説明

冷暖房用鋼製パネル及びこれを用いた建築物の冷暖房システム

【課題】冷暖房用鋼製パネル及びこれを用いた建築物の冷暖房システム並びに建築物を提供すること。
【解決手段】鋼製枠材と構造用面材としての薄鋼板製折板とを備えた鋼製パネルにおいて、薄鋼板製折板8における表面側の凹部10と裏面側の凹部10とに、ホースまたは管11を折板巾方向全長に亘り這わせるように設けると共に、折板巾方向端部で折り返して、薄鋼板製折板8の長さ方向で、前記ホースまたは管11が交互に表側または裏側となるように設けた冷暖房用鋼製パネル1とする。冷暖房用鋼製パネル1を備えた建築物とする。冷暖房用鋼製パネル1のホースまたは管11に熱媒体を流し、薄鋼板製折板8に蓄熱された冷温熱を、薄鋼板製折板8から建物の室内に輻射する冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄鋼板製折板を備えた鋼製パネルに関し、特に冷暖房用鋼製パネル及びこれを用いた建築物の冷暖房システム並びに建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼製枠材に構造用面材としての薄鋼板製折板を配置して、その薄鋼板製折板の周縁部をドリルねじにより固定した鋼製パネルが知られている。また、薄鋼板製折板付き鋼製パネルを耐力壁等に使用した、建築物も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、表面に多数の突起状のフィンを備えた冷却パネルも知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−209582号公報
【特許文献2】特開2006−153431号公報
【特許文献3】特開2007−285643号公報
【特許文献4】特開2006−84149号公報
【特許文献5】特開2005−336815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鋼製枠材に構造用面材としての薄鋼板製折板を配置して、その薄鋼板製折板の周縁部をドリルねじにより固定した鋼製パネルを用いた建築物を冷暖房する場合には、パネル内に配管されていないので、別個に冷暖房設備(例えば、室外器および室内器)を設けるようになる。
前記のような別個の冷暖房設備を設けた場合には、壁等に貫通孔を設けて室内側に断熱された配管および室内器を設置する必要があるので、室内側にデッドスペースを生じると共に室内景観が悪くなるという問題がある。
前記のような別個の冷暖房設備を設けた場合には、壁等に貫通孔を設けて室内側に断熱された配管および室内器を設置する必要があるので、薄鋼板製折板を壁、床または屋根の面内せん断耐力抵抗部材の面材として利用した場合に、折板に配管孔をあけることになり、壁、床または屋根の耐力を低下させるという問題がある。
さらに、配管が室内〜室外に貫通することによりエネルギーロスが生じる。このエネルギーロスを緩和するために、配管や配管孔を断熱材で覆うといった断熱補強が必要となる。
本発明は前記の課題を有利に解消した冷暖房用鋼製パネル及びこれを用いた建築物の冷暖房システム並びに建築物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の冷暖房用鋼製パネルでは、鋼製枠材と構造用面材としての薄鋼板製折板とを備えた鋼製パネルにおいて、薄鋼板製折板における表面側の凹部と裏面側の凹部とに、ホースまたは管を折板巾方向全長に亘り這わせるように設けると共に、折板巾方向端部で折り返して、薄鋼板製折板の長さ方向で、前記ホースまたは管が交互に表側または裏側となるように設けたことを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明の冷暖房用鋼製パネルにおいて、鋼製パネルの片面に断熱材を介して外装材を備え、鋼製パネルの他方の片面に内装材を備えた耐力壁パネルとしたことを特徴とする。
第3発明では、第1発明の冷暖房用鋼製パネルにおいて、鋼製パネルにおける折板の上側に床仕上げ材を備え、鋼製パネルにおける鋼製枠材の下側に断熱材を備えた床パネルとしたことを特徴とする。
第4発明では、第1発明の冷暖房用鋼製パネルにおいて、鋼製パネルにおける折板の下側に天井仕上げ材を備え、枠材の上側に床仕上げ材を備えた床パネルとしたことを特徴とする。
第5発明では、第1発明の冷暖房用鋼製パネルにおいて、鋼製パネルにおける折板の上側に断熱材を介して屋根仕上げ材を備えた屋根パネルとしたことを特徴とする。
第6発明では、第1〜第5発明のいずれかに記載の冷暖房用鋼製パネルにおいて、薄鋼板製折板が室内側に配置され、薄鋼板製折板が室内側に露出または仕上げ用の内装材により覆われ、熱媒体が流されたホースまたは管から熱伝達された薄鋼板製折板により、室内側に輻射熱を輻射可能にされていることを特徴とする。
第7発明では、第1〜第6発明のいずれかに記載の冷暖房用鋼製パネルにおいて、薄鋼板製折板の室外側に断熱材が設置されて、熱媒体が流されたホースまたは管から熱伝達された薄鋼板製折板からの輻射熱が室外側に放出されるのを防止するようにしたことを特徴とする。
第8発明の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システムでは、第1〜第7発明のいずれかの冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物における鋼製パネルのホースまたは管に熱媒体を流し、ホースまたは管から薄鋼板製折板に熱伝達し、薄鋼板製折板に蓄熱された冷温熱を、薄鋼板製折板から建物の室内に輻射することにより、室内の温熱環境を安定させるようにしたことを特徴とする。
第9発明では、第8発明の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システムにおいて、鋼製パネルのホースまたは管は、ヒートポンプに接続され、そのヒートポンプを介して、地中または空気中に放熱、または地中または空気中から採熱可能にされていることを特徴とする。
第10発明では、第8発明または第9発明の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システムにおいて、ヒートポンプは、太陽電池パネルを用いた発電により駆動されることを特徴とする。
第11発明では、請求項7〜10に記載の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システムにおいて、薄鋼板製折板における表面側の凹部と裏面側の凹部とに、ホースまたは管を折板巾方向全長に亘り這わせるように設けると共に、折板巾方向端部で折り返すことにより折板に配管用の孔を開設しないことで、折板を面材としたとして用いた冷暖房用鋼製パネルを備えた壁、床または屋根の面内せん断耐力を低下させないようにしたことを特徴とする。
第12発明の建築物では、第8〜第11発明のいずれかの冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システムを利用可能にされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によると、鋼製枠材と構造用面材としての薄鋼板製折板とを備えた鋼製パネルにおいて、薄鋼板製折板における表面側の凹部と裏面側の凹部とに、ホースまたは管を折板巾方向全長に亘り這わせるように設けると共に、折板巾方向端部で折り返して、薄鋼板製折板の長さ方向で、前記ホースまたは管が交互に表側または裏側となるように設けたので、薄鋼板折板の凹凸を巧みに利用して薄鋼板製折板を冷却または昇温させることためのホースまたは管を容易に配置して管路を形成することができ、簡単な構造の冷暖房用鋼製パネルとすることができる等の効果が得られる。
第2発明によると、第1発明の冷暖房用鋼製パネルにおいて、鋼製パネルの片面に断熱材を介して外装材を備え、鋼製パネルの他方の片面に内装材を備えた耐力壁パネルとしたので、第1発明の効果に加えて、さらに壁外側からの断熱効果を有しかつ室内側の冷暖房効果の高い耐力壁パネルとすることができる効果が得られる。
第3発明によると、第1発明の冷暖房用鋼製パネルにおいて、鋼製パネルにおける折板の上側に床仕上げ材を備え、鋼製パネルにおける鋼製枠材の下側に断熱材を備えた床パネルとしたので、第1発明の効果に加えて、さらに床下側からの断熱効果を有しかつ室内側の冷暖房効果の高い床パネルとすることができる効果が得られる。
第4発明によると、第1発明の冷暖房用鋼製パネルにおいて、鋼製パネルにおける折板の下側に天井仕上げ材を備え、枠材の上側に床仕上げ材を備えた床パネルとしたので、第1発明の効果に加えて、さらに上階側または下階側の室内の冷暖房効果の高い床パネルとすることができる効果が得られる。
第5発明によると、第1発明の冷暖房用鋼製パネルにおいて、鋼製パネルにおける折板の外側に断熱材を介して屋根仕上げ材を備えた屋根パネルとしたので、第1発明の効果に加えて、さらに屋根側からの断熱効果を有しかつ室内側の冷暖房効果の高い屋根パネルとすることができる効果が得られる。
第6発明によると、第1〜第5発明のいずれかに記載の冷暖房用鋼製パネルにおいて、薄鋼板製折板が室内側に配置され、薄鋼板製折板が室内側に露出または仕上げ用の内装材により覆われ、熱媒体が流されたホースまたは管から熱伝達された薄鋼板製折板により、室内側に輻射熱を輻射可能にされているので、ホースまたは管が這わされた薄鋼板製折板を有効に利用して冷暖房することができる効果が得られる。
第7発明によると、第1〜第6発明のいずれかに記載の冷暖房用鋼製パネルにおいて、薄鋼板製折板の室外側に断熱材が設置されて、熱媒体が流されたホースまたは管から熱伝達された薄鋼板製折板からの輻射熱が室外側に放出されるのを防止するようにしたので、単に薄鋼板製折板の室外側に断熱材を配置するだけで、熱エネルギーの損出の少ない冷暖房効果の高い冷暖房用鋼製パネルとすることができる等の効果が得られる。
第8発明によると、第1〜第7発明のいずれかの冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物における鋼製パネルのホースまたは管に熱媒体を流し、ホースまたは管から薄鋼板製折板に熱伝達し、薄鋼板製折板に蓄熱された冷温熱を、薄鋼板製折板から建物の室内に輻射することにより、室内の温熱環境を安定させるようにしたので、簡単な構造の冷暖房用鋼製パネルにおける薄鋼板製折板の広い面積を利用して室内側へ輻射することができるので、室内の温熱環境を安定させることができる。また、広い面積の薄鋼板製折板を利用して室内側との熱伝達することもできるため、より一層、室内の温熱環境を安定させることができる。
第9発明によると、第8発明の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システムにおいて、鋼製パネルのホースまたは管は、ヒートポンプに接続され、そのヒートポンプを介して、地中または空気中に放熱、または地中または空気中から採熱可能にされているので、熱容量が大きく温度が安定している地中または空気中の大気を熱源として利用して建物物室内の冷暖房を行うことができるため、自然環境に優しい冷暖房システムとすることができる効果が得られる。
第10発明によると、第8発明または第9発明の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システムにおいて、ヒートポンプは、太陽電池パネルを用いた発電により駆動されるので、二酸化炭素を発生する燃料を使用しないで発電することができ、そのため、自然環境に優しい冷暖房システムとすることができる効果が得られる。
第11発明によると、第7〜第10発明のいずれかに記載の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システムにおいて、薄鋼板製折板における表面側の凹部と裏面側の凹部とに、ホースまたは管を折板巾方向全長に亘り這わせるように設けると共に、折板巾方向端部で折り返すことにより折板に配管用の孔を開設しないことで、折板を面材として用いた冷暖房用鋼製パネルを備えた壁、床または屋根の面内せん断耐力を低下させない効果が得られる。さらに、従来のように、壁、床、屋根に配管用の貫通孔を設けて室内側に断熱された配管および室内器を設置する場合には、室内側にデッドスペースを生じると共に室内景観が悪くなるという問題や、配管が室内〜室外に貫通することによるエネルギーロスや断熱補強の必要性の問題が解決できる。
第12発明の建築物によると、第8〜第11発明のいずれかの冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システムを利用可能にされているので、簡単な構造の冷暖房用鋼製パネルにおける薄鋼板製折板の広い面積を利用して室内側へ輻射することができる建築物とすることができ、そのため、室内の温熱環境を安定させることができる建築物とすることができる。また、広い面積の薄鋼板製折板を利用して室内側との熱伝達することもできるため、より一層、室内の温熱環境を安定させることができる建築物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態の冷暖房用鋼製耐力壁パネルのユニットを示すものであって、(a)は内装材を取り外して示す正面図、(b)は(a)のa−a線断面図、(c)は(a)の平面図である。
【図2】本発明の冷暖房用鋼製パネルのユニットの基本形態を示すものであって、(a)は正面図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(a)の平面図である。
【図3】外装材寄りに折り板および配管を配置した形態で、本発明の第2実施形態の冷暖房用鋼製耐力壁パネルのユニットを示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の冷暖房用鋼製耐力壁パネルのユニットにおける配管を固定する形態を示すものであって、(a)は内装材を取り外して示す正面図、(b)は(a)のa−a線断面図、(c)は(a)の平面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の冷暖房用鋼製床パネルのユニットを示すものであって、(a)は正面図、(b)は(a)の断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態の冷暖房用鋼製屋根パネルのユニットを示すものであって、(a)は正面図、(b)は(a)の断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態の冷暖房用鋼製床パネルのユニットを示すものであって、(a)は正面図、(b)は(a)の断面図である。
【図8】本発明の冷暖房用鋼製パネルのユニットを多数用いたスチールハウス建物の冷暖房システムを説明するための説明図である。
【図9】本発明の冷暖房用鋼製パネルのユニットを備えた建築物および冷暖房システムの説明図である。
【図10】本発明の冷暖房用鋼製パネルのユニットを備えた他の形態の建築物の説明図である。
【図11】本発明の第1実施形態の冷暖房用鋼製耐力壁パネルのユニットを示すものであって、(a)は内装材を取り外して示す正面図、(b)は(a)のe−e線断面図、(c)は(a)の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0010】
先ず、図2を参照して、本発明の冷暖房用鋼製パネル1の基本形態について、説明する。図2(a)は冷暖房用鋼製パネルの正面図、同図(b)は(a)の断面図、同図(c)は(a)の平面図である。
縦枠材2と横枠材3とを備えた枠形フレーム等の鋼製枠体4の片面に、頂部フランジ5とこれに接続する傾斜ウェブ6とその傾斜ウェブ6に接続する底部フランジ5とを備えた構造用面材としての薄鋼板製折板8を配置して、ドリルねじ9により前記鋼製枠体4に固定して薄鋼板製の鋼製パネル7が構成されている。
前記の薄鋼板製折板8における表面側の凹部10と裏面側(枠材側)の凹部10とに、ホースまたは管11を折板巾方向全長に亘り這わせるように設けている。このようにすることで、ホースまたは管11を薄鋼板製折板8に接触させ、薄鋼板製折板8に対する熱伝達をよくし、薄鋼板製折板8からの放熱または採熱を効率よく行えるようにしている。
前記の薄鋼板製折板8としては、板厚0.4mm〜2.3mm程度の薄板鋼板が用いられ、図示の形態では、板厚0.6mm前後の鋼板を折り曲げて、折板とし、構造用面材としている。
ホースまたは管11は、必要に応じ、薄鋼板製折板8に粘着テープあるいは固着具により、薄鋼板製折板8に固定してもよい。
ホースまたは管11は、薄鋼板製折板8の巾方向端部で折り返して、薄鋼板製折板の長さ方向で、前記ホースまたは管11が交互に表側または裏側となるように設けられている。
前記ホースまたは管11は、薄鋼板製折板8の巾方向端部で折り返す場合に、折板端部に切り欠きを設けて、ホースまたは管11の折り返し部が、薄鋼板製折板8の平面内に収まるようにすると、床パネルまたは屋根パネル等として、敷き並べることも可能になる。
図示のように、ホースまたは管11を、薄鋼板製折板8の巾方向端部外側で折り返すと、薄鋼板製折板8に、ホースまたは管11用の開口部あるいは切り欠きを設ける必要がないから、ホースまたは管11用の孔または開口部あるいは切り欠きを設けることによる耐力低下を起こすことがないため、壁パネル、床パネル、屋根パネル等の各種パネルとして有利である。
前記ホースまたは管11が、屈曲可能な可撓性のホースまたは管11である場合には、連続したホースまたは管11の一端側を、薄鋼板製折板8の表側の凹部10または裏側の凹部10に交互に送り込むことで配設が容易である。
前記ホースまたは管11は、薄鋼板製折板8に接触している状態が好ましい。
【0011】
前記ホースまたは管11が、屈曲可能な可撓性のホースまたは管11でない場合には、管路途中の折り返し部に、適宜、ベンド管あるいはエルボ管あるいはニップルを設けて連続した管路となるようにされる。
【0012】
前記ホースまたは管11の薄鋼板製折板8に対する配設形態は、薄鋼板製折板8における一つ置きの表面側の凹部10と、一つ置きの裏面側の凹部10に交互に配置するような形態でもよい。ホースまたは管11を薄鋼板製折板8におけるウェブに接するように配設してもよい。前記ホースまたは管11としては、耐圧ゴム製ホースあるいは耐圧合成樹脂製ホース、鋼製あるいは銅製等の金属管あるいは合成樹脂製管を使用してもよい。
前記ホースまたは管11の端部には、接続部28が設けられ、接続部28としては、ねじ接合によるねじ式接続部でもよく、他の公知の止水接続部でもよい。
前記ホースまたは管11の一方の端部の接続部28には、ヒートポンプからの配管または隣り合う冷暖房用鋼製パネル1における前記ホースまたは管11が接続管等を介して接続され、また、他方の端部の接続部28には、ヒートポンプへ戻る配管または隣り合う冷暖房用鋼製パネル1における前記ホースまたは管11が接続管等を介して接続される。
【0013】
前記の薄鋼板製折板8は、前記ホースまたは管11内を流れる冷温水(冷水または温水)等の熱媒体により、ホースまたは管11を介して熱伝達されて、薄鋼板製折板8に蓄熱されて、昇温または降温された薄鋼板製折板8から室内側に輻射による放熱または室内側からの採熱可能にされる。
【0014】
前記の薄鋼板製パネルと、ホースまたは管11とにより、冷暖房用鋼製パネル1が構成されている。
なお、薄鋼板製の枠体4に、ホースまたは管11を設けた薄鋼板製折板8を取り付けて、冷暖房用鋼製パネル1を構成するようにしてもよい。
【0015】
次に、図1を参照して、本発明の第1実施形態の冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aについて説明する。
この冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aは、図2の冷暖房用鋼製パネル1に、石膏ボード等の内装材あるいは耐候製外壁材等の外装材等を設けて、冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aのユニットとした形態である。したがって、図2と同様な部分については、同様な符号を付して、相違する部分を主に説明する。なお、内装材の室内側表面には化粧材(板)等を設置することもできる。
図1(b)に示すように、薄鋼板製折板8と反対側の枠材2,3に、断熱材12が配置され、その外側に外装材13が配置され、外装材13と断熱材12は、ドリルねじ9により枠材2,3に固定されている。前記の外装材13は室外側に設けられ、また、薄鋼板製折板8には、内装材14がドリルねじ9により薄鋼板製折板8または枠材2,3に固定されている。このような形態であると、断熱材12により熱が室外に逃げるのを抑制することができる。
【0016】
図3は、本発明の第2実施形態の冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aであり、図1の変形形態である。
薄鋼板製折板8と反対側の枠材2,3に、内装材14がドリルねじにより枠材2,3に固定されている。薄鋼板製折板8の外側に断熱材12が配置され、その外側に外装材13が配置され、外装材13と断熱材12は、ドリルねじ9により薄鋼板製折板8または枠材2,3に固定されている。
前記のような冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aでは、これを建物に組み込む場合に、横方向に間隔をおいて冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aを設ける場合には、ホースまたは管11を、冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aの外側に張り出していても、仕上げ壁材を適宜設置することで隠すようにすればよい。
【0017】
次に、図4を参照して、本発明の第1実施形態の冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aにおける配管を固定する形態について説明すると、ホースまたは管11を、薄鋼板製折板8に保持させる場合に、ホースまたは管11を薄鋼板製折板8に配置した状態で、ホースまたは管11の直径程度の長半円状の溝を有する保持金具15を、薄鋼板製折板8に接着材等により固定することで、ホースまたは管11を薄鋼板製折板8の所定の位置に保持することができ、また、ホースまたは管11を薄鋼板製折板8に接触させることも可能になる。保持金具15は、設計により適宜設置するようにすればよい。
【0018】
次に、図5を参照して、本発明の第3実施形態の冷暖房用鋼製床パネル1Bについて説明する。この形態では、建物における最下階の床用パネルとして好適な形態であり、リップ付き溝形鋼を用いた枠材2における形鋼の梁せいが高くされて、横方向に延長するように配置されている。
この冷暖房用鋼製床パネル1Bでは、枠材2,3の下側に断熱材12が配置されて、ドリルねじ9により枠材2,3に固定され、薄鋼板製折板8の上側に、床仕上げ材16Aが、ドリルねじ9により、薄鋼板製折板8または枠材2,3に固定されている。この形態では、枠材2,3の下側に断熱材12が配置されているので、床下に熱が逃げないようにされ、室内側の冷暖房効率が向上するようにされている。その他の冷暖房用鋼製パネルの部分は、図2の場合と同様であので、同様な部分については、同様な符号を付している。
【0019】
図6は、本発明の第4実施形態の冷暖房用鋼製屋根パネル1Cを示すものであって、薄鋼板製折板8の上側に断熱材12が載置され、その上に、屋根仕上げ材16Bが載置され、ドリルねじ9により、薄鋼板製折板8または枠材2,3に固定されている。この形態では、屋根側に熱が逃げないようにされ、室内側の冷暖房効率が向上するようにされている。その他の冷暖房用鋼製パネルの部分は、図2の場合と同様であので、同様な部分については、同様な符号を付している。
【0020】
図7は、本発明の第5実施形態の冷暖房用鋼製床パネル1Bを示すものであって、枠材2,3の上側に床仕上げ材16Aが載置されて、ドリルねじ9により枠材2,3に固定され、薄鋼板製折板8の下側に天井仕上げ材17が配置されて、ドリルねじ9により薄鋼板製折板8または枠材2,3に固定されている。この形態では、断熱材12を備えていないので、ホースまたは管11からの熱伝達等により薄鋼板製折板8を介して、天井仕上げ材17あるいは枠材2,3上の床仕上げ材16Aが昇温または降温されて、下階側の室内または上階側の室内の冷暖房効率が向上するようにされている。
【0021】
次に、図1に示す冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aと、図5及び図7に示す冷暖房用鋼製床パネル1Bと、図6に示す冷暖房用鋼製屋根パネル1Cとを組み込んだスチールハウスからなる建築物18を図9および図10に示す。図9と図10の相違点は、図9では、冷暖房用鋼製屋根パネル1Cを傾斜配置して三角屋根の形態とし、図10では、冷暖房用鋼製屋根パネル1Cを水平配置して陸屋根(フラット屋根)の形態としている点で相違しているが、その他の構成は同様である。
図9および図10に示す実施形態では、コンクリート基礎19上に、木製角材からなる土台20が設置され、その上に第1の端根太21および図5に示す冷暖房用鋼製床パネル1Bが設置され、その上に、図1に示す冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aがランナー材等を介して立設され、その上に、2階の第2の端根太21が設置され、前記2階の端根太21に支持させるように適宜支持金具(図示を省略)を介在させて、図7に示す冷暖房用鋼製床パネル1Bが設けられ、次いで、図1に示す冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aがランナー材等を介して立設され、その上に第3の端根太21が設置され、その第3の端根太21に支持させるように適宜支持金具(図示を省略)を介在させて、適宜、図7に示す冷暖房用鋼製床パネル1Bが設けられている。
【0022】
本発明の前記実施形態では、建物の構造躯体を利用して、薄鋼板製折板8の表裏両面の凹部を利用して配管を可能にしていると共に、薄鋼板製折板8から熱輻射による放熱および室内気中からの採熱を可能にし、室内の冷暖房を可能にしている。
【0023】
前記の第3の端根太21あるいは冷暖房用鋼製床パネル1Bに支持させるように、適宜支持金具を介在させて、図6に示す冷暖房用鋼製屋根パネル1Cが設置された建築物18とされている。
前記の冷暖房用鋼製床パネル1B、冷暖房用鋼製耐力壁パネル1A、冷暖房用鋼製屋根パネル1Cは、適宜並べて設置され、冷暖房用鋼製床パネル1B、冷暖房用鋼製耐力壁パネル1A、冷暖房用鋼製屋根パネル1Cのホースまたは管11は、適宜、直列または並列して連結される。
直列に連結された冷暖房用鋼製パネル1のグループは、一つの冷暖房用鋼製パネル群を形成して、ヒートポンプ22に送り出し管路23および戻り管路25を介して接続され、また、前記ヒートポンプ22は、地中熱交換器24に管路25を介して接続され、地中熱交換器24と地中との間で熱交換可能にし、地中熱交換器24により、温度が安定している地中に放熱または地中から採熱可能にされている。
前記の地中熱交換器24の周囲地盤26には、地中熱交換器24を囲むように所定の深さまで断熱層を地中に設けて、蓄熱または採熱を効率よく行えるようにしている。
前記の地中熱交換器24に代わり、気中の地盤上にラジエーター(図示を省略)を設けて、ヒートポンプ22とラジエーターを管路により接続し、気中とラジエーター間で熱交換可能にして、気中に放熱または気中から採熱可能にしてもよい。
【0024】
前記のような建築物18における冷暖房用鋼製パネル1では、薄鋼板製折板8が室内側に配置され、薄鋼板製折板8が室内側に露出または仕上げ用の内装材により覆われ、熱媒体が流されたホースまたは管から熱伝達された薄鋼板製折板8により、室内側に輻射熱を輻射可能な冷暖房用鋼製パネルとされている。
【0025】
また、薄鋼板製折板8の室外側に断熱材12が設置されて、熱媒体が流されたホースまたは管11から熱伝達された薄鋼板製折板8からの輻射熱が室外側に放出されるのを防止可能な冷暖房用鋼製パネル1となっている。
【0026】
前記のヒートポンプ22を駆動させるために、図8に示すように、太陽電池パネル27により発電して、その電力によりヒートポンプ22を駆動すればよい。太陽電池パネル27は、冷暖房用鋼製屋根パネル1C上または壁面に設置するようにしてもよい。
【0027】
前記のような冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物18では、冬季(夏季)において、地中から地中熱交換器24により採熱(または放熱)して、冷暖房用鋼製パネル1のホースまたは管11に、昇温(冷却)された水あるいはガス等の熱媒体を流し、ホースまたは管11から薄鋼板製折板8に熱伝達し、薄鋼板製折板8に伝達または蓄熱された冷温熱を、薄鋼板製折板8から建物の室内に輻射することにより、室内の温熱環境を安定させることができる冷暖房システムとすることができる。
また、図8または図9(図10)に示すように、建築物18における冷暖房用鋼製パネル1のホースまたは管11を、ヒートポンプ22に接続し、そのヒートポンプ22を介して、地中熱交換器24により地中またはラジエーターにより空気中に、放熱または地中または空気中から採熱可能な冷暖房システムとすることも可能になる。
さらに、ヒートポンプ22を駆動する動力を、建築物18に設置した太陽電池パネルを用いた発電により駆動すると、外部電力、化石燃料等を一切利用しないので、自然環境を破壊することがなく、省エネネルギー対策にもなり、また、二酸化炭素を排出しないので、省COにもなり、地球温暖化を防止できる建築物の冷暖房システムとなっている。
【0028】
また、前記のような冷暖房システムを備えた建築物では、冷暖房用鋼製パネル1を利用して、室内を冷暖房することができ、建物の壁・屋根・床を含む構造躯体全体から冷暖房することができ、室内内面を形成している内面全体の冷暖房用鋼製パネル1から室内を冷暖房することができる。
また、前記のような冷暖房用鋼製パネルを各種パネル(壁パネル、床パネル、屋根パネル)に用い、これを建築物の各部(壁、床または屋根)に用いた建築物の冷暖房システムでは、薄鋼板製折板における表面側の凹部と裏面側の凹部とに、ホースまたは管を折板巾方向全長に亘り這わせるように設けると共に、折板巾方向端部(外側)で折り返すことで、折板に配管用の孔を開設しないようにされており、そのため、折板に断面欠損となる配管用の孔を設けることによる、折板を面材として用いた冷暖房用鋼製パネルを備えた壁,床または屋根の面内せん断耐力を低下させないようにされた建築物の冷暖房システムとすることができる。
【0029】
なお、室内空気を攪拌させる場合には、太陽電池パネル27により、送風機等を駆動させてもよい。
【0030】
本発明を実施する場合、ドリルねじに代えて、釘等の他の公知の固着具を用いるようにしてもよい。
【0031】
前記実施形態では、薄鋼板製折板8における内装材14側の凹部10と外装材13側の凹部10に、交互にホースまたは管11を配置する形態を示したが、本発明を実施する場合、熱媒体が流されるホースまたは管11を、薄鋼板製折板8における内装材14側の凹部10と外装材13側の凹部10のすべてに這わせなくてもよく、例えば、図11に代表形態として示す冷暖房用鋼製耐力壁パネル1Aのように、端部側と中間部の凹部10にホースまたは管11を一つまたは2つ置きの凹部10に配置するようにしてもよい。接続部28を薄鋼板製折板8から離れた位置に設けるようにしてもよい。
また、図示を省略するが、薄鋼板製折板8にホースまたは管11を配置する形態として、内装材14側の凹部10にのみ配置する形態でもよく、外装材13側の凹部10にのみ配置する形態でもよく、さらに、薄鋼板製折板8に対するホースまたは管11の配置間隔は設計により適宜設定される。
なお、図10に示すように陸屋根形態とする場合には、適宜、冷暖房用鋼製屋根パネル1C上を舗装すると共に陸屋根の周囲に、冷暖房用鋼製屋根パネル1C等に手摺を立設することで、屋上を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0032】
1 冷暖房用鋼製パネル
1A 冷暖房用鋼製耐力壁パネル
1B 冷暖房用鋼製床パネル
1C 冷暖房用鋼製屋根パネル
2 縦枠材
3 横枠材
4 鋼製枠体
5 頂部フランジ
6 傾斜ウェブ
7 鋼製パネル
8 薄鋼板製折板
9 ドリルねじ
10 凹部
11 ホースまたは管
12 断熱材
13 外装材
14 内装材
15 保持金具
16A 床仕上げ材
16B 屋根仕上げ材
17 天井仕上げ材
18 建築物
19 コンクリート基礎
20 土台
21 端根太
22 ヒートポンプ
23 送り出し管路
24 地中熱交換器
25 戻り管路
26 地盤
27 太陽電池パネル
28 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製枠材と構造用面材としての薄鋼板製折板とを備えた鋼製パネルにおいて、薄鋼板製折板における表面側の凹部と裏面側の凹部とに、ホースまたは管を折板巾方向全長に亘り這わせるように設けると共に、折板巾方向端部で折り返して、薄鋼板製折板の長さ方向で、前記ホースまたは管が交互に表側または裏側となるように設けたことを特徴とする冷暖房用鋼製パネル。
【請求項2】
鋼製パネルの片面に断熱材を介して外装材を備え、鋼製パネルの他方の片面に内装材を備えた耐力壁パネルとしたことを特徴とする請求項1に記載の冷暖房用鋼製パネル。
【請求項3】
鋼製パネルにおける折板の上側に床仕上げ材を備え、鋼製パネルにおける鋼製枠材の下側に断熱材を備えた床パネルとしたことを特徴とする請求項1に記載の冷暖房用鋼製パネル。
【請求項4】
鋼製パネルにおける折板の下側に天井仕上げ材を備え、枠材の上側に床仕上げ材を備えた床パネルとしたことを特徴とする請求項1に記載の冷暖房用鋼製パネル。
【請求項5】
鋼製パネルにおける折板の上側に断熱材を介して屋根仕上げ材を備えた屋根パネルとしたことを特徴とする請求項1に記載の冷暖房用鋼製パネル。
【請求項6】
薄鋼板製折板が室内側に配置され、薄鋼板製折板が室内側に露出または仕上げ用の内装材により覆われ、熱媒体が流されたホースまたは管から熱伝達された薄鋼板製折板により、室内側に輻射熱を輻射可能な請求項1〜5のいずれか1項に記載の冷暖房用鋼製パネル。
【請求項7】
薄鋼板製折板の室外側に断熱材が設置されて、熱媒体が流されたホースまたは管から熱伝達された薄鋼板製折板からの輻射熱が室外側に放出されるのを防止するようにしたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の冷暖房用鋼製パネル。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物における鋼製パネルのホースまたは管に熱媒体を流し、ホースまたは管から薄鋼板製折板に熱伝達し、薄鋼板製折板に蓄熱された冷温熱を、薄鋼板製折板から建物の室内に輻射することにより、室内の温熱環境を安定させるようにしたことを特徴とする冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システム。
【請求項9】
鋼製パネルのホースまたは管は、ヒートポンプに接続され、そのヒートポンプを介して、地中または空気中に放熱、または地中または空気中から採熱可能にされていることを特徴とする請求項8に記載の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システム。
【請求項10】
ヒートポンプは、太陽電池パネルを用いた発電により駆動されることを特徴とする請求項8または9に記載の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システム。
【請求項11】
薄鋼板製折板における表面側の凹部と裏面側の凹部とに、ホースまたは管を折板巾方向全長に亘り這わせるように設けると共に、折板巾方向端部で折り返すことにより折板に配管用の孔を開設しないことで、折板を面材として用いた冷暖房用鋼製パネルを備えた壁、床または屋根の面内せん断耐力を低下させないようにしたことを特徴とする請求項7〜10に記載の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システム。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1項の冷暖房用鋼製パネルを備えた建築物の冷暖房システムを利用可能にされていることを特徴とする建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−144520(P2011−144520A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4216(P2010−4216)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】