水と混合されて、使用されるであろう。混合する水の好ましい量は、用途によって異なる。例えば、パック料は、通常、皮膚に塗布された状態で数分間程度皮膚表面に保持され、その後除去される。よって、皮膚表面で膜を形成可能なように、混合される水の量を比較的少なくし、混合後に、前記組成物が高粘度化してゲル状態となる程度の量を添加するのが好ましいであろう。
また、可食性チューインガムの態様では使用時に水と混合しなくても、口腔内で唾液と混合されることで冷感効果が得られる場合もある。
また、冷感シート剤の態様では、前記固体状の冷感組成物は、袋状のシートの内部に充填された態様であってもよい。本態様では、使用時に、シート内部に水を注入し、前記冷感組成物と水とを混合することで、冷感効果が得られる。また、あらかじめ袋状のシートの内部に、前記冷感組成物と少なくとも水を含む液体とを、破壊可能な隔離板等によって分離した状態でそれぞれ充填しておき、使用時に当該隔離板を破壊して、前記冷感組成物と前記液体とを混合させて、冷感効果を得る態様であってもよい。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、これらは本発明を何ら限定するものではない。
[実施例1〜12及び比較例1〜8:冷感パック料の調製と評価]
表1及び表2に示す組成の冷感パック料を下記製造方法により調製し、「肌に塗布直後の冷感」、「肌に塗布後10分の冷感」、「ふき取り直後の冷感」、「ふきとり後3分経過後の冷感」、「刺激感の無さ」の各項目について、以下に示す評価方法及び判定基準により評価判定し、結果を併せて表1及び表2に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
(製造方法)
実施例1〜12
A:成分(1)〜(12)を室温にてヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、パルベライザーにて粉砕した。
比較例1〜5及び7
A:成分(1)〜(15)を室温にてヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、パルベライザーにて粉砕した。
比較例6
A:成分(1)、(2)、(8)、(15)を室温にてヘンシェルミキサーを用いて混合したのち、パルベライザーにて粉砕した。その後、成分(10)を添加混合した。
比較例8
A:成分(9)、(10)、(15)を室温にて均一に混合溶解した。その後、成分(11)、(13)、(14)を添加混合した。
【0034】
〔評価方法1〕
各試料に、使用直前に水を混合して、ゲル化させ、該ゲルを人間の下腕内側の肌に塗布した。赤外線サーモグラフィー装置 サーモトレーサーTH9100PMV(NEC三栄株式会社社製)を用いて、各試料を塗布した部位と周囲の肌表面温度との温度の差を計測した。「肌に塗布直後の冷感」、「肌に塗布後10分の冷感」、「ふき取り直後の冷感」、「ふきとり後3分の冷感」の其々の項目に関して以下の判定基準に従って判定した。
評価基準:
[評価結果] :[評 点]
塗布部の肌表面温度が非塗布部の肌表面温度と比較し5℃以上低い : 5点
塗布部の肌表面温度が非塗布部の肌表面温度と比較し4℃〜5℃未満低い: 4点
塗布部の肌表面温度が非塗布部の肌表面温度と比較し3℃〜4℃未満低い: 3点
塗布部の肌表面温度が非塗布部の肌表面温度と比較し2℃〜3℃未満低い: 2点
塗布部の肌表面温度が非塗布部の肌表面温度と比較し2℃未満低い : 1点
判定基準:
[評点の平均点] :[判 定]
4.5以上 : ◎
3.5以上〜4.5未満 : ○
1.5以上〜3.5未満 : △
1.5未満 : ×
【0035】
サーモグラフィーの測定結果のいくつかを、図1〜図4に示す。
図1は、実施例1及び比較例7の試料を同一人物の左右の下腕内側に、それぞれ同一面積になるように塗布し、塗布直後から塗布後10分まで、及びその後ふきとり直後からふきとり後3分まで、サーモグラフィーで肌表面温度を追跡した写真である。
図2は、実施例1及び比較例8の試料を同一人物の左右の下腕内側に、それぞれ同一面積になるように塗布し、塗布直後から塗布後10分まで、及びその後ふきとり直後からふきとり後3分まで、サーモグラフィーで肌表面温度を追跡した写真である。
図3は、実施例2と7、及び比較例3の試料を同一人物の左右のいずれかの下腕内側に、それぞれ同一面積になるように塗布し、塗布直後から塗布後10分まで、及びその後ふきとり直後からふきとり後3分まで、サーモグラフィーで肌表面温度を追跡した写真である。
サーモグラフィーの写真では、温度が低い部分は黒くなり、温度が高い部分は白くなる。
【0036】
〔評価方法2〕
10名の官能検査パネルに、前記実施例及び比較例の冷感パック料を用いてもらい、「刺激感の無さ」に関して以下に示す評価基準に従い、判定した。
(1)評価基準:
[評価結果] :[判 定]
9〜10人が刺激や火照りを感じない : ◎
6〜8人が刺激や火照りを感じない : ○
3〜5人が刺激や火照りを感じない : △
1〜2人が刺激や火照りを感じない : ×
【0037】
表1及び表2の結果から明らかなように、本発明の実施例の1〜10の冷感パック料は、「肌に塗布直後の冷感」、「肌に塗布後10分の冷感」、「ふき取り直後の冷感」、「ふきとり後3分の冷感」、「刺激感の無さ」の全ての項目に優れた冷感組成物であった。また、実施例11及び12は、成分(c)の含有量が0.5〜20質量%の範囲外であったので、実施例1〜10と比較して、ふき取り後の冷感は劣るものの、刺激性の観点及び/又は塗布時の冷感の観点では、成分(c)を配合せず、清涼剤としてメントールを用いた比較例5、及び清涼剤としてエタノールを用いた比較例6と比較して優れていた。
これに対して、成分(a)又は成分(b)を配合しない比較例1及び2では、「肌に塗布直後の冷感」、「肌に塗布後10分の冷感」、「ふき取り直後の冷感」、「ふきとり後3分の冷感」が良好ではなかった。また、成分(a)及び成分(b)を配合しない比較例3では、使用性に問題が出てしまうため、肌に塗布してもすぐ落ちてしまうため、「肌に塗布後10分の冷感」、「ふき取り直後の冷感」、「ふきとり後3分経過後の冷感」、「刺激感の無さ」を評価することができなかった。成分(a)及び成分(b)の代わりに、水溶性高分子であり、ゲルを形成可能なヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた比較例4では、十分な系の粘度を保つことができず、使用性に問題が出てしまうため「肌に塗布後10分の冷感」、「ふき取り直後の冷感」、「ふきとり後3分の冷感」、「刺激感の無さ」を評価することができなかった。成分(c)を配合せず、清涼剤としてメントールを用いた比較例5、及び清涼剤としてエタノールを用いた比較例6では、「ふきとり後3分経過後の冷感」と「刺激感の無さ」を満足させることができなかった。また、いずれも刺激性の冷感である点でも、本発明の実施例の冷感作用とは異なっていた。
【0038】
[実施例13:粉末状口腔組成物]
(成分) (%)
1.炭酸水素ナトリウム 20
2.クエン酸 20
3.アルギン酸ナトリウム 5
4.炭酸カルシウム 15
5.シリカ 5
6.ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 1
7.香料 1
8.キシリトール 残量
【0039】
(製造方法)
A:成分1〜8をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一分散する。
B:上記1gをポリエチレンラミネートアルミ箔袋に収容した粉末状口腔組成物を得た。
本発明の実施品である実施例13の粉末状口腔組成物は、「使用初期の冷感」、「使用5分後の冷感」、「洗い流し後の冷感」、「刺激感の無さ」の全ての項目に優れた粉末状口腔組成物であった。
【0040】
[実施例14:冷感クレンジング化粧料]
(成分) (%)
1.タルク 20
2.アルギン酸ナトリウム 10
3.硫酸カルシウム 20
4.炭酸ナトリウム 2
5.乳酸 2
6.シリル化シリカ 2
7.セリサイト 残量
8.スクワラン 1
9.ジメチコン 0.5
10.グリセリン 0.5
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.2
12.テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット 10
13.香料 0.3
【0041】
(製造方法)
A:成分8〜13を混合する。
B:成分1〜7をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で均一分散する。
C:BにAを添加し、混合する。
D:上記5gをポリエチレンラミネートアルミ箔袋に収容した冷感クレンジング化粧料を得た。
本発明の実施品である実施例14の冷感クレンジング化粧料は、「使用初期の冷感」、「使用5分後の冷感」、「洗い流し後の冷感」、「刺激感の無さ」の全ての項目に優れた冷感クレンジング化粧料であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(c);
(a)水溶性アルギン酸塩
(b)アルカリ土類金属塩
(c)水に溶解して吸熱反応を起こす冷却物質
を含有する固体状冷感組成物。
【請求項2】
成分(c)が、炭酸塩及び/又は燐酸塩の少なくとも1種と、水溶性の有機酸の少なくとも1種とを含有することを特徴とする請求項1に記載の冷感組成物。
【請求項3】
成分(c)の含有量が0.5〜20質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の冷感組成物。
【請求項4】
成分(a)及び成分(b)の含有量の合計が、15〜90質量%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の冷感組成物。
【請求項5】
成分(a)及び成分(b)の合計含有量と成分(c)の含有量が、質量比で(a+b):(c)=100:1〜1:5であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の冷感組成物。
【請求項6】
更に、成分(d)として成分(a)〜(c)以外の粉体を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷感組成物。
【請求項7】
使用時に少なくとも水と混合されて用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷感組成物。
【請求項8】
化粧料であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の冷感組成物。
【請求項9】
パック料として用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の冷感組成物。
【請求項10】
口腔洗浄料として用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の冷感組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−207788(P2011−207788A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75405(P2010−75405)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】