説明

冷蔵庫用除菌装置及びそれを備えた冷蔵庫

【課題】冷蔵庫内を安全且つ充分に除菌できる冷蔵庫用除菌装置及びそれを備えた冷蔵庫を提供する。
【解決手段】貯水タンク(22)に貯留された水中でストリーマ放電を生起する電極対(36,38)と、電極対(36,38)に直流電圧を印加する直流電源(40)とを有し、電極対(36,38)の間におけるストリーマ放電によって貯水タンク(22)内の水中で過酸化水素を発生させて、過酸化水素を含む処理水(W)を生成する水中放電ユニット(34)を備え、水中放電ユニット(34)により生成した処理水(W)を噴霧機構(32)から冷蔵庫(10)内に噴霧して冷蔵庫(10)内を除菌するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫用除菌装置及びそれを備えた冷蔵庫に関し、特に、冷蔵庫内を除菌する際の除菌作用の持続性及び安全性の向上対策に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫で低温保存される果物や野菜などの生鮮食品は、カビなどの細菌類の繁殖によって腐敗が速まってしまうので、冷蔵庫内を殺菌又は抗菌処理することにより食品を長期保存することが従来から提案されている。例えば、特許文献1には、殺菌性又は抗菌性を有する処理水として酸性水、オゾン水又は次亜塩素酸水を冷蔵庫の開閉に応じて庫内に噴霧することにより、生鮮食品に付着している細菌類を死滅させ増殖を防止すると共に高湿状態を保ち、食品の鮮度を保持することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−220949号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示の酸性水、オゾン水及び次亜塩素酸水は、残留性がほとんどないので、冷蔵庫内において殺菌又は抗菌効果を長時間に亘って持続させることが困難であり、冷蔵庫の開閉に応じて噴霧する程度では庫内全体を充分に除菌することができない。さりとて、頻繁に処理水を噴霧すると、冷蔵庫内の湿度調整が難しくなって過湿状態に陥りやすくなる。
【0005】
また、オゾン水は気化するとオゾンガスを、次亜塩素酸水は気化すると塩素ガスをそれぞれ生成する。したがって、これらオゾン水又は次亜塩素酸水を処理水として冷蔵庫内に噴霧する場合には、庫内に有毒なオゾンガス又は塩素ガスが生じるので、人体に害を来すおそれがあり、安全性に欠けるという問題がある。特に、上述したように冷蔵庫内を全体に亘って充分に除菌すべく頻繁に処理水を噴霧する場合には、庫内に有毒なガスが充満することになるので、当該問題が顕著になる。
【0006】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、冷蔵庫内を安全且つ充分に除菌できる冷蔵庫用除菌装置及びそれを備えた冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明では、残留性が高く揮発しても有毒ガスを生じない過酸化水素を含む処理水を冷蔵庫内に噴霧するようにした。
【0008】
具体的に、本発明は、処理水(W)が貯留される貯水タンク(22)と、該貯水タンク(22)から供給された処理水(W)を冷蔵庫(10)内に噴霧する噴霧機構(32)とを備え、該噴霧機構(32)から噴霧された処理水(W)によって冷蔵庫(10)内を除菌する冷蔵庫用除菌装置(20)及びそれを備えた冷蔵庫(10)を対象とし、以下の解決手段を講じたものである。
【0009】
すなわち、第1の発明は、冷蔵庫用除菌装置(20)であって、上記貯水タンク(22)に貯留された水中でストリーマ放電を生起する電極対(36,38)と、該電極対(36,38)に直流電圧を印加する直流電源(40)とを有し、上記電極対(36,38)の間におけるストリーマ放電によって上記貯水タンク(22)内の水中で過酸化水素を発生させて、過酸化水素を含む処理水(W)を生成する水中放電ユニット(34)を備え、上記水中放電ユニット(34)により生成した処理水(W)を上記噴霧機構(32)から冷蔵庫(10)内に噴霧して冷蔵庫(10)内を除菌することを特徴とする。
【0010】
この第1の発明では、水中放電ユニット(34)において直流電源(40)から電極対(36,38)に直流電圧が印加される。これにより、貯水タンク(22)内の水中では、ストリーマ放電が生起される。このストリーマ放電に伴って貯水タンク(22)内の水中では、過酸化水素が発生して、過酸化水素を含む処理水(W)が生成される。こうして生成された過酸化水素を含む処理水(W)は、殺菌性及び抗菌性を有し優れた除菌作用を発揮する上、霧状でも残留性が良く、且つ気化しても酸素ガスが生じるだけで水以外の副生成物を生じないため、人体に害を来すおそれがない。本発明の冷蔵庫用除菌装置(20)では、上記過酸化水素を含む処理水(W)を冷蔵庫(10)内に噴霧して庫内を除菌するので、冷蔵庫(10)内に有毒なガスが生じることなく、頻繁に処理水(W)を噴霧しなくても冷蔵庫(10)内における除菌作用を長時間に亘って持続させて、冷蔵庫(10)内を安全且つ充分に除菌することが可能である。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の冷蔵庫用除菌装置(20)において、上記噴霧機構(32)は、冷蔵庫(10)の野菜室(15)内に処理水(W)を噴霧することを特徴とする。
【0012】
この第2の発明では、野菜室(15)内に処理水(W)を噴霧するので、野菜室(15)内に収納された野菜や果物などの生鮮食品を安全且つ充分に除菌して長期保存することが可能になる。
【0013】
第3の発明は、冷蔵庫(10)であって、第1又は第2の発明の冷蔵庫用除菌装置(20)を備えることを特徴とする。
【0014】
この第3の発明では、第1及び第2の発明の冷蔵庫用除菌装置(20)が冷蔵庫(10)内を安全且つ充分に除菌できるという優れた特性を有しているので、冷蔵庫(10)内を良好に除菌してカビなどの細菌類の繁殖を抑え、食品、特に生鮮食品を鮮度を保った状態で長期保存することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
第1の発明によれば、貯水タンク(22)内において、水中でストリーマ放電を行い過酸化水素を発生させて、過酸化水素を含む処理水(W)を生成するようにしている。過酸化水素を含む処理水(W)は、殺菌性及び抗菌性を有し優れた除菌作用を発揮する上、霧状でも残留性が良く、且つ気化しても酸素ガスを生じるだけで水以外の副生成物を生じないため、人体に害を来すおそれがない。この過酸化水素を含む処理水(W)を冷蔵庫(10)内に噴霧するので、冷蔵庫(10)内に有毒なガスが生じることなく、頻繁に処理水(W)を噴霧しなくても冷蔵庫(10)内における除菌作用を長時間に亘って持続させることができ、冷蔵庫(10)内を安全且つ充分に除菌することができる。
【0016】
第2の発明によれば、野菜室(15)内に収納された生鮮食品を安全且つ充分に除菌して長期保存することができる。
【0017】
第3の発明によれば、冷蔵庫(10)内を良好に除菌して細菌類の繁殖を抑えることができ、食品を鮮度を保った状態で長期保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施形態1に係る冷蔵庫を示す全体模式図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る貯水タンク及び水中放電ユニットの全体構成図であり、過酸化水素発生動作を開始する前の状態を示すものである。
【図3】図3は、実施形態1に係る絶縁ケーシングを示す斜視図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る貯水タンク及び水中放電ユニットの全体構成図であり、過酸化水素発生動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図5】図5は、実施形態1の変形例に係る貯水タンク及び水中放電ユニットの全体構成図である。
【図6】図6は、実施形態1の変形例に係る絶縁ケーシングを示す斜視図である。
【図7】図7は、実施形態2に係る貯水タンク及び水中放電ユニットの全体構成図であり、過酸化水素発生動作を開始する前の状態を示すものである。
【図8】図8は、実施形態2に係る貯水タンク及び水中放電ユニットの全体構成図であり、過酸化水素発生動作を開始して気泡が形成された状態を示すものである。
【図9】図9は、実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシングの蓋部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の各実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0020】
《発明の実施形態1》
本発明に係る冷蔵庫(10)の全体模式図を図1に示す。
【0021】
冷蔵庫(10)は、断熱性を有する断熱箱体(12)が正面側に開口する複数の室(14,15,16,17)に仕切られ、各室(14,15,16,17)の開口を開閉自在に閉塞する扉体(図示省略)を備えた構造を有し、各室(14,15,16,17)の内部を低温に保つように構成されている。冷蔵庫(10)は、例えば上から順に冷蔵室(14)、野菜室(15)、製氷及び第1冷凍室(16)及び第2冷凍室(17)に仕切られている。
【0022】
また、冷蔵庫(10)は、冷蔵庫用除菌装置(20)(以下、単に除菌装置と称する)を備えている。除菌装置(20)は、殺菌性及び抗菌性を有する処理水(W)の噴霧によって冷蔵庫(10)内、具体的には冷蔵室(14)及び野菜室(15)の除菌を行うものである。この除菌装置(20)は、貯水タンク(22)と噴霧機構(32)と水中放電ユニット(34)とを有している。
【0023】
貯水タンク(22)及び水中放電ユニット(34)の全体構成図を図2に示す。図3は、水中放電ユニット(34)が備える絶縁ケーシング(42)の斜視図である。なお、図2は、後述する過酸化水素発生動作を開始する前の状態を示すものである。
【0024】
貯水タンク(22)は、密閉型の容器状に形成され、処理水(W)が内部に貯留されるものである。貯水タンク(22)の上部には給水口(24)が設けられている。この給水口(24)は蓋体(26)で開閉自在に閉塞されており、必要に応じてこの蓋体(26)を外して給水口(24)から貯水タンク(22)内に手動で水を入れることが可能になっている。なお、本実施形態では、貯水タンク(22)内に手動で水を入れる構成を例に挙げたが、これに限らず、給水口(24)が配管などを介して水道管に繋がっており、必要に応じて自動で貯水タンク(22)内に水が供給されるように構成されていてもよい。
【0025】
また、貯水タンク(22)には上部から給水管(28)が挿入されており、その給水管(28)の先端部が処理水(W)に漬かっている。給水管(28)は、噴霧機構(32)に処理水(W)を供給するための水流路である。給水管(28)には、図1に示すようにポンプ(30)が中途部に設けられている。ポンプ(30)は、貯水タンク(22)内から給水管(28)に処理水(W)を吸い上げて噴霧機構(32)に搬送する搬送機構である。
【0026】
噴霧機構(32)は、冷蔵室(14)及び野菜室(15)の上壁にそれぞれ取り付けられている。噴霧機構(32)は、例えば超音波振動子を有し、該超音波振動子によって給水管(28)から供給された処理水(W)を霧化し、冷蔵室(14)及び野菜室(15)の各扉体の開閉動作に応じて、又は一定時間毎に間隔をおいて、室内下方に向けて噴霧するように構成されている。噴霧機構(32)は、ファンなどの送風手段を備え、該送風手段の駆動によって噴霧した処理水(W)を室内全体に強制対流させるようになっていることが好ましい。
【0027】
水中放電ユニット(34)は、放電電極(36)及び対向電極(38)とからなる電極対(36,38)と、この電極対(36,38)に電圧を印加する電源部(40)と、放電電極(36)を内部に収容する絶縁ケーシング(42)とを備えている。
【0028】
電極対(36,38)は、水中でストリーマ放電を生起するためのものである。放電電極(36)は、絶縁ケーシング(42)の内部に配置されている。放電電極(36)は、上下に扁平な板状に形成されている。放電電極(36)は、電源部(40)の正極側に接続されている。放電電極(36)は、例えばステンレス、銅などの導電性の金属材料で構成されている。
【0029】
対向電極(38)は、絶縁ケーシング(42)の外部に配置されている。対向電極(38)は、放電電極(36)の上方に設けられている。対向電極(38)は、上下に扁平な板状であって、且つ上下に複数の貫通孔(39)を有するメッシュ形状ないしパンチングメタル形状に構成されている。対向電極(38)は、放電電極(36)と略平行に配設されている。対向電極(38)は、電源部(40)の負極側に接続されている。対向電極(38)は、例えばステンレス、真鍮などの導電性の金属材料で構成されている。
【0030】
電源部(40)は、電極対(36,38)に所定の直流電圧を印加する直流電源で構成されている。すなわち、電源部(40)は、電極対(36,38)に対して瞬時的に高電圧を繰り返し印加するようなパルス電源ではなく、電極対(36,38)に対して常に数キロボルトの直流電圧を印加する。電源部(40)のうち、対向電極(38)に接続される負極側は、アースと接続されている。また、電源部(40)には、図示しないが、電極対(36,38)の放電電力を一定に制御する定電力制御部が設けられている。
【0031】
絶縁ケーシング(42)は、貯水タンク(22)の底部に設置されている。絶縁ケーシング(42)は、例えばセラミックスなどの絶縁材料で構成されている。絶縁ケーシング(42)は、一面(上面)が開放された容器状のケース本体(44)と、該ケース本体(44)の上方の開放部を閉塞する板状の蓋部(46)とを有している。
【0032】
ケース本体(44)は、角型筒状の側壁部(44a)と、該側壁部(44a)の底面を閉塞する底部(44b)とを有している。放電電極(36)は、底部(44b)の上側に敷設されている。絶縁ケーシング(42)では、蓋部(46)と底部(44b)との間の上下方向の距離が、放電電極(36)の厚さよりも長くなっている。つまり、放電電極(36)と蓋部(46)との間には、所定の間隔が確保されている。これにより、絶縁ケーシング(42)の内部では、放電電極(36)とケース本体(44)と蓋部(46)との間に空間(S)が形成されている。
【0033】
図2及び図3に示すように、絶縁ケーシング(42)の蓋部(46)には、該蓋部(46)を厚さ方向に貫通する1つの開口(47)が形成されている。この開口(47)により、放電電極(36)と対向電極(38)との間での電界の形成が許容されている。蓋部(46)の開口(47)の内径は、0.02mm以上且つ0.5mm以下であることが好ましい。以上のような開口(47)は、電極対(36,38)の間の電流経路の電流密度を上昇させる電流密度集中部を構成する。
【0034】
以上のように、絶縁ケーシング(42)は、電極対(36,38)のうちの一方の電極(放電電極(36))のみを内部に収容し、且つ電流密度集中部として開口(47)を有する絶縁部材を構成している。
【0035】
加えて、絶縁ケーシング(42)の開口(47)内では、電流経路の電流密度が上昇することで、水がジュール熱によって気化して気泡(B)が形成される。つまり、絶縁ケーシング(42)の開口(47)は、該開口(47)に気相部としての気泡(B)を形成する気相形成部として機能する。
【0036】
−除菌装置の運転動作−
本実施形態の冷蔵庫(10)では、除菌装置(20)が運転されることで、冷蔵室(14)及び野菜室(15)の除菌がなされる。このような除菌装置(20)による冷蔵庫(10)内の除菌動作について、図2及び図4を参照しながら詳細に説明する。図4は、貯水タンク(22)及び水中放電ユニット(34)の全体構成図であり、過酸化水素発生動作を開始して気泡(B)が形成された状態を示している。
【0037】
除菌装置(20)の運転開始時には、貯水タンク(22)内に予め入れた水が貯留されており、図2に示すように、絶縁ケーシング(42)内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(40)から電極対(36,38)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、電極対(36,38)の間に電界が形成される。放電電極(36)の周囲は、絶縁ケーシング(42)で覆われている。このため、電極対(36,38)の間での漏れ電流が抑制されると共に、開口(47)内の電流経路の電流密度が上昇した状態となる。
【0038】
開口(47)内の電流密度が上昇すると、開口(47)内のジュール熱が大きくなる。その結果、絶縁ケーシング(42)では、開口(47)の近傍において、水の気化が促進されて気泡(B)が形成される。この気泡(B)は、図4に示すように、開口(47)のほぼ全域を覆う状態となり、対向電極(38)に導通する負極側の水と、正極側の放電電極(36)との間に気泡(B)が介在する状態となる。この状態では、気泡(B)が放電電極(36)と対向電極(38)との間での水を介した導通を阻止する抵抗として機能する。これにより、放電電極(36)と対向電極(38)との間の漏れ電流が抑制され、電極対(36,38)の間では、所望とする電位差が保たれることになる。すると、気泡(B)内では、絶縁破壊に伴いストリーマ放電が発生する。
【0039】
以上のようにして、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、貯水タンク(22)内の水中では、水酸ラジカルなどの活性種や過酸化水素などが発生する。水酸ラジカルなどの活性種や過酸化水素は、ストリーマ放電に伴う熱によって貯水タンク(22)内を対流する。これにより、水中での活性種や過酸化水素の拡散が促される。また、気泡(B)でストリーマ放電が行われると、このストリーマ放電に伴ってこの気泡(B)でイオン風を生成しやすくなる。よって、貯水タンク(22)内では、このイオン風を利用して、活性種や過酸化水素の拡散効果をさらに向上できる。
【0040】
以上のようにして、水酸ラジカルなどの活性種や過酸化水素を含む処理水(W)が生成される。除菌装置(20)では、このような処理水生成動作が適宜実行される。過酸化水素を含む処理水(W)は優れた残留性を有するので、除菌装置(20)の運転中において処理水生成動作を常時行う必要はない。そして、除菌装置(20)では、過酸化水素を含む処理水(W)が、ポンプ(30)の駆動によって給水管(28)を通して各噴霧機構(32)に送られ、各噴霧機構(32)によって冷蔵室(14)及び野菜室(15)に噴霧される。これにより、本実施形態の冷蔵庫(10)では、冷蔵室(14)及び野菜室(15)を良好に除菌して細菌類の繁殖を抑えることができ、食品を鮮度を保った状態で長期保存することができる。
【0041】
−実施形態1の効果−
この実施形態1では、貯水タンク(22)内において、水中でストリーマ放電を行い過酸化水素を発生させて、過酸化水素を含む処理水(W)を生成するようにしている。過酸化水素を含む処理水(W)は、殺菌性及び抗菌性を有し優れた除菌作用を発揮する上、霧状でも残留性が良く、且つ気化しても酸素ガスを生じるだけで水以外の副生成物を生じないため、人体に害を来すおそれがない。この過酸化水素を含む処理水(W)を冷蔵室(14)及び野菜室(15)に噴霧するので、冷蔵庫(10)内に有毒なガスが生じることなく、頻繁に処理水(W)を噴霧しなくても冷蔵室(14)及び野菜室(15)における除菌作用を長時間に亘って持続させることができ、冷蔵室(14)及び野菜室(15)を安全且つ充分に除菌することができる。これによって、冷蔵室(14)及び野菜室(15)に収納された食品、特に野菜や果物などの生鮮食品を鮮度を保った状態で長期保存することができる。
【0042】
また、本実施形態1では、電源部(40)が直流電源で構成されているので、例えばパルス電源と比較して、電源部(40)の簡素化、低コスト化、小型化を図ることができる。また、電源部(40)にパルス電源を用いると、放電に伴って水中で発生する衝撃波や騒音が大きくなってしまうのに対し、直流電源を用いると、このような衝撃波や騒音も低減できる。
【0043】
〈実施形態1の変形例〉
図5は、この実施形態1の変形例に係る貯水タンク(22)及び水中放電ユニット(34)の全体構成図である。図6は、この変形例に係る絶縁ケーシング(42)を示す斜視図である。
【0044】
上記実施形態1では、絶縁ケーシング(42)の蓋部(46)に1つの開口(47)が形成されているとしたが、本変形例では、例えば図5及び図6に示すように、絶縁ケーシング(42)の蓋部(46)に複数の開口(47)が形成されていてもよい。この変形例では、絶縁ケーシング(42)の蓋部(46)が略正方形板状に形成され、この蓋部(46)に複数の開口(47)が等間隔を置きながら碁盤目状に配列されている。一方、放電電極(36)及び対向電極(38)は、全ての開口(47)に跨るような正方形板状に形成されている。
【0045】
この変形例においても、各開口(47)が、電流密度集中部、及び気相形成部として機能する。これにより、電源部(40)から電極対(36,38)に直流電圧が印加されると、各開口(47)の電流密度が上昇し、各開口(47)で気泡(B)が形成される。その結果、各気泡(B)でそれぞれストリーマ放電が生起され、水酸ラジカル等の活性種や、過酸化水素が発生して、過酸化水素を含む処理水(W)が生成される。
【0046】
《発明の実施形態2》
図7は、この実施形態2に係る除菌装置(20)の貯水タンク(22)及び水中放電ユニット(34)の全体構成図であり、過酸化水素発生動作を開始する前の状態を示すものである。
【0047】
実施形態2に係る冷蔵庫(10)は、上述した実施形態1と水中放電ユニット(34)の構成が異なるものである。以下には、上記実施形態1と異なる点を主として説明する。
【0048】
図7に示すように、実施形態2の水中放電ユニット(34)は、貯水タンク(22)の外側から内部に向かって挿入されて固定される、いわゆるフランジユニット式に構成されている。また、実施形態2の水中放電ユニット(34)は、放電電極(36)と対向電極(38)と絶縁ケーシング(42)とが一体的に組立てられている。
【0049】
実施形態2の絶縁ケーシング(42)は、大略の外形が円筒状に形成されている。絶縁ケーシング(42)は、ケース本体(44)と蓋部(46)とを有している。
【0050】
実施形態2のケース本体(44)は、ガラス質又は樹脂製の絶縁材料で構成されている。ケース本体(44)は、円筒状の基部(48)と、該基部(48)から貯水タンク(22)側に向かって突出する筒状壁部(50)と、該筒状壁部(50)の外縁部から更に貯水タンク(22)側に向かって突出する環状凸部(52)とを有している。また、ケース本体(44)には、環状凸部(52)の先端側に先端筒部(54)が一体に形成されている。基部(48)の軸心部には、円柱状の挿入口(48a)が軸方向に延びて貫通形成されている。筒状壁部(50)の内側には、挿入口(48a)と同軸となり、且つ挿入口(48a)よりも大径となる円柱状の空間(S)が形成されている。
【0051】
実施形態2の蓋部(46)は、略円板状に形成されて環状凸部(52)の内側に嵌合している。蓋部(46)は、セラミックス材料で構成されている。蓋部(46)の軸心には、実施形態1と同様、蓋部(46)を上下に貫通する円形状の1つの開口(47)が形成されている。
【0052】
放電電極(36)は、軸直角断面が円形状となる縦長の棒状の電極で構成されている。放電電極(36)は、基部(48)の挿入口(48a)に嵌合している。これにより、放電電極(36)は、絶縁ケーシング(42)の内部に収容されている。実施形態2では、放電電極(36)のうち貯水タンク(22)とは反対側の端部が、貯水タンク(22)の外部に露出される状態となる。このため、貯水タンク(22)の外部に配置される電源部(40)と、放電電極(36)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0053】
放電電極(36)のうち貯水タンク(22)側の端部(36a)は、絶縁ケーシング(42)の内部の空間(S)に臨んでいる。なお、図7に示す例では、放電電極(36)の端部(36a)が、挿入口(48a)の開口面よりも上側(貯水タンク(22)側)に突出しているが、この端部(36a)の先端面を挿入口(48a)の開口面と略面一としてもよいし、端部(36a)を挿入口(48a)の開口面よりも下側に陥没させてもよい。また、放電電極(36)は、実施形態1と同様、開口(47)を有する蓋部(46)との間に所定の間隔が確保されている。
【0054】
対向電極(38)は、円筒状の電極本体(38a)と、該電極本体(38a)から径方向外方へ突出する鍔部(38b)とを有している。電極本体(38a)は、絶縁ケーシング(42)のケース本体(44)に外嵌している。鍔部(38b)は、貯水タンク(22)の壁部に固定されて水中放電ユニット(34)を保持する固定部を構成している。水中放電ユニット(34)が貯水タンク(22)に固定された状態では、対向電極(38)の電極本体(38a)の一部が浸水された状態となる。
【0055】
対向電極(38)は、電極本体(38a)よりも小径の内側筒部(38c)と、該内側筒部(38c)と電極本体(38a)との間に亘って形成される連接部(38d)とを有している。内側筒部(38c)及び連接部(38d)は、貯水タンク(22)内の水中に浸漬している。内側筒部(38c)は、その内部に円柱空間(56)を形成している。内側筒部(38c)の軸方向の一端は、蓋部(46)と当接して該蓋部(46)を保持する保持部を構成している。また、電極本体(38a)と内側筒部(38c)と連接部(38d)の間には、ケース本体(44)の先端筒部(54)が内嵌している。内側筒部(38c)の軸方向の他端側には、円柱空間(56)を覆うようにメッシュ状の漏電防止材(58)が設けられている。この漏電防止材(58)は、対向電極(38)と接触することで、実質的にアースされている。これにより、漏電防止材(58)は、貯水タンク(22)の内部の空間(水中)のうち、円柱空間(56)の内側から外側への漏電を防止している。
【0056】
対向電極(38)は、電極本体(38a)の一部が貯水タンク(22)の外部に露出される状態となる。このため、電源部(40)と対向電極(38)とを電気配線によって容易に接続することができる。
【0057】
−除菌装置の運転動作−
実施形態2の冷蔵庫(10)においても、除菌装置(20)が運転されることで、冷蔵室(14)及び野菜室(15)の除菌がなされる。このような除菌装置(20)による冷蔵庫(10)内の除菌動作について、図7及び図8を参照しながら詳細に説明する。図8は、水中放電ユニット(34)の全体構成図であり、過酸化水素発生動作を開始して気泡(B)が形成された状態を示している。
【0058】
除菌装置(20)の運転開始時には、図7に示すように、絶縁ケーシング(42)の内の空間(S)が浸水した状態となっている。電源部(40)から電極対(36,38)に所定の直流電圧(例えば1kV)が印加されると、開口(47)の内部の電流密度が上昇していく。
【0059】
図7に示す状態から、電極対(36,38)へ更に直流電圧が継続して印加されると、図8に示すように、開口(47)内の水が気化されて気泡(B)が形成される。この状態では、気泡(B)が開口(47)のほぼ全域を覆う状態となり、円柱空間(56)内の負極側の水と、放電電極(36)との間に気泡(B)による抵抗が付与される。これにより、放電電極(36)と対向電極(38)との間の電位差が保たれ、気泡(B)でストリーマ放電が発生する。その結果、水中では、水酸ラジカルや過酸化水素を発生して、過酸化水素を含む処理水(W)が生成される。そして、この処理水(W)は、冷蔵室(14)及び野菜室(15)に噴霧されることで除菌に利用される。
【0060】
〈実施形態2の変形例〉
図9は、実施形態2の変形例に係る絶縁ケーシング(42)の蓋部(46)の平面図である。
【0061】
上記実施形態2では、円板状の蓋部(46)の軸心に1つの開口(47)を形成しているが、この蓋部(46)に複数の開口(47)を形成してもよい。図9に示す例では、蓋部(46)の軸心を中心とする仮想ピッチ円上に、5つの開口(47)が等間隔置きに配列されている。このように蓋部(46)に複数の開口(47)を形成することで、各開口(47)の近傍でそれぞれストリーマ放電を生起させることができる。
【0062】
《その他の実施形態》
上記各実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0063】
上述した各実施形態の電源部(40)には、ストリーマ放電の放電電力を一定に制御する定電力制御部を用いている。しかしながら、定電力制御部に代えて、ストリーマ放電時の放電電流を一定に制御する定電流制御部を設けることもできる。この定電流制御を行うと、水の導電率によらず放電が安定するため、スパークの発生も未然に回避できる。
【0064】
また、上述した各実施形態では、電源部(40)の正極に放電電極(36)を接続し、電源部(40)の負極に対向電極(38)を接続している。しかしながら、電源部(40)の負極に放電電極(36)を接続し、電源部(40)の正極に対向電極(38)を接続することで、電極対(36,38)の間で、いわゆるマイナス放電を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明は、冷蔵庫用除菌装置及びそれを備えた冷蔵庫について有用であり、特に、冷蔵庫内を安全且つ充分に除菌することが要望される冷蔵庫用除菌装置及びそれを備えた冷蔵庫に適している。
【符号の説明】
【0066】
W 処理水
10 冷蔵庫
15 野菜室
20 冷蔵庫用除菌装置
22 貯水タンク
32 噴霧機構
34 水中放電ユニット
36 放電電極(電極対)
38 対向電極(電極対)
40 電源部(直流電源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水(W)が貯留される貯水タンク(22)と、該貯水タンク(22)から供給された処理水(W)を冷蔵庫(10)内に噴霧する噴霧機構(32)とを備え、該噴霧機構(32)から噴霧された処理水(W)によって冷蔵庫(10)内を除菌する冷蔵庫用除菌装置であって、
上記貯水タンク(22)に貯留された水中でストリーマ放電を生起する電極対(36,38)と、該電極対(36,38)に直流電圧を印加する直流電源(40)とを有し、上記電極対(36,38)の間におけるストリーマ放電によって上記貯水タンク(22)内の水中で過酸化水素を発生させて、過酸化水素を含む処理水(W)を生成する水中放電ユニット(34)を備え、
上記水中放電ユニット(34)により生成した処理水(W)を上記噴霧機構(32)から冷蔵庫(10)内に噴霧して冷蔵庫(10)内を除菌する
ことを特徴とする冷蔵庫用除菌装置。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫用除菌装置において、
上記噴霧機構(32)は、冷蔵庫(10)の野菜室(15)内に処理水(W)を噴霧する
ことを特徴とする冷蔵庫用除菌装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の冷蔵庫用除菌装置(20)を備える
ことを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−77955(P2012−77955A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221552(P2010−221552)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】